判例検索β > 平成28年(ワ)第39687号等
不正競争行為差止請求権不存在等確認等請求事件、不正競争行為差止請求事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成28(ワ)39687等
事件名不正競争行為差止請求権不存在等確認等請求事件,不正競争行為差止請求事件
裁判年月日令和元年11月13日
裁判所名東京地方裁判所
権利種別不正競争
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2019-11-13
情報公開日2019-12-27 16:00:25
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令和元年11月13日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

本訴平成28年(ワ)第39687号不正競争行為差止請求権不存在等確認等請求事件,反訴平成30年(ワ)第1631号不正競争行為差止請求事件口頭弁論終結日令和元年9月20日
判決
本訴原告兼反訴被告

株式会社サンエー・インター
ナショナル
(以下原告という。)

同訴訟代理人弁護士

髙取芳宏矢倉信介太田祐藤野将生
同訴訟復代理人弁護士

一色和郎
本訴被告兼反訴原告

ジル・スチュアート

美子
(以下被告ジルという。)

本訴被告兼反訴原告

ジル・スチュアート(アジア)
エル・エル・シー

(以下
被告会社
といい,
被告ジルと併せて
被告ら
という。

上記両名訴訟代理人弁護士

飯外
同補佐人弁理士
主1村玲北田圭原絵子梨子文
被告会社は,原告に対し,45万米ドル及びこれに対する平成25年2月27日から支払済みまで年9%の割合による金員を支払え。

2
原告のその余の請求及び被告らの反訴請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は被告らの負担とする。
4
この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

5
被告らのために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由

第1請求
(本訴請求)
1被告会社は,原告に対し,45万米ドル及びこれに対する平成24年11月10日から支払済みまで年9分の割合による金員を支払え。
2仮執行宣言

(反訴請求)
1原告は,別紙店舗目録記載の各店舗の看板(店頭表示板),案内板,外壁,入口壁面及び商業施設内壁に別紙表示目録記載1及び2の各表示を小売商標として使用してはならない。
2原告は,原告が管理運営するURLhttp://以下省略又はhttp://以下省略をトップページとするウェブサイトに別紙表示目録記載1及び2の各表示を小売商標として使用してはならない。
3原告は,その製造販売する乳児・幼児及び女児用衣服及びアクセサリーに別紙表示目録記載3及び4の各表示を付し,又は同表示を付した同商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,若しくは輸入してはならない。
4原告は,原告が管理運営するURLhttp://以下省略又はhttp://以下省略をトップページとするウェブサイトに別紙表示目録記載5及び6の各表示を使用してはならない。
5原告は,原告が管理運営し,原告の製造販売する乳児・幼児及び女児用衣服及びアクセサリーの販売を行う各店舗の看板(店頭表示板),案内板,外壁,入り
口壁面,商業施設内壁,店舗内什器及び備品,天井並びに床面に別紙表示目録記載3及び4の各表示を小売商標として使用してはならない。
6原告は,原告が管理運営するURLhttp://以下省略又はhttp://以下省略をトップページとするウェブサイトその他の原告が製造販売する乳児・幼児及び女児用衣服及びアクセサリーの販売を行うウェブサイトに別紙表示目録記載3及び4の各表示を小売商標として使用してはならない。
7仮執行宣言
第2事案の概要
1本件本訴事件は,衣料品,服飾雑貨の企画,製造加工,販売及び輸出入等を営む原告が,
デザイナーである被告ジルのマネジメント等を営む米国法人である被告会社に対し,
被告会社は原告との間で締結された修正サービス契約に基づくサ

ンプル提供義務を履行しなかったので,原告が前払したサービス料の全額を同契約に基づき返還する義務があると主張して,被告会社に対し,45万米ドル(以下,米ドルを単にドルと表記する。)及びこれに対する返還義務の生じた日である平成24年11月10日から支払済みまでニューヨーク州法所定の年9%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

本件反訴事件は,(1)被告らが,不正競争防止法(以下不競法という。)3条1項,2条1項1号及び2号に基づき,①原告の店舗やウェブサイトにおける表示1及び2の小売商標としての使用の差止め(反訴請求の趣旨1及び2),②原告の店舗やウェブサイトにおける表示3及び4の小売商標としての使用並びに製造販売する乳児・幼児及び女児用衣服及びアクセサリー(以下女児用衣服等という。への表示3及び4の使用等の差止め(反訴請求の趣旨3,5,6))
を求めるとともに,
(2)パブリシティ権又は不競法3条1項,
2条1項20号
(平
成30年法律第33号による改正前の14号)に基づき,ウェブサイトへの表示5及び6の使用の差止め(反訴請求の趣旨4)を求める事案である。2前提事実
(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨
により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)
(1)当事者

原告は,衣料品,服飾雑貨の企画,製造加工,販売及び輸出入,特許権,
実用新案権,意匠権,商標権等の工業所有権,その他の無体財産権の取得,売買,賃貸借及び仲介等を業とする株式会社である。

被告ジルは,
アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のファッションデザイナ
ーである。(甲1)


被告会社は,米国ニューヨーク州法に基づき,設立,所有及び経営されている法人である。被告会社は,日本を含むアジアにおいて,被告ジルのマネジメントを業とし,
その肖像等に係るパブリシティ権の管理委託を受けてお
り,被告ジルの肖像等の商業的利用につき,独占的利用権及び許諾権を有し
ている。
被告会社の代表者であるA(以下Aという。)は,被告ジルの配偶者である。
(2)ニューヨーク・コレクション
毎年2月と9月に行われるニューヨーク・コレクションは,半年先のシーズ
ンをターゲットとしており,2月にはその年の秋冬物の,9月には翌年の春夏物のコレクション(ファッションショー)が行われる。被告ジルは,平成5年(1993年)以降,ニューヨーク・コレクションでの発表を行うようになった。(乙78,501)
(3)原告と被告らとの間の契約又は合意

期限付き商標権譲渡契約の締結及び終了合意書の作成
(ア)原告,伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下伊藤忠ファッションシステムという。)及び被告らからジル・スチュアート関連商標の管理委託を受けているスチュアート

カーティス

ファミリー

トラ

スト(以下トラストという。)を含む被告会社の関係会社は,平成14年(2002年)10月18日付けで,放棄及び終了合意書(甲19,乙478。以下甲19の終了合意書という。なお,甲号証及び乙号証で同一の証拠が提出されている場合,2度目からの引用の際は甲号証のみを摘示する。
以下同じ。を締結し,

伊藤忠ファッションシステムは,
これ以降,
ジル・スチュアート・ブランド
(以下
本件ブランド
という。

のアパレルビジネスから離脱した。
(イ)トラストと原告は,同日付けで,終了合意書(甲7,乙474。以下甲7の終了合意書という。)を締結し,①トラストが,デザイン,店舗,広告又はJS商標(同合意書の別表に記載された商標の総称)に基づく原告及びそのサブライセンシー等による製品の販売,販売の促進等に
関連する一切の事項について承認する権利を有しないことを含め,日本におけるJS商標の使用又はそれに付随する権利の行使に関して承認する権利を有しないこと,②デザイン料,広告若しくは販売促進費,ファッションショー参加費又は日本において被告ジルのデザインを使用する権利の費用に関し,期限付き商標権譲渡契約(下記(ウ))に基づく支払等を除
き,支払を要しないことなどを確認した。
同合意書には,上記①に関し,以下の規定が置かれている。1.定義JS商標とは,本契約の別表1に定められた商標の総称であり,(ⅰ)かかる各商標に関連しているグッドウィル…(ⅳ)屋号,法人名,会社名,商号,ビジネス上の通称,トレードスタイル,サービスマーク,ロゴ,ブランド名,パッケージ及び他のデザイン,並びにいかなる他のソース又は事業識別名,及び適用される法において生ずる前記のいずれかに係る権利,…を含むが,これらに限定されない。3.誓約及び確認(b)承認又は報酬に対する他の権利のないこと;ジル・スチュアートのデザイントラストは,以下につき認め,また,同意する。(ⅱ)トラストは,デザイン,店舗,広告又はJS商標に基づく原告又はそのサブライセンシー及び販売代理店による製品の製造,使用,販売若しくは販売の促進に関連する他の一切の事項について承認する権利を有しないことを含め,日本におけるJS商標の使用,又は,それに付随する権利の行使に関して承認する権利を有しない。(ⅷ)原告は,ここに,トラストに対し,本件譲渡の期間と同一の期間において,男性用衣服の製造,使用又は販売と関連してJS商標を使用及び複製するサブライセンスを行うことの日本における無償の排他的権利を与える…。本件譲渡の期間において,男性用衣服に対する権利の所有権は,原告の財産にとどまる。(ウ)トラストと原告は,同日付けで,我が国における別紙商標権目録記載の1~5の各商標権(以下商標権1~5という。)を10年間の期限付きで譲渡し,
原告はその対価としてトラストに年間300万ドルを支払う
ことなどを内容とする商標譲渡条件契約(甲50,乙63。以下期限付き商標権譲渡契約という。)を締結した。(甲39,40,71~73)

平成17年(2005年)9月2日付けサービス契約の締結
被告会社と原告は,平成17年(2005年)9月2日付けで,契約期間を同年10月18日から平成24年(2012年)10月17日までとする
サービス契約(甲30。以下サービス契約という。)を締結した。同契約においては,①子供用製品とは,我が国において,JillStuart
商標及びこれと関連する商標の下で,原告により,又は,原告のためにデザイン,
製造又は販売される子供向けの衣服及び装飾品を意味すること
(1条)

②各契約年度は10月18日から翌年の10月17日までとすること(1
条),③原告が,被告会社に対し,被告会社から提供された家族写真を使用する権利等の日本における子供用製品(子供向けの衣服及び装飾品)の推奨の対価として,
各契約年度の10月18日に年8万ドル~9万ドルを支払う
こと(2条),④被告会社が原告に対して日本における使用のために加工又は修正されている広告用材料をシーズンごとに提供する義務を負い,原告は広告制作費として年15万ドル~17万ドルを支払うこと,⑤原告が被告会社やその関係者から商品を購入する義務を負わないが,一定の数量の商品の
注文をすべく合理的な努力をすること(6条a)などが定められていた。これに加えて,同契約には,被告会社によるサンプルの提供について,以下の定めが置かれていた。なお,サンプルとは,ニューヨーク・コレクションに出品された商品をモデル向けから消費者向けに作り替えた商品で,原告が被告側から購入するインポート商品の商品見本となるものをいう。
5条サンプル原告は,被告会社のコレクション製品のラインのサンプルの提供についての合意に関して,被告会社に対してサンプルについての下記の金額の年払い(以下「サンプル支払という。)を行うことができる。サンプル支払は,同意のある場合には,本件契約期間中,各契約年度の10月18日
が支払期日となり,
平成19年
(2007年)
10月18日から始まる
(サ
ンプル支払の最終支払期日は平成23年(2011年)10月18日となる。)。各契約年度のサンプル支払は,それが支払われる場合には,最初の5契約年度のそれぞれについては,契約年度ごとに10万ドル,最後の2契約年度のそれぞれについては11万ドルとするが,被告会社が原告に
対して従来提供してきた量と同等の量のサンプルを提供できない場合には,当該金額は,相応に減額される。原告は,サンプル支払を,各秋シーズン,
春シーズン及びリゾートシーズンのサンプルの受領をもって支払われる,
その40%,
40%及び20%の3回の分割で支払うことができる。


基本合意書の作成
トラスト及びジルスチュアート
インターナショナル

エルエルシー(以

下JSインターナショナルという。)と原告は,平成19年(2007年)2月頃,本件ブランドに関連する商標JillStuartを含む全世界での全ての商標権や,本件ブランド事業に関連する事業体の全ての株式等を,原告が買い取る方向で交渉を行い,基本合意書(乙64)を締結したが,最終的な合意には至らなかった。


