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損害賠償請求事件
事件番号平成29(ワ)1300
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成31年4月18日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  民事第5部
裁判日:西暦2019-04-18
情報公開日2020-06-04 22:37:13
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平成31年4月18日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成29年(ワ)第1300号

損害賠償請求事件

口頭弁論終結日平成31年1月10日
判主1決文
被告は,原告に対し,180万5608円及びこれに対する平成26年12
月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3
訴訟費用はこれを9分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の負担と
する。
4
この判決の第1項は,本判決が被告に送達された日から14日を経過したと
きは,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,427万1830円及びこれに対する平成26年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,県立高校の陸上部の部活動においてハンマー投げの練習中,部員がハンマーの投てき動作に入り,原告が次に投てきするため待機していたところ,投てき
動作中の部員のハンマー(以下本件ハンマーという。
)のワイヤーが破断して,
本件ハンマーのヘッド部分が原告の左足に当たって原告が左脛骨遠位部開放性骨挫傷等の傷害を負った,という事故(以下本件事故という。
)について,原告が,
①被告のハンマー設置・管理の瑕疵,②ハンマー投げ練習場の設置・管理の瑕疵,及び③陸上部顧問の教諭が,防護ネットなどを設置することにより練習場を適切に
管理する義務等に違反したなどの内容を主張して,国家賠償法1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償請求として,高校の設置者である被告に対し,慰謝料等合
計427万1830円及びこれに対する平成26年12月25日(本件事故のあった日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1前提事実(各項末尾に証拠等の掲記がないものは,争いがない。)
当事者等

原告は,平成26年12月25日当時,被告が設置する愛知県立a高等学校
(以下本件高校という。
)に在学していた高校3年生であり,本件高校の陸上競
技部(以下本件陸上部という。
)に所属するハンマー投げの選手であった。
原告は,平成24年夏頃にハンマー投げを始め,平成25年10月には,b大会の女子ハンマー投げで4位(記録○m)
,平成26年8月には,c大会のハンマー投
げで2位(記録○m)
,同年10月には,d陸上競技の少年女子Aハンマー投げで3
位(記録○m)の成績を収め,同年12月にはハンマー投げの強豪校であるe大学への推薦入学が決まっており,実際に平成27年4月に同大学に入学した。(甲1,
47,原告本人[1,2頁]



被告は,本件高校を設置した普通地方公共団体であり,f教諭は,本件高校
に赴任した平成21年4月から本件陸上部の顧問に就任し,本件事故当時も本件陸上部の顧問であり,被告の公権力の行使に当たる公務員であった。(証人f[1
頁]


陸上競技種目としてのハンマー投げは,取っ手のついた長さ約1.2メー
トルのワイヤーの先端に鉄又は真ちゅう製の殻に鉛などを詰めた金属球(ヘッド部分)を取り付けたハンマーを,直径2.135メートルのサークル内から,体を回転させながら投てきし,サークル中心で交わる角度が34.92度の扇形内に落下させ,その飛距離を争う競技である。
ハンマーの投てき者は,通常,まず身体の周りに沿うようにハンマーを回し(ス
イング)
,投てき者の前面にハンマーのヘッド部分の最下点が来るようにしてハンマーのヘッド部分のスピードを上げ,次に最下点の手前から回転(ターン)に入り,
サークル内で,徐々に回転軸,重心を移動させることによりハンマーのヘッド部分を動かし,加速させ,3回転又は4回転して,ハンマーを手から離して投げ出す。イ
ハンマーを投てきする際,手を離すタイミングがずれたり,投てき動作中に
ワイヤーが切れるなどして,想定外の方向にハンマー又はそのヘッド部分が飛ぶことがある。また,ハンマーのヘッド部分自体が割れることもある。(証人f[8
頁]

本件高校のハンマー投げ練習場の状況
本件高校の校地内の施設の配置は別紙2記載のとおりであり,ハンマー投げ練習場(以下本件練習場という。
)は,本件高校の運動場の北東端の位置にあり,投

てきサークル(投てきを行うためのサークルであり,地面はコンクリート製である。
)と金属製のサッカーゴール枠にかけられた防護ネット(以下本件防護ネットという。)等からなる。これらの配置は別紙3記載のとおりであり,別紙3記載のABCDHGFEAの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分に金属製のサッカーゴール枠が置かれていた。

本件事故の状況

原告は,平成26年12月25日午後2時頃,本件陸上部の部活動として,
本件練習場において,他の部員と共にハンマー投げの練習をしており,次に投てきするために本件防護ネットの外側で順番待ちをしていた。

本件陸上部の部員で,当時高校2年生であったgは,本件練習場において,
原告の順番の前に本件ハンマーを用いて投てき動作に入ったところ,本件ハンマーのワイヤーが破断し,本件ハンマーのヘッド部分が本件防護ネットをすり抜けて原告の左すねに当たり,原告は左脛骨遠位部開放性骨挫傷,はく離骨折等の傷害を負った。
2争点

