判例検索β > 平成31年(う)第149号
傷害致死
事件番号平成31(う)149
事件名傷害致死
裁判年月日令和元年9月24日
法廷名名古屋高等裁判所
裁判日:西暦2019-09-24
情報公開日2019-10-17 14:00:09
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主文
本件控訴を棄却する
理由
本件控訴の趣意は弁護人間宮静香(主任),濵嶌将周,岩井羊一及び舟橋民江共同作成の控訴趣意書に記載されたとおりであるが,論旨は事実誤認及び量刑不当の主張である。
1
事実誤認の論旨について
論旨は次のようなものである。
すなわち,
原判決は罪となるべき事実として,

被告人が,平成29年1月23日に出産した三つ子の育児をする中で次第に負担感を募らせ,二男のⒶの泣く声を特に苦痛に感じるようになっていたところ,平成30年1月11日午後6時30分頃に,激しく泣き始めたⒶが泣き止まず,長女もそれに加わって泣き始めたことなどに強いいら立ちを感じて,その気持ちをⒶにぶつけようと考え,同日午後7時頃に,愛知県豊田市所在の共同住宅にある当時の自宅居室南東側和室で,生後11か月のⒶに対し,両手で身体を仰向けに持ち上げて畳の上に2回にわたりたたきつける暴行を加え,頭蓋冠骨折やびまん性脳損傷等の傷害を負わせた結果,収容先の病院で同月26日に死亡するに至らせた,との事実を認定している。しかし,被告人は,犯行当時,重症の産後鬱病により,心神耗弱の状態にあった合理的な疑いがあるから,被告人の完全責任能力を肯認した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというのである。そこで,原審記録を調査して検討する。
原判決は,
弁護人の主張に対する判断の項で,
次のような判断を示している。
まず,本件の起訴前に被告人の精神鑑定を行ったⒷ病院で精神保健支援センター長を務める傍ら精神科を担当するⒸ医師は,被告人の精神障害とそれが犯行に与えた影響について次のように説明している。すなわち,①被告人は,遅くとも平成29年11月頃から本件犯行に至るまでの間,抑鬱気分,Ⓐの泣き声を聞くことに堪えられなくなることに関連する焦燥感の増大,興味や関心の喪失,気力の
減退等を症状とする鬱病の精神障害を抱えていた。しかるに,②それらの精神症状のうち抑鬱気分と焦燥感の増大が,Ⓐの泣き声に対する耐性を著しく低下させた点で本件犯行に影響しているが,犯行動機の形成に当たっては,物事を一人で抱え込みやすいという被告人の元来の性格傾向も影響している。また,焦燥感の増大が犯行の衝動的な側面に影響しているが,その程度は大きくなかった。かえって,後述する犯行前後及び犯行の際の被告人の言動から,本件犯行に際し,被告人が行動の意味を認識した上,行動を一定程度制御していたことがうかがえる。以上を総合して,鬱病の症状が犯行に及ぼした影響は限定的であるというのである。そして,Ⓒ鑑定は,精神科医師としての専門的知見や豊富な鑑定経験に基づき,検察官から交付された資料一式や被告人との8回を数え合計約14時間にわたった面接の結果のほか,被告人の夫や両親との面接の結果,心理検査等の諸検査の結果を総合的に判断するという精神鑑定において一般的な手法を用いて行われたものであり,
結論に至る推論の過程も合理的であるから,
その信頼性が高いものといえる。
他方,本件起訴後に弁護人から意見を求められた医療法人Ⓓの運営するⒺ病院で院長代理を務める傍ら精神科を担当するⒻ医師は,原審公判で,当時の被告人が産後重症鬱病を患っており,本件犯行がその症状として現れた本来の人格と異なる攻撃衝動により行われたものであって,その精神症状が本件犯行に著しい影響を与えたと証言している。しかし,Ⓕ鑑定は,心理検査が実施されず,関係者との面接も対象や回数,質問の方法等の点で,不十分さがうかがわれるなど,精神鑑定の手法に問題がある上,本件犯行に関する被告人の供述等を十分に検討して評価を加えておらず,鑑定の前提となる事実の取扱いにも問題がある。さらに,Ⓕ鑑定が,被告人の本来の人格の具体的な有様や,産後重症鬱病によりそれと異なる攻撃衝動が生じたことについて,合理的な根拠を示していない上,結局,被告人が産後重症鬱病であったことだけを根拠に,不可知論的に結論を導き出したような論理しか示しておらず,その鑑定意見を採用することはできない。

