判例検索β > 平成30年(ネ)第10085号
特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ネ)10085
事件名特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日令和元年10月8日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号平成29(ワ)24174
裁判日:西暦2019-10-08
情報公開日2019-12-03 10:00:24
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令和元年10月8日判決言渡
平成30年(ネ)第10085号

特許権侵害差止請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第24174号)
口頭弁論終結日

令和元年7月18日
判控訴決人
株式会社外為オンライン

訴訟代理人弁護士

設樂関隆裕一治朗伊藤雅浩溝田宗司
補佐人弁理士

小曳満昭被
株式会社マネースクエアHD

控訴人
訴訟代理人弁護士

伊藤平井佑希丸田憲和牧野知彦
訴訟代理人弁理士

石井明夫
補佐人弁理士

佐野主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
真弘
第1控訴の趣旨
1
原判決を取り消す。

2
被控訴人の請求を棄却する。

第2事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。)1
事案の要旨
本件は,
発明の名称を
金融商品取引管理装置,金融商品取引管理システム,金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法とする特許(特許第6154978号。
請求項の数12。以下,この特許を本件特許といい,
本件特許に係る特許権を本件特許権という。)の特許権者である被控訴人が,原判決別紙2被告サービス目録記載の外国為替取引管理サービス(以下被告サービスという。)に使用されているサーバ(以下被告サーバという。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下本件発明という。)の技術的範囲に属し,控訴人による被告サーバの使用が本件特許権の侵害に当たる旨主張して,
控訴人に対し,
特許法100条1項に基づき,
被告サーバの使用の差止めを求める事案である。
原判決は,被控訴人の請求を認容したため,控訴人が,原判決を不服として本件控訴を提起した。

2
前提事実
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決2頁5行目から3頁4行目までを次のとおり改める。

ア被控訴人は,平成26年5月1日にした特許出願(特願2014-94833号。優先日同年4月3日(以下「本件優先日

という。))の一部を分割して出願した特許出願(特願2015-75797号)の一部を更に分割して出願した特許出願(特願2015-222090号)を分割して,平成29年4月4日,発明の名称を金融商品取引管理装置,金融商品取引管理システム,金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法とする発明について特許出願(特願2017-74472号。以下本件出願という。)をし,同年6月9日,本件特許権の設定登録を受けた(甲3の1,2,甲11)。

本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。【請求項1】
相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と,
前記買い注文の約定によって保有したポジションを,約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段と
を有する注文情報生成手段と,
前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え,
前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は,それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり,
前記注文情報生成手段は,前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成し,
前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,
前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特徴とする金融商品取引管理装置。」
(2)

原判決4頁6行目の処理のから7行目末尾までを「別紙注文履歴明細(乙10)は,分単位で表示した原判決別表(甲6。以下,単に別表という。)記載の注文日時及び約定日時を秒単位で表示したものである(甲6,乙10,弁論の全趣旨)。」と改める。
(3)

原判決4頁17行目の低いレートを指定するものを低いレートを指定し,そのレート以下になった時点で注文が成立するものと,同頁18行目の高いレートを指定するものを高いレートを指定し,そのレート以上になった時点で注文が成立するものと改める。3
争点
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第2の3記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決5頁5行目末尾に行を改めてエ均等論(争点1-4)(当審における被控訴人の追加主張)を加える。(2)

原判決5頁6行目を(2)(3)原判決5頁10行目を「(3)無効の抗弁の成否(争点2)と改める。先使用権の成否(争点3)」と改める。

第3争点に関する当事者の主張
1
争点1(被告サーバは本件発明の技術的範囲に属するか)
(1)

争点1-1(被告サーバは構成要件BないしHの注文情報を充足する
か)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第3の1(1)記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決5頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
本件発明の構成要件Bは,買い注文情報について「金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報と規定し,構成要件Cは売り注文情報について買い注文の約定によって保有したポジションを,約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報と規定している。これらの規定から,本件発明の注文情報は,買い注文又は売り注文を行うための情報であるといえる。また,」

原判決5頁22行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
そして,被告サービスでは,別表のとおり,買いの成行注文(クイックトレード)と,二つの決済注文である売り注文(指値注文及び逆指値注文)を同時に行い,一方の売り注文が約定すると他方の売り注文は取り消される注文(OCO注文)とを組み合わせた「クイック+OCO注文を行っている。(省略)これは,まさに成行の買い注文と指値の売り注文の組合せからなるクイック+OCO注文を行うための情報そのものであるから,本件発明の注文情報に該当する。このような買い注文又は売り注文を行うための情報である注文情報は,具体的な注文
(省略)を行う前に,遅くともthis自身が持つデータの(省
略)を行う時点で既に生成されていることは,甲8の別紙から明らかである。後記の控訴人の主張は,注文情報と注文とを混同するも
のであって,失当である。」


原判決6頁19行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
ウ前述のとおり,本件発明の「注文情報は,一定の形式で整理されたデータの集まりであるところの情報の集合であって,個々の注文の内容を規定する情報そのものではない。
そして,本件明細書には,注文情報を構成する個々の情報が各
種チェックを経て,適正なものである場合にだけシーケンス番号
(注文番号)で紐づけられて,はじめて注文情報となって,生成
されることが記載されている(【0032】,【0037】,【0050】,【0051】,図2等)。
他方,被控訴人が主張する(省略)といった個々の情報は,本件発明の注文情報に該当しない。」
(2)

争点1-2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
以下のとおり,当審における当事者の主張を付加するほか,原判決事実及び理由の第3の1(2)記載のとおりであるから,これを引用する。【当審における控訴人の主張】

原判決は,①本件発明の構成要件Hは,その文言上,複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文1個が約定したときに複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報1個が生成される構成を含むと解するのが相当であるとした上で,
被告サーバは,
約定検知手段が,
例えば,
番号113,110,107,104の売りの指値注文のような複数の売り注文のうち,指定価格を114.90円とする最も高い売り注文価格の番号113の売り注文が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段は,この検知の情報を受けて,指定価格を番号113の指定価格114.90円より0.62円高い115.52円とし,これを含む売り注文情報である番号96の新たな売りの指値注文を生成するものであるから,構成要件Hを充足する,②別表では,番号89の買いの成行注文の注文及び約定日時を平成26年11月7日午後10時29分とし,番号85の売りの指値注文の注文日時を同日午後10時30分として記録されており,番号89の買いの成行注文の注文時刻及び約定時刻と番号85の売り注文の注文時刻が1分ずれているが,これは,複数の注文情報を生成し,記録する処理に相応の時間を要していたことによるものとみるのが自然であり,買いの成行注文に係る注文情報だけが別の機会に生成されたことを示すものとはいえないとした上で,被告サーバでは,新たな売り注文に係る注文情報は買いの成行注文に係る注文情報と同じ機会に生成されているものの,これらは一体的なものとみることができるから,複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定が検知されたことを受けて,新たな売り注文に係る注文情報を生成するものであり,構成要件Hを充足する旨判断したが,以下のとおり,原判決の判断は誤りである。
(ア)

