判例検索β > 平成31年(わ)第135号
公契約関係競売入札妨害、贈賄
事件番号平成31(わ)135
事件名公契約関係競売入札妨害,贈賄
裁判年月日令和元年9月26日
法廷名福岡地方裁判所  小倉支部
裁判日:西暦2019-09-26
情報公開日2019-10-24 12:00:07
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事件番号

平成31年(わ)第135号,第196号

事件名

公契約関係競売入札妨害贈賄被告事件

宣告日

令和元年9月26日
主文
被告人を懲役2年に処する
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,電気,土木,清掃施設,機械器具設置工事等を業とするA社B支店C営業所長として,同営業所の業務を統括していたものであるが,平成28年7月19日に築上町が執行した築上町し尿処理施設建設工事
(以下
本件工事
という。

の条件付一般競争入札(以下本件入札という。)に関し
第1
1
同町議会議員であったDと共謀の上,A社に本件工事を落札させる目的で同年5月下旬頃から同年6月20日頃までの間,福岡県内又はその周辺において,Dが,同町環境課長として,ごみ処理及びし尿に関する業務を掌理し,同町が発注する同課所管のし尿処理施設建設工事の入札において,入札参加資格条件を検討・提案する職務等に従事していた分離前の相被告人Eに対し,面談又は電話で,A社による業者間の談合が容易になるように入札参加資格を有する業者を少なくするよう依頼し,Eをして,本件入札に係る入札参加資格条件の案文作成に関し,建設業法第27条の29の規定に基づく総合評定値の要件について,土木一式工事及び機械器具設置工事の2業種で800点以上などとしていた案に,清掃施設工事を追加し,3業種のいずれも900点以上に変更した案文を作成させるなどし,同月20日,築上町長に,同案文どおりの入札参加資格条件に決定させ

2
同年7月上旬頃,福岡県内又はその周辺において,Dが,Eから,面談又は電話で,入札に関する秘密事項である本件入札への参加資格確認申請を行った入札参加予定業者数及び同業者名の教示を受け
よって,同月19日,本件入札において,A社をして,本件入札の最低制限価格7億5742万円(税抜き)を上回る7億9450万円(税抜き)で本件工事を落札させ,もって偽計を用いて公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をし
第2

Dに対し,
同年5月下旬頃から同年6月中旬頃までの間,
福岡県内において,
面談又は電話で,本件工事の入札参加資格条件の案文作成等の権限を有する同町職員に対して,A社による業者間の談合が容易になるように入札参加資格を有する業者を少なくするよう働きかけてもらいたい旨のあっせん方の請託をし,その旨の承諾を受け,さらに,Dに対し,同年7月上旬頃,同県内において,電話で,本件入札への参加資格確認申請を行った入札参加予定業者数及び同業者名を知り得る同町職員に対して,その教示を働きかけてもらいたい旨のあっせん方の請託をし,その旨の承諾を受け,前記各あっせんをしたことに対する報酬として

1
同県行橋市ab丁目c番d号のF駐車場において,Dに現金200万円を供与し

2
同年10月31日頃,同県築上郡e町fg番地所在のG駐車場において,Hを介し,Dに現金600万円を供与し

もって賄賂を供与した。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
省略
(量刑の理由)
被告人は,大型の公共工事である本件工事をA社に落札させるべく,判示第1のとおり町議会議員と共謀して,それに都合の良い入札参加資格条件とするよう町職員に働きかけて,町長にその旨決定させ,さらにその後,公正な入札の実施のため非公表とされ,保秘の対象となる入札参加予定業者数や業者名を町職員に働きかけて教示を受けているところ,これらの恣意的行為によって本件入札の公正が害された度合いはかなり高い。その後,実際にA社が本件工事を落札しているところ,他のA社社員等による談合も加わってのこととはいえ,その落札価格は最低制限価格を約3700万円も上回る高額なものとなっており,談合の前提を整えた被告人の行為の影響は大きい。また,判示第2の贈賄についてみても,その賄賂の金額は合計800万円とかなり高額である。総じて,本件は,社会的な影響がかなり大きな事案といえる。
かかる本件において,被告人は,違法な口利きによりA社からの賄賂獲得を目論む共犯者たる議員からの強い働きかけを契機に本件に至っているとはいえ,結局のところ,A社のC営業所長として,自らが勤めるA社の利益を最優先に考え,積極的に議員の力を利用して本件犯行に及んでおり,弁護人が指摘するように被告人が本件により直接自身の利益を得ることを企図しておらず,また,A社内部でのその置かれた立場を考慮したとしても,
その動機は身勝手なもので酌量の余地は乏しい。
以上によれば,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
もっとも,A社による本件工事の落札に至るまでの全容を見ると,本件はA社による落札に向けて複数名の社員の関与の下に行われた違法行為の一部といえ,被告人のA社内部での地位に照らし,本件の影響を被告人のみに大きく負わせるのはやや酷な面がある。そして,被告人は捜査段階から本件の重大性を認識しつつ事実を認め,反省と後悔の弁を述べている。また,被告人には前科前歴がなく,これまで社会人として特段問題なく生活してきており,今後,妻がその更生を支える旨証言をしている。以上の被告人のために酌むべき事情も併せ考慮すると,被告人に対しては,主文の刑を科した上で,今回に限り,その刑の執行を猶予し,社会内更生の機会を与えるのが相当と判断した。
(検察官の求刑:懲役2年)
令和元年9月26日
福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部
裁判長裁判官

森喜
裁判官

向井
亜紀子

裁判官

加島一史十
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