判例検索β > 平成29年(ワ)第29650号
謝罪広告等請求事件
事件番号平成29(ワ)29650
事件名謝罪広告等請求事件
裁判年月日令和元年12月2日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2019-12-02
情報公開日2020-01-07 18:00:08
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令和元年12月2日判決言渡

同日原本領収

平成29年(ワ)第29650号

裁判所書記官

謝罪広告等請求事件

口頭弁論終結日令和元年9月20日
判主決文
1被告は,原告Aに対し,110万円及びこれに対する平成29年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを80分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告Bに対し,5500万円及びこれに対する平成29年9月22日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告Aに対し,2200万円及びこれに対する平成29年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,別紙1記載の謝罪広告を同記載の条件で,別紙2記載の新聞の各朝刊社会面及びCに掲載せよ。

第2事案の概要
本件は,
原告らが,
被告に対し,
被告が平成29年7月27日発行の週刊誌
C
に掲載した記事等によって,原告らの名誉が毀損されたと主張して,民法709条に基づき,原告Bについて5500万円,原告Aについて2200万円の各損害の賠償及びそれぞれ平成29年9月22日(不法行為の後の日である訴状送達
の日の翌日)
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに名誉回復措置として民法723条に基づき,謝罪広告の掲載を求める事案である。
1前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる。


当事者等

原告Bは,広く社会一般に対して,自由で質の高い言論の場を提供する事業を行い,
社会教育の推進に寄与することを目的とする特定非営利活動法人
である。原告Aは,原告Bの代表者理事であり,その理事長とされている。(争いなし,甲1)


被告は,雑誌,書籍の発行,販売等を目的とする株式会社であり,週刊誌Cを発行している(争いなし)




記事の掲載
被告は,平成29年7月27日,以下の記載を含むC(2017年8月3日号)(以下「本件掲載誌という。」
)を発行した(争いなし)



目次
本件掲載誌の目次には,
Dとの特集の一内容として,
元E次官が顧問B理事長に7千万円“横領”疑惑
との見出し
(以下
本件見出し
という。

を付した記事が35ページに掲載されていることが記載された(以下本件目次という。(甲3))



記事
本件掲載誌の35ページに,
元E次官が顧問B理事長に7千万円“横領”疑惑
との見出しの下,
1ページの4分の3程度の分量の記事
(以下
本件記事という。
)が掲載された(甲4)

冒頭に,リード文として,『F省から補助金を受けている公共性の高い

NPO法人ですが,理事長の公私混同ぶりが目に余ります』そう憤るのは,特定非営利活動法人『B』の内部関係者だ。

との記載がある。リード文に続く本文の導入部では,まず,原告Aの経歴が記載され,それに続いて,『それが廃刊になり,退社。

“G”ことを目的に,〇一年にBを立ち上げ,A氏の編集者時代の人脈を駆使して,各地でフォーラムを開いてきました。今ではA氏は,イベントに出席する際も黒塗りのハイヤーを指定するほど』(同前)

との記載がある。アドバイザリーボード

それに続いて,
顧問委員会には,元E次官のH氏,IのJ氏,元国連事務次長のK氏ら,各界の大物が名を連ねている。『この人脈を背景に同法人は年間約一億円もの補助金をF省から受けているのですが,カネの流れがとにかく不透明なんです。A理事長は理事長報酬以外に不当に報酬を得ている可能性がある』(同前)との記載がある。さらに続けて,被告が原告Bの出納帳や入金記録を入手し,精査した結果,原告BがLという会社に業務委託料として月額約50万円を支払っていると指摘し,『Mは,Aのイニシャルですが,内部ではA理事長の

ダミー会社とされています。会社登記もなく,実際には理事長の個人口座に支払われています。業務委託は〇三年に始まっていますが,理事長個人への支払額は,推計で約七千万円に上ります』(別の内部関係者)

これはNPO法人の活動を規定する特定非営利活動促進法違反の疑いがある。『Nの理事長親子が,自分たちの会社に多額の業務委託を行って背任罪になりましたが,代表者が自分の会社と取引する際は,公正確保を目的に報告書に記載義務がある』(社会部記者)「しかし,Bの報告書に,取引先としてLの記載はない。
」との記載がある。
次に,別の疑惑として,原告Aが補助金の交付先を決める審査委員会に対する口利き工作として,原告Bの顧問格である元E次官のH氏にメールで口利きを依頼し,
その後原告Bが補助金の交付を受けることが決まった

