判例検索β > 平成29年(ワ)第30300号
損害賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)30300
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和2年1月23日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-01-23
情報公開日2020-02-13 14:00:12
戻る / PDF版
令和2年1月23日判決言渡し

口頭弁論の終結の日

同日原本交付

裁判所書記官

損害賠償請求事件

令和元年11月7日
判主1決文
被告は,原告Aに対し,1億2799万0425円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,原告Bに対し,110万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,原告Cに対し,55万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被告は,原告Dに対し,55万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

6
訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告及び被告補助参加人の負担とする。

7
この判決は,第1項から第4項までに限り,仮に執行することができる。


第1
1実及び理由
請求
被告は,原告Aに対し,2億1490万4648円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
被告は,原告Bに対し,550万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
被告は,原告Cに対し,110万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被告は,原告Dに対し,110万円及びこれに対する平成28年12月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,被告の開設する被告病院において被告補助参加人E医師(以下E医師ともいう。)によるエコーガイド下での経皮的肝生検(以下本件肝生検という。)を受けた原告Aにつき,本件肝生検で肺を誤穿刺されて血液中に混入した気泡により脳空気塞栓症となり,左片麻痺の後遺障害が生じたことについて,原告らが,E医師においては,①

原告Aに対する肝生検はCTガ

イド下又は腹腔鏡下で実施すべきであったのに,エコーガイド下でこれを実施した注意義務違反,②

本件肝生検ではエコーで肺臓等の臓器を十分に描出で

きない状況であったから,そのまま盲目的に穿刺をしてはならなかったのにこれをした注意義務違反がある旨主張し,被告に対し,原告Aにおいては,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求として,2億1490万4648円,
その余の原告らにおいては,不法行為に基づく損害賠償請求として,原告Bにつき550万円,原告C及び原告D(以下,原告B及び原告Cと併せて原告Bらという。)につき各110万円及びこれらに対する平成28年12月26日(症状固定日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1
前提事実(当事者間に争いがないか,掲記した証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)


当事者等

原告Aは,昭和29年8月○日生まれの女性(本件肝生検時61歳)であり,平成27年6月28日に受けた健康診断の時点で,身長が142.1cm,体重が98.9kg,BMI(体重(kg)を身長(m)の二乗で除した値。肥満の判定基準として用いられる。)が48.9と極度の肥満であった。
原告Bは原告Aの夫であり,原告C及び原告Dは,いずれも原告Aの子である。

被告は,被告病院を開設,運営する学校法人である。
本件肝生検は,被告病院総合内科に所属する医師であるE医師が実施した。



診療経過等

原告Aは,平成27年6月28日,aセンターにおいて健康診断を受け,腹部超音波(エコー)検査により脂肪肝高度の指摘を受けたほか,胃部エ
ックス線検査により胃体部後壁隆起性所見の指摘を受けた。そのため,同年9月12日,糖尿病のかかりつけ医であったb医院を受診し,上部消化管内視鏡検査を受けたところ,胃体上部の小彎後壁寄りに胃静脈瘤様の血管性隆起様粘膜下腫瘤が確認されたことから,その精査加療の目的で被告病院の紹介を受けた。

(甲A13の1から3まで,乙A1)

原告Aは,平成27年10月2日,上記アの紹介により被告病院を受診し,同月9日,腹部CT検査を受けたところ,胃の噴門部直下に胃腎シャントを伴う胃静脈瘤が認められるなどし,非アルコール性脂肪性肝炎(N
ASH),肝硬変の疑いがあると診断された。そして,同月16日,原告Aに対する肝硬度検査(以下本件肝硬度検査という。)が実施されたが,皮下脂肪層が約4cmに及んでいたため,肝硬度を測定することはできないまま,検査は中止された。
その後,原告Aは,平成27年11月25日に被告病院に入院し,翌2
6日,上記胃静脈瘤に対するバルーン閉鎖下逆向性静脈瘤塞栓術(BRTO)を受け,同年12月8日,退院した。なお,同月14日に行われた血液検査の結果,肝臓の線維化マーカーとされるヒアルロン酸及びⅣ型コラーゲンについて,いずれも基準値を超える数値が検出された。
(甲A3,B3,乙A1)

原告Aは,平成28年1月12日(以下,同年については原則として表記を省略する。),肝臓の病態を把握するための肝生検を受ける目的で,
被告病院に入院した。
その上で,1月12日午前11時頃から,原告Aに対し,E医師によるエコーガイド下での経皮的肝生検(本件肝生検)が開始され,5回の穿刺が実施された上で,同日午前11時30分過ぎ頃に終了した。
本件肝生検では,F臨床検査技師(以下F技師という。)が腹部エ
コーを実施し,G看護師が,E医師の補助をするとともに,本件肝生検の経過を肝生検・PEIT・RFA施行中観察表(甲A6。以下本件観察表という。)にまとめた。なお,本件肝生検において採取された組織の病理組織診断の結果,同組織に肺実質が認められた一方,肝実質は同定されなかった。

(甲A6,8,乙A1,5,証人G看護師)

本件肝生検が終了したことから,原告Aの体位を左半身を下にした半側臥位から仰臥位に戻そうとしたところ,

咳が出る。苦しい。

と言って2回程咳をし,急激に意識を喪失した。その原因を検索するために行われ
た頭部CT検査の結果,右半球に広範な空気塞栓を疑わせる所見が認められた。
E医師は,1月14日,原告Bらに対し,原告Aの急変の原因について,肝臓と肺が近接した場所にあることから,本件肝生検の穿刺により肺に針が刺さって肺胞を傷つけた可能性が考えられ,上記ウの病理組織診断の結
果もあり,肺組織損傷による空気塞栓を生じたものとみられる旨説明した。(甲A6,7,12,乙A1)

原告Aは,本件肝生検後12月26日まで被告病院に入院し,治療及びリハビリを受けた。同日,被告病院の医師により,原告Aにつき,右脳梗塞(空気塞栓症)による左片麻痺と感覚障害が残存し,左上肢は一部支持手,左下肢は跛行にて杖歩行の状態で,麻痺症状は固定した旨の診断がされた。

(甲A10)


医学的知見

肝生検(甲B5から9まで,13,14,丙B1から18まで)
肝生検は,肝疾患の病理学的診断を目的として,患者の肝臓の一部を採
取するものである。基本的には,超音波(エコー)ガイド下で経皮的に行われるが,腹腔鏡下で行われることもある。また,文献上,CTガイド下や盲目的に穿刺をする方法を挙げるものもあるが,盲目的穿刺については,エコーガイド下肝生検が安全に施行されるようになって行われなくなった(丙B6・平成4年発行),医療事故を避けるためにも余り施行されるべ
きではない(丙B10・平成16年発行)といった指摘がされている。合併症としては,疼痛,出血(腹腔内出血,胸腔内出血,肝被膜下出血等)などが挙げられ,最も多い腹腔内出血の頻度を0.2%とする文献(丙B12・平成20年発行,丙B15・平成25年発行)があるが,エコーガイド下の肝生検は比較的安全とされている。肺穿刺については,一
般に,肝生検の合併症には挙げられておらず,平成5年発行の文献で,6万8276例中1例(0.014‰=0.0014%)認められたとするものがある(甲B14)。なお,肺生検の合併症として空気塞栓が0.061%認められたとする文献(丙B18・平成19年発行)がある。エコーガイド下の経皮的肝生検では,専用の生検針が用いられ,検査中
は適宜息を止めている必要があるが,これは,肝臓が呼吸によって動くことが理由とされている。本件肝生検で使用された生検針は,持ち手の後方にある作動ボタンを押すか,持ち手の側方にある作動ボタンを前方にスライドさせると,いずれもステンレス製の内針と外筒が瞬時に自動的に作動し,針先が22mm前進して,組織が内針に設けられた試料ノッチに採取される構造となっている。また,本件肝生検で使用された生検針の太さは16Gと18Gの2種類で,その外径は,16Gが1.65±0.03m
m,18Gが1.25±0.02mmであり,外径差は,最大で0.45mmである。

肝硬変(甲B3)
肝硬変は,慢性肝疾患の終末像であり,炎症の持続により肝細胞死と再生が肝全域にびまん性に繰り返された結果,肝全体に線維増生をきたし,
結節(偽小葉)が形成された状態で,肝機能低下及び門脈圧亢進症を伴う疾患である。
黄疸,腹水等の肝不全症状が認められる非代償期の肝硬変は診断が容易であるが,肝機能が比較的良く保たれていて合併症も少ない代償期の肝硬変は,前段階の病変である慢性肝炎との鑑別が問題となる。これらの診断
はしばしば困難であるが,肝生検又は腹腔鏡検査により初めて可能となる。2
争点及び争点に関する当事者の主張


原告Aに対する肝生検の手技の経過

(原告らの主張)

