判例検索β > 平成30年(わ)第880号
現住建造物等放火未遂、逃走
事件番号平成30(わ)880
事件名現住建造物等放火未遂,逃走
裁判年月日令和元年5月15日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  刑事第2部
裁判日:西暦2019-05-15
情報公開日2020-06-04 22:36:38
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平成30年

880号,第965号

現住建造物等放火未遂,逃走被告事件

主要判決速報

主文
被告人を懲役4年に処する
未決勾留日数中270日をその刑に算入する。
訴訟費用中,証人Aに支給した分は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

復縁の要求を拒否した元妻の態度に立腹し,元妻であるBら2名が現に住居に使用し,かつ,同人ら2名が現にいる名古屋市a区bc丁目d番地所在の鉄筋コンクリート造陸屋根2階建居宅(床面積合計約105.16平方メートル)に放火しようと考え,平成30年2月7日午前零時30分頃から同日午前零時35分頃までの間に,同居宅1階勝手口ドア前において,同ドア前に灯油をまくなどした上,何らかの方法で火を放ち,同居宅を焼損しようとしたが,居住者に消火されたため,同居宅に隣接した納屋の柱を焼損し,同居宅勝手口ドアを焦がすなどしたにとどまり,その目的を遂げなかった

第2

現住建造物等放火の被疑者として,名古屋簡易裁判所裁判官が発付した勾留状により平成30年2月17日から勾留され,その勾留中に,同裁判所裁判官が発付した鑑定留置状により同年3月2日から名古屋拘置所に鑑定留置され,同裁判所裁判官の鑑定留置場所変更許可決定により同年4月9日から名古屋市守山区大森北2丁目1301番地独立行政法人国立病院機構東尾張病院に鑑定留置されていた未決の者であるが,同年5月22日午後9時過ぎ頃,同病院第2病棟準保護室1号室において,同室の腰高窓に設置されていた硬質ゴム製の窓止具を手で押し下げるなどして同窓を開け,同所から同病棟外に出た上,同病棟の周囲を囲うフェンス(高さ約3.8メートル)を乗り越えるなどして同病院の敷地外に出て逃走した
ものである。
(量刑の理由)
量刑の中心となる現住建造物等放火未遂の犯行についてみると,その犯行態様は,深夜,灯油約400ミリリットルを入れたペットボトルを持って住宅街にある元妻方へ赴き,居住者が就寝するのを待って,灯油を勝手口ドア前にまくなどし,火を放ったというもので,極めて危険かつ悪質である。灯油を持参している点で相応の計画性も認められる。結果は未遂で,財産的被害は約8万円にとどまったものの,隣接する納屋の柱が焼損し,勝手口ドアが焦げるなどしており,居住者に与えた恐怖や近隣の建物への延焼の危険性という点では既遂と大差はない。未遂に終わったのは,就寝中の居住者が火災に気付いて,迅速に消火活動をしたからで,消火活動が遅れていれば,被害が拡大した可能性もある。元妻に復縁を拒まれて電話を切られたことに腹を立てて犯行に及んだという動機は,短絡的かつ身勝手極まりないもので,酌量の余地はない。
逃走の犯行についてみても,元妻方への前記放火事件で身柄拘束されながら,鑑定留置先の生活環境に不満を抱き,窓のセンサーが発報しないよう細工を施し,元妻宛てのはがきを持って逃走するなど,自己中心的な動機による計画的かつ巧妙なもので,悪質である。以上の事情からすると,被告人の刑事責任は,燃料を使用した現住建造物等放火未遂の事案の中でも,相応に重く,たやすく刑の執行を猶予することが許される事案とはいえない。そうすると,被告人や被告人と同居予定の横浜市在住の友人と,元妻らとの間で,被告人が元妻らに今後接触せず,前記友人がこれを監督する旨の合意書が作成されており,元妻らは厳しい処罰を希望していないこと,本件の背景となった飲酒やパーソナリティ障害について,今後の対応策が講じられていること,前記友人が公判廷で監督を誓約していること,被告人が公判廷において事実を認め,謝罪の弁を述べていること,量刑上考慮すべき前科がないことなど,被告人に有利な事情を最大限考慮してもなお,刑の執行を猶予できるほどの情状があるとはいえず,被告人に対しては,未遂の減軽をした刑期の範囲内で主文の刑に処するのが相当であると判断した。
(求刑懲役6年)
令和元年5月15日
名古屋地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官

齋藤千恵
裁判官

近藤和久
裁判官

鈴木
真理子
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