判例検索β > 令和1年(行ケ)第10089号
審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟
事件番号令和1(行ケ)10089
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和元年11月26日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-11-26
情報公開日2019-12-10 16:03:46
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令和元年11月26日判決言渡
令和元年(行ケ)第10089号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和元年10月10日
判原決告有
訴訟代理人弁理士

木村満榊原靖竹中被限会デッ一庁キ宣告特
指定代理人

江塚尚弘小林裕和正田阿曾主許社長官毅裕樹文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1請求
特許庁が不服2019-508号事件について令和元年5月9日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1
特許庁における手続の経緯等
(1)

原告は,平成29年11月30日,意匠に係る物品を押出し食品用の口金とし,意匠の形態を別紙第1記載のとおりとする意匠(以下本願意匠という。)について,意匠登録出願(意願2017-26691号。以下本願という。)をした(甲5)。(2)

原告は,平成30年11月7日付けの拒絶査定(甲8)を受けたため,平
成31年1月16日,拒絶査定不服審判を請求した(甲9)。
特許庁は,上記請求を不服2019-508号事件として審理し,令和元年5月9日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同月21日,原告に送達された。(3)

原告は,
令和元年6月15日,
本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起

した。
2
本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。
その要旨は,
①本願意匠は,
意匠に係る物品を
押出し食品用の口金
とし,
本願の願書の添付図面の記載によれば,ハンディーマッシャー(押し潰し器)等に装着して使用され,略星形の抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものである,②本願意匠の形態は,本願の出願前に公然知られたと認められる意匠1(別紙第2参照)に見られるような角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を,薄い円形板に千鳥状の配置態様になるように19個形成して創作したにすぎないものであって,この創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるとはいえず,本願意匠は,当業者であれば,格別の障害も困難もなく容易に創作をすることができたものと認められる,③そうすると,本願意匠は,当業者が本願の出願前に日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に創作をすることができたもの(意匠法3条2項)に該当し,意匠登録を受けることができないから,本願は拒絶すべきものであるというものである。

第3当事者の主張
1
原告の主張
(1)

創作容易性の判断の誤りについて
本願意匠は,星形の抜き穴を1枚の無垢の円形板に複数個,均等に穿設する際に,円形板と,整列した抜き穴が構成する図形と,抜き穴のない周縁部分が,唯一無二の美感を与えるように,個々の抜き穴のサイズを決定し,抜き穴の数を19個とし,これを千鳥状に配置したものである。本願意匠は,抜き穴のうち外側に配置された抜き穴が形成する正六角形と,その外側の蒲鉾状の周縁部分及び円形板の円形の全てが,
円形板の中心点を中心として均等に整然と配置され,
落ち着きと,
併せてリズム感ないし安定性を表現している。
すなわち,下記の図1(星形の中心点を結んで六角形で描いた図)に示すように,円形板の円形の中に,六角形を成す抜き穴が配置された態様は,リズム感があり,全く新しい美しさである。また,図2(周縁にできる蒲鉾上の余白部分を示した図)に示すように,6個の蒲鉾状図形と,円形板の円形が醸し出す美しさは,全ての物品から理解できる美しさを凌駕する。
【図1】

【図2】

これにより,本願意匠は,独特の美感をもたらし,これまでにない美感を看者に与えるものであるから,本願意匠の創作には当業者の立場からみた着想の新しさないし独創性がある。
したがって,本願意匠は,本件審決が述べる本願の出願前に公然知られた形状の結合に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものとはいえないから,本件審決における本願意匠の創作容易性の判断には誤りがある。

これに対し被告は,本願意匠の余白部分に関し,略星形の抜き穴を形成することができない円形板の周縁に余白部分が生じることは当然であり,本願意匠の創作に意匠の着想の新しさないし独創性があるとはいえない旨主張する。
しかしながら,本願意匠において,抜き穴の配置態様は,基調を構成するものであるため,
看者の注意をひき,
意匠全体として見た場合,
抜き穴の形態及び向きにおける共通点に比して,差異の認定に及ぼす影響はより大きい。わけても円形板の周縁にどの程度余白を残すかは,円形板に19個の抜き穴を千鳥状に配置してなる本願意匠の美感を大きく左右する。そして,本願意匠では,余白が円形板の30%超であるところ,図2で示された抜き穴を,より円形板周縁に到るよう拡大し,余白部分を減少させることも可能であり,反対に,抜き穴をより縮小し,かつ抜き穴の数は変更せず,余白部分をより増加させることも可能である。これらの拡大又は縮小によって構成される意匠は,たとえ,抜き穴の数及び配置が同一であっても,配置のバランスが変化することにより,本願意匠とは別異の意匠となる。また,特許第3902681号公報(甲11)の明細書には,押出し食品用の口金が開示されているが,複数の円形の断面を有する開口が円形板の周縁部分にどの程度の余白を置いて配置するかについての記載がないことに照らすと,押出し食品用の口金について円形板の周縁にどの程度の余白を残すかは,周知であったとはいえない。
したがって,本願意匠において,図2に示すように円形板の周縁部分に余白を設け,
美感を生じさせることは,
独創性を有するものといえるから,
被告の上記主張は失当である。
(2)