本件ハンマーが国家賠償法2条1項にいう公の営造物に当たるか
本件ハンマーに設置又は管理の瑕疵があるか

本件練習場に設置又は管理の瑕疵があるか
f教諭に注意義務違反があったか
損害及びその額
3争点に対する当事者の主張
本件ハンマーが国家賠償法2条1項にいう公の営造物に当たるか(争点


について
ア原告の主張
公の営造物
(国家賠償法2条1項)とは,国又は公共団体の特定の公の目的に供される有体物及び物的設備をいい,動産を含む。本件ハンマーは被告の設置した県立高校である本件高校の部活動のために供される有体物であるから,公の営造物に該当する。
イ被告の主張
本件ハンマーはいずれかの場所に設置するものではないから,本件ハンマーは,公の営造物ではない。

本件ハンマーに設置又は管理の瑕疵があるか(争点

)について

ア原告の主張
本件事故は,本件ハンマーのワイヤーが切れたことにより生じたものである。本件ハンマーは通常有すべき安全性を欠いており,その設置又は管理に瑕疵があったといえる。
イ被告の主張
仮に,本件ハンマーが公の営造物であったとしても,本件ハンマーは通常有すべき安全性を欠いていたわけではなかった。すなわち,本件ハンマーは購入後約1か月しか経過しておらず,購入後本件事故に至るまでの使用状況に照らし,金属疲労が生じていたとはいえない。また,本件ハンマーの外見上,そのヘッドとワイ
ヤーとの接合状況に問題がなかった。したがって,ワイヤーが切れたからといって,本件ハンマーが通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。

ハンマー投げのハンマーは競技中にその本来の用法に従って使用していてもワイヤーが切れることがあるから,ワイヤーが切れた事実をもって直ちに本件ハンマーが通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。
したがって,本件ハンマーの設置又は管理に瑕疵があったとはいえない。本件練習場に設置又は管理の瑕疵があるか(争点

)について

ア原告の主張
ハンマー投げは,そのハンマーが想定外の方向に飛んでいけば,人の生命,身体に重大な危険を与えるものであるから,投てき専用の囲い,防護ネットを設置する等安全対策を講じるべきであった。また,従前,ハンマーのワイヤーが切れて,ハンマーのヘッド部分が本件防護ネットの外に出たことがあった。したがって,人の身体に対する危険を避けるために,本件防護ネットは,本件練習場の投てきサークルの前面開口部以外の方向にハンマーが飛んだ場合,ハンマーが本件防護ネットから外に飛び出さないように設置又は管理されるべきであり,具体的には前面開口部以外は防護ネットで完全に囲い,防護ネットの外にハンマーが飛び出さないよう
にすべきであった。
しかし,本件防護ネットは,ハンマー投げ専用の防球ネットではなく,老朽化した高さ約2.5メートルのサッカーゴール枠,鉄パイプ枠及び木に網をくくり付けた手作りの簡素なものであり,その網目がたるんで大きくなったり,切れたりしている場所もあった。また,本件防護ネットの網の下側は固定されておらず地面
との隙間が30センチメートル程度空いている箇所があり,投てき方向に向かって右後方には出入口(以下本件出入口という。
)が設置され,その上側と投てきサ
ークルに入る側からみて右側は固定されていたが,下側と投てきサークルに入る側からみて左側は固定されていなかった。
したがって,本件練習場はハンマー投げの練習場として通常有すべき安全性
を欠いていたものである。
イ被告の主張

ハンマー投げは,何らかの事由によって,ハンマーが投てき者の意図しない方向に飛んでしまう危険があるから,このような危険の発生を回避するような措置が取られていれば,ハンマー投げの練習場として通常有すべき安全性は備えているというべきである。
本件練習場では,サークルの周りを防護ネットで囲い,投てきサークルの前面開口部以外の方向にハンマーが飛んだ場合にも,本件防護ネットから外に飛び出さないように工夫している。すなわち,本件防護ネットの上部を強固に固定し,下部には30センチメートルの隙間はないし,その固定はゆとりを持たせ,ハンマーが当たった際に力が逃げるようになっている。さらに,本件防護ネットの下部には,
予備のネットを厚めに畳み込んで地面に設置し,ハンマーの衝撃を吸収するように工夫し,本件陸上部の部員の待機場所である本件出入口の南側の本件防護ネットの下にはドラム缶が設置され,ハンマーが本件防護ネットを潜り抜けたとしても,ドラム缶に当たるような設計になっている。加えて,本件防護ネットの強度についても問題はなかった。

また,本件練習場は公認競技会場の投てき場ではなかったから,投てき専用の防護ネットを設置しなければならないわけではなく,投てき専用の防護ネットを設置していなかったからといって,本件練習場が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。
さらに,本件練習場には投てき位置より右後方に本件出入口が設置されているが,
投てき時に投てき位置から出入口へ一直線上にある場所に立ち入らなければ,身体への危険は生じず,f教諭は,

指示をしていた。また,

これによって,部員が本件練習場の開口部から出入りすることがなくなり,正常なハンマー投げの投てき動作を前提とすると,より安全になっていたといえる。防護ネットがたるむ等したり,穴が開いたりした場合,f教諭又は本件陸上部の部員が,これらのたるみや穴を補修していた。
f教諭は,本件練習場の待機場所として,別紙3記載のCDの西側(以下,
AからJまでのアルファベットは,特に言及がない限り,別紙3記載のアルファベットを指す。

