判例検索β > 平成29年(ワ)第1897号等
不正競争行為差止等請求事件、不正競争行為差止請求反訴事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成29(ワ)1897等
事件名不正競争行為差止等請求事件,不正競争行為差止請求反訴事件
裁判年月日令和元年5月27日
裁判所名大阪地方裁判所
権利種別不正競争
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2019-05-27
情報公開日2019-07-23 18:00:28
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令和元年5月27日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成29年(ワ)第1897号

不正競争行為差止等請求事件(本訴)

平成29年(ワ)第6434号

不正競争行為差止請求反訴事件(反訴)

口頭弁論終結日

平成31年3月8日
判決
本訴原告(反訴被告)
同訴訟代理人弁護士

本福永同草深
本訴被告(反訴原告)

サンケイフーズ株式会社

本訴被告(反訴原告)

サンケイアクア株式会社

上記両名訴訟代理人弁護士

谷口由記同山下侑士同林祐樹同木澤
圭一朗

同宇根駿同山同
本部三慶株式会社

小澤主1健策聡充彦人拓文
本訴被告(反訴原告)らは,食品添加物である殺菌料製剤(その容器又
は包装を含む。)に,別紙被告商品表示目録記載1又は2の表示を使用し,又は別紙被告商品表示目録記載1又は2の表示を使用した食品添加物である殺菌料製剤を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。2
本訴被告(反訴原告)らは,その占有に係る別紙被告商品表示目録
記載1又は2の表示を使用した食品添加物である殺菌料製剤(その容器又は包装に同表示をしている場合,当該容器又は包装を含む。)を廃棄せよ。3
本訴被告(反訴原告)サンケイフーズ株式会社は,本訴原告(反訴被
告)に対し,本訴被告(反訴原告)サンケイアクア株式会社と連帯して,8250万6268円及びうち5387万4677円に対する平成29年3月13日から,うち160万6051円に対する平成29年11月1日から,うち1952万5540円に対する平成30年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
本訴被告(反訴原告)サンケイアクア株式会社は,本訴原告(反訴被
告)に対し,8250万6268円及びうち5387万4677円に対する平成29年3月11日から,うち160万6051円に対する平成29年11月1日から,うち1952万5540円に対する平成30年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,第3項記載の金員の限度で,本訴被告(反訴原告)サンケイフーズ株式会社と連帯して)を支払え。
5
本訴原告(反訴被告)のその余の本訴請求及び本訴被告(反訴原告)ら
の反訴請求をいずれも棄却する。
6
訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを5分し,その1を本訴原告(反訴
被告)の負担とし,その余を本訴被告(反訴原告)らの負担とする。7
この判決は,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
請求
本訴

(1)主文第1項及び第2項と同旨。
(2)本訴被告(反訴原告)ら(以下,単に被告らという。)は,別紙被告商品目録記載の各商品並びにそれらの広告及び取引書類に,別紙被告品質表示目録記載の表示をし,又は同記載の表示をした別紙被告商品目録記載の各商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示してはならない。
(3)本訴被告(反訴原告)らは,その占有に係る前項記載の表示をした別紙被告商品目録記載の各商品(その容器又は包装に同表示を使用する場合,当該容器
又は包装を含む。)及び広告等の各表示物件を廃棄せよ。
(4)ア本訴被告(反訴原告)サンケイフーズ株式会社(以下,単に被告サンケイフーズという。)は,本訴原告(反訴被告。以下,単に原告という。)に対し,本訴被告(反訴原告)サンケイアクア株式会社(以下,単に被告サンケイアクアという。)と連帯して,1億4423万5531円及びうち8407万8037円に対する平成29年3月13日から,うち250万4382円に対する平成29年11月1日から,うち3565万1082円に対する平成30年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

被告サンケイアクアは,原告に対し,1億4423万5531円及びうち8
407万8037円に対する平成29年3月11日から,うち250万4382円に対する平成29年11月1日から,うち3565万1082円に対する平成30年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,上記ア記載の金員の限度で,被告サンケイフーズと連帯して)を支払え。
2
反訴

(1)原告は,その販売に係る別紙原告商品目録記載の商品の容器・包装のラベル若しくはその広告に,別紙原告品質表示目録記載の表示を使用し,又は同記載の表示をした商品を譲渡し,若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
(2)原告は,その占有に係る前項記載の商品の容器・包装のラベル,広告及び電
気通信回線を通じて提供される表示から,前項記載の表示を抹消せよ。第2

事案の概要

1
請求の要旨

(1)本訴
本訴は,殺菌料製剤の製造販売業者であり,別紙原告旧商品表示目録記載の各表示(以下,両表示を併せて原告旧商品表示という。)を使用した殺菌料製剤をかつて販売していた原告が,被告らが別紙被告商品目録記載の各殺菌料製
剤(以下,目録の番号に従って被告商品1及び被告商品2といい,両商品を併せて被告各商品という。)を販売等することに関して,以下の各請求をする事案である。すなわち,

シ粉

被告らが,別紙被告品質表示目録記載のとおり,内容成分高度サラ12.00%という品質表示(以下被告品質表示という。)をした被
告各商品を販売するなどしたことは,不正競争防止法2条1項14号(以下,単に14号ということがある。)の不正競争(ただし,平成28年1月1日より前の行為については平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項13号の不正競争。以下,現行法を記載する。)に該当するとして,ⅰ
同法3条1項に基づき,被告品質表示をした被告各商品の販売等の差止め
(第1の1(2))を,

同条2項に基づき,被告品質表示をした被告各商品等の廃棄(第1の1
(3))を求めるとともに,

被告らが,原告旧商品表示と同一の商品表示である別紙被告商品表示目録記載の各商品表示(以下,両表示を併せて被告商品表示という。)を使用した被告商品1を販売するなどしたことは,同法2条1項1号(以下,単に1号ということがある。)の不正競争に該当するとして,ⅰ
同法3条1項に基づき,被告商品表示を使用した食品添加物である殺菌料製
剤の販売等の差止め(第1の1(1))を,

同条2項に基づき,被告商品表示を使用した食品添加物である殺菌料製剤の
廃棄(第1の1(1))を求めた上,


被告らが,上記①及び②の不正競争を行って原告の営業上の利益を侵害した
として,同法4条に基づき,損害賠償金1億4423万5531円及びうち平成26年3月から本訴提起の日の前日である平成29年2月28日までの間における原告の逸失利益の額である8407万8037円に対する訴状送達の日の翌日(被告サンケイフーズについては同年3月13日,被告サンケイアクアについては同月1
1日)から,うち本訴提起の日である同月1日から同年10月31日までの間における被告商品2の販売分に対応する原告の逸失利益の額である250万4382円に対する不正競争の日の後である同年11月1日から,うち本訴提起の日である同年3月1日から平成30年8月31日までの間における被告商品1の販売分に対応する原告の逸失利益の額である3565万1082円に対する不正競争の日の後である同年9月1日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(第1の1(4))
という事案である。
(2)反訴

反訴は,被告らが,原告が,別紙原告品質表示目録記載のとおり,高度さらし粉液体製剤及び成分<主剤>高度さらし粉7.50%という品質表示
(以下,これらの表示を併せて原告新品質表示という。)をした別紙原告商品目録記載の商品(以下原告新商品という。)を販売するなどしたことは,不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当するとして,

同法3条1項に基づき,原告新品質表示を使用した商品の販売等の差止め
(第1の2(1))を,

同条2項に基づき,原告新品質表示を使用した商品等から原告新品質表示の
抹消(第1の2(2))を求める事案である。
2
前提事実(当事者間に争いがないか,後掲書証〔なお,この判決では,書証
の枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)原告による原告旧商品の販売