小括
以上によれば,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新
しさないし独創性があるといえるから,本願意匠は,当業者であれば,格別の障害も困難もなく容易に創作をすることができたものであるとした本件審決の判断には誤りがある。
したがって,本件審決は取り消されるべきものである。
2
被告の主張
(1)

創作容易性の判断の誤りの主張に対し
本願意匠の形態は,薄い円形板に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を,各抜き穴の中心部を結んだ線のなす角度が60°となるような千鳥状の配置態様で19個形成したもの(別紙第1参照)である。
しかるところ,本願意匠に係る物品押出し食品用の口金の分野においては,薄い円形板に星形の抜き穴を形成した形態が本願の出願前に公然知られており(例えば,意匠1(別紙第2参照。乙1)及び意匠2(別紙第3参照。
乙2),抜き穴の配置態様を千鳥状に配して形成すること(例

えば,意匠3(別紙第4参照。乙3),乙4(別紙第5参照),乙5,6)も本願の出願前に広く知られていたことである。
また,押出し食品用の口金は,ハンディーマッシャー(押し潰し器)等に装着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものであり,その略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を設けた調理器具に装着して使用されるものであることに照らすと,この環状縁部に当接する口金の周縁部分に抜き穴を形成した場合,食品を断面視略星形の棒状に形成することができないから,
上記当接する口金の周縁部分を避けるため,
余白部分を設けることは,当業者であれば,当然想定することである。そして,本願意匠の円形板の直径と1つの略星形の抜き穴に外接する円形の直径の比率は,意匠2の同比率とほぼ同じ約12%であって,押出し食品用の口金の大きさとしては普通にみられるものであり,本願意匠の大きさの円形板に,その直径の約12%の普通の大きさといえる略星形の抜き穴を,押し出された食品同士が接触しないように一定の間隔をあけて,60°千鳥状に配置すれば,略星形の完全な形態をなす抜き穴の数は,自ずと19個となり,円形板周縁に略星形の抜き穴を形成できない余白部分が生じることも当然であるといえるから,円形板周縁に余白部分を設けた創作は特段困難なものではない。
さらに,抜き穴のない周縁の余白部分が,本願意匠のように,円形板の面積の約30%を占めるものは,ごく普通にみられるものにすぎない(例えば,乙8,9)。
以上によれば,本願意匠の形態は,抜き穴の形態を角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形とした点,
同一形態の抜き穴をその向きを揃え,
各抜き穴の中心部を結んだ線のなす角度が60°となるような千鳥状の配置態様で19個形成した点は,
円形板周縁に余白部分を設けたことも含め,
当業者であれば,その創作は容易になし得るものである。
そうすると,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるとはいえないから,
本願意匠は,
当業者であれば,
格別の障害も困難もなく容易に創作をすることができたものである。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

これに対し原告は,本願意匠は,抜き穴のうち外側に配置された抜き穴の中心点を結んだ線が形成する正六角形と,その外側の蒲鉾状の周縁部分及び円形板の円形の全てが,円形板の中心点を中心として均等に整然と配置され,落ち着きと,併せてリズム感ないし安定性を表現しており,これにより,本願意匠は,独特の美感をもたらし,これまでにない美感を看者に与えるものであるから,
本願意匠の創作には当業
者の立場からみた着想の新しさないし独創性があり,本願意匠は,本願の出願前に公然知られた形状の結合に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものとはいえない旨主張する。
しかしながら,
意匠法3条2項は,
公然知られたモチーフを基準として,
当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性を問題とする規定であって,美感の有無を問題とするものではないから,本願意匠がこれまでにない美感を看者に与えるものであることは,本願意匠が創作容易であるかどうかとは別個の問題である。
そして,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるといえないことは,前記アのとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。
(2)

小括
以上のとおり,本件審決における本願意匠の創作容易性の判断に誤りはな
いから,原告主張の取消事由は理由がない。
第4当裁判所の判断
1
本願意匠について
(1)

本願意匠は,意匠に係る物品を押出し食品用の口金とし,本願意匠の
形態は,別紙第1記載のとおりであり,薄い円形板に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を,同一の方向性に向きを揃え,各抜き穴の中心部を結んだ線のなす角度が60°となるような千鳥状(60°千鳥)の配置態様で19個形成したものである。(2)