①本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,構成要
件Hの前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとは,直前の検知の情報を条件として,これに続いて,前記の売り注文が発生するという意味であって,これらの間に他の処理が介在する記載はないこと,②本件明細書には,従前の新規注文B1ないしB5及び従前の決済注文S1ないしS5が全部約定したことを検知し,この検知の情報を受けて,新たな新規注文B1ないしB5及び新たな決済注文S1ないしS5を一括発注するものであり(【0142】ないし【0154】,図35),前記検知の情報を受けて(構成要件H)と,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する(構成要件H)
との間に,
他の手続が介在するもの,例えば,新たな新規注文B1ないしB5と新たな決済注文S1ないしS5とを新規に一括発注せずに,まずは新たな新規注文B1ないしB5を発注し,その約定を検知してから,新たな決済注文S1ないしS5を発注するようなものについての開示はないこと,③本件出願の経過において,被控訴人は,拒絶理由通知(乙18)を受けて,平成29年5月18日付け手続補正書(以下本件手続補正書という。乙14)及び同日付け意見書(以下本件意見書という。乙15)を提出して,本件出願に係る旧請求項1に構成要件EないしGを新たに加え,構成要件Hを補正する手続補正を行うとともに,本件意見書において,システムにおいては,特定の注文に係る注文情報(相場の移動方向側である,最も高い買い注文価格の買い注文に係る買い注文情報…)の約定状況のみを監視すれば,新たな注文情報の生成(一の注文手続で生成された中で最も高い売り注文価格よりも高い売り注文価格の売り注文情報の生成…)を,ただちに生成することができ,システムの情報保持や情報監視のための負担が大きくなることはありません。これにより,本願発明においては,新たな注文情報の生成や,その注文情報に基づく注文の発注等の処理を,システム負荷の軽い,簡易な手順によって処理することができるという効果を奏します。と述べて,シフトが生じるための条件として,最も高い売り注文の約定状況のみを監視することとし,それ以外の処理を監視することを除外する旨を主張したことを総合すると,
本件発明の構成要件Hの
前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することにいう前記検知の情報を受けてとは,前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,他の処理を何も介在せずに,直ちに前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを意味するものと解すべきである。
(イ)

しかるところ,別紙注文履歴明細のとおり,被告サービスでは,ま
ず,買いの成行注文が行われ(番号114,97,89,69,63,42及び30。執行条件の欄クイックトレート),これが約定
した後に,売りの指値注文(番号113,96,85,68,62,41及び29)及び売りの逆指値注文(番号112,95,84,67,61,40及び28)が同じ注文日時に行われており,売りの指値注文及び売りの逆指値注文が行われるのは,買いの成行注文及びその約定よりも常に後である。
例えば,被告サービスでは,被告サーバが相場価格が上昇して番号113の売りの指値注文(指定価格114.90円)が約定したこと及び
相場価格が上昇して番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)が約定したことをそれぞれ検知すると,番号97の買いの成行注文及び番号89の買いの成行注文だけをそれぞれ行い,これらがそれぞれ約定して,はじめて,番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)及び番号95の売りの逆指値注文(指定価格112.42円)並びに番号85の売りの指値注文(指定価格116.14円)及び番号84の売りの逆指値注文(指定価格113.04円)をそれぞれ行うのであるから,買いの成行注文が約定し,この約定検知の情報を受けない限り,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成しない。以上のとおり,被告サーバでは,前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,他の処理を何も介在せずに,直ちに前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものではなく,構成要件Hの前記検知の情報を受けての構成を備えているといえないから,構成要件Hを充足しない。
これと異なる原判決の判断は誤りである。

この点に関し被控訴人は,本件発明の構成要件Hの前記検知の情報を受けてとは,検知の情報を契機としてと解すべきであり,被告サーバでは,
クイック実行決済OCOの実行
から
までの一連の処理は,
いずれも最も高い売り注文価格の売り注文の約定の検知の情報を受けて(検知の情報を契機として)行われているのであるから,被告サーバは,構成要件Hを充足する旨主張する。
しかしながら,被控訴人の上記主張は,前記ア(ア)①ないし③の本件明細書の記載,本件意見書の記載等に反するものであって,理由がない。【当審における被控訴人の主張】

控訴人は,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載,本件明細書の記載(【0142】ないし【0154】,図35),被控訴人が本件出願の過程で提出した本件意見書の記載を総合すると,本件発明の構成要件Hの前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することにいう前記検知の情報を受けてとは,前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,他の処理を何も介在せずに,直ちに前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを意味するものと解すべきである旨主張する。
しかしながら,本件発明の構成要件Hには,その文言上,他の処理を何も介在せずにとか直ちにとの記載はない。次に,本件明細書の【0078】には,シフト機能について,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態との記載があり,構成要件Hの前記検知の情報を受けての文言は,本件明細書の上記記載に対応する関係を規定したものである。本件明細書の上記記載は,
新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定した
のちにシフトが行われることを規定するものであるから,シフト後の注文を行うための注文情報は,
時間的に見て,
1つ前の決済注文が約定した
のちに
生成されていれば足りるというべきである。
また,
本件明細書の
【0
149】に,

なお,シフト機能による処理は,上述の処理手順以外のいかなる方法によって行われてもよい。

と明記されているとおり,シフト機能による処理は,控訴人が根拠として挙げる本件明細書記載の実施例の処理方法に限定されるものではない。そうすると,仮に決済注文の約定と新たな注文情報の生成との間に,他の何らかの処理が介在していたとしても,
新たな注文情報が時間的に見て1つ前の決済注文が約定した
のちに
生成されていれば,構成要件Hの前記検知の情報を受けての構成を充足するというべきである。
さらに,被控訴人は,本件意見書において,拒絶理由通知(乙18)で指摘された甲12や甲13に開示された発明とは異なり,複数の買い注文や複数の売り注文が行われる本件発明において,最も高い価格の売り注文の約定を基準にシフトが実行されるということを述べたものであり,ここでのみとかただちにと述べたのは,本件発明においては,複数の
売り注文の全てを監視する必要がなく,そのうちの最も高い売り注文価格の売り注文だけを監視してシフトを行えばよいという意味であり,複数の売り注文との関係において,最も高い売り注文のみを監視すればただちにシフトが生じるということを述べたに過ぎない。1つ前の売り注文(最も高い価格の売り注文)の約定とシフト後の売り注文との間に他の処理が介在するか否かを論じたものでもなければ,他の処理が介在する構成を本件発明の技術的範囲から意識的に除外したものでもない。
以上によれば,構成要件Hは,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,,すなわち,前記約定検知手段の前記検知の情報を契機としてさらに高い売り注文価格を含む売り注文情報を生成すると規定したものと解すべきであるから,控訴人の上記主張は理由がない。

被告サーバでは,別紙注文履歴明細のとおり,複数の売り注文である番号113,110,107,104の売り注文のうち,最も高い注文価格の売り注文である番号113の売り注文(指定価格114.90円)が約定すると,その約定から2秒後に,番号113の売り注文よりも所定価格だけ高い売り注文価格の番号96の売り注文(指定価格115.52円)が行われ,その売り注文情報が生成されており,被告サーバは,最も高い売り注文の約定の検知の情報を受けて(検知の情報を契機として),さらに高い売り注文価格を含む売り注文情報を生成しているから,構成要件Hを充足する。番号113の売り注文と番号96の売り注文の生成の間に,番号97の成行の買い注文と約定が介在していることは,構成要件Hの充足性に影響を及ぼすものではない。
したがって,被告サーバが構成要件Hを充足するとした原判決の判断に誤りはない。

(3)

争点1-3(被告サーバは構成要件Gを充足するか)
原判決事実及び理由の第3の1(3)記載のとおりであるから,これを引
用する。
(4)