原告は,殺菌料製剤の製造販売業者であり,三慶グループと呼ばれる企業グ
ループの中核企業である(争いのない事実)。三慶グループには,他に三慶株式会社等がある(乙1)。
原告は,平成5年2月,原告旧商品表示(PERFECT・PA/パーフェクト
・ピュアーエース)を商品名として使用し,成分●主剤/高度サラシ粉12.00%という品質表示(以下原告旧品質表示という。)を使用した食品添加物である殺菌料製剤(以下原告旧商品1という。)の製造販売を開始した。原告旧商品1は,水産物等の殺菌に用いるもので,その主剤とされる高度サラシ粉は,亜塩素酸塩を主成分とするものであった(以上,争いのない事実,甲27,弁論の全趣旨)。
また,原告は,原告旧商品1と同内容の殺菌料製剤を,大東物産株式会社(以下大東物産という。)向けのプライベートブランド商品として,ビューティック12の商品名で販売した(乙12,弁論の全趣旨。以下,原告旧商品1と原告
旧商品2を併せて原告各旧商品という。)。

被告サンケイフーズは,平成7年に三慶グループに参画し,原告から原告各
旧商品を仕入れ,同グループの一員として,原告と並んでその販売を行っていた(争いのない事実,乙5,6)。
(2)原告による商品切替えと被告らによる継続販売

食品添加物公定書は,厚生労働大臣が定めた食品添加物の成分規格等を収載
したものである(食品衛生法11条1項,21条)ところ,その各版の解説書における高度サラシ粉の成分の記載には,次のとおり変遷がある。
すなわち,平成4年の第6版では,主成分として,次亜塩素酸カルシウムCa(OCl)2とヒドロキシ次亜塩素酸カルシウム〔Ca(ClO2)・2Ca(OH)2又はCa(ClO2)・Ca(OH)2〕とされていた(甲38)が,前者の化学式ではOCl(次亜塩素酸)と表記されていたのに対し,後者の化学式ではClO2(亜塩素酸)と表記されていた(甲39)。これに対し,平成11年の第7版では,後者の化学式がCa(ClO)2・2Ca(OH)2又はCa(ClO)2・Ca(OH)2とされ,OCl(次亜塩素酸)のみが表記されるようになった(甲38)が,同年の食品添加物便覧では,依然と
して上記第6版の化学式と同じ化学式が表記されていた(甲41)。その後,平成19年の第8版では,第7版と同じ表記とされた(甲8の2)。


原告は,上記の第6版の下で,前記のとおり亜塩素酸塩を主成分とするもの
を高度サラシ粉として,それを主剤とする原告旧商品1の販売を開始したが,少なくとも上記の第8版以降は,その主剤は高度サラシ粉の成分規格に適合していなかった。
そこで,原告は,平成21年8月20日,原告旧商品1について,その製造を終了させ,在庫品の出荷完了をもってその販売も終了させることとし,同日,その旨をホームページに掲載してアナウンスした(争いのない事実,甲16,乙42)。その上で,原告は,同月頃,原告旧商品1に替えて,品質表示として高度さらし粉液体製剤/成分<主剤>高度さらし粉用し,商品名が「ネオクリーンPA7.50%(原告新品質表示)を使
S」である原告新商品の販売を開始した(争

いのない事実)。

これに対し,被告サンケイフーズは,上記の原告による商品切替えの方針に
反対したため,原告各旧商品の在庫品の販売については,原告は行わずに被告らが行うこととなった。そして,その販売については,被告サンケイフーズ又は被告サンケイアクアが担当した(弁論の全趣旨)。なお,被告サンケイアクアは,平成21年9月にサンケイフーズ有限会社東北を商号変更し,移行して設立された株式会社であり,被告サンケイフーズのグループ会社である(争いのない事実,甲29,乙4)。
(なお,原告によるこの商品切替え時に,原告が,被告らに対し,原告旧商品表
示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したか否か,それに基づき平成23年9月までの時期に被告らが後記の被告各旧商品の製造販売もしたかについては争いがある。)
(3)被告各旧商品の販売

被告らは,平成23年9月をもって,原告の三慶グループから完全に独立し
た(争いのない事実)。そして,原告は,同月をもって,被告らに対する原告各旧商品の在庫販売を終了した(争いのない事実)。

(なお,このときに,原告が,被告らに対し,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したか否かについては争いがある。)イ
被告サンケイアクアは,少なくとも同年10月以降,原告各旧商品と同じ成
分規格と製法(すなわち,主剤の高度サラシ粉の主成分は亜塩素酸塩)で製造された殺菌料製剤に,品質表示として原告旧品質表示と同じ被告品質表示(内容成分
高度サラシ粉12.00%)を,商品名として原告旧商品表示と同じ被告商品
表示(PERFECT・PA/パーフェクト・ピュアーエース)を使用した被告商品1(後に述べる被告旧商品1)を製造販売するとともに,大東物産向けのプライベートブランド商品として,原告旧商品2と同じ被告商品2(後に述べる被告旧商品2)を製造販売した(争いのない事実,弁論の全趣旨)。
被告サンケイフーズは,これらの被告各商品(後に述べる被告各旧商品)を販売するに当たり,同月29日,被告らの従前からの販売代理店の1つである株式会社フードケアリ(以下フードケアリという。)に対し,食品添加物・殺菌料製剤『パーフェクトPA』の販売者変更についてのご案内と題する書面(以下本件案内文書という。)を送付した(乙30の2ないし4)。本件案内文書には,

この度,三慶株式会社より『パーフェクトPA』を継承し,サンケイフーズ株式会社の専売品として販売を継続して参ります事となりました。

などと記載されていた(乙30の4)。

このとき販売された被告各商品(被告各旧商品)は,原告各旧商品と同様,
次亜塩素酸カルシウムではなく亜塩素酸塩を主成分とする高度サラシ粉を主剤としつつ,内容成分高度サラシ粉12.00%との品質表示を用いるも
のであったため,原告各旧商品と同様に,少なくとも前記第8版以降の高度サラシ粉の成分規格に適合していなかった。そのため,このときの被告各商品(被告各旧商品)に表示された,高度サラシ粉を12%含有する旨の品質表示(被告品質表示)は,不正競争防止法2条1項14号の品質誤認表示に該当するものであった。(4)被告らによる商品切替え等


被告サンケイアクアは,平成29年11月1日から,被告商品表示と被告品
質表示はそのままに,被告各商品の成分規格を前記第8版のそれに適合するものに変更したとして,変更後の商品の販売を開始した(弁論の全趣旨。以下,被告商品1のうち同年10月31日まで販売されていたものを被告旧商品1といい,同年11月1日以降に販売されたものを被告新商品1という。また,被告商品2のうち同年10月31日まで販売されていたものを被告旧商品2といい,被告商品2のうち同年11月1日以降に販売されたものを被告新商品2という。そして,被告旧商品1及び2を併せて被告各旧商品,被告新商品1及び2を併せて被告各新商品という。)。


また,被告サンケイアクアは,被告新商品1の商品名も変更し,平成30年
12月以降は,原告旧商品表示とは異なるSuper.PA(スーパー・ピーエー)という商品表示を使用した殺菌料製剤を販売している(乙60,弁論の全趣旨)。
3
争点

(1)本訴関係

1号関係固有の争点

原告旧商品表示の周知性並びに原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1との誤認混同のおそれの有無(争点1)

