判例検索β > 令和1年(行ケ)第27号
事件番号令和1(行ケ)27
裁判年月日令和元年10月30日
裁判所名・部東京高等裁判所
裁判日:西暦2019-10-30
情報公開日2019-12-18 12:00:09
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主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は,原告らの負担とする。

第1

実及び理由
請求
令和元年7月21日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の東京都選
挙区,茨城県選挙区,栃木県選挙区,群馬県選挙区,埼玉県選挙区,千葉県選挙区,神奈川県選挙区,新潟県選挙区,山梨県選挙区,長野県選挙区及び静岡県選挙区(これらを併せて,以下本件各選挙区という。
)における
選挙をいずれも無効とする。
第2
1
事案の概要
本件は,令和元年7月21日施行の参議院議員の通常選挙(以下本件選挙という。)について,本件各選挙区の選挙人である原告らが,平成3
0年法律第75号(以下平成30年改正法という。
)による改正(以下
平成30年改正
という。
)後の公職選挙法14条1項及び別表第3の参

議院(選挙区選出)議員の議員の定数の配分に関する規定(以下,数次の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,定数配分規定という。
)は,人口比例に基づかず憲法に違反するなどと
主張して,公職選挙法204条の規定に基づき,本件各選挙区における選挙を無効とすることを求める事案である。

2
前提事実
本件選挙は,令和元年7月21日,平成30年改正後の公職選挙法14条1項及び別表第3の定数配分規定(以下本件定数配分規定という。の下での初めての参議院議員の通常選挙

(以下
通常選挙
という。


として施行された(顕著な事実)

原告らは,本件各選挙区の選挙人である(弁論の全趣旨)


総務省発表平成30年9月登録日現在における選挙人名簿登録者数に基づく選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下,第2において,
選挙人数を基準とした上記の最大較差を単に最大較差
といい,人口を基準としたそれを最大較差(人口)という。
)は,上
記の数が最少の福井県選挙区と同じく最大の宮城県選挙区とで1対2.
984であった(当事者間に争いがない)

本件選挙において,選挙の期日である令和元年7月21日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の福井県選挙区を1とした場合,最大の宮城県選挙区は3.002(以下,概数で3.00と表記し,最大較差に
関する数値は同様に概数で表記する。
)であった(乙1の1)

また,原告

A
の属する東京都選挙区は2.94,原告

の属する茨城県選挙区は1.88,原告
区は2.53,原告
EDHG3KF
の属する千葉

の属する神奈川県選挙区は2.
96,

の属する新潟県選挙区は2.97,原告

梨県選挙区は1.07,原告
原告

の属する栃木県選挙

の属する群馬県選挙区は2.52,原告

の属する埼玉県選挙区は2.37,原告

県選挙区は2.
70,
原告
原告

CBJI
の属する山

の属する長野県選挙区は2.70,

の属する静岡県選挙区は2.38であった(乙1の1)


当事者の主張の要点
原告ら

憲法56条2項,1条,前文第1項第1文冒頭は,民意を反映する
人口比例選挙を要求するものである(統治論)

主権を有する国民は,
両議院の議事につき,憲法前文第1項
第1文冒頭の定めに従って,正当に選挙された国会における代表者を通じて出席議員の過半数でこれを決

(56条2項)するという方

法で,
主権を行使する。
憲法前文第1項第1文冒頭日本国民は正当に選挙された国会にお(ける代表者を通じて行動し,)の「行動の概念は,国民が,主権者」
として,
国会における代表者を通じて主権を行使することを含

むと解される。
一方で,非人口比例選挙の場合は,
(国民の半数未満から選出され
たにすぎない)
国会議員の過半数の投票が,(「主権を有する国
民の過半数」から選出された)国会議員の半数未満の投票に優越して,主権の内容の一たる各議院の議事の可決・否決を決定し得る。し

たがって,非人口比例選挙の場合,
主権を有する国民ではなく,
主権を有しない国会議員が,
主権
(即ち,
国政のあり方を最終的に決定する権力
)を行使し得ることになる。
この非人口比例選挙の結果は,憲法1条(
主権の存する日本国民

及び前文第1項第1文(
主権が国民に存する
)の各明文の規範に違

反する。
他方で,人口比例選挙の場合は,憲法56条2項に基づき,
主権
を有する国民が,人口比例選挙で選出された国会議員を通じて,
出席議員の過半数で両議院の議事を決定するという方法で,

主権
を行使することになる。人口比例選挙は,1条(
主権の存する日本国民
)及び前文第1項第1文(
主権が国民に存する
)の各明文の規範
に合致する。
上記のとおり,憲法56条2項,1条,前文第1項第1文冒頭は,人口比例選挙を要求しているものである。
本件選挙の1票の投票価値の選挙区間の最大較差は,3.00であ
り,本件選挙は,人口比例選挙(1人1票選挙)とはいえない。
よって,本件選挙は,憲法56条2項,1条,前文第1項第1文冒
頭の定めによる人口比例選挙の要求に違反しており,98条1項の明文により無効である。
なお,上記のような原告らの主張(統治論)を採用しない理由を従前の最高裁判所の大法廷判決が判決文中に記述しないことは,違憲違法である。

本件選挙は,最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大
法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下平成29年大法廷判決という。
)の投票価値の較差についての判断基準に従えば,違憲状態で
ある。
平成29年大法廷判決は,公職選挙法の一部を改正する法律(平
成27年法律第60号。以下平成27年改正法といい,同法に
よる公職選挙法の改正を平成27年改正という。
)の附則7条
が,
次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めており,これによって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示され(ている)と評価し,関係する事情を総合して,平成28年7月10日に施行された通常選挙(以下平成28年選挙という。)の基準日たる投票日の時点での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえ(ない)旨判示した。同判決は,平成27年改正法は,その附則によって,
更なる是正に向けての方向性と立法府の決意を示しており,
再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮しており,そうすると,平成27年改正は更なる較差の是正を指向するものと評価すること

ができるとして,平成28年選挙は違憲状態に該当しない旨判示したのであるから,同判決の同判示は,仮に,基準日たる平成28年
選挙の選挙投票日の時点で,平成27年改正法の示す更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が存在しないと評価される場合は当該選挙を違憲状態と判示する趣旨であると解される。
本件選挙の選挙区割り
平成30年改正法は,参議院の選挙区選出の議員の定数を2人分
増加(埼玉県2増)し,かつ,比例代表制選出の議員の定数を,政党が決めた順位に従って当選者が決まる特定枠を設けて,4人
分増加したが,その結果,平成28年選挙当時の選挙区間の投票価値の最大較差(3.08倍。ただし,平成22年実施の国政調査結
果による人口に基づく選挙区間の投票価値の最大較差は,2.97倍)は,平成30年改正で,福井県と宮城県の間の3.00倍(ただし,総務省発表平成30年9月登録日現在における選挙人名簿登録者数によるものでは2.984倍)にわずかに縮小したにすぎない。

上記平成30年改正法の内容は,平成27年改正法附則7条の次
回通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き
検討を行い必ず結論を得るとの定めを遵守していない。けだし,平成30年改正法は,平成27年改正法の鳥取県と島根県の合区(参議院(選挙区選出)議員の選挙区として2の都道府県の区域を区域
とするものをいう。以下同じ。
)と徳島県と高知県の合区の合計2
個の合区をそのまま維持するにとどまるものであって,平成29年大法廷判決に先立つ各最高裁判所大法廷判決が判示したところに
従った都道府県を単位とする選挙区割りの抜本的な見直しがなさ
れていないからである。

さらに,選挙区間の投票価値の最大較差の変化をみても,上記の
ような微細なものに止まり,この点でも,選挙区割りの抜本的な見
直しから程遠いことが認められる。
これに加えて,平成30年改正法附則は,平成27年改正法附則
7条の
平成31年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて,(中略)抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るとの文言に相当する文言を欠いている。