争点1-4(均等論)(当審における被控訴人の主張)

【被控訴人の主張】

仮に本件発明の構成要件Hの
前記検知の情報を受けて
の構成が,
前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,他の処理を何も介在せずに,直ちに前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを意味するものと解した場合には,
被告サーバは,
最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,その検知の情報を受けて,成行の買い注文の発注と約定を行い,その検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する点で本件発明と相違することとなるが,以下のとおり,被告サーバは,均等の第1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する。
(ア)

第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)について
本件明細書の【0018】の記載によれば,本件発明は,相場価格が
変動した場合(例えば,高値側に変動した場合)に,その変動方向に追従して注文情報を生成することを特徴とするものであり,ある価格帯において複数の買い注文と売り注文を行いつつ,そのうちの最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこと(つまりそこまで相場価格が上昇していることを意味する)を契機として,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することとした点が,従来技術に見られない,本件発明の特有の技術的思想であり,本質的部分である。
一方,買いの成行注文とは時価で買う注文という性質上,注
文が行われれば,よほどの特段の事情でもない限り,即時に約定することが定まっている注文であり,成行の買い注文の発注と約定は,一つ前の
クイック+OCO注文
を構成する指値の売り注文の約定と同時に,
必ず行われるものであって,別の条件が付加されていると評価し得るようなものではない。
したがって,被告サーバは,本件発明の本質的部分を実現し得るものであり,
被告サーバと本件発明との上記相違部分は本件発明の本質的部
分ではないから,被告サーバは,第1要件を充足する。
(イ)

第2要件(置換可能性)について
現実の取引においては,最も高い売り注文価格の売り注文である
指値の売り注文が約定すれば,それと同時に,即時に約定することが性質上定まっている成行の買い注文を発注し,
それが発注と同時に約定し,
さらに指値の売り注文が行われるのであるから,構成要件Hの相違部分に係る本件発明の構成を被告サーバの構成と置き換えたとしても,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを契機として,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するという本件発明と同一の作用効果を奏する。
したがって,被告サーバは,第2要件を充足する。
(ウ)

第3要件(置換容易性)について
成行注文は注文発注時点の相場価格で取引を行う注文形態であり,指
値注文は相場価格が予め指定された価格になった時点で取引を行う注文形態であることが一般に知られている上,本件明細書には,注文を成行注文で行うことが明示的に開示されていること(【0028】,【0057】)からすると,当業者であれば,構成要件Hの相違部分に係る本件発明の構成を被告サーバの構成と置き換えることは,容易に想到することができたものである。
したがって,被告サーバは,第3要件を充足する。
(エ)

第5要件(意識的除外等の特段の事情)について
前述のとおり,被控訴人は,本件意見書において,1つ前の売り注文
(最も高い価格の売り注文)の約定とシフト後の売り注文との間に他の処理が介在するか否かを論じたものでもなければ,他の処理が介在する構成を本件発明の技術的範囲から意識的に除外したものでもない。イ
以上によれば,被告サーバは,均等の第1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する。
【控訴人の主張】

被告サーバは,均等の第1要件ないし第3要件を充足せず,一方で,第5要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものということはできない。
(ア)

第1要件(相違部分が本質的部分でないこと)について
本件発明の従来技術に対する技術的特徴は,構成要件AないしGの構
成を具備するものにおいて,構成要件Hの最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,この検知の情報を受けて他の処理を介在することなく,複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することにあり,この点が本件発明の本質的部分に該当する。
被告サービスでは,取引に参加していないことによる機会損失をなくすため,取引に常に参加している状態(金融商品を常に保有している状態)を作り出すことを目的とするものであり,この状態を作り出すことが可能な取引としては,相場価格の時価で売買する成行注文しか存在しない。そのため,被告サービスでは,金融商品を保有していない状態を検知すると,相場価格の時価で(買いの)成行注文を行うので,取引に常に参加している状態(金融商品を常に保有している状態)を作り出すことができるというメリットがある一方,指定した価格で売買するのではなく,相場価格の時価で売買するので,予想外の価格で売買してしまうというデメリットがある。これに対し,本件発明は,常に指定した価格に基づいて売買するので,全く予想外の価格で売買してしまうことがないというメリットがある一方,相場価格が指定した価格にならなければ,売買をすることができない結果,いつまで経っても取引に参加することができないので,機会損失が発生するというデメリットがある。このように被告サービスと本件発明は,それぞれ互いに相いれない技術思想に基づいたものであり,そのことは,最も高い売り注文が約定されたことを検知し,この検知の情報を受けて,その後になされる買い注文情報と売り注文情報の生成のステップが異なる点に表れている。
すなわち,本件発明は,前記検知の情報を受けて,その次に最も高い売り注文情報よりもさらに高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものであるのに対し,被告サービスでは,前記検知の情報を受けて,その次に,成行の買い注文の注文情報を生成し,その成行の買い注文の約定の検知を受けて,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものである。このように売り注文情報の生成のステップが異なることは,本件発明の本質的部分における相違点と考えるほかない。
したがって,被告サーバは,第1要件を充足しない。
(イ)

第2要件(置換可能性)について
前述のとおり,本件発明と被告サービスは,最も高い売り注文が約定されたことを検知し,この検知の情報を受けて,その後になされる買い注文情報と売り注文情報の生成のステップが異なるから,構成要件Hの相違部分に係る本件発明の構成を被告サーバの構成と置き換えたとしても,本件発明と同一の作用効果を奏するものとはいえない。したがって,被告サーバは,第2要件を充足しない。
(ウ)

第3要件(置換容易性)について
前述のとおり,被告サーバと本件発明とは,技術思想上の差異がある
から,構成要件Hの相違部分に係る本件発明の構成を被告サーバの構成と置き換えることは,容易に想到することができたものとはいえない。したがって,被告サーバは,第3要件を充足しない。
(エ)

第5要件(意識的除外等の特段の事情)について
被控訴人は,拒絶理由通知の指摘に対し,本件手続補正書による旧請
求項1の補正によって,以前の注文価格よりも高い価格の注文情報の生成タイミングをどのように設定するかに関し,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると直ちにという意味で,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けてというタイミングであると限定し,本件意見書において,この限定によって,本件発明では,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知することによって,直ちに新たな買い注文情報を生成するのみならず,これと同時に新たな売り注文情報を生成することによって,新たな売り注文情報を新たな買い注文情報と一括して生成することができるようになったので,新たな売り注文情報の生成に当たって,新たな買い注文情報に基づく買い注文の約定等を検知する必要がなくなり,ひいては,システムに対する負荷の軽減を実現したという格別な作用効果を奏することを意見陳述したのであるから,これ以外の以前の注文価格よりも高い価格の注文情報の生成タイミングを意識的に除外して,本件発明の特許査定を受けたことが明らかである。
したがって,構成要件Hの相違部分に係る被告サーバの構成は,本件発明の技術的範囲から意識的に除外されたものである。

小括
以上のとおり,被告サーバは,均等の第1要件ないし第3要件を充足せず,一方で,第5要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成と均等なものということはできず,本件発明の技術的範囲に属するものとはいえない。

2
争点2(無効の抗弁の成否)
(1)