そこで,被告人の善悪の判断能力及び行動の制御能力の有無や程度等につ
いて検討する。
まず,本件の犯行動機は一般人に了解が可能である上,犯行態様も犯行動機に沿った合理的で合目的的なものである。そして,被告人が,泣き声を聞いてから約30分間にわたり自分の太ももをたたくなどしていら立ちを抑えようと試みたこと,乳児用の寝台で寝ていたⒶにそのまま危害を加えず,抱き上げて方向を変えた上,板貼りの洋間から数歩離れた和室に移動して畳の上で犯行に及んだこと,犯行後もⒶが泣き続けていたのに,自分の気が収まったとして,それ以上の危害を加えなかったことなどから見て,犯行当時に,現実の状況を的確に把握した上,Ⓐに過度の危害を与えないように自らの行動を制御していたものと認められる。さらに,被告人が,本件犯行の4日前にⒶに対して本件同様の行為を行った後,同児の頭部に水腫様の症状が生じたことを受け,
インターネットで
頭部外傷
乳児虐待懲役等に関係する記事を閲覧したこと,本件犯行の直後に自ら119番通報を行った上,臨場した救急隊員に対し,過って落とした事故であるとする事実に反する説明をしたことなどから見て,被告人は本件犯行の当時に自己の行為の意味や違法性を十分に認識していたものと認められる。
以上の点に,上記ア

掲記のⒸ鑑定意見のとおり,経験豊かな専門家に

より,被告人が,犯行当時に鬱病を患っており,その症状がⒶの泣き声に対する耐性を著しく低下させた点で本件犯行に影響しているものの,犯行動機の形成に当たって被告人の元来の性格傾向が影響しており,焦燥感の増大が犯行の衝動的な側面に影響しているものの,その程度が大きくないことから,結局,鬱病が本件犯行全体に及ぼした影響が限定的であったと判定されていることを考え併せると,本件犯行当時,被告人の善悪の判断能力や行動を制御する能力が著しく減退した状態にあったとはいえないから,被告人に完全責任能力が認められるというのである。そして,原判決の上記認定及び判断について,論理則や経験則等に照らして不合理な点は認められない。

これに対して,所論は次のようなものである。すなわち,❶Ⓒ鑑定は,
被告人の性格分析に当たり,心理検査の際に鬱病の影響が強く残っていたことが反映されておらず,情報の収集や精査が十分でないため,手法に問題があるほか,⒝被告人が犯行前に幾度となく育児に関する公的支援を求めていた事実を十分に把握しないまま,被告人が物事を抱え込みやすい性格で,実際に三つ子の育児を一人で抱え込んでいたと断定しており,前提事実を誤認しているから,信頼性が低い。他方,❷Ⓕ鑑定は,

Ⓒ鑑定の心理検査や被告人と関係者に対する面接の結果を踏ま

えているから,心理検査を実施しておらず,面接の対象や回数が少なくても,手法に問題がない。また,⒝被告人の捜査段階の供述を特に検討しなかった理由は,被告人が重度の鬱病を患っていたからであり,前提事実の取扱いを怠ったとする批判は当たらない。さらに,⒞被告人の本来の人格や産後鬱病による攻撃衝動に関する証言は,被告人との面接や供述調書の記載,父母の話等から得られた情報を基に,海外の研究成果を踏まえ,精神科医師として説明したものであって,十分な根拠を備えているから,信頼性に問題がない。その上,❸Ⓒ医師は,原審公判で,被告人の鬱病が重症であったことを認めているほか,その影響の程度について95パーセントとか100パーセントとか,普通の判断を全く失わせるほどのことはなかったという意味でその影響が限定的と説明しているから,Ⓒ医師の説明によっても,被告人の鬱病が本件犯行にかなりの影響を与えたといえる。そして,❹犯行前後の被告人の行動について