という話が記載された。
最後に,次の記載がある。
一連の問題について,A理事長を直撃すると,『後で誰かが連絡する。』と繰り返すのみ。後日,理事会としてこう回答した。『Aの報酬は理事長報酬とウェブ編集長の給与に分け,ウェブの給与はLに出しており,合計で上限二千万円と決めている。Aの能力は得がたく,報酬が高いとは考えていません。H氏へのメールは,しっかり説明するという趣旨で出された文章であり,問題ないと判断しています』
『論より証拠』では?
本件記事の右下部分には,原告Aの顔写真とその上にA理事長は答えずとの説明文,原告BのホームページのスクリーンショットにHと思われる人物の顔写真を重ねた画像とその左にBホームページとH元E次官との説明文が掲載された。



広告の掲載
本件掲載誌についての広告(以下本件広告という。また,本件記事,本件見出し,本件目次と併せて以下本件記事等という。
)が,O新聞平成29
年7月27日付け朝刊に掲載された。
本件広告に,
D
との特集の一内容とし
て,本件見出しの文言が記載された。
(甲6)

2争点


本件記事等の掲載は原告らに対する名誉毀損に当たるか。



本件記事等が論評であると認められた場合に,真実性及び相当性の抗弁があ
るか。


損害の発生及びその額

3争点に関する当事者の主張


争点⑴(本件記事等の掲載は原告らに対する名誉毀損に当たるか。)につい

(原告らの主張)

本件記事等の読み方
主位的主張
本件記事等は,
原告A(原告Bの理事長)が,Lなるダミー会社を用いて,業務委託料を名目として,同業務の事実がないにもかかわらず,原告Bから総額7000万円を自己の個人名義の口座に振り込ませて,同金員を着服し,黒塗りのハイヤーを使用するなどして,上記着服した金員を費消しているとの事実(以下原告主張摘示事実という。)を摘示してい

る。
予備的主張
本件記事等は,
Lに対する業務委託の実態がないことの記載がなく,
原告Bの理事長である原告Aには7000万円の横領の疑惑があるとの意見ないし論評(以下本件論評という。
)と論理的な関連性が認められな

い特定非営利活動促進法違反疑惑が前提事実として記載されたものであるから,公正な論評といえず名誉毀損となる。

社会的評価の低下
原告主張摘示事実及び本件論評は,原告Aが7000万円もの巨額な金を
法律に違反して横取りしたとの内容であるところ,一般読者はこのような行為に対して否定的な印象を強く抱くから,原告主張摘示事実及び本件論評は,原告Aの社会的評価を低下させる。
また,原告Bの代表者である理事長に横領の事実があると摘示され,又はその疑いがあると論評されていることにより,一般読者は,原告Bに対し,
そのような理事長が運営しているNPO法人で,かつ,長年にわたりそのような違法な状況を是正しないまま運営を継続している,いい加減で信用できないNPO法人であるとの印象を抱くから,
原告主張摘示事実及び本件論評
は,原告Bの社会的評価をも低下させる。
(被告の主張)


本件記事等の読み方
本件記事等にいう横領との表現は法的な見解の表明であり,
横領の疑惑があるとの表現も法的な見解の表明である。
本件記事等で報じた内容は,事実を摘示するものではなく,
原告Bの理事長である原告Aには7000万円の横領の疑惑があるとの意見ないし論
評(本件論評)を表明したものである。

社会的評価への影響について
本件記事等は,原告A個人の行動を報じるものであるところ,原告Bは,原告Aとは別の人格を有する法人であるから,原告Aに関する記述が直接的に原告Bの社会的評価に影響を与えるという主張は法律上成り立たない。また,原告主張摘示事実及び本件論評のいずれにも,原告Bが長年にわたりそのような違法な状況を是正しないまま運営を継続しているとの内容は含
まれていない。


争点⑵(本件記事等が論評であると認められた場合に,真実性及び相当性の抗弁があるか。
)について

(被告の主張)