争点2-1(本件特許は特許法36条6項1号に違反しているか)以下のとおり当審における当事者の主張を付加するほか,原判決事実及び理由の第3の2(1)記載のとおりであるから,これを引用する。【当審における控訴人の主張】
原判決は,①本件明細書記載のシフト機能の定義に照らすと,新たな注文の発注は先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にされるものであるから,【0149】にあるように,複数の決済注文の価格帯を変動させる構成のみならず,特定の決済注文の価格を変動させる構成も含まれると認識することができ,また,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注されるものであるから,売り注文が約定した後に異なる売り注文価格の売り注文を発注する構成が含まれていると認識することができる,②そうすると,複数の売り注文情報のうち最も高い売り注文価格の売り注文が約定すると,それよりも所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するという構成要件Hに係る構成は,本件明細書の発明の詳細な説明におけるシフト機能に関する上記各説明によって認識することができ,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができるとして,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載が特許法36条6項1号に適合しないとはいえない旨判断した。
しかしながら,本件明細書の【0149】に記載されているのは,あくまで複数の決済注文の価格を一括で変動させる構成であるので,これに接した当業者といえども,特定の決済注文の価格を変動させる構成も含まれると認識することは,不可能である。また,本件発明では,少なくとも等間隔に配置された複数の売りの指値注文を一体的に取り扱うことに特徴があるのであって(構成要件F),本件明細書の【0145】の記載に照らしても,シフト機能に関し,複数の売りの指値注文を構成する個々の売りの指値注文を個別的にバラバラに取り扱うことがないことが明らかである。
さらに,本件明細書には,シフト機能がいったんスルー注文及び
決済トレール注文と分離して理解できることについての記載はない。仮にこれらを分離して理解したとしても,本件明細書には,複数の新規注文及び複数の決済注文のイフダンオーダーにシフト機能が適用されたものに関し,複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全てがそれぞれ1回ずつ約定した場合に複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全てに対応する個数の新たな複数の新規注文及び新たな複数の決済注文を発注させることしか記載されていないことからすれば,
本件明細書の記載から,
シフト機能
に特定の決済注文の価格を変動させる構成も含まれると認識することも,売り注文が約定した後に異なる売り注文価格の売り注文を発注する構成が含まれていると認識することもできない。
したがって,原判決の上記判断は誤りである。
【当審における被控訴人の主張】
本件明細書の【0078】において,シフト機能が新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態と定義されているとおり,本件明細書記載のシフト機能には,ある1組の買い注文と売り注文が約定した際にシフトが生じる構成も含まれていることは,当業者において当然に理解できる。
また,【0078】には,発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせることも明記されているから,複数のイフダンオーダーを仕掛ける価格帯をシフトする構成だけではなく,特定の注文の価格をシフトする構成も,シフト機能に含まれることも,当業者は当然に理解できる。
したがって,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は特許法36条6項1号に適合するから,これと同旨の原判決の判断に誤りはない。(2)

争点2-2(分割要件違反により本件発明は新規性を欠くか)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第3の2(2)記載の
とおりであるから,これを引用する。

原判決11頁5行目の原出願を原出願(特願2015-22209号)と,同頁7行目の本件原出願日を

本件特許の原々々出願(特願2014-94833号)の出願日(平成26年5月1日。以下「本件原出願日

という。)」と改める。

(3)

原判決11頁14行目の明細書等の後に(乙2の2)を加える。
争点2-3(本件発明は進歩性を欠くか)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第3の2(3)記載の
とおりであるから,これを引用する。

原判決11頁20行目の本件発明は,の次に本件優先日前に頒布された刊行物である,を加える。

原判決18頁3行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

オ乙5発明を主引用例とする進歩性欠如乙5発明は,原判決認定のとおりであり(原判決70頁12行目~71頁4行目),乙4発明と実質的に同一の発明である。本件発明と乙5発明との相違点(以下「相違点5-1

という。)は,原判決認定の本件発明と乙4発明との一致点及び相違点(相違点4-1)と同じである(原判決66頁6行目~67頁2行目)。
前記エで述べたのと同様に,乙5発明に乙3発明を適用する動機付けがあるから,当業者は,乙5発明において,相違点5-1に係る本件発明の構成とすることを容易に想到することができたものである。したがって,本件発明は進歩性を欠如する。」

原判決20頁末行に行を改めて次のとおり加える。

オ乙5発明を主引用例とする進歩性欠如控訴人の主張は争う。その理由は,前記エにおいて,乙4発明について述べたのと同様である。


3
争点3(先使用権の成否)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)

原判決21頁7行目の本件出願日を本件優先日と,同頁9行目か

ら10行目にかけての先使用に基づく通常実施権(特許法79条)を特許法79条の先使用による通常実施権(以下「先使用権という。)」と改める。
(2)

原判決21頁14行目から15行目にかけての先使用に基づく通常実施権(特許法79条)を先使用権と改める。第4当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1
本件発明について
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の1記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決29頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

「【0132】その後,図30に示すように,相場価格64が上昇から下落に転じ,1ドル=100.60円未満になると,約定情報生成部14は,決済注文S4,S5を約定させる処理を行う。これにより,(新規注文情報18114,18115に基づく)新規注文B4,B5と,(決済注文情報18119,18120に基づく)決済注文S4,S5によるイフダン注文の取引がそれぞれ成立する。これにより,注文情報生成部16は,元の新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5と同じ,新たな新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5を生成する。図30においては,新たに生成され,発注される予定の新規注文B4,B5を示している。なお,新たに生成された新規注文B4,B5や決済注文S4,S5に基づいて,元の新規注文B4,B5や決済注文S4,S5と同様の発注や約定が繰り返し行われることとなる。【0135】この実施の形態2においては,複数の新規注文情報18111,18112,18113,18114,18115に基づく複数の新規注文や,複数の決済注文情報18116,18117,18118,18119,18120に基づく複数の決済注文をそれぞれ異なる価格において発注することにより,注文を複数の価格に分散させることができ,これにより,特定の価格に集中して注文が発注されたのちに相場が想定外の変動をすること等により発生するリスクを軽減させることができる。」(2)

原判決29頁17行目から20行目までを次のとおり改める。

「【0138】この実施の形態3の金融商品取引管理システムにおいては,「いったんスルー注文と決済トレール注文とを,らくトラによる注文と組み合わせ,さらにシフト機能を行わせる状態を示す。このらくトラによる注文とは,顧客の入力等に基づいて上限価格と下限価格を設定し,この上限価格と下限価格との間に,複数の第一注文,及び/又は,複数の第二注文を設定する注文形態をいう。」

【0142】この実施の形態3においては,図25~図33に示す処理と同様の処理が行われ,複数の新規注文と複数の決済注文とにより,実施の形態2の場合と同じ取引が行われる。

」(3)

原判決32頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。

「【0164】上記各実施の形態は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは,いうまでもない。

」(4)

原判決32頁15行目から33頁14行目までを次のとおり改める。
(2)本件発明に関する開示事項前記(1)の記載によれば,本件明細書には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。ア外国為替等の金融商品の取引方法として,従来,指値注文による取引を,コンピュータシステムを用いて行う発明が知られているが【0(002】),発注される注文情報の価格は一定であるため,人手によって行う取引であれば得る可能性のある利益が得られなくなるという問題もあった(【0004】)。「本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり,コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において,多くの利益を得る機会を提供できる金融商品取引管理装置を提供することを目的としている(【0005】)。