E医師は,本件肝生検において次のとおり5回の穿刺を行った(甲A6)。このうち2回目から5回目までのいずれかの穿刺で,肺を誤穿刺した。
1回目
2回目

18G針により穿刺したが,肋骨に当たってしまった。
16G針により穿刺したが,検体は採取できなかった。

3回目

16G針により穿刺し,検体を採取した。

4回目

18G針により穿刺したが,検体を採取できなかった。
5回目

18G針により穿刺し,検体を採取した。

イ(ア)本件肝生検においては,エコーガイド下で肺臓,肝臓その他の臓器を十分に描出し視認することができない状態であった。これは,主に以下の事情から裏付けられる。
a
本件肝生検前の平成27年10月16日に実施された本件肝硬度検査においては,原告Aが上記1⑴アのとおり極度の肥満であり,脂肪層が4cmにも及んでいたため,肝臓を描出することができなかった。
b
本件肝生検のように肝組織を採取すれば足りる背景肝生検は難易度の低い手技であり,肺穿刺の確率は0.0014%と極めて低く,教育された医師助手が行った症例中99.1%において十分な肝組織が
得られている(甲B13,14)。
それにもかかわらず,本件肝生検においては,5回もの穿刺が行われ,1回目は肋骨に当たり,残る4回のうち,検体を採取できたのはわずか2回にとどまる上,本件肝生検により採取された2つの検体には,病理組織診断の結果,肺臓組織が含まれていたものの,肝臓組織
は全く含まれておらず,肝組織採取率は0%であった。
c
一般に,肝生検を実施する前には,臓器の描出の可否,程度,臓器の位置関係等を把握し,穿刺ルートを決定するため,エコー検査を実施してその画像を残すのが通常であるが,原告Aの本件肝生検前のエ
コー検査画像は残されていない。また,本件肝生検中のエコー検査画像も残されていない。
(イ)a

被告及び同補助参加人(以下被告等という。)が主張する本

件肝生検における穿刺の経緯は,経時的に作成された本件観察表(甲A6)の記載に反し,裏付ける医療記録はなく,採用されるものではない。また,16Gと18Gの穿刺針の外径差は,最大でも0.45mmしかなく,16Gを使用した1回目では肋間を通過しなかったが,2回目以降は18Gに替えたため通過したなどという被告等の主張に合理性はない。
b
被告等は,5回目の穿刺の際,原告Aが突然息を深く吸ったために生検針が肺に刺さったとした上,E医師は,穿刺の瞬間に手元を注視していたために原告Aの異変に気付かなかったなどと主張するが,肝
生検にとって一番重要なのは,他臓器や脈管等の損傷を避けて正確に標的を穿刺することであり,穿刺の瞬間にエコー画像ではなく手元を注視すること自体不合理である。仮に穿刺の瞬間に手元を注視していたとしても,原告Aの吸気に気付かないのは不自然極まりない。
(被告等の主張)

E医師は,F技師と共に,本件肝生検をエコーガイド下で実施したところ,エコー画像において,肝臓は全体的に見えづらかったものの,肝被膜及び肝臓内の脈管は確認することができる状態であった。
E医師は,エコー画像によりこれらを確認しつつ,慎重に生検針を進め,針先が肝臓に到達していることを確認した上で穿刺を実施し,組織採取を
することができた。

本件肝生検の経過は次のとおりであり,穿刺の回数が5回にわたり,5回目の穿刺において原告Aの肺を穿刺するに至ったことには合理的な理由がある。

1回目

16G針により実施したところ,生検針が肋軟骨に当たり,肋間

隙を通過しなかった。これは,加齢による肋軟骨の石灰化により胸壁が硬化し,横隔膜と肋間筋の萎縮により胸郭と肋骨の動きが悪くなっていたため,肋間が開きにくくなっていたことが原因であると考えられる。2回目及び3回目
2回目以降は16Gより細い18Gの生検針によって

実施した。2回目及び3回目は,生検針が肋間隙を通過したものの,エコー画像において同針の方角が悪く,肝組織に到達していないことが確認されたため,組織採取(穿刺針の発射)を実施しなかった。
4回目

エコー画像で生検針が肝臓まで到達したことを確認して組織採取

を行った。
5回目

4回目の穿刺につき,肝臓の被膜が線維化によって硬化しており,
生検針がたわんで組織採取ができなかった可能性があると考えて,念の
ため5回目の穿刺を実施することとした。エコー画像で生検針が肝臓まで到達したことを確認し,組織採取のために狙撃ボタンを押したが,これと同時に原告Aが,直前にF技師から2度にわたって息を止めるように指示されていたにもかかわらず息を深く吸ってしまったために,横隔膜が下がり,肺が下方に移動し,生検針がずれて肺に刺さった。なお,
E医師は,当時,原告Aの背部に立ち,原告Aの身体には布が掛けられ,穿刺部位以外は見えない状態であったとともに,穿刺針のたわみ等を避けるために穿刺の瞬間は穿刺針の手元操作に集中していたため,原告Aの吸気に気付かなかった。

原告らは,本件肝生検においてはエコーガイド下での臓器の描出,視認が不十分であった旨主張するが,そのような事実はない。
(ア)そもそも,エコーガイド下での肝生検という方法を選択した以上,エコー画像で穿刺を実施するに十分な鮮明度を確保できていることは当然の前提であり,E医師が,画像が不鮮明なままに穿刺を敢行する必要性
は見当たらない。2回目及び3回目の穿刺で組織採取のために穿刺針を発射しなかったことは,エコー画像が十分鮮明であったことを推認させる。
(イ)原告らは,原告Aが極度の肥満であったことを指摘するが,E医師は本件肝生検の3箇月前にBMIが30%を超えた患者に対する肝生検を
問題なく実施しているし,F技師において皮下脂肪のためにエコーガイド下での肝生検を中止した経験はない。
(ウ)肝硬度検査は,振動波(ドップラー)を当てて肝臓の硬さを測定するというものであり,通常のエコー検査とは異なるところ,本件肝硬度検査において肝臓が描出されなかったのは,深部まで記録を出せない種類のプローブが用いられたからである。
(エ)原告らは,本件肝生検の半年以上前に原告Aが受けた健康診断時のエ
コー画像(甲A13の3)を描出不十分の証拠として提出するが,このエコー画像は,肝生検のためのものではなく一般の健康診断用のものであることに加え,プローブの走査速度が速く,プローブの一部が欠損しているなど,そもそも不十分な描出であり,本件肝生検におけるエコーガイド下での臓器の描出,視認が不十分であったことの証拠となるもの
ではない。
(オ)本件肝生検の経過は,G看護師作成の本件観察表(甲A6)と異なるが,G看護師は,本件肝生検当日,原告Aの血圧上昇に伴い原告Aの状態に注意を集中していた上,他にも重症患者を担当し,本件肝生検中にもその対応をしていた。こうした状況もあり,G看護師は,本件肝生検
後にE医師に穿刺針の使用状況を尋ねて本件観察表を作成したが,E医師が急いで説明したため,誤った記載がされたものと考えられる。内容的にも,1回目から18Gを用いる理由がなく,1回目に18Gを使用したのに2回目に太い16Gに変更する理由は全くないほか,4回目及び5回目に18Gに変更する必要もないなど,不合理である。したがっ
て,本件観察表は誤記というほかない。

なお,本件肝生検により採取された検体について,病理組織診断の結果,肺組織が含まれており,肝実質は確認することはできなかったが,肝臓の間質組織が僅かに含まれていた可能性は否定できない。


本件肝生検の際のエコー画像がないのは,本件肝生検時のエコーが,診断目的のものではなく検査の補助のためのものであるから,画像抽出の写真として出力していなかったにすぎず,当然のことである。


肝生検をCTガイド下又は腹腔鏡下において行うべき注意義務違反の有無
(原告らの主張)

生検に当たっては,目標とする部位を正確に穿刺し,穿刺経路で脈管や腸管を穿刺しないように注意し,合併症を防ぐ必要があり,そのためには,
穿刺針の先進部をリアルタイムに確認しながら行う穿刺法が安全である。そこで,エコーにて描出できる病変については,原則としてエコーガイド下で行うべきであるが,それができない場合にはCTガイド下での生検の適応となる。CTガイド下にて描出不能な死角は少なく,CT透視を用いるとリアルタイム性が向上し,穿刺の精度と安全性が向上する(以上につ
き甲B9)。
なお,被告病院では,CTガイド下での生検を行うことができる(甲C9)。

また,肝生検では,腹腔鏡下に肝表面を直接観察して行う方法もあり,シルバーマン針により十分な量の組織を安全に得られるため,エコーガイ
ド下よりも診断精度が大幅に向上する。腹腔鏡下では,病変部を直視できること,直視下で生検ができること,侵襲的検査法とはいえ,反復して検査を行うことが可能で,腹腔内病変の経過観察,治療効果判定にも応用できることなどの利点がある(以上につき甲B5,7)。

上記⑴の原告らの主張のとおり,本件肝生検においては,エコーガイド下で肺臓,肝臓その他の臓器を十分に描出し,視認することができない状態であったのであるから,E医師においては,原告Aに対して肝生検を実施するに当たっては,誤穿刺の危険性を可及的に低減させるため,エコーガイド下での肝生検ではなく,CTガイド下又は腹腔鏡下での肝生検を行
うべき注意義務があった。
それにもかかわらず,E医師は,エコーガイド下で本件肝生検を行った注意義務違反がある。
(被告等の主張)

現在の臨床現場での肝生検は,エコーガイド下が第1選択(原則)であり,例外的に,腹腔鏡下で実施されているにすぎない。腹腔鏡下での肝生検は,侵襲性が高く,超肥満を禁忌として挙げる文献もあるなど,原告A
に選択すべき方法とはいい難い(以上につき乙B1,2,丙B1から15まで)。
また,CTガイド下による肝生検は,術者と患者への被爆リスクが避けられないこと,解像度がエコーに劣ることも多いことから,最近の医療機関においては行われていないのが実情である。