1号関係及び14号関係に共通の争点

(ア)原告旧商品表示及び被告品質表示の使用の明示又は黙示の許諾の有無(争点2)
(イ)原告の営業上の利益の侵害の有無,本訴請求の権利濫用性等(争点3)(ウ)被告らが被告商品表示及び被告品質表示をするおそれの有無と廃棄の要否(争点4)

(エ)被告らの共同不法行為責任の成否(争点5)
(オ)原告の損害の有無及び額(争点6)

(2)反訴関係
原告新品質表示の品質誤認表示該当性(争点7)
4
争点に関する当事者の主張

(1)争点1(原告旧商品表示の周知性並びに原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1との誤認混同のおそれの有無)について
(原告の主張)

原告旧商品1が,平成18年の時点でその主たる用途先の業種である数の子
処理加工業における殺菌料製剤として約5割のシェアを有していたことに照らせば,原告旧商品1の商品表示である原告旧商品表示は,遅くとも同年には,需要者の間に広く認識されていた。このことは,原告旧商品1が平成21年8月の時点でその潜在的な需要者である塩干・塩蔵品製造業者及び冷凍水産物製造業者の約半数に販売されていたことからも明らかである。
原告旧商品1の販売を中止した現在でもなお原告に対してその発注等がなされていること(甲36,37,43)に照らせば,原告旧商品表示の周知性は維持され
ているし,被告らが原告旧商品表示と同一の商品表示である被告商品表示をした被告旧商品1及び被告新商品1の販売等をすることは,原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1について出所が同一であるなどと誤認させるものである。イ
原告旧商品1の需要者は,数の子処理加工業者だけではないから,被告らが,
数の子処理加工業者に被告旧商品1を販売していないからといって,原告旧商品1と被告旧商品1について出所が同一であるなどと誤認させるおそれがないとはいえない。
(被告らの主張)

原告旧商品表示が平成21年8月の時点で需要者の間に広く認識されていた
ことについては,積極的には争わない。もっとも,原告が,同年9月以降,原告旧商品表示を使用せず,別の商品表示を商品名として使用した殺菌料製剤を販売し続けた一方,主として被告サンケイアクアが,商品名として原告旧商品表示と同一の
商品表示である被告商品表示を使用した被告旧商品1を販売し続けたことに照らせば,遅くとも平成26年の時点で,原告旧商品表示の周知性は消滅している。原告が指摘する事例(甲36,37)は,発注元が販売代理店を通じて被告旧商品1を継続的に購入していることに照らせば,原告旧商品表示の周知性が維持されていることや原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1について出所が同一であるなどと誤認させるおそれのあることの表れとして理解するのではなく,発注元のミスとして理解すべきである。

原告旧商品1の需要者であった数の子処理加工業者が,原告旧商品1の販売
が終了した以降,原告新商品を購入するようになった一方,被告旧商品1を購入していないことに照らせば,原告旧商品1と被告旧商品1について出所が同一であるなどと誤認させるおそれは生じていない。
(2)争点2(原告旧商品表示及び被告品質表示の使用の明示又は黙示の許諾の有無)について
(被告らの主張)


被告らは,平成21年8月,原告との間で,原告から仕入れた原告各旧商品
を販売することだけでなく,原告各旧商品の製造販売を継承して,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示を使用することについても合意しており,少なくとも黙示の許諾があったといえる。また,このことからして,原告旧品質表示と同一の表示である被告品質表示をすることについても合意していたといえる。

被告らの元代表者であるP1と原告の代表取締役であるP2,P3及び取締
役であるP4が平成23年9月13日に話し合った(以下,同日の話合いを本件話合いという。)結果,被告らと原告は,原告各旧商品の取引は終了するものの,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示を使用することについて合意した。このことは,P1が後日送信したメール(乙25,31,37等)の内容や,被告サンケイフーズが販売代理店に本件案内文書を送付したことか
ら明らかである。
被告サンケイアクアは,被告サンケイフーズが三慶グループから完全に独立した平成23年10月から原告旧商品表示と同一の商品表示である被告商品表示を使用した被告旧商品1を継続的に販売しており,原告もこのことを認識しながら本訴を提起するまで何ら異議を述べることがなかったのであるから,原告旧商品表示を使用することについては黙示の許諾があったといえる。
以上のことからすると,原告旧品質表示と同一の表示である被告品質表示をすることについても合意していたといえる。
(原告の主張)

原告は,平成21年8月,被告らに対し,原告各旧商品の在庫品の販売については許諾したが,被告らが原告各旧商品の製造販売を継承することは認めておらず,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示を使用することについても許諾しておらず,黙示の許諾があったともいえない。そもそも,被告らがこの時点で原告から明示又は黙示の許諾を得ていたのであれば,被告らが平成23
年9月に原告から明示の許諾を得るか否かという問題が生じる事態になるはずがない。
そして,原告は,本件話合いの場において,被告らに対し,以後,原告旧商品1や原告旧商品表示と同一の商品表示をした殺菌料製剤を販売しないよう求めており,原告旧商品表示と同一の商品表示を使用することについて,明示の許諾をしていな
い。このことは,本件話合いが,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示が使用されていることを把握した原告が被告らに対して警告したことに端を発してもたれたものであったり,原告が,本件話合い後に,被告旧商品1が偽物であるとしたりしているという本件話合いの前後の状況から明らかである。被告らが指摘するメール(乙37)は,P1が,原告から許諾を得ていない中で,
被告らが原告旧商品表示と同一の商品表示を使用した殺菌料製剤を販売していく決意をしたことの表れと見ることもできるなど,被告らが製造した殺菌料製剤に原告
旧商品表示と同一の商品表示を使用することについて合意したことの表れであるとは直ちにいえない。本訴の提起まで一定の時間を要したのは,訴訟に必要な事実関係の調査や証拠の収集に時間を要したためであることに照らせば,原告は,被告らに対し,原告旧商品表示を使用することについて,黙示の許諾もしていない。以上のほか,原告は,原告旧品質表示と同一の表示である被告品質表示をすることについても許諾をしていない。
(3)争点3(原告の営業上の利益の侵害の有無,本訴請求の権利濫用性等)について
(被告らの主張)

争点2に関する被告らの主張のとおり,原告は,被告らに対し,原告旧商品表示及び被告品質表示をすることについて,明示又は黙示の許諾をしていた以上,原告が被告商品表示及び被告品質表示の使用について差止請求権及び損害賠償請求権を行使することは,権利濫用,信義則違反である。
また,争点7に関する被告らの主張のとおり,原告新商品に関する原告新品質表
示は,品質誤認表示であるから,そのような原告について,被告品質表示が品質誤認表示であることによる営業上の利益はなく,仮にそれがあったとしても,このような原告が,被告品質表示が同号の品質誤認表示であることを根拠として差止請求権及び損害賠償請求権を行使することは,権利濫用,クリーン・ハンズの原則違反,信義則違反である。

(原告の主張)
否認ないし争う。
(4)争点4(被告らが被告商品表示及び被告品質表示をするおそれの有無と廃棄の要否)について
(原告の主張)

被告らは,平成29年11月1日から被告各旧商品の成分規格を変更して被告各新商品としたと主張する。しかし,仮に被告各新商品が次亜塩素酸カルシウム等を
主成分とする高度サラシ粉を主剤とするものだとしても,高度サラシ粉を液体化したものはカルシウム塩が残渣として残り,塩素臭が強く,濁りや沈殿が生じるという問題点があり,被告各新商品においてその問題点が解消されているとは考えられない。したがって,被告各新商品は市場における需要が乏しいと考えられることから被告らが被告各旧商品の成分規格を再開するおそれは極めて高い。被告らは,平成30年12月以降は被告商品表示の使用を中止したと主張するが,被告らが被告商品表示を再び使用するおそれはある。また,被告らは被告各旧商品及び被告各新商品を廃棄する必要がある。
(被告らの主張)