以上のとおり,
平成30年改正法は,
平成27年改正法が示す
更なる是正の方向性と立法府の決意を全く欠如している。
そもそも,平成30年改正法は,平成27年改正法附則7条の定
めを受けて立法されたものであるが,これは,上記抜本的な見直しとしては極めて不十分である。

上記の平成29年大法廷判決の投票価値の較差についての判示
に忠実に従ったとしても,
本件選挙は,
違憲状態であると解される。

参議院の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等が後退して
よいと解すべき理由は見いだし難い。
最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下平成24年大法廷判決と
いう。
)及び最高裁平成26年(行ツ)第155号,第156号同年1
1月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下平成26年大法廷判決という。)は,いずれも

参議院議員の選挙であること自体から,直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。

と判示し,平成29年大法廷判決も同旨を判示する。
平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決は,
いずれも
参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであるとし,上記判示はこれを
前提としているところ,平成29年大法廷判決は,上記各大法廷判決につき判例変更をするものではなく,
その効力もないと解されるから,

投票価値の平等の要請は衆議院同様に働き,国において参議院の選挙であること自体以外の合理的理由の存在を立証できない限り,参議院(選挙区選出)議員の選挙の投票価値の最大較差は衆議院(小選挙区選出)議員の選挙のそれに劣後しない。

衆議院の多数意見と参議院の多数意見が対立した15個の法律の立
法事案の全てにおいて,参議院の多数意見が法律の成立・不成立を決定した。
昭和22年ないし平成17年の間に,法案についての衆議院議員の多数の意見と参議院議員の多数の意見が異なったことが,少なくとも15回あるところ,それらの場合,必ず,参議院議員の多数の意見が衆議院議員の多数の意見に優越して,各法律が成立したり,又は廃案となっている。そのような歴史上の事実に照らせば,
参議院議員の選挙の投票価値の平等の憲法の要請が,参議院議員の選挙であるという「こと自体を理由として,衆議院議員の選挙のそれに劣後してよい」
とは到底解されないものである。そうすると,参議院(選挙区選出)議員の選挙の投票価値の最大較差が,衆議院(小選挙区選出)議員の選挙のそれに劣後していることは,当該参議院(選挙区選出)議員の選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反しており,違憲であると解される。


平成29年大法廷判決における投票価値の較差についての2段階の
判断枠組みの最初の段階の審査の判断基準は,平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決における上記の判断枠組みの各段階の審査の判断基準の判例に反する。
平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決は,
いずれも,
参議院議員の選挙における投票価値の較差の問題について,当裁判所大法廷は,これまで,①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否か,②上記の状態に至っている場合に,当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否かといった判断の枠組みを前提として審査を行ってきたと判示して,2段階の判断枠組みを採用しているところ,これによれば,較差是正のための立法措置などの投票価値の較差是正に関する要素は,②段階の審査で,基準日たる投票日の時点で較差が是正されなかったことが国会の裁量権の限界を超えたか否かを判断する際に考慮すべきものである。
ところが,平成29年大法廷判決が採用した判断基準は,②段階の審査で考慮すべき較差是正に関するものを,①段階の審査で,先取りして考慮して,その結果,当該選挙は違憲状態に該当しない旨の結論を導くに至るものである。このような判断基準の変更は,判例変更した旨及び従前の判例がどの点で誤っていて新判例がどの点で正しいのか
との判例変更についての判示のない平成29年大法廷判決においてすることは,許されないものである。ちなみに,平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の②段階の審査の判断基準も,憲法98条1項の明文に反する法理であり効力を有しない。

最高裁昭和49年
(行ツ)
第75号同51年4月14日大法廷判決・

民集30巻3号223頁(以下昭和51年大法廷判決という。
)の
判例としての事情判決の法理によれば,違憲状態の瑕疵は本件選挙全体に及ぶ。
昭和51年ないし令和元年までの43年間,選挙無効訴訟についての事情判決は,昭和51年大法廷判決及び最高裁昭和59年(行ツ)
第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁の二つの大法廷判決のみであるため,上記43年間に言い渡された
その他の各最高裁判決は,いずれも,事情判決の判例を変更する判断をしていない。
したがって,昭和51年大法廷判決の事情判決の判例は,今日
においても有効であり,裁判官を拘束するところ,違憲状態の方式により決定された議員定数を配分された選挙区の違憲状態の瑕疵は,全
選挙区割り全体の不可分の一体の性質から,全体の選挙区割りに
及び,全選挙区の選挙全体が,違憲状態の瑕疵を帯びることになるとするのが昭和51年大法廷判決である。これによれば,違憲状態の瑕疵を帯びる本件選挙は,憲法98条1項の規定に反し,無効である。キ
選挙を無効とする判決がされても,社会的混乱を生むことはない。本件選挙を無効とする判決を言い渡した場合,同選挙は,将来に向かって形成的に無効となる(昭和51年大法廷判決)
。よって,
(同選
挙で当選した議員が,当該選挙無効判決言渡し時以前に,国会で
投票したことで成立した)各法律は,選挙無効判決によっても,なお有効であり,さらに,同選挙で当選した議員である内閣総理大臣の地
位も,当該選挙無効判決により,将来に向かって形成的に無効となるにすぎず,当該選挙無効判決言渡し時以前に行われた内閣総理大臣の行政権の行使は,選挙無効判決によっても,なお有効である。その他の事情も考慮すると,選挙無効判決の言渡しにより,社会的混乱は生じない。


人口比例選挙による選挙区割りは,技術的に可能な限度で行えば足りる。
憲法56条2項,1条,前文第1項第1文冒頭の要求する人口比例選挙は,実務を踏まえた上での技術的観点からみて,合理的に実施可
能な限りでの人口比例選挙であれば足りると解される。
平成23年4月15日に開催された第2回選挙制度の改革に関す

る検討会において,西岡武夫参議院議長(当時)は,参議院選挙制度につき,投票価値の最大較差1対1・066倍の比例9ブロック制の西岡試案を参議院の各会派に交付した(甲48)

いったん人口に比例する区割りが実施されれば,以後,5年ごとの簡易国勢調査及び10年ごとの正規国勢調査の実施により得られた人
口に比例して選挙区割りが見直されていれば,当該5年ごとの選挙区割りの見直しの実施は,特別な事情のない限り,人口比例選挙の1票の投票価値からの乖離の合理性を裏付ける有力な証拠となり得ると解される。

当該選挙の各選挙区の投票価値の平等(1人1票等価値)からの乖離が合理的であることの立証責任は,国にある。
裁判所は,選挙無効請求訴訟の裁判において,①投票価値の平等からの乖離の合理性の存在の問題又は②是正のための合理的期間の未徒過の問題につき,立証責任がいずれの当事者(即ち,選挙人又は選挙
管理委員会)にあるのか,判断するよう求められる。
けだし,選挙無効請求訴訟が裁判である以上,各当事者間に争いのある場合は,裁判所は,主張立証責任が,いずれの当事者に帰属するかという論点の判断を避けないよう求められるからである。
被告ら


本件訴訟の判断枠組み
憲法は投票価値の平等を要求しているが,選挙制度の仕組みの決定
については国会に広範な裁量が認められているのであるから,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。
憲法が二院制を採用した趣旨及び定数の偶数配分という参議院議員の選挙制度における技術的制約等に照らすと,国会の定めた定数配分
規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは,参議院の独自性その他の政策的目的ないし理由を考慮しても,投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており,かつ,当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られるものと解すべきで
ある。