商標権譲渡契約及び修正サービス契約の締結
(ア)被告会社及びトラストと原告は,平成19年(2007年)4月13日付けで,韓国等を除くアジア地域における,被告ジルに関連する全ての商標権や,各商標に関連するグッドウィル等を,4500万USドルの対価
で無期限に譲渡する旨の商標譲渡条件契約(日本)第三修正契約商標譲渡契約(中国,香港及び台湾)第二修正契約(甲51,乙68。以下商標権譲渡契約という。)を締結した。
同契約には,以下の規定がある。
1条(a)全当事者は,商標権譲渡契約の期間…を,…無期限とすることにつき合意する。…トラストは,…サンエーに対し,日本におけるJS商標…及びこれに付随する商標…に係る自己の全ての権利及び利益を譲渡する。2条(a)“JS商標”とは,本件地域における国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用衣服及びアクセサリーに使用される“JillbyJill”及び,“Jill”“Stuart”又はに基づく商標を含む,JillStuart”“及びデザイナーであるジルスチュアートに関連しているすべての派生物の総称であって,本契約の別表Ⅰに記載される商標を含むがこれらに限定されず,(i)かかる各商標に関連しているグッドウィル,…(ⅳ)屋号,法人名,会社名,商号,ドメイン名,ビジネス上の通称,トレードスタイル,サービスマーク,ロゴ,ブランド名,パッケージ及び他のデザイン,並びにいかなる他のソース又は事業識別名及び適用される法において生ずる前記のいずれかに係る権利,…を含む…。但し,紳士服に使用される“Stuart-Curtis”商標は,明白に除外される。(イ)また,被告会社と原告は,同日,契約期間を同日から平成29年(2017年)4月12日までとし,被告会社がブランド相談業務,広告制作業務等の業務を提供し,原告がその対価を支払う旨などを定める業務委託契約修正・改訂契約(甲52,乙4,67。以下修正サービス契約という。)を締結した。同契約には,以下の規定がある。
1条定義「子供服とは,原告の子供用製品をいう。

契約年度とは,本契約締結後の4月13日から始まり,翌年の4
月12日に終了する各期間をいう。
地域とは,日本,中国,香港,台湾,マレーシア,タイ,シンガ
ポール,フィリピン,インドネシア,ベトナム,ラオス,ミャンマー及び東経90度及び東経140度の間に位置する他のいかなるアジア諸国であって,インド,北朝鮮,韓国,モンゴル及び従来ソ連の一部であった地域内の諸国を除く(以下,この地域を本件地域という。)。商標とは,商標権譲渡契約において定義されるJS商標をいう。
トラストとは,ニューヨーク州のトラストである,スチュアート

-カーティス
2条

ファミリー

トラストをいう。

業務手数料
原告は,本契約に基づき提供される業務の対価として,次のとおり,
各契約年度の初めに,年間手数料を支払う。

平成19年
(2007年)
4月16日及び平成20年
(2008年)
4月13日

80万ドル

(内訳:ブランド相談業務10万ドル,ファッションショー経費15万ドル,広告制作業務15万ドル,サンプル及び諸経費(SamplesandMisc.)40万ドル)


平成21年
(2009年)
4月13日及び平成22年
(2010年)
4月13日

84万ドル

(内訳:ブランド相談業務10万5000ドル,ファッションショー経費15万7500ドル,広告制作業務15万7500ドル,サンプル及び諸経費42万ドル)


平成23年
(2011年)
4月13日及び平成24年
(2012年)
4月13日

90万ドル

(内訳:ブランド相談業務11万2500ドル,ファッションショー経費16万8750ドル,広告制作業務16万8750ドル,サンプル及び諸経費45万ドル)


平成25年
(2013年)
4月13日及び平成26年
(2014年)
4月13日

95万ドル

(内訳:ブランド相談業務11万8750ドル,ファッションショー
経費17万8125ドル,広告制作業務17万8125ドル,サンプル及び諸経費47万5000ドル)


平成27年
(2015年)
4月13日及び平成28年
(2016年)
4月13日

100万ドル

(内訳:ブランド相談業務12万5000ドル,ファッションショー
経費18万7500ドル,広告制作業務18万7500ドル,サンプル及び諸経費50万ドル)
3条

業務
被告会社は,業務手数料に基づき,各契約年度において,以下の業務
を提供する。
(a)ブランド相談業務
被告会社(デザイナーを含む。)は,子供用製品のために被告会社が原告に対し既に引き渡している家族写真(JS写真)を使用する権利を含め,本件地域において原告製品を推奨すること,原告製品のための原告の販売促進プログラムを推奨すること,書面による事前の承認により,
子供用製品に関連するJS写真の使用を認めることに同意

する。原告は,被告会社による積極的支援を要求したか,実際にJS写真を使用したかにかかわらず,業務手数料を支払う。
(d)サンプル
被告会社は,各秋シーズン,春シーズン及びリゾートシーズン用に原告に従来提供されてきた量と同等の量のコレクション製品,
セカン

ドライン製品及び/又は子供用製品のラインのサンプルを提供する。被告会社が原告に従来提供されてきた量と同等の量のサンプルの提供を怠った場合,被告会社は,2条に基づきサンプル又は諸経費
(判決注:同契約2条に照らすと,サンプル及び諸経費の誤記と
認められるので,以下ではサンプル及び諸経費と表記する。)に

割り当てられた業務手数料を,比例計算で原告に返金する。
(e)被告側からの購入
当事者は,ここに,原告には被告会社又はその関係者から製品を購入する義務がないことを合意する。
6条

その他

(h)準拠法
この合意は,その抵触法の原則にかかわらず,ニューヨーク州法の定めに服し,これに従い解釈されなければならない。
(i)管轄権に対する同意
トラスト及びサンエーは,それぞれ,本契約から生じる又は本契約に関連する全ての法的手続のため,ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所又はニューヨーク市に置かれるニューヨーク州裁判所の専属的裁判管轄に服する。」
(4)原告による修正サービス契約の解除
原告は,平成25年(2013年)1月22日頃,被告会社に対し,同日付け通知書により,
被告会社が修正サービス契約で定められたデザインサンプル
の提供をせず,
これにつき前払を受けた45万ドルの返金もしないなどとして,
同月26日をもって同契約を解除する旨の解除の意思表示をした(以下,これによる修正サービス契約の解除を本件解除という。)。(甲32の1)(5)被告らと原告との間の訴訟等


被告会社及びトラストの受託者としてのAは,平成24年(2012年)5月9日,原告及びサンエーインターナショナル

USA

エル・エル・

シー(以下サンエーUSAという。)等を相手方として,米国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴えを提起し,被告らは契約上合意された範囲外である製品を制作,販売しているなどと主張して金銭の支払を求めたが,同裁判所は,同年11月5日,被告らは契約の非当事者であり,適切な裁判
所で侵害請求などに基づき損害賠償を求めるべきであるなどとして,請求棄却の申立てを認め,その控訴審も,平成26年(2014年)5月14日,控訴を棄却した(以下,この訴訟を米国訴訟1という。)。(乙70,71)

被告会社は,平成25年(2013年)2月22日,本件解除の効力を争い,原告及びサンエーUSAを相手方として,米国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴えを提起したが,同裁判所は,同年4月25日,原告の請求棄却の申立てを認め,その控訴審も,同年12月18日,被告会社の控訴を棄却した(以下,この訴訟を米国訴訟2という。)。
(甲54,55)


被告らは,上記アの判決を踏まえ,平成27年(2015年)9月4日,
原告を相手方として,東京地方裁判所に対し,仮処分(以下本件仮処分という。)の申立てをした(同裁判所平成27年(ヨ)第22080号)。同申立てにおいて,被告らは,被告ジルの氏名や肖像写真を原告が管理運営するウェブサイト(以下原告ウェブサイトという。)に表示する行為について,
被告ジルが保有し被告会社が独占的管理権を有するパブリシティ権を侵害し,また,被告ジルの氏名,肖像写真等を原告ウェブサイトに,米国
ジル・スチュアート社との提携により,原告が製造したものである旨の表示(以下提携表示という。)を原告の商品に表示することが不正競争行為(品質誤認惹起行為)に該当すると主張して,原告ウェブサイトへの原告の氏名等の表示の差止め,原告商品に提携表示を付すこと又は同表示を付した商品の譲渡等の差止め及び提携表示を付した商品タグ及び同商品タグを付
した原告商品の執行官による保管等を求めた。同裁判所は,平成28年3月8日,被告らの申立てを認容する決定(以下本件仮処分決定という。)をした。(甲33,56,乙72)

千葉地方裁判所の執行官は,平成28年(2016年)3月14日,被告らの申立てにより,本件仮処分決定に基づき,千葉そごう本館2階の原告店
舗において,
提携表示を付した商品タグ及び同商品タグを付した原告商品を
執行官に引き渡し保管する執行として,同商品タグ167点を引き上げ執行官保管とした。なお,その際,原告従業員が同タグの原告商品からの除去を申し出たため,同所にあった原告商品は同店舗に返還された。(乙73)オ
被告らは,平成28年(2016年),原告を相手方として,東京地方裁判所に対し,
本件仮処分と同内容の被告ジルのパブリシティ権侵害行為や不
正競争行為(品質誤認表示)を主張して,本件仮処分決定と同様の差止めと提携表示を付した商品タグ及びこれを付した原告商品の廃棄,6億3000万円余の損害賠償金の支払,謝罪広告及び誤認防止表示等を求める訴訟(同
裁判所平成28年(ワ)第26612号。以下第1事件という。)を提起した。
また,これとともに,被告会社は,原告は原告ウェブサイトにシーズンごとの宣伝広告物,
ファッション雑誌等に広く掲載されて利用される被告会社
のファッションイメージ写真を掲載して被告会社の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したと主張して,同写真の複製及び公衆送信の差止め,原告ウェブサイトからの同写真の削除及び電子データの廃棄並びに損害賠償金19億6000万円余の支払等を求める訴訟(同裁判所平成28年(ワ)第26613号。以下第2事件という。)を提起した。
原告は,第1事件の請求のうち,原告ウェブサイト等における肖像写真等の表示の差止めや原告商品に提携表示を付し,又は同表示を付した原告商品
の譲渡等の差止め等に係る部分の請求を認諾した。同裁判所は,両事件を併合審理した上,平成31年(2019年)2月8日,第1事件については,パブリシティ権侵害及び不正競争(品質誤認表示)の成立を認めて,損害賠償金111万円余と遅延損害金の支払を求める限度で被告らの請求を認容し,その余の請求はいずれも棄却し,第2事件については,著作権侵害を認
めて,
損害賠償金415万円余と遅延損害金の支払を求める限度で被告会社の請求を認容し,その余の請求はいずれも棄却する判決をした。
原告及び被告会社は,敗訴部分を不服として,同判決につき知的財産高等裁判所に控訴した(同裁判所平成31年(ネ)第10033号)。(当裁判所に顕著な事実)

(6)原告の行為
原告は,平成27年(2015年)8月まで,子供用アパレルブランドJILLSTUARTNEWYORKを展開していた。
また,原告は,別紙店舗目録記載の各店舗(以下原告店舗という。)やhttp://以下省略をトップページとする原告ウェブサイト中のインターネット店舗において,JILLSTUARTやJILLSTUARTWhiteといった別個のブランド名を付した商品を販売するとともに付随するサービスの提供をしており,原告店舗や上記インターネット店舗のウェブページに表示1及び2を付して,
それぞれ小売商標として使用している。
なお,
少なくとも平成28年(2016年)7月26日時点において,
http://以下省略をトップページとする原告ウェブサイトの英語版ウェブサイト(以下,原告ウェブサイトと併せて原告ウェブサイト等という。)が存在した。(甲
1,乙350,437)
3争点
(本訴請求関係)
(1)国際裁判管轄の有無(争点1)

(2)被告会社の返金義務の存否及び返金額等(争点2)
(反訴請求関係)
(3)表示1,2,5及び6の著名性ないし周知性の有無(争点3)(4)混同のおそれの有無(争点4)
(5)原告の表示1~4に係る原告の使用権原の有無(争点5)

商標権譲渡契約による譲渡対象の範囲(争点5-1)


表示1~4の使用に関する被告らの同意・承諾の有無(争点5-2)
(6)表示1~4の使用差止請求に関する信義則違反ないし権利濫用の成否(争点6)
(7)原告による被告ジルのパブリシティ権侵害の成否(争点7)(8)原告ウェブサイト等での表示5及び6の使用の品質誤認表示該当性(争点8)(9)営業上の利益の侵害の有無(争点9)
(10)

表示5及び6の使用に関する被告らによる同意・承諾の有無(争点10)
(11)

表示5及び6の使用差止請求に関する信義則違反ないし権利濫用の成否
(争点11)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(国際裁判管轄の有無)について
(原告の主張)
修正サービス契約6条(i)は,専属的管轄合意に関する規定であるが,その合意の主体はトラストと原告であり,原告と被告会社との間の訴えについて規定したものではない。
修正サービス契約3条(d)は原告に返金する旨を定めており,原告の本店は日本国内にあり,返金の振込先となるべき口座も原告の国内口座であるから,契約において定められた当該債務の履行地(民事訴訟法3条の3第1号)は日本国内にあり,日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる。
(被告会社の主張)