否認ないし争う。高度サラシ粉を液体化した製剤に原告主張の問題があり,被告各新商品が市場における需要に乏しいといえるか否かは,そもそも消費者が購入時に判断することである。原告が主張するような商品性に問題はなく,被告新商品1の販売を被告旧商品1に戻す理由もない。なお,原告旧商品1の在庫は若干残っているが,被告らはこれを販売するつもりはない。

(5)争点5(被告らの共同不法行為責任の成否)について
(原告の主張)

被告サンケイフーズは,被告各商品を販売してきたところ,被告サンケイア
クアは,①被告サンケイフーズの水質管理部門を分離して新たに設立された株式会社であり,②いずれもP1が代表取締役を務めていたことがあり,現在も同一人が代表取締役を務めており,③電話番号,FAX及び電子メールアドレスを共有しており,④被告旧商品1及び被告新商品1の出荷業務を行っていることから,被告サンケイフーズの不正競争行為を幇助していたといえる。したがって,被告らは,被告各商品の販売についての1号及び14号の不正競争行為について連帯責任を負う。イ
被告サンケイフーズが被告各商品を販売していたことについての被告らの自
白の撤回については,同意するものではないものの,積極的に争うものではない。しかし,仮に被告各商品を販売していたのが被告サンケイアクアだとしても,被告
サンケイフーズは,被告各商品のラベルに販売元と認識される態様で表示され,上記の①ないし③の事情や本件訴訟の経緯に照らせば,被告サンケイアクアの不正競争行為を幇助していたといえる。したがって,被告らは,被告各商品の販売についての1号及び14号の不正競争行為について連帯責任を負う。
(被告らの主張)

被告準備書面(1)(平成29年4月20日付け)での主張

被告サンケイフーズが遅くとも平成22年9月頃から被告各商品の製造,販売及び広告を行っており,被告各商品に被告品質表示を付していることは認める。イ
被告準備書面(15)(平成30年10月31日付け)での主張

被告サンケイフーズは,平成22年以降,被告各商品の製造,販売をしておらず,同年頃以降にそれらを販売しているのは被告サンケイアクアである。ウ
被告らが連帯責任を負うとの主張は争う。

(6)争点6(原告の損害の有無及び額)について
(原告の主張)

消極的財産損害

(ア)逸失利益(不正競争防止法5条2項による算定-主位的な主張)a
損害の発生

(a)被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為による損害被告らの販売代理店が被告旧商品1及び被告新商品1と原告新商品を誤認混同していないとしても,被告旧商品1及び被告新商品1のエンドユーザーが誤認混同している可能性は十分あるなど,被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為によって,原告に損害は発生している。
(b)被告各旧商品に係る品質誤認表示行為による損害
被告各旧商品に係る品質誤認表示行為によって,原告に損害は発生している(な
お,原告新品質表示が品質誤認表示であることを前提に原告に損害が発生していないと主張する被告らの主張は,前提を誤るものである。)。

b
不正競争防止法5条2項の適用

(a)被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為による損害の額不正競争防止法5条2項の適用に当たっては,両当事者の事業相互間に,一方の売上が増加することによって他方の売上が減少するという対応関係を認め得る程度の事業内容の同種性があれば足り,自ら周知商品表示を使用した商品を販売している必要はない。
被告旧商品1及び被告新商品1がいずれも食品添加物である殺菌料製剤であるのに対し,原告新商品も食品添加物である殺菌料製剤であることに,原告旧商品1の販売を中止した現在でもなお原告に対して原告旧商品1の発注等がなされているこ
とを併せ考えると,原告と被告らの事業相互間に上記程度の事業内容の同種性があるといえる。
(b)被告各旧商品に係る品質誤認表示行為による損害の額
不正競争防止法5条2項の適用に当たっては,被告らが主張するような関係(侵害者の得た利益と被侵害者の喪失したであろう逸失利益との間に同項の推定を働か
せることを合理化する関係)が存する必要はない。
原告新品質表示が品質誤認表示であることを前提に不正競争防止法5条2項が適用されないと主張する被告らの主張は,前提を誤るものである。
c
各商品の販売利益の額

(a)各商品の売上額
被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上額は,被告らが書証として提出した資料(乙59,89)によれば,以下のとおりである。

被告旧商品1

全期間(H26.3∼H29.10):1億9608万6024円内訳(H26.3∼H29.2):1億5600万1644円
(H29.3∼H29.10):


4008万4380円

被告旧商品2

全期間(H26.3∼H29.10):

4303万8400円

内訳(H26.3∼H29.2):

3728万1200円

(H29.3∼H29.10):

575万7200円


被告新商品1

全期間(H29.11∼H30.8):

4187万2132円

(b)各商品の本件における利益率
不正競争防止法5条2項の利益の額は,侵害者が侵害行為によって得た売上額から,製造原価・販売原価のほか,侵害者が当該侵害行為たる製造・販売に必要であった諸経費を控除して算定すべきであり,販売費及び一般管理費にあっては,当該不正競争行為をしたことによって増加したと認められる部分に限って控除の対象とすべきである。
まず,被告サンケイアクアにおける食品添加物の販売に係る粗利益率が,被告らが書証として提出した資料(乙55)によれば,43.5%であることに照らせば,食品添加物である被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売に係る粗利
益率も,43.5%とすべきである。そして,被告らは,被告サンケイアクア全体の販売費及び一般管理費中,販売手数料の80%,運送費全額は被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1に係る分であると主張するが,これらが他の商品に要した費用であった可能性も否定できないなど,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1を販売したことによって増加した販売費及び一般管理費があるとは認め
られない。
したがって,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の本件における利益率は,粗利益率の43.5%とすべきである。
(c)小括
以上によれば,各商品の販売利益の額は,以下のとおりである。


被告旧商品1

全期間(H26.3∼H29.10):8529万7420円


被告旧商品2

全期間(H26.3∼H29.10):1872万1704円

被告新商品1

全期間(H29.11∼H30.8):1821万4377円

合計

1億2223万3501円
d
推定覆滅事由の不存在

推定覆滅事由が存在するという被告らの主張は争う。被告らが被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1並びに原告新商品の競合品であると指摘する商品の多くは,固形状の高度サラシ粉そのものであり,これをそのまま食品の殺菌等に使用した場合には当該食品にカルシウム分や塩素臭が付着するなどしてしまうし,水溶液状にして使用したとしても同様にカルシウム分や塩素臭が付着してしまうのに対し,原告新商品は,沈殿させたカルシウム分の上澄み液を濾過して製造されたものであるから,食品の殺菌等に使用しても,カルシウム分が付着することはないし,
塩素臭が付着することもない。そして,それ以外の被告らが被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1並びに原告新商品の競合品であると指摘する商品も,そもそも高度サラシ粉ではなかったり,高度サラシ粉であっても,原告新商品とは用途が異なったり,亜塩素酸を含んでなかったりするなど,食品の殺菌等を用途とし,亜塩素酸を豊富に含む高度サラシ粉を用いた原告新商品とは用途等を異にするもの
である。したがって,被告らが被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1並びに原告新商品の競合品であると指摘する商品は,原告新商品の競合品とはならない。(イ)使用料相当額(不正競争防止法5条3項による算定-予備的な主張)被告旧商品1及び被告新商品1の売上額は,2億3795万8156円である(平成26年3月から平成30年8月までの間)ところ,使用料率は5%を下らな
いから,使用料相当額は1189万7907円である。
原告旧商品表示は周知であり,顧客吸引力があることなどに照らせば,被告旧商
品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為によって,原告に少なくとも使用料相当額程度の損害が発生していることは明らかである。

