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不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ワ)4901
事件名不当利得返還請求事件
裁判年月日令和2年1月23日
裁判所名大阪地方裁判所
権利種別特許権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2020-01-23
情報公開日2020-01-31 18:00:19
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令和2年1月23日判決言渡
平成30年(ワ)第4901号
口頭弁論終結日

同日原本受領

裁判所書記官

不当利得返還請求事件

令和元年10月18日
判決原告
株式会社ヘリオス

同訴訟代理人弁護士

山田威同柴田和彦
同補佐人弁理士

立花顯治同藤原賢司被告一郎
サムスン電子ジャパン株式会社

同訴訟代理人弁護士

大野聖二同小林英了同山口裕司
同訴訟代理人弁理士

松野知紘主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は,原告の負担とする。

第1
実及び理由
請求

被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成30年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

本件は,通信端末装置等(携帯電話)に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告製品の販売により原告の特許権を侵害したと主張し,民法703条に基づく不当利得返還請求として,実施料相当額と主張する1億7100万円のうち1億円及びこれに対する催告の後の日である平成30年6月13日(本訴状送達の日の
翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めた事案である。1
前提事実(当事者間に争いのない事実又は後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)

当事者

原告は,電気通信機器,電気通信システム,精密機器,民生機器,産業機器の開発と製造及び技術提供業等を目的とする株式会社である。
被告は,コンピュータ及び周辺機器・端末機器等の開発,製作,輸出入販売等,並びに有線,無線通信機器及び関連機器とその部品の製作,輸出入販売及びリース業等を目的とする株式会社である。


原告の有する特許権


原告は,以下の3つの特許権(以下,それぞれ本件特許権1等といい,
本件特許権1ないし3に係る特許をそれぞれ本件特許1等といい,本件特許1の請求項1に係る発明を本件発明1,本件特許2の請求項7に係る発明を本件発明2,本件特許3の請求項1に係る発明を本件発明3といい,それぞれの願書に添付された明細書及び図面を本件明細書1等という。)を有している。本件明細書1ないし3の記載は,
それぞれ,
本判決添付の特許公報のとおりである。
なお,本件特許2は本件特許1の,本件特許3は本件特許2の,それぞれ分割出願である。

本件特許権1(甲1,2(書証は枝番号を含む。以下同じ。))
特許第3396718号
通信端末装置,画像情報記憶方法および情報記憶媒体

出願日

平成12年4月24日

出願番号

特願2000 ̄123302号

登録日
登録番号
発明の名称

平成15年2月14日

特許請求の範囲
【請求項1】発呼に使用する電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号の
メモリ番号に対応付けて,少なくとも1つ以上の画像データを画像データメモリに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号とが一致した場合,前記画像データの中から前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データを読み出して表示する通信端末装置において,新たに入手した第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御部を具備し,前記制御部は,前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶させる旨の情報が入力された場合,前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶する一方,前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持するとともに,前記第1画像データの表示選択
をOFFにして,前記第1画像データを前記画像データメモリに記憶し続け,その後の着信の際に受信した発呼者番号と前記第1電話番号とが一致した場合には,前記第2画像データを読み出して表示すること,を特徴とする通信端末装置。

本件特許権2(甲3,4)
特許第3475405号
通信端末装置および画像情報表示方法

出願日

平成12年4月24日

出願番号

特願2002 ̄330060号

登録日
登録番号
発明の名称

平成15年9月26日

特許請求の範囲
【請求項7】電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号に対応付けて,画像データを画像データメモリに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号とが一致した場合,前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し,この表示に際して対応する第1
着信メロディを鳴らす通信端末装置において,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信するとともに前記第2画像データを前記画像デ
ータメモリに記憶させる制御及び前記画像データメモリに記憶する画像データを用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備し,前記制御部は,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し,前記第1電話番号に対応付けて記憶している前記第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続けるとともに,前記第1電話番号からの着信の際に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させること,を特徴とする通信端末装置。


本件特許権3(甲5,6)

登録番号
発明の名称

通信端末装置,着信報知方法および情報記憶媒体

出願日

平成12年4月24日

出願番号
特許第3520359号

特願2003 ̄273244号

登録日

平成16年2月13日

特許請求の範囲
【請求項1】複数の電話番号を電話帳データメモリに記憶し,複数の画像データを画像データメモリに記憶し及び複数の着信メロディデータを着信メロディデータメモリに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号とが一致した場合,前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し及び第1着信メロディを発生させる通信端末装置において,第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信して記憶する制御及び記憶した前記第2着信メロディデータと前記第2画像データを用いて着信の際の表示と着信メロディの発生を制御する制御部を具備し,前
記制御部は,前記第1画像データから前記第2画像データを前記第1電話番号に対して表示選択した後,前記第1電話番号から呼び出しを受けた場合,記憶した
前記第2画像データを読み出して表示し,前記第2着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させること,を特徴とする通信端末装置。


本件特許権1ないし3に係る発明の構成要件の分説
本件発明1

本件発明1の構成要件は,以下のとおり分説される。
A
発呼に使用する電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号のメモリ番
号に対応付けて,少なくとも1つ以上の画像データを画像データメモリに記憶するとともに,
B
着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号と
が一致した場合,前記画像データの中から前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データを読み出して表示する通信端末装置において,
C
新たに入手した第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御
部を具備し,
D
前記制御部は,前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶さ
せる旨の情報が入力された場合,前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶する一方,前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持するとともに,前記第1画像データの表示選択をOFFにして,前記第1画像データを前記画像データメモリに記憶し続け,その後の着信の際に受信した発呼者番号と前記第1電話番号とが一致した場合には,前記第2画像データを読み出して表示すること,を特徴とする通信端末装置。

本件発明2

本件発明2の構成要件は,以下のとおり分説される。
A
電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号に対応付けて,
画像データを

画像データメモリに記憶するとともに,
B
着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号と
が一致した場合,
前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し,この表示に際して対応する第1着信メロディを鳴らす通信端末装置において,C
着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信すると
ともに前記第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御及び前記画像データメモリに記憶する画像データを用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備し,
D
前記制御部は,
前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選

択して前記画像データメモリに記憶させる場合,
前記第2画像データと一緒に送信
されてきた着信メロディデータをも記憶し,
E
前記第1電話番号に対応付けて記憶している前記第1着信メロディを着信
メロディデータメモリに記憶し続けるとともに,
前記第1電話番号からの着信の際
に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶
させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させること,を特徴
とする通信端末装置。

本件発明3

本件発明3の構成要件は,以下のとおり分説される。
A
複数の電話番号を電話帳データメモリに記憶し,複数の画像データを画像デ
ータメモリに記憶し及び複数の着信メロディデータを着信メロディデータメモリに記憶するとともに,
B
着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号と
が一致した場合,前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し及び第1着信メロディを発生させる通信端末装置において,
C
第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信し
て記憶する制御及び記憶した前記第2着信メロディデータと前記第2画像データを用いて着信の際の表示と着信メロディの発生を制御する制御部を具備し,D
前記制御部は,前記第1画像データから前記第2画像データを前記第1電話
番号に対して表示選択した後,前記第1電話番号から呼び出しを受けた場合,記憶した前記第2画像データを読み出して表示し,前記第2着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させること,を特徴とする通信端末装置。⑷
被告の行為(甲9)

被告は,別紙被告製品目録1ないし15記載の製品(以下,同目録記載の製品を,それぞれ被告製品1等といい,合わせて被告製品と総称する。)を,別紙発売日一覧記載の日に,それぞれ販売開始した。
被告製品のうち,本件特許1に対応するものは被告製品1ないし8,本件特許2及び3に対応するものは被告製品1ないし15である。


被告製品の構成(甲9,10)


被告製品1ないし8(本件特許1との対応)
被告製品1ないし8では,使用者が頻繁にやりとりする相手方の電話番号や
Eメールアドレスなどを,電話帳に登録することができ,登録の際,メモリ番号,名前,電話番号のほか,着信時に表示される画像,電話着信音を設定することができるところ,かかる電話番号,画像,着信音などのデータは,被告製品本体の内部メモリに保存される。
被告製品1ないし8では,1件の電話帳に電話番号のほか,着信画像や電話着信音・メール着信音の登録をすると,当該電話帳に登録した相手から着信があった際に,当該電話帳に登録されている画像が画面に表示されるとともに,当該電話
帳に登録されている電話着信音が鳴る。
例えば,メモリ番号000の電話帳に,電話番号A,着信画像a,電話着信音αを登録し,メモリ番号001の電話帳に,電話番号B,着信画像b,電話着信音βを登録していた場合に,電話番号Aから着信があると,着信画像aが表示されるとともに,電話着信音αが発生し,電話番号Bから着信があると,着信画像
bが表示されるとともに,電話着信音βが発生する。
このように,被告製品においては,メモリ番号000,001等の各々
に着信画像・電話着信音を対応付けることができ,電話帳に着信画像として登録された画像データは,複数の電話番号のメモリ番号に対応付けられて,被告製品本体の内部メモリに保存されている。
被告製品1ないし8では,インターネットやMMSのメッセージを通じて,画像,サウンド,動画を取得し,被告製品本体の内部メモリまたはメモリカードに保存できるようになっている。
被告製品1ないし8では,着信時に画面に表示する画像を電話帳のグループ設定に登録した状態で,さらに,別の画像を1件の電話帳に登録すると,グループ設定で登録した画像よりも,当該電話帳で登録した画像が優先的に表示される。
被告製品1ないし8においては,あらかじめ20個のグループが用意されており,そのグループのメンバーとして電話帳から電話番号を登録することができる。そして,グループごとに着信画像,着信音などを設定することができ,当該グループに登録されたメンバーの電話番号から着信があった場合,かかる着信画像,着信音が表示,発生させられる。

しかし,上述のとおり,着信画像や着信音などを電話帳ごとに個別に設定している場合は,グループごとの設定よりも優先される。
そのため,グループ1のメンバーとして,メモリ000に対応した電話番号Aを登録し,かかるグループ1に着信画像1及び着信音1を設定した後で,メモリ番号000の電話帳に,着信画像A,着信音aを登録した場合,電話番号Aか
ら電話がかかってきたときには,グループ1に関して設定された着信画像1及び着信音1ではなく,メモリ番号000の電話帳に登録した着信画像A及び着信音aが優先的に表示,発生させられる。
ここで,
メモリ番号
000
の電話帳に登録した着信画像A,
着信音aを削除,
又は,メモリ番号000における着信画像A,着信音aの登録を削除すると,
グループ1には,電話番号A,着信画像1,着信音1の登録がそのまま残っているため,電話番号Aから電話がかかってくると,グループ1で登録した着信画像1及
び着信音1が表示,発生させられる。
すなわち,グループの設定画像に第1画像データが設定されている状態で,1件の電話帳の設定画像に第2画像データを選択すると,第1画像データの対応関係を維持したまま,その後の着信の際には,電話帳の設定画像である第2画像データを読み出して着信表示することになる。

被告製品1ないし15(本件特許2及び3との対応)
被告製品1ないし15では,使用者が頻繁にやりとりする相手方の電話番号
やEメールアドレスなどを,電話帳に登録することができ,登録の際,名前,電話番号のほか,
着信時に表示される画像,
電話着信音を設定することができるところ,
かかる電話番号,画像,着信音などのデータは,被告製品本体の内部メモリに保存される。
被告製品1ないし15では,1件の電話帳に電話番号のほか,着信画像や電話着信音・メール着信音の登録をすると,当該電話帳に登録した相手から着信があった際に,当該電話帳に登録されている画像が画面に表示されるとともに,当該電
話帳に登録されている電話着信音が鳴る。
例えば,1件の電話帳に,電話番号A,着信画像a,電話着信音αを登録し,別の1件の電話帳に,
電話番号B,
着信画像b,
電話着信音βを登録していた場合に,
電話番号Aから着信があると,着信画像aが表示されるとともに,電話着信音αが発生し,電話番号Bから着信があると,着信画像bが表示されるとともに,電話着
信音βが発生する。
被告製品1ないし15では,インターネットやMMSのメッセージを通じて,画像,サウンド,動画を取得し,被告製品本体の内部メモリまたはメモリカードに保存できるようになっている。かかる画像,サウンドや動画は,インターネットを通じてダウンロードし,被告製品本体の内部メモリに保存することができる。
被告製品1ないし15では,着信時に画面に表示する画像を電話帳のグループ設定に登録した状態で,さらに,別の画像を1件の電話帳に登録すると,グルー
プ設定で登録した画像よりも,当該電話帳で登録した画像が優先的に表示される。被告製品1ないし15においては,あらかじめ20個のグループが用意されており,そのグループのメンバーとして電話帳から電話番号を登録することができる。そして,グループごとに着信画像,着信音などを設定することができ,当該グループに登録されたメンバーの電話番号から着信があった場合,かかる着信画像,着信音が表示,発生させられる。
しかし,上述のとおり,着信画像や着信音などを電話帳ごとに個別に設定している場合は,グループごとの設定よりも優先される。
そのため,グループ1のメンバーとして,電話番号Aを登録し,かかるグループ
1に着信画像1及び着信音1を設定した後で,電話番号Aが登録された1件の電話帳に,インターネット等を通じて一緒に取得した着信画像A及び着信音aが登録された場合,電話番号Aから電話がかかってきたときには,グループ1に関して設定された着信画像1及び着信音1ではなく,電話番号Aが登録された1件の電話帳に登録した着信画像A及び着信音aが優先的に表示,発生させられる。
ここで,電話番号Aが登録された1件の電話帳に登録した着信画像A,着信音aを削除,又は,電話番号Aが登録された1件の電話帳における着信画像A,着信音aの登録を削除すると,グループ1には,電話番号A,着信画像1,着信音1の登録はそのまま残っているため,電話番号Aから電話がかかってくると,再び,グループ1で登録した着信画像1及び着信音1が表示,発生させられる。
すなわち,グループの設定画像に第1画像データが設定されている状態で,1件の電話帳の設定画像に第2画像データを選択すると,第1画像データの対応関係を維持したまま,その後の着信の際には,電話帳の設定画像である第2画像データを読み出して着信表示することになる。
2
争点



