判例検索β > 平成31年(行ケ)第10062号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号平成31(行ケ)10062
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和元年10月9日
法廷名知的財産高等裁判所
裁判日:西暦2019-10-09
情報公開日2019-10-10 10:00:14
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令和元年10月9日判決言渡
平成31年(行ケ)第10062号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和元年8月21日
判決原告X
同訴訟代理人弁理士

杉本勝徳内山邦彦岡田充浩被告
同訴訟代理人弁護士

有限会社テクノム

田勝重山田克巳山田博重上岡秀行新島由羽切正治仲村圭代小野博喜下香織山田智重平同訴訟代理人弁理士

山山大主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は,原告の負担とする。

木未子巌
事実及び理由
第1

請求

特許庁が無効2018-890044号事件について平成31年3月26日にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等



被告は,以下の商標(登録第5614453号。以下本件商標という。)

の商標権者である(甲16,17)

商標

らくらく
(標準文字)

登録出願日

平成25年4月17日

登録査定日

平成25年8月12日

設定登録日

平成25年9月13日

指定商品

第20類家具,机類

(2)

原告は,平成30年6月20日,本件商標について商標登録無効審判を請求
した。
(3)

特許庁は,上記請求を無効2018-890044号事件として審理を行い
(以下本件審判という。,平成31年3月26日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との別紙審決書(写し)記載の審決(以下本件審決という。)をし,そ
の謄本は,同年4月4日,原告に送達された。
(4)

原告は,平成31年4月25日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2
本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,らくらく
の文字からなる引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできず,本件商標は商標法4条1項10号に該当するものとはいえな
い,というものである。
3
取消事由

商標法4条1項10号該当性判断の誤り
第3

当事者の主張

〔原告の主張〕
本件審決は,原告が販売する正座用の椅子(以下原告商品という。)には,そ
のほとんどにらくらく正座椅子の文字が使用され,
らくらくの文字が単独で
用いられていると認められるものは1件のみであること,原告商品がらくらくと略称されていると認め得る事情も見いだせないことからすれば,登録出願時及び登録査定時において,引用商標は,原告の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されていたと認めることはできないと認定した。
しかしながら,
原告が原告商品に使用している
らくらく正座椅子
との標章は,
らくらくと正座椅子の2つの構成部分を組み合わせた結合商標と解されるところ,正座椅子」

との構成部分は,原告商品の普通名称を表示するものにすぎず,当該構成部分から商品の出所識別標識としての称呼,観念は生じない。これに対し,「らくらく

との構成部分は,正座椅子と用語として関連するものではなく,原
告商品の内容等を具体的に表すものではないから,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,
らくらくの部分のみ
を原告の使用商標として抽出すべきである。
また,椅子や机などの家具を販売する取引者である原告と被告とが,らくらく正座椅子かららくらくが抽出されることを前提に本件審判の請求やそれ以前の折衝を遂行しており,原告がらくらく正座椅子と本件商標との非類似の主張を一切していないという取引の実情から見ても,
らくらくの部分のみを原告の使用
商標として抽出すべきである。
本件審決は,原告の使用商標についての誤った認定を前提に,引用商標は,原告の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されてい
たものと認めることはできないとの誤った判断をしているのであるから,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
本件審決は,全体観察により,原告の使用する商標を不可分一体のらくらく正座椅子と認定したものであり,その認定に誤りはない。原告は,
らくらく正座椅子の正座椅子の部分が普通名称であるから,その
部分が分離し,
らくらく自体が使用商標であるかのように主張するが,普通名称
であれば当然のごとく要部から除外されると解することはできないし,そもそも
正座椅子が普通名称として取引者・需要者に認識されていることの立証もされていない。
また,原告が提出した証拠によっても,原告商品の取引において,需要者・取引者がらくらく正座椅子についてらくらくを抽出し,取引表示として使用されていた実態は一切確認できない。
以上によれば,本件審決の認定には何ら誤りはない。
第4

当裁判所の判断

1
商標法4条1項10号該当性判断の誤りについて

(1)

商標の類否判断

商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)

(2)

認定事実

証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。


原告は,屋号住友産業として,正座用の椅子の販売を行っており,遅くと
も昭和63年ころから原告商品を製造販売している(乙5の1)

原告商品の販売数は,平成12年及び平成15年から平成25年で,合計74万6136個である(甲1,2)

原告商品は,正座をする際に臀部の下に敷き,その上に腰を下ろして正座をすることにより,体重が分散され,膝にかかる負荷が小さくなるため,足の痺れや膝頭の痛みが緩和され,楽に正座をすることができるという正座補助具である(甲12の2,弁論の全趣旨)
。原告は,後記の原告商品の広告等において,
足のシビレザ頭の痛みに
(甲3の2~4)

足のシビレヒヒザ頭の悪い方に
(甲4の2~4)

などの文言を付し,足の痺れや膝頭の痛みが緩和され,楽に正座をすることができる椅子として,原告商品を宣伝広告している。

原告が販売する原告商品の包装箱には,
らくらく椅子
(甲8の1~4・6・

7)らくらく正座椅子

(甲8の5)又はらくらく二段正座椅子
(甲8の8)の
文字が付されている。

(ア)

広告宣伝等
平成14年1月から平成18年12月までの間に,
らくらく正座椅子
(甲

3の2~5,4の2~14,5の1~15,6の2~18,7の2~23)らくら,く万能座椅子(甲3の1,
6の1・12,7の1・16)

