判例検索β > 令和1年(わ)第594号
強盗致傷、大麻取締法違反被告事件
事件番号令和1(わ)594
事件名強盗致傷,大麻取締法違反被告事件
裁判年月日令和元年12月12日
裁判所名・部札幌地方裁判所
判示事項の要旨被告人が,路上を通行中の被害者のバッグを引っ張って,人目につかない場所まで連行し,顔面等を拳で殴り,髪の毛をつかんで地面に引き倒した上,その顔面等を足で踏むなどの暴行を加え,財布等を奪い,その際,被害者に全治約10日間を要する傷害を負わせた路上強盗及び大麻所持の事案について,被告人に懲役4年を言い渡した事例
裁判日:西暦2019-12-12
情報公開日2020-01-23 16:00:11
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主文
被告人を懲役4年に処する
未決勾留日数中80日をその刑に算入する。
札幌地方検察庁で保管中の大麻1袋(令和元年領第723号符号1-1)を没収する。

理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人は,令和元年7月11日午前5時頃から同日午前5時9分頃までの間,
札幌市a区b条c丁目d番地e付近歩道上において,徒歩で通行中のA(当時25歳。以下被害者という。
)に対し,その金品を強奪しようと考え,被害者が
所持していたバッグの持ち手を引っ張り,これを無理やり奪い取ろうとするとともに,
そのバッグを離さなかった被害者をそのまま引っ張りながら同区b条c丁目d番地fB北側敷地内まで連行し,
同所において,
被害者の顔面等を拳で殴り,
髪の毛をつかんで地面に引き倒した上,その顔面等を足で踏むなどの暴行を加え,
その反抗を抑圧し,被害者がその場に落とした被害者所有又は管理の現金約5万3304円及び財布等11点(時価合計約1万1000円相当)を持ち去ってこれらを奪い,その際,前記暴行により,被害者に全治約10日間を要する顔面,胸部,両膝及び両手首挫傷の傷害を負わせた。
第2被告人は,みだりに,令和元年7月23日,札幌市a区g条h丁目i番地jC
当時の被告人方において,大麻を含有する植物片約7.59グラム(令和元年領第723号符号1-1はその鑑定残量)を所持した。
(証拠の標目)
(略)
なお,公訴事実では,被告人が歩道上で被害者の背後からいきなり抱き付いた
ことも金品を奪う目的の行為として記載されており,弁護人もこの点も含めて争っていない。しかし,①被害者の供述によれば,被告人は,歩道上で最初に被害者の背後から同人の首元付近に片腕を回しているものの,
その時点では被害者が肩から掛けて
いたバッグを奪おうとする素振りは見せておらず,被害者に腕をはずされて向かい合う形になり,被害者が立ち去ろうとした後に,初めて被害者の所持していたバッグに手を掛け,
これを引っ張るという,
他人の物を奪い取ろうとする行動に出ていること,
②被告人は飲酒の影響により本件当時のことをほとんど覚えておらず,被告人が自宅を出て現場付近を歩いていた理由は判然としないことを踏まえると,被告人が公訴事実を認める旨の陳述をしていることを考慮しても,被告人による被害者の首元付近に片腕を回した行為が,金品強奪の目的によるものと認めることには疑問が残るから,強盗の実行行為については,判示第1のとおり認定した。

(法令の適用)
罰条
判示第1の行為

刑法240条前段

判示第2の行為

大麻取締法24条の2第1項

刑種の選択
併合罪の処理

判示第1の罪につき,有期懲役刑を選択
刑法45条前段,47条本文,10条(重い
判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の
制限内で法定の加重)

酌量減軽
刑法66条,71条,68条3号

未決勾留日数の算入
刑法21条


大麻取締法24条の5第1項本文(判示第2


の罪に係る大麻で犯人の所有するもの)
訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
量刑の中心となる判示第1の強盗致傷についてみるに,本件は,何の落ち度もない通行人から金品を奪うという路上強盗の事案である。被告人は,被害者を無理やり人目につかない場所に連れていき,執拗に顔面を何度も殴り,踏み付けるなどしたものであり,犯行態様は悪質である。被害者は,判示の怪我や財産上の被害を受けただけでなく,突然襲われてこのような暴行を受けたものであり,その精神的な被害は大きい。
弁護人は,
被告人が飲酒の影響により判断能力の低下した状態にあった点を量刑上重視すべきであると主張する。しかし,被告人は,被害者をわざわざ人目につかない場所に連れて行った上で暴行を加えている。また,被告人は,被害者の発した言葉に応じた返答をしている上,
被害者の落とした物のうち財産的価値のある財布等を持ち
去っている。そして,本件犯行直前の被告人の足取りはふらついているが,本件犯行前後の被告人の一連の行動に特に異常な点は見られない。むしろ,被告人がこれまで
にも飲酒の上で複数回トラブルを起こしていることを考えると,
被告人は飲酒の影響
で行動をエスカレートさせたに過ぎないといえる。したがって,被告人が酒に酔っていたとしても,
その責任を軽くするほどに被告人の判断能力が低下していたとは認められない。
もっとも,被告人は,被害者を路上で偶然見かけ,被害者に接触した後に,被害者
から金品を奪い取ろうとするに至っているのであって,本件が計画的な犯行であるとはいえず,偶発的なものであるから,この点は,量刑に当たり相応に考慮すべきである。
そうすると,本件は,強盗致傷事案のうち,懲役前科のない被告人が凶器を用いずに行った路上強盗(既遂)の量刑傾向の中で,懲役3年から5年の実刑をもって臨む
のが相当な事案であるといえる。
そこで,以上に述べた犯行態様及び被害の程度,計画性がないことに加えて,判示第2の大麻所持の事実があることを考慮した上,被告人が事実関係をいずれも認めて素直に供述していることや,被害者に謝罪の言葉を述べて,母親等の援助を受けて被害者に被害弁償金として60万円を支払っていること,
被告人の今後の更生について

具体的な道筋は未だ定まっていないものの,被告人が今後はお酒とは関わりのない仕事に就いて,飲酒はしない旨述べ,母親も被告人との連絡を密に取ってその更生を支える旨述べていることも勘案し,被告人に対しては,主文の刑を科すのが相当であると判断した。
(求刑懲役6年,主文同旨の没収)
令和元年12月12日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中川正隆
裁判官

牛島武人
裁判官

岩竹遼
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