積極的財産損害(弁護士費用)

1222万3350円を下らない。

その他(消費税相当額)

消費税基本通達5-2-5からすれば,被告らの上記ア(ア)の損害賠償金に加えて,これに対する消費税相当額(977万8680円)についても支払義務を負う。(被告らの主張)

消極的財産損害

(ア)逸失利益について
a
損害の不発生

(a)被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為について①原告が周知商品表示である原告旧商品表示を使用していないこと,②被告らの販売代理店や被告旧商品1及び被告新商品1のエンドユーザーは,これらの商品が被告らの専売品であることを知った上で購入し,原告旧商品1を購入していた数の子加工処理業者はいずれも原告新商品を購入しており,被告旧商品1及び被告新商品1は原告新商品と誤認混同されていないことに照らせば,被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為によって,原告に損害は発生していない。(b)被告各旧商品に係る品質誤認表示行為について

原告新商品は,高度サラシ粉を7.5%含有した商品ではなく,原告がほかに高度サラシ粉を7.5%含有する商品を販売していなかった以上,被告各旧商品に係る品質誤認表示行為がなかったからといって,原告が高度サラシ粉を7.5%含有する商品を販売できたわけではないから,被告各旧商品に係る品質誤認表示行為によって,原告に損害は発生していない。

b
不正競争防止法5条2項の不適用

(a)被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為による損害の額
不正競争防止法5条2項が適用されるには,混同惹起行為がなければ,周知商品表示の使用者が同表示又はこれと類似した表示をした商品を販売できたであろうという関係が不可欠である。
しかし,原告が,平成21年8月20日以降,周知商品表示である原告旧商品表示を使用した商品を販売しておらず,これとは全く別個の表示(原告新商品表示)を使用した商品を販売している以上,上記のような関係は存在しないから,不正競争防止法5条2項は適用されない。
(b)被告各旧商品に係る品質誤認表示行為による損害の額
不正競争防止法5条2項が適用されるには,侵害者の得た利益と被侵害者の喪失
したであろう逸失利益との間に同項の推定を働かせることを合理化する関係や,需要者が品質を誤認した結果,被侵害者の商品を購入しているという直接的な関係が存する必要がある。しかし,高度サラシ粉を販売している業者は,原告及び被告ら以外にも多く存在することに照らせば,上記のような関係は存在しないから,不正競争防止法5条2項は適用されない。

また,原告も,原告新商品に品質誤認表示である原告新品質表示を表示している以上,被告各旧商品に係る品質誤認表示行為がなければ,原告新商品を販売できたであろうという関係は存在しないから,不正競争防止法5条2項は適用されない。c
各商品の販売利益の額

(a)各商品の売上
被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上額は,被告らが書証として提出した資料のとおりである。
(b)各商品の本件における利益率
不正競争防止法5条2項の利益の額は,売上高から販売原価のほか,販売費及び一般管理費も控除して算定すべきであるところ,被告サンケイアクアの売上全
体に占める被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上の割合が約58%であることから,販売費及び一般管理費の58%に相当する金額は,経費として控
除すべきである。
また,売上高から販売原価のほか,少なくとも製造販売に直接要した経費は控除して算定すべきであるところ,販売手数料及び運送費は被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売に直接要した経費であり,販売先が遠方であることなどもあって被告サンケイアクア全体の販売費及び一般管理費中の販売手数料の80%,運送費全額が被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売に係る分であるから,これらに相当する金額は経費として控除すべきである。したがって,本件における利益率は,原告が主張する数値(43.5%)よりも低くなる。d
推定覆滅事由の存在

(a)混同惹起行為及び品質誤認表示行為に共通の事情

市場における競合品の存在

被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1並びに原告新商品はいずれも,食品の殺菌等を用途とする高度サラシ粉製剤(液剤)であり,希釈して使用される。これに対し,固形状(粉末状,顆粒状,錠剤状)の高度サラシ粉そのものも,これを水溶液状にして食品の殺菌等に用いられることなどに照らせば,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1並びに原告新商品には多数の競合品が存在する。このことを前提に,高度サラシ粉の食品向け用途への需要量と原告の製造量を照らし合わせると,原告のシェア率は3.3%にとどまる。

原告旧商品表示(被告商品表示)の顧客吸引力の喪失

原告が平成21年8月以降,原告旧商品表示を使用した商品の販売を終了し,その旨を積極的に公表してきたばかりか,別の商品表示を使用した商品の販売に力を入れてきたことに照らせば,原告旧商品表示(被告商品表示)の顧客吸引力は喪失している。

被告らの営業努力

被告らが,販売代理店に対し,パーフェクトPAの商品表示を使用した商品が被告らの専売品となることを伝えた上で,被告旧商品1を販売してきたことに照
らせば,被告旧商品1及び被告新商品1の売上は,被告らの営業努力によって維持されてきたものである。
(b)混同惹起行為固有の事情
被告らの販売代理店や被告旧商品1及び被告新商品1のエンドユーザーは,これらの商品が被告らの専売品であることを知った上で購入しており,原告旧商品1を購入していた数の子加工処理業者はいずれも原告新商品を購入していることに照らせば,被告旧商品1及び被告新商品1は原告新商品と誤認混同されていない以上,被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為による損害の額の推定は,全て覆滅される。

(イ)使用料相当額(不正競争防止法5条3項による算定)
a
損害の不発生

①原告旧商品表示は,原告が使用していないために顧客吸引力を失っている一方,被告らの販売代理店や被告旧商品1及び被告新商品1のエンドユーザーは,これらの商品が被告らの専売品であることを知った上で購入していること,②原告が有償であっても原告旧商品表示の使用を許諾する意思はなかったことに照らせば,被告旧商品1及び被告新商品1に係る混同惹起行為によって,原告に使用料相当額の損害も発生していない。
b
使用料率

原告旧商品表示は,平成21年8月以降使用されておらず,その顧客吸引力が低いことに照らせば,使用料率が0.3%を上回ることはない。
(7)争点7(原告新品質表示の品質誤認表示該当性)について
(被告らの主張)
原告新商品には,高度サラシ粉を含有する旨の品質表示(原告新品質表示)がされているにもかかわらず,被告サンケイアクアだけでなく,複数の検査会社が行っ
た定性反応試験を始めとする各種試験の結果,次亜塩素酸塩が含有していないことが確認されたこと(乙18ないし21)に照らせば,原告新商品は高度サラシ粉を
含有していない。
したがって,原告新品質表示は不正競争防止法2条1項14号の品質誤認表示である。
(原告の主張)
原告新商品の原材料であるネオクリーンCLは,第8版食品添加物公定書に収載されている高度サラシ粉の成分規格に適合する(甲44ないし46)。このように高度サラシ粉であるネオクリーンCLの亜塩素酸イオン(ClO2-)及び有効塩素の成分重量と原告新商品の亜塩素酸イオン(ClO2-)と有効塩素の成分重量を照らし合わせた結果は,原告新商品がネオクリーンCLを重量比率で7.5
%含有している場合の理論値にほぼ沿うものとなっている(甲44ないし46)。高度サラシ粉であるネオクリーンCLの主成分である次亜塩素酸塩は,水溶液である原告新商品中で電離して,次亜塩素酸イオン(ClO-)を生成するものの,経時的に塩化物イオン(Cl-)に変化していくことに照らせば,原告新商品に係る各種試験において次亜塩素酸塩が含有していないことが確認されたからといって直
ちに,原告新商品が高度サラシ粉を含有していないにはならない。第3
1
当裁判所の判断
争点1(原告旧商品表示の周知性並びに原告旧商品1と被告旧商品1及び被
告新商品1との誤認混同のおそれの有無)及び争点2(原告旧商品表示及び被告品質表示の使用の明示又は黙示の許諾の有無)について
(1)判断の基礎となる事実関係
前提事実のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア
原告各旧商品の販売状況