公共性及び公益目的
原告Bは,主に税金を原資とする多額の外交・安全保障調査研究事業費補助金を交付されているから,適切ないし不公正な金銭の流れが生じていないかどうかは,公衆の正当な関心が寄せられる事項であり,本件記事等で報じた内容は,公共の利害に関する事実に係るものである。
被告は,原告らと特段の利害関係はなく,報道機関として公衆の正当な関
心に応えることになると判断して本件記事等を掲載したものであり,公益を図る目的に基づくものと評価されるべきである。

真実性
本件論評が前提としている事実の重要部分は,①原告BがLなる会社に業
務委託料として月額約50万円を支払っていること,②Lの実態は原告Aに他ならないこと,③平成15年から始まったL(原告A)との業務委託に基づいて原告Bから支払われた業務委託料の推計は約7000万円に上ること,
④特定非営利活動法人の事業報告書等には,
役員との取引
が存する場
合,その内容について記載する義務があるにもかかわらず,原告Bの事業報告書等には,
役員等との取引の取引先としてLの記載がないことの4
点(以下被告主張前提事実という。また,上記①ないし④の各事実について,以下被告主張前提事実①などということがある。)であり,被告主
張前提事実はいずれも真実である。
原告らは,本件訴訟において,原告BがLに対して業務委託料として月額50万円を支払った月があることを認めているから,原告BがLな
る会社に業務委託料として月額約50万円を支払っていること(被告主張前提事実①)は真実である。
原告らは,
本件訴訟において,
L
は原告Aが個人事務所として使用し
ている屋号であることを認めているから,
Lの実態は原告Aに他なら
ないこと(被告主張前提事実②)は真実である。

被告の記者は,本件記事執筆当時,原告Bの理事,監事及び担当者に対する取材の結果及び他の情報源から取得していた原告Bの出納帳等の資料を有しており,これに基づいて計算すると,原告BがLに対して支払った業務委託料の推計は7482万6651円となるから,
平成15年から
始まった
L
(原告A)
との業務委託に基づいて原告Bから支払われた業

務委託料の推計は約7000万円に上ること(被告主張前提事実③)は真実である。
原告Bは,
本件記事掲載前に作成した平成26年度事業報告書等及び平
成27年度事業報告書等において,
7.役員及びその近親者との取引の内容につき,いずれもなしと報告した。また,原告Bは,本件記事
掲載前に作成した平成26年度及び平成27年度の特定非営利活動促進法第54条第2項第3号に定める事項を記載した書類と題する書類(以下54条書類という。
)において,
3.取引の内容に関する事項中
の⑶役員,社員,職員若しくは寄付者又はこれらの者の親族等との取引について,

イ資産の譲渡(棚卸資産を含む。


ロ銭の貸付を含む。



ハ資産の貸付(金役務の提供(施設の利用等を含む。

)のいずれも

なし
と報告したから,
原告Bの事業報告書等には,
役員等との取引

の取引先としてLの記載がないこと(被告主張前提事実④)は真実である。

相当性
上記イ記載の各事実によれば,本件記事を執筆した記者において,本件記事で報じた内容が真実であると信じるに足りる相当の理由があったことは
明らかである。

意見ないし論評の域を逸脱していないこと
被告は,特定非営利活動促進法(以下促進法という。
)54条2項3号
及び同法施行規則32条3号ロ違反を捉えて,
原告Aが原告Bから不適切に

金員を受領していると考え,
原告Bの理事長である原告Aには7000万円の横領の疑惑があると指摘したものであって,何ら意見ないし論評の域を逸脱したものではない。
(原告らの主張)

被告主張前提事実は,以下のとおり,いずれも真実ではない。
Lは会社ではないから,被告主張前提事実①は真実ではない。Lの実態は原告Aに他ならないものではなく,被告主張前提事実②も真実ではない。
Lに対する業務委託料の支払は,平成16年に開始されたものであり,また,業務委託料の合計は7000万円ではないから,被告主張前提事実
③は真実ではない。
原告Bは,Tにも問合せをして回答を得た上で54条書類において,被告が指摘する欄のすぐ上にある⑵費用の生ずる取引の上位5者欄に
はLを記載し,Lとの取引を役員等との取引欄に記載しなかったものであるから,被告主張前提事実④は真実ではない。イ
被告が被告主張前提事実を真実と信じたことの相当性について
被告は,本件記事等を書く前の時点で,平成16年4月から同年12月ま
での各入出金状況が記載された原告Bの出納帳を取得していたから,Lに対
する支払が同年9月30日から開始されていることや,
当初は月額20万円
であったことを認識しえたにもかかわらず,これと異なる金額によって推計をして本件記事等を書いたものであるし,平成17年から平成25年までの入出金データについても所持している可能性は高い。
本件記事は,
横領