被告病院を含む4病院(乙A2,3)では,肝生検をエコーガイド下で実施しており,CTガイド下や腹腔鏡下では実施していない。

上記アの事情に加え,エコーガイド下での肝生検を実施できるか否かの判断基準は,肝臓の被膜及び表面が描出されること,肝臓に肺が被らないこと,門脈や肝静脈を含む血管走行がある程度把握できること,解剖学的
に位置関係が把握できることなどであるところ,上記⑴の被告等の主張のとおり,本件肝生検におけるエコーガイド下の描出,視認に問題はなかったことからすれば,E医師において,本件肝生検をCTガイド下又は腹腔鏡下で行うべき注意義務があったということはできず,本件肝生検をエコーガイド下で実施したことは注意義務違反には当たらない。


仮に本件肝生検において肺組織への誤穿刺があったとしても,脳の空気塞栓が生じる確率は直接的に肺組織を狙う肺生検においてさえ0.061%と報告されており(丙B18),肝生検において下記⑷の原告らの主張アの機序によって脳の空気塞栓が生じる可能性は更に低くまれなことで
あるから,これを予見することはほとんど不可能であり,原告Aにとっては極めて不幸な偶然が重なったというほかない。


盲目的な穿刺を避けるべき注意義務違反の有無

(原告らの主張)
十分に臓器が描出できない状態で盲目的に穿刺してはならないというのは,自明の医学的知見である。
したがって,E医師においては,エコーガイド下で本件肝生検を実施する
に当たり,肺臓その他の周辺臓器を誤穿刺することがないようにするため,肺臓,肝臓その他の臓器を十分に描出できない状況では盲目的な穿刺をしてはならない注意義務を負っていた。
それにもかかわらず,E医師は,上記⑴の原告らの主張のとおり,これを漫然と怠り,本件肝生検において盲目的に5回もの穿刺を実施した。
(被告等の主張)
上記⑴の被告等の主張のとおり,本件肝生検におけるエコーガイド下の描出,視認に問題はなく,E医師が盲目的な穿刺をしたという事実は存しない。⑷
因果関係の有無

(原告らの主張)

本件肝生検のために穿刺した穿刺針が,原告Aの右肺に達して,肺静脈の血管壁を損傷し,血流による陰圧のために損傷部位から血液中に気泡が混入し,これが血流に乗って心臓に行き,拍動によって末梢へと進展し,右脳の血管を塞栓した(空気塞栓)。これにより,同血管が栄養する右半球の脳実質が損傷し,左半身に片麻痺の後遺障害が残存した。


仮にCTガイド下での肝生検を実施していれば,肺臓,肝臓,脂肪等を明確に判別することができ,肝臓を正しく穿刺することができたはずであるから,肺や肺静脈を誤穿刺することはなかった。
また,仮に腹腔鏡下での肝生検を実施していれば,直視下に肝臓を穿刺
することができたはずであるから,肺や肺静脈を誤穿刺することはなかった。

エコーガイド下での肝生検を実施するとしても,肺臓,肝臓,脂肪等の位置関係を十分に視認できない状態での盲目的な穿刺を行うことがなければ,肺静脈を損傷させることはなかった。

(被告等の主張)

原告らの主張ア記載の機序については,穿刺針により損傷した箇所は,肺静脈の血管壁でなく,正確には肺静脈の細い末梢の分枝(肺静脈微小循環系血管)である。その他の機序については,必ずしも明らかでないものの認める。




原告らの主張イ及びウ記載の因果関係は,否認する。
損害及びその額

(原告らの主張)

原告Aの症状固定日(12月26日)までの損害
(ア)入院費

114万5192円

なお,平成28年10月以降の入院費のうち,桶川市の重度心身障害者に対する助成制度(以下本件助成制度という。)に基づいて償還を受けた分は除外している。
a
被告病院分

113万8402円

b
cリハビリテーションセンター分

(イ)入院慰謝料
6790円
413万0533円

退院予定日(1月15日)の翌日である同月16日から症状固定日(12月26日)までの入院日数が346日であることに加え,原告Aの後遺障害の内容及び程度に鑑みると,原告Aの入院慰謝料としては少なくとも上記金額が相当である。
(ウ)入院雑費

51万9000円

退院予定日の翌日から症状固定日までの入院日数は346日であり,入院雑費は,日額1500円として上記金額となる。
(エ)付添看護費

227万5000円

本件肝生検の実施日(1月12日)から退院日(12月26日)までの原告Aが入院した全ての日(350日)について,原告Bらの少なくとも一人が原告Aに付き添っており,付添看護費は,日額6500円として計算した上記金額を下らない。

なお,被告等は,付添日数等を争うが,被告病院守衛室備付けの帳簿等を確認すれば明らかとなるので,これを提出するか,存在しないのであればその理由を釈明されたい。
(オ)付添交通費

10万5700円

上記(エ)の付添い1回当たりの交通費は,ガソリン代102円(原告
Bの自宅から被告病院までの往復距離は6.8kmで,1km当たり15円)及び駐車場代200円の合計302円であるから,350日分の付添交通費は上記金額となる。
(カ)休業損害

356万6454円

原告Aは,本件肝生検の前は家事労働に従事していたところ,本件肝
生検により,入院加療を要する状態に陥り,退院予定日以降も症状固定日までの346日間,家事労働を行うことができない状態が続いた。原告Aの休業損害は,基礎収入を平成28年賃金センサス女子労働者(産業計,企業規模計,学歴計)の全年齢平均年収376万2300円として,次の計算式により上記金額となる。

(計算式)376万2300円÷365日×346日

原告Aの症状固定日後の損害
(ア)後遺障害慰謝料

2800万円

原告Aは,上記⑵ないし⑶の注意義務違反により,左片麻痺及び感覚障害が残り,左上肢は一部支持手,左下肢は跛行にて杖歩行の状態となった。原告Aは,脳の障害のために介護を要することは明らかであるから,その後遺障害の程度は,自動車損害賠償保障法施行令別表第1の等級2級以上に該当する。なお,原告Aは,現在までの間に,左上肢の廃用,拘縮が進んでおり,平成28年9月30日付けの身体障害者診断書・意見書(肢体不自由用)(甲A9)の記載は,症状固定時ないし現在の原告Aの状態を反映したものではない。
原告Aは,このように重篤な後遺障害を終生背負うことを余儀なくされ,極めて強い精神的苦痛に苛まれていることに加え,上記注意義務違反が重大であることからすれば,原告Aの後遺障害慰謝料は上記金額を下らない。

(イ)逸失利益

3724万1503円

上記ア(カ)のとおり,原告Aは家事労働に従事しており,基礎収入は376万2300円であり,上記(ア)の後遺障害による労働能力喪失率は100%,労働能力喪失期間は14年(症状固定時年齢62歳であり,平均余命27.09年のおおむね2分の1に相当する。)として,原告Aの逸失利益は,次の計算式により上記金額となる。
なお,被告等は,原告Aについて,家事は全般的に高次脳機能障害により介助が必要である旨主張しているが,この主張によれば,原告Aの労働能力喪失率は100%となる。
(計算式)376万2300円×100%×9.8986(14年に対
応するライプニッツ係数)
(ウ)将来医療費

301万2333円

令和元年6月末日までの分は,本件助成制度から償還を得,又は得る予定であることから請求しない。同年7月9日に口頭弁論が終結するものと想定して同月1日以降の分について請求するところ,原告Aは,現在もなお被告病院の総合内科及び神経内科の外来受診をしており,平成30年の年間の医療費(ただし,社会保険による給付を含む額)は,24万3880円であった。そして,この状態は,口頭弁論終結時以降も平均余命に達するまでの約24.5年(症状固定時の平均余命約27年から,症状固定時から口頭弁論終結時までの約2.5年を控除した年数)にわたって継続することが見込まれるから,原告Aの将来医療費は,次の計算式により上記金額となる。
なお,被告等は,将来医療費の算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,我が国の財政が逼迫している現在において,第三者による傷病の医療費を公費をもって填補するというのは,到底世人の理解を得られるものではない。

(計算式)24万3880円×12.3517(27年のライプニッツ係数と2.5年のライプニッツ係数との差)
(エ)将来通院交通費
a
2万7515円

12月27日から令和元年6月末日まで

5134円

上記ア(オ)のとおり,被告病院への通院1回当たりの交通費は,ガソリン代及び駐車場代の合計302円となり,上記の期間,少なくと
も17回通院しているから,これに要した通院交通費は,上記金額となる。
b
令和元年7月1日以降

2万2381円

原告Aは平成30年の1年間に6回通院しており,通院交通費年額は1812円となり,上記(ウ)と同様に口頭弁論終結想定時以降も平均余命に達するまでの約24.5年にわたって通院が継続することが見込まれるから,原告Aの令和元年7月1日以降の将来通院交通費は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)1812円×12.3517(27年のライプニッツ係数
と2.5年のライプニッツ係数との差)
(オ)将来リハビリ費