で待機していれば,ハンマーが投てき者の意図しない方向,例えば本件出入口の方向に飛んできても,身体に対する危険は回避できた。このような待機場所を前提として,通常の用法に従って使用していれば,身体に対する危険は回避できた。したがって,本件練習場は通常有すべき安全性を欠いていたものではない。f教諭に注意義務違反があったか(争点

)について

ア原告の主張
ハンマー投げは,そのハンマーが想定外の方向に飛んでいけば,人の生命,身体に重大な危険を与えるものであり,f教諭はこれを認識していたから,①本件練習場に適切な防護用の囲い,ネット等を設置し,管理すべき義務,②ハンマー等の用器具を定期的に観察し,修理・交換を指示する義務,③仮にハンマーが飛んできても安全性が確保される場所を待機場所として選定し,当該場所での待機を本件陸上部の部員に指示する義務を負っていた。

しかし,f教諭は,上記⑶アのように本件練習場の防護ネットを十分に設置,管理せず,上記①の義務に違反した。
また,f教諭は,本件陸上部の部員に対し,定期的にワイヤーの交換を指示することはなく,大きな大会の前にその大会中に切れないように指示したにとどまり,本件陸上部の部員は,ハンマーのワイヤーが切れてから交換していた。したが
って,f教諭は,上記②の義務にも違反した。
さらに,ハンマーが飛んできても安全性が確保されるには本件陸上部の部員と本件練習場の防護ネットとの距離が10メートル必要であったところ,f教諭は,本件練習場の出入口から約2メートル離れ,本件防護ネットが固定されていない場所(Jの北西側)を待機場所として指示するにとどまっていた。そして,原告は,
本件事故当時このf教諭の指示どおりの位置で待機していた。したがって,f教諭は,上記③の義務にも違反した。

イ被告の主張
f教諭に注意義務違反はなかった。
f教諭は,日常的に自ら本件防護ネットの状況を点検し,その際,ネットの傷み,緩み,ほつれ,位置のずれ等を確認し,部員に指示して,その補修を行わせ,また練習前に防護ネットの点検をすることも指示していた。特に,f教諭は,原告及びgに対し,回転運動に伴うハンマーのワイヤーの破断事故が起こり得るとして,本件防護ネットの状態確認には注意するよう必要な指示をした。したがって,f教諭
次に,f教諭は,本件陸上部の部員に対し,投てき前にハンマーのグリップ,
ワイヤー,ワイヤーの接合部等に変形や異常がないか点検すること,必要に応じハンマーの修理,ワイヤーの交換を行ったりすることを指示しており,必要に応じて個別に同様の指示をするとともに,点検の際に著しい変形又は異常があったハンマーは使用しないようにとも指示していた。また,f教諭は,本件陸上部の部員に対し,ハンマーの変形や傷みについてどのように対処すればよいかわからない場合に
は,f教諭に相談するようにとも指示していた。さらに,f教諭は,gに対し,約1か月に1度を目安に,ハンマーのワイヤーを交換するように指示していた。他方で,本件ハンマーは,購入してから約1か月しか経っておらず,使用回数も極めて多かったわけではないから,f教諭において,本件ハンマーのワイヤーが破断するとは予見できなかった。

したがって,f教諭は,上記ア
f教諭は,原告を含む本件陸上部の部員に対し,ハンマーが誤って飛んできても安全が確保される場所(CDの西側)を待機場所として指定し,その場所で待機すること,投てき位置と本件練習場の出入口との延長線上に待機しないこと,投てき者には投てき前に必ず声掛けをし,待機場所にいる他の部員がハンマーの投て
きに入ることを認識できるようにすることを指示していた。しかし,原告は,f教諭の指示した待機場所とは異なる位置(JとABの間)で待機していた。
したがって,f教諭は,上記ア
損害及びその数額(争点

)について

ア原告の主張
原告は,本件事故により以下の合計427万1830円の損害を被った。傷害慰謝料

350万円

原告は,女子ハンマー投げにおいて将来有望な選手として期待されていたにもかかわらず,本件事故により,約1年半にわたり十分な練習ができず,大会への出場ができなくなり,また,本件事故で生じた長さ約2センチメートルの傷及び手術痕は消えることなく残っている。原告は,これらにより多大な精神的苦痛を被ったから,傷害慰謝料は350万円をくだらない。
交通費

31万5830円

奈良県内の医療機関を受診するため,別紙4記載のとおり通院交通費を要した。近親者付添費用

10万6000円

原告が奈良県内の医療機関を受診する際には,別紙4記載のとおり近親者が付き添っており,原告の母親が原則として原告に付き添っていた。原告の母親は,保育園を運営しており,同人が付き添う際,時給900円のスタッフを1日10時間ずつ雇用していた。また,原告の祖母が原告の母の代わりに付き添った平成27年7月15日については1日7000円として算定している。
弁護士費用