の結論ありきで作成され,
意図的に横領金額を少しでも高額にしようとした
ものといえる。
以上のとおり,少なくとも,被告主張前提事実①及び同③の事実については,相当性も認められない。


争点⑶(損害の発生及びその額)について

(原告らの主張)

原告Bの損害
原告Bは,いわれのない非難や中傷を受け,本件掲載誌発行後,原告Bへの企業及び個人会員からの寄附が年間約1600万円減少し,今後も,企業や個人会員から寄附を中止される可能性もある。

原告Bに対する寄附等は,
原告Bのそれまで行ってきた活動に対する社会
的評価や信用に対して行われるものであり,このような社会的評価や信用は原告Bの存立基盤そのものである。
これらの事情によれば,被告の名誉毀損行為によって被った原告Bの損害が5000万円を下ることはない。


原告Aの損害
原告Aは,原告Bを設立し,設立目的達成に向けて精力的に活動してきたのであり,本件記事によって被った精神的損害は計り知れず,原告B存続のために,
関係者に対する説明や対応に終始追われて肉体的にも精神的にも疲弊したほか,原告Bへの寄附の撤回の連絡等により夜も眠れないほどの不安に襲われた。

これらの事情によれば,被告の名誉毀損行為による原告Aの損害が2000万円を下ることはない。

弁護士費用
原告らは,各自の損害額の1割に相当する部分について,弁護士費用の損害を被った。
原告Bについては500万円,
原告Aについては200万円が,

それぞれ弁護士費用としての損害である。
(被告の主張)
不知ないし争う。
第3争点に対する判断
1認定事実
後掲証各拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。⑴

原告Aは,
P社において,
オピニオン誌や経済誌の編集長を務めていたとこ
ろ,平成13年5月,原告Bを立ち上げ,同年11月21日,特定非営利活動法人として法人化し,原告Bの理事会は,原告Aの報酬の上限を2000万
円と定めた。
原告Aは,平成14年10月ころから,原告Bから役員報酬及び給与の支払を受けて,原告Bの活動に専念するようになり,当初の報酬は月額30万円程度であった。
そのころ,原告Aは,原告Bからの収入だけでは生活できなかったため,
個人で受注する仕事の収入を管理する目的でLの屋号で個人事務所を設立した。
原告Aは,遅くとも平成16年1月以降,原告Bから,役員報酬及び給与を併せて月額100万円の支払を受けていた。
(甲1,19,22,23,乙
9~11,原告A本人)

原告Bの理事会は,原告Bのクオリティ誌の編集を原告Aに委託することを決定し,平成16年8月1日,原告Aとの間で,原告Bが,
Lに対し,
NPO活動に係るコンテンツ記事の文章校正,文章編集業務を月額20万円で委託する旨の契約を締結し,原告B理事長代理理事Q及びLAの記名押印がある業務委託契約書を作成した。原告Bは,同月以降,平成29年3月31日まで,毎年,Lとの契約を更新し,原告Aに対し,当初は,クオリティ誌
の編集を委託していたところ,その後,ブックレット及びWEBコンテンツの編集などの業務を委託し,平成18年8月1日から平成29年3月31日までの業務委託報酬として,合計5923万9899円の業務委託報酬を支払った。
(甲9,10,21,原告A)



本件掲載誌発行時にC編集部の契約記者であったR(以下R記者という。
)は,平成29年7月17日,原告A

F省の補助金について,

告Aの報酬が高額に過ぎるのではないか,原告Aのタクシー利用についての定めはあるのか,Lの実態はどのようなものであるのか,
対する言動には問題があるのではないか
原告Aの職員に

F省の補助金応募の審査前にF

省審査委員へ働きかけるメールを送るのは問題ではないかと考えているので,これらの点について,
原告Aの認識を聞きたいとの申入れをメールでした
(甲
19)