被告製品1ないし8は本件発明1の技術的範囲に属するか。



被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか。




本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか。



本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか。



本件特許3は,特許無効審判により無効にされるべきものか。



消滅時効



被告製品は本件発明3の技術的範囲に属するか。

被告の利得及び原告の損失の額

第3
1
争点に関する当事者の主張
争点⑴(被告製品1ないし8は本件発明1の技術的範囲に属するか。)につ
いて
【原告の主張】


構成要件Aの充足について


被告製品1ないし8では,使用者が頻繁にやりとりをする複数の相手方の電
話番号やEメールアドレスなどをアドレス帳に登録できるようになっているが,このアドレス帳に登録される電話番号が,構成要件Aにおける発呼に使用する電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号にあたる。また,被告製品1ないし8では,アドレス帳の登録の際,メモリ番号,名前のほか,着信時に表示される画像を登録することができるようになっており,画像の登録をすると,登録した画像の画像データがメモリ番号に対応づけて,メモリに保存されるようになっているものであるから,被告製品1ないし8は,電話番号のメモリ番号に対応付けて,少なくとも1つ以上の画像データを画像データメモリに記憶する構成を具備しているといえる。したがって,被告製品1ないし8は,本件発明1の構成要件Aを充足する。イ
被告は,被告製品1ないし8においては,電話帳データメモリと画像データメモリが別に存在しないと主張するが,本件発明1の電話帳データメモリと画像データメモリは,観念的なメモリ領域を指す用語であり,電話帳データ及び画像データを記憶することができる限り,メモリ媒体やデータ記憶領域が
物理的に別個である必要はない。本件明細書1の【0070】の記載も,記憶部
が1つであることを前提とした記載となっている。


構成要件Bの充足について
被告製品1ないし8では,アドレス帳の登録の際に画像の登録をすると,着
信のあった電話番号とアドレス帳に画像登録をした電話番号が一致した場合,当該電話番号のメモリ番号に対応して登録されている画像データが呼び出されて画面上に表示されるようになっているものであり,構成要件Bの上記構成を具備している。
したがって,被告製品1ないし8は,本件発明1の構成要件Bを充足する。

被告は,被告製品1ないし8においては,グループ設定機能と電話帳登録機
能が別個の機能として設けられているため,第1電話番号に対応する第1画像データは存在しないと主張する。しかし,本件発明1の構成要件Bの記載は,第1画像データと第1電話番号のメモリ番号が対応して表示選択されていることを述べるだけの構成であり,
第1画像データ第1電話番号のメモリ番号

を結び付ける際に別のファクター(被告製品1ないし8におけるグループ)が介在することを排除するものではない。
すなわち,本件明細書1の発明の効果の欄に記載されている一目で誰から呼び出されているかが分かるとは,グループに設定された画像が表示されることにより,そのグループに属するいずれかの電話番号の持ち主から呼び出されていること
が分かるという状況も含むものであり,必ずしも特定の電話番号からの着信であることを特定できると限定して解釈する理由はない。
被告製品1ないし8におけるグループは,電話帳に登録された電話番号の中から選択し,登録して設定されるものであるから,グループ設定をした場合,電話帳に登録された電話番号と,グループ設定で登録された画像データとが,グループとい
う別のファクターを介して対応した状態で記憶される。なお,
被告製品においては,
グループに1つの電話番号のみを登録することも可能であり,この場合は,着信時
にグループに設定された画像が表示されれば,当該電話番号からの着信であることを特定することが可能である。
したがって,被告製品1ないし8において,グループ設定機能で設定された第1画像データは,
グループの設定を介して電話番号
(あるいは電話番号のメモリ番号)
に対応付けられているといえる。


構成要件Cの充足について

被告製品1ないし8では,着信時に画面に表示する画像をアドレス帳に登録した後,新たに画像をダウンロードしてメモリに保存できるようになっており,ここでいう画像データが構成要件Cの新たに入手した第2画像データにあたる。また,被告製品1ないし8では,かかる画像データをメモリに記憶させるように制御されており,第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御部を具備しているといえる。したがって,被告製品1ないし8は,本件発明1の構成要件Cを充足する。⑷

構成要件Dの充足について


被告製品1ないし8では,アドレス帳のグループに対応させて,画像を登録
することができるが,別の画像を個別のアドレスに対応させて登録すると,既に設定されていたアドレス帳のグループに対応した画像よりも,個別のアドレス帳に対応した画像が優先的に表示されるようになっており,前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶させる旨の情報が入力された場合,前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶しているものである。また,被告製品1ないし8では,個別のアドレス帳に画像の登録をすると,既に設定されたアドレス帳のグループに対応した画像は画面に表示されないようになるが,その場合でも,かかるグループの画像が電話番号との対応関係を維持したままメモリに保持されており,前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持するとともに,前記第1画像データの表示選択をOFFにして,前記第1画像データを前記画像データメモリに記憶し続けているといえる。
さらに,
被告製品1ないし8では,
画像を個別のアドレス帳に対応させて登録した
状態で,当該電話番号からの着信があった場合,登録された画像を呼び出して画面に表示するようになっており,着信の際に受信した発呼者番号と前記第1電話番号とが一致した場合には,前記第2画像データを読み出して表示している。したがって,被告製品1ないし8は,本件発明1の構成要件Dを充足する。イ
構成要件Dの表示選択してとは,表示するように選択すること,す
なわち,メモリ番号に対応した形で記憶されている画像データのうち,着信画面に表示するように選択された画像の画像データを読み出して表示することを意味し,表示選択をOFFにするとは,着信画面に表示するように選択されていた画像データをその後着信画面に表示しないように設定することを意味するものであり,それ以上の具体的な構成を特定したものではない。
被告は,本件発明1における表示選択とは,着信時の表示の可否を指定する情報が存在することを前提とするものであると主張するが,かかる主張は,クレームの文言を実施の形態の構成に限定解釈すべきという主張であり,妥当でない。


以上より,被告製品1ないし8は本件発明1の技術的範囲に属する。
【被告の主張】
⑴電話帳データメモリ及び画像データメモリ
(構成要件A,C及びD)
について
本件発明1のクレーム文言上,あえて電話帳データメモリと画像データメモリという異なる単語が用いられていること,
並びに本件明細書1の
【0081】
ないし【0083】及び【図3】において両メモリが完全に別個のメモリとして説明されていることから,本件発明1における電話帳データメモリ及び画像データメモリは別個に存在することを要する。被告製品1ないし8には,USIMカード及び外部メモリカードは含まれておら
ず,電話帳及び画像のデータを記憶する領域は内部メモリ以外に存在しないから,被告製品1ないし8において,電話番号を記憶する電話帳データメモリと画像
データを記憶する画像データメモリは別には存在しない。
したがって,被告製品1ないし8は,本件特許1の構成要件A,C及びDを充足しない。

第1画像データ(構成要件B及びD)について


本件明細書1の段落【0006】及び発明の効果の記載等によれば,本件発
明1は発呼者番号と画像データを対応づけることによって誰から呼び出されているかが分かるようにするものであるから,構成要件Bの第1電話番号に対応して表示選択されている第1画像データとは,第1画像データが表示されたときに,第1電話番号からの着信であることを特定できることを意味すると解される。一方で,第1電話番号からの着信時にも第2電話番号からの着信時にも,同じ第1画像データが表示されるのであれば,どちらの電話番号から呼び出されているのか分からないから,このような場合には第1電話番号に対応して表示選択されている第1画像データに該当するとはいえない。イ
原告は,被告製品1ないし8において,複数の電話番号が登録されたグルー
プに対応した画像が本件発明1の第1画像データに該当するとの前提で主張するところ,グループ設定機能と電話帳登録機能は別個の機能として設けられており,グループ設定機能により設定される画像は,グループに対応付けられて内部メモリに記憶され,電話番号又はメモリ番号に対応付けられるものではない。また,グループに属するいずれかの電話番号から着信があると,グループに設定された画像が
表示されるところ,グループに属する複数の電話番号のうちどの電話番号からの着信であるかを特定することはできず,本件発明1の効果である

一目で誰から呼び出されているかが分かる。

という効果を生じない。なお,被告製品においてグループに1つの電話番号を登録した場合であっても,表示される画像はあくまでグループに対応付けられて記憶されたグループ画像であって,当該電話番号と関係づけ
られた画像ではない。
したがって,被告製品1ないし8において,第1電話番号に対応する第1画像データは存在しないから,本件発明1の前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データを読み出して表示する(構成要件B)及び前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持する(構成要件D)を充足しない。


前記第2画像を表示選択して及び第1画像データの表示選択をOFFにして(構成要件D)について本件明細書1の記載(【0081】ないし【0083】,
【0086】,
【図3】)
を斟酌すれば,本件発明1における表示選択とは,着信時の表示の可否を指定する情報が存在することを前提とし,画像を表示するように当該情報を設定することを意味するものと解される。
このことは,本件特許1の審査過程において,原告が,平成14年5月20日提出の手続補正書(乙21)において表示選択の文言を追加し,同日に提出した意見書(乙22)において,メモリ番号と画像データ番号と表示フラグの関係を明確にする趣旨で追加したと述べたことからも裏付けられる。

被告製品1ないし8においては,個別の電話帳又はグループに画像を設定した場合には,着信時に当該画像が表示されるように制御されるものの,着信時における表示の可否を指定する情報は存在しない。
また,電話番号に対応付けた画像を登録することにより,それが優先的に表示されるようになるにすぎず,グループに対応した画像の設定状況に変更を加えていな
いから,表示の選択をOFFにする,すなわち表示を選択していない状態にすることは行っていない。
したがって,被告製品1ないし8は,前記第2画像を表示選択して及び第1画像データの表示選択をOFFにして(構成要件D)の文言を充足しない。2
争点⑵(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか。)について
【原告の主張】


構成要件Aの充足について


被告製品1ないし15は,前記1の原告の主張⑴に記載した被告製品1ない
し8の構成と同じ構成を有するから,被告製品1ないし15は,本件発明2の構成要件Aを充足する。

被告は,被告製品においては,電話帳データメモリと着信データメモリ及び画像データメモリが別に存在しないと主張するが,本件発明2の電話帳データメモリ,着信データメモリ及び画像データメモリは,観念的なメモリ領域を指す用語であり,電話帳データ,着信メロディデータ及び画像データを記憶することができる限り,メモリ媒体やデータ記憶領域が物理的に別個である必要はない。本件明細書2の【0019】の記載も,記憶部が1つであるこ
とを前提とした記載となっている。


構成要件Bの充足について


被告製品では,アドレス帳の登録の際に画像と電話着信音の登録をすると,
着信のあった電話番号とアドレス帳に画像と電話着信音を登録した電話番号が一致した場合,当該電話番号に対応して登録されている画像と電話着信音のデータが呼び出され,かかる画像は表示され,かかる電話着信音が鳴るようになっているものであり,構成要件Bの上記構成を具備している。
したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件Bを充足する。

被告は,被告製品においては,グループ設定機能と電話帳登録機能が別個の
機能として設けられているため,第1電話番号に対応する第1画像データ及び第1着信メロディデータは存在しないと主張する。しかし,前記1の原告の主張⑵において述べたとおり,本件発明2の構成要件Bの記載は,第1電話番号と第1画像データ,第1着信メロディデータを結び付ける際に別のファクター(被告製品におけるグループ)が介在することを排除するものではない。被告製品において,グループ設定機能で設定された第1画像データ及び第1着信
メロディデータは,グループの設定を介して電話番号に対応付けられているといえる。



構成要件Cの充足について

被告製品では,着信時に画面に表示する画像や着信時に鳴る電話着信音をアドレス帳に登録した後,インターネットやMMSのメッセージを通じて,新たにMP4の形式の音声付き動画のコンテナ上のデータをダウンロードしてメモリに保存できるようになっており,
コンテナの中に含まれる音声データ
(着信メロディデータ)
及び動画のデータ(第2画像データ)を一緒に受信しており,構成要件Cの着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信しているといえる(下記⑸において詳述する。)。
また,被告製品では,かかる画像や動画像をメモリに記憶させるように制御され
ており,そして,かかる画像や動画像をアドレス帳に登録すれば,着信のあった電話番号とアドレス帳に画像等を登録した電話番号が一致した場合,電話着信時に当該画像が表示されるため,第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御及び前記画像データメモリに記憶する画像データを用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備しているといえる。
したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件Cを充足する。


画像データを用いて着信の際の表示を制御する(構成要件C)の充足に
ついて
被告は,本件発明2では,画像データを用いて着信の際の表示を制御する処理について規定されているところ,被告製品では,動画ファイルを着信の際に表示させる場合,動画ファイルを着信音に設定するように構成されており,着信画像として設定するように構成されていないから,被告製品は本件発明2の構成要件Cを充足しないと主張する。
しかし,構成要件Cは,画像データを用いて着信の際の表示を制御するというものであり,画像データを着信画像に設定することに限定されない。そして,被
告製品において,音声付き動画における音声データが着信メロディデータに当たり,画像データが第2画像データに当たるところ,動画ファイルを着信音に
設定することにより,必然的に動画の画像データも用いられる以上,画像データを用いて着信の際の表示を制御しているといえる。⑸

着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件
C)
及び
第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し(構成要件D)の充足について

本件特許2出願当時の技術常識

本件特許2が出願された平成12年4月24日の時点では,既に,被告製品における音声付き動画に使用されるMP4の基となるQuick
Timeファイ

ルフォーマット(動画映像データと音声データを格納したコンテナフォーマット)が実用化されていたことから,本件発明2のクレームは,かかるフォーマットを用いて,動画映像データと音声データを一緒に送受信する場合も当然に含むものである。
上記コンテナフォーマットは,動画映像と音声というそれぞれ独立して存在する
2つのデータを1つのデータとして扱うために作られたものであって,再生時に同期を取るための情報も格納されているため,まとめて送受信されたり記憶されたり,再生時に同期処理がなされたりするものである。

