判例検索β > 令和1年(ネ)第2884号
事件番号令和1(ネ)2884
裁判年月日令和元年12月19日
裁判所名・部東京高等裁判所
裁判日:西暦2019-12-19
情報公開日2020-02-13 14:00:14
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主文1
1審原告

及び1審被告らの本件各控訴をいずれも棄却する

2
1審原告

の控訴費用は同1審原告の,1審被告らの控訴費用は1審被告

らの各負担とする。
事実及び理由
第1
1
控訴の趣旨
1審原告

の控訴の趣旨

(1)原判決中1審原告

の敗訴部分を取り消す。

(2)1審被告らは,連帯して,1審原告

に対し,55万円及びこれに対する

平成28年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2
1審被告らの控訴の趣旨
(1)原判決中1審被告らの敗訴部分を取り消す。
(2)1審原告

第2
1
及び1審原告

の各請求をいずれも棄却する。

事案の概要(略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。以下同じ。)
本件は,

A
が主導したグループにより,
被害者の親族になりす

まし親族が現金を至急必要としているかのように装って被害者から金員をだまし取る詐欺
(本件各詐欺行為)
の対象とされた1審原告らが,
1審被告らに対し,
Aは,指定暴力団D会

E会F
一家に所属しており,A

が指定暴力団D会の威力を利用して上記グループ(本件詐欺グループ)を構成し,本件詐欺グループが1審原告らから金員を詐取し又は詐取しようとした行為は,
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
(平成3年法律第77号。
ただし,平成20年法律第28号による改正後のもの)
(暴対法)31条の2に
いう威力利用資金獲得行為に該当し,D会の会長である1審被告
会の特別相談役である1審被告

及び同

は,D会の代表者等に該当するから,

1審原告らに生じた損害を賠償する義務があると主張して,
同条に基づき,
1審
原告らが本件詐欺グループに交付した金員相当額,
慰謝料及び弁護士費用
(1審
原告

385万,1審原告

275万円,1審原告

55万円)並びにこ

れらに対する本件各詐欺行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
原審は,本件詐欺行為当時,Aは

F一家に属するD会の指定暴力団員

であり,1審被告らは暴対法31条の2の代表者等に該当し,本件各詐欺行為は暴対法31条の2にいう威力利用資金獲得行為に該当するから,1審被告らは,
連帯して,
本件各詐欺行為によって1審原告らに生じた損害を賠償する
責任を負うとした上で,①1審原告

及び1審原告

の各請求をそれぞれ

363万円及び242万円並びに上記の遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し,
②1審原告

については,
本件詐欺グループの嘘を見破り金員を詐取

されるに至っておらず,損害賠償をもって慰謝されるべき精神的損害を被ったものとは認められないとして,
その請求を棄却したところ,
1審原告

及び1

審被告らがそれぞれ自らの敗訴部分を不服として控訴した。
2
前提事実,関係法令などの定め,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の事実及び理由の第2(以下原判決第2という。
)の1
ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決3頁18行目の「という。」の次の,)を削り,同頁20行目
の詐取又はを詐取され又はに改める。
(2)原判決4頁9行目の上記姪の子のを上記姪の子のためにに改める。(3)原判決5頁10行目及び20行目の各

をいずれもB」

に改める。(4)原判決6頁5行目から6行目にかけての(国家公安委員会規則第4号。「(以下「本件規則

という。)を(平成3年国家公安委員会規則第4号。
)」以下「本件規則という。
)1条2号」に改める。
3
当審における当事者の主張
(1)1審原告

の主張
1審原告

は,
特殊詐欺の標的となり,
そこに暴力団が関わっていたこと

を知って,不安や恐怖心を覚え,平穏な生活を脅かされるに至っている。1審原告

は,
暴力団が関与している特殊詐欺の標的にされた当時,
66歳と高

齢であった。このように高齢の一般人が暴力団の標的にされたことを知らされれば,
恐怖心を覚え,
精神的ショックを受けたことは明らかであるといえる。
これによって

が被った精神的損害を金銭的に評価すると,50万

円を下らない。
(2)1審被告らの主張
1審原告らが民法715条の適用により1審被告らに対して同条の使用者責任による損害賠償を請求するには,請求原因としてD会組員としての活動に伴うものであることを主張立証することが必要であるところ,Aらは自分のために詐欺行為を行ったものであり,1審被告らが責任を負う原因となるD会のための行事又は1審被告らの事業とは全く関係がないから,1審被告らはAらの詐欺行為について損害賠償責任を負わない。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,1審原告

及び1審原告

の1審被告らに対する請求はそ

れぞれ連帯して363万円及び242万円並びにこれらに対する本件各詐欺行為の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,1審原告

の1審被告らに対する請求は理由がない

と判断するものである。その理由は,次のとおり原判決を補正し,後記2のとおり当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,
原判決の
事実及び理由の第3(以下原判決第3という。
)の1ないし4に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(1)原判決12頁17行目のD会の運営を支配する地位にある者として」を「D会の「運営を支配する地位にある者(同法3条3号)として」に改め,同頁18行目末尾の次に改行して次のとおり加える。
なお,1審被告らは,特別相談役はD会の決定機関ではないから最高幹部ではなく,1審被告は同条の「代表者等に該当しない旨を主張する

