判例検索β > 平成31年(わ)第494号
業務上横領
事件番号平成31(わ)494
事件名業務上横領
裁判年月日令和元年6月3日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  刑事第5部
裁判日:西暦2019-06-03
情報公開日2020-06-04 22:35:58
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主文
被告人を懲役1年8月に処する
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,医療法人A(以下本件施設という。)の経理担当者として,本件施設の預金口座の管理等の業務に従事していたものであるが,名古屋市a区b町cd番地e所在の株式会社B銀行(以下B銀行という。)C支店に開設されていた本件施設名義の普通預金口座(以下本件施設名義口座という。)の預金を本件施設のために業務上預かり保管中,
第1

平成30年12月25日,名古屋市f区gh丁目i番地所在の本件施設にお
いて,自己の用途に費消する目的で,同所に設置されていたパーソナルコンピュータを操作し,B銀行のインターネットバンキングシステムを利用して,同日,本件施設名義口座から,株式会社D銀行に開設されていた被告人名義の通常貯金口座(以下本件被告人名義口座という。)に550万円を振込入金し,第2

同月31日,本件施設において,自己の用途に費消する目的で,同所に設置
されていたパーソナルコンピュータを操作し,B銀行のインターネットバンキングシステムを利用して,平成31年1月4日,本件施設名義口座から,本件被告人名義口座に450万円を振込入金し,
もって,それぞれ横領した。
(量刑の理由)
本件は,被告人が経理担当者として勤務していた介護施設から合計1000万円を横領した事案である。
本件は,被害額が多額である点と常習的な犯行である点において,その犯情は良くない。
被告人は,平成30年10月頃,SNSを通じて面識のない外国の軍人を名乗る者(以下本件外国人という。)と知り合い,メッセージアプリ等で連絡を取り合う中で本件外国人に好意を抱き,本件外国人から来日費用の立替え,税関での所持金の没収を免れるための罰金等の支払等の名目で送金を依頼されるや,自己資金から本件外国人側への送金を繰り返し,自己資金が底をついた後も,本件外国人の資産から後日返済してもらえると信じて,本件外国人側に送金をするために本件各犯行に及んだが,結局,本件外国人に一度も会えず,送金の返還も全く受けていない。このように,被告人は詐欺の被害者である可能性が高く,送金した自己資金の返還を受けていないことは同情に値するが,好意を抱いた本件外国人に会いたいなどといった思惑から,勤務先の資金を横領して本件犯行に及んだことは正当化できない。被害者側が被告人の厳正な処罰を求めるのは当然である。
他方,被告人は,起訴分の被害弁償はできていないものの,余罪の被害額のうち3000万円分の被害弁償に充てるために自宅の土地建物や自動車等,ほぼ全財産の所有権を被害者に移転しており,その結果,被害者において,これらを売却することにより,少なくとも1000万円程度を余罪分の被害弁償に充当できることが見込まれている。このように被告人において被害弁償の努力を最大限して,余罪分とはいえ多額の被害弁償を行ったことは,被告人に有利に考慮する必要がある。また,被告人は,余罪分を含めて横領金の全額を本件外国人側に送金している上,本件外国人に一度も会えていない。このように被告人が余罪分を含めて現実的な利益を享受していないことも,一定程度被告人に有利に考慮する必要がある。これらの事情のほか,被告人が事実を素直に認めて反省の情を示すとともに,更なる被害弁償の意思を示していること,被告人に前科はなく,被告人が長年にわたり本件施設で真面目に働いてきたことなど被告人にとって酌むべき事情を最大限考慮しても,本件の犯情や被害回復の状況等に照らすと,本件に執行猶予を付するのは相当ではなく,主文掲記の実刑は免れない。
(求刑

懲役2年6月)

令和元年6月3日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判官

板津正道
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