本件選挙時において,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえないこと国会が,選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる
程度の著しい不平等状態に至っていた旨判断した平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿い,一部の選挙区について2つの県を合わせた合区を創設することなどを内容とする平成27年改正を行ったことにより,選挙区間の最大較差(人口)は2.97倍(平成22年実施の国勢調査結果による人口に基づくもの)となり,前記
不平等状態は解消された。
同改正後の定数配分規定に基づいて施行された平成28年選挙に係る平成29年大法廷判決においても,選挙区間の最大較差が3.08倍であった平成28年選挙当時,投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,平成27年
改正後の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない旨判示された。
さらに,平成30年改正は,参議院(選挙区選出)議員の選挙に関しては,平成27年改正による選挙区割りを維持しつつ,埼玉県選挙区の定数を2人増員するものであり,その結果,平成28年選挙時の
選挙区間の最大較差である3.08倍から,平成27年実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差(人口)として2.9
85倍にまで縮小した。
平成27年改正法に続いて,平成30年改正法においても,参議院(選挙区選出)議員について都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を原則として維持したことは,両議院の選挙制度が同質的なものとなっている中で,参議院(選挙区選出)議員の選出基盤について衆議院議員のそれとは異なる要素を付加し,地方の民意を含む多角的な民意の反映を可能とするものであるから,憲法が二院制を採用した趣旨に沿うものといえる。
さらに,そもそも,選挙権は,民主主義国家において,治者でもあ
り被治者でもある国民が自らの意見等を国政に反映させることを可能にする極めて重要な権利であるところ,人口の多い都市部に居住する多数者のみならず,山間部などのいわゆる過疎地域を含む地域に住む少数者の意見も十分に国政に届くような定数配分規定を定めることもまた,国会において正当に考慮することができる政策的目的ないし理
由となるものというべきである。
平成29年大法廷判決においても,選挙制度の仕組みを決定するに当たり,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することについては,投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて,直ちに国会の合理的な裁
量を超えるとは解されない旨判示されている。
さらに,立法府においては,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会の附帯決議として,平成30年改正後も参議院選挙制度改革に向けた検討を継続していく決意を表明しており,このことは,再び過去にあったような大きな較差を生じさせないという配慮が
なされているものとして評価すべきである。
以上の諸点に,参議院議員については,憲法上,3年ごとに議員の
半数を改選するものとされ(46条)
,定数の偶数配分が求められるな
どの技術的制約があること等を併せ考慮すると,本件選挙当時,本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,投票価値の平等の重要性に照らして看過し得ない程度に達しているとはいえず,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはい
えない。

仮に,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたと判断されたとしても,本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえないこ

憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと,当
該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違
憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っている場合にお
いて,当該選挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会

の裁量権の限界を超えるといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,
そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の
諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取
組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相

当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべき
である。
そうすると,当該選挙までの期間内にその是正をしなかったこ
とが国会の裁量権の限界を超えるか否かは,裁判所において当該
定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲

の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているとの判断が
示されるなど,国会が,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等

状態となったことを認識し得た時期を基準(始期)として,前記
の諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである。
これを本件についてみると,平成29年大法廷判決において,都
道府県単位の選挙区を一部改めて合区を創設した平成27年改正
後の定数配分規定に基づき施行された平成28年選挙当時,選挙

区間における投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度
の著しい不平等状態に当たらない旨判断が示された。本件選挙は,同大法廷判決後,さらには,最大較差の更なる縮小を目指した平
成30年改正による定数配分規定に基づく初めての参議院議員通
常選挙である上,本件選挙当時における選挙区間の最大較差は3.
00倍であり,平成28年選挙当時の3.08倍から更に縮小し
たことなどを踏まえると,国会において,本件選挙までの間に前
記状態に至っていたことを認識し得たとは到底いえない。
そうすると,仮に本件定数配分規定の下での選挙区間における
投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平

等状態に至っていたと評価されたとしても,国会における是正の
実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の
在り方として相当なものでなかったとは認められないから,本件
選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかったこと
をもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。

第3
1
当裁判所の判断
前記前提事実に加え,証拠(各認定事実の末尾に摘記した)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
平成26年大法廷判決までの経緯


参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は,参議院議員の選
挙について,参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出
議員150人とに区分し,全国選出議員については,全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方,地方選出議員については,その選挙区及び各選挙区における定数を別表で定め,都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして,選挙区ごとの定数については,憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていることに応じて,各選挙区を通じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し,定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に,各選挙区の人口に比例する形で,2人ないし8人の偶数の定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法の定数
配分規定は,上記の参議院議員選挙法の定数配分規定をそのまま引き継いだものであり,その後に沖縄県選挙区の定数2人が付加されたほかは,平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下平成6年改正という。)まで,上記定数配分規定に変更はなかった。なお,
昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下昭和57年改正という。)により,参議院議員252人は各政党等の得票に比例
して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが,この選挙区選出議員は,従来の地方選出議員の名称が変更されたものにすぎない。その後,平成12年法律第118号による公
職選挙法の改正(以下平成12年改正という。
)により,参議院議
員の総定数が242人とされ,比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。

参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人
口の最大較差(以下,各立法当時の選挙区間の最大較差というと
きは,この人口の最大較差をいう。
)は2.62倍であったが,人口変
動により次第に拡大を続け,
平成4年に施行された通常選挙
(以下
平成4年選挙という。
)当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙
人数の最大較差(以下,各選挙当時の選挙区間の最大較差という
ときは,この選挙人数の最大較差をいう。
)が6.59倍に達した後,
平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減する措置により,平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後,平成12年改正における3選挙区の定数を6減する措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下平成18年改正という。
)における4選挙区の定
数を4増4減する措置の前後を通じて,平成7年から平成19年まで
に施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。
しかるところ,
最高裁判所大法廷は,
定数配分規定の合憲性に関し,
最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下昭和58年大法廷判決という。
)に

おいて後記

の基本的な判断枠組みを示し,また,
制定の当初においては憲法に適合するものと認められた本件参議院議員定数配分規定による議員定数の各選挙区への配分として参議院議員選挙法制定当時の定数配分規定の下での選挙区間の最大較差については憲法に適合するものであるとの認識も示した後,平成4年選挙について,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)
,平成6年改正後の定数配分規定の
下で施行された2回の通常選挙については,上記の状態に至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10
年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁,最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号
1997頁)
。その後,平成12年改正後の定数配分規定の下で施行さ
れた2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常選挙のいずれについても,最高裁判所大法廷は,
上記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することなく,結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁,最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁,最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月3
0日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)
。もっとも,上掲最高裁
平成18年10月4日大法廷判決においては,投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の,上掲最高裁平成21年9月30日大法廷判決においては,当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな
不平等が存する状態であって,選挙区間における投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあり,最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど,選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で,較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより
厳格な評価がされるようになっていた。

平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況に
おいて施行された通常選挙
(以下
平成22年選挙
という。につき,

平成24年大法廷判決は,結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は
見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし,それにもかかわらず平成18年改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま平成22年選挙に至ったことなどの事情
を総合考慮すると,同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ,できるだけ速やか
に違憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。

平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職
選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成24年法律第94号。以下平成24年改正法という。,同月26日に施行された(以下,)
同法による改正後,平成27年改正法による改正前の定数配分規定を平成27年改正前の定数配分規定という。。平成24年改正法の

内容は,平成25年7月に施行される通常選挙に向けた改正として選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減するものであり,その附則には,平成28年に施行される通常選挙に向けて,選挙制度の
抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,結論を得るものとする旨の規定が置かれていた。

平成25年7月21日,平成27年改正前の定数配分規定の下での初めての通常選挙(以下平成25年選挙という。
)が施行された。
同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。