構成要件Cの文言との対比
被告製品においては,MP4形式(コンテナフォーマット)の音声付き動画
のデータを,インターネットやMMSのメッセージを通じて受信することによって,コンテナの中に含まれる音声データ(着信メロディデータ)と動画データ(第2画像データ)を一緒に受信しているといえる。
被告は,被告製品の音声付きの動画データは,ムービーという単一のフォルダに保存されることから,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データに該当しない旨主張する。しかし,前記⑴において述べたとおり,本件発明2における電話帳データメモリ,
着信メロディデータメモリ及び画像データメモリは,観念的なメモリ領域を指す用語であり,メモリ媒体やデータ記憶領域が物理的に別個である必要はなく,これらのファイルも別個である必要もない。
したがって,
被告製品の音声付き動画中の動画のデータは,
本件発明2の
着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データに当たる。ウ
構成要件Dの文言との対比
被告製品においては,インターネット等を通じて受信したMP4形式の音声
付き動画のデータをメモリに記憶すると,コンテナに含まれる動画のデータと音声データが同時に記憶されることとなるから,構成要件Dの第2画像データを…記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶との構成を具備している。被告は,構成要件Dの上記文言は,第2画像データを記憶させる制御(構成要件C)が行われ,引き続いて第2画像データを表示選択した場合には第1電話番号と対応付けて着信メロディデータを記憶する(構成要件D)という二段階の処理
を規定しているところ,被告製品においては,1つの音声付き動画をムービーフォルダに記憶するという1つの処理しか行われないから,上記文言を非充足である旨を主張するが,本件発明2の請求の範囲には,画像データと着信メロディデータを別個の処理で記憶することは一切記載されていないため,被告の主張は失当である。また,構成要件Dには,着信メロディデータが被告製品において第1電話番
号に対応付けられると記載されておらず,この点に関する被告の主張も妥当でない。構成要件Dの上記文言は,第2画像データを表示選択した際に着信メロディデータも記憶されていればよく,既に構成要件Cにおいて着信メロディデータが記憶された場合もこれを充たす。
したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件Dの第2画像データを…記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶を充足する。


前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して(構
成要件D)の充足について
前記1の原告の主張⑷と同様である。
被告製品は,音声付きの動画ファイルを電話帳に登録した電話番号に対応付けた電話着信音として設定できる。そして,グループの着信音にダウンロードした音声付き動画ファイル1を設定し,その後,個別の電話番号の着信音に音声付き動画ファイル2を設定した場合には,かかる電話番号からの着信時には,音声付き動画ファイル2の画像,サウンドが優先的に表示,発生させられる。このような画像が表示される以上,動画ファイルにおける画像データを表示するように選択されている
といえる。
確かに,被告製品において,音声付き動画ファイルを電話着信音として設定することは,当該電話番号からの着信時に動画ファイルにおける音声データを鳴らすよう設定することであって,動画ファイルにおける画像データを表示するよう選択することではない。しかし,動画ファイルを着信音に設定することにより,必然的に
動画の画像データも用いられ,係る画像が表示される以上,動画ファイルにおける画像データを表示するように選択されているともいえる。
したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件Dの前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択してを充足する。⑺

構成要件Eの充足について

被告製品は,第1電話番号を含むグループの着信音に第1着信メロディが設定されている状態で,第1電話番号の着信音に音声付き動画を個別に設定した場合,当該グループの着信音の設定は第1着信メロディであることが記憶されたまま,第1電話番号からの着信の際には,個別に設定した音声付き動画,すなわち,一緒に記憶された動画データと音声データが表示される。

また,構成要件Eには,

前記第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続ける。

との記載があるが,被告製品における第1着信メロディが音
声付き動画に含まれる音声データである場合にも,同データは被告製品本体の内部メモリに動画データとは別個に記憶されるため,かかる音声データを記憶するデータ記憶領域が着信メロディデータメモリに当たる。
したがって,被告製品は,本件発明2の構成要件Eを充足する。


まとめ

以上より,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属する。
【被告の主張】


電話帳データメモリ,着信メロディデータメモリ及び画像データメモリ(構成要件A,CないしE)について本件発明2のクレーム文言上,あえて電話帳データメモリ,画像データメモリ及び着信メロディデータメモリという異なる単語が用いられており,それぞれ別個のメモリ媒体であるか,少なくとも別個の記憶領域である。また,本件明細書2【0032】には,画像データメモリと一緒に送信されてきた着信メロディデータを画像データメモリと同様の形式で着信メロディデータメモリに記憶しておりと記載されているところ,仮に着信メロディデータメモリが画像データメモリと同じメモリ媒体あるいは記憶領域であれば,同様の形式でとの記載は不要である。よって,着信メロディデータメモリ及び画像データメモリも,それぞれ別個のメモリ媒体であるか,少なくとも別個の記憶領域である。

被告製品には,
USIMカード及び外部メモリカードは含まれておらず,
電話帳,
着信メロディ及び画像のデータを記憶する領域は内部メモリ以外に存在しないから,被告製品において,電話番号を記憶する電話帳データメモリとは別に,着信メロディデータを記憶する着信メロディデータメモリ及び画像データを記憶する画像データメモリは存在しない。

したがって,被告製品は,本件特許2の構成要件A,CないしEを充足しない。⑵

第1電話番号に対応する
第1画像データ第1着信メロディデータ
及び

(構成要件B及びE)について
前記1の被告の主張⑵のとおり,構成要件Bの第1電話番号に対応する第1画像データとは,第1画像データが表示された時に,第1電話番号からの着信であることを特定できることを意味すると解される。
一方,被告製品においては,前述のとおり,グループに属する複数の電話番号のうちどの電話番号からの着信であるかを特定することはできない。したがって,被告製品において,第1電話番号に対応する第1画像データ及び第1着信メロディデータは存在しないから,本件発明2の前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し,この表示に際して対応する第1着信メロディを鳴らす(構成要件B)及び前記第1電話番号に対応付けて記憶している前記第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続ける(構成要件E)を充足しない。


着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件
C),前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し(構成要件D)及び構成要件Eについて[被告製品において,音声付き動画を受信する場合]

構成要件Cの文言との対比

本件発明2において,第2画像データは画像データメモリに,着信メロディデータは着信メロディデータメモリに,すなわち,それぞれ別の記憶領域に記憶されるものであって,本件発明2における第2画像データは着信メロディデータとは,異なる2種類のデータ(例えば拡張子をmp3とする音声ファイルと,拡張子をjpgとする画像ファイル)が一緒に送信されることが明確に規定されている。

一方,被告製品が取得する動画は,データフォルダにおけるムービーなる単一のフォルダ(記憶領域)に保存される1つのファイル(例えば拡張子を3g
pとする動画ファイル)である。被告製品において,音声付き動画ファイルから音声データと動画データを抽出して送受信することはないから,着信メロディデータと第2画像データとが一緒に送信されることはない。また,画像を画像用のメモリ領域に記憶し,音声をそれとは異なる音声用のメモリ領域に記憶することもできない。
したがって,被告製品が取得する音声付き動画は,本件発明2における着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件C)に該当しない。

構成要件D及びEの文言との対比
構成要件Dは,第2画像データを記憶させる場合に,画像データと一緒
に送信されてきた着信メロディデータを記憶することを規定しているところ,これは,①第1電話番号に対応づけて第2画像データを表示選択して画像データメモリに記憶させることを条件として,その後に,②(第1電話番号に対応付けて)第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶する,ということを規定するものであり,この結果として,第1電話番号からの着信の際に,第2画像データが表示され,かつ,着信メロディデータが発生される(構成要件E)。本件明細書2の【0032】にも,画像データメモリと一緒に送信されてきた着信メロディデータを画像データメモリと同様の形式で着信メロディデータメモリに記憶しておりとの記載があり,同様の形式でと記載されていることから
すれば,画像データを画像データメモリに記憶する処理と,着信メロディデータを画像データメモリと同じ形式で着信メロディデータメモリに記憶する処理とが,別個に行われることが明記されている。
原告は,本件特許2の出願時に,コンテナのフォーマットを用いて音声付き動画を取り扱うという技術常識があったことを主張するが,これを裏付ける客
観的証拠はなく,仮にそのような技術常識があったとしても,そのような音声付き動画を携帯電話のような通信端末装置で取り扱うことまでを含むものではない。
原告は,構成要件Dについて,着信メロディデータが被告製品において第1電話番号に対応付けられるとは記載されていないと主張するが,①出願経過において,原告は,本件発明2の特徴は第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを第1電話番号に対応付けて記憶する点であることを強調していたこと,②本件発明2は,着信メロディデータを第1電話番号に対応付けて記憶することを特定していた手続補正前の請求項7について,限定的減縮に当たる手続補正を行ったものであることからすれば,構成要件Dは,通信端末装置において電話番号と着信メロディデータとを対応付けることを,その要件としている。これに対し,被告製品において,音声付き動画を受信して記憶する場合,上
記のとおり,1つのファイルとしてムービーフォルダに記憶するという1つの処理が行われるのであり,音声付き動画における画像を記憶する処理と,音声付き動画における音声を記憶する処理とを別個に行うことはできず,同画像(第2画像データ)及び同音声(着信メロディデータ)が同時に記憶されるのであって,同画像を電話番号に対応付けることを条件として同音声を記憶することはない。
被告製品において,特定の電話番号からの着信の際に,音声付き動画における動画及び音声が出力されるのは,MP4のコンテナに予め含まれている動画映像と音声の同期を取るための情報が格納されているためであって,被告製品において当該電話番号と音声データ及び動画データをそれぞれ対応させる処理を行うものではない。

したがって,被告製品は,前記第2画像データを…記憶させる場合,…前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶(構成要件D)
の文言を充足せず,構成要件Eの着信メロディデータメモリ及び画像データメモリという文言も充足しない。⑷

着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件
C),前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し
(構成要件D)について[被告製品において,画像およびサウンドを送受信する場合]

構成要件Cの文言との対比

本件明細書2の【0032】に,画像データに対応付けられた着信メロディとの記載があり,この記載は本件発明2の審査経過における補正の根拠とされていることからすれば,本件発明2における着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データとは,第2画像データに着信メロディが対応付けられていることを要すると解される。
これに対し,被告製品は,何ら対応関係にない画像ファイル及びサウンドファイ
ルをダウンロードできるにとどまり,着信メロディが対応付けられた画像ファイルをダウンロードすることはできない。
したがって,被告製品が取得する画像は,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件C)に該当しない。イ
構成要件Dの文言との対比

構成要件Dにおける制御部は,…着信メロディデータをも記憶しは,下記審査経過を参酌すれば,着信メロディデータをも前記第1電話番号に対応付けて着信メロディデータメモリに記憶しと解すべきである。すなわち,平成15年4月2日付け手続補正書(乙3)には,前記画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを前記電話番号に対応付けて着信メロディデータメモリに記憶させると記載されており,
同日に提出された意見書
(乙
5)には,第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを第1電話番号に対応付けて記憶させることが発明の最大の特徴であることが述べられている。同年7月30日付け手続補正書(乙4)には,着信メロディデータを第1電話番号に対応付けて記憶することは明示されていないが,同日に提出された意見書
(乙2)には,同補正が限定的減縮に相当する旨が記載されている。これに対し,被告製品は,ダウンロードした画像及びサウンドの内の画像を電話
番号と対応付けて保存する場合に,サウンドをも同じ電話番号に対応付けて保存することは行わない。
したがって,構成要件Dの前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを…記憶させるにおける第2画像データが画像(静止画)である場合も,被告製品はこの文言を充足しない。


前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して(構
成要件D)について
前記1の被告の主張⑶と同じ。
被告製品においては,音声付き動画は着信画像として電話番号に対応付けて記憶することはできず,着信音として設定されることになる。この場合,当該電話番号からの着信時に動画ファイルにおける音声データを鳴らすよう設定されるのであるから,結果的に画像データが用いられ表示されるとしても,制御部が出力制御するのは着信音としての動画であって,画像データを出力するように制御するものではない。

したがって,被告製品は,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して(構成要件D)という文言を充足しない。3
争点⑶(被告製品は本件発明3の技術的範囲に属するか。)について
【原告の主張】

構成要件Aの充足について

前記1及び2の原告の主張⑴と同様であり,被告製品は,本件発明3の構成要件Aを充足する。


構成要件Bの充足について

前記2の原告の主張⑵と同様であり,被告製品は,本件発明3の構成要件Bを充足する。


構成要件Cの充足について

被告製品では,インターネットやMMSのメッセージを通じて,音声付き動画を
一緒に受信することができ,かかる動画ファイルをある電話番号の電話着信音に設定した場合,かかる音声付き動画ファイルに含まれるサウンドデータが着信メロディデータにあたり,画像データが着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データにあたる。また,この第2画像データと着信メロディとは,一体に結合したものであり,互いに対応付けられている。
したがって,被告製品は,本件発明3の構成要件Cを充足する。


構成要件Dの充足について

被告製品では,アドレス帳のグループに対応させて,画像を登録することができるが,別の画像を個別のアドレスに対応させて登録すると,既に設定されていたアドレス帳のグループに対応した画像よりも,個別のアドレス帳に対応した画像が優先的に表示されるようになっており,前記制御ステップは,前記第1画像データから前記第2画像データを前記第1電話番号に対して表示選択した後,前記第1電話番号から呼び出しを受けた場合,記憶した前記第2画像データを読み出して表示ししているものである。
また,被告製品では,個別のアドレス帳に電話着信音も登録すると,着信時登録した画像を表示することに加え,登録した着信メロディを発生させることができるようになっており,前記第2着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させているといえる。したがって,被告製品は,本件発明3の構成要件Dを充足する。

また,その他構成要件C及びDに係る主張は,前記2の原告の主張⑷ないし⑹のとおりである。


まとめ

以上より,被告製品は,本件発明3の技術的範囲に属する。
【被告の主張】


電話帳データメモリ,着信メロディデータメモリ及び画像データメモリ(構成要件A)について
前記2の被告の主張⑴と同じ。


第1電話番号に対応する
第1画像データ第1着信メロディデータ
及び

(構成要件B)について
前記2の被告の主張⑵と同じ。


第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信して記憶する(構成要件C)について前記2の被告の主張⑶及び⑷と同じ。⑷前記第2画像データを前記第1電話番号に対して表示選択(構成要件D)
について
前記2の被告の主張⑸と同じ。
4
争点⑷(本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)に
ついて
【被告の主張】

