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殺人被告事件
事件番号平成30(わ)830
事件名殺人被告事件
裁判年月日令和元年10月3日
裁判所名・部札幌地方裁判所
判示事項の要旨被告人が,強迫性障害の影響も相まって,隣人の被害者を殺害した殺人罪の事案において,懲役17年に処した事例。
裁判日:西暦2019-10-03
情報公開日2019-11-11 14:00:07
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令和元年10月3日宣告
平成30年(わ)第830号

殺人被告事件
判決主文
被告人を懲役17年に処する
未決勾留日数中240日をその刑に算入する。
札幌地方検察庁で保管中のハンマー1本(平成30年領第1092号符号1-1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,北海道美唄市ab条cd丁目e番f号Ag号室に居住していたところ,隣の同h号室に住む甲(以下被害者という。)の行動等に憤懣を抱き続けていくうち,悪や邪は打ち砕かなければならないなどという考えが繰り返し出現すること(強迫観念)も相まって,被害者は周囲に害悪を及ぼす存在であり,被害者を殺害するしかないと思い込むに至り,平成30年7月20日午後9時20分頃,上記A南側市道上及びその付近において,被害者(当時53歳)に対し,殺意をもって,その頭部及び顔面等をハンマー(平成30年領第1092号符号1-1)で多数回殴打し,よって,同日午後9時53分頃,同市ij条kl丁目m番n号B病院において,被害者を頭部・顔面挫滅による頭蓋内損傷により死亡させて殺害した。
(証拠の標目)
(略)
(法令の適用)
罰条
刑法199条


有期懲役刑

未決勾留日数の算入

刑法21条

刑種の選没収
刑法19条1項2号,2項本文
(札幌地方検察庁で保管中のハンマー1本〔平成30
年領第1092号符号1-1〕は,判示殺人の用に供
した物で被告人以外の者に属しない。)

訴訟費用の不負担

刑訴法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件の犯行態様は,被害者の頭部及び顔面をハンマーで百回以上殴打し続けて挫滅させるものであって,極めて執拗であり,残忍であるというほかない。また,被告人は,事前に,被害者の居室の鍵穴に接着剤を入れて被害者が逃げ込めないようにした上,被害者の帰りを待ち伏せて本件犯行に及んでおり,計画性が認められる上,殺意も強固であったといえる。このような被害に遭った被害者の苦痛や無念もいかばかりであったかと察せられ,被告人について可能な限り長く刑務所に入れてもらいたいと求める遺族の心情も十分理解できるところである。犯行に至った経緯を見ると,被告人は,共同住宅の隣人である被害者の行動等について憤懣を募らせて殺害を決意し,その実行に移したものであって,その憤懣の全てが被告人の一方的な言いがかりであったわけではないとしても,尊い生命を奪うことをおよそ正当化できるものではなく,このように殺害を決意し,実行に移したことは甚だ身勝手というほかない。
もっとも,被告人は,犯行に至るまでに,強迫性障害に罹患していたため,自分の考える悪や邪は打ち砕かなければならないなどという強迫観念が繰り返し出現することも相まって,被害者について,周囲に迷惑をかけるばかりの悪や邪であると考え,これを排除するしかないと思い込み,本件犯行に至ったものであり,上記の犯行態様や犯行に至る経緯にはこのことが影響しているとの医学的な所見(当公判廷で供述する乙医師の所見)も存在している。この所見は,被告人の従前の生活,行動等や被告人の供述とも整合するところであって,これを否定する合理的理由は見当たらない。なお,被告人に精神障害の罹患はないとする所見(当公判廷で供述する丙医師の所見)もあるが,この所見については,被告人の従前及び本件犯行に至る心理経過に関して十分な検討がされているか疑問が残り,乙医師の所見を否定できるものではない。
そこで更に,被告人の強迫性障害の本件犯行への影響の有無・程度を検討すると,乙医師の所見によれば,被告人は,上記の強迫観念を有していたことにより,問題を解決する選択肢が狭まっていたため,被害者を殺害することを決意するに至っており,また極めて多数の殴打に至ったというものである。この医学的な所見に賛同できるところではあるが,意思決定に対する責任非難の評価としては,被告人は,このような障害を有していたとはいえ,ハンマーで頭部を殴打することの危険性を十分認識した上,これが社会一般から見て許されないことを分かった上で,本件犯行の準備を講じ,その実行に至り,さらに被害者の状況を認識しながら殴打を続けるとの意思のもとに犯行を継続しているのであって,このような意思決定についてはやはり強く非難されるべきである。そうすると,被告人に対する量刑を検討するに当たり,本件犯行における意思決定について強迫性障害の存在を考慮しても,被告人に対する非難を弱めることには限度がある。以上によれば,本件は,前科のない者が単独で凶器(鈍器)を用いて行った殺人の事案の中では重い類型のものとして位置付けられるので,弁護人の指摘する一般情状を検討しても,被告人に対しては主文の刑を科すのが相当である。(検察官
(求刑

志村康之,横田英剛,国選弁護人

菅原剛(主任),山下剛

懲役18年,主文同旨の没収)

令和元年10月17日
札幌地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

島戸純
各出席)

裁判官

平手
裁判官

大木健太郎峻
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