修正サービス契約6条(i)は,原告と被告会社との同契約から生じる又は同契約に関連する全ての法的手続について,米国(ニューヨーク州)の裁判所が専属的な裁判管轄を有する旨規定している。このため,日本の裁判所は本訴について国際裁判管轄を有しないので,本訴請求は却下されるべきである。同条項における合意の主体は
トラスト
であるが,
これは明白な誤記であり,
その主体は
被告会社と原告である。
修正サービス契約はサービス契約を参考にしてドラフトされたところ,サービス契約の専属的管轄合意の規定は,同日に締結されたトラストと原告との間の商標権譲渡契約(中国,香港及び台湾)(乙6)の裁判管轄の規定を流用したため,誤ってその主体がトラストとされている。修正サービス契約は,サ
ービス契約の専属的管轄合意の規定をそのまま流用したため,サービス契約の誤記が修正されないまま残ったものである。このような経緯に照らしても,修正サービス契約6条(i)の
トラスト
は被告会社の誤記であることは明らかである。
2争点2(被告会社の返金義務の存否及び返金額等)について
(原告の主張)

被告会社は,平成24年度(平成24年4月13日から平成25年4月12日までをいう。以下,同じ。)の分として原告に提供すべき平成25年の春シーズン用(以下春用という。)及び同年の秋シーズン用(以下秋用という。)のいずれのサンプルの提供も怠ったから,修正サービス契約3条(d)に基づき,原告が平成24年4月12日にサンプル及び諸経費として被告会社に支払った45万ドル全額の返金義務を負う。
(1)被告会社が45万ドル全額の返金義務を負うこと
サービス契約当時のサンプル費用は年10万~11万ドルであったが,修正サービス契約ではこれが40万~50万ドルと大幅に増額された。その理由は,原告としては高額のサンプル費用を一括で先払いすることで商品の購入圧力を受けずにサンプルの提供を確保することにメリットを見いだし,被告会社と
しては原告がサンプルに対応するインポート商品を購入しなくとも年40万~50万ドルの支払が受けられることにメリットを見いだしたからであり,サンプル費用が先払いされることになったからこそ,サンプル費用が大幅に増額されたのである(甲70)。
また,修正サービス契約締結前には,サンプルが提供されるたびに支払がさ
れていた。例えば,平成19年2月頃にオーダーされた同年秋冬用サンプルについて3万ドル程度のインボイスが発行されているが
(甲75)このことは,

同サンプルが提供されるたびに支払われていたことを示している。これに対し,修正サービス契約においては,サンプル費用は各契約年度の開始とともに先払いが完了していた。なお,修正サービス契約の下においては,サンプル提供の
際に単価を1ドルとするインボイスが発行されていたが,これは税関対応目的であったと考えられる(甲70,77)。
平成24年度のサンプル提供については,原告が,平成24年度の業務手数料を同年4月13日までに支払ったことにより,被告会社は,同年9月頃にコレクションが行われる平成25年春用と,同年2月頃にコレクションが行われ
る同年秋用のサンプルを,いずれも提供する義務を負った。
しかるに,被告会社は,平成24年11月9日,サンプルの提供を拒絶し,平成25年春用及び秋用のサンプルを提供しなかったので,被告会社は,原告に対し,修正サービス契約3条(d)に基づき,45万ドルを返還する義務を負う。
これに対し,被告会社は,修正サービス契約3条(d)のサンプル及び諸経費は,被告会社からサンプルの提供を受ける権利自体の対価であり,サンプルの対価の先払いではないと主張するが,被告会社がサンプル及び諸経費とは別にサンプル代金を支払っていたことの根拠として挙げるインボイス等(乙479,480)は,サービス契約の締結日(平成17年9月2日)より前の時期のものであるから,被告会社の上記主張は理由がない。

また,
被告会社が平成24年秋用のサンプル提供の根拠であると主張するインボイス(乙484~486)については,原告は受領しておらず,インボイス番号と日付が整合していない上,原告が40万ドル以上を支払っているにもかかわらず数千ドル以上の高額のものであることなど不自然で,その信用性には疑義がある。このため,被告会社が平成24年秋用のサンプルを提供したと
の主張については否認する。
(2)遅延損害金の利率
ニューヨーク州法上,本件の返還請求権の利息は9%であり(甲66),その起算点は訴訟物たる請求権が発生した時点となるから(甲67),平成24年11月10日となる。

なお,州籍相違事件とは,28U.S.Code§1332に基づき,連邦地方裁判所が管轄を有する事件をいうが(甲69),本件はこれに当たらない。(3)被告会社の主張について

平成24年度の業務手数料の支払に対するサンプルの提供がされていな
いこと
被告会社は平成24年秋用サンプルが同年度のサンプルであると主張するが,その主張を前提とすると,被告会社は,同年度の業務手数料の支払を受ける前である同年2月に同年秋用サンプルの発注を受けて発送を手配したことになって不合理であるから,そのようなことはあり得ない。原告は,通常9月と翌年2月に各契約年度のサンプルを被告会社に要求し,被告会社はその2か月程度後にサンプルを原告に届けていた(甲70)。そのため,
平成24年4月13日に平成24年度が開始して原告が被告会社に
90万ドルの業務手数料を支払った後,原告は,同年9月頃に平成25年春用のサンプルのオーダーをして平成24年11月頃にこれを受領し,平成25年2月頃に同年秋用のサンプルのオーダーをして,同年4月頃にこれを受領するはずであった。しかるに,被告会社は,これらのサンプルを一切原告に提供しなかった。


返金額から諸経費を控除する必要はないこと
被告会社は,
修正サービス契約3条(d)の返金額の計算に当たり,
サンプル及び諸経費から諸経費分を控除した上で,従来提供されてきたサンプル料との比例計算を行うべきであると主張するが,同条項はサンプル及び諸経費に割り当てられたサービス料を比例計算で原告に返金すると定め

ているのであり,サンプル及び諸経費に割り当てられたサービス料から更に諸経費に割り当てられた額を控除するという定めは一切ない。なお,仮に45万ドルに諸経費を含むとしても,2条にサンプル及び諸経費とある以上,その約4分の3が諸経費分であるとの被告会社の主張は不合理であり,大半はサンプル費用に当たると解すべきである。


被告会社に返金を拒む正当理由がないこと
サンプル品を原告開催の展示会で展示することに何ら問題はないし,原告が被告ら関連会社のデザインを無断コピーするなどしたことはないから,被告会社に返金を拒む正当理由などない。


原告に受領遅滞がないこと
Aは,被告会社がサンプルの提供をしなかったにもかかわらず,客観的な根拠を示すことなく,

サンエーの昨年の秋のサンプル注文の量は21,321.00米ドルでした。按分計算により,これが当社からの返金となります。

などとする不誠実なメールを送付しているのであり(甲31の4),このような不誠実な申し出をもって債務の本旨に従った弁済の提供があったということはできない。

したがって,
原告に受領遅滞の責任があるとの被告会社の主張は理由がな
い。
(被告会社の主張)
平成24年度のサンプル提供の対象は,平成24年秋用と平成25年春用であるが,前者は提供済みであり,被告会社が平成25年春用のサンプル提供を拒んだのは原告がサンプルの発注をしなかったためであるから,被告会社は,原告に対し,修正サービス契約に基づく返金義務を負わない。
なお,修正サービス契約の準拠法は米国ニューヨーク州法であるから,

ニューヨーク州法に基づき契約を解釈するに当たっては,文言及び語句には,明白な意味を持たせるべきであり,当該契約は,そのすべての規定に完全な意味と効果を与えるように解釈されるべきである。

,契約書の各条項に意味を与えるため,各条項は,併せて文脈として解釈されるべきことは,基本であるexpressio,

uniusestexclusioalterius(特定事項の摘示は他を排除する。)

などの解釈準則(乙487~497)に従う必要がある。

(1)被告会社が返金義務を負わないこと

修正サービス契約のSamplesandMisc.Fee(45万ドル)が被告会社からサンプルの提供を受ける権利自体の対価であること
SamplesandMisc.Feeは,被告会社からサンプルの提供を受ける権利自体の対価であって,サンプルの対価の先払いではない。修正サービス契約
においてサービス契約に記載のない諸経費が追加され,原告の支払金額がサービス契約と比較して大幅に増加したのは,原告の交渉担当者である中道昇が,ファッションブランドのラインに関する多大な費用は,各シーズンの新しいコンセプトの開発にあり(乙501,509),サンプルそれ自体の費用は大きくないことを理解していたからである。修正サービス契約3条(d)の経費はこれらの費用に部分的に充当するためのものである。原告が開発プロセスに必要な費用の一部を負担することになったのは,原
告が,
被告ジルが毎年発表するコレクションやファッションショー等の活動により多大な恩恵を受けていたからである。サービス契約締結当時は,原告への商標権の譲渡は期限付きであったが,その後の商標権譲渡契約により,それが被告側に戻らないことになったため,修正サービス契約においては,被告ジルの活動により多大な恩恵を受ける原告が,被告らの世界的な活動の
費用を一部負担することになった。
また,被告会社が原告に対して提供すべきサンプルの量は,従前提供した量と同程度の量である。平成23年から原告のジルスチュアート事業部長であったB(以下Bという。)は,被告会社が提供していたサンプルの量につき,45万ドル分であるとは証言せず,多くても50枚程度であると証
言しているが
(乙473・23,24頁),比較的高額なサンプルの価格(1
962ドル。乙484)に50枚を乗じても9万8100ドルにしかならない。このことは,SamplesandMisc.Feeがサンプルの対価ではないことを示している。
さらに,SamplesandMisc.Feeがサンプルの対価ではないことは,原
告が,サービス契約及び修正サービス契約の期間において,被告会社にSamplesandMisc.Feeとは別にサンプル代金を支払っていた(甲75,乙479,480)ことからも明らかである。
以上のとおり,45万ドルの返金を求める原告の請求は,そもそも失当である。


被告会社がサンプルの提供を怠っていないこと
修正サービス契約3条(d)において,JSAsiashallprovideSaneisamples…foreachFallseason,SpringseasonandResortseasonと,秋用サンプルから提供する旨を明確に規定していることからも明らかなように,被告会社が平成24年度に原告に提供すべきサンプルは,平成24年秋用と平成25年春用である。
同項においてこのように規定されたのは,サービス契約の契約年度(平成18年10月18日~平成19年10月17日)中である平成19年2月に同年秋用コレクションが発表され,その後,同年4月13日に修正サービス契約が締結されたため,同契約が適用されるシーズンを明確に必要があった
ことに基づくものである。
また,サービス契約では,10月18日から1年間を契約年度とし,同日をサンプル費用の支払期限として合意しており,9月に原告がサンプルの発注を行い,翌月に被告会社がサンプルの費用を支払い,その後にサンプルを提供するとの運用であった。このことは,修正サービス契約締結後も同様で
あり,こうした運用は,修正サービス契約に基づく平成24年度のサンプル提供は平成24年秋用から始まることを裏付けるものである。
そして,被告会社は,平成24年度分のサンプル提供義務の履行として,同年4月11日,同月25日及び同年6月25日に,原告に対し,同年秋用のサンプルを提供した(甲54,乙484~486)。これが平成24年度
分の履行であることは,平成24年秋用サンプルの2回目と3回目の提供日が平成24年度中であること,初回提供日の同年4月11日が同年度の初日(開始日)のわずか2日前であること,海外から日本にサンプルを発送する場合,数日の誤差を見込むことは実務上珍しくないこと,インボイス(乙484~486)
に2012年秋用のサンプルと記載されていることから明ら

かである。
このように,被告会社がサンプル商品の提供を拒んだのは平成25年春用の1回のみであるところ,原告は,平成25年春用サンプルを発注しない旨の連絡をしたのであるから(乙501添付資料5),被告会社の平成25年春用サンプルの不提供は,同契約3条(d)のJSアジアが…サンプルの提供を怠った場合に当たらない。これに対し,原告は,各契約年度におけるサンプルの提供は,9月におけ
る春用のサンプルの提供から始まる旨の主張をするが,同契約3条(d)の上記文言と明らかに矛盾する。原告が主張するように,各年度のサンプル提供が,11月頃の春用サンプルから始まり,翌年4月頃の秋用サンプルで終わるとすると,仮に2月にサンプルのオーダーを受けて,被告会社が秋用サンプルを4月13日以降に提供すると,契約年度内にサンプルが提供できず履
行遅滞となってしまい不合理である。