原告Bは,同月20日午後8時9分,R記者の上記申入れに対し,理事会として対応するので,同月21日の夕方以降,改めて電話で連絡する旨のメ
ールをし,R記者は,同月20日午後11時47分,電話連絡を待っている旨のメールを返信した(甲20の1,20の2)

しかし,R記者は,同月21日昼頃,原告Aが記者会見を終えた直後,原告Aに対し,マイクを突き付けてコメントを求め,これに対し,原告Aは,本日の夕方に連絡をすることになっている旨回答した(甲23,証人R,原告A本人)

原告Bの理事及び監事は,同月23日,原告Bの会議室において,R記者
による取材に応じた。R記者は,理事長としての仕事とLへの業務委託を分けている理由やLには登記がない理由等について質問をし,原告B側の出席者は,R記者に対し,原告Aに業務委託をすることは原告Bの理事会で決定しており議事録もある,代表者である理事長としての報酬とウェブ編集長としての報酬を分ける趣旨である,
Lは原告Aが個人事業主としてやっており,

青色申告事業者として登録している,業務委託報酬も含めて上限2000万円以内で取り決めているなどと回答した。
(甲21)
R記者は,同日の取材が終わった後,原告Bに対し,平成27年3月までの月額の業務委託料(源泉徴収前)の金額等を問い合わせ,原告Bの担当者であるSは,基本的には月額44万円で推移しているなどと回答した。(乙1

6)


原告Bは,
平成26年度から平成28年度まで,
54条書類の提出に当たり,
3取引の内容に関する事項
欄のうち
⑵費用の生ずる取引の上位5者

欄にはLを記載したが,
⑶役員,社員,職員若しくは寄附者又はこれらの者の親族等との取引欄にはいずれもなしと記載した。このうち,平成28年度
(平成28年4月1日から平成29年3月31日)
のものは,
T知事宛
に平成29年6月30日に提出された。
(甲11~13の1)
また,原告Bは,平成26年度から平成28年度まで,事業報告書における計算書類の注記において,
役員及びその近親者との取引の内容として,

なしと記載した(乙1の1~3の2)

⑸原告Bは,平成17年,北京において,
Uを立ち上げて,北東アジアの
国と毎年対話を行い,平成28年には,日本,インドネシア,インドの3か国でVを立ち上げて議論を行い,平成29年には,世界10か国のシンクタンクの代表が集まって議論する常設の場であるWを立ち上げるなどし,平成30年度米国のX大学が発表するアジア部門(中国,インド,日本,韓国)のシンクタンクランキングでY位にランクされるなどし,原告Aは,原
告Bの設立以来,その代表を務めてきた(甲1,24,乙3の1)。
原告Bの平成28年4月1日から平成29年3月31日までの総収入は1億8838万2657円であったところ,そのうち会費寄付金収入は1964万2120円,寄付金収入は5056万6756円の他,外交・安全保障調査研究事業補助金は9億9040万円であった(甲13の1,13の2,
乙3の1)

本件掲載誌発行後,
原告Aは,
原告Bの支援企業等から本件記事等に対する
問い合わせ受けて説明に出向くなどしたが,横領をした人間に対して応援することはできない旨の対応されることもあり,原告Bの支援企業約40社のうち11社は寄付を打ち切り,22名の個人会員が会員から脱退した(甲2
2,23,原告A)

2争点⑴(本件記事等の掲載は原告らに対する名誉毀損に当たるか。)について


原告らは,本件記事等は,
原告Aが,Lなるダミー会社を用いて,業務委託料を名目として,同業務の事実がないにもかかわらず,原告Bから総額7000万円を自己の個人名義の口座に振り込ませて,同金員を着服し,黒塗りのハイヤーを使用するなどして,上記着服した金員を費消しているとの事実を摘示したものであると主張するのに対し,被告は,
原告Bの理事長である原告Aには7000万円の横領の疑惑があるとの意見ないし論評(本件論評)を表明したものであると主張するので,先ず,この点について検討する。