753万3459円
a
12月27日から令和元年6月末日まで(実費分)13万1913円
b
令和元年7月1日以降

740万1546円

原告Aは,現在もなお,上記(ウ)とは別に,身体機能を維持し,なるべく向上させるために,施設に通所して歩行訓練をするなどのリハビリテーションを行っており,平成30年6月から令和元年5月までの1年間のリハビリ費用(ただし,社会保険による給付を含む額)は,少なくとも59万9233円であった。そして,原告Aは,上記リハビリテーションをしないと拘縮等により徐々に機能が低下して最終的には廃用しかねない状態であり,これは,上記(ウ)と同様に口頭弁論
終結想定時以降も平均余命に達するまでの約24.5年にわたって継続することが見込まれるから,原告Aの令和元年7月1日以降の将来リハビリ費は,次の計算式により上記金額となる。
なお,被告等は,将来リハビリの算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,上記(ウ)と同様,到底世人の理解を得
られるものではない。
(計算式)59万9233円×12.3517(27年のライプニッツ係数と2.5年のライプニッツ係数との差)
(カ)将来介護費

8022万5336円

原告Aは,上記(ア)の後遺障害の内容及び程度等からすれば,平均余命年数である27年にわたって,少なくとも随時他人の介護を要する状況にあることは明らかであり,介護費用日額は1万5000円を下らず,原告Aの将来介護費は,次の計算式により上記金額となる。
なお,現在,原告Aは主として原告Bによる介護を受けているが,これは,本来有償である介護を原告Bが夫婦の情誼ゆえに無償で提供して
いるにすぎないし,原告Bは現在69歳と高齢であり,早晩外注することを予定しているから,上記金額の出捐をすることが現実的に見込まれる。
(計算式)1万5000円×365.25日×14.6430(27年に対応するライプニッツ係数)
(キ)将来雑費

802万2534円

原告Aが症状固定後に医療及び介護等を受けるために要する種々の雑
費は日額1500円とするのが相当であり,平均余命期間である27年の将来雑費は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)1500円×365.25日×14.6430(27年に対応するライプニッツ係数)
(ク)将来補装具等費用
a
328万2897円

12月27日から令和元年6月末日まで

5万9550円

(a)コンパクト折りたたみシャワーベンチIC(背付)

2000円

(b)浴槽台ソフト

1900円

(c)特殊寝台

2万8050円

(d)特殊寝台付属品(サイドレール)

1350円

(e)同

5400円

(プレグラーマット)

(f)車椅子

1万2500円

(g)杖及びマット
b
8350円

令和元年7月1日以降

322万3347円

(a)コンパクト折りたたみシャワーベンチIC(背付)
3万6130円
コンパクト折りたたみシャワーベンチIC(背付)の購入費用は
一台当たり2万1600円であり,耐用年数は8年であるところ,平成28年に1台購入しており,口頭弁論終結想定時から平均余命
に達するまでの約24.5年の間に,口頭弁論終結想定時から5年後,13年後,21年後の計3回買い換える必要があるから,同ベンチの将来購入費用は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)2万1600円×1.6727(5年,13年,21年に相当するライプニッツ係数の和)
(b)浴槽台ソフト
3万4324円

浴槽台ソフトの購入費用は一台当たり2万0520円であり,耐
用年数は8年であるところ,平成28年に1台購入しており,平均余命に達するまで上記(a)と同様に計3回買い換える必要があるから,同ソフトの将来購入費用は,次の計算式により上記金額となる。(計算式)2万0520円×1.6727(5年,13年,21年に相当するライプニッツ係数の和)

(c)電動車椅子

123万1116円

電動車椅子の購入費用は一台当たり40万6510円であり,耐
用年数は6年であるところ,口頭弁論終結想定時までに購入し,その後平均余命に達するまでの約24.5年の間に計4回買い換える必要があるから,同車椅子の将来購入費用は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)40万6510円×(1+2.0285(6年,12年,18年,24年に相当するライプニッツ係数の和))
(d)杖

14万3132円

杖の購入費用は一本当たり4万4712円であり,耐用年数は4
年であるところ,平成29年に1本購入しており,平均余命に達するまで計6回買い換える必要があるから,杖の将来購入費用は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)4万4712円×3.2012(4年,8年,12年,
16年,20年,24年に相当するライプニッツ係数の
和)
(e)特殊寝台及び付属品(サイドレール及びプレグラーマット)177万8645円
特殊寝台及び付属品(サイドレール及びプレグラーマット)は貸
与により調達するところ,これらの貸与費用は年間14万4000円であり,口頭弁論終結想定時以降平均余命に達するまでの約24.5年にわたって同額の出捐が継続することが見込まれるから,原告Aの上記貸与費用の将来費用は,次の計算式により上記金額となる。(計算式)14万4000円×12.3517(27年のライプニッツ係数と2.5年のライプニッツ係数との差)

なお,被告等は,上記(a)から(e)までの将来補装具等費用の算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,上記(ウ)と同様,到底世人の理解を得られるものではない。
(ケ)将来家屋改造費

225万8636円

原告Aは,終生,介護を受けつつ車椅子を用いて生活せざるを得ないため,これが可能な状態に自宅を改造する必要がある。既に,玄関先の段差を解消するために,土間のコンクリート打設をした(40万7160円)ほか,原告Bが,その職能を発揮して,廊下の段差を解消し手すりを設置する工事を自ら行っており,これを外注した場合に要する13万円の出捐があったものとみるべきである。

また,少なくとも,四肢麻痺である原告Aの入浴時の転倒の危険性を低減させるために,浴槽等を交換し,併せて洗面所を改修する必要があり,これに要する費用172万1476円の出捐が確実である。
(コ)将来自動車調達費

1396万1506円

原告Aは,終生,車椅子を用いて生活せざるを得ず,近い将来,福祉車両を購入する必要がある。当該車両の代金は一台当たり461万0040円であり,法定耐用年数は6年であるから,平均余命に達するまでの買替必要回数は4回となる。そうすると,将来自動車調達費は,次の計算式により上記金額となる。
(計算式)461万0040円×(1+2.0285(6年,12年,18年,24年に相当するライプニッツ係数の和))

原告Aのその他の損害
(ア)医療記録開示費用

6万0264円

(イ)弁護士費用

原告Aの損害の合計


1953万6786円
2億1490万4648円

原告Bの損害
(ア)近親者固有の慰謝料

500万円

原告Bは,将来に不安を抱きながら老いてなお妻である原告Aの介護に当たらなければならず,極めて強い精神的苦痛に苛まれており,その固有の慰謝料は上記金額を下らない。
(イ)弁護士費用

50万円

(ウ)合計


550万円

原告C及び原告Dの損害
(ア)近親者固有の慰謝料

各100万円

原告C及び原告Dは,母である原告Aが上記イ(ア)の後遺障害を負ったことにより強い精神的苦痛に苛まれており,その固有の慰謝料は上記金額を下らない。

(イ)弁護士費用

各10万円

(ウ)合計

各110万円

(被告等の主張)
上記原告ら主張ウ(ア)の医療記録開示費用は認め,その余については,次のとおり主張するほか,いずれも争う。

付添看護費
原告Bは,夕方の食事時間はほぼ毎日来院していたが,面会日誌等の記録はなく,来院時には,2~3時間,夕食の食事介助,トイレ介助等をしていたにとどまるのであって,付添看護費は,正確な来院日数及び看護時間等に基づいて計算されるべきである。

原告Aの後遺障害等
原告Aの後遺障害は,左上肢の機能の著しい障害につき,身体障害者福祉法別表の3級に当たり,左下肢の軽度の障害につき,同表の7級に当たり,これらを総合すると3級相当となる。これを後遺障害等級に当てはめた場合,左上肢の機能の著しい障害は後遺障害等級7級9号に相当し,左下肢の軽度の障害を併合してこれを繰り上げたとしても,後遺障害等級が
1級ないし2級となる余地はない。そして,平成28年9月30日付けの身体障害者診断書・意見書(肢体不自由用)(甲A9)の記載によれば,原告Aは,相当程度自立した日常生活能力があるといえる。また,原告Aは,食事摂取やトイレ動作は自立できており,更衣及び入浴動作に介助が必要であるにすぎない。

したがって,原告Aの後遺障害慰謝料は2219万円を超えず,同原告が労働能力を全て喪失したものとは評価できないし,原告Aの将来介護費用及び原告Bらの近親者固有の慰謝料が認められるものとはいえない。また,原告らが主張するような高額な自動車の購入は不要であると考えられる。


将来医療費について
原告Aの将来医療費に係る損害額は,社会保険(医療保険)に基づく自己負担割合により計算された金額とされるべきである。


将来リハビリ費について
介護保険によりデイサービスを利用する場合,1回の自己負担額は590円であり,これを基に原告Aの将来リハビリ費の損害額を算出すべきである。

将来補装具等費用について
原告ら主張の将来補装具等費用に関する補装具は,介護保険を利用して購入ないし貸与することが可能であるから,原告Aの同費用に係る損害額は,介護保険に基づく自己負担割合により計算された金額とされるべきで
ある。
また,電動車椅子については,被告病院のリハビリテーションセンター職員により,原告Aに高次脳機能障害及び注意障害があり,安全に使用できないため必要ないと報告されている。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
前記第2の1の前提事実のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


被告病院における本件肝生検までの経緯等について

原告Aは,前記第2の1⑵ア及びイの経緯を経て,平成28年1月12日(当時61歳),肝硬変ないし非アルコール性脂肪性肝炎につき,肝臓の組織学的な状態を把握した上で治療方針を決定する目的で肝生検を受けるため,原告Bに付き添われて被告病院に入院した。入院前の時点では,入院期間は4日間(同月15日まで)の予定であった。