から

35万円

までの合計392万1830円の約1割に相当する35万円が本件
と相当因果関係を有する弁護士費用といえる。
被告主張の損益相殺については,被告主張の支払を受けたことは認めるが,その評価は争う。
イ被告の主張
事実は否認し,評価は争う。また,原告は,治療費として12万0379円,災害にかかる見舞金として2万3000円の支払を受けたから,これらについては,
損益相殺すべきである。
第3当裁判所の判断
1認定事実
以下の事実は,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる。本件ハンマーの状態

本件ハンマーは,男子練習用6キログラムのハンマーであり,被告が購入し,
平成26年11月13日に本件高校に納入された。本件陸上部は,期末考査を理由に,同月18日から同年12月1日まで,活動を休止しており,本件ハンマーを利用した投てき練習は行われていない。gは,同月23日及び同月24日,国体強化選手の強化合宿に参加し,その際に本件ハンマーを持って行き,二日間で通常の1週間分の投てきを行った。
(乙16,18(枝番号を含む。,19)


平成26年度において,本件陸上部でハンマー投げをする生徒は6名おり,
特定のハンマーを誰が使用するということはなく,交替で使用していた。本件陸上部で使用されるハンマーは部室に保管されていた。f教諭がワイヤーを交換するよう指示したことがある選手は,本件事故当時,原告とgの2名であった。(乙19,
証人f[8,9,19頁]
,証人g[5頁]

部活動に関するガイドライン等

岐阜県,東京都,神奈川県の高等学校体育連盟などがそれぞれ作成した部活
動中の事故防止に関するガイドライン(作成時期は,東京都が平成20年6月,神奈川県は平成21年8月である。
)では,ハンマー投げで考えられる危険として,投
げない場合でもスイングやターンの際に不意に手からハンマーが離れたり,ワイヤー(ピアノ線)が切れたりして360度いかなる方向へも飛ぶことがあること,投てき囲いを使用していても設置状態によっては隙間から投てき物が飛び出すことがあることが指摘されており,また,防護ネットにハンマーが当たった際,ネットが
予想以上に伸びることがあるので,待機者は防護ネットの間近にいることは危険であり,離れた位置に立つようにすると指摘され,東京都の作成したガイドラインで
は,待機者は防護ネットから10メートル離れた場所で待機するものとされている。(甲19から甲21まで)

被告において,本件事故の当時,上記のようなガイドラインは策定されてい
なかった。
(弁論の全趣旨)

日本陸上競技連盟競技規則では,ハンマーが投てき動作中あるいは空中で壊
れた時は規則に従って投げられたものであれば1回の無効試技には数えないとされていた。
(乙13)
本件防護ネットの設置状況等

被告,静岡県,三重県及び岐阜県において,陸上競技部があり,かつ,学校
運動場でハンマー投げの練習を行っている県立高校71校のうち(愛知県内は26校)
,投てき場所の周囲に防護ネットを設置している学校は50校(愛知県内は20校)あったものの(21校は防護ネットが設置されていない。,日本陸上競技連盟)
の規格品であるハンマー投げ用囲いを使用している学校はなかった。(乙14,15。
いずれも枝番号を含む。



本件練習場は,当初は投てきサークルだけで,防護ネットやゲージなどもな
かったものの,f教諭が本件高校にある不要物品(サッカーゴール枠と不要ネット)を再利用して本件防護ネットを設置した。さらに,f教諭は,平成25年8月8日,個人で建設用足場を購入し,本件防護ネットを増設した。
(乙2,11,1
9)

本件事故当時における本件防護ネットの状況は,別紙3記載のとおりであり,
サッカーゴールにネット(約3センチメートル四方の網目のもの)が上からかけられた状態であった。BF,GH,CGには上からネットがかけられていたものの,AE,AB,BC,CDにはネットはない。
(甲5,乙21,証人f[28頁]

BCとFGが出入口として開いており(本件出入口)
,FGにかけられていたネッ
トをのれんを分けるように入っていく形になっていた。
(乙24の3,証人g[17
頁]
,原告本人[8頁]


また,防護ネットの網の下側は固定されておらず,そのほかにABFEAを直線で囲んだ部分には,ドラム缶が立てて置かれていたり,椅子が置いてあったりし,CDHGCを直線で囲んだ部分には,ドラム缶が横に寝かせて置かれ,予備のネット,審判台の骨組みなどが置かれていた。
(甲5,乙10,原告本人[8頁]

さらに,ハンマーが野球場の方向に出て行った出来事(下記

)があってからは,

そちらに飛んでいかないように樹木のところ(AJ間)に補助ネットが増設された。(甲5,乙21)

ネットに穴が開いている(約3センチ四方の網目の結び目が切れている)の
に気付いた場合,部員たちがひもで結ぶなどして補修することになっており,f教諭も穴が開いているのを見かけたときは補修していた。
(証人f[11,12頁]