被告人は,犯行直前にⒶの泣き声を聞いて約

30分間にわたり自分を抑えようと太ももを叩くなどしていたが,耐えきれなくなって本件犯行に及んだものであるが,Ⓒ医師が,原審公判で,その際の心理状態をコップの水が溢れる情景に例えていることから,犯行の瞬間に本来の人格と異なる攻撃衝動によって突発的な行動を取ったものと見るべきである。一方,被告人の原審供述によれば,被告人は,頭が真っ白な状態で,乳児用の寝台に寝ていたⒶを抱きかかえて畳敷の和室に移動したにすぎないから,自己の行為の意味と違法性を認識し行為の統制ができている状態における行動とはいえない。しかも,⒝被告人は,犯行後に119番通報をし,臨場した救急隊員に事故であるとする虚偽
の申告をしているが,それらは衝動性が収まって自分のした行為であると自覚した結果であり,本件犯行の際に行為の意味や違法性を認識していたことを示すものではない。これらの事情を踏まえると,本件犯行の当時に被告人の産後鬱病が犯行に著しい影響を与えており,被告人は,自己の行動を制御する能力が著しく低い状態にあり,心神耗弱の状態に陥っていた合理的な疑いがある,というのである。イ
しかし,

Ⓒ医師は,本件犯行から1か月余りが経過した時点で被告

人と直接に面接した際の受け答えの様子や鬱状態とその程度を推し量る簡易自己評価式の検査(SDS)等の心理検査の結果を併せ考慮して,心理検査の時点で鬱病の影響が強く残った状態でないと判断しており,情報の収集や精査が不十分で手法に問題のある鑑定とする所論の指摘は当たらない。また,⒝Ⓒ医師は,被告人が妊娠中に病院で豊田市の自宅付近には一緒に子育てする人がいないと相談したことや,退院時に担当の医師を通じて,
市の支援を要請した事実等を把握していなかったが,
原審公判で,そうした事実を前提としても被告人の性格に関する判断が変わることはないと説明しており,その説明が合理的なものといえるから,Ⓒ鑑定の前提とした事実について,結論に影響を及ぼす誤りがあるとはいえない。
他方,❷Ⓕ鑑定は,

Ⓕ医師が,原審公判で,Ⓒ鑑定の心理検査の結果

を参照することができたと述べる一方,その心理検査の結果が間違っていて当てにならないと証言しており,結局,心理検査を実施しなかったことについて納得できる理由が示されていないほか,関係者との面接も,所論の自認するとおり,対象や回数,質問方法等の点で不十分なものと認められるから,精神鑑定の手法に問題があるというべきである。また,⒝取調べの当時に重度の鬱病を患っていたとする断定的な前提に立って,本件犯行に関する被告人の捜査段階の供述という重要な鑑定資料について十分な検討や評価を加えていない点で,鑑定の前提となる事実の取扱いにも問題があるといわざるを得ない。さらに,⒞所論のいうⒻ鑑定の合理性の根拠は,結局のところ,精神科医師であるⒻ医師が,必要と思われる検査を遂げた上で海外の研究結果を踏まえて専門家として判断した,という甚だ抽象的なものにす
ぎない。したがって,Ⓕ鑑定について,その手法や前提事実の取扱いをめぐる手続面の問題点と説明の内容に十分な根拠がないという実体面を踏まえて,Ⓕ鑑定を信頼できないとした原判断を左右するに足りない。
また,❸Ⓒ医師は,原審公判で,被告人の鬱病の程度について,抑鬱気分や焦燥感の増大等の具体的な精神症状を指摘した上,社会生活が送れないほどの重症でないと診断したものの,判断者により診断基準の当てはめが異なるから,判断者によって,被告人の状態が最重度でないという意味で重症という評価もあり得ると説明している。そして,そのような精神症状が本件犯行に影響した機序を具体的に分析して説明した上,鬱病の症状だけでなく,被告人の本来的な性格傾向も犯行に影響しているものと結論付け,数字で評価することが難しいという留保を付けながら,鬱病の影響が95パーセントとか100パーセントというわけでないという趣旨の説明をしている。このように,Ⓒ医師は,病名の診断にとどまることなく,具体的な精神症状の有様や,本件犯行に影響した機序を具体的に説明しているのに,所論は,上記のようなⒸ医師の証言の言葉尻を捉えて抽象化し,都合の良い解釈を加えるものであって,採用の余地がない。
そして,