(甲A4,5,12,乙A1,証人E医師,原告A本人)

1月12日午前11時13分頃,原告Aに対し,本件肝生検のための局所麻酔が行われ,午前11時20分頃から,E医師によるエコーガイド下での肝生検(本件肝生検)が開始された。これに先立ち,G看護師が,本件肝生検の同意書が作成されていないことに気付き,E医師にその旨指摘
した。そのため,本件肝生検前に原告Aの署名を得ようと同意書の書式の準備がされたが,その時点で,既に原告Aが本件肝生検のために左半身を下とする半側臥位の体位を取っており,その体位のままでは署名ができない状態であった。そして,原告Aが,検査後に署名する旨申し出たこともあり,そのまま本件肝生検が行われることとなった。
本件肝生検において,F技師は,画像モニターの前に座り,原告Aの腹部に肋間からプローブを当てるなどして,腹部エコーを実施した。E医師
は,F技師越しに画像モニターを見る位置に立ち,G看護師から手渡された生検針を用いて,本件肝生検を行った。
一方,G看護師は,原告Aの血圧の他,出血,疼痛,嘔気,ショックの有無等を確認し,穿刺の状況等と共に,これらを肝生検・PEIT・RFA施行中観察表(甲A6と同じ用紙)に記載していった。G看護師は,
当日になって本件肝生検を担当することが決まり,本件肝生検中,他に担当していた重症患者の状況確認を行うこともあった。
(甲A6,乙A1,4,丙A3,7,証人E医師,同F技師,同G看護師)ウ
E医師は,本件肝生検において5回の穿刺を行った。1回目の穿刺は,18Gの生検針で行われたが,検体採取のための作動ボタンを押す前に中止され,2回目の穿刺は,16Gの生検針で行われ,作動ボタンは押されたが,検体は採取できなかった。3回目に再度16Gの生検針で穿刺をした際,検体を採取することができた。しかし,採取された組織が病理検査上十分なものか疑問があったため,更に18Gの生検針で4回目の穿刺が
行われ,作動ボタンが押されたが,検体は採取できず,5回目の18Gの生検針による穿刺で,再び検体を採取することができ,午前11時30分過ぎ頃,本件肝生検は終了となった。
この間,G看護師は,原告Aの頭側に立ち,原告Aの様子を観察したり声掛けをしたりしながら,肝生検・PEIT・RFA施行中観察表に
原告Aの血圧等の所見や本件肝生検の経過をメモしていたほか,本件肝生検に使用する生検針を封入された袋から取り出しE医師に渡す作業をしていた。原告Aの血圧は,施術前は収縮期圧が140~150mmHg程度,拡張期圧が70mmHg台(以下,血圧の単位は省略する。)であったが,本件肝生検中は,収縮期圧が200前後,拡張期圧が100以上と,顕著な高血圧となっていた。また,本件肝生検においては,E医師ないしF技師において,原告Aに対し,まず,生検針を皮膚から穿刺する際に呼吸を
止めるよう指示し,生検針が肝被膜まで到達し組織採取のための作動ボタンを押す段階において,再度,呼吸を止めるよう指示がされた。
(甲A6,証人E医師,同F技師,同G看護師)

本件肝生検後の経過等について

1月12日午前11時35分頃,出血の有無の確認等を終え,原告Aの体位を半側臥位から仰臥位に戻そうとしたところ,原告Aは,

咳が出る。苦しい。

旨訴えて2回程咳をした後,急激に意識を喪失し,徐脈となるなどした。当初,急変の原因が分からず,循環器内科医を呼んで検査等がされるなどしたが,意識障害は遷延し,原告Aは,ICUに入室して,酸素投与等の治療等の他,頭部CT検査等がされることとなった。

原告Aの急変を受け,G看護師は,看護師長から,本件肝生検の経過等を記載した上記⑴ウのメモについて,分かりやすく書き直すよう指示を受けたため,自分の記憶が不十分なところをE医師に確認しながら,同メモを清書する形で,1月12日正午頃までには本件観察表(甲A6)を書き上げた。

(甲A6,7,乙A1,証人G看護師)

1月12日午後10時4分頃,原告Aを診察した神経内科医は,原告Aについて,開眼するも痛み刺激に対する反射的な反応のみ,右への共同偏視,左顔面神経麻痺,左側優位の四肢麻痺,上肢は右優位,下肢は両側の
痙直,左下肢の規則的かつ持続的な不随意運動ないし強直性痙攣等を確認し,両側性広範囲の虚血又は低酸素暴露後の一部改善を伴う,大脳びまん性障害遷延等と診断した。
その後,原告Aは,翌13日にかけて,左上下肢の痙攣が続き,全身性の痙攣が生じることもあり,SpO2が70%台にまで低下するなどして酸素投与等が必要な状態となることもあった。意識レベルは,JCSⅢ200~300の状態が続いた。神経内科医は,同日午前10時頃,原告A
につき,空気塞栓が脳動脈に到達した可能性が高い,低酸素脳症後の通過症候群である,本日の頭部CTでは空気所見は消失しているが,全体的に右脳主体の脳回不明瞭,皮髄境界不明瞭化が強くなっており,びまん性脳浮腫の所見ととれる,今後の予後は,痙攣コントロールがうまくいくかどうか,脳細胞の傷害性変化をどこまで食い止められるかによる,低体温療
法の可否も検討するなどとする所見をまとめた。そして,同日午後,原告Aに低体温療法が開始された。
(乙A1)

1月14日までに,本件肝生検により採取した検体の病理組織検査の結果が明らかとなった。それによれば,上記検体には,肺組織が認められる一方,肝実質は同定されなかった。
E医師は,1月13日夕方に被告病院で開かれた原因検討等のための会議の結果及び上記病理組織検査の結果を受け,同月14日,原告Bらに対し,説明文書を示しながら病状説明を行った。この際,E医師は,被告病
院内において検討した結果として,原告Aについて,肝臓と肺が近接していることから,本件肝生検で肺を穿刺し,肺胞を傷つけた可能性が考えられ,肺組織損傷による空気塞栓が生じたものとみられる旨説明した。なお,上記説明文書には,肺を誤穿刺した原因ないし理由については記載されていない。

また,1月16日にも,E医師は,原告Bら等に対し,本件肝生検,原告Aの病状等に関する説明をした。その内容を記録した看護記録には,

穿刺時の説明をするが,空気を吸うと肺が肝臓の方に下がる。穿刺時には呼吸を止められないので,吸気時の中間ぐいで行う。

肝硬変になると肝臓の皮膜は1~2cmぐらいの厚さになっていて硬くなっている。皮膜に厚みがあって刺さらなかった。同じ場所から刺したが16Gで肋間に当たってしまったので,18Gに替えておこなった。

との記載がある。
(甲A7,8,12,乙A1,5,証人E医師)

cリハビリテーションセンターの神経内科の医師は,9月30日,原告Aにつき,本件肝生検時に空気塞栓による意識障害及び左片麻痺が発症し,被告病院でリハビリテーションを施行したものの,左片麻痺は重度に残遺したとして,障害名を左半身不随,原因となった疾病を空気塞栓性脳梗塞,総合所見を左上肢機能の著しい障害,左下肢の軽度の障害などと診断した上,身体障害者福祉法別表の障害に該当し,3級相当(左上肢は3級,左下肢は7級)である旨の身体障害者診断書・意見書(肢体不自由用)を作成した。上記意見書においては,神経学的所見等として,左半身に感覚鈍麻及び
痙性麻痺があり,握力は右25kgに対して左12kgとされている。また,日常生活動作について,手すりを使用して立つことは可能(起立位の持続可能時間は10分),壁伝いであれば屋内の移動は可能(歩行能力の程度は30m)だが,屋外(家の周辺程度)の移動は半介助が必要であり,排せつの後始末,はしで食事をする,シャツやズボンを着脱することなど
は自立と評価されるが,背中を洗うこと及び二階まで手すりを使って階段を上り下りすることは半介助と評価され,タオルを絞ること及び公共交通機関を利用することは全介助又は不能と評価されている。
(甲A9)

原告Aは,12月26日までの間,被告病院での入院を継続し,治療及びリハビリを受けていたが,同日,被告病院を退院した。退院に当たり,被告病院の神経内科医は,原告Aにつき,右脳梗塞(空気塞栓症)による左片麻痺と感覚障害が残存し,左上肢は一部支持手,左下肢は跛行にて杖歩行の状態で,麻痺症状は固定した旨診断した。
(甲A10,乙A1)

原告Aは,被告病院退院後も,現在まで,2箇月に1回程度被告病院に通院し,E医師の診察や検査を受けている。また,週に2回程度,桶川市所在のリハビリ施設において,体を動かすなどして機能を維持ないし回復するためのリハビリを受けている(なお,介護保険における原告Aの介護度は要介護2である。)。
現在の原告Aの状態について,被告病院においては,高次脳機能障害を
認めているほか,左上肢が痙性麻痺により拘縮して機能が全廃の状況であり,左下肢の麻痺は軽度で不十分ではあるが自ら動かすことができ,屋内移動はT字杖で歩行自立,屋外移動は車椅子を利用している,その他の日常生活動作については,起居はベッドの手すりを利用すれば自立しており,食事や排泄も自立しているが,更衣及び入浴には介助が必要で,家事全般
についても介助が必要であるなどと認識している。
現在,原告Bが原告Aと同居し,必要な介助を行っている。
(甲A11,12,C23の1から17まで,原告A本人,原告B本人)2
争点⑴(原告Aに対する肝生検の手技の経過)について⑴