平成25年9月,参議院において平成28年に施行される通常選挙
に向けた参議院選挙制度改革について協議を行うため,選挙制度の改革に関する検討会の下に選挙制度協議会が設置された。同協議会においては,平成26年4月に選挙制度の仕組みの見直しを内容とする具体的な改正案として座長案が示され,その後に同案の見直し案も示された。これらの案は,基本的には,議員1人当たりの人口の少ない一
定数の選挙区を隣接区と合区してその定数を削減し,人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ,同協議会において,同年5月以降,上記の案や参議院の各会派の提案等をめぐり検討と協議が行われた(上記各会派の提案の中には,上記の案を基礎として合区の範囲等に修正を加え
る提案のほか,都道府県に代えてより広域の選挙区の単位を新たに創設する提案等が含まれており,
将来的には,投票者数による議員定数配分も選択肢の一つとして考えられる等とする意見(乙5の1)も示された。。そして,同協議会において,更に同年11月以降,意見)
集約に向けて協議が行われたが,各会派の意見が一致しなかったこと
から,同年12月26日,各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。

このような協議が行われている状況の中で,
平成25年選挙につき,

平成26年大法廷判決は,平成24年大法廷判決の判断に沿って,平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を
通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから,投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず,
したがって,
平成24年改正法による上記の措置を経た後も,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあっ
た旨判示するとともに,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ,できるだけ速やかに,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。

平成27年改正法の成立に関する経緯

平成27年改正法の成立
報告書の提出を受け

て協議を行ったが,
各会派が一致する結論を得られなかったことから,
平成27年5月29日,各会派において法案化作業を行うこととされ
た。
その後,
各会派における検討が進められた結果,
各会派の見解は,
人口の少ない選挙区について合区を導入することを内容とする①4県2合区を含む10増10減の改正案と②20県10合区による12増12減の改正案とにおおむね集約され,同年7月23日,上記各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国
会に提出された。そして,同月28日,上記①の改正案に係る平成27年改正法が成立し,同年11月5日から施行された。平成27年改正の結果,平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった(乙5の1)


平成27年改正法の内容等
平成27年改正法は,参議院創設以来,初めて,都道府県を各選挙
区の単位とする仕組みの一部について合区(合同選挙区)を設けたものであり,具体的には,参議院(選挙区選出)議員の選挙区及び定数について,
鳥取県及び島根県,
徳島県及び高知県をそれぞれ合区とし,
定数2人の選挙区とした上で,定数4人の県の選挙区のうち,議員1人当たりの人口の少ない3県(宮城県,新潟県及び長野県)の選挙区の定数を2人ずつ減員するとともに,議員1人当たりの人口の多い1都1道3県(東京都,北海道,愛知県,兵庫県及び福岡県)の選挙区の定数を2人ずつ増員すること等を内容とするものであった。
合区を設けた理由について,平成27年改正法の法律案の発議者か
らは,都道府県単位の選挙制度が地方の意見を国政に反映させる重要な役割を果たしてきたことを十分に踏まえ,平成26年大法廷判決の判示に沿って較差是正を目指すという考え方に基づくものである旨説明された(乙5の1・2)
。また,合区の対象を鳥取県,島根県,高知
県及び徳島県とした理由については,人口の少ない都道府県は,少な
い方から順に鳥取県,島根県,高知県,徳島県であり,これらは互いに隣接する人口の少ない県同士での組合せが可能である一方で,徳島県の次に人口の少ない都道府県は福井県であり,福井県に隣接する府県の人口はいずれもそれほど少ないわけではなく,これらの府県と福井県とを合区することとした場合には,これらの府県と人口のより少
ない県との間で不公平さを生じさせることとなるためと説明された(乙5の2)

他方で,平成27年改正法の法律案と同時に審議された20県10合区などを内容とする法律案(同法律案については,平成27年改正法の法律案の可決により,議決を要しないものとなった。
)につい

ては,参議院本会議において,
合区の対象は20県と全体の4割に及んでおり,単独の県と合区対象の県の不公平感は一層顕著になる,
歴史的,地理的,社会的なつながり,条件がほとんどない合区による様々な矛盾を生じることになるといった意見が示されていた(乙5の2)


平成27年改正法附則7条の定め
平成27年改正法附則7条には,
平成31年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて,参議院の在り方を踏まえて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとする。との規定が置かれていた。

平成27年改正前後の各種の反応
平成27年改正に当たり,合区の創設の提案等に対しては,
東京一極集中を是正し,地方の活性化を図るためには当事者である地方の意見が最大限に活かされることが必要であり,人口により単純に区割りを決定することは,地方創生に逆行し,適当ではないなどとして,

参議院については都道府県単位による代表が国政に参加する仕組みを維持することを提言する福井県知事,山形県知事ほか6県の知事による平成27年7月8日付け地方創生にふさわしい参議院選挙制度改革に係る緊急提言(乙28の1)が示されたほか,例えば,鳥取県議
会は,衆議院とは違った視点でものごとを見ることができる参議院の

存在は必要であり,一票の格差是正に当たっては,全国比例区の議席数を選挙区へ移管するなど参議院選挙全体の改革として議論し,最低1県に1議員を確保すべきこと。,

一票の格差を論じるときに,人口や有権者数で論じるならば,投票しなかった人の投票価値まで考慮することになる。投票機会の平等に加え,実際に投票した価値に目を向けて,人口ではなく投票数をもとに格差を是正すべきであること。などの意見を記載した平成27年6月26日付け意見書を地方自治法9
9条の規定に基づき参議院議長に提出した(乙28の62)
。その当時
合区の検討対象とされていたその他の地方公共団体の議会からも,地方自治法99条の規定に基づき,
選挙制度は,人口だけでなく,面積や行政区画のほか,地方が有する自然環境保護や食料供給基地等の多面的機能等を総合的に考慮する必要がある合区案は,人口過疎の,上に,政治過疎を引き起こすものであり,これらが国策として強行されるならば,地方切り捨てにつながり,国・地方全体の衰退を招くなどとする意見が提出されたほか,各地方公共団体からは,合区の創設に反対し都道府県単位の選挙区の維持を求める旨の意見が多数提出
された(乙28の8・10ないし12・23・29・31ないし34・57・61・62・64ないし71・100・101・126ないし144・150・152・169・171ないし200)
。全国知事会
や全国町村会からも,平成27年改正に関し,人口の多寡に関わらず都道府県単位の代表が国政に参加する仕組みや,地域の実情や声が国
会に反映できる選挙制度の検討等を求める意見が示された(乙21の1,25の1)

また,株式会社静岡新聞社,株式会社岩手日報社等が加盟する日本世論調査会が平成27年12月に実施した世論調査においては,将来的に参議院の選挙制度をどうするべきかという点について,合区での
較差是正を進めるとした意見の割合は19.8パーセントで,都道府県単位で代表を選ぶことを優先するとした意見の割合が36.5パーセントと最多であった(乙18の9・10,20)

各地方公共団体からは,平成27年改正後,合区の解消や,都道府県単位の選挙区制の堅持などを強く求める意見が,多数にわたり,継
続的に表明され続けた(乙28の72・73・79ないし83・201・202)


衆議院議員の定数削減と衆議院選挙に係る一票の較差是正を図るための衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号。以下区画審設置等改正法という。)
の成立等
平成28年5月20日,区画審設置等改正法が成立したところ(乙31の5)
,同法には,
この法律の施行後においても,全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については,民意の集約と反映を基本としその間の適正なバランスに配慮しつつ,公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう,不断の見直しが行われるものとする。とする規定が置かれた(同法附則5条)。この規定は,同
法に係る国会での審議に先立ち衆議院議員の選挙制度に関する調査検討を行った
衆議院選挙制度に関する調査会
(乙31の1)
による答申
(乙
31の2)
の内容を踏まえて定められたものであるところ
(乙31の6・
7)
,同答申4項においては,前記の規定と同様の文言に加え,
憲法の定める二院制の下において,衆参両議院にはそれぞれ期待される役割や機能があり,今後も,将来における我が国の代表民主制のあるべき姿を念頭に,「国権の最高機関としての国会の在り方や
全国民を代表する
議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方を,広く国民の意見を踏まえ,明治以来長い歴史とともに発展してきた我が国民主政治におけ
る意思決定過程の制度と運用を見据えて,国会として継続的に考えていくべきである。
」と述べられていた(乙31の2)