が,
前示のとおり,
1審被告

に関しては,
特別相談役への就任に先立っ

て約16年間にわたりD会の会長職を務め,平成17年4月から現在に至るまでD一家総長も務めていることに加え,D会における歴代のD一家総長の影響力の強大さや階層的支配服従関係等の諸事情に照らせば,D会の前会長である特別相談役かつD一家総長として,D会の後進の会長等に対する指導や助言を通じてその運営に強い影響力を及ぼしているものと推認され,D会の運営を支配する地位にある者(同法3条3号)として同法31条の2の
代表者等
に該当するものと認められるから,
1審被告らの上記主張は採用することができない。」
(2)原判決12頁23行目から26行目まで,13頁3行目から25行目まで,14頁1行目,16頁24行目及び17頁14行目から25行目までの各をいずれもBに改める。(3)原判決12頁26行目の一家をF一家に改める。

(4)原判決13頁19行目の大学生を高校生に改める
(5)原判決18頁24行目の至っておらず,の次にこのような本件詐欺行為3に係る欺罔行為の内容,態様及びその結果その他本件に現れた一切の諸事情に照らせば,1審原告において当該欺罔行為の対象とされたことにつき一定の不安感等を覚えたことをしんしゃくしても,本件において,1審原告について,を加え,同頁25行目のものとは認められないをとまでは認め難いものといわざるを得ないに改める。2
当審における当事者の主張に対する判断
(1)1審原告
1審原告

の主張について
は,同人は,特殊詐欺の標的となり,そこに暴力団が関わって

いたことを知って,
不安や恐怖心を覚え,
平穏な生活を脅かされるに至ってお
り,当時66歳の高齢の一般人が暴力団の標的にされたことを知らされれば,恐怖心を覚え,精神的ショックを受けたことは明らかである旨を主張する。しかしながら,前示(前記第2の2の引用に係る原判決第2の1(2)ウ)のとおり,
1審原告

は,
本件詐欺グループの構成員である氏名不詳者から複数

回にわたり架電を受け,1審原告

の息子になりすました当該氏名不詳者

から,現金300万円を至急必要としているので自分のために代わりに行く郵便局員に同額の現金を交付するよう申し向けられ,さらに1審原告でCに応対した1審原告


の親族がCから現金の交付を求められたが

(本件詐欺行為3),
これらの話の内容が虚偽であることを見破り,
金員を詐取
されるに至らなかったものであり,財産的損害を一切被っておらず,また,これらの欺罔行為の過程において暴力団員から直接の威迫等の危害が及び得る所為を受けたことはうかがわれず,
また,
1審原告

が本件詐欺行為3の対

象とされた経緯について,本件詐欺グループの構成員のいずれかと何らかの人的関係があったこともうかがわれない。このような本件詐欺行為3に係る欺罔行為の内容,態様及びその結果その他本件に現れた一切の諸事情に照らせば,
1審原告

において,
暴力団が関与している高齢者向けの特殊詐欺

対象とされたことについて一定の不安感等を覚えたことをしんしゃくしても,本件において,
1審原告

について,
損害賠償をもって慰謝すべき精神的損

害を被ったとまでは認め難いものといわざるを得ず,1審原告

の上記主

張は採用することができない。
(2)1審被告らの主張について
1審被告らは,1審原告らが民法715条の適用により1審被告らに対して同条の使用者責任による損害賠償を請求するには,請求原因としてD会組員としての活動に伴うものであることを主張立証することが必要であるところ,Aらは自分のために詐欺行為を行ったものであり,D会のための行事又は1審被告らの事業とは全く関係がないから,1審被告らはAらの詐欺行為について損害賠償責任を負わない旨を主張する。
しかしながら,本件において,1審原告らは,民法715条に基づいて損害賠償を請求しているのではなく,暴対法31条の2に基づいて損害賠償を請求しているものであり,暴対法31条の2は,民法715条の特則として,同条所定の使用者の
事業の執行について
の被用者の行為という要件に代えて,
威力利用資金獲得行為…を行うについての指定暴力団員の行為であることを指定暴力団の代表者等の損害賠償責任の要件と定めており,本件において,
暴対法31条の2所定の上記要件を満たしていることは前示
(前記1の補
正後の引用に係る原判決第3の3)
のとおりである以上,
民法715条所定の
上記要件の該当性の有無を検討するまでもなく,1審被告らは暴対法31条の2に基づく損害賠償責任を負うものといえるから,1審被告らの上記主張は失当である。
1審被告らの当審におけるその余の主張も,実質的に原審における主張を繰り返すもの又はその前提を欠くものであり,
前示
(前記1の補正後の引用に
係る原判決第3の1ないし4)の認定判断を左右するものではない。3
よって,
1審原告
審原告

及び1審原告

の各請求を前記1の限度で認容し,
1
の請求を棄却した原判決は相当であり,1審原告

及び1審被告

らの本件各控訴は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第16民事部

裁判長裁判官

岩井伸晃
裁判官

馬場純夫
裁判官

片野正

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