(ア)高度サラシ粉とは,有効塩素60.0%以上を含む白~類白色の粉末又は粒であり,野菜などの消毒に用いられるほか,水泳プール,工業用水,養魚池などの消毒に用いられ,食品添加物としても指定されている(甲8の2)。粉末状の高度サラシ粉は,水に溶かして使用するものであり,顆粒剤や錠剤型の製品も市販
されているが,そのほかに,高度サラシ粉を用いた液剤も市販されている(乙32ないし35,65ないし75等)。
(イ)原告は,前提事実(2)ア記載のとおり,平成4年の第6版食品添加物公定書解説書において,高度サラシ粉の化学式として,Ca(ClO2)(亜塩素酸カルシウム)が表記されていたことから,亜塩素酸塩を主成分とするものも高度サラシ粉として許容されるものと考え,平成5年5月20日,亜塩素酸塩を主成分とする原料を主剤として,高度サラシ粉製剤(液剤)であるとうたった殺菌料製剤(原告旧商品1)の製造販売を開始した(甲15,弁論の全趣旨)。そして,その商品ラベル(甲17)には,製造元が原告,発売元が三慶株式会社と表示されるとともに,内
容成分として●主剤/高度サラシ粉12.00%(原告旧品質表示)と表示
された。また,パンフレット(甲27)では,高度サラシ粉は,一般に,殺菌料として,広範囲に利用されておりますが,溶解をして使用する場合,沈殿物が発生するばかりでなく,非常に不安定な状態になりますことから,塩素ガスが発生しやすくなり強い塩素臭は,殺菌対象食品の食味や臭味を損なうばかりではなく,食品加工従業者の目や皮膚等に対する刺激が強く,非常に扱いにくいものでありました。しかしながら,弊社では長年の研究により,これらの欠点をほぼ解消することに成功いたしました。この高度サラシ粉製剤を用いて作られましたものが,微塩素臭・低刺激性の液体製剤『パーフェクト・PA』なのです。等と記載されるとともに,水産加工食品等の原料下処理剤として使用する場合の効果がうたわれ,成分として
●主剤/高度サラシ粉12.00%(原告旧品質表示),有効塩素として
12%以上と記載されていた。
そして,原告旧商品1は,原告が自ら販売するほか,平成7年に三慶グループに参画した被告サンケイフーズも,原告から原告旧商品1を仕入れ,同グループの一員としてその販売を行っていた。被告サンケイフーズは,P1のほか,原告の代表取締役であったP2が代表取締役に就いていた(乙3)。
(ウ)原告は,平成16年9月28日から同月29日までの日程で開催された第25回日本食品微生物学会学術総会の講演要旨集に原告旧商品1を始めとする取り扱う商品の広告を掲載するなどの広告宣伝活動をしていた(甲23,弁論の全趣旨)。そして,推定される平成18年における数の子の生産量(約6465t)全てに原告旧商品1を使用したと仮定した場合の原告旧商品1の使用量(193.95t,甲20ないし22)と平成18年における数の子処理加工業者に対する原告旧商品1の実際の出荷量(95.02t,甲18,弁論の全趣旨)を照らし合わせて算定した同年の数の子処理加工業界における原告旧商品1のシェア率は,約49%であった。さらに,原告旧商品1は,平成21年8月の時点において,塩干・塩蔵品製造業者及び冷凍水産物製造業者(1141社)の約46.6%(532社)に販売されていた
(甲18,19,弁論の全趣旨)。
(エ)原告は,原告旧商品1と同じ内容の殺菌料製剤を大東物産向けのプライベートブランド商品として製造し,これにビューティック12という商品名を付すとともに原告旧品質表示を使用した上で,被告サンケイフーズを通じて販売していた(原告旧商品2。乙12,弁論の全趣旨)。


原告各旧商品から原告新商品への切替え

(ア)前提事実(2)アのとおり,食品添加物公定書解説書における高度サラシ粉の成分規格については,平成11年作成の第7版において,日本語の表記だけでなく化学式の表記も次亜塩素酸カルシウムを主成分としたもののみに改められたが,同年発行の食品添加物便覧においては従前の化学式の表記が記載されていた。そこで,原告は,これらの記載や厚生労働省への確認を踏まえ,また,上記第7版に続く平成19年の第8版でも同じ記載がされたことから,亜塩素酸塩を主成分とするものを主剤とする原告各旧商品の製造販売を終了させ,それに替えて,上記第8版の高度サラシ粉の成分規格に適合する高度サラシ粉製剤(液剤)であるとするものとして,ネオクリーンPAS(原告新商品)の製造販売を新たに開
始することとした。しかし,被告サンケイフーズの代表者であったP1がこれに強く反対し,販売継続を希望したため,原告は,原告新商品の製造販売を開始する一
方,原告各旧商品については,原告はその製造を終了させるものの,その在庫品を被告らに販売し,被告らがそれを販売することについて被告らとの間で合意し,平成21年8月20日,原告旧商品1の製造を終了させることや,在庫品の出荷完了をもってその販売も終了させることをホームページでアナウンスし,その頃,原告新品質表示を品質表示として使用した原告新商品の販売を開始した(甲16,乙42,弁論の全趣旨)。
原告新商品のパンフレット(乙7)には,これまでの塩素酸化物製剤類に関しましては,その生産効率や,歩留まり,長期保管を前提に,化学的に安定させているものが多く,その結果,使用する際,一定の塩素量を加えた希釈液のpHを,酸性側に調整致しましても,しばらく致しますと液中のpHが上昇してしまう事で殺菌能力は低下してしまい,その上,食品中に残留塩素として残り易くなると言う点や,塩素の中和剤を用いましても,反応が弱く,食品の安心・安全を鑑みますと,,まだまだ改良すべき点が多いと考えられて参りました。そこで,本品『ネオクリーン・PAS』に関しましては,塩素を作り出す際から安定剤となる塩類を極力使用せず,構成する事によって,製剤自体のpHが中性域で安定させる事に成功し,本品の希釈液を作成致しましても,液中のpHが上昇するスピードが,これまでのどの塩素酸化物製剤よりも,ゆるやかであり,有効な殺菌力を長時間持続させる事ができます。

もちろん,これまでの弊社塩素酸化物製剤類の特徴であります低塩素臭や,低刺激性等と言ったメリットは,そのまま御享受して頂くことが出来,使い方自体は,これまで通りの方法で取り扱って頂く事が出来ます。

