判例検索β > 平成30年(わ)第50号
死体遺棄
事件番号平成30(わ)50
事件名死体遺棄
裁判年月日平成31年3月14日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  豊橋支部
裁判日:西暦2019-03-14
情報公開日2020-06-04 22:38:21
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主文
被告人を懲役1年6月に処する
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成28年10月24日頃,愛知県内のa湾において,A(当時63歳)の死体を同湾内の海中に投棄し,もって死体を遺棄した。
(証拠の標目)
記載省略
(事実認定の補足説明)
1
被告人は本件について黙秘し,弁護人は,A(以下被害者という。)が死亡した事実は争わないが,公訴事実に対して述べるべき意見はないと主張している。
そこで,
以下では,
被告人に死体遺棄罪が成立すると判断した理由について,
補足して説明する。

2
前提となる事実等
被害者は,
妻であるBとの間に4人の子をもうけ,
被告人はその二男である。
被害者は,愛知県豊橋市内で,Bと家庭内別居状態で生活していたが,平成28年10月22日午後7時頃に目撃されたのを最後に行方不明となり,それ以降,携帯電話や金融機関の口座,クレジットカード等の使用履歴等において,被害者の生存を示すものはない。
平成29年3月に実施された検証の結果,被害者方作業場(以下,単に作業場という。)内に設置された木棚や工具箱から血液反応が認められ,そのDNA型はSTR型15座位及びアメロゲニン型のすべてにおいて被害者のものと一致した。
被告人が使用する普通乗用自動車(以下被告人車両という。)に装着されていたカーナビゲーションシステムの走行軌跡によれば,被告人車両は,平
成28年10月24日午前8時52分に被告人方を出発,同日午前8時56分に愛知県豊橋市b町地内の係留所(以下,単に係留所という。)に停車,同日午前10時58分に係留所を出発,同日午前11時8分に被告人方に到着している。また,翌25日未明に被告人車両が停止した12地点のうち,10地点はごみ集積所の直近であった。
平成28年10月24日当時,被告人は,小型船舶操縦士の資格を有し,ゴム製の小型船舶を所有していた。
平成28年11月7日から同年12月26日の間,Cを名乗り,使用車両の下4桁ナンバーが▲▲▲▲
(被告人車両と同一)又は▲▲▲▲
(作
業場に駐車してある普通貨物自動車と同一)である人物が,5回にわたり,リサイクル業者である株式会社Dを訪れ,金属類を売却した。
3
被告人の捜査段階供述について
被告人は,捜査段階において,次のとおり供述している。
平成28年10月23日午前6時30分頃,被害者と口論となり,被害者が丸ノコを振り回してきたので,作業場の中で被害者の前頭部を2回ハンマーで殴った。その後すぐに被害者の死体をコンクリートを混ぜるためのフネに入れて作業場の奥へ移動させ,死体のヘソの辺りで横に切断し,ビニール袋にそれぞれ上半身と下半身を入れ,翌24日の朝まで作業場の隅に置いておいた。24日午前9時頃,被告人車両で被害者方へ行き,後部荷台に死体を入れたビニール袋2個,ゴムボート,船のエンジン,ハンマー等を積み込んで係留所へ行き,膨らませたボートに被害者の死体等を乗せた。午前10時前頃にはボートで海へ出発し,1時間半くらいかけてa湾の中心に向けて移動した。中心辺りと思った地点でボートを停め,死体と重りをロープで縛って結び,海の中へ投げ捨てた。帰りは追い風,追い波だったので,行きよりも半分くらいの時間で戻れ,係留所には午後0時頃に着いた。燃えるゴミの日にフネやゴムボート等をゴミ袋に入れて処分し,ボートのエンジンはDに売却した。
この供述は,作業場に被害者のものと認められる血液反応があったことや,
被告人車両のカーナビゲーションシステムの走行軌跡の解析結果(ただし,時間帯については1時間ほど齟齬がある。),リサイクル業者の買取記録等,上記2で認定した客観的事実によって裏付けられている上,当時の風向等や航行実験結果とも概ね整合している。
また,被告人は,平成29年3月8日に実施された引き当たり捜査に際し,被害者の死体を保管するなどした場所として作業場を,被害者の死体をボートに乗せて出発した場所として係留所をそれぞれ案内し,同月12日には,被害者のいとこであり,被害者の不在者財産管理人に選任されたE弁護士に対し,被害者の死体を解体して海に捨てた旨述べ,さらに,同月23日に実施された検証の際には,海上保安庁の巡視艇に乗船してa湾内に赴き,被害者の死体を投棄した地点を説明した。このように,被告人の供述は,被害者の死体を海に投棄したという点で一貫している。加えて,被告人の供述内容は相当な具体性を有している。
以上によれば,被告人の捜査段階供述は信用でき,被告人が被害者の死体をa湾内に投棄した事実が認められる。
4
よって,被告人には判示のとおりの死体遺棄罪が成立すると判断した。
(法令の適用)
罰条

刑法190条

未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用

刑事訴訟法181条1項本文(負担)

(量刑の理由)
本件は,被告人が,父親である被害者の死体を遺棄した事案である。被告人は,ゴムボート等を用意した上,被害者の死体に重りをつけるなどして発見が困難な海中に投棄した。犯行態様は,死者の尊厳を踏みにじるもので悪質性が高く,本件が死者に対する社会の宗教感情を害する程度は相当に大きい。被害者の死体は未だ発見されておらず,また,被告人は公判廷において一切を黙秘していることから,本件の詳細には不明な点もあるが,被告人の行動に照らせば,被害者の
死体の発見を防ぐ目的で犯行に及んだと認められる。弁護人は,本件の経緯となる被害者が死亡した状況につき,被害者側に非難されるべき行動があるとともに,被告人にとって身を守るためにやむを得ない限度での反撃であったという状況が認められ,被告人の行為については重く処罰すべきでないことを基礎付ける事情があると主張するが,被告人において,被害者の死亡を認めた後に適切な対応をとることは十分可能であったというべきであって,本件犯行に及んだことには厳しい非難を免れず,弁護人の上記主張は本件の量刑を大きく左右するものではない。以上によれば,本件は死体遺棄の事案の中でも重い部類に属する事案であり,被告人に前科前歴がないことや,被害者の遺族でもある被告人の母及び兄姉らが被告人に対する寛大な処分を求めていることなどの事情を十分に考慮しても,その刑の執行を猶予することはできず,被告人を主文の実刑に処するのが相当と判断した。(求刑-懲役2年6月)
平成31年3月14日
名古屋地方裁判所豊橋支部

裁判官

明日利佳
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