無効理由1-1(拡大先願)


乙12-1発明の内容

乙12(特開2000-25311号公報。以下,これに係る発明を乙12発明といい,
本件発明1ないし3と対応させた構成を,
それぞれ
乙12-1発明
等という。)は,本件特許1の出願日より前に出願され,出願日以降に公開された文献であり,乙12-1発明の内容は,以下のとおりである。
発呼に用いられるメモリに記憶された複数の電話番号に対応付けて,少なくとも一つの画像を画像メモリに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼側の電話番号とメモリ内の電話番号が一致した場合に,画像メモリ内の画像の中から電話番号に対応する画像(第1画像)を読み出して表示する無線携帯端末において,カメラやネットワークにより新たに取得した画像(第2画像)を画像メモリに記
憶させる制御部を有し,
当該制御部は,キー入力部の操作により第2画像を電話番号に対応付けて記憶さ
せた場合,当該第2画像が着呼時に順次表示されるように画像メモリに記憶するとともに,
第2画像が表示される場合には第1画像を表示しないように制御して,第1画像を画像メモリに記憶し続け,
その後の着信の際に,受信した発呼側の電話番号とメモリ内の電話番号が一致した場合に,第2画像を順次読み出して表示する,無線携帯端末。

乙12-1発明と本件発明1との対比

乙12-1発明におけるメモリ及び画像メモリは,それぞれ本件発明1の電話帳データメモリ及び画像データメモリに対応し,乙12-1発明における第1画像及び第2画像は,それぞれ本件発明1の第1画像データ及び第2画像データに対応する。
乙12-1発明では,画像データが電話番号に対応付けて画像メモリに記憶されているところ,個々の電話番号をメモリ番号に対応付けて記憶することは,乙13ないし15の文献に記載されているとおり,本件発明1の出願当時の周知技術であ
ったから,画像データが電話番号に対応付けて記憶されているか,電話番号のメモリ番号に対応付けて記憶されているかは,実質的な相違点を構成しない。乙12-1発明においては,電話番号に対応付けて複数の画像が記憶され,これらを着呼の際に切り替えて表示することが開示されているから,表示されない他の画像については,表示選択をOFFにされているといえるから,この点におい
ても,乙12-1発明と本件発明1との間に相違点は存在しない。ウ
原告の主張に対する反論

原告は,乙12-1発明においては,特定の電話番号に対応付けて記憶された複数の画像のうち最後に登録された画像を最初に表示させる(表示選択させる)構成及び新たに入手した画像データ(第2画像データ)を優先的に表示する構成が開示されていないと主張する。
しかし,上記原告の主張する構成は,いずれも本件発明1に規定された内容では
ない。
また,原告は,着信画面に表示するように選択された画像の画像データを読み出して表示されれば表示選択の要件を満たすと主張するところ,これを前提とすれば,乙12には,一定の法則性に則って新たに取得した画像データを読み出して表示し,他の画像データを表示しないように制御することが開示されているのであるから,第2画像データを表示選択する構成が開示されているということができる。
したがって,乙12には,第1画像データ及び第2画像データに対応する構成が開示されているから,原告の主張は誤りである。


まとめ

以上のとおり,乙12-1発明と本件発明1との間に相違点は存在せず,両者は実質的に同一であるから,
本件発明1は,
拡大された先願発明
(特許法92条の2)
の無効理由を有する。

無効理由1-2(乙16発明に基づく進歩性欠如)


乙16発明の内容

乙16(特開平8-9436号公報。以下,これに係る発明を乙16発明という。)は,本件特許1の出願日より以前に公開された文献であり,乙16発明の内容は,以下のとおりである。
発呼に用いられるRAMに記憶された複数の電話番号に対応付けて,似顔絵データ及び社章データをRAMに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼側の電話番号とRAM内の電話番号が一致した場合に,会社モードに設定されていると判断されれば,RAM内の画像の中から電話番号に対応する社章データを読み出して表示する無線受信装置において,
似顔絵データをRAMに記憶させる制御部を有し,

当該制御部は,キー入力部の操作により個人モードに設定された場合,似顔絵データが着呼時に表示されるようにRAMに記憶するとともに,

社章データを表示出力しないように制御して,社章データをRAMに記憶し続け,その後の着信の際に,受信した発呼側の電話番号とメモリ内の電話番号が一致した場合に,似顔絵データを読み出して表示する,無線受信装置。

乙16発明と本件発明1の対比

乙16発明における社章データ及び似顔絵データは,それぞれ本件発明1の第1画像データ及び第2画像データに対応するところ,本件発明1と乙16発明との間には,以下の一致点及び相違点がある。
一致点
発呼に使用する電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号のメモリ番号に
対応付けて,少なくとも1つ以上の画像データを画像データメモリに記憶するとともに,着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号とが一致した場合,前記画像データの中から前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データを読み出して表示する通信端末装置において,第2画像データを画像データメモリに記憶させる制御部を具備し,
前記制御部は,前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶させる旨の情報が入力された場合,前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶する一方,前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持するとともに,前記第1画像データの表示選択をOFFにして,前記第1画像データを前記画像データメモリに記憶し続け,その後の着信の際に受信した発呼者番号
と前記第1電話番号とが一致した場合には,前記第2画像データを読み出して表示することを特徴とする通信端末装置。
相違点
本件発明1と乙16発明は,本件発明1は,新たに入手した第2画像データを前記画像データメモリに記憶させるのに対し,乙16発明では,似顔絵データが新た
に入手した画像データであるか否かが不明である点において相違する。しかし,乙16の段落【0001】に,本発明は,イラスト情報を受信可能にした無線受信装置に関するものであると記載されているとおり,乙16発明は,画像データが受信可能であることを前提とした発明であるから,画像データを受信するかどうかという点は,実質的に相違点を構成しない。
仮にこの点が相違点を構成するとしても,携帯電話等の通信端末の技術分野において,画像を取得して内部のメモリに記憶することは,乙17及び乙18に記載されているとおり,本件特許1の出願当時の周知技術である。
そして,乙16発明においては,個人の似顔絵や社章といった装置の利用者に特有の画像データがRAMに記憶されるのであるから,このような特有の画像データを新たに取得する動機付けは十分に認められる。

したがって,上記相違点に係る事項は,周知技術に基づき当業者において容易に想到できた。

原告の主張に対する反論

原告は,乙16には,新たに登録された画像データ(第2画像データ)を優先的に表示する構成が開示されていないと主張するが,前記⑴ウのとおり,本件発明1にはそのような事項は規定されていない。
また,乙16には,フラグ内容次第で似顔絵が表示されるか,社章が表示されるかが決まることが開示されているのであるから,似顔絵及び社章のデータが追加で登録されれば,当該追加で登録された画像が優先的に表示される。したがって,原告の主張は失当である。


まとめ

以上より,本件発明1は,乙16発明に基づき当業者が容易に想到できたものであり,進歩性欠如の無効理由を有する。


無効理由1-3(乙19-1技術に基づく新規性・進歩性欠如)
乙19-1技術の内容

平成11年11月に公開された携帯電話の説明書である乙19に記載された発明(以下,本件発明1ないし3と対応させた構成を,それぞれ乙19-1技術
等という。)は,以下の構成を有する。
a
使用者が頻繁にやりとりをする相手の電話番号をアドレス帳に登録できる。
アドレス帳には,着信時に表示される画像を電話番号ごとに指定できる。b
着信時に,相手の電話番号(以下電話番号①という)がアドレス帳に登
録されていると,メモリ指定画像データで登録された第1着信画像が表示される。c
インターネットを通じて画像を取得してメモリに保存できる。

d
構成cで取得した画像を,電話番号①からの着信時に表示される画像として
指定できる。このような指定を行うと,電話番号①からの着信の際に,第1着信画像ではなく,当該指定した画像を含む第2着信画像が表示される。ただし,その場合でも第1着信画像が消えるわけではなく,電話番号①についてメモリ指定画像データの登録を行うにあたり,第1着信画像を選択することができる。イ
本件発明1と乙19-1技術との対比
乙19-1技術の構成aにおいて,アドレス帳に登録される電話番号は,構
成要件Aの電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号に当たる。そして,乙19-1技術の構成bにおいて,電話番号①からの着信の際に,メモリ指定画像データで登録された第1着信画像が表示されるから,電話番号①と第1着信画像とは対応付けて保存されている。したがって,乙19-1技術は電話番号に対応付けて,少なくとも1つ以上の画像データを画像データメモリに記憶する構成を具備している。

以上より,乙19-1技術は,構成要件Aと一致する構成を有する。乙19-1技術における電話番号①及び第1着信画像は,構成要件Bの第1電話番号及び第1画像データにそれぞれ該当するから,乙19-1技術は構成要件Bと一致する構成を有する。
乙19-1技術におけるインターネットを通じて取得した画像は構成要
件Cの新たに入手した第2画像データに該当するから,乙19-1技術は,構成要件Cと一致する構成を有する。

乙19-1技術において,インターネットを通じて取得した画像を電話番号①からの着信時に表示される画像として指定すると,第1着信画像ではなく,当該画像を含む第2着信画像が表示される。これは,構成要件Dの前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶させる旨の情報が入力された場合,前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶に該当する。乙19-1技術において,第2着信画像を指定すると第1着信画像は表示されないが,第1着信画像は電話番号との対応関係を維持したまま保存されている。これは,構成要件Dの前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係を維持するとともに,前記第1画像データの表示選択をOFFにして,前記第1画像データを前記画像データメモリに記憶し続けに該当する。乙19-1技術において,画像を指定した状態で着信があると,当該画像を含む第2着信画像が表示される。これは,構成要件Dの着信の際に受信した発呼者番号と前記第1電話番号とが一致した場合には,前記第2画像データを読み出して表示するに該当する。
以上より,乙19-1技術は,構成要件Dと一致する構成を有する。したがって,本件発明1と乙19-1技術との間に相違点はない。ウ
原告の主張に対する反論

原告は,乙19-1技術に係る携帯電話においては,登録画像を車画像から鈴木くん画像に変更すると,もともと対応付けられていた車画像と鈴木一郎の電話番号との関係が遮断されると主張するが,実際には,鈴木くん画像に変更された後であっても,
依然として,
鈴木一郎の電話番号に対する画像として

を選択可能であるから,原告の上記主張は失当である。

まとめ

以上より,本件発明1は,乙19-1技術と同一であるから,新規性欠如の無効理由を有する。仮に,両発明の間に相違点があるとしても,当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性欠如の無効理由を有する。



無効理由1-4(サポート要件違反)

本件発明1の構成要件Bの前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データという文言及び構成要件Dの前記第2画像データを前記第1電話番号に対応付けて記憶させるという文言が,原告の主張のとおり,グループに設定された画像(第1電話番号を含む2以上の電話番号のメモリ番号に対応する画像)も含むのであれば,第1画像データが表示された際に,グループに属する電話番号のうち,どの電話番号から呼び出されているのか分からないのであり,一目で誰から呼び出されているかが分かるという本件発明1の効果を奏することができない。また,この態様についてはそもそも本件明細書1に記載されて
ない。
以上より,本件発明1はサポート要件違反の無効理由を有する。
【原告の主張】


無効理由1-1(拡大先願)

本件発明1は,第1画像データが表示選択された状態で,新たに入手した第2画像データを登録した場合に,第2画像データが表示選択されることを前提とした発明である。
これに対し,乙12の段落【0032】には,

逆に,複数の画像を一つの電話番号と対応させ,着呼毎に変えたり,時間によって変えたり,着呼時に順番に出したりすることもできる。

との記載があるところ,これは,特定の電話番号に対応
付けて記憶した複数の画像を,一定に法則性に従って表示させる構成を開示するものにすぎず,最後に登録された画像を最初に表示させる(表示選択する)構成を開示しているわけではないから,乙12発明において,特定の電話番号に対応付けて記憶した複数の画像のうちのいずれかを第1画像データ,他のいずれかを第2画像データと呼ぶことはできない。
したがって,乙12-1発明は,本件発明1の構成要件BないしDを具備するものではないから,本件発明1は,乙12発明の願書に最初に添付した明細書,特許
請求の範囲又は図面に記載された発明に当たらない。


無効理由1-2(乙16発明に基づく進歩性欠如)

乙16には,特定の電話番号に対し,会社モードに対応する社章データと個人モードに対応する似顔絵データを登録することができる無線受信装置の発明が開示されているところ,乙16発明は,特定の電話番号の会社モード,個人モードにそれぞれ対応付けて記憶した2種の画像を,会社モードの着信か,個人モードの着信かによって区別して表示させるものに過ぎず,先に電話番号に対応させて記憶させていた画像データが表示選択された状態で,新たな画像を同じ電話番号に対応させて記憶させた場合に,後に記憶させた画像が優先的に表示される態様は開示されて
いない。
そのため,乙16発明における無線受信装置で記憶される社章データ,似顔絵データのいずれか一方を第1画像データ,もう一方を第2画像データと呼ぶことはできないから,乙16発明は,本件発明1の構成要件BないしDを具備するものではない。

また,乙16発明では,新たに入手した画像データが優先的に表示される態様になっていない以上,第2画像データ(新たに入手した画像データ)が第1電話番号に対応付けて記憶させる旨の情報が入力された場合に,①第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶する,②第1画像データの表示選択をOFFにする,③その後の着信の際に受信した発呼者番号と第1電話番号とが一致した場合
には,第2画像データを読み出して表示する,という一連の動作をするものではないから,乙16発明が本件発明1の構成要件Dを具備するものでないことは明らかである。
よって,乙16発明における社章データ及び似顔絵データが,それぞれ本件発明1の第1画像データ及び第2画像データに対応することを前提とした,乙
16発明と本件発明1の一致点及び相違点に関する被告の主張は,失当であり,本件発明1は乙16発明から容易に想到できた発明に当たらない。