5回の穿刺で使用された生検針の種類等について

被告等は,1回目の穿刺は16Gの生検針を使用し,肋軟骨に当たり肋間隙を通過しなかったため,2回目以降はより細い18Gの生検針を使用して穿刺をした旨主張し,E医師は,これに沿う陳述(乙A6,丙A1,3,4,6)及び証言をする。他方,本件観察表は,1回目は18Gの,
2回目は16Gの生検針が使用されたとするなど,被告等の上記主張と反する記載となっている。

この点,16Gと18Gの生検針の外径差が最大0.45mmしかないことを考慮すれば,肋間隙を通過させるために使用する生検針を16Gから18Gに替えたというのは,直ちに首肯し難い。他方,本件観察表は,上記1⑵ア認定のとおり,本件肝生検終了直後の1月12日正午頃には作
成済みとなっていたのであり,しかも,作成過程で,G看護師は,E医師に,自分の記憶が不十分なところを確認したというのであるから,その記載には原則として信用性があると認められる。G看護師の陳述(丙A7)や証言には,本件観察表の記載には誤りがあり得るとする部分があるが,G看護師によれば,E医師には,ここが何ゲージ,例えば3番目何ゲージ使いましたかというような形で聞いた,確認はしました(G看護師の証人調書15~16頁)というのであり,これは,被告等が主張する経緯,すなわち,1回目のみ18Gで,2回目以降全て16Gの生検針が使用されたとすれば不自然な確認の仕方であるといえる。また,G看護師は,記憶に自信がないということの趣旨について,私が最初に針を,先生に渡したりするので何ゲージをあけたというのは最初に,これをあけたなという認識があるつもりだったので,それをもとに書いたんですけど,ただ,その針を最初に使ったかどうかというところまではちょっと自信がないということで。と説明しているところ(同証人調書17頁),この説明と本件観察表の記載によれば,G看護師は,1回目の穿刺のために18Gの
生検針をE医師に渡したことになるが,被告等の主張する経緯が正しいとすると,E医師は,その生検針による穿刺をしないまま,16Gの生検針を要求したということになる。しかし,そのような不自然な経緯があれば,G看護師が直後の時点で覚えていないことは考え難い。G看護師は,飽くまで証言時点で記憶がない旨の証言もしている(同証人調書2頁)ことを
も考慮すれば,G看護師の陳述や証言に本件観察表の記載に誤りがあり得るとする部分があることにかかわらず,本件観察表の記載の信用性を認めることができるというべきであり,翻って,これに反するE医師の上記陳述及び証言は,採用することができないというべきである。なお,本件観察表の記載どおりの経緯であったとして,生検針を2度替えたことの理由を推測すると,2回目に16Gにしたのは,18Gの生検針で穿刺してみたところ,原告Aの肝生検にはより太い16Gの生検針が相当と考えて切
り替えたもので,4回目に18Gに戻したのは,3回目に検体が採取できたものの,十分な検体が採取できたか不明であったため,改めて針を替え,最初に使用した18Gの生検針での検体採取を試みたといったことが考えられる。

上記イによれば,上記アのE医師の陳述及び証言により,同アの被告等の主張する経緯を認めることはできない。上記1⑵ウ認定のとおり,1月16日のE医師による原告Bら等への説明内容についての看護記録に,

16Gで肋間に当たってしまったので,18Gに替えておこなった。

との記載があるが,これは,この認定判断を左右するものとはいえない。他に上記被告等の主張する経緯を認めるに足りる証拠はない。



肺誤穿刺の原因等について

被告等は,本件肝生検でのエコー画像は,肝臓が全体的に見えづらかったものの,肝被膜及び肝臓内の脈管は確認することができる状態であったとし,本件肝生検における穿刺の回数が5回にわたり,原告Aの肺を誤穿刺するに至ったことには合理的な理由,すなわち,5回目の穿刺において,
E医師ないしF技師が2度にわたって息を止めるように指示したにもかかわらず,原告Aが深く息を吸って肺が下方に移動したからである旨主張し,E医師及びF技師は,いずれもこれに沿う陳述(乙A6,丙A1から4まで,6)及び証言をする。

しかし,そもそも,5回目の穿刺時に原告Aが指示に反して吸気したことが誤穿刺の原因として認識ないし検討された旨は,被告病院の医療記録中には存在しない。F技師は,5回目の穿刺時に原告Aが指示に反して吸気したのを現認し,その旨を,検体から肺組織が見つかったという結果が分かった後に,医療安全室の担当医師にも伝えた旨証言しているが(F技師の証人調書13頁,22~23頁),これが事実であれば,被告病院の医療記録中にこれに関する記載が存在しないのは不合理といえる。また,F技師は,5回目の穿刺時における原告Aの吸気について,当初,5回目の穿刺直後に,E医師に,肺を穿刺していないか確認した旨明言していたのに(同証人調書12~13頁),その後,原告Aの上記吸気をE医師に伝えた時期については記憶が定かでない旨証言している(同証人調書23
頁)。さらに,F技師が陳述ないし証言するとおり,原告Aが指示に反して吸気をしたため慌てて呼吸停止を指示したとすれば,通常よりも強い指示であったと考えられ,その場にいた者は,何が起こったか確認したり,そのような出来事があったことを認識し,記憶したりするものと考えられるにもかかわらず,この点のE医師の証言は極めて曖昧であり(E医師の
証人調書10,11頁等),G看護師に至っては,そのような出来事の記憶はない旨証言している(G看護師の証人調書26頁)。
加えて,穿刺針が肝被膜の直前まで到達していたのだとすれば,穿刺針の発射と同時に原告Aが息を吸ったとしても,肺が,穿刺針を押しのけるのではなく,肺実質の採取可能な穿刺針の手前の位置まで下がったとは容
易に考え難い。なお,上記1⑵ウ認定のとおり,1月16日のE医師による原告Bら等への説明内容についての看護記録に,

穿刺時の説明をするが,空気を吸うと肺が肝臓の方に下がる。穿刺時には呼吸を止められないので,吸気時の中間ぐいで行う。

との記載があるが,これは,穿刺時の一般的な状況の説明と解され,上記アの被告等の主張に係る肺誤穿刺の原
因を説明したものと解することはできない。
こうした事情に加え,E医師の陳述及び証言については,上記⑴説示のとおり採用し得ない部分があることをも考慮すれば,上記アのE医師及びF技師の陳述及び証言により,上記アの被告等の主張を認めることはできないというべきであり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

上記イの認定判断に加え,前記第2の1⑶ア認定の医学的知見のとおり,エコーガイド下の肝生検は比較的安全とされており,肺穿刺は一般に肝生
検の合併症には挙げられておらず,平成5年発行の文献で肺穿刺の確率を0.0014%とするものがある程度であることのほか,F技師は,エコーガイド下での肝生検について,平均的な穿刺回数は2,3回で,本件肝生検は通常より1,2回は穿刺回数が多く,時間も少し長めにかかった旨証言していること(F技師の証人調書9,18頁),5回にわたる本件肝
生検において,結局,肝実質は全く採取できなかった上に,肺実質まで穿刺をしていること,そして,原告Aが極度の肥満体型で,本件肝硬度検査は,その皮下脂肪の厚さのために中止されたことなどの事情も考慮すれば,本件肝生検におけるエコー画像では,原告Aの肝臓その他の臓器が十分に描出,確認できる状態ではなく,そのために,肺を誤穿刺することになっ
たものと認めるのが相当である。これに反する被告等の主張は,いずれも採用することができない。
3
争点⑵及び⑶(注意義務違反の有無)について⑴

上記2の認定判断によれば,E医師は,本件肝生検におけるエコー画像では,原告Aの肝臓その他の臓器を十分に描出,確認できる状態ではなかったにもかかわらず,穿刺を繰り返したものと認められる。前記第2の1⑶アの医学的知見や同⑵ア及びイ認定の本件肝生検に至る経緯に照らし,このような状態で本件肝生検をあえて強行したことを正当化する事情を認めることはできないというべきであり,E医師による本件肝生検には,原告Aの肝臓の
位置が適切に確認できないにもかかわらず強行した注意義務違反があったと認められる(以下,この注意義務違反を本件過失という。)。


この点,被告等は,仮に肺組織への誤穿刺があったとしても,脳の空気塞栓症が生じる確率は,直接的に肺組織を狙う肺生検においてさえ0.061%と報告されており,肝生検においては更に低くまれなことであるから,これを予見することはほとんど不可能である旨主張する。
しかし,現実に発生する確率はともかく,肺を誤穿刺すれば血管内に空気
が入り込んで空気塞栓症が生じ得ること,その空気が血管内を循環し脳に至ることもあり得ることは,医学的に明らかといえる。前記第2の1⑶ア認定の医学的知見においても,肝生検の合併症として肺穿刺を挙げる文献があり,肺生検の合併症として空気塞栓を挙げる文献があることをも考慮すれば,万一,肺を誤穿刺した場合に,脳の空気塞栓症が発症し得ることにつき,予見
可能性がなかったとはいえず,被告等の上記主張は採用することができない。4
争点⑷(因果関係の有無)について
上記1及び2の認定判断によれば,上記1⑵カ認定の原告Aの後遺障害は,本件肝生検において原告Aの右肺が穿刺されたことにより生じた脳の空気塞栓症を原因とするものと認めるのが相当である。