と記載されていた。

本件話合いと原告と被告らの在庫取引の終了

(ア)こうして,平成21年8月頃以降,原告と被告サンケイフーズ(平成22年頃以降は被告サンケイアクア)は,原告各旧商品の在庫取引を行い(乙8ないし10。なお原告旧商品2の在庫取引は,平成23年8月13日見積分が最後のものである。),被告サンケイフーズ又は被告サンケイアクアは,その販売代理店を通じ
る等して,それらの在庫品を販売した。
(イ)三慶株式会社の代表取締役であったP3は,平成23年9月2日,原告旧商品表示が使用された商品容器を見掛けたところ,そのラベル(甲24)が,原告が製造販売した原告旧商品1のラベル(甲17)と比べて,発売元である三慶株式会社の住所が,同社の実際の本店所在地の住所(大阪市<以下略>)ではなく,平成19年12月の移転前の住所(東京都中央区<以下略>)と表記されていたこと(甲42)や異なるロット番号が表記されていたことなどから,上記商品が,原告旧商品1の在庫品ではなく,被告らが自ら製造したものではないかと疑い,同日,原告の代表者であるP2らに対し,完全なコピー品の存在を確認する事が出来ておりますとしてメールで報告した(甲51,52,証人P3)。そこで,原告側のP2,P3及びP4は,平成23年9月13日,被告側のP1及び被告側の代理店であったフードケアリのP5と話合いの場を持った(本件話合い)。そこでは,P1は,上記のラベル表記の違い等を指摘されると,

この問題は…三慶のラベルを使って,中身を,うちでつくったもので,売った。この事実は,事実。

,ただね,急に名前を変える,違うのに持っていく…(略)切り替えって言うと,今後これを続けていくんなら,あのー,サンケイフーズとしては止めろと言われたら止めるなどという発言をしたりする一方で,三慶に対して,その歯向かってるとか何もしてへんなどという発言もしたりし,P1が

僕にね,そういうね,これを追及されたら,今の展開。…やむなく。そやけど,これはもう,やめる。

という発言をした(甲53。なお,以上のP1の発言は,このときの会話を原告が録音した記録に基づくものであるが,同録音は,P1が上記の発言をした以降の部分を原告側で削除したものである[証人P3]。)。
そして,同日をもって,被告サンケイフーズの取締役であったP2,P3及びP4は,これを辞任し(乙3),被告らが三慶グループから完全に独立することとな
り,これまで続けられてきた被告らに対する原告旧商品1の在庫品の販売も同月で終了した。

(ウ)P1は,同月14日頃,少なくともP3に対し,販売代理店の1つである田辺商事を共に訪問することを提案する趣旨のメールを送信したところ,P3から,その頃,

そちらが行かれた後に行くつもりです。おおまかな日取りが判れば,日をおきますので,連絡下さい。

という趣旨のメールを受けた(乙31の4,証人P3,弁論の全趣旨)。
また,原告の商品開発を担当する部署の元課長であるP6が使用していた携帯電話機には,P1とやり取りしたとされる一連のメール(最後のメールを受信した日時が9月14日午後8時21分とされているもの)が残っているところ,その一連のメールの内容は,別紙本件メール一覧表のP6の携帯電話機に残っているメールの表示内容の項記載のとおりである(乙37)。(エ)P3は,平成23年9月15日,P2らに対し,

偽物の整理を行います。この中で問題にしているのは,OKUDAIの偽PPAです

などとして,合計6社の6つの商品を指摘するメールを送信しているところ,そのうちの1つが,会社名サンケイフーズ,商品名パーフェクトPAであり,別の1つが,
会社名播磨食品開発,商品名フレッシュバリアであった(甲5
4)。
(オ)被告サンケイフーズは,同月29日,販売代理店の1つであるフードケアリに対し,本件案内文書をメールで送付した(乙30の2ないし4)。エ
被告各旧商品の販売開始後の状況

(ア)被告サンケイアクアは,同年10月1日以降,原告旧商品1と同じ内容(すなわち,主成分は亜塩素酸塩)の殺菌料製剤を同じ製法で製造し,品質表示として被告品質表示をし,商品名として原告旧商品表示と同一の商品表示である被告商品表示を使用した被告旧商品1を販売した(甲5,25,32,56,57,弁論の全趣旨)。被告旧商品1の商品ラベルは,原告旧商品1のラベルと同様のデザ
インであり,製造販売元が表記される部分において被告サンケイフーズの名称及び電話番号が表記された点と,独自の図形商標と製造所記号が表記された点でのみ異
なるものであった(甲5。なお,住所の記載は従前と同じである。)。また,被告らは,被告旧商品1の宣伝広告用パンフレット(甲6)を,原告旧商品1のパンフレットと同内容のものとした(甲27)。
また,被告サンケイアクアは,その頃から平成29年10月31日までの間,被告旧商品1と同じ内容の殺菌料製剤を大東物産向けのプライベートブランド商品として,ビューティック12の商品名で,品質表示として被告品質表示をして販売した(被告旧商品2。甲7,弁論の全趣旨)。
(イ)他方,原告は,被告サンケイアクアが平成23年10月12日に出荷したと考えられる被告旧商品1を回収し,そのラベルを写真撮影していた(甲25)。
また,原告は,平成28年6月25日,株式会社播磨食品開発(以下播磨食品開発という。)に対し,フレッシュバリアを商品名とする殺菌料製剤等に関して,品質誤認表示行為を行っているなどとして,それらの差止及び廃棄並びに損害賠償の各請求に係る訴えを提起した(乙81,82,弁論の全趣旨)。(ウ)株式会社中山薬品商会(以下中山薬品という。)は,少なくとも平成2
8年4月から平成29年5月までの間ほぼ毎月,被告サンケイアクアから,フードケアリを通じて,被告旧商品1を200kg購入していた(乙16)ところ,平成29年2月20日(担当者はP7)及び同年3月17日(担当者はP8),三慶株式会社宛てに,被告旧商品1のサンプルの送付を依頼した(甲36,37)。そして,原告は,同年3月1日,本件本訴を提起した(裁判所に顕著な事実)。
(エ)被告サンケイアクアは,同年11月1日から,被告商品表示と被告品質表示はそのままに,被告旧各商品の成分規格を食品添加物公定書解説書第8版に適合するものに変更したとして,変更後の商品(被告各新商品)の販売を開始した。その後,被告サンケイアクアは,被告新商品1の商品名も変更し,平成30年12月以降は,原告旧商品表示とは異なるSuper.PA(スーパー・ピーエー)と
いう商品表示を使用した殺菌料製剤を販売している(乙60,弁論の全趣旨)。平成26年3月から平成30年8月までの被告旧商品1及び被告新商品1の売上
高は,被告旧商品1が1億9608万6024円,被告新商品1が4187万2132円にのぼった(乙59,89,弁論の全趣旨)。
(2)争点2(原告旧商品表示及び原告旧品質表示の使用の明示又は黙示の許諾の有無)の検討(事実認定の補足説明を含む。)
事案に鑑み,まず争点2について検討する。

平成21年8月における合意の有無

被告らは,平成21年8月に原告が原告各旧商品の製造を中止した際,原告との間で,原告から原告旧商品1の在庫品を仕入れて販売することだけでなく,原告各旧商品の製造販売を継承して,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の被告商品表示及び原告旧品質表示と同一の被告品質表示をすることについて合意したと主張する。
しかし,原告は,平成23年9月,被告らが製造したことが疑われる殺菌料製剤が原告旧商品1として販売されていることを把握するや,コピー品であるとして直ちにこれを問題視している。また,被告側も,本件話合いでのP1の発言からする
と,自ら製造販売するパーフェクトPAについて,あえて原告旧商品1と同じく製造元を原告,販売元を三慶株式会社とするラベルを偽装して販売していたと認められる。これらからすると,平成21年8月の時点で原告が,被告らに対し,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したとは認められない。

