判例検索β > 令和1年(わ)第591号
傷害致死被告事件
事件番号令和1(わ)591
事件名傷害致死被告事件
裁判年月日令和2年1月17日
法廷名札幌地方裁判所
裁判日:西暦2020-01-17
情報公開日2020-02-05 10:00:09
戻る / PDF版
令和2年1月17日宣告
令和元年(わ)第591号

傷害致死被告事件
主文
被告人を懲役5年に処する
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,令和元年7月19日午後6時11分頃から同月20日午前7時39分頃までの間に,札幌市所在の共同住宅内のA方において,同人(当時35歳)に対し,顔面を拳で数回殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に左硬膜下血腫の傷害を負わせ,同日午後5時23分頃,同市所在の医療法人B病院において,同人を前記傷害に基づく脳ヘルニアにより死亡させた。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法205条に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中110日をその刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
介護職員である被告人は,業務として,重度の障害を抱える被害者が一人暮らしをする同人方に泊まり込み,その介護を行っていた際に,被害者に対して顔面のほか,胸や背中を拳で殴ったりかかとで蹴ったりすることを含む判示の暴行を加えた。死亡するに至ったことは,被害者の負っていた水頭症等の障害が寄与した可能性があるものの,寝たきりで意思疎通も難しい被害者に対し,被告人の供述によっても約2時間の間に,断続的に複数回の暴行に及んだ点で,態様は悪質というほかない。何らの落ち度もない被害者の生命が一方的に奪われたという結果の重大性は論を待たない。
本件犯行までの経緯についてみると,被告人自身が分からないと述べていることから動機が明らかとはいえないが,その一因として,業務の負担が蓄積し,かつ,軽減されないことへのストレスや勤務シフトに関する職場への不満,また,仕事が思うようにうまくできないことへの自責の念や劣等感,いら立ちといった負の感情が噴出したことが考えられる。被告人の具体的な業務内容や勤務状況によると,被告人がストレス等を抱えることは無理からぬところであり,上司に対して公休日の変更等を申し出たが断られたことがあることや,職員が同僚や上司に相談しやすい環境が十分整えられていたとはいえなかったことにも照らすと,同情できる面もある。しかし,そうであるとしても,本件犯行は,介護職員にあるまじき重大な背信行為というべきであり,正当化されるものではない。被告人が,上司や同僚に自身の体調不良を申し出た上で休暇を取得するなどの考えられる他の方策を選択することなく本件犯行に至ったことには,強い非難が妥当する。
以上のとおり,本件は,犯行態様が悪質であり,動機や経緯の点で被告人に同情すべき点がないとはいえないものの大きく酌むべき事情とはいえないことから,相応の期間の実刑を免れない。
そして,被告人が犯行の事実自体を認め,反省の言葉とともに,被害者及びその遺族への謝罪の意思を表していること,被告人が若年であり前科前歴がないことなども考慮の上,被告人を主文の刑に処することが相当であると考えた。検察官北野達也,岡田和人,私選弁護人西村武彦

各公判出席

(求刑・懲役6年,弁護人の科刑意見・懲役4年)
令和2年1月17日
札幌地方裁判所刑事第3部

裁判長裁判官

駒田秀和
裁判官

山下智史
裁判官

牧野一成
トップに戻る

saiban.in