本発明は,かかる課題を解決するため,金融商品の買い注文を
行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成部と,買い注文の約定によって保有したポジションを,約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成部とを有する注文情報生成部を備え,複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定すると,注文情報生成部は,複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに高い売り注文価格の売り注文情報を生成するという構成を採用したものであり,これによって,相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行うことができるので,コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において,多くの利益を得る機会を提供できるという作用効果を奏する(【0006】,【0018】)。」
2
被告サーバについて
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決33頁25行目,34頁2行目及び4行目の各同時にをいずれ
も削除する。
(2)

原判決34頁9行目の行うのと同時にを行うとともにと改め,同

頁15行目から19行目までを次のとおり改める。
イ甲6(弁理士佐野弘及び同石井明夫作成の平成28年7月18日付け報告書)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人のウェブサイト(https://trade7.gaitameonline.com/)上で,被告サービスの「iサイクル注文という名称の取引を行う場合の操作及び表示画面等は,次のとおりであることが認められる。
(ア)

控訴人のウェブサイトの新規注文入力画面(以下新規注文画面1という。)で,注文種類をiサイクル注文と選択し,
取引を希望する
通貨ペア
(例えば,
USD/JPY,
)想定変動幅

ポジション方向(買(買ってから売る)・売(売ってか
ら買うのか)の別。例えば買),対象資産(円)(例えば,
25000)などを選択すると,選択された通貨ペアの取引
レート(本日の値動き・買)が表示され,計算ボタンをクリ
ックすると,新規注文画面1から別の新規注文入力画面(以下新規注文画面2という。)に遷移する。(イ)

新規注文画面2には,新規注文売買欄,新規約定レート

欄,利食いレート欄及び損切りレート欄の4つの項目が1組
として対応付けられて表示され,
新規注文売買買売
欄に
又は
の別,新規約定レート欄に買い注文を行うときの買い注文価格,
利食いレート
欄に当該買い注文に対応する売り注文価格
(順指値)
及び損切りレート欄に当該買い注文に対応する売り注文価格(逆
指値)が表示される。
甲6の新規注文画面2の例では,①新規注文売買が買,新規約定レートが114.28,利食いレートが114.90及び損切りレートが111.80,②新規注文売買が買,新規約定レート欄に113.66,利食いレート
欄に
114.28
及び
損切りレート
欄に
111.18

③新規注文売買が買,新規約定レート欄に113.04,利食いレート欄に113.66及び損切りレート欄に110.56,④新規注文売買が買,新規約定レート欄に112.42,利食いレート欄に113.04及び損切りレート欄に109.94の4組の注文が表示され
ている。
また,新規注文画面2には,

上記の条件にて計算された結果文数は4注文ポジション間隔(値幅)は62PIP注最大ポジション数は4ポジションとなります。

注文内容を確認し,宜しければ【注文】ボタンをクリックしてください。

などの表示がされている。
そして,新規注文画面2の注文ボタンを1回クリックすること
により,上記4組の注文手続が一括して行われる。

前記ア(イ)認定のクイック+OCO注文及びIFDONE+OCO注文は,いずれも新規注文である買い注文の約定により決済注文である売り注文が有効,発注済の状態になるというイフダンオーダーの性質を有するものである。また,前記イのとおり,被告サーバのiサイクル注文では,新規約定レートによる新規注文,この新規注文に対応する利食いレートによる売り注文(指値)及び損切りレートによる売り注文(逆指値)を1組とする複数の組(甲6の例では,4組)の注文手続が一括して一つの注文手続で行われている。
以上によれば,被告サーバにおいては,クイック+OCO注文又
はIFDONE+OCO注文を構成する各注文は,イフダンオーダーを構成する一体的な注文として,同じ機会に行われていることが認められる。」

(3)

原判決34頁末行の乙1を乙1,10と改める。

(4)

原判決35頁25行目の

(ただし,成行注文の場合に何を意味するかは明らかではない。)

(ただし,成行注文の場合は,成行注文時の市場価格を意味する。)

と改める。(5)

原判決36頁6行目から38頁18行目までを次のとおり改める。
(3)ア被告サーバにおける処理前記(1)及び(2)認定の被告サービスの内容,別表(甲6)及び別紙注文履歴明細(乙10)記載の各欄の内容並びに弁論の全趣旨によれば,別表及び別紙注文履歴明細(乙10)に記載されている平成26年11月5日午後4時16分から同月7日午後10時30分までの被告サービスによる取引に係る被告サーバの処理は,次のとおりであったことが認められる。(ア)平成26年11月5日午後4時16分の処理a番号114の買いの成行注文が行われた。(16時16分20秒)b番号114の買いの成行注文が約定価格114.30円で約定した。(16時16分21秒)c次の注文が行われた。(16時16分22秒)(a)番号113の売りの指値注文(指定価格114.90円)⒝番号112の売りの逆指値注文(指定価格111.80円)⒞番号111の買いの指値注文(指定価格113.66円)⒟番号110の売りの指値注文(指定価格114.28円)(e)番号109の売りの逆指値注文(指定価格111.18円)⒡⒢番号107の売りの指値注文(指定価格113.66円)⒣番号106の売りの逆指値注文(指定価格110.56円)(i)番号105の買いの指値注文(指定価格112.42円)⒥番号104の売りの指値注文(指定価格113.04円)⒦d番号108の買いの指値注文(指定価格113.04円)番号103の売りの逆指値注文(指定価格109.94円)番号113の売りの指値注文,番号112の売りの逆指値注文が有効,発注済の状態になった。(イ)a平成26年11月6日午前10時37分の処理相場価格が上昇して番号113の売りの指値注文が約定価格114.90円で約定した。(10時37分34秒)b番号113の売りの指値注文の約定により,番号112の売りの逆指値注文が無効の状態になった。c番号97の買いの成行注文が行われ,約定価格114.91円で約定した。(10時37分34秒)d次の注文が行われた。(10時37分36秒)(a)番号100の買いの指値注文(指定価格114.28円)⒝番号99の売りの指値注文(指定価格114.90円)⒞番号98の売りの逆指値注文(指定価格111.80円)⒟番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)(e)e番号95の売りの逆指値注文(指定価格112.42円)番号105の買いの指値注文,番号104の売りの指値注文及び番号103の売りの逆指値注文の各注文が取り消された。(ウ)平成26年11月6日午後2時21分の処理a相場価格が下落して番号100の買いの指値注文が約定価格114.28円で約定した。(14時21分02秒)b番号99の売りの指値注文及び番号98の売りの逆指値注文が有効,発注済の状態になった。(エ)平成26年11月6日午後10時35分の処理a相場価格が上昇して番号99の売りの指値注文が約定価格114.90円で約定した。(22時35分33秒)b番号99の売りの指値注文の約定により,番号98の売りの逆指値注文が無効の状態になった。c次の注文が行われた。(22時35分34秒)(a)番号92の買いの指値注文(指定価格114.28円)⒝⒞(オ)a番号91の売りの指値注文(指定価格114.90円)番号90の売りの逆指値注文(指定価格111.80円)平成26年11月7日午後10時29分の処理相場価格が上昇して番号96の売りの指値注文が約定価格115.52円で約定した。(22時29分51秒)b番号96の売りの指値注文の約定により,番号95の売りの逆指値注文が無効の状態になった。c番号89の買いの成行注文が行われ,約定価格115.54円で約定した。(22時29分51秒)(カ)平成26年11月7日午後10時30分の処理a次の注文が行われた。(22時30分27秒)(a)番号88の買いの指値注文(指定価格114.90円)⒝番号87の売りの指値注文(指定価格115.52円)⒞番号86の売りの逆指値注文(指定価格112.42円)b次の注文が行われた。(22時30分28秒)(a)⒝c番号85の売りの指値注文(指定価格116.14円)番号84の売りの逆指値注文(指定価格113.04円)番号108の買いの指値注文,番号107の売りの指値注文及び番号106の売りの逆指値注文の各注文が取り消された。イ前記アの認定事実と前記(1)及び(2)の認定事実を総合すると,被告サーバにおいては,㋐「一つの注文手続で,①番号114の買いの成行注文,
番号113の売りの指値注文
(指定価格114.
90円)