被告会社に平成25年春用サンプルを提供しない正当理由があること被告会社が平成25年春用サンプルを原告に提供しなかったのは,原告に以下の(ア),(イ)に記載の不当な行為があったからであるから,被告会社には
上記サンプルを提供しなかったことについての正当な理由がある。(ア)サンプル品はインポート商品のいわば商品見本であり,インポート商品の販売促進を目的としている。しかし,原告の主張によれば,インポート商品が売上げに占める割合は,平成22年に2.7%,平成23年に2.2%であって,少量しかインポート商品の買付けを行っていなかった。し
かるに,原告は,毎月5月と12月に原告が開催する展示会では,被告らが制作したサンプル品を大々的に展示して,業界向けの宣伝広告として利用するという,
サンプル品送付の本来の目的から逸脱する利用をしていた。
(イ)原告は,
被告ジルがショーに出展した作品のデザイン等を無断で模倣し
た商品を販売したため,被告らから厳重に抗議等を受け,これが背景とな
って,商標権譲渡契約5条で,被告ら関連会社のデザインを原告が無断でコピー,販売することを明確に禁止する旨が定められた。しかるに,原告は,被告らのポスター及びニューヨークでのファッションショー,被告ジルのコレクション製品のサンプルからデザインを複製するよう社内のデザイナーらに促しており(乙501),原告が被告らのサンプルを無断でコピーし,
被告らの許諾なくコピー商品を自ら製造し販売するという問題
が多発したため,被告らは,サンプルの提供を中止せざるを得なかった。(2)仮に返金義務がある場合でも,45万ドルから,被告会社が提供済みの平成24年秋用サンプル分と,諸経費分34~35万ドルを控除すべきこと修正サービス契約は,2条のサービスフィーの概算としてサンプル及び諸経費の合計金額(SampleとMisc.の合計金額)を明記し,3条(d)におい
て,被告会社は,従前供給してきたサンプルの量と同等の量のサンプルの提供を怠った場合には,上記2条に基づきサンプル及び諸経費に割り当てたサービス料を,比例計算で原告に返還することを明記している。この規定の文理によれば,SampleandMisc.は,もともとサンプル及び諸経費の合計金額であり,
サンプル及び諸経費
が比例計算で返還される対象になることから,

サンプル提供の懈怠とは無関係な諸経費に割り当てられた額を返還対象から控除したサンプル費から返還すべきことになる。
控除すべき諸経費分の額は,修正サービス契約でサンプル及び諸経費として定められた45万ドルとサービス契約におけるサンプル費10万~11万ドルとの差額である34~35万ドル分とするのが相当である。また,前記のと
おり,被告会社は平成24年秋用サンプルを原告に提供済みであるから,サンプル費の約2分の1も控除すべきである。
原告は,比例計算の対象はサンエーに従来提供されてきた(サンプルの)量であると主張するが,修正サービス契約3条(d)は,上記2条に基づきサンプル及び諸経費に割り当てたサービス料を,比例計算で原告に返還すると
明確に規定しており,
この規定はサンプルの量を比例計算の対象とすることを
排除しているため,原告主張の解釈は,ニューヨーク州法における契約文言の解釈上のルールたるexpressiouniusestexclusioalterius原則(特定事項の摘示は他を排除する。乙493~497)に反し,失当である。(3)原告には受領遅滞があるから,少なくとも利息は生じないことAは,平成25年1月11日,サンエーUSAの代表者Cに対し,2万1321ドルの返金について連絡し,もって弁済の提供をしたが,原告が受領を拒んだため,原告には受領遅滞の責任が生じた。このため,被告会社に履行遅滞はなく,少なくとも遅延損害金は発生しない。
(4)遅延損害金の起算日は本訴提起日とすべきであるし,判決後の遅延損害金の利率はフェデラル・レートに従うべきであること

ニューヨーク州法セクション5001は,
裁判所に対し,
判決前の利息
(prejudgmentinterest)を裁定するのに合理的な日を決定するに当たり,広範な裁量権を認めている(乙498)。原告には受領遅滞があり,先例たるべき裁判例(CotazinovBasilDev.Corp.,167A.D.2d632,562N.Y.S.2d988,991(1990)(乙499))と同様に訴因たる過失が存在したと容易に特定できる日がないと認められるから,仮に遅延損害金の起算日を検討するとすれば,推定上,訴えが開始された日を利息の起算日と解することがニューヨーク州法のルールにかなう。
また,州籍相違事件における判決後の利息は通常フェデラル・レートに従い算出されるべきとの裁判例(FCSAdvisors,Inc.v.FairFin.Co.,605F.3d
144,149(2dCir.2010)
(乙500)が存するから,

判決後の利息は28U.S.C.
§1961(a)が規定するフェデラル・レートに従うことになる。3争点3(表示1,2,5及び6の著名性ないし周知性の有無)について(被告らの主張)
被告ジルの氏名である表示5及び6並びに同氏名に由来する米国ニューヨー
ク発のファッションブランド名である表示1及び2は,被告グループによる明確なデザインポリシーや世界観に基づく大々的かつ統一的な宣伝広告等により,被告らのファッション事業,
ファッション分野のライセンスその他のアソシエイト
事業,同各事業に係る被告ら及び日本・韓国等のアソシエイトらのファッション分野の各種製品(被服,靴類,身飾品,時計,かばん類・袋物,携帯用化粧道具入れ,化粧品・香水,化粧用具,ハンカチ,眼鏡等)の出所が被告グループであることを表示するものとして,原告に商標権を譲渡した平成19年4月13日より前に,
又は少なくとも原告が被告グループから離脱した平成25年2月8日より前に,著名性又は少なくとも高い周知性を取得した。
(原告の主張)
争う。被告ジルの氏名に著名性や周知性が認められるわけではないし,被告側
が我が国のアソシエイツと契約することができたのは,原告が国内におけるブランド価値を高めたからにほかならない。
4争点4(混同のおそれの有無)について
(被告らの主張)
原告が表示1及び2を小売商標として使用し,表示3及び4を女児用衣服等に
使用し,又はその小売商標として使用すると,原告が被告らと同一の商品主体又は営業主体であるか,
少なくとも原告が被告グループに属するものと誤信させる
おそれがある。
原告は混同を惹起させる措置を施していないなどと主張するが,原告は,原告ウェブサイトのDesignConceptと題するページに表示5及び6に酷似する表
示をし,被告らに指摘されるまで原告の公式フェイスブックにNYコレクションブランドJILLSTUARTとあえて表示し,被告ジルとの関係性を強調していた。
(原告の主張)
争う。ファッションの分野においては,デザイナーの本名がそのままブランド
名に採用されるケースが多く,このようなマーケットプラクティスが広く浸透している今日において,一般消費者がファッションブランド名に触れた際に,それがデザイナー名に由来しているとの印象を抱くことは何ら不自然ではない。原告は,こうした一般的な結びつきを超えて,不正競争と評価されるような混同を意図的に惹起させる行為を行っていない。
5争点5-1(商標権譲渡契約による譲渡対象の範囲)について
(原告の主張)
原告は,
本件ブランドに係るビジネスを滞りなく運営していくことができるようにするために,
商標権譲渡契約に基づき約54億円もの対価を支払ったのであ
り,表示1~4を小売商標として使用することや,表示3及び4を女児用衣服等に付するなどして使用することは,いずれも商標権譲渡契約の譲渡対象に含まれ
ているから,原告は,これらの表示をかかる態様で使用することができる。(1)商標権譲渡契約は,
表示1~4を小売商標として使用することも譲渡の対象
としている。
原告は,商標権譲渡契約により約54億円もの対価を支払ったが,それは,本件ブランドに係るビジネスを滞りなく運営していくことができるようにす
べく,
これに関連する権利や様々な表示を幅広く確保する必要があったためである。
そこで,
商標権譲渡契約2条(a)(ⅳ)は,
屋号,法人名,会社名,商号,ドメイン名,ビジネス上の通称,トレードスタイル,サービスマーク,ロゴ,ブランド名,パッケージ及び他のデザイン,並びにいかなる他のソース又は事業識別名及び適用される法において生ずる前記のいずれかに係る権利が譲渡
の対象であるJS商標に含まれると規定している。このように,JS商標は,JILLSTUART及びこれに関連,派生する商標のみならず,これらに関する屋号,ビジネス上の通称や事業識別名等の,本件ブランドのビジネスに関する様々な表示をも広く包摂している。
小売等役務商標制度が施行される前である平成14年10月18日に締結
された期限付き商標権譲渡契約では,被告ジルと関連する全ての商標を譲渡対象としており,
上記制度施行後の平成19年4月13日に締結された商標権譲
渡契約ではトラストは…サンエーに対し,日本におけるJS商標…及びこれに付随する商標…に係る自己の全ての権利及び利益…を譲渡すると規定しているところ,原告は,これらの契約の前後を通じて表示1等を小売商標として用いてきており,被告らもこれを認識していたのであるから,商標権譲渡契約の当事者間においては,譲渡対象たる商標につき,本件ブランドの商品を指し示すものとして原告店舗の看板等や原告ウェブサイトに表示1等を従前と同様の態様で使用することが当然に予定されていた。
なお,被告らは,ニューヨーク州法に基づく契約解釈として,契約文言を重視すべき旨を主張するが,ニューヨーク州法に基づく契約解釈における関連裁
判例を整理したニューヨーク法学(NewYorkJurisprudence)第2版の第215項「契約解釈における周辺事情の考慮(甲79)においては,文言のみを硬直的にとらえるのではなく,契約締結に至る経緯や当事者の関係性等も考慮すべき旨が記載されているように,商標権譲渡契約の解釈に当たっても,こうした諸事情を考慮して,上記のとおり解釈すべきである。

(2)表示3及び4を女児用衣服及びアクセサリーに付すことも商標権譲渡契約の対象に含まれている。
すなわち,商標権譲渡契約におけるJS商標は広範な概念を含み,これに付随する商標を含むものであるし,同契約2条(a)においても,男性用衣服等に関する商標が譲渡対象に含まれないことが明記されているのみで,女児用衣服
等に関する商標が譲渡対象外とする趣旨は読み取れない。また,これと同時に締結された修正サービス契約においても,商標権譲渡契約上のJS商標が子供用の衣服及びアクセサリーを含むことが明らかにされている。修正サービス契約は,原告が平成17年に子供服に係るJILLSTUARTNEWYORKブランドを立ち上げ,被告ジルらも同ブランドの店舗を訪問した後に締結されているのであるから,JS商標には女児用衣服等も含まれる。商標権譲渡契約の別紙Ⅰには,譲渡対象とされる商標権のリストであるが,これに日本における25類に係る商標権として列挙されている登録番号第3323629号(別紙商標権目録記載1),第4007423号(同記載2)及び第4451837号(同記載5)の指定商品には被服が含まれ,子供服を含む類似群コード17A01(甲74)が明記されている。これらは期限付き商標権譲渡契約でも譲渡対象とされていたものであり,第4007523号の指定商品からは和服が除外されているものの,いずれにおいても子供服は除外されていないのであって,原告がこれらの商標権の譲渡を受けたことからしても,JS商標に女児用衣服等を含まないと解することはできない。このように,
女児用衣服等に関する商標も商標権譲渡契約の譲渡対象に含ま

れているから,原告は,商標権譲渡契約に基づき,表示3及び4を女児用衣服等に付することができる。
(被告らの主張)
商標権譲渡契約は,国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用アパレル及びアクセサリーに係る商品商標及びgoodwillを対象とするものであって,小売
商標や女児用衣服等に関する商標等は対象外である。原告店舗や原告ウェブサイトでの,いわゆる看板としての商標の使用は,単なる商品商標としての使用にとどまらず,小売商標としての使用でもあるため,同契約の対象外である。なお,商標権譲渡契約の準拠法も米国ニューヨーク州法であるから,ニューヨーク州法に基づき契約を解釈するにあたって,修正サービス契約と同様に,その解釈準則等に従う必要がある。(1)商標権は,標章(マーク)とそのマークを使用する商品・サービスと組み合わせて一つの権利となるところ,商標権譲渡契約2条(a)は,日本等の「Territoryにおいて,
woman'sapparelandaccessoriesinInternationalTrademarkcategories25,18and14を譲渡の対象としており,譲渡対象が
国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用アパレル及びアクセサリー(以下,併せて婦人用衣服等という。)に関する商標及び同商標にかかるgoodwillのみであることを,文言上厳格に限定している。したがって,expressiouniusestexclusioalterius原則(特定事項の摘示は他を排除する。)からして,小売役務はもちろん,女児用衣服等に関するものが排除されていることは明らかであって,裁判所が当事者の合理的意思解釈としてこれと異なる解釈をすることは許されない。
商標権譲渡契約の締結前においては,本件ブランド全体の買取り交渉が行われていたが(乙501添付資料1),原告が表示1及び2を小売役務のために使用する意思を有していたのであれば,トラストとその旨の交渉をした上で,商標権譲渡契約において小売役務に係る35類を譲渡対象として規定するこ
とが可能であった。しかるに,原告は,トラストとの間で,譲渡の対象を上記のとおり限定し,35類の記載をしなかったのであるから,上記対象以外を譲渡対象から意識的に除外したというべきである。
なお,商標権譲渡契約の2条(a)(ⅳ)におけるサービスマークは,これに並記されたトレードネーム,コーポレートネーム等の規定から明らか
なとおり,譲渡対象の標章の範囲について,一切の標章を含むことを規定したものにすぎず,小売役務商標としての使用を許す趣旨のものではない。(2)講談社の英和中辞典,小学館の〈コンパクト版〉プログレッシブ英和中辞典及び研究社のNEWENGLISH-JAPANESEDICTINARYのいずれにおいて
も,
womanは,成人女性を意味すると明記されている(乙469~471)から,
womanに女児や乳児は含まれない。このことは,日本を代表するアパレル企業や米国を代表する有名百貨店のウェブサイトにおいて,
woman
ない
しwomenとkids向けの商品を別カテゴリーに分けて宣伝広告,販売を行っていること(乙462~468,507)からも裏付けられる。(3)原告の主張について