無効理由1-3(乙19-1技術に基づく新規性・進歩性欠如)

乙19-1技術に係る携帯電話では,車,ペット,クリスマス,雪だるま,鈴木くんの5つの画像から,特定(鈴木一郎)の電話番号に対応する登録画像として1つの画像(車)を選択した後,登録画像を鈴木くんの画像に変更すると,同電話番号に対応する登録画像が鈴木くんの画像に変更され,車の画像との対応関係は遮断される。
そのため,乙19-1技術は,本件発明1の構成要件Dを具備するものではないから,本件発明1と乙19-1技術の対比に関する被告の主張は妥当でなく,本件発明1が乙19-1技術との対比において,新規性・進歩性を有することは明らか
である。


無効理由1-4(サポート要件違反)

本件発明1の構成要件B及びDは,同じ画像を複数の電話番号と対応付けることを排除する構成ではない。グループ設定された画像が当該グループに属する複数の電話番号からの着信時に表示されたとしても,少なくとも,当該グループのメンバーからの着信であることは把握できるのであり,一目で誰から呼び出されているかが分かるという効果は一定程度奏する。そのため,本件発明1の構成要件Bの第1画像データに,グループ設定された画像のデータを含むと解釈したとしても,本件明細書1に記載の作用効果を奏さない発明を権利範囲に含むことにはならず,本件特許1がサポート要件違反の無効
理由を有するとはいえない。
また,原告は,被告製品の個別のアドレス帳に登録された画像データが第2画像データに当たると主張してきたところ,同画像データは,第1電話番号のメモリ番号と一対一対応になっているものであり,一目で誰から呼び出されているかが分かるとの効果を奏する。よって,本件発明1の構成要件Dに関連したサポー
ト要件違反の主張は失当である。
5
争点⑸(本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)
【被告の主張】


無効理由2-1(乙19-2技術に基づく新規性・進歩性欠如)


乙19-2技術の内容

乙19-2技術は,以下の構成を有する。
a
前記4の被告の主張⑶アaと同じ。

b
着信時に,相手の電話番号(以下電話番号①という)がアドレス帳に登
録されている場合,その相手に設定された画像(以下着信画像①という)が表示されるとともに,その相手が分類されているグループに設定された着信音(以下着信音①という)が鳴る。
c
インターネットを通じて,画像,メロディ,動画(iアニメ)を取得してメ
モリに保存したり,メールに添付されたメロディを取得してメモリに保存したりできる。
d
電話番号①の相手が分類されたグループに,
構成cで取得した画像
(以下
着信画像②という)を設定する場合に,構成cで取得したメロディ(以下着信音②という)を電話番号①が分類されたグループに設定することができる。e
着信音①を削除することなく,着信音②を保存することができる。そして,
電話番号①からの着信の際に,
着信音②が鳴るとともに,
着信画像②が表示される。

乙19-2技術と本件発明2との対比
前記4の被告の主張⑶

,乙19-2技術は,構成要件Aと一致

する構成を有する。
乙19-2技術の構成bにおける電話番号①,着信画像①及び着信音①は,構成要件Bにおける第1電話番号,第1画像データ及び第1着信メロディにそれぞれ該当するから,乙19-2技術は構成要件Bと一致する構成を有する。

乙19-2技術の構成cでは,インターネットを通じて,画像,メロディ,動画を取得したり,メールに添付されたメロディを取得したりする。これは,原告
の主張を前提すれば,構成要件Cの着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データに該当する。したがって,乙19-2技術は構成要件Cと一致する構成を有する。乙19-2技術における電話番号①,着信画像②及び着信音②は,構成要件Dにおける第1電話番号,第2画像データ及び着信メロディデータにそれぞれ該当する。よって,乙19-2技術は,構成要件Dと一致する構成を有する。
乙19-2技術の構成eにおいて,着信音①を削除することなく着信音②を保存することは,構成要件Eにおいて,第1着信メロディを着信メロディデータメ
モリに記憶し続けることと一致する。よって,乙19-2技術は構成要件Eと一致する構成を有する。
したがって,本件発明2と乙19-2技術との間に相違点はない。ウ
原告の主張に対する反論

原告は,iアニメが音声付きの動画なのか,無音声のものなのかは乙19の記載内容からは判然としないと主張するが,アニメーションの略であるアニメが,音声を伴うことは通常であるから,iアニメなる語を見た当業者であれば,これを音声付き動画であると理解するのが当然である。
また,原告は,iアニメに含まれる画像を着信画像として採用した場合に,iアニメに含まれる音声が着信音として採用されるわけではないことを指摘す
るところ,仮に,その点が本件発明2と乙19-2技術の相違点となるとしても,iアニメの画像を着信画像に設定した場合に,iアニメの音声を着信音として設定するようにすることは,当業者にとって容易想到である。エ
以上より,本件発明2は,乙19-2技術に基づき,新規性欠如の無効理由
を有する。仮に,両発明の間に相違点があるとしても,当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性欠如の無効理由を有する。


無効理由2-2(乙17-2発明に基づく新規性・進歩性欠如)


乙17-2発明の内容

平成12年4月7日公開の特許公報(乙17。特開2000-101687号公報)に記載された発明(以下,本件発明2及び3との対比で乙17-2発明等という。)は,以下の構成を有する。
a
電話番号メモリに記憶する複数の電話番号に対応付けて画像データを画像
メモリに記憶するとともに,
b
着信時の発番号が電話番号メモリに記憶されている電話番号があれば,その
電話番号に対応する,画像入力部から取得した画像データ①を表示させるとともに,その電話番号に対応する,音入力部から取得した音データ①を発音する,無線電話装置と通信可能な画像表示装置であって,
c
発信者から無線電話装置を介して音データ②と一緒に送信されてきた画像
データ②を受信し,画像データ②を画像メモリに記憶し,画像メモリに記憶する画像データ②を用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備し,d
制御部は,受信した画像データ②及び音データ②を特定の電話番号に対応づ
けて画像メモリ及び音メモリにそれぞれ記憶し,
e
当該特定の電話番号からの着信の際に,画像データ②を表示させ,音データ
②を発音すること,を特徴とする画像表示装置。

乙17-2発明と本件発明2との対比
乙17-2発明の構成aないしdは,本件発明2の構成要件AないしDとそ
れぞれ一致する。
また,乙17-2発明の構成eは,本件発明2の構成要件Eにおける

前記第1電話番号からの着信の際に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させること,を特徴とする通信端末装置。

と一致する。
乙17-2発明と本件発明2の一致点及び相違点は,以下のとおりである。一致点

電話帳データメモリに記憶する複数の電話番号に対応付けて,画像データを画像データメモリに記憶するとともに,
着信の際に受信した発呼者番号と前記複数の電話番号中の第1電話番号とが一致した場合,前記第1電話番号に対応する第1画像データを読み出して表示し,この表示に際して対応する第1着信メロディを鳴らす通信端末装置において,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信するとともに前記第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる制御及び前記画像データメモリに記憶する画像データを用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備し,

前記制御部は,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し,
前記第1電話番号からの着信の際に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着
信メロディを発生させること,を特徴とする通信端末装置。
相違点
第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合に,本件発明2は,第1電話番号に対応付けて記憶している第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続けるのに対し,乙17-2発明はそのようになっている
か否かが不明である点。
相違点についての検討
乙17-2発明において,発信者からの画像データ②及び音データ②を電話番号に対応付けて記憶する際に,既に電話番号に対応付けて記憶されている音データ①を積極的に消去する旨の記載はないし,消去しなければならない理由もないため,
消去することなく記憶し続けると解するのが自然であり,実質的な相違点ではない。また,電話番号に対応付けられた音を変更する際に,変更前の音を消去しないこ
とは,本件特許2の出願当時における周知技術である。
したがって,相違点に係る事項は,実質的な相違点でないか,周知技術に基づき当業者において容易に想到できたものである。

原告の主張に対する反論
原告は,乙17の段落【0037】には,画像データと音声データを一緒に
受信する態様は開示されていないと主張するが,同段落には,

第2実施例における画像データと同様の方法を用いて,通話中の相手の声を無線電話装置からインターフェース部601を介して音メモリ609に格納してもよい。

と記載されており,第2実施例である段落【0032】には,

無線電話装置(PS)は発信者とPIAFSのリンクを確立し,画像データを受信して画像表示装置に転送し,画像データはインターフェース部401を介して画像メモリ403に格納される。

との記載がある。
これらを考え合わせると,乙17には,

発信者(通話中の相手)とPIAFSのリンクを確立し,画像データ及び相手の声を受信して画像表示装置に転送し,画像データを画像メモリ403に格納し,相手の声を音メモリ609に格納する。

ことが記載されているから,画像データ及び相手の声(音声データ)を一緒に受信することが開示されているということができ,原告の上記主張は失当である。また,原告は,乙17の段落【0035】には,音データを所定の電話番号に対応付ける態様が開示されていないと主張するところ,同【0037】には,受
信した相手の声(音データ)をその相手の電話番号と対応付けることが開示されているから,原告の主張は失当である。

まとめ

以上より,本件発明2と乙17-2発明との間には,実質的な相違点はないか,相違点があるとしても,周知技術に基づき当業者において容易に想到できたものであるから,本件発明2は,新規性・進歩性欠如の無効理由を有する。⑶

無効理由2-3(拡大先願)


乙12-2発明の内容

乙12-2発明は,以下の構成を有する。
a
メモリに記憶された複数の電話番号に対応付けて,動画データを画像メモリ
に記憶するとともに,
b
着信の際に受信した発呼側の電話番号とメモリ内の電話番号が一致した場
合に,当該電話番号に対応する音声付き動画データ(第1動画データ及び第1音声データ)を読み出して表示及び出力する無線携帯端末において,
c
ネットワークを介して音声付き動画データ(第2動画データ及び第2音声デ
ータを含むデータ)を受信して,第2動画データを画像メモリに記憶させるとともに,当該画像メモリに記憶する第2動画データを着信画像とする制御部を有し,d
当該制御部は,キー入力部の操作により音声付き動画データ(第2動画デー
タ及び第2音声データを含むデータ)を電話番号に対応付けて記憶させた場合,第2動画データと一緒に送信されてきた第2音声データを着信メロディメモリに記憶し,
e
電話番号に対応付けて記憶している第1音声データを着信メロディメモリ
に記憶し続けるとともに,当該電話番号からの着信の際に画像メモリから第2画像データを読み出して表示する場合,着信メロディメモリに記憶された第2音声データに基づいて着信メロディを出力させる,無線携帯端末。

乙12-2発明と本件発明2との対比
乙12-2発明の構成aにおけるメモリ及び画像メモリは,それぞ
れ本件発明2の電話帳データメモリ画像データメモリに,構成aにおける動画データ
に含まれる画像データは,
本件発明2の
画像データ
に該当する。
よって,乙12-2発明の構成aは,構成要件Aと一致する。
乙12-2発明の構成bにおける電話番号は,本件発明2の第1電話番号に,構成bにおける第1動画データに含まれる画像データ及び音声データは,それぞれ,本件発明2の第1画像データ及び第1着信メロディのデ
ータに該当する。よって,乙12-2発明の構成bは,構成要件Bと一致する。乙12-2発明の構成cにおける第2動画データに含まれる画像データ及び音声データは,それぞれ,本件発明2の第2画像データ着信メロディデータに該当し,第2動画データは,画像データ及び音声データを含むものであるから,これらは一緒に送信されてきたデータである。よって,乙12-2発明の構成cは,構成要件Cと一致する。
前述のとおり,乙12-2発明における第2動画データに含まれる画像データ及び音声データは,それぞれ,本件発明2の第2画像データ着信メロディデータに対応するから,乙12-2発明の構成dは構成要件Dと一致する。乙12-2発明の構成eにおいて,第1音声データを削除することなく第2
音声データを保存することは,構成要件Eにおいて,第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続けることと一致する。よって,乙12-2発明の構成eは,構成要件Eと一致する。

原告の主張に対する反論

原告は,乙12-2発明におけるMPEG-4方式の動画につき,音声付きの動画であるか否かは不明であると主張するが,乙12の段落【0041】に,

MPEG-4方式では動画像を処理できるため,動画を画像メモリ18に記憶して表示するようにしてもよい。

と記載されており,同【0025】において,MPEG-4方式について,画像(含む音声)と説明されていることから,MPEG-
4方式の動画像は,音声付きのものである。また,MP4はMPEG-4により標準化されたものであるところ,前記2の原告の主張⑸アによれば,MP4は,動画映像データ,音声データ及びこれらの同期を取るための情報がコンテナに格納されたフォーマットであるから,MPEG-4は,音声付きの動画であることとなる。そして,本件発明2の画像データメモリ及び着信メロディデータメモリ
が観念的なメモリ領域であるという原告の主張を前提とすれば,乙12も,MPEG-4の動画データ及び音声データがそれぞれ観念的な画像メモリ及び着信メロディメモリに記憶され,着信時に,音声付き動画における動画データが着信画像として表示出力され,これに伴い同期された音声データが着信音として出力されることが開示されていることになる。
また,原告は,乙12には,音声付きの動画を着信画像及び着信音として使用する態様の開示がないと主張するが,
上記のとおり,
乙12の段落
【0041】
には,
MPEG-4を用いる旨の記載があり,音声付き動画の画像を着信画像として用いる旨記載されていることは明らかである。また,音声付き動画を再生すれば,当然画像及び音声の両方が再生されるから,音声付き動画における画像を着信画像として用いると,必然的に音声付き動画における音声を着信音として用いることと
なる。

以上より,本件発明2は,乙12-2発明と実質的に同一であるから,特許
法29条の2に基づく無効理由を有する。


無効理由2-4(サポート要件違反)

前記4の被告の主張⑷と同様であり,本件発明2はサポート要件違反の無効理由を有する。
【原告の主張】


無効理由2-1(乙19-2技術に基づく新規性・進歩性欠如)