同法の法律案に関し,平成28年4月22日の衆議院の本会議においては,法律案の提出者から,
本法律案では(中略)衆参両議院選挙制度のあり方についても,答申が述べるとおり見直しを進めることが重要であるとの立場から,(中略)見直し条項を置いたなどと,前記見直し条項が対象とする選挙制度は衆議院のみならず参議院の選挙制度も含むこ
とを前提とした説明がされていた(乙31の3)

平成28年選挙の結果等

以上のような協議が行われている状況の中で平成28年7月10日に平成27年改正後の定数配分規定の下で施行された平成28年選挙
における選挙区間の最大較差は,1対3.08であった(乙4,5の3)
。合区とされた鳥取県,島根県,徳島県及び高知県の平成28年選挙における投票率は,島根県を除く各県で低下し,当時における過去最低の投票率であった(乙5の4,18の8)
。島根県においては,投
票率は62.20パーセントで,平成25年選挙に比し1.31パー
セント上昇したが,それまで投票率は連続して全国1位であったところ,平成28年選挙においては全国3位となった(乙5の4・9)。上
記の各県における無効投票率(当時)は,島根県(2.03パーセント)を除いて全国平均(2.65パーセント)を上回り,高知県は6.14パーセントと全国で最高となった(乙5の5)


高知県で投票率が低下した原因については,合区により選挙区が拡大し,候補者と有権者の距離が遠くなったと感じられたこと,特に高知県においては,地元である同県出身の候補者がいなかったため,選挙への関心が高まらなかったことによるものとの報道があった(乙5の9)
。この点に関連し,徳島県及び高知県の合同選挙区では,3名の

候補者全員が徳島県出身であったところ,当選した候補者の徳島県における得票率よりも高知県における得票率がかなり低く,その原因につき高知県において同候補は有権者に浸透しきれなかった旨の報道があった(乙18の8)
。また,島根県と鳥取県においては,いわゆる現
職で当選した候補者が島根県出身,次点のいわゆる新人の候補者が鳥
取県出身であったところ,次点の候補者の島根県における得票率が29.4パーセントであったのに対し,同人の鳥取県における得票率は
42.0パーセントであったとの報道があった(乙18の8)


各地方公共団体からは,平成28年選挙後も,合区の解消や,都道府県単位の選挙区制の堅持などを強く求める意見が,多数にわたり,継続的に表明され続けた(乙28の3ないし7・9・14ないし22・
24ないし28・30・35ないし56・58ないし60・63・74・76ないし78・84ないし99・102ないし125・145ないし149・151・153ないし168・170・203ないし235)
。例えば,徳島県板野町議会は,平成28年選挙につき,
徳島県及び高知県選挙区においては,広範囲にわたる選挙区における選挙活動の困難さや,有権者が直接候補者の政見に接する機会が減少するなど,民主主義の根幹に関わる幾多の問題点が明らかになるとともに,有権者の投票意欲の減退による投票率の低下が生じ,地方の民意を国政に反映させる上で深刻な課題を残したといわざるを得ない。などの意見を記載した平成28年12月9日付け意見書を地方自治法9
9条の規定に基づき衆議院及び参議院の各議長ら宛てに提出した(乙28の153)

平成29年大法廷判決の要旨
以上のような状況の中で,平成28年選挙につき,平成29年9月27日に言い渡された平成29年大法廷判決は,

判示し,平成27年改正につき,
都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを改めて,長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに,更なる較差の是正を指向するものと評価することができると述べ,平成28年選挙当時,平成27年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価
値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,平成27年改正後の定数配分規定が憲法に違反するに至
っていたということはできないとした。
平成30年改正法の成立に関する経緯

平成30年改正に向けた検討
平成27年改正法

た附則7条の定めが置かれたこと

を踏まえ,平成28年選挙後の平成29年2月,参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため,各会派代表による参議院改革協議会が設置され,同年4月,同協議会の下に,参議院の選挙制度の改革について集中的に調査検討を進めるために,各会派代表による選挙制度に関する専門委員会
(以下専門委員会という。
)が

設置された(乙6ないし10,11の1・2,16)

専門委員会では,同年5月から平成30年4月にかけて17回にわたり参議院の選挙制度に関する協議が行われ,その協議においては,平成28年選挙に関する評価について,参考人合計7人から意見を聴取したり,参議院の選挙制度の改革に対する考え方について論点整理
を行ったりしつつ,参議院の在り方との関係,1票の較差,選挙制度の枠組み,議員定数の在り方などについて意見交換が行われた。
参考人からの意見として,全国知事会総合戦略・政権評価特別委員会委員長である徳島県知事からは,全国知事会における議論等を踏まえて,県代表がいないことの具体的な問題点としては,県間で利害が
反する場合の代表がいなくなる,都道府県単位の各種団体の考えの受け皿の混乱,災害への対応があるとの意見が示された。その他,大学教授及び弁護士等6人から,諸外国における二院制の在り方等についての意見が示されたが,その中には,
投票価値の平等について,平等選挙原則としての一人一票の考え方は間違いないが,等価的価値については,1人区と中選挙区で意味合いが変わるというような難しい問題があり,等価的価値のみを重視した場合,人口過密地の利益が多数派になりやすい。各地域を均衡的に代表することの積極的規範的意味を再度確保しなければならないと思う。とするものもあった。これらの参考人からの意見の聴取を踏まえ,専門委員会において協議が行われ(乙11の2)
,選挙制度の枠組みについては,選挙区及び
比例代表の2本立てとする場合並びに選挙区及び比例代表の2本立てとしない場合のそれぞれにつき検討がされるとともに,ブロック選挙区制や奇数配当の可否,連記制の導入などについて議論が行われた。その中では,投票の影響力の平等について,
複数区で5~6人を選出する場合,1位になってほしい候補者に対する影響力はあっても,「この候補者には当選してほしくないという影響力を行使することはできない。仮に2人,3人の候補者に投票できるとすれば,名前を書かないことで,影響力を行使することができる。判例で言及されている投票の影響力とは何かということをしっかり解釈して立法につなげていくべきである。
」などとする意見が示されたほか,選挙区を都道府県

単位とすることに肯定的な立場からの意見として,
近時,大規模災害が全国的に発生しており,被災地域は一市町村にとどまらず広域にわたることから,復旧復興に際しては,広域自治体である都道府県が重要な役割を果たしていることもある。国から都道府県に対して行われる財政措置,国と基礎自治体である市町村をつなぐ役割として,都道府県は重要な役割を果たしている。こうした都道府県レベルの課題に対しては,参議院議員が意見調整を行い国につなぐ必要があり,参議院の選挙区選出議員は,他にない独自の性格を有している。などとするものが示される一方,これに否定的な立場からの意見として,
一票の価値の平等こそ憲法の要請であって,不平等を容認してまで都道府県単位の選挙区を維持するというのは違う。都道府県単位の選出ができなくなれば,地方,少数の声を切り捨てることになるという意見もあるが,反映すべき少数の声とは,地域的少数者の声のみではない。などとするものが示された。また,連記制については,

2人区以上の選挙区で連記制を導入すれば,複数人についてどう選ぶかという極めて大きな影響力を行使することになり,重要な考え方である。連記制の勉強をもう少し行ってもよいのではないか。として積極的に評価す