原告は,期限付き商標権譲渡契約では,被告ジルと関連する全ての商標を譲渡対象としていたと主張するが,同契約のArticle1(2)において,"JillStuartTrademarks"shallmeanthefollowingTrademarksRegistrationsinJapanonly:として,国際分類14,18,及び25類のJILLTUART/ジルスチュアート,JILLSSTUART等の4件の商

標登録を譲渡対象として明記していることに反している。

実店舗の看板やインターネット店舗の店名としての商標の使用は,販売される商品,提供される役務の内容やこれらとの関係によって,単なる商品商標としての使用にとどまる場合と,小売役務商標としての使用でもある場合があるから,原告の従前の使用態様は,小売役務商標に係る譲渡やその使用許諾の有無とは直接の関係がない。また,原告が平成9年頃から店舗の看板で表示1及び2を使用していることを被告らが認識していたことを示す証
拠はない。

原告は,
修正サービス契約に子供服についての規定があることを指摘する
が,同契約は既に解除されているから,解除後の原告の使用を正当化し得るものではないし,同契約には,
EntireAgreement
(完全なる合意)条項

があり(6条(b)),同契約に記載されたことが合意の全てであって,それ以外の書面・口頭の合意や了解事項は全て排除されることを両当事者は合意している。
また,
修正サービス契約で子供用衣服について規定していながら,
同日に締結した商標権譲渡契約ではこれに言及していないことも,その譲渡対象に女児用衣服等に関する商標等を含まないことを示すものということ
ができる。
6争点5-2(表示1~4の使用に関する被告らの同意・承諾の有無)について(原告の主張)
被告らは,
原告が原告店舗やウェブサイトに表示1~4を小売商標として表示することや,女児用衣服等に表示3及び4を付することなどについて同意し,承
諾していたもので,これを撤回することは許されないから,原告は,表示1~4を上記の各態様で使用することができる。
(1)原告ジル及びA(以下被告ジルらという。)は,日本におけるJILLSTUARTブランドの立ち上げ時から,原告店舗を何度も訪れ,原告店舗において表示1及び2が使用されていることを認識し,承諾していた(甲43)。また,原告は,同ブランドの日本の消費者向けウェブサイトを立ち上げるに先立ち,平成17年頃,被告ジルらに対し,その旨の意向を伝え,承諾を得たから,被告らは,同ブランドのウェブサイトに表示1及び2が使用されることにつき,当然に認識し,承諾していたといえる。
(2)被告ジルらは,原告が平成17年に女児用衣服等についてJILLSTUARTNEWYORKブランドを立ち上げた後に,同ブランドの店舗を訪
れていたから,
被告らは,
原告が女児用衣服等に表示3及び4を付することや,
原告店舗にこれらの表示を使用することを認識し,承諾していた。また,被告らは,同ブランドについても消費者向けのウェブサイトが開設され,表示3及び4が使用されることを当然に認識し,これを承諾していた。
(3)その後,それまでの原告のビジネス形態を継続することを前提として,平成
19年4月13日に商標権譲渡契約が締結され,JS商標等が原告に譲渡されたのであるから,
原告店舗や原告ウェブサイト等において表示1~4を表示し,
女児用衣服等に表示3及び4を付することについて,被告らの同意があり,その撤回が不可能であることは当然である。
(被告らの主張)

被告ジルらが
JILLSTUART
ブランドや
JILLSTUARTNEWYORKの原告店舗を訪れた事実は不知であり,被告ジルらが原告ウェブサイトについて平成17年に承諾したとの事実はなく,被告ジルらは表示1及び2が原告ウェブサイトで使用されていることを認識していなかった。また,修正サービス契約解除後に,被告ジルらが原告による表示1~4の使用を認識し,承諾した事実はない。
7争点6
(表示1~4の使用差止請求に関する信義則違反ないし権利濫用の成否)について
(原告の主張)
被告らは,原告店舗等において,JILLSTUARTの商標を付した商品のみならず,JILLSTUARTWhiteを付した商品を販売して
いるとして,原告店舗等の看板などとしてJILLSTUARTの商標を用いていることを問題視するが,JILLSTUARTWhiteは,JILLSTUARTから派生した商標であり,出所識別機能を有するのはJILLSTUARTの部分であり,かつ,被告ら自身,原告がJILLSTUARTWhiteの商標を付した婦人用被服等の販売等を行うことができ

ることについては認めている。このように,被告らが,商標権譲渡契約においてJILLSTUART等の商標,その派生物やこれらに関する屋号や事業識別名等の,
本件ブランドのビジネスに関する様々な表示を含む形で約54億円もの高額の対価を得て,JILLSTUARTWhiteの商標の使用も認
めているにもかかわらず,
原告が上記複数の商標を付した商品を販売しているこ
とを奇貨として,
表示1及び2の小売役務商標としての使用の差止めを請求する
ことは,権利濫用に当たる。
また,日本において本件ブランドを拡大させたのは原告であること,原告が平成17年にJILLSTUARTNEWYORKブランドを立ち上げ,そ
の店舗では,女児をターゲットとする別紙商品目録記載の各商品を販売し,その店舗の店頭及び店内やウェブサイトでは表示3及び4を使用していたところ,被告ジルらもその店舗を訪問していたこと,表示3及び4が女児を持つ女性の間で著名になっていること(甲45),このような原告と被告側の関係や,上記ブランドの実際の運営を踏まえて本件ブランドの商標及びグッドウィルが約54億円で原告に譲渡されたという経緯に鑑みれば,原告が従前と同様の態様にてJILLSTUARTNEWYORKブランドに係るビジネスを行うことに当
たり,表示3及び4の使用の差止請求を行うことは,権利の濫用に当たる。(被告らの主張)
争う。
8争点7(原告による被告ジルのパブリシティ権侵害の成否)について(被告らの主張)
米国等の海外や日本において,新聞,雑誌,ウェブサイト等の幅広い媒体に,
継続的かつ長期間にわたって被告ジルの氏名が掲載され,同人の日常的な動向にも高い関心が寄せられている上,来日した際にも熱狂的なファンに大歓迎されていることからすれば,被告ジルの氏名が強い顧客吸引力を有し,同人がパブリシティ権を有することは明らかである。
そして,原告は,原告ウェブサイト等において表示5及び6を原告商品等の広
告として使用しているから,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に当たり,原告に被告ジルのパブリシティ権侵害が成立する。(原告の主張)
争う。ブランド紹介の一環として雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアに被告ジルの紹介記事が掲載されたにすぎず,被告ジルが特に耳目を集める存在というわけではない。
また,原告による原告ウェブサイトでの表示5及び6の使用は,本件ブランドの経緯を説明することを目的とするものであり,商品等の広告として使用するものではないから,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に
当たらない。
したがって,原告は,被告ジルのパブリシティ権を侵害していない。また,原告ウェブサイトにおける表示5及び6の使用態様には様々なものがあり得るから,
被告らが原告に対して一律にその使用を差し止める請求権を有するものとはいえない。

9
争点8(原告ウェブサイト等での表示5及び6の使用の品質誤認表示該当性)
について
(被告らの主張)
被告ジルの経歴やデザインに対する考え方,被告会社と提携している旨など,被告ジルとの関連性をことさらに強調する表示とともに表示5及び6を使用することは,消費者・需要者に対し,実際には被告ジルと無関係である原告商品にあたかも被告ジルが関与しているかのような,原告商品の品質,内容についての誤認を生じさせるから,
原告ウェブサイトでの表示5及び6の使用は品質誤認表
示に当たる。
(原告の主張)
争う。表示5及び6の使用態様には様々なものがあり,原告は表示5及び6を
本件ブランドの経緯を説明する目的で使用しているのであるから,消費者を誤認させることはない。
10争点9(営業上の利益の侵害の有無)について
(被告らの主張)
被告らは,従前,日本での婦人用アパレル事業では原告と競業してこなかった
ものの,日本等以外の地域で本件ブランドの婦人用衣服等を企画・デザイン・製造・販売等を行う同業者であり,日本等でもアソシエイツとともに本件ブランド事業を大々的に展開してきた。被告らは,被告ジルのパブリシティ権としての氏名及び肖像写真の利用について許諾を与える排他的権限を有するので,原告が無断で氏名を利用すれば,
被告ジルのパブリシティ価値に係る営業上の利益が害さ

れることになる。
(原告の主張)
争う。被告らは,日本において本件ブランドでの婦人用等のアパレル事業を行うことができないから原告商品の競業事業者ではなく,営業上の利益の侵害を主張し得る立場にない。このため,被告らから譲り受けた本件ブランド,商標及び
グッドウィルに基づく原告の正当な事業活動によって侵害される被告らの営業上の利益は存しない。
11争点10(表示5及び6の使用に関する被告らによる同意・承諾の有無)について
(原告の主張)
(1)原告は,平成9年3月に最初の店舗を開設するに先立ち,被告側から本件ブランドの経緯を説明する文書を受領し,それ以降,原告ウェブサイト等において,表示5及び6を用いて本件ブランドの経緯の説明をしてきていたから,被告らは,こうした使用の事実を当然に認識し,承諾していたものということができる。
また,平成14年10月18日に,期限付き商標権譲渡契約が締結されたと
ころ,同契約においては,期限付き商標権譲渡契約の対価に,原告の広告及び販売促進活動において被告ジルの氏名を使用し,個々の原告商品のデザインについて被告ジルが現在でも関与又は推奨していると消費者が理解するような表示をすることの対価が含まれることが当然の前提とされていた。実際,平成15年には,
本件ブランドの経緯を説明する際に使用する被告ジルの肖像写真

の差替えを求められ,原告がこれに応じたこともあった。
(2)また,商標権譲渡契約の文言上,関連するgoodwillが譲渡の対象であるJS商標に含まれることが明記されており,譲渡対象のJillStuartが被告ジルの氏名なのであるから,原告の広告及び販売促進活動において,原告が被告ジルの氏名を使用することや,個々の原告商品のデザインについて被告ジ
ルが現在でも関与又は推奨していると消費者が理解するような表示がされることを,被告らは当然に認識し,同意していたものである。
(被告らの主張)
争う。
被告会社が伊藤忠ファッションシステムを介して被告ジルを紹介する説明文等を原告に交付したのは,被告ジル自身の紹介を目的として使用させるため
であり,
この交付により原告商品の宣伝広告を目的とする使用を許諾するものではない。
原告ウェブサイトは,
被告らが説明文等を交付した平成9年3月以前や被告ジ
ルの肖像写真の差替えを行った平成25年頃には存在していなかったから,原告ウェブサイトに表示5及び6を使用することについて,被告らが承諾することはない。
甲19及び甲7の各終了合意書は,当事者間の関係を整理する目的で締結されたもので,被告ジルの氏名の使用許諾とはフェーズが全く異なるし,甲19の合意書の14条でasofthedateofthisAgreementと規定しているように,同契約締結時を基準として,伊藤忠ファッションシステム,トラスト及び原告間に支払の約束がないことや,将来支払期限が到来する支払がないとする趣旨のも
のである。
米国不正競争法リステイトメント(第三次)が,

撤回不能の場合を除き,使用者が,当該他人が特定の使用をもはや許容する意思のないことを知り又は知り得べき場合に同意は終了する。と規定する

(乙356の1・533頁)
とおり,
被告ジルによる許諾の撤回は不可能ではない。そして,原告は,修正サービス契
約の終了により,
被告ジルが自己の氏名等を何らの関与もない原告商品の広告に
使用することについて,もはや許容する意思のないことを,当然に知り又は知り得べきであるから,仮に被告ジルによる許諾があったとしても,その許諾は修正サービス契約の終了によって終了した。
12争点11
(表示5及び6の使用差止請求に関する信義則違反ないし権利濫用の
成否)について
(原告の主張)
仮に,
原告が表示5及び6を使用し得るのがサービス契約や修正サービス契約に基づくものと解すべきであるとしても,同契約は,被告会社の義務違反により同契約の解除に至ったものである。また,被告らは,原告店舗等において,JILLSTUARTの商標を付した商品のみならず,JILLSTUARTWhiteを付した商品を販売しているとして,原告店舗等の看板などにJILLSTUARTの商標を用いていることを問題視するが,JILLSTUARTWhiteJILLSTUARTは,
から派生した商標であり,