そうすると,上記3認定の本件過失と原告Aの上記後遺障害との間の因果関係を認めることができる。
5
争点⑸(損害及びその額)について


原告Aの症状固定日(12月26日)までの損害

入院費

114万5192円

(ア)被告病院分

113万8402円

証拠(甲C17の1から12まで,C18)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件肝生検を受けた1月12日から症状固定日である12月26日までの間,被告病院における治療費として,138万9176円を負担する一方,本件助成制度に基づき,25万0774円の償還払いを受けたもので,差引113万8402円について,本件過失と相当因果関係のある損害と認められる。
(イ)cリハビリテーションセンター分

6790円

証拠(甲C10,10の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,9月26日及び10月4日,cリハビリテーションセンターを受診し,本件肝生検によって生じた脳空気塞栓症の症状に対するリハビリを行い,
6790円を負担したもので,これは本件過失と相当因果関係のある損害と認められる。

入院慰謝料

318万円

本件肝生検によって生じた原告Aの脳空気塞栓症の内容及び程度,その治療に要した入院期間等を考慮すると,原告Aの入院慰謝料として上記金
額を認めるのが相当である。

入院雑費

51万9000円

本件過失により必要となった原告Aの入院期間(1月16日から12月26日まで)である346日につき,日額1500円として,上記金額を認めるのが相当である。


付添看護費

224万9000円

上記1⑵認定のとおり,原告Aは,本件肝生検後,重篤な意識障害を発症し,左片麻痺の重い障害が固定化して12月26日に被告病院を退院したものである。そして,証拠(甲A12,乙A1)及び弁論の全趣旨によれば,この間,原告Bらのうち少なくとも1名は,被告病院に来院して原告Aの付添看護をしたものと認められるところ,原告Aの病状等を考慮すれば,上記付添看護については,その必要性があったと認められる。もっとも,上記1⑴ア認定のとおり,原告Bは,1月12日の原告Aの入院に際して,すなわち,本件肝生検の前に,原告Aに付き添って被告病
院を訪れていること,証拠(原告B本人)によれば,原告Bは,仕事が自営業のため,入院している原告Aに付き添うことが困難とはいえないと認められること,原告らは,提訴時においては,当初の入院予定期間については付添看護費の請求対象としていなかったことなどの事情を考慮すれば,当初の入院予定期間である4日間については,本件過失がなくても原告Bが付き添ったものと認めるのが相当といえ,この4日間の付添看護費を本件過失と相当因果関係のある損害と認めることはできない。なお,被告等
は,付添看護費については,正確な来院日数及び看護時間等に基づいて計算されるべきである旨主張するが,原告らの求釈明に対する応答態度等に照らし,採用することはできない。
そうすると,付添看護費については,1月16日から12月26日までの346日につき,日額を6500円として,上記金額を認めるのが相当
である。

付添交通費

10万4492円

証拠(甲C19,20)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bらは,上記エの入院期間のうち本件過失と相当因果関係のある付添看護を認め得る346日につき,交通費としてガソリン代3万5292円,被告病院の駐車
場代として6万9200円(1回あたり合計302円)を要したことが認められる。したがって,付添交通費としては,上記金額が認められる。カ
休業損害

297万5031円

上記1⑵認定の事実に加え,証拠(甲A11,12,原告A本人,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件肝生検前,自営業をしている夫の原告Bと同居し,専業主婦として家事労働に従事していたが,本件過失により,症状固定時(12月26日)まで,一切の家事労働ができなかったことが認められる。これによる損害は,基礎収入について,原告Aの当時の年齢等を考慮し,平成28年賃金センサス女子労働者(産業
計,企業規模計,学歴計)年齢別の平均年収313万8400円と認め,次の計算式により上記金額と認めるのが相当である(円未満切捨て。以下同じ。)。
(計算式)313万8400円÷365日×346日


原告Aの症状固定日後の損害

後遺障害慰謝料

2200万円

上記1⑵認定の事実によれば,原告Aは,本件過失により生じた脳空気
塞栓症により左片麻痺となり,現在においては,左上肢は痙性麻痺による拘縮のため機能全廃の状況であり,左下肢については,麻痺は軽度であるものの,屋内を杖歩行できる程度であり,高次脳機能障害もあって,日常生活動作について随時介護を要する状況であると認められる。このような原告Aの後遺障害の程度は,自動車損害賠償保障法施行令別表第1の等級
2級に該当するものと認めるのが相当である。
そして,このような原告Aの後遺障害の内容及び程度等を考慮すると,後遺障害慰謝料として上記金額を認めるのが相当である。
被告等は,原告Aの後遺障害等級は左上肢につき7級9号相当で,左下肢の軽度の障害を考慮しても,1級や2級になる余地はない旨主張するが,
等級認定における独自の見解をいうものないし原告Aの具体的障害内容について前提を誤るものであり,採用することができない。

逸失利益

2948万0874円

上記⑴カ及び上記ア認定の事実によれば,原告Aは,本件肝生検前,家事労働に従事していたところ,本件過失により生じた後遺障害のため,労働能力を100%喪失したものと認められる。これによる逸失利益は,基礎収入について上記⑴カ認定の313万8400円,労働能力喪失期間について,症状固定時において原告Aの年齢が62歳4月であり,平成28年簡易生命表によれば62歳女性の平均余命年数は27.09年とされて
いることなどから,13年と認めるのが相当である。
したがって,原告Aの逸失利益は,次の計算式により上記金額と認められる。
(計算式)313万8400円×100%×9.3936(13年に対応するライプニッツ係数)

将来医療費

274万1554円

上記1⑵カ認定の事実に加え,証拠(甲C18,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,症状固定後も,現在に至るまで,2箇月に1回程度,本件過失による後遺障害の治療ないし検査のため被告病院を外来受診していることが認められるところ,原告Aの後遺障害の内容及び程度等を考慮すれば,これらの外来受診には必要性があるとともに,今後も
同様の頻度で通院を継続する必要性があると認めるのが相当である。この将来の医療費のうち,口頭弁論終結日を含む月である令和元年11月分までについては,証拠(甲C18)及び弁論の全趣旨により,本件助成制度から償還を得たか,得る予定であると認められるので,原告Aの損害としては認められない。同年12月以降の将来医療費については,まず,
年間必要額について検討すると,証拠(甲C18,21の1から6まで)によれば,症状固定後の被告病院の受診に要した医療費が,平成29年は22万8000円(社会保険給付額を含むもの),平成30年は24万3880円(同),平成31年1月から令和元年6月までは10万1170円(同)であったと認められることから,23万円(同)と認めるのが相
当といえる。そして,同年12月以降の医療費を必要とする期間は,原告Aの症状固定時の平均余命期間にほぼ相当する27年から,症状固定時から同年11月までの期間にほぼ相当する3年を控除した24年と認めるのが相当である。
したがって,原告Aの損害と認められる将来医療費は,次の計算式によ
り上記金額と認められる。
(計算式)23万円×11.9198(27年のライプニッツ係数と3年のライプニッツ係数の差)
なお,被告等は,将来医療費の算出に当たり,社会保険による給付分を控除すべき旨主張するが,現在運用されている社会保険による給付内容やその水準が将来にわたり維持されることが確実であるとはいえないことなどから,口頭弁論終結後の分については,上記給付分を控除せずに算定す
るのが相当というべきである。

将来通院交通費

2万7336円

(ア)12月27日から令和元年11月末日まで

5738円

上記ウ説示のとおり,原告Aは症状固定後も通院を継続する必要があると認められ,1回当たりの通院交通費は,上記⑴オ認定のとおり合計
302円である。そして,証拠(甲C21の1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,症状固定後の12月27日から令和元年11月末日までの間に少なくとも19回,原告Bが運転する自家用車を利用して被告病院に通院したものと認められるから,上記の期間の通院交通費として,上記金額を要したものと認められる。

(イ)令和元年12月1日以降

2万1598円

上記ウ説示のとおり,原告Aは,令和元年12月以降も24年間にわたり,おおむね2箇月に1回の頻度で通院を継続する必要性があるといえるから,この期間の将来通院交通費は,次の計算式により上記金額と認められる。

(計算式)302円/回×6回/年×11.9198(27年のライプニッツ係数と3年のライプニッツ係数の差)

将来リハビリ費

690万4888円

(ア)12月27日から令和元年11月末日まで
16万0179円

上記1⑵カ認定の事実に加え,証拠(甲C22の1から10まで,C23の1から17まで)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,被告病院を退院後,週に2回程度,リハビリ施設において,体を動かすなどして機能を維持ないし回復するためのリハビリを受けており,平成29年2月1日から令和元年5月末日までのリハビリ費用は13万1913円(介護保険給付分控除後の自己負担額)であったことが認められるところ,原告Aの後遺障害の内容及び程度等を考慮すれば,これらのリハビリには必要性があるとともに,同年6月以降も同様の頻度でリハビリを受ける必要性があり,口頭弁論終結時を含む月である同年11月までは現にリハビリを受けたものと認めるのが相当である。
そして,令和元年6月から11月までのリハビリ費用については,平
成29年2月から令和元年5月までの期間の平均月額費用を考慮し,2万8266円(介護保険給付分控除後の自己負担額)と認めるのが相当である。
そうすると,上記金額が本件過失と相当因果関係のある損害と認められる。