る意見のほか,公職選挙法が1人1票の原則を採用してきたことを指摘し,連記制のうちの一つの制度である

累積投票制が本当に民意を反映したものとなるか,より慎重な議論が必要である。

などとする意見が示された。

専門委員会での協議においては,参議院(選挙区選出)議員の選挙に関し定数の奇数配分を可能とする前提で,都道府県を選挙区の単位とする選挙制度を維持する方策につき,
種々条件を場合分けした上で,
選挙区間の較差の試算がされたところ,例えば,ⓐ各選挙区の定数を最低2人とし,較差3.08倍以下とする場合には,選挙区選挙の定
数を30人増加する必要があること,ⓑ各選挙区の定数を最低1人とし,全選挙区6年ごとに選挙をすることとして,定数を増減させずに較差を3.08倍よりも引き下げる場合,最大較差が2.95倍止まりであること,ⓒ各選挙区の定数を最低1人とし,定数1の選挙区のみ6年ごとに選挙をすることとして,定数を増減させず較差を3.0
8倍よりも引き下げる場合,最大較差が2.95倍止まりであることなどの議論がされた(乙11の2)
。また,議員定数を1増やすごとに
概算で年間7300万円強の歳出増となるところ,この歳出を抑制することと特定の地域から参議院に代表を出せないこととのバランスを勘案すると,議員定数増に向かわざるを得ないのではないかとの意見
も示された(乙11の2)

その後,専門委員会は,平成30年4月13日及び同月27日の協
議を経て,同年5月7日,参議院改革協議会に対し,専門委員会において議論を行った各論点ごとの意見を取りまとめ,参議院の選挙制度の改革に関する具体的な方向性についての各会派の意見を併記する形で作成した参議院改革協議会選挙制度に関する専門委員会報告書
を提出した(乙8,10,11の1・2,16)

参議院改革協議会においては,専門委員会の委員長から上記の報告書の概要について報告を受けた後,自由民主党から,①参議院(選挙区選出)議員の定数を2人増加して148人とした上で,2人を埼玉県選挙区に配分してその改選定数を4人とし,平成27年実施の国勢
調査結果の人口に基づく選挙区間の最大較差を2.985倍とするとともに,②参議院(比例代表選出)議員の定数を4人増加して100人とし,比例代表選挙において,名簿にあらかじめ順位を付する拘束式の特定枠を設けることができる制度を導入することなどを内容とする制度の案(以下自民党案という。
)が示され,同案についての意

見交換がされた。その後,同年6月8日の協議会において,自民党案につき,各会派からの意見や批判を含め,現段階での協議状況を参議院議長に報告することが了承された(乙16)

その後も,各会派代表者懇談会における協議及び参議院議長における各会派からの個別の意見聴取などが行われたが,各会派の意見には
隔たりがある中,同年7月4日の各会派代表者懇談会において,議長から,具体案のある会派は法律案を提出し,委員会において議論を進めることを要請する旨の発言があった(乙16)

これを受け,自民党案と同内容の自由民主党・こころ及び無所属クラブによる法律案(以下自民・無ク案という。
)や,現行の制度に

代えて全国を11の区域に分けた選挙区制を採用する公明党による法律案等の5法律案が7会派から発議され,いずれも参議院政治倫理の
確立及び選挙制度に関する特別委員会(以下参議院倫選特委とい
う。
)に付託され,同年7月6日以降,質疑が行われた(乙13の1ないし3,16)
。自民・無ク案と平成27年改正法附則7条の定めとの
関係につき,同案の発議者は,同日,
合区対象県を拡大させずに,1票の較差が再び以前のように大きくならないように,投票価値が最も軽くなっております埼玉県選挙区の定数を2増加し,選挙区間の最大較差を3倍未満の2.985倍に是正することとしたところであります。比例選挙区におきましては,現行の非拘束名簿について拘束式の特定枠を設けることができることといたしまして,全国的な支持基盤や知名度を有するとは言えないが国政上有為な人材や,また様々な意味での少数意見や多様性を代表する者,政党が民意を反映するために必要な人材を当選しやすくすることで,人口的に少数派ともいうべき条件不利地域をも含めた地域の住民の生活や安全を守るという観点などからも,国政上有為と言い得る人材の当選の機会を高めることを可能といたしまして,合区問題にある程度対応し得るものといたしまして活用できるようにしたところであります。このように見ていただきますれば,地方の声,多様な声を国政に反映させるという参議院の在り方を踏まえ,1票の較差を是正しております本改正案は次の通常選挙に向けての一つの抜本的な見直しに当たるものと,このように考えているところでございます。と説明した(乙13の1)。
そして,同月9日及び11日にも,同委員会において各法律案に関する質疑が行われた後,自民・無ク案が可決された。その際,自由民主党及び公明党から,
今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと参議院議員の定数の増加に伴い,参議院全体の経費が増大,することのないよう,その節減について必要かつ十分な検討を行うことの実現に努めること等を内容とする附帯決議の提案がされ,併せて可決された(乙13の2・3,14ないし16)
。そして,同日の参
議院本会議において,自民・無ク案について討論が行われ,同案が可決された(乙13の4,16)

その後,自民・無ク案は,衆議院に送付され,同月13日,衆議院
政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会に付託されて質疑が行われ,同月17日に可決された後,同月18日,衆議院本会議において可決され,平成30年改正法が成立し,同年10月25日から施行された(乙13の5ないし7,14,16)


平成30年改正法の法律案の提案趣旨の説明
平成30年改正法の法律案の提案の趣旨について,発議者からは,
アに述べたところのほか,
平成27年改正法附則の検討条項を踏まえ,通常選挙が来年に迫っている中で,今国会中に公職選挙法の改正を行う必要性から,参議院選挙区選出議員の選挙について,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の縮小を図るため,参議院選挙区選出議員の定数を増加して各選挙区において選挙すべき議員の数の是正を行うとともに,参議院比例代表選出議員の選挙について,全国的な支持基盤を有するとは言えないが国政上有為な人材又は民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなることを目的とし,現行の非拘束名簿を基本的に維持しつつ,候補者の一部について,他の候補者と明確に区分する形で拘束式の枠を設けることができるようにするため,(中略)特定枠の制度を導入し,及び参議院比例代表選出議員の定数を増加させることとしたなどと説明された
(乙
13の1,14)


また,平成27年実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は,改正前の3.08倍から,平成30年改正法成立後は
2.985倍に縮小することとなる旨が説明された(乙13の1,14)

上記の法律案の発議者は,全国六団体や多くの地方公共団体から合区解消や都道府県単位の代表を選出する選挙制度を求める動きが見られたことに関し,参議院倫選特委での質疑において,
地方六団体で行われた合区解消に関する決議,また現時点で35もの県議会で採択された意見書を受けまして,都道府県単位の地方の声を国政に届けるとともに,現代社会においては様々な民意の多様化ということがございます。そうした少数意見や様々な意味での多様な民意を代表するそうした議員が参議院で働くことができることを可能にする,こうした目的を達成しようとする趣旨でございます。などと答弁した(乙13の1)


平成30年改正法の内容等
平成30年改正法の内容は,①参議院(選挙区選出)議員の定数を
2人増加し148人とした上で,埼玉県選挙区の定数を2人増加し8人とするとともに,②参議院(比例代表選出)議員の定数を4人増加し100人とした上で,
参議院
(比例代表選出)
議員の選挙において,
政党その他の政治団体が,
候補者とする者のうちの一部の者について,
優先的に当選人となるべき候補者として,その氏名及びそれらの者の
間における当選人となるべき順位をその他の候補者とする者の氏名と区分して名簿に記載することができるという特定枠の制度を導入するものであった。
平成30年改正の結果,参議院(選挙区選出)議員の選挙区間の最大較差は,1対2.985(平成27年実施の国勢調査結果による人
口に基づくもの)となり,平成28年選挙当時の選挙人数に基づく選挙区間の最大較差である1対3.
08から縮小された
(乙14,
16,