出所識別機能を有するのはJILLSTUARTの部分であり,かつ,被告ら自身,JILLSTUARTWhiteの商標を付した婦人用衣服等の
販売等を行うことができることについては認めている。にもかかわらず,被告らが修正サービス契約の終了,原告が上記複数の商標を付した商品を販売していることを奇貨として,
原告が表示5及び6を使用することが許されないと主張する
ことは,権利の濫用に当たる。
(被告らの主張)

争う。
第4当裁判所の判断
1争点1(国際裁判管轄の有無)について
(1)修正サービス契約6条(i)は,
トラスト及びサンエーは,それぞれ,本契約から生じる又は本契約に関連する全ての法的手続のため,ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所又はニューヨーク市に置かれるニューヨーク州裁判所の専属的裁判管轄に服する。と定めている。被告会社は,
同条項の
トラスト
との記載は単なる誤記にすぎず,
同条項は被告会社とサンエー間の専属的裁判
管轄の合意を定めたものであるから,本訴請求について我が国の裁判所は管轄権を有しないと主張する。

しかし,国際裁判管轄の合意は,その合意に係る管轄地に所在しない当事者に大きな不利益を与えることになることから,書面によって合意されなければならないとされており(民事訴訟法3条の7),同合意の存在は当該書面の記載に基づいて慎重に行うことが相当であるところ,修正サービス契約6条(i)は,専属的管轄合意の主体を,被告会社とは別の法人であるトラストと明
示しており,被告会社のスペルの誤りなどではないから,その記載から合意の主体が被告会社であると認めることはできない。
修正サービス契約は,
英文で起草された国際的な取引に関する企業間の契約
書であり,各条項については,契約当事者がその文言について慎重に精査・検討した上で合意されたと考えるのが自然である。しかも,専属的裁判管轄の合意において,
合意の主体は最も基本的かつ重要な要素の一つであることを考慮
すると,修正サービス契約6条(i)に規定する専属的裁判管轄の合意主体はその文言に従ってトラストであると認めることが相当である。
また,原告を当事者とする他の契約についてみると,トラストと原告間の終了合意書
(甲7)
7条(f),
トラストと原告間の期限付き商標権譲渡契約6条,
原告と被告会社間のサービス契約9条(i)(甲30)及び原告,被告会社,トラ
ストの三者間の商標権譲渡契約12条(甲51)においては,修正サービス契約と同様,
原告とトラストを合意主体とする専属的裁判管轄に関する規定が置かれており,
原告と被告会社間の管轄合意について規定した契約は存在しない。この点について,
被告会社は,
修正サービス契約6条(i)の規定は,
それ以前
に締結された商標権譲渡契約(中国,香港及び台湾)(乙6)やサービス
契約の規定をそのまま流用し,契約当事者もそれを看過したものであると主張するが,仮に,被告会社の主張を前提としても,流用した規定が置かれたことをもって,
原告と被告会社との間において管轄合意がされたと認めることはできない。上記のとおり,従前の契約には原告と被告会社間の管轄合意の規定は存在せず,取り分け,原告,被告会社,トラストの三者間の商標権譲渡契約に
おいては,原告とトラストとの間の管轄合意は置かれているものの,原告と被告会社間の管轄合意の規定は設けられていないのであって,他に原告と被告会社との間において専属的裁判管轄に関する合意形成のための交渉や話合いが行われたことをうかがわせる証拠は存在しない。
そうすると,
修正サービス契約6条(i)の規定の
トラスト
との表記が誤記

であるとして,これを被告会社と読み替えることにより,両者間において専属的裁判管轄の合意があったと認めることはできないというべきである。したがって,原告と被告会社との間に,修正サービス契約から生じる紛争について,
その専属的裁判管轄をニューヨーク州の連邦又は州裁判所とする旨の合意があったと認めることはできない。
(2)本訴請求は,原告が,被告会社に対して,修正サービス契約3条(d)に基づき,サンプル及び諸経費として支払済みの45万ドルの返金を求めるものであるところ,かかる返金が原告の指定する口座にされるべきものであることは,
被告会社の代表者であるA自身が原告に対して返金先を指示するように求めていること(甲31の4)からも明らかである。そして,日本国内に本店の有する原告の指定する口座は,原告の国内口座であると考えられるので,修正
サービス契約3条(d)に基づく返還債務の履行地は日本国内にあると認められる。
したがって,民事訴訟法3条の3第1号に基づき,我が国の裁判所は,本訴請求に係る管轄権を有するというべきである。
2争点2(被告会社の返金義務の存否及び返金額等)について

(1)まず,原告がサンプル及び諸経費として被告会社に対して支払う金員の趣旨について検討する。

前記前提事実(3)エ(イ)によれば,平成19年4月13日付けで締結された修正サービス契約においては,同契約に基づき提供される業務の対価として,原告が被告会社に対して,各契約年度の初日に合計80万~100万ドルの
業務手数料の支払義務を負うが,このうちサンプル及び諸経費として定められた金額は40万~50万ドルであること(2条),被告会社は,業務手数料に基づき,原告に対し,従来提供されてきた量と同等のサンプルを提供する義務を負い,
これを怠った場合,
原告に対し,
サンプル及び諸経費
に割り当てられたサービス料を比例計算で返金する義務を負う旨が定めら
れていたこと(3条(d))が認められる。
このように,修正サービス契約は,被告会社が原告に従来提供されてきた量と同等のサンプルを提供する義務を負うとした上で,サンプル及び諸経費の対価を定め,更にサンプルを提供する義務を怠った場合の返金方法についても規定しているのであるから,同契約にいうサンプル及び諸経費は,提供されるサンプルの対価であると認めるのが相当である。
また,諸経費については,修正サービス契約にその内容やサンプル費用との関係についての記載はないが,
サンプル及び諸経費
(同契約2条)

『サンプル及び諸経費』に割り当てられた業務手数料
(同3条(d))と一
体的に規定されていることによれば,サンプル代金の提供に必要な諸経費を意味するものと解するのが自然である。
そうすると,
サンプル及び諸経費

は,
被告会社が原告に提供するサンプルの対価及びサンプル提供のために必要な経費を意味するものというべきである。
イ(ア)これに対し,被告会社は,修正サービス契約2条のサンプル及び諸経費は,被告会社からサンプルの提供を受ける権利自体の対価の支払について定めたものであり,このうち特に諸経費は,被告ジルのコレクシ
ョン等の活動に基づき多大な恩恵を受ける原告が,その活動のための費用を一部負担する趣旨のものであると主張する。
しかし,修正サービス契約には,サンプル及び諸経費がサンプルを受ける権利自体の対価であると理解し得る規定は存在せず,被告会社の上記主張が修正サービス契約の文理と整合しないことは明らかである。また,
前記前提事実(3)イによれば,
サービス契約においても,
原告が,
被告会社
から提供を受けるサンプルの対価として,契約年度ごとに10万ドル~11万ドルを年度の初日に先払いすることができること,被告会社が従来提供してきた量と同等の量のサンプルを提供できない場合には,上記金額が相応に減額される旨が定められているのであり,
サービス契約の後に締結

された修正サービス契約においても,契約年度毎に支払われる対価は同様の性質を有するものと認めることが相当である。
この点について,被告会社は,サービス契約締結時は期限付き商標権譲渡契約が締結されていたのに対し,修正サービス契約締結時には商標権譲渡契約が締結されて,被告側に商標権が戻らなくなったことから,原告がサンプルの提供を受ける権利自体の対価の支払をすることとなったものであると主張するが,商標権譲渡契約により譲渡された商標権等については対価が別途定められているのであるから,商標権譲渡契約の締結を契機として,修正サービス契約において,サンプルの提供を受ける権利自体に対価を要するようになったとは考え難い。
(イ)また,被告会社は,修正サービス契約における原告の支払金額がサービ
ス契約と比較して大幅に増加したことを指摘するが,この点について,原告は,
原告としては高額のサンプル費用を一括で先払いすることで被告会社から商品の購入圧力を受けずにサンプルの提供を確保することにメリットがあることから,増額に応じたものであると説明する。
この原告の説明は,①サービス契約6条においては,原告が一定数量の
商品を購入するように努める旨の規定が置かれているのに対し,修正サービス契約3条(e)においては,原告が被告会社等から商品の購入義務がないとする規定のみが置かれていること,②JSインターナショナルのD(以下Dという。)が平成24年11月9日にサンエーUSAの担当者E(以下Eという。)に対して購入されていないスタイルのサンプルはお渡ししておりませんという電子メールを送信するなど,被告会社は,修正サービス契約の下においても,なお,原告に対して,サンプルの提供に関連付けて商品の購入を求めていたことがうかがわれることなどに照らしても,合理的なものということができる。
そうすると,修正サービス契約において原告の支払金額が増加したこと
をもって,修正サービス契約において,サンプルの提供を受ける権利自体の対価の支払を要するようになったと認めることはできないというべきである。
(ウ)被告会社は,Bの証言やサンプルの単価と提供枚数との関係からしても,上記の45万ドルがサンプルの対価であるということはできないと主張するが,
被告会社が提供していたサンプルの量についてBが45万ドル分
であるとは証言しなかったとしても,それをもって,上記45万ドルがサ
ンプルの対価ではないということはできず,また,上記のとおり,原告は商品の購入圧力を受けずにサンプルの提供を確保することをメリットと考えて支払金額の増加に応じたと認められることからすると,その金額がサンプルの単価に提供枚数を乗じた金額より高いとしても,そのことは同金額がサンプルの対価であることを否定する根拠とはならないというべ
きである。
(エ)被告会社は,甲75,乙479,480などに基づき,原告が修正サービス契約の期間中,被告会社にサンプル及び諸経費としての45万ドルとは別にサンプル代金を支払っていたと主張するが,被告会社が根拠とするインボイス等(乙479,480)は,サービス契約の締結日(平成
17年9月2日)より前の時期のものであり,甲75のインボイスに係るサンプルも修正サービス契約の締結前に注文されたものであるから,これをもって,
原告が修正サービス契約に基づき上記45万ドルとは別にサン
プル代金を支払っていたと認めることはできない。
(オ)したがって,被告の上記主張は理由がない。

(2)次に,原告が平成24年4月13日までに支払った同年度分のサンプル及び諸経費45万ドルが,どの時期のサンプルに対応するものであるかにつき検討する。

前提事実(2)記載のとおり,
ニューヨーク・コレクション
(ファッションシ
ョー)は,毎年2月にその年の秋冬物の,9月には翌年春夏物のコレクションが行われるところ,証拠(甲70)によれば,原告は,通常9月に翌年の春用の,翌年2月にその年の秋用のサンプルの注文を行い,被告会社はその2か月程度後にサンプルを原告に届けていたとの事実が認められる。修正サービス契約は平成19年4月13日付けで締結されたものであるから,同契約締結後に初めて行われる同年9月のコレクションの際に,翌年の春用の注文がなされ,次いで行われる同年2月のコレクションの際に,その年の秋用
のサンプルの注文が行われることが予定されていたと考えるのが自然である。
そうすると,修正サービス契約において,被告会社は,平成24年度に,原告に対し,
少なくとも同年9月に注文が行われる平成25年春用のサンプ
ルと,
同年2月に注文が行われる同年秋用のサンプルを提供すべき義務があ
ったと解するのが合理的である。

これに対して,被告会社は,修正サービス契約3条(d)においては,

被告会社は,各秋シーズン,春シーズン及びリゾートシーズン用に…サンプルを提供する。

として,秋用サンプルから提供する旨を規定しているのである
から,
平成24年度についても同年秋用のサンプルから提供することを内容としていたと主張する。
しかし,同条項は,提供すべきサンプルが,秋シーズン,春シーズン及びリゾートシーズン用のものであり,これらのシーズンについてサンプルを提供すべき義務があることを規定するにとどまり,各秋シーズン,春シーズン及びリゾートシーズンの順に又は最初に各秋シーズンからなど,提供をすべきサンプルのシーズンの順序を定める文言は記載されていないのであるから,上記条項が秋用サンプルから提供する旨を規定していると解することはできない。
また,被告会社は,2月にサンプルのオーダーを受けて,被告会社が秋用
サンプルを4月13日以降に提供すると,契約年度内にサンプルが提供できず履行遅滞となってしまい,不合理であると主張する。しかし,年度内である2月にサンプルの注文を受けて,その提供に必要な合理的な期間内にサンプルが提供されたのであれば,
必ずしも履行遅滞になるとは限らず,
むしろ,
被告会社の主張を前提とすると,平成24年度の業務手数料の支払を受ける前にサンプルの注文を受けたことになるが,先払いとしての業務手数料の支払の性質に照らすと,平成24年度に提供すべきサンプルは,その年度開始日より後に注文を受けたものであると考えるのが自然である。
さらに,被告会社は,サービス契約下においては,契約年度の開始前にサンプルの発注を行い,同年度の開始月にサンプル費用を支払い,その後にサンプルを提供するとの運用であったところ,修正サービス契約締結後もその
運用に変化はなかったと主張するが,仮に,サービス契約下においてそのような運用がされていたとしても,同契約においてはサンプル費用の先払いは一つの選択肢にすぎず,個別にサンプルを注文する際にサンプル費用を支払うこともあったのに対し(甲70),修正サービス契約においてはサンプル費用を一括で先払いすることとされ,その費用の支払方法が変わったのであ
るから,
修正サービス契約の下においてサービス契約の当時と同様の運用が行われたと認めることはできない。
以上によれば,被告会社は,平成24年度において,原告に対し,少なくとも平成25年春用のサンプルと同年秋用のサンプルを提供すべき義務があったものというべきである。