乙19-2技術に係る携帯電話では,画像とメロディはインターネットを通
じて一緒に送信されてくるものではないため,画像とメロディを別々にインターネットを通じて取得して,着信画像,着信音として使用することとなるところ,これが本件発明2の構成要件CないしEを具備するものとはいえない。乙19に記載のiアニメは,音声付きの動画なのか無音性なのか,記載内容から判然とせず,仮に,音声付きの動画であったとしても,乙19には,iアニメに含まれる画像を着信画像として採用した場合に,iアニメに含まれる音
声が着信音として採用される旨の記載はない。そのため,iアニメの動画をインターネットから受信する態様についても,本件発明2の構成要件CないしEに相
当するものではない。

以上のとおり,乙19-2技術は,本件発明2の構成要件CないしEを具備
するものではないため,本件特許発明2が,乙19-2技術と同一の発明であるとは言えない。
また,本件発明2の構成要件CないしEが,当業者が容易に想到することができた構成であるとも言えない。
したがって,本件特許発明2が,乙19-2技術との対比において,新規性・進歩性を有することは明らかである。


無効理由2-2(乙17-2発明に基づく進歩性欠如)


乙17の明細書の段落
【0037】
の記載は,
画像データと音声データが別々

に取り込まれることを前提とするものであって,これらを一緒に受信する態様は開示されていないから,乙17-2発明は,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信するという本件発明2の構成要件Cを具備しない。また,着信メロディデータと第2画像データを一緒に受信するものではない以上,乙17-2発明は,本件特許発明2の構成要件D及びEを開示するものでもない。イ
乙17の明細書の段落【0035】にも,音データを所定の電話番号に対応
付ける態様は開示されていないから,乙17-2発明は,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶するとの構成(構成要件D)を具備しない。

以上より,乙17-2発明は,本件発明2の構成要件CないしEの構成を具
備するものではないため,本件発明2は,乙17-2発明から容易に想到できた発明には当たらない。
したがって,本件発明2に進歩性欠如の無効理由が存しないことは明らかである。⑶

無効理由2-3(拡大先願)

乙12の段落【0041】には,被告の主張のとおり,動画を画像メモリに記憶
して表示することを許容する旨の記載があるが,ここでいう動画が音声付きの動画であるか否かは不明である。また,仮に,動画が音声付きの動画を含むものであったとしても,乙12には,音声付きの動画を着信画像及び着信音として使用する態様について,何ら具体的な記載がない。
したがって,乙12-2発明は,本件発明2の構成要件CないしEを具備するものではないため,本件発明2は,乙12の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明には当たらない。


無効理由2-4(サポート要件違反)

前記4の原告の主張⑷において述べたのと同様の理由により,本件特許2にサポート要件違反の無効理由はない。
6
争点⑹(本件特許3は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)
【被告の主張】


無効理由3-1(乙19-3技術に基づく新規性・進歩性欠如)
乙19-3技術の内容

乙19-3技術は,以下の構成を有する。
a
使用者が頻繁にやりとりをする相手の電話番号を個別のアドレス帳に登録
できる。アドレス帳には,着信時に表示される画像を電話番号ごとに設定できる。また,電話番号をグループに分類でき,グループに着信音を設定できる。b
着信時に,相手の電話番号(以下電話番号①という)がアドレス帳に登
録されている場合,その相手に設定された画像(以下着信画像①という)が表示されるとともに,その相手が分類されているグループに設定された着信音(以下着信音①という)が鳴る。
c
インターネットを通じて,画像,メロディ,動画(iアニメ)を取得してメ
モリに保存したり,メールに添付されたメロディを取得してメモリに保存したりでき,保存した画像,メロディ,動画を用いて着信時の表示制御をしたり着信メロディを鳴らしたりすることができる。

d
着信画像①に代えて構成cで取得した画像(以下着信画像②という)を
電話番号①に設定し,着信音①に代えて構成cで取得したメロディ(以下着信音②という)を電話番号①が分類されたグループに設定すると,電話番号①からの着信の際に,着信音②が鳴るとともに,着信画像②が表示される。イ
乙19-3技術と本件発明3との対比

前記5

ないし

と同様に,乙19-3技術は,構成要件Aな

いしDと一致する構成を有する。
したがって,本件発明3と乙19-3技術との間に相違点はない。ウ
前記5の被告の主張⑴ウのとおり,当業者は,乙19-3技術におけるiアニメは,音声付き動画と理解するのであるから,iアニメを着信画像として設定した場合,iアニメの音声を着信音として設定するようにすることは,当業者にとって容易想到な事項である。

以上より,本件発明3は,乙19-3技術に基づき,新規性欠如の無効理由
を有する。仮に,両発明の間に相違点があるとしても,当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性欠如の無効理由を有する。


無効理由3-2(乙17-3発明に基づく新規性・進歩性欠如)


乙17-3発明の内容

乙17-3発明は,以下の内容を有する。
a
電話番号メモリに記憶する複数の電話番号に対応付けて,画像データ及び音
データを画像メモリ及び音メモリにそれぞれ記憶し,
b
着信時の発番号が電話番号メモリに記憶されている電話番号があれば,その
電話番号に対応する,画像入力部から取得した画像データ①を表示させるとともに,その電話番号に対応する,音入力部から取得した音データ①を発音する,無線電話装置と通信可能な画像表示装置であって,
c
発信者から無線電話装置を介して音データ②と一緒に送信されてきた画像
データ②を受信し,画像データ②及び音データ②を画像メモリ及び音データにそれ
ぞれ記憶し,記憶した画像データ②及び音データ②を用いて着信の際の表示を制御する制御部を具備し,
d
制御部は,特定の電話番号に対応づける画像を画像データ①から画像データ
②に変更し,同対応付ける音を音データ①から音データ②に変更した後,当該特定の電話番号からの着信の際に,画像データ②を表示させ,音データ②を発音すること,を特徴とする画像表示装置。

乙17-3発明と本件発明3との対比

乙17-3発明の構成aないしdは本件発明3の構成要件AないしDとそれぞれ一致し,本件発明3と乙17-3発明との間に相違点はない。

前記5の被告の主張⑵において述べたのと同様に,本件発明3は,乙17-
3発明に基づき,新規性欠如の無効理由を有する。仮に,両発明の間に相違点があるとしても,当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性欠如の無効理由を有する。

無効理由3-3(拡大先願)


乙12-3発明の内容

乙12-3発明は,以下の内容を有する。
a
メモリに記憶された複数の電話番号に対応付けて,画像データと音声データ
を含む動画像データを画像メモリに記憶するとともに,
b
着信の際に受信した発呼側の電話番号とメモリ内の電話番号が一致した場
合に,電話番号に対応する第1動画像データ(画像データ及び音声データ)を読み出して表示及び出力する無線携帯端末において,
c
ネットワークを介して第2動画像データ(画像データ及び音声データ)を受
信して記憶するとともに,記憶した第2動画像データの画像データ及び音声データを用いた着信表示及び着信メロディの制御を行う制御部を有し,
d
当該制御部は,キー入力部の操作により第1動画像データから第2動画像デ
ータを電話番号に対応付けて記憶させた後に,当該電話番号から着信を受けた場合
に,第2動画像データの画像データを読み出して表示し,当該第2動画像データの音声データに基づいて着信メロディを出力させる,無線携帯端末。イ
乙12-3発明と本件発明3との対比

前記5の被告の主張⑶イと同様に,乙12-3の構成aないしdは本件発明3の構成要件AないしDとそれぞれ一致し,本件発明3と乙12-3発明との間に相違点はない。
したがって,本件発明3は,乙12-3発明と同一であるから,特許法29条の2に基づく無効理由を有する。


無効理由3-4(サポート要件違反)

前記4の被告の主張⑷で述べたのと同様であり,本件発明3はサポート要件違反の無効理由を有する。
【原告の主張】


無効理由3-1(乙19-3技術に基づく新規性・進歩性欠如)

前記5の原告の主張⑴で述べたのと同様に,乙19-3技術は,本件発明3の構成要件CないしEを具備するものではないため,本件特許発明3が,乙19-3技術と同一の発明であるとは言えない。
また,本件発明3の構成要件CないしEが,当業者が容易に想到することができた構成であるとも言えない。
したがって,本件特許発明3が,乙19-3技術との対比において,新規性・進
歩性を有することは明らかである。


無効理由3-2(乙17-3発明に基づく進歩性欠如)

前記5の原告の主張⑵で述べたとおり,乙17の段落【0037】の記載は,画像データと音声データは別々に取り込まれることが前提となっているものであって,
これらを一緒に受信する態様は開示されていないから,
乙17-3発明は,
第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信してという本件発明3の構成要件Cを具備せず,したがって構成要件Dを具備するともいえな
い。
また,同【0035】にも,音データを所定の電話番号に対応付ける態様は開示されていないから,乙17-3発明は,第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信して記憶する制御及び記憶した前記第2着信メロディデータと前記第2画像データを用いて着信の際の表示と着信メロディの発生を制御する制御部(構成要件C)を具備しない。以上より,乙17-3発明は,本件発明3の構成要件C及びDの構成を具備するものではないため,本件発明3は,乙17-3発明から容易に想到できた発明には当たらず,進歩性欠如の無効理由が存しないことは明らかである。


無効理由3-3(拡大先願)

前記5の原告の主張⑶で述べたとおり,乙12-3発明は,本件発明3の構成要件C及びDを具備するものではないから,本件発明3は,乙12の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明には当たらない。⑷
無効理由3-4(サポート要件違反)

前記4の原告の主張⑷において述べたのと同様の理由により,本件特許3にサポート要件違反の無効理由はない。
7
争点⑺(消滅時効)について

【被告の主張】
原告は,平成29年12月27日付けで,被告に対し,被告製品が本件特許1ないし3を侵害するとの内容の通知書(乙11)を送付したところ,平成19年1月1日から,上記通知書送付の10年前である平成19年12月26日までの期間における不当利得返還請求権は,時効により消滅したため,被告はこれを援用する意思表示をする。
【原告の主張】

争う。
8
争点⑻(被告の利得及び原告の損失の額)について
【原告の主張】
被告は,平成19年1月以降,被告製品1ないし8を製造,販売したことにより本件発明1ないし3を実施し,
平成20年2月以降,
被告製品9ないし15を製造,
販売したことにより,本件発明2及び3を実施した。
本件発明1ないし3を実施している場合の実施料率は4.5%を下らず,本件発明2及び3を実施している場合の実施料率は3%を下らない。
被告製品1ないし8の現在までの総売上額は,24億円を下らず,被告製品9ないし15の現在までの総売上額は,21億円を下らない。
以上より,被告は,原告に対し,被告製品1ないし8の販売に関し,1億080
0万円(24億円×4.5%)の実施料を,被告製品9ないし15の販売に関し,6300万円(21億円×3%)の実施料を支払う義務を負っていたが,かかる支払を行っておらず,同額の利得を得た。
【被告の主張】
争う。

第4

当裁判所の判断

1
本件発明1ないし3について



本件明細書1ないし3には,以下の記載がある(段落番号は,本件明細書1
による。)。
(発明が解決しようとする課題)
本発明は,(中略)入手した画像データを有効活用することが可能な通信端末装置,画像情報表示方法および情報記憶媒体を提供することを目的とする(【0006】)。
(実施の形態)
10は,記憶部であり,発呼や電子メールの送信に使用する電話帳データや画像
データ,着信メロディデータを記憶する(【0070】)。
12は,外部接続端子であり,DSC(デジタル・スチル・カメラ)やDVC(デ
ジタル・ビデオ・カメラ)などの画像データ入力装置13から画像データが入力され,記憶部10に記憶される。また,入力された着信メロディデータも記憶することができる(【0072】)。
通信端末装置のユーザは,自己の写真や相手の写真などの画像データを,従来のデータ通信やインターネットを経由した電子メールの添付ファイルとして受信したり,画像データ入力装置13から外部接続端子12を経由して直接入手すると,キー入力部8を操作して画像データの登録モードに移行する(【0075】)。図2(A)は,通信端末装置が上述の通りにして入手した画像データであり,ユーザ自身や友人などの写真である。

図2(B)は,画像データ登録モードにおける表示画面を示しており,制御部7は電話番号と名前やニックネームの入力を促す。なお,ユーザは,キー入力部8を操作して直接入力することも可能であるが,発呼の際に電話番号を選択する操作と同じようにして,電話帳データを利用して電話番号と名前やニックネームを呼び出して入力することも可能である。

また,登録しようとしている電話番号に対応して,既に画像データが登録されている場合には,制御部7はその旨を表示し,新たに画像データを記憶するか否かを確認する。そして,ユーザが記憶する旨の情報を入力すると,制御部7は電話番号と画像データを対応付けて記憶するとともに,旧の画像データを消去するか否かを表示する。その後,ユーザが消去する旨の情報を入力すると,制御部7は旧の画像
データを消去するが,一方ユーザが消去しない旨の情報を入力した場合には,電話番号との対応関係を維持しながら旧の画像データを消去せずに記憶し続ける。図3は,本発明に係る通信端末装置が具備する記憶部の模式図であり,新たに入手した画像データの登録前後の状態を示している。
図3(A)は,画像データの登録前の状態であり,電話/電子メールメモリのメ
モリ番号1には,電話番号が090-8765-4321,名前が山田花子,E-MAILアドレスが[email protected]が登録されている。また,画像デー
タメモリには,メモリ番号1に対応して,画像データ1が登録され,表示フラグがONとなっている(【0077】ないし【0081】)。
この図3(A)の状態で,通信端末装置のユーザが,入手した画像データを,電話帳データを利用してメモリ番号1の電話番号と名前を呼び出して入力したのが図3(B)である。この場合,登録しようとしている電話番号に対応して,既に画像データ1が登録されているので,制御部7はその旨を表示し,新たに画像データ3を記憶するか否かを確認する。
そして,
ユーザが記憶する旨の情報を入力すると,
制御部7は表示フラグをONにして電話番号(即ち,メモリ番号1)と画像データ3を対応付けて記憶するとともに,旧の画像データである画像データ1を消去する
か否かを表示する。その後,ユーザが消去しない旨の情報を入力した場合には,電話番号(即ち,メモリ番号1)との対応関係を維持しながら旧の画像データを消去せずに記憶し続け,
表示フラグをOFFにする。
なお,
図3には表示していないが,
画像データメモリ(本件明細書3では,画像データメモリが画像データへと訂正されている。)と一緒に送信されてきた着信メロディデータを画像データメ
モリと同様の形式で着信メロディデータメモリに記憶しており,着信の際,表示する画像データに対応付けられた着信メロディを流すことも可能である。また,この画像データが動画像であれば,表示された人物が着信メロディに合わせて歌っている様にみせることが可能である(【0083】)。
本発明に係る通信端末装置が,図3(B)に示す記憶状態において,山田花子(即
ち,電話番号が090-8765-4321)から呼び出しがあった場合,制御部7は電話/電子メールメモリと画像データメモリを検索し,画像データ3および電話番号を表示(図5(A)参照),画像データ3および名前を表示(図5(B)参照)または画像データ3,名前および電話番号を同時に表示(図5(C)参照)する。なお,この表示に際して,制御部7は対応する着信メロディを鳴らすことも可
能である(【0088】)。
(発明の効果)