番号112の売りの逆指値注文(指定価格111.80円),②番号111の買いの指値注文(指定価格113.66円),番号110の売りの指値注文(指定価格114.28円),番号109の売りの逆指値注文(指定価格111.18円),③番号108の買いの指値注文(指定価格113.04円),番号107の売りの指値注文(指定価格113.66円),番号106の売りの逆指値注文(指定価格110.56円),④番号105の買いの指値注文(指定価格112.42円),番号104の売りの指値注文(指定価格113.04円),番号103の売りの逆指値注文(指定価格109.94円)という4組の注文(被告サービスのiサイクル注文として,一組のクイック+OCO注文と三組のIFDONE+OCO注文)がされたこと(前記(1)イ参照),㋑その後,①ないし④の売り注文のうち,最も高い注文価格の番号113の売りの指値注文(指定価格114.90円)が約定した後に,⑤番号97の買いの成行注文,番号113の注文価格より0.62円高い番号96の売りの指値注文(指定
価格115.52円),番号112の注文価格より0.62円高
い番号95の売りの逆指値注文(指定価格112.42円),⑥番号114の注文時の市場価格と同じ注文価格の番号100の買いの指値注文,番号113と同じ注文価格の番号99の売りの指値注文,番号112と同じ注文価格の番号98の売りの逆指値注文の2組の注文がされ,一方で,①ないし④の売り注文のうち,最も低い売り注文価格の番号103の売りの指値注文を含む④の組の注文が取り消されたこと,その結果,①よりも売りの注文価格が0.62円高い番号96の売りの指値注文を含む⑤,⑥,②,③の4組の注文がされた状況となったことが認められる。」
3
争点1(被告サーバは本件発明の技術的範囲に属するか)
(1)

争点1-1(被告サーバは構成要件BないしHの注文情報を充足する
か)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の3(1)記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決38頁22行目の本件特許の特許請求の範囲を本件発明の特許請求の範囲(請求項1)と改め,39頁3行目から21行目までを次のとおり改める。
また,本件明細書には,構成要件B記載の「買い注文情報及び構成要件CないしH記載の売り注文情報の用語を定義した記載はない。以上によれば,構成要件Bの買い注文情報は,金融商品の買い注文を行うための情報を,
構成要件CないしHの
売り注文情報
は,
買い注文の約定によって保有したポジションを,約定によって決済する売り注文を行うための情報を意味するものと解される。このように買い注文情報又は売り注文情報は,買い注文又は売り注文を行
うための情報であるから,買い注文又は売り注文を行うために必要な情報であって,個々の買い注文又は売り注文の内容に関する情報及びその注文を行うための管理情報(注文番号等)を含む情報であるものと解される。」

原判決40頁4行目から7行目までを削り,同頁10行目及び11行目の各別表を別表及び別紙注文履歴明細と,同頁12行目の注文が行われた時点,すなわち,「注文日時欄記載の日時に,」を注文が行われた時点までに,すなわち,「注文日時欄記載の日時までに,」と,同頁19行目及び同頁23行目から24行目にかけての各

推認することができる。

認められる。

と改める。

原判決41頁5行目及び8行目の各
構成要件BないしHの「注文情報

を構成要件Bの「買い注文情報及び構成要件CないしHの売り注文情報」と改める。
(2)

争点1-2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の3(2)記載の
とおりであるから,これを引用する。

原判決42頁3行目末尾に行を改めてア構成要件Hの「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するの意義について」
を加え,
同頁4行目のアを(ア)と改める。

原判決42頁13行目から19行目までを削り,同頁20行目のイを(イ)と改める。

原判決43頁11行目の「シフト機能」を「シフト機能(【0
078】)」と改め,同頁12行目の後記4(1)のとおりを削り,同頁13行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
さらに,控訴人が理由として挙げる上記③については,構成要件Cの「複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とは,売り注文情報生成手段が複数の売り注文情報を生成する機能を規定したものであり,このことは,売り注文情報生成手段が1個の売り注文情報を生成する機能を有することを排除するものではない。」


原判決43頁15行目から45頁14行目までを次のとおり改める。イ構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するの意義について(ア)

本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,構成要件

Dの注文情報生成手段は,前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する
買い注文情報生成手段
(構
成要件B)前記買い注文の約定によって保有したポジションを,と約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とから構成され,売り注文情報を生成するのは,構成要件Dの注文情報生成手段のうちの売り注文情報生成手段であることを理解できるから,構成要
件Gの注文情報生成手段及び構成要件Hの前記注文情報生成手段は,いずれも売り注文情報生成手段を意味するものと理解できる。
そうすると,構成要件Hの前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するにいう前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて前,記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとの記載は,売り注文情報生成手段が,前記約定検知手段の
前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたとの検知の情報を受けて,当該最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを規定したものであり,売り注文情報生成手段が行う処理を規定したものと解される。次に,本件明細書には,シフト機能による注文は,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態であること(【0078】),このシフト機能は,相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行うことができる(【0018】)という効果を奏することの開示がある。そして,構成要件Hの文言及び本件明細書の上記記載から,
構成要件Hは,
シフト機能
のうち,
更に
決済注文(売り注文)が発注される際に,先に発注済の決済注文(売り注文)がシフトする構成のものを規定したものであることを理解できる。他方で,本件明細書には,シフト機能の
うち,更に決済注文(売り注文)が発注される際に,先に発注
済の決済注文(売り注文)がシフトする構成の場合において,
新たな買い注文の発注やその約定によって,シフト機能の
効果等が影響を受け得ることについての記載や示唆はない。
以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)及び本件明細書の
記載を総合すると,構成要件Hの前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとは,売り注文情報生成手段(前記注文情報生成手段)が,前記約定検知手段の前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたとの検知の情報を受けたことに基づいて,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する構成のものであれば,新たな買い注文情報の生成や買い注文の約定又はその検知に関わりなく,構成要件Hに含まれるものと解される。
(イ)

これに対し控訴人は,
①本件発明の特許請求の範囲
(請求項1)