本願の願書(甲5)の意匠に係る物品の説明欄には,

本願意匠は,主にステンレス製の薄板で作成する。食品に清潔感を表現する。

との記載がある。
本願意匠に係る押出し食品用の口金は,ハンディーマッシャー(押し潰し器)等に装着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものであり,略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を設けた上記調理器具に装着して使用されるものである(別紙第1記載の使用状態を示す参考図1及び使用状態を示す参考図2)。2
創作容易性の判断の誤りについて
(1)

本願の出願前に公然知られた形状等について
意匠1(乙1)
意匠1の意匠に係る物品は,インド菓子ムルックを作製する調理器具である
ムルックメーカー
(murukku

maker)
に装着し,

ムルックの食材を抜き穴から押し出して棒状に形成する際に使用する押出し食品用の口金板である(乙1)。意匠1は,別紙第2記載のとおり,薄い円形板の中心付近に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を1個形成したものであり,本願意匠の出願前に公然知られた形状であることが認められる。イ
意匠2(乙2)
意匠2の意匠に係る物品は,インド菓子ムルックを作製する調理器具であるムルックプレス(murukku

press)に装着し,

ムルックの食材を抜き穴から押し出して棒状に形成する際に使用する押出し食品用の口金板である(乙2)。意匠2は,別紙第3記載のとおり,薄い円形板の中心から略等距離の位置に,角部に面取りを施した6つの凸部からなる星形の抜き穴を,正三角形となる配置態様で3個形成したものであり,本願意匠の出願前に公然知られた形状であることが認められる。

意匠3(乙3)
意匠3の意匠に係る物品は,押出し食品用の調理器具としても使用できるステンレススチール製の
ポテトライサー(PotatoRicer)

に装着し,じゃがいも等の食品を抜き穴から押し出す際に使用する押出し食品用の口金板である(乙3)。意匠3は,別紙第4記載のとおり,薄い円形板の全面部分に,同一形状の長円形の抜き穴を,その長手方向の傾きの角度を揃えて,略千鳥状の配置態様で19個形成したものであり,本願意匠の出願前に公然知られた形状であることが認められる。

乙4等
(ア)

乙4

(https://以下省略のインターネット・アーカイブ誰でもわかるパンチングメタル)乙4には,パンチングメタルとは,

パンチング加工(孔あけ)が施された板状やシート状の金属材料です。,

パンチング加工とは,
パンチとダイと呼ばれる金型を使って板状やシート状の材料を打ち抜く加工方法のことです。…さらに,配列や孔の形状・大きさを工夫することでデザイン性を持たせることができ,装飾用パネルとしてもご使用いただけます。,これだけは知っておきたいパンチングメタル3つの基礎知識の2.孔の配列についてとして,孔の配列では,千鳥(ちどり)と呼ばれる互い違いに孔が開いたものがよく用いられます。孔の位置関係により,60°千鳥(ろくじゅうどちどり)や45°千鳥(よんじゅうごどちどり)などと呼ばれます。このほかに,並列に並んだものがポピュラーです。との記載がある。また,乙4には,別紙第5記載のとおり,10個の丸孔が60°千鳥で配列された図が示されている。
(イ)

乙5

(https://以下省略のインターネット・アーカイブ)
乙5には,8個の丸孔が60°千鳥で配列されたパンチング配列パターンが示されている。(ウ)

乙6

(https://以下省略のインターネット・アーカイブ)
乙6には,丸孔の千鳥抜60°の項目に孔は正三角形の頂点に開けられており,孔の中心を結ぶ線の角度が60°で配列されています。千鳥抜きは配列が整然と美しくインテリア分野に最適で,また濾過・飾用としても多く使用されてます。パンチングメタルのほとんどがこの型です。との記載がある。また,乙6には,14個の丸孔が60°千鳥で配列された千鳥抜60°の図が示されている。(エ)

まとめ
前記(ア)ないし(ウ)及び前記ウを総合すれば,本願の出願当時(出願
日平成29年11月30日),①板状の金属材料にデザイン性を持たせるため,
60°千鳥の配置態様で,
複数個の
抜き孔
を設けることは,
ごく普通に行われていたことであり,当業者にとってありふれた手法であったこと,②19個の抜き穴を千鳥状に配置する形状は,公然知られていたこと(例えば,意匠3)が認められる。
(2)