以上説明した様に,本発明に係る通信端末装置,画像情報表示方法および情報記憶媒体によれば,自己の写真や相手の写真などの画像データを,データ通信やインターネットを経由した電子メールの添付ファイルとして受信したり,画像データ入力装置から直接入手して記憶し,着信の際に通知される発呼者番号に対応する画像データを読み出して表示するので,
一目で誰から呼び出されているかが分かる【0

103】)。


原告は,本件特許1につき,平成14年5月20日付けで,手続補正書(乙
21)及び意見書(乙22)を提出し,記載不備と指摘された点について,表示選択及び表示選択をOFFという文言を追加して対処する旨を述べた。原告は,本件特許2につき,平成15年4月2日付けで手続補正書(乙3)及び意見書(乙5)を提出し,従前の請求項7を削除した上で,新たに請求項7を追加する手続補正を行い,意見書において,請求項7に係る発明と引用例との対比として,画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを電話番号に対応付けて記憶させるとともに,当該電話番号から着信があると,対応付けて記憶した画像データを表示し,対応付けて記憶した着信メロディデータを発生させることを最大の特徴とすること等を述べ,さらに,同年7月30日付けで,手続補正書(乙4)及び意見書(乙2)を提出し,請求の範囲の限定的減縮であるとして,請求項7の文言の追加等を行い,本件発明2として登録された。
2
争点⑴(被告製品1ないし8は本件発明1の技術的範囲に属するか。)につ
いて
⑴電話帳データメモリ及び画像データメモリ
(構成要件A,C及びD)
について
携帯電話端末において,メモリ(記憶領域)として機能するのは,大きく分けて端末の内部に存在するメモリと外部に存在するメモリ(端末に挿入して使用するS
Dカード,USIMカード等)であると考えられる(甲9,弁論の全趣旨)。被告は,本件発明1における電話帳データメモリと画像データメモリは
物理的に別個のメモリであるところ,被告製品1ないし8において,電話帳データ及び画像データは同じ記憶領域(内部メモリ)に保存されるから,構成要件A,C及びDを充足しないと主張するが,本件発明1の請求項の記載には,電話帳データ及び画像データのそれぞれが内部メモリと外部メモリに分かれて記憶されるとか,内部メモリであっても,物理的に別のメモリに記憶されることを定めたと解すべき記載はない。
被告は,本件明細書1の【図3】及び段落【0081】ないし【0083】では,両メモリが別個のメモリとして取り扱われていると主張するが,上記記載は,電話帳データと画像データを保存する記憶領域が物理的に分けられていることを記載
するものと必ずしも解することはできず,模式図である【図3】は,両データが概念的・抽象的に異なる記憶領域に保存されることを示したものと考えても矛盾しない。また,このことは,本件明細書1の【図1】及び段落【0070】において,記憶領域が単一のものとして記載されていることとも整合する。
したがって,被告の上記主張は採用できず,被告製品1ないし8は,相手側の電
話番号やEメールアドレス等を登録した電話帳データのほか,画像のデータを本体の内部メモリに区別して保存することができるのであるから,電話帳データメモリ及び画像データメモリ(構成要件A,C及びD)の文言を充足する。⑵

前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データ(構成要件B)
及び
前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係
(構成要件D)について
被告は,被告製品1ないし8においてグループ設定機能を用いて第1電話番号のメモリ番号を含むグループに設定した画像は,①第1電話番号のメモリ番号と第1画像データが直接結び付いていないこと,及び②着信があった際,いずれの電話番号からの着信かを一義的に特定することができないことから,第1電話番
号のメモリ番号に対応する第1画像データ(構成要件B,D)に該当しないと主張する。

しかし,前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データ(構成要件B)という文言からは,第1電話番号のメモリ番号と第1画像データが一対一で,他のファクターを介さずに直接対応することを要すると解すことはできず,他の請求の範囲の文言にもそのように解すべき記載はない。そうすると,①について,第1電話番号のメモリ番号が特定のグループに登録され,グループ設定機能により当該グループに対応して第1画像が設定された場合であっても,第1画像が第1電話番号のメモリ番号に対応しているという構成要件Bの文言を充足するというべきである。
また,②について,確かに,本件発明1の発明の効果は,着信があった際に,一目で誰から呼び出されているかが分かるということにあるところ,被告製品において着信があった際,グループに設定された画像が表示された場合には,グループに含まれるメモリ番号に対応する電話番号のうちいずれから着信があったのかを特定することはできない。
しかし,被告製品1ないし8においても,グループ設定機能を用いて当該グルー
プに第1電話番号のメモリ番号のみを登録した場合には,第1電話番号と第1画像とは一対一で対応することになるし,グループに対応する第1画像の設定を行い,当該グループに複数の電話番号のメモリ番号を登録した場合であっても,着信の際に,当該グループに属する電話番号のうちのいずれかから着信があったということは特定できるのであるから,本件発明1の上記効果を奏するということができる。
したがって,被告の上記主張には理由がなく,被告製品1ないし8は,前記第1電話番号のメモリ番号に対応して表示選択されている第1画像データ(構成要件B)
及び
前記第1画像データと前記第1電話番号との対応関係
(構成要件D)
の文言を充足する。


表示選択及び表示選択をOFF(構成要件D)について

被告製品1ないし8においては,着信画像,着信音の設定は,グループごとの設定よりも電話帳ごとの個別の設定の方が優先されるため,グループ設定機能を用い
てグループ1に第1電話番号のメモリ番号を登録し,グループ1に着信画像1を設定した場合は,第1電話番号より着信があれば着信画像1が表示されるのに対し,着信画像1のグループ設定はそのままに,第1電話番号の電話帳に個別に第2画像データを登録した場合,第1電話番号からの着信に対し,第1画像は表示されず,第2画像が表示されることになる。
上記状態は,当初第1画像が表示選択されていたが,第1画像の表示選択がOFFとなり,第2画像が表示選択されたと表現することができる。
被告は,本件発明1の表示選択及び表示選択をOFF(構成要件D)について,着信時の表示の可否を指定する情報が存在することを前提とし,画像を表
示(非表示)するように当該情報を設定することを意味すると主張するが,本件発明1の請求の趣旨にはそのような情報の存在又は設定に関する記載はなく,被告の上記主張を採用することはできない。
以上によれば,被告製品1ないし8は,表示選択及び表示選択をOFF(構成要件D)の文言を充足する。



まとめ

被告製品1ないし8が,その他の構成要件の文言を充足することについては,当事者間に特に争いはない。
したがって,被告製品1ないし8は,本件発明1の技術的範囲に属するということができる。
3
争点⑵(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか。)について


被告製品においては,インターネットやMMSのメッセージを通じて音声付
き動画ファイルをダウンロードし,ムービーというフォルダに保存し,特定の電話番号と対応付けてアドレス帳に登録すると,当該電話番号から着信があった際に,当該音声付き動画が再生される(甲9ないし11,乙1)。
原告は,この構成が,本件発明2における,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データ(構成要件C),第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し(構成要件D),及び前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させる(構成要件E)の文言を充足すると主張するので,この点について検討する。


構成要件CないしEの文言の解釈


本件発明2において,着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信,第2画像データを前記画像データメモリに記憶させる,
画像データを用いて着信の際の表示を制御する(構成要件C)との文言,第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶し(構成要件D)との文言,第1着信メロディを着信メロディデータメモリに記憶し続け,画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させる(構成要件E)との文言
は,それ自体としては,第2画像データ,着信メロディデータ,第1着信メロディをそれぞれ別個のファイルとして扱い,それぞれの保存及び読み出しを別個の処理として行うことを予定したものと解するのが相当である。

次に,本件発明2は,対応付けという文言を複数個所で(構成要件A,
D,E)で用いているが,いずれも通信端末装置の制御,機能について用いられていることから,複数の電話番号に対応付けて,画像データを画像メモリに記憶(構成要件A),第1電話番号に対応付けて前記第2画像データメモリを表示選択し(構成要件D),及び第1電話番号に対応付けて記憶している前記第1着信メロディ(構成要件E)については,当該通信端末装置がその対応付けを行うことを予定したものと解される。

他方,画像データと着信メロディの関係については,第1画像データと第1着信メロディとの関係と,第2画像データと着信メロディデータとの
関係では,文言上異なる特定がされている。
すなわち,
第1画像データと第1着信メロディとの関係については,
前記第1電話番号に対応する第1画像データ(構成要件B),前記第1電話番号に対応付けて記憶している前記第1着信メロディ(構成要件E)との文言が使われていることから,第1画像データと第1着信メロディの双方がいずれも第1電話番号に対応付けられていると解される。そして,上記したように,電話番号への対応付けは,通信端末装置で行われているものであるから,第1画像データと第1着信メロディの双方は,通信端末装置において,第1電話番号への対応付けが行われているものと解される。
そして,第2画像データについては,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して(構成要件D)との文言から,通信端末装置において,第2画像データを第1電話番号に対応付けるものと解される一方,着信メロディデータについては,前記第1電話番号に対応付けて前記第2画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶すること,前記第1電話番号からの着信の際に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させることが特定されているのみで,第2画像データと一緒に送信されてきたものとして記憶され,第2画像データとともに再生されることは特定されてい
るものの,
着信メロディデータ
が対応付けられている対象が
第2画像データ
であるのか,あるいは第1電話番号であるのか,また,かかる対応付けが同様に通信端末装置において行われるのか,他所で対応付けされたものを含むものかは,文言上,明らかでない。
しかしながら,第1着信メロディと着信メロディデータはいずれも,発
呼者番号が第1電話番号であることに対応して記憶された箇所から読み出されて,着信メロディを発生するものであること,また,第2画像データと着信メロディデ
ータが受信されて第1電話番号に対応付けて記憶された後に,新たに,別の画像データと別の着信メロディデータとが一緒に送信されてきて第1電話番号に対応付けられて記憶された場合,着信メロディデータが第1着信メロディに相当することとなり,第1電話番号への当初の第1着信メロディの対応付けと同様の処理が,第1電話番号への新たな着信メロディデータとの対応付けとして行われるものとなるから,前者の対応付けと同様,後者についても,通信端末装置において行われるものと解するのが相当である。

上記解釈は,以下のとおり,本件明細書2の記載及び本件特許2の出願経過
における原告の意見とも整合する。
本件明細書2の段落【0032】において,図3には表示していないが,画像データメモリと一緒に送信されてきた着信メロディデータを画像データメモリと同様の形式で着信メロディデータメモリに記憶しており,着信の際,表示する画像データに対応付けられた着信メロディを流すことも可能である。との記載があるところ,図3には,メモリ番号及び画像データ番号がそれぞれ対応付けられて記憶
される図が記載されていることから(前記1参照),同様の形式でという言葉からは,着信メロディデータも,メモリ番号と対応付けられるなどして,画像データとは別個に記憶することを前提としていると解される。
また,原告は,平成15年4月2日付け手続補正書(乙3)により,本件特許2の請求項7(本件発明2)を追加した際に,同日付け意見書(乙5)を提出し,本
件発明2について,前記制御部は,電話番号に対応付けて前記画像データを表示選択して前記画像データメモリに記憶させる場合,前記画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを前記電話番号に対応付けて着信メロディデータメモリに記憶させるとともに,着信の際に前記画像データメモリから前記画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させることを特徴とするとした上で,即ちとして,画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータを電話番号に対応付けて記憶させるとともに,当該電話番号から着信があると,対応付けて記憶した画像データを表示し,対応付けて記憶した着信メロディデータを発生させることを最大の特徴とする旨を述べている。

以上検討したところを総合すると,被告製品が本件発明2の構成要件Cない
しEを充足するといえるためには,別個のファイルである着信メロディデータと画像データが一緒に送信されてきたときに,通信端末装置においてその対応付けを行ってこれを記憶し,ある電話番号からの着信の際に,ある画像データを表示するよう指定した場合,これと一緒に送信されてきたものとして当該電話番号に対応付けられた着信メロディを,発生することのできる構成を有していることが必要である
と解される(構成要件Eにより,電話番号に画像データ,着信メロディを対応付けている場合に,別の画像データを表示選択し,別の着信メロディを発生させる場合であっても,従前の着信メロディを記憶し続けることも必要とされる。)。⑶

被告製品の構成
被告製品について,着信メロディデータと画像データが一緒に送信されてき
たことに基づき,両者を電話番号に対応付けるような構成がとられていると認めるに足りる証拠はなく,原告は,被告製品が音声付き動画ファイルの送信を受け,これを電話番号に対応付けた場合には,本件発明2の構成要件を充足する旨を主張するので,この点について検討する。

音声付き動画について
音声付き動画ファイルの構造(甲9,14ないし16)