(イ)令和元年12月1日以降

674万4709円

証拠(甲C22の1から10まで,C23の1から17まで)及び弁論の全趣旨によれば,平成29年2月から令和元年5月までに原告Aが受けたリハビリの介護保険上の総単位数は12万8191単位,1箇月当たり約4578単位であり,単位数当たりの料金は,平成29年が10.33円,平成30年から令和元年にかけては10.27円であったと認められる。この事実に加え,将来のリハビリ期間については上記ウと同様の理由により24年と認めるのが相当であることを考慮すれば,同年12月以降の原告Aのリハビリ費は,次の計算式により上記金額と認めるのが相当である。

(計算式)(4578単位×10.3円×12月)円×11.9198(27年のライプニッツ係数と3年のライプニッツ係数の差)
なお,被告等は,将来リハビリ費の算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,この主張を採用することができないことは,上記ウ説示のとおりである。

将来介護費

4275万7560円

上記1⑵カ及び上記ア認定の原告Aの後遺障害の内容及び程度等に加え,
証拠(甲A12,C1,原告B本人)によれば,現在は職業人による介護は利用しておらず,原告Bの希望としては,自分ができるうちは原告Aの介助を続けたいという意向を有しているものの,原告Bは,昭和25年1月◯日生まれで,原告Aの症状固定時には満66歳,当審口頭弁論終結時には満69歳であり,それほど遠くない時期に,職業介護人による介護に
移行する可能性が相当程度あると認められることなどを考慮すれば,将来介護費は,1日当たり8000円として,症状固定時からおおむね平均余命期間にわたる27年間について認めるのが相当である。
したがって,原告Aの将来介護費用は,次の計算式により,上記金額と認められる。

(計算式)8000円×365日×14.6430(27年に対応するライプニッツ係数)
なお,被告等は,将来介護費の算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,この主張を採用することができないことは,上記ウ説示のとおりである。


将来雑費

0円

原告Aにつき,将来介護の必要性が認められることは上記カのとおりであるが,その内容に照らせば,下記ク認定の項目以外の雑費が必要とは認め難く,原告らも将来雑費の具体的な内容を明らかにしていない。したがって,将来雑費を損害として認めることはできない。


将来補装具等費用

183万8074円
(ア)12月27日から令和元年11月末日まで

6万7570円

証拠(甲C12,13(枝番を含む。),14,24,27)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,①

平成28年12月26日に,入浴

補助具であるシャワーベンチ及び浴槽台(浴槽内に設置する吸盤付き台)を,平成29年1月27日に杖をそれぞれ購入し(なお,同日購入したマットについては,必要性に係る主張立証がない。),そのための費用として合計8370円を要したこと,②

平成28年12月から令和元

年11月までの間,特殊寝台及びその付属品を月額1200円(介護保険給付分控除後の自己負担額)で,平成29年4月から令和元年11月までの間,車椅子を月額500円(同)で,それぞれレンタルし,そのための費用として合計5万9200円を要したことが認められるところ,原告Aの後遺障害の内容及び程度等に照らせば,これらは本件過失と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
(イ)令和元年12月1日以降

a
177万0504円

シャワーベンチ,浴槽台

3万9475円

証拠(甲C25から27まで)及び弁論の全趣旨によれば,購入費用は一個当たりそれぞれ1万2000円,1万1600円,耐用年数はいずれも8年と認めるのが相当である(上記証拠に照らし,いわゆるメーカー希望小売価格で購入するものと認めることは相当とはいえない。)。そして,症状固定時の平均余命期間が約27年であること
などをも考慮すれば,これらの用具については,原告Aが平均余命に達するまでの間に4回買い換える必要があり,将来の購入費用は,次の計算式により上記金額と認めるのが相当である。
(計算式)2万3600円×1.6727(5年,13年,21年に対応する各ライプニッツ係数の和)

b
電動車椅子

0円
原告らは,今後電動車椅子を購入する旨主張するが,症状固定後約3年にわたり電動車椅子を利用していないこと,将来の介護費については,原告Bによる介護ができなくなる可能性を考慮して算定していること,原告Aが電動車椅子を操作し得ることを認めるに足りる証拠がなく,仮に操作し得るとしても,単身で外出し得る可能性を認める
に足りる証拠はなく,ひいて,電動車椅子の必要性を認めるに足りる証拠はないことなどの事情を考慮すれば,電動車椅子購入費用については,原告Aの損害と認めることはできない。
c杖
1万4578円

証拠(甲C12,29)及び弁論の全趣旨によれば,将来の購入費
用は一本当たり4554円(本体価格4140円+消費税10%。なお,この本体価格が,介護保険給付控除後の自己負担額であることを認めるに足りる証拠はない。),耐用年数は4年と認めるのが相当である。そして,症状固定時の平均余命期間が約27年であることなどをも考慮すれば,杖については,原告Aが平均余命に達するまでの間
に6回買い換える必要があり,将来の購入費用は,次の計算式により上記金額と認めるのが相当である。
(計算式)4554円×3.2012(4年から24年まで4年ごとの年数に対応する各ライプニッツ係数の和)
d
特殊寝台及びその付属品(サイドレール及びプレグラーマット)
171万6451円
上記(ア)認定のとおり,特殊寝台及びその付属品のレンタル費用は,介護保険給付控除後の自己負担額が月額1200円であることから,介護保険給付分を控除しない額としては,年間14万4000円と認
めるのが相当である。そして,原告Aの後遺障害の内容及び程度等,症状固定時の平均余命期間等を考慮し,令和元年12月以降も少なくとも27年間にわたり,特殊寝台及びその付属品のレンタルを継続する必要があると認めるのが相当であるから,同月以降のレンタル費用は,次の計算式により上記金額と認められる。
(計算式)14万4000円×11.9198(27年のライプニッツ係数と3年のライプニッツ係数の差)

e
なお,被告等は,上記a,c及びdの費用の算出に当たり,社会保険による給付を控除すべき旨主張するが,この主張を採用することができないことは,上記ウ説示のとおりである。


将来家屋改造費

40万7160円

(ア)土間のコンクリート打設

40万7160円

原告Aは,屋外の移動において車椅子を利用しなければならないところ,証拠(甲C15)及び弁論の全趣旨によれば,玄関先の段差を解消するための工事のために上記金額を要したことが認められ,これは,本件過失と相当因果関係のある損害と認められる。
(イ)廊下の段差解消,手すりの設置

0円

原告Aは,屋内の移動において杖を用いて歩行しなければならないことからすれば,廊下の段差を解消し,手すりを設置する工事の必要性は認められる。原告らは,この工事を原告Bが行った旨主張するが,実際の工事内容を認めるに足りる証拠はなく,その工事費用を算定することは困難である。したがって,上記工事費用相当額については,本件過失
による損害として認めることはできない。
(ウ)浴槽等の交換,洗面所の改修

0円

原告らが必要であると主張する浴槽等の交換及び洗面所の改修についても,その具体的な内容が明らかでなく,これらの工事の必要性があると認めるに足りない。


将来自動車調達費

0円
上記ク(イ)b説示のとおり,原告Aについて電動車椅子購入の必要性が認められないこと,原告A自身は自動車を運転することはできないものと認められ,原告Bは,既に満69歳であり今後いつまで運転が可能かは定かではないこと,症状固定から約3年間,福祉車両なしで生活ができていることなどの事情を考慮すれば,原告ら主張の将来自動車調達費について,
本件過失による損害と認めることはできない。


原告Aのその他の損害

医療記録開示費用

6万0264円

原告Aが,被告病院の診療記録の開示費用として上記金額を負担したことは,当事者間に争いがない。これは,本件過失と相当因果関係のある損
害と認められる。

弁護士費用

1160万円

本件過失と相当因果関係のある原告Aの弁護士費用は,1160万円と認めるのが相当である。


原告Aの損害額の合計



原告Bの損害額

1億2799万0425円

慰謝料

100万円

妻である原告Aに重篤な後遺障害が残存し,今後も原告Aを介護する必要があることその他本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原告Bの慰謝料は,100万円と認めるのが相当である。


弁護士費用

10万円

本件過失と相当因果関係のある原告Bの弁護士費用は,10万円と認めるのが相当である。



合計

110万円

原告C及び原告Dの損害額

慰謝料

各50万円
母である原告Aに重篤な後遺障害が残存したことその他本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原告C及び原告Dの慰謝料は,各50万円と認めるのが相当である。

弁護士費用

各5万円

本件過失と相当因果関係のある原告C及び原告Dの弁護士費用は,各5
万円と認めるのが相当である。

第4

合計

各55万円

結論
以上の次第で,原告Aの請求は,被告に対し,1億2799万0425円及
びこれに対する症状固定日である平成28年12月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告Bの請求は,被告に対し,110万円及びこれに対する同日から支払済みまで上記年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告C及び原告Dの各請求は,被告に対し,各55万円及びこれに対する同日から
支払済みまで上記年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって,原告らの請求を上記の限度で認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとして(仮執行免脱宣言は,相当ではないので付さない。),主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第14部

裁判長裁判官

伊藤正晴
裁判官


裁判官

大島清二賀謙一須
トップに戻る

saiban.in