問題とされている表現が,事実を摘示するものであるか,意見ないし論評の表明であるかによって,
名誉毀損に係る不法行為責任の成否に関する要件
が異なるため,
当該表現がいずれの範ちゅうに属するかを判別することが必
要となるが,
ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであ
るかどうかは,
当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基
準として判断すべきものであり(最高裁昭和29年(オ)第634号同32年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)
,そのこと

は,前記区別に当たっても妥当するものというべきである。すなわち,当該記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について,
そこに用いられ
ている語のみを通常の意味に従って理解した場合には,
証拠等をもってその
存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張しているものと直ちに解せないときにも,当該部分の前後の文脈や,記事の公表当時に一般
の読者が有していた知識ないし経験等を考慮し,右部分が,修辞上の誇張ないし強調を行うか,比喩的表現方法を用いるか,又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ,
間接的ないしえん曲に前記
事項を主張するものと理解されるならば,同部分は,事実を摘示するものと見るのが相当である。また,このような間接的な言及は欠けるにせよ,当該
部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると,
当該部分の叙述の前提と
して前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば,同部分は,やはり,事実を摘示するものと見るのが相当である。
(最高裁平成6年(オ)第
978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁)イ
これを本件について検討するに,前提事実⑵のとおり,本件見出しには,元E次官が顧問B理事長に7千万円“横領”疑惑と記載され,本件記
事は,

理事長の公私混同ぶりが目に余ります。,

カネの流れがとにかく不透明なんです。A理事長は理事長報酬以外に不当に報酬を得ている可能性がある。,Lは,

内部ではA理事長のダミー会社とされています。会社登記もなく,実際には理事長の個人口座に支払われています。,代表者が自分の

会社と取引をする際には報告書に記載義務があることを指摘した上でBの報告書に,取引先としてLの記載はない
などと記載されているのであって,
これらの記載等を一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すれば,本件記事等は,第三者からの伝聞内容の紹介を採用するなどしつつ,間接的又はえん曲に,原告Aが,不正にLなるダミー会社を経由させる方法により,
原告Bから正当な報酬以外に7000万円を自らの口座に送金させ
て横取りした,
又は横取りしたことを強く窺わせる事実が存在するとの事実
を摘示したものと認めることができる。なお,原告らは,本件記事等が,原告Aが委託された業務をした事実がないこと,
原告Aが黒塗りのハイヤーを
使用するなどして着服した金員を費消していることをも摘示している旨主張するが,委託業務については,その有無,内容など何らの記載もされてい
ないこと,
一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として本件記事等を読
めば,
着服した金員でハイヤーを利用しているとまでは読めないことからすれば,原告の上記主張は採用できない。

この点について,
被告は,横領
は法的な見解の表明であり,本件記事は,原告Aについて「横領との疑惑があるとの法的な見解の表明したものであって意見ないし論評である旨主張する。
確かに,法的な見解については,その正当性それ自体は,証明の対象とはなり得ないものであり,
法的な見解の表明が証拠等をもってその存否を決す
ることが可能な他人に関する特定の事項ということができないことは明ら
かであるから,法的な見解の表明は,事実を摘示するものではなく,意見ないし論評の表明の範ちゅうに属するものというべきである
(最高裁平成15

民集58巻5号1615号)

しかしながら,
横領という文言は,刑事的・民事的責任を問う場面で
使用されるような法律用語としての意味に加え,より一般的に,他人のものを不正な方法により横取りする行為自体を表現する場合にも使用されるものであって,
一般の読者の普通の注意と読み方に従って本件記事等を読むと,
前記説示のとおり,
原告Aが原告Bから不正な手段により金員を横取りした
旨が記載されていると理解するのが通常であって,本件記事等が,原告Aに対して,
横領罪又は民事上の不法行為責任が成立するか否かの法的見解を表明したものとは解されない。なお,R記者自身,証人尋問において,横領
は不適切な形で会社なり組織なりのお金を得ることである,本件見出しは,刑法上の横領罪の構成要件を満たすとかそのような意味で記載したものではない,原告Aには,不適切な形で会社成り団体なりのお金を得た疑惑があるとの認識で本件記事等を記載した旨証言している。
そして,
不正な手段により金員を横取りしたとの事項は,
証拠等をもって

その存否を決することが可能な他人に関する特定の事項と解されるから,本
件見出しにおいて,横領

という文言が使用されていることのみをもって,
これが法的な見解を表明したものとは直ちに解されるものではないし,本件
記事等が,証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議を述べたものとは解されず,被告の主張は採用できない。