17)


附帯決議の存在
平成30年改正に関し,
前記アのとおり,
参議院倫選特委において,

自民・無ク案につき可決された際,
今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うことなどを内容とする附帯決議がされた。オ
平成30年改正前後の各種の反応
全国知事会等の地方六団体や各地方公共団体からは,平成28年選
挙後から本件選挙に至るまでの間も,引き続き,合区の早期解消を求める意見や決議が示され続けており,
例えば,
全国知事会においては,
平成28年7月29日付けの参議院選挙における合区の解消に関する決議で,投票率の低下や選挙区において自県を代表する議員が出せないことなど,合区を起因とした弊害が顕在化している等と指摘した(ただし,上記知事会の決議に関しては,反対意見(大阪府)及
び慎重意見(愛知県)があった。乙21の2)
。また,全国知事会は,
平成30年改正につき,
次期参議院選挙を来年に控え,「各都道府県の代表が選出されない事態が回避できる今回の改正公職選挙法は,あくまで緊急避難措置として,理解できる」などと評価した(乙21の5)


全国都道府県議会議長会においては,平成28年選挙の結果,投票率の低下や直接候補者と接する機会の減少などの合区を起因とした弊害が顕在化したことを指摘し,早急に合区を解消して都道府県単位による代表が国政に参加できる選挙制度を求めるとした(乙21の2ないし6,22の1ないし5)


全国市長会においては,平成28年11月17日付けの参議院選挙制度改革に関する決議等で,平成28年選挙の投票率について,
平成25年参院選と比較すると,全国平均が2%伸びている中で,合区が実施された4県の合計では2%の減少となっており,国政への関心の低下が懸念されるなどと指摘し(乙23の1ないし3),全国
市議会議長会,全国町村会及び全国町村議会議長会においては,合区を早急に解消して都道府県単位による代表が国政に参加することを可能とする選挙制度を要請する旨の意見を提示した(乙24の3ないし5,25の3ないし6,26の2ないし4)

平成30年4月27日には,いわゆる地方六団体により,合区の早期解消促進大会が開催され,同様の意見が表明された(乙27の1・
2)

その他の各地方公共団体からは,
選挙後に,合区の解消や,都道府県単位の選挙区制の堅持などを強く求める意見が,多数にわたり,継続的に表明され続けた。
平成30年改正法の成立前後の各報道機関による世論調査の結果

においては,改正内容について十分に国民の理解が得られているとはいい難い状況にあるとの評価がされている(乙16)
。日本世論調査会
が平成30年12月に実施した世論調査においては,合区を増やすとした意見の割合は33.5パーセントに上昇したものの,都道府県単位で選べるよう憲法改正で合区を解消するとした意見の割合が31.
9パーセントを示し,改憲せずに現行制度を抜本的に変更するとした意見の割合も26.
4パーセントを示すなど,
大きく意見が分かれた。
これを衆議院議員選挙比例代表の全国11ブロック別に分析すると,合区の解消を求める回答が合区の対象である徳島県及び高知県がある四国において45パーセントと最も高く,北陸信越が40%,東北と
中国(合区の対象である鳥取県及び島根県がある。
)がそれぞれ37パ
ーセント,東京は21パーセントで最小であった。東京では,合区を
増やすべきだとの回答が48パーセントに上った
(乙18の9・10)

本件選挙の結果等
令和元年7月21日,本件定数配分規定の下での初めての通常選挙として,本件選挙が施行された。本件選挙当時における選挙区間の最大較差は,福井県選挙区と宮城県選挙区との間の1対3.00であり,福井県選挙区と比べて較差が3倍以上となった選挙区は宮城県選挙区のみであった(乙1の1)

本件選挙の投票率は,全体的に低下した(平成28年選挙よりも全国平均で5.
90パーセント低下した。。
)特に,
合区の対象である県では,

徳島県で全国最低の約38.59パーセントであったほか,鳥取県及び島根県でもそれぞれの過去最低の投票率であった。なお,本件選挙において平成28年選挙との比較で一番大きく投票率が低下したのは,青森県であり(12.37パーセント低下)
,次いで佐賀県(11.44パー
セント低下)であった。また,本件選挙において最も投票率が低かった
のは上記のとおり徳島県であったが,それに次ぐのは,宮崎県(41.79パーセント)
,福岡県(42.85パーセント)
,青森県(42.9
4パーセント)であった(乙1の2,19の6・7)
。青森県の投票率の
低下の原因については,人口減少等に伴い投票所を平成28年選挙の際よりも69か所減らしたことが原因となっている旨の指摘があった(乙
19の7)

本件選挙における選挙区の選挙の無効投票率については,徳島県は全国平均(2.53パーセント)を大きく上回る6.04パーセントであり(平成28年選挙においては2.96パーセント)
,高知県は3.30
パーセントであった(平成28年選挙においては6.14パーセント。
乙1の3,19の8・9)
。このことに関し,上記の両県の合同選挙区で
は高知県出身の自由民主党の候補者といわゆる野党統一候補の事実上の
一騎打ちであったこと,
無効票のうち半数近くが白票で,
合区反対
分からんなどと書かれたものもあったこと,徳島県の本件選挙の比例代表の選挙の無効投票率は3.22パーセントで全国平均の3.08パーセントと大差がなかったことなどを指摘する報道があった(乙1の3,19の8・9)


このような本件選挙の結果を受け,合区の対象である4県の知事は,令和元年7月23日,合区を解消し,都道府県単位による選挙制度の実現を求める緊急共同声明を公表し(乙28の2)
,全国知事会は,同月2
4日,
徳島県が全国最低の投票率38.59%を記録するとともに,前回最下位だった高知県を除き,鳥取県,島根県,徳島県の3県では過去最低の投票率を更新する結果を招くなど,合区を起因とした弊害はさらに深刻度を増していると指摘し,合区の確実な解消を強く求める意見を表明する決議を行った
(乙21の7)この決議に係る議論においては,

合区の対象である4県以外の知事の中にも,日本の政治活動は都道府県単位であり,日常の活動と離れて合区が強いられるのは民主主義の発展
にマイナスであるとの指摘をする者もあった(乙19の3の3)
。一方,
愛知県(知事)は,憲法や最高裁判決との整合性を考えると賛同できないとする意見を示し,大阪府(副知事)も,投票価値の平等という憲法上の大原則を考えれば合区につき手法の一つとしては否定されるべきではないなどとする意見を示した
(乙19の3の3,
19の5,
21の7)


なお,本件選挙の結果を受け,投票率の低迷について地元候補の不在や合区の影響を指摘する報道や,
地元から候補者を選べない制度はおかしいという有権者の意見を掲載する報道など,合区を解消し都道府県単位の選挙区割りを求める各種意見が報じられた(乙18の12ないし14,19の1・6ないし10)


2
以上の事実を基に判断する。

参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定と憲法との関係の考え方について,平成29年大法廷判決は,次のように述べており,当裁判所も,同様に考えるものである。

憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各
選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものでは
なく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。

憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。

においてみた参議

院議員の選挙制度の仕組みは,このような観点から,参議院議員について,全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け,前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし,後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制定当時において,このような選
挙制度の仕組みを定めたことが,国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら,
社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果,上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当であ
る。
以上は,昭和58年大法廷判決以降の参議院議員(地方選出議員ないし選挙区選出議員)選挙に関する累次の大法廷判決の趣旨とするところであり,基本的な判断枠組みとしてこれを変更する必要は認められない。


