事件番号 | 平成31(わ)1103 |
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事件名 | 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害 |
裁判年月日 | 令和元年10月3日 |
裁判所名・部 | 大阪地方裁判所 第6刑事部 |
裁判日:西暦 | 2019-10-03 |
情報公開日 | 2019-10-29 16:00:06 |
主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】 被告人は,大阪市建設局企画部工務課の職員として,大阪市が発注する電気工事の設計,積算等の職務に従事していたもの,Aは,電気工事の施工,請負等を業とするB株式会社の経営に実質的に関与し,営業,入札業務等を統括していたものであるが,Aと共謀の上,別表(掲載省略)記載のとおり,平成29年11月9日から平成30年3月6日までの間に開札が行われた大阪市発注の電気工事等合計3件の各制限付一般競争入札に先立ち,Aが,各入札における秘密事項であって,最低制限価格帯算出の根拠となる各直接工事費の教示を被告人に依頼し,被告人において,前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに,その職務に反し,平成29年10月26日から平成30年2月23日までの間,3回にわたり,大阪市内又はその周辺において,前記各直接工事費をAに教示するなどし,もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより,公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした。【法令の適用】 罰 条 別表(掲載省略)の番号ごとに 官製談合防止法違反の点 いずれも刑法60条,官製談合防止法8条 公契約関係競売入札妨害の点 いずれも刑法60条,96条の6第1項 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(それぞれ1個の 行為が2個の罪名に触れる場合であるから,そ れぞれ1罪として,重い官製談合防止法違反の 罪の刑で処断。ただし,罰金刑の任意的併科に 令和1年10月29日(火) ついては,公契約関係競売入札妨害の罪の刑の それによる。) 刑種の選択 判示各罪 併合罪の処理 いずれも懲役刑を選択 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の 最も重い別表(掲載省略)の番号3の罪の刑に 法定の加重) 刑の全部の執行猶予 刑法25条1項 【量刑の理由】 本件は,大阪市建設局の職員であった被告人が,飲食接待等を受けていた電気工事会社の実質的経営者と共謀の上,同人に対し,自身が積算を担当した同市発注の電気工事等3件に関する入札に先立ち,その職務に反して,秘密事項である最低制限価格帯の算出根拠となる直接工事費を,3回にわたって教示したというものであり,繰り返し入札の公正を害した悪質な犯行である。 被告人は,秘密事項を教示したのは,自身の勤務成績上の評価に直結することとなる担当工事の入札の不調を避けることにあった旨供述するが,職務倫理に関する研修を受けてもいた被告人が上記飲食接待と秘密事項の教示との結び付きを意識しなかったとは考え難い上,いずれにしても自己の保身を図るための犯行であることに変わりはなく,その動機に格別酌むべき点は見いだされない。 もっとも,被告人と共犯者とを引き合わせ,共犯者に被告人を紹介したのは,本件犯行以前から継続的に飲食接待を受けるなどして共犯者と根深い癒着関係を築いていた,被告人からすれば先輩格に当たる市職員であって,被告人は,同職員の言に従って被告人に秘密事項を尋ねてきた共犯者に対し,求められるまま秘密事項の教示に応じていたのであり,受動的な面があることは指摘できる。また,被告人に前科前歴がなく,判示の各事実を認めて,反省の弁を述べていること,本件のために懲戒免職となったこと,妻が被告人を精神的に支えていく旨公判廷で約している 令和1年10月29日(火) ことなどの酌むべき事情も認められる。 そこで,主文のとおり刑を定めた上,その全部の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑 懲役1年6月) 令和元年10月3日 大阪地方裁判所第6刑事部 裁判長裁判官 大 裁判官 沖 裁判官 中寄淳敦村子公大 |