証人g[12,13頁]
,原告本人[8頁]

f教諭の指示(乙11,12,19)

f教諭は,平成21年度に本件陸上部の顧問に就任した当初,防護ネットを
設置せず,投てきサークルから15メートルから20メートルまでの距離にある樹木の陰で待機させており,その後,生徒の競技力の向上(県大会決勝レベルの生徒が出現した。
)により,本件高校にある不要物品(サッカーゴール枠と不要ネット)を再利用して防護ネットを設置したものの,待機場所は上記と同様とし,変更しなかった。
また,平成25年度まで(全国大会レベルの生徒が出現した。
)には,待機場所を

投てきサークルから7メートルから8メートルまでの距離にあるJにある樹木の周辺に変更した。平成26年度(全国大会入賞レベルの生徒が出現した。)に,以下の
の出来事が生じてから,AJに補助ネットを増設し,待機場所を投てきサークルから3メートルから4メートル離れたCDの西側付近に変更した。しかし,f教諭は,ABFEAを順次直線で囲んだ部分に部員がいても注意しておらず,また,原
告に対し,待機場所の変更を伝えておらず,原告は待機場所が変更されたことを知らなかった。
(乙11,証人f[38,50頁]
,原告本人[7頁]
。f教諭は,原告

に対し,待機場所の変更を伝えたか覚えていないと供述し,また,原告は,当時,高校3年生であって,出場予定の大会はなく,下級生と一緒に部活動に参加していたわけでもなかったため(後記⑹)
,待機場所の変更は原告に伝わっていなかったと
認められる。

本件事故後,投てきサークル付近に立ち入るのは投てき者だけとし,他の者は全員落下想定位置の約10メートル後方に待機させるようにした。
(乙11)
イf教諭は,平成23年2月頃,投てきの確認事項を書面で作成した。その書面には,ゲージは規格品ではないので信用しない,サークル後方などゲージを破られても安全な位置で待機する,ハンマーの初速は高校生レベルでも秒速2
0メートルを超え,人間が投てき物を視認して安全な方向へ動き出すまでに0.3秒から0.5秒ほどの時間がかかる,などと記載され,同書面は平成23年度までは部員に配付されていたものの,平成24年度以降は確認事項を先輩が後輩に伝える体制ができていたとして,上記書面は配付されなかった。
(乙12,証人f[9,
10頁]



また,f教諭は,ハンマーを投げるときは声掛けをすること,投げる人がい
たらハンマーを注視すること,投てきサークルも投げる前に部員たちでチェックすること,ハンマーを投げた後は洗って油を差すこと,防護ネット,ハンマーなどを順番に点検して投げることに支障がないと判断した時に投てきするよう生徒に指導していた。
(原告本人[20頁から23頁まで]

平成26年6月頃,本件練習場でハンマー投げの練習をしていた際,本件練習場から道路を挟んで北側にある野球場の方向にハンマーがいき,練習中の野球部を応援していた保護者にぶつかりそうになり,f教諭,原告及び本件陸上部の部員は保護者から危ないと抗議された。
(甲37,証人f[38,39頁]
,原告本人
[9頁]


本件事故直前の原告の活動の状況
原告は,スポーツ推薦によりハンマー投げの強豪校であるe大学への進学が決ま
っており,引退はしていなかったものの,平成26年9月以降下級生と一緒に練習することはなく,同年10月に開催されたdの後,2週間ほど休んでおり,本件事故当日,久しぶりに練習に参加していた。
(甲1,証人f[5,40,41,49,
50頁]
,原告本人[2頁]

本件事故の発生
本件陸上部は,冬休み中であった平成26年12月25日,午後1時から練習を開始し,午後1時45分頃からハンマー投げの投てき練習を開始した。(甲11)
原告は,Jの樹木を右斜め後ろに見る場所で投てきサークルの方向を見て,順番待ちをしてgが投てきを終えるのを待っていた。
(甲46,証人f[3頁]
,原告本

人[26頁]

gが投てき動作に入り,スイングをし,ターンの動作に入り,4回転目(最終回転)に入ったところ,本件ハンマーのワイヤーが破断し,gは,投てきサークル付近で尻餅をついた。
(前提事実

,証人f[15,16頁]
,原告本人[11,12,

27頁]

本件ハンマーのヘッド部分は,FG,BCを抜けて転がって,ワイヤーをつけるための出っ張りが原告の左足に当たり,原告は,その場で後ろに倒れて尻餅をついた。原告の左足には,直径1cmほどの穴ができていた。
(甲41,原告本人[12,
14頁]

本件ハンマーのヘッド部分は投てきサークルの北側道路のフェンスに当たって止
まった。
(原告本人[28,36頁]

原告が倒れていたのはAJの中間付近であり,補助ネットより前の位置である。(証人g[15頁]

事故後の診療

原告は,本件事故後,平成26年12月25日午後2時28分に愛知県瀬戸
市にあるh病院に救急搬送され,左脛骨遠位部開放性骨挫傷,はく離骨折と診断された。

さらに,その後も痛みと腫れが収まらず,iセンターにおいて,距骨離断性骨軟骨炎,左脛骨遠位端骨折と診断された。
(甲41,47)
イ原告は,本件事故により,以下のとおり入通院し,医療費を要した。h病院(甲25,41,48)
平成26年12月25日
同月26日
同月29日
平成27年