検討
意匠法3条2項は,物品との関係を離れた抽象的モチーフとして意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準として,当業者が容易に創作をすることができる意匠でないことを登録要件としたものであることに照らすと,意匠登録出願に係る意匠について,上記モチーフを基準として,その創作に当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるものと認められない場合には,当業者が容易に創作をすることができた意匠に当たるものとして,同項の規定により意匠登録を受けることができないものと解するのが相当である(最高裁昭和45年(行ツ)第45号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁,最高裁昭和48年(行ツ)第82号同50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参照)。
これを本願意匠についてみるに,前記1認定のとおり,本願意匠は,薄い円形板に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を,同一の方向性に向きを揃え,各抜き穴の中心部を結んだ線のなす角度が60°となるような千鳥状(60°千鳥)の配置態様で19個形成した押出し食品用の口金の意匠であり,また,本願意匠に係る押出し食品用の口金は,主にステンレス製の薄板で作成され,ハンディーマッシャー(押し潰し器)等に装着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものであり,略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を設けた上記調理器具に装着して使用されるものである。
しかるところ,
前記(1)ア及びイの認定事実によれば,
本願意匠に係る
押出し食品用の口金板の物品分野においては,抜き穴から食品を棒状に押し出す調理器具に使用される金属製の円形板の口金板に設けられた,角部に面取りを施した5つ又は6つの凸部からなる星形の抜き穴の形状は,本願の出願当時,公然知られていたことが認められる。
加えて,
前記(1)エ(エ)認定のとおり,
板状の金属材料にデザイン性を持
たせるため,60°千鳥の配置態様で,複数個の抜き孔を設けることは,本願の出願当時,ごく普通に行われていたことであり,当業者にとってありふれた手法であったこと,19個の抜き穴を千鳥状に配置する形状は公然知られていたこと(例えば,意匠3)に照らすと,本願意匠は,本願の出願当時,円形板の抜き穴の形状として公然知られていた角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴(例えば,意匠1)を,当業者にとってありふれた手法により,薄い円形板に,同一の方向性に向きを揃えて,60°千鳥の配置態様で19個形成して創作したにすぎないものといえるから,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるものとは認められない。
したがって,本願意匠は,本願の出願前に公然知られた形状の結合に基づいて,当業者が容易に創作をすることができたものと認められる。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

これに対し原告は,本願意匠は,星形の抜き穴を1枚の無垢の円形板に複数個,均等に穿設する際に,円形板と,整列した抜き穴が構成する図形と,
抜き穴のない周縁部分が,
唯一無二の美感を与えるように,
個々の抜き穴のサイズを決定し,抜き穴の数を19個とし,これを千鳥状に配置したものであり,本願意匠は,抜き穴のうち外側に配置された抜き穴が形成する正六角形と,その外側の蒲鉾状の周縁部分及び円形板の円形の全てが,円形板の中心点を中心として均等に整然と配置され,落ち着きと,併せてリズム感ないし安定性を表現している,これにより,本願意匠は,独特の美感をもたらし,これまでにない美感を看者に与えるものであるから,本願意匠の創作には当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性があるとして,本願意匠は,本願の出願前に公然知られた形状の結合に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記ア認定のとおり,本願意匠は,本願の出願当時,円形板の抜き穴の形状として公然知られていた角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴(例えば,意匠1)を,当業者にとってありふれた手法により,薄い円形板に,同一の方向性に向きを揃えて,60°千鳥の配置態様で19個形成して創作したにすぎないものである。
そして,前記1(2)認定のとおり,本願意匠に係る物品押出し食品用の口金は,略円筒形状の底面部内周部分に環状縁部を設けた調理器具に装着して使用され,抜き穴から食品を棒状に押し出すことができるものであることに照らすと,調理器具の環状縁部と当接する口金の周縁部分に抜き穴を形成することができない余白部分が生じ得ることは,
当業者であれば,
当然想定するものといえる。また,円形板の口金に,角部に面取りを施した5つの凸部からなる星形の抜き穴を,同一の方向性に向きを揃えて,60°千鳥の配置態様で19個配置する場合には,円形板の直径と円形板に配置する星形の抜き穴に外接する円形の直径の比率,抜き穴と抜き穴の中心間隔(ピッチ)等に応じて,口金の周縁部分の余白部分の大きさは一定の範囲内のものに収まること,円形板の中心に星形の抜き穴を配置し,これを中心点として19個の星形の抜き穴を60°千鳥に配置した場合,外側に配置された星形の抜き穴の周縁部側の凸部先端をそれぞれ直線で結んだ図形は正六角形となり,この図形と円形板の外周とで形成される余白部分が蒲鉾状となることは自明であることに照らすと,別紙第1記載の本願意匠の余白部分の形状の創作に着想の新しさないし独創性は認められない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3
結論
以上によれば,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

古河謙一
裁判官

岡山忠広
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