被告製品において着信音に設定することができる音声付き動画ファイルは,コンテナフォーマットと呼ばれるMPEG-4(mp4,3gp)ファイルの形式であって,動画映像データと音声データは,その他のデータ(再生時に映像と音の同期を取るための情報,タイトル・作者・説明等のメタデータ情報等)と共に1つのコンテナと呼ばれるデータの入れ物に格納されている。コンテナフォーマット形式の音声付き動画ファイルをダウンロード又は送受信
したり保存したりする際には,動画映像データと音声データが共に格納されたコンテナを一体としてダウンロード又は送受信したり保存したりすることとなり,各データを別々に取り扱うことは想定されていない。
出願時の技術常識(甲17ないし21)
本件特許2の出願日である平成12年4月24日の時点においては,MP4ファイル形式の基となるQuick

Timeファイルフォーマットが実用化されて

いたことが認められるものの,このような音声付き動画ファイルが,当時の携帯電話のような記憶領域の比較的狭い端末において広く用いられていたことを認めるに足りる証拠はない。

被告製品における音声付き動画の扱い
被告製品において,音声付き動画ファイルが送信され,記憶される際には,
ムービー
というフォルダにコンテナ全体が保存されるところ
(甲12,
13)

観念的には,動画映像データは動画映像用の記憶領域に,音声データは音声用の記憶領域に保存されるということもできるものの,保存の際に,コンテナ内の各データの結び付きが失われるとか,コンテナフォーマット以外の形式に変更されることはなく,各データが格納されたコンテナ全体が,一つの記憶領域に保存されると解される。
被告製品においては,保存された音声付き動画ファイルを,1つ又は複数の電話番号の属するグループ又は特定の電話番号に対応付け,着信音として,当
該電話番号からの着信があった際に再生されるよう設定することができる(甲12,13)。この場合,動画映像データと音声データがそれぞれ再生されるが,その際には,同じコンテナに格納された同期を取るためのデータ等も同時に使用されるため,結局,コンテナが一体として機能し,1つの音声付き動画ファイルとして再生されることになる。


検討

前記ウのとおり,被告製品においては,音声付き動画ファイルを着信音に設定す
ると,対応付けられた電話番号からの着信があった場合,内容である動画映像データと音声データが同時に再生されるが,これは,コンテナ内で既に対応付けられた動画映像データと音声データとを一体として受信し,保存したことによるのであって,被告製品において,電話番号に動画映像データを対応付けた場合に,音声データと動画映像データが一緒に送信されてきたことに基づいて,音声データを電話番号に対応付け,当該電話番号からの着信により両者を再生するといった構成が採用されていると認められないことは,既に述べたとおりである。
前記イのとおり,本件特許2出願の時点で音声付き動画ファイルの技術は実用化されていたと認められるが,本件明細書2を参照しても,本件発明2における画像
データ及び着信メロディデータに,動画映像データと音声データを1つのコンテナに格納して,同期を取るためのデータにより一体として再生し得るようにした音声付き動画ファイルが含まれていることを示すような記載は存在しない。以上によれば,被告製品は,本件発明2の構成要件Dの後段第2画像データと一緒に送信されてきた着信メロディデータをも記憶しと,同Eの後段前記第1電話番号からの着信の際に前記画像データメモリから前記第2画像データを読み出して表示する場合,記憶させた前記着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させるの文言を充足しないから,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属しないというべきである。
4
争点⑶(被告製品は本件発明3の技術的範囲に属するか。)について


本件発明3を本件発明2と対比すると,本件発明2には,画像データの表示
選択を変更することにより,従前とは別の着信メロディを発生させることになる場合に,従前の着信メロディデータを記憶し続けるとの構成(構成要件E前段)が存するのに対し,本件発明3にはこれに対応する構成が存在しないが,その余の構成は共通すると認められ,本件明細書2及び3を参照しても,その共通部分につき別異に解するべき理由はない。
そうすると,本件発明3についても,第2着信メロディデータと一緒に送信されてきた第2画像データを受信して記憶する(構成要件C前段),第2画像データを前記第1電話番号に対して表示選択した後,前記第1電話番号から呼び出しを受けた場合,記憶した前記第2画像データを読み出して表示し,前記第2着信メロディデータに基づいて着信メロディを発生させる(構成要件D)との記載については,前記3で本件発明2について検討したのと同様,別個のファイルである画像データと着信メロディデータについて,一緒に送信されてきたことに基づき,通信端末装置において第1電話番号と着信メロディデータの対応付けを行い,画像データをある電話番号に対し表示選択した後,当該電話番号から着信があった場合,前記画像データを表示するとともに,一緒に送信されてきたことによる対応付けに
基づき,着信メロディを発生することを規定したものと解するのが相当である。⑵

被告製品については,音声付き動画ファイルを着信音に指定した場合には,
画像と音声が同時に再生することはあるとしても,別個のファイルである画像データと着信メロディデータについて,一緒に送信されてきたことに基づいて対応付けを行い,ある画像が表示選択され表示される場合に,これと一緒に送信されてきた着信メロディが発生するといった構成を有すると認められないことは,前記3で検討したとおりである。
そうすると,被告製品は,本件発明3の構成要件C及びDを充足しないから,本件発明3の技術的範囲に属しないというべきである。
5
争点⑷(本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか。)に
ついて
無効理由1-1について,まず検討する。


乙12-1発明と本件発明1の関係(拡大先願)

乙12-1発明は,発明の名称を無線携帯端末とする発明であり,平成11年3月1日に出願され,平成12年9月14日に出願公開されたものであるから,本件発明1(同年4月24日出願)が乙12-1発明と同一であれば,本件発明1は,特許法29条の2により,特許を受けることができなかったことになる。


乙12-1発明について


乙12には,以下の記載及び図がある。

(発明の属する技術分野)
この発明は,たとえば携帯電話機などの無線携帯端末に係り,特に,着信時における発信者表示を判り易くすることのできる無線携帯端末に関する【0001】。(

(課題を解決するための手段)
この発明は,任意の画像を取り込む画像取込手段と,この画像取込手段により取り込まれた画像を記憶する画像記憶手段と,着呼時に得られる相手先情報に対応する画像を表示する着信表示制御手段とを具備するようにしたものである(【001
5】)。
また,この発明は,画像取込手段により取り込まれた画像と相手先情報とを一対一,
一対多,
多対一または多対多で対応づけるようにしたものである【0017】。(

この発明においては,たとえば複数の電話機を利用する同一の相手がいずれの電話機を利用したときであっても,常に同一の画像を着信表示用として用いることを
可能とし,あるいは,一つの画像を複数の相手の着信表示用として用いることなども可能とする。逆に,同一の相手からの着信であっても,その着信毎に表示する画像を変えたり,時間によって変えたり,あるいは,着信時に複数の画像を順番に表示したりすることも可能とする(【0018】)。
また,この発明は,画像処理手段に作成させた複数の新たな画像を予め定められ
た順序で表示するようにしたものである(【0021】)。
(発明の実施の形態)
ここでは,携行容易な無線携帯端末であるがゆえに行なえる方法について説明する。具体的には,画像として画像メモリ18に記憶したい相手の顔などを直接カメラ17で撮影する方法であり,この画像をキー入力部13の操作で画像メモリ18
に記憶する。これを記憶したい相手毎に行ない,電話番号や氏名,後述する背景指定および効果指定などと対応づける(【0028】)。

着呼があると(ステップS1),復調部8の出力を制御部11が読み取り,発呼側の電話番号が含まれているかどうかを確認する(ステップS2)。(中略)電話番号が含まれていれば(ステップS2のYes),メモリ15に予め記憶された電話番号との一致を確認し(ステップS4),(中略)一致するものがあれば(ステップS4のYes),制御部11は,これに対応する画像が画像メモリ18に記憶されているかを確認し(ステップS6),(中略)対応する画像があった場合(ステップS6のYes)制御部11は,

後述する背景の指定があるかを確認する
(ス
テップS8)。なければ(ステップS8のNo),着信音をサウンダ12に出力させるとともに,対応する画像を表示部14に表示させる(ステップS9)(【00
30】及び【0031】)。
複数の画像を一つの電話番号と対応させ,着呼毎に変えたり,時間によって変えたり,着呼時に順番に出したりすることもできる(【0032】)。画像の取り込み(記憶)についても任意に変形できる。前述の説明では,カメラ17で撮影した画像を例にあげたが,ネットワークが提供するサーバ上にある画像
を取り込んで,これに代えることもできる。インターネットにおけるホームページのような形で自分の画像を登録している人の場合,これを制御部11の制御によりサーバから取り込んで画像メモリ17に記憶させればいい(【0038】)。(発明の効果)
以上詳述したように,この発明によれば,カメラなどにより取り込んだ発呼者に
関する画像を着信時に表示させることができるため,無線携帯端末に設けられる比較的小型の表示部であっても,発信者の識別を利用者に容易に行なわせることができ,電話をとり易くさせることを可能とする(【0044】)。
【図1】

【図2】


以上より,乙12-1発明は,1つ又は複数の画像をカメラやネットワーク
を通じて入手し,1つ又は複数の電話番号に対応付けてこれらの画像を記憶し,当該電話番号から着呼があったときに,これらの画像を切り替えて表示させ,これにより,発信者を識別しやすくするという効果を有する,無線携帯端末に関する発明であるということができる。


本件発明1と乙12-1発明との対比


乙12-1発明に係る無線携帯端末において,1つの電話番号に2つの画像
を対応付けて記憶させた場合,当該電話番号から着呼があった際,2つの画像が,時刻や着呼の回数等による一定の規則性に従って表示される。このとき,特定の着呼時に表示されない方の画像については,当該電話番号との対応関係を維持したまま,画像メモリに記憶され続けており,表示選択がOFFにされているといえる(前記2⑶参照。)。乙12-1発明におけるメモリ及び画像メモリは,それぞれ本件発明1における電話帳データメモリ及び画像データメモリに
対応する。

そうすると,本件発明1と乙12-1発明との間には,①本件発明において
は,画像をメモリ番号に対応付けているが,乙12発明においては,画像を電話番号に対応付けている点(相違点①),②本件発明1においては,新たに入手・記憶された第2画像が優先的に表示されるが,乙12発明においては,新たに入手・記憶された画像が優先的に表示されるか否か不明である点(相違点②),という相違点が存するとも考えられるため,これらの相違点が設計上の微差にすぎないか,実質的な相違点であるかについて,以下検討する。

相違点①について

本件特許1の出願当時,携帯電話やハンドフリー電話の分野においては,携帯電話等の端末において,特定の電話番号をメモリ番号に対応付けて記憶させることは,複数の名前や電話番号を含む情報を整理するなどの目的に広く使われる,周知の技術であったことが認められる(乙13ないし15)。
そうすると,画像を,ある電話番号と対応付けられたメモリ番号に対応付けて記憶させるか,それとも,直接,当該電話番号と対応付けて記憶させるかという違いは,設計上の微差にすぎないというべきである。


相違点②について

乙12-1発明において,ある特定の電話番号に対して既に1つ又は複数の画像が対応付けられて記憶されている場合において,新たな画像をカメラやネットワークを通じて入手し,当該電話番号に対応付けて記憶させたとして,当該電話番号から着呼があった際,当然に,その新たな画像が優先的に着信画面に表示されるようになるということはできない。
しかし,乙12の段落【0032】の記載(

複数の画像を一つの電話番号と対応させ,着呼毎に変えたり,時間によって変えたり,着呼時に順番に出したりすることもできる。

)によれば,乙12-1発明は,複数の画像を一つの電話番号に対応付ける機能部を有しており,これを使用して,当該電話番号の着呼に応じて,
複数の画像から一つの画像を選択しており,かかる選択を,着呼毎に変更したり,時間に応じて変更したり,一回の着呼に対して複数の画像を順番に変更したりする
ことにより,様々な表示を行っているものと認められる。
したがって,乙12-1発明において,電話番号と対応する複数の画像からどの画像を選択するかということは任意に設定することが可能であり,複数の画像のうち,新たに入手した画像を優先的に選択することや,上記機能部において,これまで記憶されていた複数の画像のうち,表示しない画像と当該電話番号との対応付けを削除するか否かということは,必要に応じて,当業者が適宜選択し得る設計的事項である。また,かかる選択をしたことに伴う顕著な効果も認められない。よって,乙12-1発明において,複数の画像のうち,新たに入手した画像を選択して表示し,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応付けを削
除せずに,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応関係を維持することは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえ,奏せられる効果に著しい差も認められない。したがって,相違点②についても,設計上の微差にすぎないということができる。


まとめ

以上より,本件発明1は,実質的に,乙12-1発明と同一であるから,特許法
29条の2により特許を受けることができないものであって,同法123条1項2号の無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。6
結論
以上により,被告製品1ないし8は,本件発明1の技術的範囲に属するものの,
本件発明1には無効理由があり特許無効審判により無効とされるべきものと認められ,
被告製品は,
本件発明2及び3の技術的範囲に属するとは認められないから,
その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部

裁判長裁判官
谷有恒誠一有恒
裁判官
野上
裁判官島村陽子は,差支えのため署名押印できない。

裁判長裁判官

別紙
被告製品目録
1.
2.
3.

707SC(SoftBank)
708SC(SoftBank)

5.

709SC(SoftBank)

6.

707SCⅡ(SoftBank)

7.

804SS(Vodafone)

8.

805SC(SoftBank)

9.

706SC(SoftBank)

4.

705SC(SoftBank)

820SC(SoftBank)

10.821SC(SoftBank)
11.731SC(SoftBank)
12.830SC(SoftBank)
13.740SC(SoftBank)
14.840SC(SoftBank)
15.001SC(SoftBank)
以上
別紙
発売日一覧
品番

発売日

本件特許本件特許本件特許
1の実施

2の実施

3の実施

705SC

2006年10月14日







706SC

2006年10月27日







707SC

2006年12月9日







708SC

2007年3月7日







709SC

2006年12月9日







707SCⅡ2007年3月24日







804SS

2006年3月25日







805SC

2007年6月16日







820SC

2008年2月22日

×





821SC

2008年4月13日

×





731SC

2009年3月6日

×





830SC

2009年9月18日

×





740SC

2009年10月9日

×





840SC

2010年6月25日

×





001SC

2010年11月27日

×





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