犯行直前の被告人の心理状態を
コップの水が溢れる情景

に例えたⒸ証言を根拠とする所論は,Ⓒ医師が,被告人は病気の影響で耐性が低くなっているものの,病気を抱えていない一般の人がいら立ちを募らすうちに抑えが効かなくなって衝動的な行動に出る場合と本質的な相違がないと説明しており,このような説明の趣旨を正解せずにⒸ証言を曲解するものであって採用できない。また,乳児用の寝台で寝ていたⒶを抱き上げて板張りの洋間から畳敷の和室に移動する際に頭が真っ白な状況だったとする被告人の原審供述は,捜査官に対する供述を変更していることからも,そのままに信用することができない上,直前の行動から犯行に至るまでの一連の経過に照らし,被告人の是非弁別能力や行動制御能力の認定に有意な影響を及ぼすものではない。そして,⒝被告人の救急隊員に対する事故であるとする虚偽の申告と,犯行当時の精神状態の差異をいう所論も,そ
のような精神状態の急激な快復について,説得的な根拠が示されていないほか,本件の一連の経過に照らして不自然というほかなく,採用できない。結局,犯行前後の被告人の行動とⒸ鑑定を併せ考慮して,被告人が本件犯行の当時に完全責任能力を備えた状態にあったと判断した原判決の認定を是認することができる。以上のほか,所論が指摘するその他の点を検討しても,被告人の犯行当時の完全責任能力を肯認した原判決の認定及び判断について,所論のような事実の誤認はない。論旨は理由がない。
2
量刑不当の論旨について
論旨は,
被告人を懲役3年6月に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であり,
刑期を3年以下に短縮した上,
その刑の執行を猶予すべきである,
というのである。
そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。本件は,前記1

