判例検索β > 平成31年(わ)第1349号
家畜伝染病予防法違反幇助、関税法違反幇助、家畜改良増殖法違反
事件番号平成31(わ)1349
事件名家畜伝染病予防法違反幇助,関税法違反幇助,家畜改良増殖法違反
裁判年月日令和元年12月25日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2019-12-25
情報公開日2020-02-03 14:00:09
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主文
被告人を懲役1年に処する
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金473万円を追徴する。
被告人に対し,仮にその追徴に相当する金額を納付すべきことを命ずる。理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A及びBが共謀の上,法定の除外事由がなく,かつ,税関長の許可を受けないで,農林水産大臣が指定する偶蹄類の動物である牛の受精卵及び精液を中華人民共和国に向けて不正に輸出することを企て,平成30年6月29日,大阪市(住所省略)所在のC岸壁に停泊中の中華人民共和国船籍外国貿易船DにBが乗船するに際し,あらかじめ家畜防疫官が行う検査及び輸出検疫証明書の交付を受けるとともに,
当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を税関長に申告し,貨物につき必要な検査を経て,その許可を受けなければならないのに,あらかじめ
家畜防疫官が行う検査及び輸出検疫証明書の交付を受けないで,かつ,税関長にその申告をせず,貨物につき必要な検査を経ず,当該許可を受けないで,牛の体内受精卵を注入して封を施したストロー235本及び牛の人工授精用精液を注入して封を施したストロー130本を手荷物として客室に持ち込んで積み込み,本邦から不正に輸
出した際,その情を知りながら,これに先立ち,法定の除外事由がないのに,同月2
8日頃,徳島県吉野川市(住所省略)所在のE敷地内から,氏名不詳者から依頼されて,代金473万円で,上記牛の体内受精卵及び精液を,それぞれ家畜体内受精卵証明書ないし家畜人工授精用精液証明書を添付しないで,情を知らない叔父のFに大阪府八尾市(住所省略)所在のGまで届けさせ,同店従業員を介してAに譲り渡し,もって同人及びBの上記家畜伝染病予防法違反,関税法違反の犯行を容易なら
しめてこれを幇助するとともに家畜体内受精卵及び家畜人工授精用精液を不正に譲り渡した。
(法令の適用)


家畜防疫官の検査等を受けないで精液及び受精卵を輸出することを容易にした点刑法62条1項,家畜伝染病予防法63条2号,45条1項2号,37条1項1号,家畜伝染病予防法施行規則53条1項1号,45条4号

税関長の許可を受けないで貨物を輸出することを容易にした点
刑法62条1項,関税法111条1項1号,67条
家畜体内受精卵証明書を添付しないで家畜体内受精卵を譲り渡し,家畜人工授精用精液証明書を添付しないで家畜人工授精用精液を譲り渡した点
包括して家畜改良増殖法39条,14条(家畜体内受精卵証明書を添付しないで
家畜体内受精卵を譲り渡した点は同条2項に,家畜人工授精用精液証明書を添付しないで家畜人工授精用精液を譲り渡した点は同条1項に,それぞれ該当するが,両者は包括一罪と解されるため,刑法10条により,犯情の重い家畜体内受精卵証明書を添付しないで家畜体内受精卵を譲り渡した罪の刑で処断)科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段,10条(1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,1罪として最も重い税関長の許可を受けないで貨物を輸出することを容易にした罪の刑で処断)
刑種の選択
懲役刑

法律上の減軽
刑法63条,68条3号(従犯)
刑の執行猶予
刑法25条1項


刑法19条1項3号,
19条の2
(判示犯行により被告人の取得した473万円は判示
犯行の報酬として得た物に該当するが,その全部が費消されたため没収することができない。)
仮納付
刑事訴訟法348条1項
(量刑の理由)
本件の量刑の中心となる家畜伝染病予防法違反幇助及び関税法違反幇助の点についてみるに,輸出した牛の受精卵等は多量である上,本件の不正輸出に係る牛の受精卵等が家畜の体内への直接移植等やこれによる繁殖を予定するものであることからすれば,当該受精卵等に病原体が含まれていれば輸出先国等への伝染性疾病の伝
播を引き起こす危険性が高かったといえ,ひいては日本から輸出される動物・畜産物等に対する家畜衛生上の国際的な信用をも失わせるものといえる。さらに,牛の受精卵等は,輸出先国である中華人民共和国との間で家畜衛生条件が締結されていないため,家畜防疫官の検査を受けても輸出検疫証明書の交付が受けられないにもかかわらず,本件においてこのような牛の受精卵等が密輸出されていることも,本
件の悪質さを高める。このような犯行に際し,被告人は,自ら経営する牧場の在庫である受精卵等を正犯者らに譲り渡すという,
犯行に不可欠な行為を473万円もの対
価を得て行っており,幇助にとどまるとはいえ,その寄与の程度は高い。そこで,上記のとおりの本件の犯情を基に,被告人に特段の前科がないこと,被告人が事実を認めて反省の情を示していること,家畜人工授精師の免許を返上し,
上記牧場を廃業するなどしていること,叔父が被告人のため証言したこと等の事情も考慮し,被告人を主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
(求刑

懲役1年2月,追徴473万円(仮納付))

令和元年12月26日
大阪地方裁判所第12刑事部
裁判長裁判官

増田啓祐
裁判官

棚村治邦
裁判官

水谷翔
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