らくらく万能正座椅子
(甲6の6)らくらく椅子

(甲7の16)との標章とともに原告商品の写真等を
掲載した広告が,生活産業新聞に合計75回掲載された(甲3の1~甲7の23)。
(イ)

平成17年6月10日発行の
2005~2006生活用品品目別企業便覧
(甲9の1)平成22年11月10日発行の

生活産業企業名鑑2011
(甲9の2)
,平成16年4月発行の50音別電話帳吉野川市版2004年版テレ&パル50(甲11)にも,
らくらく正座椅子
(甲9の1・2,11)らく,らく万能座椅子
(甲9の2)らくらく椅子

(甲9の2)との標章とともに原告商
品の写真等を掲載した広告が掲載された。

(ウ)

原告作成の創造する企業と題するカタログにも,
らくらく正座椅子

との標章とともに,原告商品の写真等が掲載されている(甲10)。
(エ)

NHKテレビテキストきょうの健康2011年11月号において原告商
品の写真が紹介され(甲12の1・2)
,テキスト及びNHK出版のウェブサイトに
おいて,
らくらく正座いすとの標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された(甲12の3・4)

(オ)

東急百貨店の1999年7月発行の折り込みチラシ(甲13の1),市民生

活協同組合ならコープの平成23(2011)年6月21日発行の折り込みチラシ(甲13の2)近鉄百貨店の平成24年3月発行の折り込みチラシ,
(甲13の3)

同平成24年9月の折り込みチラシ(甲13の4)
,小田急百貨店藤沢店の平成24
年12月発行の折り込みチラシ(甲13の5)
,小田急百貨店町田店の平成24年1
2月発行の折り込みチラシ(甲13の6)においても,
らくらく椅子との標章と
ともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された。
(カ)

アマゾンのウェブサイトには,平成19年9月18日,平成22年4月21
日,平成23年9月19日にらくらく正座椅子との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が掲載された(甲14の1~4)

有限会社ルーツが平成6年に作成した同年度版の総合カタログには,らくらく椅子との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が(甲15の1),株式会社
ヤマソロが平成23年に作成した総合カタログ2011には,
らくらく正座椅子
との標章とともに原告商品の写真等を掲載した広告が(甲15の2),それぞれ掲載
された。
(3)

原告による引用商標の使用について

前記認定事実(2)ア,ウによれば,原告は,昭和63年頃から原告商品の販売を開始し,30年以上継続して販売していることがうかがわれ,その販売数は,平成12年及び平成15年から平成25年の12年間で約75万個に上っていること,平成14年から平成18年にかけて生活産業新聞に75回にわたり,原告商品の広告
が掲載されたほか,各種カタログ,チラシやアマゾンのウェブサイト等にも原告商品の広告が掲載されたことが認められる。
しかしながら,原告が販売する原告商品の包装箱には,
らくらく椅子らくら,く正座椅子又はらくらく二段正座椅子との標章が付されており,らくらく
の文字のみが単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)イ)。
また,原告商品の広告等には,その多くにおいてらくらく正座椅子との標章が付されており,
らくらく万能座椅子らくらく万能正座椅子らくらく正座い,,すらくらく椅子の標章が付されたものもあるものの,,
らくらくの文字のみ
が単独で使用されたものはない(前記認定事実(2)ウ)

そうすると,原告の主張する引用商標らくらくが,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものとは認められないというべきである。
(4)

原告の主張について


原告は,
らくらく正座椅子は,
らくらくと正座椅子とを結合した構

成から成る結合商標であるが,
らくらくの文字部分のみが商品の出所識別標識と
して強く支配的な印象を与えるものであるから,この部分のみを原告の使用商標として抽出すべきであると主張する。
しかし,
らくらくは,
楽であることを意味する語であり,足の痺れや膝頭の
痛みが緩和され,楽に正座をすることができるとの原告商品の機能を表している。また,
正座椅子は,正座用の椅子を意味する語であり,原告商品の用途又は商品の種類そのものを表している。よって,いずれも,それぞれの文字部分のみによって出所識別標識としての機能を発揮するとはいえない。
そうすると,原告商品の表示から,
らくらくの文字部分のみが商品の出所識別
標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえず,
らくらくの文字部分のみ
を要部として抽出することはできない。よって,原告の主張は採用できない。イ
また,原告は,
らくらく正座椅子かららくらくを抽出しているとの取

引の実情に照らしても,
らくらくの部分のみを原告の使用商標として抽出すべき
であるとも主張する。
しかし,
原告商品が
らくらく
と略称されているなどして,
らくらく正座椅子
かららくらくを抽出していることを認めるに足りる証拠はない。原告は,取引者である原告と被告が,
らくらく正座椅子かららくらくを抽出していることを
前提に本件審判請求やそれ以前の折衝を行っていたことをもって,らくらくを抽
出する取引の実情があるとも主張するが,本件審判手続における当事者の主張内容をもって,
らくらく正座椅子かららくらくを抽出していることが取引の実情
であると認めることはできず,原告の主張は採用できない。
(5)

小括

以上によれば,本件商標は,商標法4条1項10号に該当するものではない。2
結論

よって,
原告の請求は理由がないから棄却することとし,
主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官

高部眞
裁判官

小林康彦
裁判官

関根澄子規子
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