5682円

合計

664円

3日

同月
1月

合計

7日

同月21日
同年

2月

6日

同年

3月13日
同月27日

365円

合計

506円

同年
4月16日

1000円

同年

5月

7172円

1日

合計11日通院

j整形外科(甲27,42(枝番号を含む。)

平成27年

5月

8日

同月26日

合計

7560円

合計2日通院

iセンター(甲48,弁論の全趣旨)
平成27年

6月

2日

3100円(原告の母親が付添い)

k大学(甲48,弁論の全趣旨)
平成27年

6月25日

5384円(原告の母親が付添い)

l病院(甲43,48,弁論の全趣旨)
平成27年7月15日から同月18日まで4日間入院
7万3258円

(同月15日は原告の祖母が付添い,その余の3日間は原告の母親が付添い)同年

8月12日

1392円(原告の母親が付添い)

同年

9月30日

同年12月

1836円(原告の母親が付添い)
金額不明(原告の母親が付添い)

平成28年

1月13日

金額不明(原告の母親が付添い)

同年

2月24日

2056円(原告の母親が付添い)

同年

2日

4月13日

金額不明(原告の母親が付添い)
合計6日通院

m整形外科(甲48,弁論の全趣旨)
平成27年11月

5日

同年12月

3日

2224円

同月17日
同月24日
平成28年

1月

合計4896円

5日

同月14日

合計3464円

合計6日通院

原告に対する給付
原告は,独立行政法人日本スポーツ振興センターに対し,医療費の請求を行い,本件事故による医療費の給付として,平成27年9月25日から平成29年4月25日までの間に合計12万3079円を受領した。
(甲48,乙31)
また,原告は,同年2月27日,愛知県公立高等学校PTA連合会から本件事故による治療見舞金2万3000円を受け取った。
(乙32)

原告は,平成27年4月にe大学に入学したものの,十分な練習ができず,試合に出られなかったが,平成28年度には競技に復帰し,平成28年4月にはn優勝(記録○メートル)
,同年5月にはo優勝(記録○メートル)の成績を収めるな
どした(自己ベストは○メートル)ものの,日本選手権の参加標準記録(56.00m)まであと少しという状況にある。
(前提事実

,乙17,原告本人[14,1

5頁]

2
(本件ハンマーが国家賠償法2条1項にいう公の営造物に当たるか)
について
公の営造物とは,国又は公共団体により直接に公の目的に供用される有体物又は物的設備をいうところ,本件ハンマーは,本件高校が本件陸上部の練習のために購入して(認定事実
ア)
,本件陸上部の部員が部活動において使用し,部室で保管さ

れていたものであるから(認定事実


,まさしく,公共団体である被告により県

立高校の部活動という公の目的に供用されたと認められ,公の営造物に当たる。被告は,いずれかの場所に設置していないから公の営造物ではないと主張する。確かに,国家賠償法2条1項は公の営造物の設置又は管理に瑕疵があることを要件とする規定であるから,公の営造物が設置又は管理の対象となる物であることは必要であるが,設置又は管理の対象となる物であれば足り,必ずしも設置がされなければならないものではない。したがって,被告の主張は採用できない。3
(本件ハンマーに設置又は管理の瑕疵があるか)について

原告は,本件ハンマーのワイヤーが切れた原因等については具体的な主張はしておらず,本件ハンマーのワイヤーが切れたことのみを根拠に,本件ハンマーは通常有すべき安全性を欠いていると主張する。
しかし,ハンマー投げにおいては,競技中でもワイヤーが破断することを前提としたルールが規定されており(認定事実

ウ)
,ハンマー投げにおいて,ワイヤーが

破断することを完全に防止することは困難なものであるといえる。したがって,本件ハンマーのワイヤーが破断したからといって,そのことのみから本件ハンマーが通常有すべき安全性を欠いていたとは認められない。
また,本件ハンマーが納入された平成26年11月13日の時点において(認定
はないし,本件ハンマーが納入されてから本件事故の発生まで約1か月半の期間中,本件事故直前にgは本件ハンマーを利用して2日間のうちに1週間分の投てき練習をしているものの

期末考査のため本件ハンマーを用い
本件ハンマーのワイヤーが破断する危険

が高まるほどに本件ハンマーを使用していたと認めることは困難であるし,その他,本件事故当時本件ハンマーのワイヤーが破断する危険が高まっていたと認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると,本件証拠上,本件ハンマーの設置又は管理の瑕疵があったと認めることは困難である。
4
(本件練習場に設置又は管理の瑕疵があるか)について
本件練習場の形状は,認定事実