憲法は,二院制の下で,一定の事項について衆議院の優越を認める反面,参議院議員につき任期を6年の長期とし,解散もなく,選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)
。その
趣旨は,立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ,参議院議員の任期をより長期とすること等
によって,多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ,衆議院との権限の抑制,均衡を図り,国政の運営の安定性,継続性を確保しようとしたものと解される。そして,いかなる具体的な選挙制度によって,上記の憲法の趣旨を実現し,投票価値の平等の要請と調和させていくかは,二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異
同をどのように位置付け,これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め,国会の合理的な裁量に委ねられていると解すべきである。このことも,前記アと同様,累次の大法廷判決が基本的な立場として承認してきたところである。

前記アのとおり,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することが
できる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,また,前記イのとおり,憲法が,国会の構成について二院制を採用し,衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨に鑑みれば,二院制の下での参議院の在り方や役割を踏まえ,
参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し,
国民各層の多様な意見を反映させて,参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも,選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。そして,具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,
一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず,投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて,このような要素を踏まえた選挙制度を構築する
ことが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。
平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決は,上記のような選挙制度の構築についての国会の裁量権行使の合理性を判断するに当たって,長年にわたる制度及び社会状況の変化を考慮すべき必要性を指摘し,その変化として,参議院議員と衆議院議員の各選挙制度が同
質的なものとなってきており,国政の運営における参議院の役割が増大してきていることに加え,衆議院については投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として選挙区間の人口較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていることなどを挙げて,これらの事情の下では,昭和58年大法廷判決が長期にわたる投票価
値の大きな較差の継続を許容し得る根拠として挙げていた諸点につき,数十年間にもわたり5倍前後の大きな較差が継続することを正当化す
る理由としては十分なものとはいえなくなっている旨を指摘するとともに,都道府県を各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく,むしろ,都道府県を各選挙区の単位として固定する結果,上記のように長期にわたり大きな較差が継続していた状況の下では,上記の都道府県の意義や実体等をもって上記の選挙制度の仕組みの合理性を基礎付けるには足りなくなっていたとしたものである。しかし,この判断は,都道府県を各選挙区の単位として固定することが投票価値の大きな不平等状態を長期にわたって継続させてきた要因であるとみたことによるものにほかならず,各選挙区の区域を定めるに
当たり,都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないとしたものではない。
もとより,参議院議員の選挙について,直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,参議院についても更に適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請について十分
に配慮することが求められるものの,上記のような憲法の趣旨,参議院の役割等に照らすと,
参議院議員の選挙における投票価値の平等は,
憲法上3年ごとに議員の半数を改選することとされていることなど,議員定数の配分に当たり考慮を要する固有の要素があることを踏まえつつ,二院制に係る上記の憲法の趣旨との調和の下に実現されるべき
であることに変わりはないというべきである。
の考え方に基づいて,平成28年選
挙と憲法との関係について,次のように述べており,当裁判所も,同様に考えるものである。
平成28年選挙は,平成26年大法廷判決の言渡し後に成立した平成
27年改正法による改正後の定数配分規定の下で施行されたものであるところ,同法は,従前の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減す
るにとどまらず,人口の少ない選挙区について,参議院の創設以来初めての合区を行うことにより,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり,これによって平成25年選挙当時まで数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(平成28年選挙当時は3.08倍)にまで縮小するに至ったのである。
この改正は,長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた上記の仕組みを見直すべく,人口の少ない一部の選挙区を合区するというこれまでにない手法を導入して行われたものであり,これ
によって選挙区間の最大較差が上記の程度にまで縮小したのであるから,同改正は,前記の参議院議員選挙の特性を踏まえ,平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができる。また,平成27年改正法は,その附則において,次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討
を行い必ず結論を得る旨を定めており,これによって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに,再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができる。
そうすると,平成27年改正は,都道府県を各選挙区の単位とする選
挙制度の仕組みを改めて,長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに,更なる較差の是正を指向するものと評価することができる。合区が一部にとどまり,多くの選挙区はなお都道府県を単位としたまま残されているとしても,そのことは上記の判断を左右するものではない。

平成30年改正法は,合区の範囲等については平成27年改正法の内容を踏襲しつつ,その他の選挙区の議員の定数を改めるなどしたもので
あるところ,被告らは,上記のような内容による平成30年改正後の本件定数配分規定の下での本件選挙当時の選挙区間における投票価値の不均衡につき違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないと主張するが,その趣旨とするところが,平成29年大法廷判決の判示したところについて,都道府県を各選挙区の基本的な単位とする参議院議員の選挙制度の仕組みでの選挙区間における投票価値の不均衡につき平成28年選挙におけるのと同程度の結果が得られる限りは憲法との関係でこれを問題としないとしたものとの理解に立脚するものであるとすれば,これを採用することはできないというべきである。
平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決は,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくこ
とはもはや著しく困難な状況に至っている等の認識の下に,従来の方式をしかるべき形で改めるなどのその仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を速やかに講ずることを促していたところ,平成29年大法廷判決は,これらの大法廷判決の指摘を前提に,具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,一定の地域の住民の意思を集約的に反映させる
という意義ないし機能を加味する観点から,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえないとしつつも,参議院議員の選挙について,長年にわたる制度及び社会状況の変化も考慮すると,近時では都道府県の意義や実体等をもって従来の選挙制度の仕組み
の合理性を基礎づけるには足りなくなっているとの平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決と同様の認識に立った上で,都道府県を単
位とする一部の選挙区について初めて合区を行うことを盛り込んだ平成27年改正法について,その附則7条に述べられているような選挙制度の抜本的な見直しに向けての暫定的又は過渡的なものと理解し,立法府において更なる較差の是正を指向するものとして,このことを選挙区間における投票価値の不均衡の客観的状況に関わる要素と一体的に評に述べたようなその時点での結論を得ているところであり,
立法府の権能を尊重しつつその後の対応を注視する趣旨のものであることは,その判示自体から明らかであるというべきである。
以上に述べたところから見た場合には,平成30年改正法の内容につ
いては,平成27年改正法附則7条の定めにいう結論に相当するような抜本的な見直しに当たるものとは評価し難いとする原告らの指摘には耳を傾けるべきものがあると考えられる一方,1に見たような平成25年以来の平成27年改正法をめぐる一連の国会内外での議論の状況,平成27年改正後の定数配分規定下で施行された平成28年選挙に
ついて示された平成29年大法廷判決の判断を踏まえてのその後の同種の議論の状況等に照らすと,適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請に配慮し,それとの調和が保たれるように政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を要素として考慮しながら,参議院議員の選挙における議員定数の配分に当たり考慮を要する
固有の要素を踏まえつつ,二院制に係る各種の憲法の趣旨とも調和が保たれた参議院議員の選挙制度の新しい仕組みを実現することは,かねて想定されていたところとはいえ,やはり必ずしも容易ではないことがうかがわれる。
このような状況の中で,平成30年改正法は,合区の範囲等について
は平成27年改正法の内容を踏襲しつつその他の選挙区の議員の定数を改めるという方法によって,わずかではあるが,本件選挙当時の選挙区
間における投票価値の不均衡を平成28年選挙の施行の当時よりも縮小させる結果を実現させており,立法府において,平成24年大法廷判決以来の一連の大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図り,再び従前のような大きな較差を生じさせるようなことのないようにする配慮が継続されているということができる。また,参議院の委員会(参議院倫選特
委)における附帯決議によってではあるが,今後の参議院議員の選挙制度の改革につき引き続き検討を行うものとされており,更なる較差の是正に向けての立法府の決意もなお継続されているということができる。これらの事情を総合すると,本件選挙当時,平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問
題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないというべきである。
3
以上によれば,
本件定数配分規定に基づき施行された本件各選挙区にお
ける選挙を無効とすることはできない。
よって,
原告らの請求を棄却することとして,
主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部

裁判長裁判官

八木一洋
裁判官

柴﨑哲夫
裁判官

今井弘晃
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