に掲記した傷害致死の事案であるが,原判決が説示する量

刑事情及び評価を是認することができる。すなわち,まず,本件は,被告人が,生後11か月の乳児を両手で仰向けに持ち上げて畳の上に2回にわたりたたきつける暴行を加えて,頭蓋冠骨折やびまん性脳損傷等の傷害を負わせた結果,半月後に収容先の病院で死亡するに至らせたという事案であり,罪質や内容自体から重大かつ悪質な犯行という評価を免れない。しかも,被告人は,乳児用の寝台に寝かされて抵抗する術を持たない生後11か月のⒶに対し,1メートルを超える高さから,上記のような重篤な傷害が生じるほどに力を込めて畳敷の床に仰向けに繰り返したたき付けており,甚だ危険で悪質な犯行というほかない。そして,被告人のもたらした結果はもとより取り返しのつかない重大なものであるが,被告人の暴行により頭部に重篤な損傷を受け,生後僅かで自らの母親によって一方的に生命と将来を奪われたⒶの苦痛や無念さは計り知れない。ちなみに,突然に愛する我が子を失うこととなった被告人の夫も意見陳述で悲痛な心情を吐露している。一方,被告人は,泣きやまないⒶの状態にいら立ちを募らせて,突発的に本件犯行に及んだものと認められ,その動機は誠に身勝手で過剰な反応といわざるを得ない。しかし,被告人の
患う産後鬱病の症状が動機の形成過程に一定の影響を及ぼしたことを酌む必要があるほか,被告人が,その責任感の強さもあいまって,問題を一人で抱え込み,夫や両親のほか行政機関による十分な支援を受けることができないまま,Ⓐを含む3人の子らに愛情を注ぎ,負担の大きい多胎育児に独力で懸命に取り組む中で,強い心理的負担を抱えたまま病状を悪化させ,Ⓐの泣く声をきっかけとして犯行に至ったことなどに照らすと,本件は誠に痛ましい事案というべきであり,その経緯に酌むべき点も少なくない。
所論は,❶量刑資料を検索した結果によれば,同種の児童虐待に係る傷害致死の事案で懲役刑の執行が猶予された事例があり,
本件は,
それらの事例と比較しても,
多胎育児の困難性や被告人の置かれていた環境,鬱病の影響等の点で酌むべき事情が多く,刑の執行を猶予することが十分に可能な事案であるから,本件について,同種事案の量刑傾向の中で刑の執行を猶予できるほど軽い事案と評価することができないとした原判決は,
同種事案の量刑傾向における事案の位置付けを誤っている,
❷原判決は,残された二人の幼子の成育や将来に及ぼす影響を看過している,というのである。
しかし,❶量刑判断に当たり同種事案の量刑傾向を参照することが重要であるとはいえ,量刑資料の検索結果は,あくまで行為責任に基づく量刑傾向の大枠を把握するために用いられるべきであり,その役割を超えて,上記資料に登録された個別の事例を取り上げ,その量刑判断が正当であることを前提として,量刑事情を対比して,本件の量刑判断の当否を問う所論は,方法論として妥当なものといえない。これに対し,原判決は,同種事案の量刑傾向を踏まえた上,本件がその量刑傾向の中で重い部類に属さないものの,その犯情の重さに照らして刑の執行を猶予することができるほど軽い事案でないと位置付けたものと理解することができる。そして,
原判決は,その説示から明らかなとおり,本件の犯行態様の危険性の高さや動機の身勝手さが認められるとする一方,被告人が鬱病を患っていたことや犯行に至った経緯に酌むべき点が少なくないとして,犯情に関する事情を適切に考慮している。
さらに,原判決は,その審理経過から明らかなように,多胎育児の困難性や被告人の置かれた環境,鬱病の影響等,所論指摘の事情についても看過したり量刑事情としての位置付けを誤ったりすることなく,
裁判員の参加する合議体で評議を尽くし,
上記のような評価に至ったと認められ,その判断を十分に尊重する必要がある上,その評価は上記のような量刑傾向に照らして不相当に重いといえないから,結局,本件がその犯情の重さに照らして刑の執行を猶予することができるほど軽い事案でないと位置付けた原判断を相当なものとして是認することができる。また,❷原判決は,その説示で,残された子らの存在に言及していないものの,原審の審理経過に照らし,被告人がⒶを含む三つ子の母親であったことを踏まえた量刑判断が行われたことに疑いの余地がなく,2人の幼子の存在を考慮に入れなかったと考えられない上,その存在は,一般情状の一つにすぎず,行為責任を中心とした本件の量刑判断に有意な影響を及ぼさないというべきである。以上のような罪質や犯情等に照らし,被告人の刑事責任は相当に重いといわなければならない。
そうすると,被告人が犯行後に119番通報をしてⒶの救命措置を講じたこと,自らの行為によりⒶを死亡させたことを重く受け止めて反省の態度を示したこと,父親が出廷し,家族と協力して監督する旨申し出たことなど,原判決や所論指摘の酌むべき事情に加え,原判決後に,被告人が,Ⓐの納骨に参列したほか,日々,その冥福を祈って手を合わせるなど,自己の犯行に向き合い,Ⓐに思いを馳せ,愛情と贖罪の気持ちを持ち続けていること,夫と今後の夫婦や家族の在り方について話し合ったほか,児童養護施設に入所している長男や長女との面会を重ねるなどして親子関係の再構築が進められつつあること,本件の背景にあった鬱病の治療を受けて精神状態が回復に向かっていること,保釈された後,家族や親族と共に安定した生活を送っていることなどを考慮しても,上記のような罪質や犯情等に照らし,本件が刑の執行を猶予すべき事案でないと判断した上,検察官による懲役6年の求刑に対し,被告人を懲役3年6月に処した原判決の量刑は,刑期の点を含め,重過ぎ
て不当であるとはいえない。
以上の次第で,量刑不当をいう論旨も理由がない。
3
結論
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判
決する。
令和元年9月24日
名古屋高等裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

髙橋
裁判官

入江恭子
裁判官

菱川孝之徹
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