(3)被告会社が,
平成24年度に原告に提供すべき平成25年春用及び同年秋用
のサンプルを原告に提供していないことについては,当事者間に争いがなく,被告会社は,修正サービス契約に定められたサンプル提供義務を履行しなかったと認められる。
なお,被告会社は,平成25年春用サンプルについては原告が発注しない旨
の連絡をしてきたのであるから(乙501添付資料5),被告会社の平成25年春用サンプルの不提供は,
同契約3条(d)の
JSアジアが…サンプルの提供を怠った場合に当たらないと主張する。しかし,乙501添付資料5のメールは,
原告の担当者によるものであって,
その前後の文脈も明らかではない上,
注文の対象がサンプルであるかどうかも明らかではない。このため,同メールをもって,原告が被告会社に対して平成25年春用のサンプルの発注をしなかったということはできない。
(4)被告会社は,①原告が,インポート商品の買付けを少量しか行わなかったにもかかわらず,毎年5月と12月に開催する展示会に被告らが制作したサンプルを展示して業界向けの宣伝広告として利用するというサンプル品送付の本来の目的から逸脱する利用をしていたこと,②原告が被告らのサンプルを無断
でコピーした商品を製造販売するという問題が多発したことから,平成25年春用サンプルの提供を中止せざるを得なかったのであり,その不提供に正当理由があると主張する。
しかし,上記①については,証拠(甲52)によれば,修正サービス契約にはサンプルの利用方法等を制限する定めはなく,
むしろ,
同契約3条(a)は,

告らが原告製品のための原告の販売促進プログラムを推奨することを定めている上,原告にはインポート商品についての購入義務もないのであるから,原告が被告会社からインポート商品の買付けを少量しか行わず,提供を受けたサンプルを上記①の形態で利用したとしても,それがサンプル品送付の本来の目的から逸脱するということはできない。

また,上記②については,原告が被告らのサンプルのデザインを無断でコピーしたと認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって,被告会社がサンプルを提供しなかったことについて正当な理由があったとの被告会社の主張は理由がない。
(5)被告会社が原告に返金すべき金額について,被告会社は,①提供済みの平成
24年秋用サンプル分と,②諸経費分として34万~35万ドルを,いずれも控除すべきであると主張する。

しかし,上記①については,平成24年度に被告会社が提供すべきサンプルが平成25年春用及び同年秋用であることは前記判示のとおりであるから,
被告会社が平成24年秋用サンプルを原告に提供したか否かにかかわらず,同サンプル分を控除する理由はない。


上記②について,被告会社は,修正サービス契約3条(d)にいうサンプルと諸経費とを分けた上で,サンプル提供の懈怠とは無関係な諸経費に割り当てられた額を返還対象から控除したサンプル費から返還すべきであると主張する。
しかし,修正サービス契約2条及び3条(d)の諸経費は,サンプル提供に必要な諸経費と解すべきことは前記判示のとおりであり,
そうすると,
サンプルと諸経費は一体のものとしてサンプル及び諸経費の全体が返金の対象となると解するのが自然である。
また,
同契約3条(d)は,

被告会社が原告に従来提供されてきた量と同等の量のサンプルの提供を怠った場合,被告会社は,2条に基づき『サンプル及び諸経費』に割り当てられた業務手数料を,比例計算で原告に返金する。

と規定しているのであり,その文理に照らしても,被告会社は,原告に対して,
実際に提供されたサンプルの量と提供を怠ったサンプルの量とを比例計算した上で,『サンプル及び諸経費』に割り当てられた業務手数料である45万ドルのうち,
提供を怠ったサンプルの量に相当する割合の金額を原

告に返金する義務を負うと解するのが相当である。
したがって,
諸経費分として34万~35万ドルを控除すべきであるとの
被告会社の主張は採用し得ない。
前記のとおり,被告会社は,平成24年度に提供すべき平成25年春用及び同年秋用サンプルをいずれも提供していないのであるから,被告会社は,
原告が修正サービス契約2条に基づき平成24年度分のサンプル及び諸経費として支払った45万ドルの全額を原告に返金すべき義務を負う。(6)遅延損害金について

被告会社は,原告に受領遅滞があるから,被告会社に履行遅滞はなく,遅延損害金は発生しないと主張する。
しかし,証拠(甲31の4)によれば,Aは,平成25年1月11日,Cに対し,
原告の昨年の秋のサンプルの注文の量は2万1321ドルであって,
按分計算によりこれが被告会社からの返金となるので,
原告にどのように返
金すればよいか教示してほしい旨の電子メールを送信したにすぎず,45万
ドル全額について現実の提供をしたものではない。そして,ニューヨーク州法上,
返金すべき金額の一部を返還する旨の申し出を電子メールで受けることにより受領遅滞が生じると認めるに足りる証拠はないから,
被告会社の上

記主張は理由がない。

遅延損害金に関するニューヨーク州法(NewYorkConsolidatedLaw,
CivilPracticeLawandRules)上の定めは以下のとおりである。(ア)§5001(評決,報告又は決定において特定される利息)(b)起算日

利息は,
訴訟物の存在が認められる最先の確認可能な日から計算する。
ただし,その後に発生した損害に対する利息は,当該発生日から計算する。当該損害が様々な時期に発生した場合,利息は,各損害が発生した日から当該各損害につき,又は,単一の合理的な中間日から全ての損害につき計算されるものとする。(甲67)

(イ)§5004(利率)
利息は,法令に別段の定めがある場合を除き,年率9%とする。(甲66)

上記イの定めによれば,被告会社は,原告に対し,45万ドルに年9%の遅延損害金を付して支払う義務を負うと解すべきである。なお,原告は,平成24年11月10日
(平成25年春用のサンプル提供の拒絶の意思表示の
された日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めるが,被告会社に平成25年秋用のサンプルも含めて45万ドル全額を返金すべき義務が生じたのは,
被告会社の債務不履行を原因として原告がした解除の効力が
発生したことによるものといえるから,遅延損害金の起算日は,解除の効力発生日の翌日である平成25年2月27日と認めるのが相当である。

被告会社は,利率につき,州籍相違事件における判決後の利息は通常フェデラルレートに従い算出すべきとの裁判例

(乙500)
に従うべきであり,
起算日については先例となるべき裁判例(乙499)と同様に訴因たる過失が存在したと容易に特定できる日がないと認められるから,訴えが開始
された日とすべきであると主張する。
しかし,被告会社が根拠とする裁判例は,下級審における当該事案の事実関係に基づく判断であり,かつ,州籍相違事件として連邦裁判所において審理された事例における判決後の利息の算出方法を示したものにすぎず,同判決をもって,
本件のような米国企業と日本企業との間の契約上の紛争につい

て,
法廷地にかかわらず一般的に同様の考え方が適用されると解することはできない。本件においては,サービス契約の解釈及び適用はニューヨーク州によると定められており,また,遅延損害金は,金銭債務の履行期限が経過したことによって債権者に対して債務者が法律上当然に支払わなければならない金銭であるから,
同契約に基づく債務不履行に係る遅延損害金の発生

時期及び割合についても,ニューヨーク州法を準拠法とすることが当事者の意思に合致するというべきである。
そうすると,
遅延損害金の割合は年9パーセントであると認めるのが相当
である。また,本件では,被告会社にはサンプルを提供しないことについて過失が認められるので,訴因たる過失が存在したと容易に特定できる日がないということはできない。したがって,被告会社の上記主張には理由がない。
(7)以上によれば,原告の本訴請求は,被告会社に対し,45万ドル及びこれに対する平成25年2月27日から支払済みまで年9%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。なお,被告会社は,米国ニューヨーク州法における契約の解釈準則を掲げ,修正サービス契約はこれらの準則に従って解釈されるべきであると主張するが,上記結論はこれらの解釈準則とも整合するものであり,上記解釈準則の適用の有無により結論が左右されるものではない。
3争点5-1(商標権譲渡契約による譲渡対象の範囲)について
反訴請求については,事案に鑑み,まず,争点5-1につき検討する。
(1)原告は,表示1~4を小売商標として使用することや,表示3及び4を女児用衣服等に付するなどして使用することは,いずれも商標権譲渡契約の譲渡対象に含まれているので,
そのような態様で同各表示を使用することは同契約に
より認められていると主張する。

そこで検討するに,
前記前提事実(3)ア(イ)及び(ウ)のとおり,
原告は,
商標
権譲渡契約に先立ち,
トラストとの間で,
期限付き商標権譲渡契約を締結し,
商標権1~5を10年間の期限付きで譲渡するとともに,その対価としてトラストに年間300万ドルを支払う旨の合意をしたとの事実が認められる。そして,
トラストとの間において上記契約と同日に締結された甲7の終了
合意書は,前記前提事実(3)ア(イ)記載のとおり,JS商標を本契約の別表1に定められた商標(判決注:商標権1~5と同一であると推認される。)の総称であり,(ⅰ)かかる各商標に関連しているグッドウィル…(ⅳ)屋号,法人名,会社名,商号,ビジネス上の通称,トレードスタイル,サービスマーク,ロゴ,ブランド名,パッケージ及び他のデザイン,並びにいかなる他のソース又は事業識別名,及び適用される法において生ずる前記のいずれかに係る権利,…を含むが,これらに限定されないと定義した上で,トラストは,デザイン,店舗,広告又はJS商標に基づく原告又はそのサブライセンシー及び販売代理店による製品の製造,使用,販売若しくは販売の促進に関連する他の一切の事項について承認する権利を有しないことを含め,日本におけるJS商標の使用,又は,それに付随する権利の行使に関して承認する権利を有しない。と規定している。このように,
甲7の終了合意書においては,
商標権1~5に関連する屋号,

ビジネス上の通称,サービスマーク,ブランド名等を含み,その使用及びそれに付随するいかなる権利の行使も原告が自由に行うことができる旨を規定しているのであるから,商標権1~5を小売役務商標として店舗等において使用することは同合意書により許容されていたというべきである。イ
次に,平成19年4月13日付けの商標権譲渡契約は,譲渡対象となるJS商標の範囲を商標権1~5やこれを含む別表Ⅰ記載の各商標権等に限定せず,
“JillStuart”及びデザイナーであるジル・スチュアートに関連している全ての派生物とした上で,かかる派生物の内容についても,甲7の終了合意書に挙げられたものと同様に,屋号,ビジネス上の通称,サービスマーク,ブランド名等を含みつつ,ドメイン名を追加するなど更に拡大
し,唯一,紳士服に使用される“Stuart-Curtis”商標のみを除外しているものと認められる。
表示1~4は,いずれも被告ジルの氏名に由来する標章であって,上記“JillStuart”及びデザイナーであるジル・スチュアートに関連している全ての派生物に含まれるものと解することができ,また,商標権譲渡契
約は,
甲7の終了合意書と同様,
屋号,
ビジネス上の通称,
サービスマーク,
ブランド名等を広範に含むものであり,これらに限定されていないのであるから,同契約により,原告は,表示1~4を,商品商標及び小売役務商標のいずれにも自由に使用することが許容されていたというべきである。ウ
女児用衣服等に関し,被告らは,国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用アパレル及びアクセサリーに係る商品商標及びgoodwillを対象とするものであって,
女児用衣服等に関する商標等は対象外であると主張する
が,商標権譲渡契約は,JS商標の範囲を商標権1~5やこれを含む別表Ⅰ記載の各商標権等に限定せず,“JillStuart”及びデザイナーであるジル・スチュアートに関連している全ての派生物とした上で,紳士服に使用される
“Stuart-Curtis”
商標のみを対象から明示的に除外していることは,