前記⑴説示のとおり,本件記事等は,原告Aが,Lなるダミー会社を使うという不正な方法を取ることにより,原告Bから正当な報酬以外に7000万円を横取りした又は横取りしたことを強く窺わせる事実が存在するとの事実を摘示したものであり,一般の読者において,そのような行為を行った原告Aに対しては否定的な印象を抱くといえるから,本件記事等は,原告Aの社会的評
価を低下させる名誉毀損に当たるというべきである。
なお,被告は,本件記事等について論評と解した上で,被告主張前提事実の真実性及び相当性に関する主張をするが,これらを踏まえても,原告Aが金員を横取りしたこと,
又は横取りを強く窺わせる事実が存在することの真実性及
び相当性のいずれも,認めるに足りる証拠はない。



原告Bは,上記事実摘示が,原告Bの社会的評価を低下させる旨主張する。確かに,
外形上直接には法人の代表者に対して向けられた名誉毀損の行為が,実際には同時に法人の名誉を毀損する効果を伴う場合もありえるものであるが,法人の代表者に対する名誉毀損が,同時に,人格を異にする法人に対する名誉毀損を構成すると評価をするためには,法人の代表者に関する事実摘示が,実質的には,法人に関しても,その社会的評価を低下させる事実を摘示したものと認められることが必要であると解される。
これを本件についてみるに,原告Bは,本件記事等の具体的記載を示して,当該記載が原告Bの社会的評価を低下させるいかなる事実を明示的又は黙示的に摘示しているといえるのかについて,何ら具体的に主張立証することなく,
原告Bの代表者である理事長に横領の事実があると摘示されることによって,原告Bがいい加減で信用できないとの印象を一般読者に与える旨主張している。これは要するに,原告Aに関する原告主張事実摘示をもって,直ちに,原告Bの社会的評価を低下させると主張していることとなる。
そうすると,
原告Bの社会的評価を低下させるか否かを判断すべき対象とな

る摘示事実は何ら主張されていないといわざるを得ず,本件記事等が原告Bに対する名誉毀損に該当するとの原告Bの主張は,その前提を欠くものであり,本件記事等により原告Bに対する名誉毀損が成立するとの原告Bの主張は採用できない。
3争点⑶(損害の発生及びその額)について

前記1認定事実のとおり,原告Aは,平成13年の原告B設立当時から,その代表として様々な会議を立ち上げるなどして活動し,
これらの原告Bによる活動
は社会的にも評価や信用を得て,協力する企業や個人からの寄付を得るなどしていたところ,本件記事等により,原告Bから正当な報酬以外に7000万円を横取りした又は横取りしたことを強く窺わせる事実が存在する旨の記載をされた
ものであるから,その社会的評価自体に対して深刻なダメージを受けるだけでなく,
原告Bに協力してきた者らに対して本件記事等についての釈明に追われるなど有形無形の損害を被ったものと認められる。しかしながら,他方,週刊誌の広告や記事の見出しなどには,読者の興味を惹くために誇張された表現が使われることが少なくないことは広く認識されていると考えられること,
原告Bの報告書
には,
本件記事が指摘するように促進法54条2項3号及び同法施行規則32条3号ロ違反の事実があったこと,本件記事の末尾には,一応,原告Bの説明も記載されていることなどの事情も認められる。
このような,本件に表れた諸般の事情を考慮すれば,原告Aが被った損害に対する慰謝料は100万円が相当であり,これと相当因果関係のある弁護士費用は10万円と認めるのが相当である。

なお,原告Aは,慰謝料の支払のほか,謝罪広告の掲載も求めているところ,本判決によって慰謝料請求の一部が認められることにより,原告Aの名誉が相当程度回復すると考えられることなどの事情を考慮すると,被告に対し,謝罪広告を命じるまでの必要はないというべきである。
第4結論

以上によれば,本件請求のうち,原告らの請求は,原告Aの被告に対する不法行為に基づく110万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年9月22日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求のはいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第7部

裁判長裁判官

小川
理津子

裁判官

遠田真嗣
裁判官

山田裕貴
別紙1及び別紙2については記載を省略

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