の記載によれば,構成要件Hの前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとは,直前の検知の情報を条件として,これに続いて,前記の売り注文が発生するという意味であって,これらの間に他の処理が介在する記載はないこと,②本件明細書には,従前の新規注文B1ないしB5及び従前の決済注文S1ないしS5が全部約定したことを検知し,この検知の情報を受けて,新たな新規注文B1ないしB5及び新たな決済注文S1ないしS5を一括発注するものであり(【0142】ないし【0154】,図35),前記検知の情報を受けて(構成要件H)と,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する(構成要件H)との間に,他の手続が介在するもの,例えば,新たな新規注文B1ないしB5と新たな決済注文S1ないしS5とを新規に一括発注せずに,まずは新たな新規注文B1ないしB5を発注し,その約定を検知してから,新たな決済注文S1ないしS5を発注するようなものについての開示はないこと,③本件出願の経過において,被控訴人は,拒絶理由通知を受けて,
本件手続補正書及び本件意見書を提出して,
本件出願に係る旧請求項1に構成要件EないしGを新たに加え,構成要件Hを補正する手続補正を行うとともに,
本件意見書において,
シフトが生じるための条件として,最も高い売り注文の約定状況のみを監視することとし,それ以外の処理を監視することを除外する旨を主張したことを総合すると,構成要件Hの前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することにいう前記検知の情報を受けてとは,前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,他の処理を何も介在せずに,直ちに前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを意味するものと解すべきである旨主張する。
しかしながら,上記①の点については,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,構成要件Hの前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けてと前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとの間に,
他の処理を何も介在せずにとか直ちにとの文言は存在しな
い。
次に,上記②の点については,前記(ア)で説示したとおり,構成要件Hは,シフト機能(【0078】)のうち,更に決済注文
(売り注文)が発注される際に,先に発注済の決済注文(売
り注文)がシフトする構成のものを規定したものであるところ,本件明細書には,シフト機能のうち,更に決済注文(売り注
文)が発注される際に,先に発注済の決済注文(売り注文)が
シフトする構成の場合において,新たな買い注文の発注やその
約定によって,シフト機能の効果等が影響を受け得ることにつ
いての記載や示唆はない。また,控訴人が挙げる本件明細書の記載(【0142】ないし【0154】,図35)は,発明の実施の形態の3に係るものであるが,本件明細書には,上記の「シフト機能は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び

上記各実施の形態は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは,いうまでもない。

こと【0164】の記載があることに照らすと,控訴人が挙げる本件明細書の上記記載から構成要件Hを限定解釈すべき理由はない。
さらに,
上記③の点については,
被控訴人は,
本件手続補正書
(乙
14)により,本件出願に係る旧請求項1について,前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する(下線は,補正箇所を示す。)と補正し,本件意見書(乙15)において,本願発明においては,一の注文手続で生成された複数の売り注文情報に基づく複数の売り注文よりも高い売り注文情報の生成…は,一の注文手続で生成された複数の売り注文情報に基づく複数の売り注文のうちの最も高い売り注文の約定…が検知されたことを基準に行われることになります。そのため,システムにおいては,特定の注文に係る注文情報(相場の移動方向側である,最も高い買い注文価格の買い注文に係る買い注文情報や,最も低い売り注文価格の売り注文に係る売り注文情報)の約定状況のみを監視すれば,新たな注文情報の生成(一の注文手続で生成された中で最も高い売り注文価格よりも高い売り注文価格の売り注文情報の生成…を,ただちに生成することができ,システムの情報保持や情報監視のための負担が大きくなることはありません。これにより,本願発明においては,新たな注文情報の生成や,その注文情報に基づく注文の発注等の処理を,システム負荷の軽い,簡易な手順によって処理することができるという効果を奏します。と述べたことが認められるが,他方で,本件手続補正書及び本件意見書は,平成29年4月11日付けの拒絶理由通知(乙18)において引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載の技術を適用し,引用文献1に記載された発明において,繰り返し注文を行う際,相場価格の上昇傾向に対応して以前の注文価格よりも高い価格の注文情報を生成するように構成することは,当業者ならば容易に為し得ることである。との進歩性欠如の指摘を受けて提出されたものであることに照らせば,本件手続補正書及び本件意見書は,本件発明が,複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定に基づいて,同注文価格よりも高い価格の売り注文を生成する点に技術的意義を有し,
進歩性を有する旨を主張したものであって,
本件意見書の
約定状況のみを監視すれば,ただちに生成するといった記載か
ら,両者の間に他の処理を介在させる構成や時間的間隔が存在する構成を本件発明から除外したものということはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。

構成要件Hの充足性について
(ア)

前記2(3)イ㋑のとおり,
①ないし④の売り注文のうち,
最も高

い注文価格の番号113の売りの指値注文(指定価格114.90円)が約定した後に,番号113の注文価格より0.62円高
い番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)がされていることに照らすと,被告サーバにおいては,約定検知手段が複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定を検知すると,注文情報生成手段が,この検知の情報を受けたことに基づいて,約定した最も高い売り注文の売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成したことが認められる。
したがって,被告サーバは,構成要件Hを充足するものと認めら
れる。
(イ)

これに対し控訴人は,被告サービスでは,被告サーバが相場価格が上昇して番号113の売りの指値注文(指定価格114.90円)が約定したことを検知すると,番号97の買いの成行注文だけを行い,これが約定して,はじめて,番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)及び番号95の売りの逆指値注文(指定価格112.42円)を行うのであって,買いの成行注文が約定し,この約定検知の情報を受けない限り,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成しないから,
構成要件Hを充足しない旨主張する。
しかしながら,前記イ(イ)で説示したとおり,構成要件Hの前記検知の情報を受けてが,最も高い売り注文価格の売り注文の約定の検知と新たな売り注文情報の生成との間に他の処理を介在させないことまで定めたものとは認められない。そして,前記(ア)のとおり,被告サーバにおいては,注文情報生成手段が,複数の売り注文のうち最も高い価格の売り注文の約定の検知の情報を受けたことに基づいて,約定した最も高い売り注文の売り注文価格を基準として,さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成したことが認められるから,控訴人の上記主張は,理由がない。

小括
以上によれば,被告サーバは本件発明の構成要件Hを充足する。」
(3)

争点1-3(被告サーバは構成要件Gを充足するか)
原判決45頁末行から46頁4行目までを次のとおり訂正するほか,原判

事実及び理由
の第4の3(3)記載のとおりであるから,
これを引用する。
しかしながら,前記2(3)イのとおり,被告サービスにおいては,新規注文画面2の「注文を1回クリックすることにより,①ないし④の4組の注文手続が一括して行われていることからすると,被告サーバは,複数の売り注文情報を一の注文手続で生成しているものと認められるから,構成要件Gを充足する。」

(4)

まとめ
以上によれば,被告サーバは,本件発明の構成要件を全て充足するものと認められるから,本件発明の技術的範囲に属する。
4
争点2(無効の抗弁の成否)
(1)

争点2-1(本件特許は特許法36条6項1号に違反しているか)控訴人は,
本件明細書の発明の詳細な説明には,
構成要件Hに対応する
シフト機能に係る構成について,いったんスルー注文及び決済トレール注文と組み合わせた,複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全てがそれぞれ1回ずつ約定した場合に複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全てに対応する個数の新たな複数の新規注文及び新たな複数の決済注文を発注させることしか記載されておらず,構成要件Hに含まれるシフト機能をいったんスルー注文及び決済トレール注文に組み合わせたもの以外の構成のものについては記載されていないことからすれば,構成要件Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえないから,特許法36条6項1号所定の要件(以下サポート要件という。)に適合するとはいえない旨主張する。

そこで検討するに,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,構成要件Hの前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するとの記載において,注文情報生成手段が生成する所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報の個数を規定する記載はないから,当該売り注文情報は,複数の場合に限らず,一つの場合も含むものと理解できる。

イ(ア)