前記判示のとおりである。
そうすると,
同契約は,
婦人用衣服等のみならず,
女児用衣服等についても,
原告が表示3及び4を小売役務商標として又は原
告商品に付するなどして自由に使用することを許容しているというべきである。
また,①甲7の終了合意書においても,女児用衣服等をその対象外として
いないこと,②原告は,平成17年に,子供服のラインであるJILLSTUARTNEWYORKブランドを立ち上げ,平成27年7月まで同
ブランドを展開していたこと(甲48)③サービス契約及び修正サービス契約においても,原告が子供服などの子供用製品を取り扱うことが前提とされていることなどによれば,被告らは,本件商標権譲渡契約の前後を通じ,原
告が女児用衣服を取り扱うことを許容しており,同契約もそうした状況を前提としていたものということができる。

以上によれば,原告が,表示1~4を小売商標として使用することや,表示3及び4を女児用衣服等に付するなどして使用することは,いずれも商標
権譲渡契約により許容されているということができる。
(2)被告らの主張について

被告らは,商標権譲渡契約2条(a)が,譲渡の対象を国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用アパレル及びアクセサリーに係る商品商標及びgoodwillに限定していると主張する。しかし,商標権譲渡契約においては,譲渡対象となるJS商標の範囲が商標権1~5やこれを含む別表Ⅰ記載の各商標権等に限定されず,“JillStuart”及びデザイナーであるジル・スチュアートに関連している全ての派生物とされていることは前記判示のとおりである。したがって,
商標権譲渡契約2条(a)がその対象を
国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用衣服及びアクセサリーに使用される“JillbyJill”及び“Jill”又は“Stuart”に基づく商標に限定していたとの被告
らの主張は採用できない。

被告らは,商標権譲渡契約の締結に当たり,原告はトラストと交渉して小売役務に係る35類を記載することができたのに,そのような対応をすることなく,25類,18類及び14類に限定して合意したのであるから,35類を意識的に除外したと主張する。

しかし,商標権譲渡契約においては,譲渡対象となるJS商標の範囲を商標権1~5やこれを含む別表Ⅰ記載の各商標権等に限定せず,“JillStuart”及びデザイナーであるジル・スチュアートに関連している全ての派生物とした上で,かかる派生物はサービスマークを含むとしているのであるから,小売役務に係る35類を譲渡対象として規定するまでもなく,
同契約に基づく譲渡の対象とされているということができる。そうすると,同契約において,35類の記載がなかったからといって,これを除外する趣旨であると解することはできない。

被告らは,2条(a)(ⅳ)におけるサービスマーク等の記載は,一切の標章の範囲を含む趣旨で記載されているものであって,小売役務商標としての使用を許す趣旨のものではないと主張する。
しかし,サービスマーク(servicemarks)が,企業のサービスの象徴として用いる標章,すなわち役務商標を表すことは明らかであって,ジル・スチュアートに関連している全ての派生物(JS商標)に,屋号,ビジネス
上の通称,サービスマーク,ブランド名等が含まれる旨が記載されているのは,
小売役務商標として使用することを認める趣旨であるというべきである。エ
被告らは,アパレル業界ではwomen向けとkids向けは使い分けられているので,womanに女児や乳児は含まれないと主張する。
しかし,商標権譲渡契約2条(a)がJS商標の範囲を本件地域における国際商標分類25類,18類及び14類の婦人用衣服(women’sapparel)及びアクセサリーに使用される“JillbyJill”,及び“Jill”又は“Stuart”に基づく商標に限定していないことは,前記判示のとおりであるから,同条項の婦人用(women’s)が女児等を含まないとしても,それをもって,
女児用衣服等に関する商標等が同契約の対象外であるということはできない。
むしろ,
同契約は,
前記のとおり,
紳士服に使用される
“Stuart-Curtis”

商標のみを対象から明示的に除外しているのであるから,同契約の対象から除外することが明示されていない女児用衣服等は同契約の対象となると解するのが自然である。
(3)以上のとおり,原告は,表示1~4を,原告店舗や原告ウェブサイト等において小売役務商標として使用し,また,女児用衣服等の商品に付するなどして
使用することができると認められるから,これらの使用の差止めを求める被告らの請求(反訴請求の趣旨1~3,5及び6)はいずれも理由がない。なお,被告会社は,商標権譲渡契約等は米国ニューヨーク州法における契約の解釈準則に従って解釈されるべきであると主張するが,上記結論はこれらの解釈準則とも整合するものであり,上記解釈準則の適用の有無により結論が左
右されるものではない。
4争点7(原告による被告ジルのパブリシティ権侵害の成否)及び争点8(原告ウェブサイト等での表示5及び6の使用の品質誤認表示該当性)について前記前提事実,証拠(乙12~62,77~80,106,110,111,114~117,119~121,135,148,149,159,186,
187,190,192,286,325~328,331,332,334,335,337,472,501,502等)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告ジルは,平成5年以降毎年ニューヨーク・コレクションに出展している世界的に有名なファッションデザイナーであって,被告ジルの氏名等が,単独又は原告や他のライセンシーの商品との関連で,我が国の新聞や雑誌等で多数回にわたり取り上げられ,服飾のみならず,化粧品,時計など多くの種類の商品が本件ブランドの商品として販売されていることに照らすと,被告ジルの氏名等は,原告商品を含むファッション関係の商品について,その販売等を促進する顧客吸引力を有するものと認められるから,被告ジルは,これらの商品に関し,その顧客吸引力を排他的に利用する権利であるパブリシティ権を有すると認められる。ところで,
原告による原告ウェブサイトにおける表示5及び6の使用が被告ジ
ルのパブリシティ権侵害に当たり得るのは,原告が専ら被告ジルの氏名等の有する顧客吸引力の利用を目的としてこれらを使用する場合に限られ,これが品質誤認表示に当たり得るのは,
被告ジルの氏名をそのような態様で表示した場合に限
られる。
原告は,商標権譲渡契約により,ジル・スチュアートに関連している全ての派生物たるJS商標を小売役務商標として自由に使用することができるところ,表示5及び6は,JS商標に含まれ得るものと認められるから,原告は,原告ウェブサイト等において,表示5及び6を,小売役務商標等として自由に使用することができる。それゆえ,そのような態様で使用されている限り,これは原告の権原に基づく正当な使用というべきであって,これにより,被告ジルのパブリシ
ティ権が侵害されるとか,違法な不正競争行為に該当するなどということはできない。
本件においては,原告が表示5及び6を上記態様以外の態様により使用していると認めるに足りる証拠はないので,被告らのパブリシティ権侵害及び品質誤認表示の不正競争に基づく差止請求
(反訴請求の趣旨4)いずれも理由がない。
は,

なお,仮に,原告ウェブサイト等における表示5及び6の使用態様の一部に,実際にパブリシティ権侵害又は品質誤認表示に当たるものがあるとしても,それを根拠に原告ウェブサイト等における表示5及び6の使用を一律に禁ずることは,過剰差止めに当たるというべきから,これを許容することはできない。5結論
よって,原告の本訴請求を主文第1項の限度で認容し,その余は棄却し,被告らの反訴請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐藤達文三井大有今野智紀
裁判官

裁判官

別紙

店舗目録

1
JILLSTUART

大丸札幌店

北海道札幌市中央区北五条西4丁目7番地

大丸札幌店

2
3階

JILLSTUART

仙台店

宮城県仙台市青葉区一番町3丁目5番2号
3
JILLSTUART

青山路面店

東京都港区南青山3丁目18番15号
サンコーノビル

4
1階

JILLSTUART

西武所沢店

埼玉県所沢市日吉町12番1号
西武所沢店

5
1階

JILLSTUART

そごう大宮店

埼玉県さいたま市大宮区桜木町1丁目6番2号

そごう大宮店

6
3階

JILLSTUART

そごう千葉店

千葉県千葉市中央区新町1000番地
そごう千葉店

本館2階

7
JILLSTUART

新宿マルイ本館店

東京都新宿区新宿3丁目30番13号
新宿マルイ
8
本館3階

JILLSTUART

渋谷西武店

東京都渋谷区宇田川町21番1号

西武渋谷店

9
A館3階

JILLSTUART

池袋西武店

東京都豊島区南池袋1丁目28番1号
西武池袋本店

本館3階

10JILLSTUART

松屋銀座店

東京都中央区銀座3丁目6番1号
松屋銀座

3階

11JILLSTUART

新宿ルミネ店

東京都新宿区新宿3丁目38番2号
ルミネ新宿LUMINE2

12JILLSTUART

2階

新宿伊勢丹店

東京都新宿区新宿3丁目14番1号
伊勢丹新宿店

本館2階

13JILLSTUART
二子玉川ライズ店

東京都世田谷区玉川2丁目21番1号
二子玉川ライズ・ショッピングセンター
タウンフロント2階

14JILLSTUART

伊勢丹立川店

東京都立川市曙町2丁目5番1号
伊勢丹立川店

3階

15JILLSTUART

名古屋松坂屋店

愛知県名古屋市中区栄3丁目16番1号
松坂屋名古屋店

南館1階

16JILLSTUART

名古屋三越栄本店

愛知県名古屋市中区栄3丁目5番1号
名古屋栄三越

3階

17JILLSTUART
JR名古屋タカシマヤ店

愛知県名古屋市中村区名駅1丁目1番4号
ジェイアール名古屋タカシマヤ

18JILLSTUART

4階

名鉄百貨店本店

愛知県名古屋市中村区名駅1丁目2番1号
名鉄百貨店本店

3階

19JILLSTUART

遠鉄百貨店

静岡県浜松市中区砂山町320番地の2
遠鉄百貨店

新館2階

20JILLSTUART

京都高島屋店
京都府京都市下京区四条通河原町西入真町52番地
京都タカシマヤ

2階

21JILLSTUART
大丸京都店

京都府京都市下京区四条通高倉西入立売西町79番地
大丸京都店

3階

22JILLSTUART

大丸梅田店

大阪府大阪市北区梅田3丁目1番1号
大丸梅田店

5階

23JILLSTUART

阪急百貨店うめだ本店

大阪府大阪市北区角田町8番7号
阪急うめだ本店

3階

24JILLSTUART

近鉄あべのハルカス店

大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1番43号
あべのハルカス近鉄本店

25JILLSTUART

タワー館3階

神戸路面店

兵庫県神戸市中央区京町67番地
KANJUビル

1階

26JILLSTUART
近鉄四日市店

三重県四日市市諏訪栄町7番34号
近鉄百貨店四日市店

2階
27JILLSTUART

そごう広島店

広島県広島市中区基町6番27号
そごう広島店

新館3階

28JILLSTUART

小倉井筒屋店

福岡県北九州市小倉北区船場町1番1号
井筒屋小倉店

新館2階

29JILLSTUART

福岡岩田屋店

福岡県福岡市中央区天神2丁目5番35号
岩田屋本店

本館2階

30JILLSTUART
熊本鶴屋店

熊本県熊本市中央区手取本町6番1号
鶴屋百貨店

本館3階

31JILLSTUART

仙台泉プレミアムアウトレット店

宮城県仙台市泉区寺岡6丁目1番1号
仙台泉プレミアム・アウトレット

32JILLSTUART

1220a区画

あみプレミアムアウトレット店

茨城県稲敷郡阿見町よしわら4丁目1番地1
あみプレミアム・アウトレット

600b区画

33JILLSTUART

酒々井プレミアムアウトレット店
千葉県印旛郡酒々井町飯積2丁目4番1号
酒々井プレミアム・アウトレット

34JILLSTUART
1975a区画

小矢部プレミアムアウトレット店

富山県小矢部市西中野972番地1
三井アウトレットパーク北陸小矢部

35JILLSTUART

1階1419区画

御殿場プレミアムアウトレット店

静岡県御殿場市深沢1312番地
御殿場プレミアム・アウトレット

36JILLSTUART

340b区画

三井アウトレットパークマリンピア神戸店

兵庫県神戸市垂水区海岸通12番2号
三井アウトレットパークマリンピア神戸
ファクトリーアウトレッツセントラル2階204区画

別紙

表示目録

1JILLSTUART
2
3JILLSTUART

NEWYORK

4
5Jill

Stuart

6ジル・スチュアート
別紙

商品目録

1衣服
2帽子
3靴下
4マフラー,ストール
5靴(ルームシューズを含む。)
6バッグ

7ポーチ
8パスケース
9財布
10アクセサリー
11ヘアアクセサリー

別紙

商標権目録

1商標登録第3323629号
登録商標:

指定商品:25類

被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,

靴類(靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具を除く。),げた,草履類
2商標登録第4007423号
登録商標:

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:25類
被服(和服を除

く。),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴

3商標登録第4060789号
登録商標:
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:14類

身飾品,貴金属,

貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて
4商標登録第4060790号
登録商標:

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:18類
かばん類,袋物,

皮革,
携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類

5商標登録第4451837号
登録商標:ジル
スチュアート(標準文字)

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:25類

被服,ガーター,

靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴

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