のとおりであり,出入口は前面開口部以外

にもあった(本件出入口)
。原告は,出入口を前面開口部だけにしなかったことをも
って瑕疵があると主張する。
しかし,公益財団法人日本陸上競技連盟の陸上競技ルールブックにおいて,競技場に設置される防護ネットは,前面開口部だけが出入口となっているU字型であって,高速で動くハンマーを制止できるように設計し,保守管理されるべきものとされているが,このような仕様とされているのは,競技場において他の種目と同時に実施されることを想定しているためであり,そうではない練習場に設置される防護
ネットは,もっと簡易な構造でもよいとされている(乙13)
。ハンマー投げの選手
が数名程度の高等学校であれば,他の生徒が使用していない校庭において,校庭外に飛び出すおそれがない位置で投てき練習をする場合には,防護ネット等の設置を要しない場合もある。また,防護ネット等の設置を要する場合であっても,それぞれの練習環境等により,安全性への配慮が図られていれば,競技場に設置される仕
様のものと異なる仕様のものであるからといって,通常有すべき安全性を欠いていると直ちに評価されるものではない。原告の上記主張を採用することは困難である。しかしながら,全国大会に入賞するレベルの選手が現れた状況であれば,練習の強度,投てき回数を増やし効率を高めるため,次に投げる生徒が投てきサークルの近くに待機するなどの必要がある一方,生徒の投げだしの初速が上がるなどし
てその危険度も増すのであるから,防護ネットを適切に設置してハンマーが止まるようにし,また,万が一ハンマーが防護ネットを出た場合に備えて待機場所を適切
に設定するなどして生徒の安全を確保し,部活動を行う必要があり,それを満たす設備にして初めて,通常有すべき安全性を有するというべきである。そこで,本件練習場につき検討すると,前面開口部以外にも,投てき方向に向かって右後方に出入口(本件出入口)が設けられている。本件出入口を設けることによって,投てきサークルからの出入りを素早く行うことができることから,f教諭は,練習効率を上げるために本件出入口を設けたものと認められる(証人f[50頁])
。防護ネットの隙間からハンマーが飛び出すことがないような構造にしてあれば,前面開口部以外に出入口を設けたからといって,通常有すべき安全性に欠けることにはならない。しかし,本件出入口は,BC及びFGが開いていてほぼ一直
線に出ていく構造になっており,これでは,ハンマーが本件出入口から飛んでいくのを防ぐことができない。防護ネットを設置し,その外側で生徒を待機させる以上は,防護ネットからハンマーが飛び出すことがないように防護ネットを設置することが必要である。FGを出入口とするのであれば,ADはすべてネットでふさぎ,AE間からFG間を通って投てきサークルに入るなどかぎの手型のような出入口を
設けるなどすることによって,防護ネットからハンマーが飛び出すことを防止することができる。上記のように本件出入口の向きを変える作業は難しいことではなく,単にネットを閉じる場所の変更で足りることであり,不可能や困難を強いるものではない。
また,待機場所の位置についても,f教諭は平成26年6月頃の出来事以降,待
機場所を変更したにもかかわらず,原告に伝えていなかったし(認定事実



そもそも,Jの樹木周辺に待機するよう指示していた時期もあり(認定事実



原告はまさにその周辺に立っていたところ,本件ハンマーが当たった。これらのことからすると,本件練習場は,防護ネットを適切に設置してハンマーが止まるようにできておらず,待機場所もその変更に関する指示も不適切であったというべきであり,本件練習場には,ハンマー投げの練習場として通常有すべき安全性を欠いていたと認めざるを得ず,設置又は管理の瑕疵(国家賠償法2条1
項)が認められる。
5
(f教諭に注意義務違反があったか)について
本件ハンマーのワイヤーが破断したからといって,f教諭に注意義務違反が
あったといえないことは,本件ハンマーの設置又は管理に瑕疵があったといえないのと同様である(第3の3)
。また,本件ハンマーは平成26年11月に納入されて
おり

,比較的新しいハンマーであり,f教諭において,ワイヤーが

破断するおそれがあることを予見し得た特段の事情があったとは本件証拠上は認められないから,本件ハンマーのワイヤーが破断したことについて,f教諭がハンマー等の用器具を定期的に観察し,修理・交換を指示する義務に違反したと認めることはできない。
次に,防護ネットの設置又は待機場所の指示に関して,f教諭に注意義務違反があったかを検討すると,上記4

のとおり,ネットの配置について工夫をし

て出入口を投てきサークルと一直線にならないように設ければ,本件事故を防ぐことができたというべきであり,本件防護ネットの配置を変更することは決して不可能でもなければ困難でもない。f教諭は,①本件練習場において適切に防護用の囲い,ネット等を設置し,管理すべき義務

に違

反したといわざるを得ない。

また,本件事故の前,本件防護ネットからハンマーが出ていくという危険な
事態が生じ,他の部活動の保護者から抗議を受ける状態になっていたのであるから,この時点で,本件陸上部全体で抜本的な見直しをし,それを周知徹底すべきであった。ところが,f教諭は,待機場所を変更したにもかかわらず,平成23年2月頃に作成,配付していた確認事項の書面を更新して再度渡すこともしなかったし,少なくとも変更後の待機場所は原告には伝わっていなかった(認定事。周知不足である。

しかも,f教諭が作成した確認事項によれば,ハンマーの初速は高校生レベルでも秒速20メートルを超え,人間が投てき物を視認して安全な方向へ動き出すまで
に0.3秒から0.5秒ほどの時間がかかると記載されており