次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,①シフト機能について,金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにおいて,既に発注した新規注文と決済注文をそれぞれ約定させたのち,「シフト機能による処理を併用した取引を行うことも可能である。シこのフト機能による注文は,上述した,いったんスルー注文や決済トレール注文や,各種のイフダン注文(例えば後述するリピートイフダン注文やトラップリピートイフダン注文)等に基づいて,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態である。」こと(【0078】),②シフト機能は,相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行うことができる(【0018】)という効果を奏すること,③発明の実施の形態3は,この実施の形態3の金融商品取引管理システムにおいては,「いったんスルー注文と決済トレール注文とを,らくトラによる注文と組み合わせ,さらにシフト機能を行わせる状態を示す。」(【0138】)ものであるが,上記の「シフト機能は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び

上記各実施の形態は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは,いうまでもない。

こと(【0164】)の記載がある。
上記①の記載から,シフト機能は,新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態であり,シフトされる先に発注済の注文には,新規注文又は決済注文の一
方のみの構成又は双方の構成が含まれること,先に発注済の一つの注文の価格をシフトさせる構成のものと先に発注済の複数の注文の価格帯をシフトさせる構成のものが含まれることを理解できる。また,上記①ないし③の記載から,シフト機能は,相場価格を反映した注文の発注を行うことができるという効果を奏し,いったんスルー注文,決済トレール注文や,各種のイフダン注文(例えば…リピートイフダン注文やトラップリピートイフダン注文)」
等の注文方法とは別個の処理であること,シフト機能にこれらの各種の注文方法のいずれを組み合わせるかは任意であることを理解できる。ウ(ア)

本件明細書の発明の詳細な説明には,図35に示す実施の形態3(【0144】ないし【0148】)として,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせたトラップリピートイフダン注文で行われ,決済注文S5,S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の買い注文B5,B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売り注文S5,S4が再度生成されるが,この時点ではシフトは発生せず,通常のリピートイフダン注文が繰り返され,その後相場価格が変動して,S1ないしS3の売り注文価格がトレールし,S1ないしS3が最も高い注文価格の売り注文として同時に約定すると,再度生成された売り注文S5,S4は約定していないにも関わらずこれをキャンセルして,S1ないしS5のシフトが実行されることが記載されている。上記記載は,構成要件Hに含まれる,シフト機能にいったんスルー注文及び決済トレール注文を組み合わせた構成の一つであることが認められる。
また,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせない場合には,図35において,
S2及びS3の売り注文価格がトレールしないため,
それぞれの注文情報が生成された時点における価格のとおり,それぞれ別々に約定し,その場合,実施の形態3の取引例でS5,S4が約定した段階ではシフトが生じていないのと同様に,S3,S2が約定した段階ではシフトが生じず,その後に最も高い売り注文価格の売り注文であるところのS1が約定した段階でシフトが生じることになることを理解できる。
そうすると,複数の売り注文情報のうち最も高い売り注文価格の売り注文が約定すると,それよりも所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するという構成要件Hに係る構成は,本件明細書の上記記載から認識できるから,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているということができる。
(イ)

これに対し控訴人は,図35には,S5,S4が約定した後に再

度S5,S4が生成されることの記載はなく,B5,B4には,直後にキャンセルと記載されていることからすれば,S5,S4が約
定しても,元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5,B4がそもそも生成されないか,生成されてもすぐにキャンセルされていると理解できること,加えて,本件明細書の【0144】ないし【0147】にも,新たな新規注文B5及びB4は,個別に生成されるのではなく,(従前の)決済注文の全ての約定((従前の)決済注文S1ないしS3の約定)を待って,新たな新規注文B1ないしB3とともに新たな新規注文が一括して生成されることが開示されていることからすると,図35には,同図右上のS1ないしS3が同時に約定し,もって,B5ないしB1及びS5ないしS1の全てが1回ずつ約定した後に,シフト機能によるシフトが行われ,新たなB5な
いしB1及びS5ないしS1が一括的に生成される場合が示されているに過ぎず,
B5,
B4に対応する決済注文S5,
S4が約定すると,
元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5,B4が再度生成されることを看取できない旨主張する。
しかしながら,図35には,明示の記載はないが,決済注文S5,S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の買い注文B5,B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売り注文S5,S4が再度生成され,通常のリピートイフダン注文が繰り返されることは,図30に示すように,相場価格64が上昇から下落に転じ,1ドル=100.60円未満になると,約定情報生成部14は,決済注文S4,S5を約定させる処理を行う。これにより,(新規注文情報18114,18115に基づく)新規注文B4,B5と,(決済注文情報18119,18120に基づく)決済注文S4,S5によるイフダン注文の取引がそれぞれ成立する。これにより,注文情報生成部16は,元の新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5と同じ,新たな新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5を生成する。(【0132】)との記載に照らしても明らかである。
したがって,控訴人の上記主張は,その前提において,採用することができない。

以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,シフト機能をいったんスルー注文及び決済トレール注文に組み合わせた構成の
もの(実施の形態3)のほか,構成要件Hに含まれる,これ以外の構成のもの(最も高い売り注文価格の特定の一の売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段が,更に所定価格だけ高い一の売り注文情報を生成するもの)についての開示があることが認められる。したがって,構成要件Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであることが認められ,本件発明はサポート要件に適合するものと認められるから,これと異なる控訴人の前記主張は理由がない。
(2)

争点2-2(分割要件違反により本件発明は新規性を欠くか)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の4(2)記載の
とおりであるから,これを引用する。

原判決50頁9行目から10行目にかけての証拠(乙2)を証拠(乙2の1)及び弁論の全趣旨と改める。イ
原判決50頁14行目の本件特許の出願日を本件出願日と,同
頁15行目のみなされるからをみなされ,本件優先日は同年4月3日であるからと改める。
(3)

争点2-3(本件発明は進歩性を欠くか)
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の4(3)記載の
とおりであるから,これを引用する。

原判決50頁20行目,58頁12行目,61頁18行目,67頁5行目の各本件原出願日を本件優先日と改める。


原判決74頁3行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
(エ)乙5発明と乙3発明の組合せ控訴人は,乙5発明は,乙4発明と実質的に同一の発明であり,本件発明と乙5発明との相違点は,本件発明と乙4発明との一致点及び相違点(相違点4-1)と同じであるところ,乙5発明に乙3発明を適用する動機付けがあるから,当業者は,乙5発明において,相違点5-1に係る本件発明の構成とすることを容易に想到することができたものである旨主張する。しかしながら,前記(ウ)で説示したのと同様に,乙5発明は,想定した一定の価格帯に複数のイフダンオーダーを設定して,同じ価格帯でイフダンオーダーを繰り返す発明であり,一定の価格帯を想定することのない乙3発明とは,その技術思想が異なるものであるから,乙5発明に乙3発明を組み合わせる動機付けがあると認めることはできない。したがって,乙5発明において,相違点5-1に係る本件発明の構成とすることを容易に想到することができたものと認めることはできない。ウ小括以上によれば,控訴人の乙3発明ないし乙6発明をそれぞれ主引用例とする本件発明の進歩性欠如の主張は,いずれも理由がない。
(4)

まとめ
以上によれば,控訴人主張の無効の抗弁(特許法104条の3第1項)は
理由がない。
5
争点3(先使用権の成否)について
以下のとおり訂正するほか,原判決事実及び理由の第4の3記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決74頁6行目の本件特許の出願日を本件出願日と,同行目

の本件原出願日の後に(本件優先日同年4月3日)を加える。
(2)

原判決74頁8行目から9行目にかけての先使用に基づく通常実施権(特許法79条)を先使用権と改める。6
結論
以上によれば,被控訴人の請求は理由があるから,認容すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。
したがって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

國分隆文
裁判官

筈井卓矢
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