,そ

の時間に反応できないのであれば,その分(約6メートルから約10メートルまでの距離をハンマーが移動している間,人間は動けないという計算になる。,遠くで)
待機させるほかないにもかかわらず,本件練習場では,投てきサークルから約7メートルから8メートルまでの距離の場所付近を待機場所にしていた(本件事故前に本件防護ネットからハンマーが出て行くという事態を受けた変更後でも4メートルほどの距離である。


。全国大会レベルの選手が出ればその初速は上

がるのであるから,失投やワイヤー破断によりハンマーが意図しない方向に飛んだ場合,対処できないのは当然である。そのような場所に生徒達を待機させるのであれば,ハンマーが飛んできても当たらないようにネットなどを設置すべきであったところ,現に本件ハンマーが本件防護ネットをすり抜けてしまった。そして,f教諭は,上記4

で述べたとおり,本件出入口をかぎの手型に配置すべきであり,決
して困難を強いるものではない。それか,不十分な設備の状態なのであるから,練習の効率を犠牲にしてでも平成21年度当初の待機場所(約15メートルから20メートルまでの距離)に戻すとか,本件事故後にしていた落下想定場所から数メートル離れた地点で待機させるなどすべきであった



そうすると,f教諭は,仮にハンマーが飛んできても安全性が確保される場所を待機場所として選定し,当該場所での待機を本件陸上部の部員に指示する義務(第2
に違反したと認められる。
6
(損害及びその額)について
傷害慰謝料(原告請求額350万円)

原告は,本件事故により左脛骨遠位部開放性骨挫傷,はく離骨折等の傷害を負い,約1年半の間に合計31日間入通院し,その間ハンマー投げの競技を行うことはできなかった。推薦によってハンマー投げの強豪校であるe大学に進学し,ハンマー投げの選手として活躍することを希望していた原告にとって,本件事故によって選手生命が脅かされることとなり,競技を継続することができないのではないかと不
安の日々を過ごさざるを得なかったことによる心痛は想像に難くない。その被った精神的苦痛に対する慰謝料は150万円が相当で
ある。
⑵交通費(原告請求額31万5830円)
原告は,iセンター,k大学,l病院を受診し,医療機関の場所からして電車賃を要したことは認められるものの,タクシー代費に関する領収書などの証拠は見当たらない。交通費として請求額の9割を相当と認める。
31万5830円×90%=28万4247円
⑶付添費用(原告請求額10万6000円)

遠方の病院へ通院するのに近親者が合計12日間原告に付き添っていたから(認,付添費用として1日3300円が相当と認められることを踏まえ合計3万9600円を相当と認める。
⑷小計
150万円+28万4247円+3万9600円=182万3847円
7過失相殺について
原告は,選手としてハンマー投げの危険性を十分認識していたというべきであるし,野球場の方向にハンマーが出て行ったことがあり
れることもこれまでの部活動において指導され分かっていた

,ワイヤーが切
。原告

は,これらのことを知っていたにもかかわらず,ワイヤーの破断などによりハンマーが飛んでくる可能性の高い投てきサークルと本件出入口とを結んだ直線上の場所付近に立っていたのであるから

,原告にも少し落ち度があるというべ

きである。
しかしながら,被告は,県内の相当数の高等学校が校内のグラウンドでハンマー投げの投てき練習を実施しているにもかかわらず,事故防止のためのガイドライン,手引書等は作成されておらず,個々の指導教諭の判断任せの状態になっており,本件高校において,ハンマー投げという一定の危険を有するスポーツについて,待機
場所の変更を周知徹底することなどができていればこのような痛ましく,一人の選手の将来に影を落とすような事故は発生することはなかったし,しかも,全国大会レベルの能力の高い選手を複数輩出するようになったにもかかわらず,防護ネットを本件高校にあった不要物品でまかなったままで,その増設も教諭個人の支出で対処するしかしてこなかったのであるから,被告の責任は大きいというべきである。原告の落ち度を考慮しても過失相殺は1割が相当であり,それが限度である。8損益相殺
被告は,原告が治療費として12万3079円及び治療見舞金2万3000円の給付を受けたこと

しかし,上記治療費は原告が治療費として支払った額とほぼ同額である(認定事実⑻イ)から,治療関係費にすべて充当され,他の損害項目には充当されない。また,治療見舞金については,その名目,金額からして,原告が本件事故を原因として利益を受けたものとは認め難く,公平の見地からして,その額を被告に対して賠償を求める損害額から控除することが相当なものであるとは認められない。したがって,
被告の主張は採用できない。
9小括
以上を前提に計算すると,被告が原告に賠償すべき金額は,164万1462円である(損害額182万3847円の9割)
。そして,弁護士費用についてはその1
割程度である16万4146円を相当と認める。

第4結論
以上のとおりであるから,原告の請求は,180万5608円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。仮執行免脱宣言の申立ては相当でないので付さない。

名古屋地方裁判所民事第5部

裁判長裁判官

唐木浩之
裁判官

賀来哲哉
裁判官

庄司真人
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