この点について,被告らは,この時期には原告代表者が被告サンケイフーズの代表取締役に就いていたことを指摘するが,本件話合いの経緯からすると,原告代表者は,被告らが原告旧商品1の偽装品を製造販売しているとの認識を有していたとは認められないから,被告らが指摘する点は上記の判断を左右するものではない。イ
平成23年9月における合意の有無

(ア)被告らは,平成21年8月の合意が認められないとしても,平成23年9月13日の本件話合いの際に,原告との間で,原告各旧商品の製造販売を継承して,
被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の被告商品表示及び原告旧品質表示と同一の被告品質表示をすることについて合意したと主張する。(イ)前記(1)で認定した事実によれば,原告旧商品1及び原告旧商品表示は,平成21年8月の時点において,原告ないし三慶グループの商品表示として需要者の間で高度の周知性を獲得していたと認められ,被告らもこれを否定する主張はしていないところ,そもそも原告は,同時点で,そのような周知性を犠牲にしてでも,品質誤認表示行為になりかねない原告旧商品1の販売を完全に終了させようとしたものの,P1がこれに強く反対し,販売を継続することを希望したことから,被告らに対し,原告各旧商品の在庫品に限りこれを販売することを許容したのである。
そしてまた,平成23年9月に被告らが製造したことが疑われる殺菌料製剤が原告旧商品1として販売されていることを把握するや,コピー品であるとして直ちにこれを問題視し,本件話合いの場でもこれを追及している。これらに照らせば,原告が,被告らに対し,原告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾し,その存在を存続させることに
ついて許諾するとは考え難い。
次に,本件話合いの状況の録音内容についてみると,確かにそこでのP1の応答状況は,甲53の2の反訳によって理解し得る限り,主に被告側が商品ラベルを偽装したことをめぐってなされており,音声が全体として聞き取りにくいことから,原告が指摘するP1の

僕にね,そういうね,これを追及されたら,今の展開。…やむなく。そやけど,これはもう,やめる。

という発言をもって直ちに,被告らが今後自ら製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示をしないことについて了承したとまで認定するのは困難である。また,この録音は,P1の上記発言以降の部分が原告によって削除されており,それ以後の会話で何が話し合われたのかも明らかでない。しかし,この録音から聞き取り得る限りでは,被告側が,原
告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品を製造販売することについて,原告側が了解したことは何らうかがえな
い。また,そもそも本件話合いは,被告側が自己の製造に係る殺菌料製剤を原告旧商品1と偽装して販売したことを原告が追及するためになされたものであり,この話合いの後,原被告間の原告旧商品1の在庫取引は終了し,被告サンケイフーズの役員を兼務していた原告関係者が全員辞任して,原告と被告らとの関係が完全に断絶していることからしても,本件話合いでの原告の被告らに対する態度は強硬であったことがうかがわれるから,そのような原告が,本件話合いの席で,被告らに対し,原告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾するとは考え難い。
さらに,原告が,本件話合いの2日後の時点でもなお,被告らが製造した殺菌料
製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示をすることを偽物として問題視していることがうかがわれることからも,原告が,被告らに対し,原告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したとは考え難いものと言わざるを得ない(なお,被告らは,甲54のメールの

この中で問題にしているのは,OKUDAIの偽PPAです。

という記
載に着目し,原告が問題視していたのは会社名OKUDAIの商品だけであり,被告旧商品1については問題視していなかったと主張する。しかし,原告が,甲54のメールからそれほど間がない時期と考えられる時期に,被告旧商品1のラベルを写真撮影するという,被告旧商品1も問題視していると見るべき行動を取っていたこと,OKUDAIの商品でもない播磨食品開発の商品に関しても訴訟
提起していることに照らせば,原告は,甲54のメールに列挙されていた6つの商品についてはいずれも問題視していたというべきであり,

この中で問題にしているのは,OKUDAIの偽PPAです。

という文言は,特に問題視していたことを意味するにすぎないと理解すべきである。したがって,被告らの上記主張は採用できない。)。

(ウ)以上に対し,被告らは,P1が本件話合いが行われた後に送信したメール(乙25,31,37等)の内容や,被告サンケイフーズが販売代理店に本件案内
文書を送付したこと等に照らせば,原告との間で,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示をすることや被告品質表示を使用することについて合意したことは明らかであるとも主張する。
a
まず,P1とP6との間のメールとされる乙37の一連のメールについてみ
ると,これらのメールの中で最も着目すべきフレーズ(以下,フレーズの番号は別紙本件メール一覧表による。)は,④のフレーズ中の

P2,P3,P4とP5さんとで会議しました。結果,パーフェクトを売るのはフーズだけと決まりました。

というものである。そこで,このメールの信用性について検討すると,まず,乙37のメールは,タ
イトルがRE2:明日とあることから,複数のメールのやり取りが引用されて送信されたものと認められるところ,冒頭①の

ありがとうお蔭様で商品も販売にも自信が着いたとこに,…P3が一線を引く動きをしてくれました(顔文字)。

というメールが,P1からP6に送信されたものであることは,原告もこのような読み方をしており,FromP1社長の表示にも沿うものである。そして,原告は,このことと相手方のメールを引用して返信をする際に表示される引用符(>)の有無に着目して,別紙本件メール一覧表の原告主張の読み方の項記載のとおりの読み方をし,上記の①のフレーズを送信したのがP1ではなくP6であると主張するところ,確かに,引用符の有無に着目して形式的に考えると,別紙本件メール一覧表の原告主張の読み方の項記載のとおりの読み方をす
ることが自然ではある。しかし,本件話合いに参加していないP6が上記④のフレーズを送信することは不自然であるし,同フレーズには,フーズからP2達は役員を解任しますという被告サンケイフーズの役員ではないP6が送信するには不自然な内容も別途含まれているから,原告主張の読み方はメールの内容からすると不合理である。他方,被告らは,別紙本件メール一覧表の被告ら主張の読み方の項記載のとおりの読み方をすべきであると主張するところ,この読み方は,メールの内容面だけからは,一覧のやり取りとして自然なものとなる。しかし,②

明日は多分撫子に行きます。

とのフレーズに引用符が存在することからすると,このフレーズを,①のフレーズとともにP1がP6に送信したものとして読む被告ら主張の読み方は,引用符が付される一般的なルールからすると不合理である。さらに,P6は,別紙本件メール一覧表のP6供述の読み方の項記載のとおりのやり取りであったと供述するところ,この読み方も,引用符が付される一般的なルールからして不合理である上,メールの内容面から見ても,P6からの③のパーフェクトの件,いい方向に進みましたね[オメデトウ]良かったデスというメールに返信するメールとして,②

明日は多分撫子に行きます。

というメールを送信した上で,これに続けて別途①の

ありがとうお蔭様で商品も販売にも自信が着いたとこに,□□P3が一線を引く動きをしてくれました(顔文字)。

というメールを送信することの不自然さは否定できない。これらからすると,乙37のメールが当初のものがそのまま保持されているものなのかについて,疑問を差し挟む余地がある。
また,この点を措き,P1が④のフレーズのとおりP6に送信したのだとしても,

パーフェクトを売るのはフーズだけと決まりました。

との内容は,上記(イ)で検討した本件話合いの場の状況とは整合しない。このことを踏まえると,P1は,本件話合いの場での原告側の追及が商品ラベルの偽装を中心とするものであったことから,商品ラベルの偽装をやめれば,被告側によるパーフェクトPAの製造販売について原告側が口出ししないものと理解して乙37のメールを送信したにす
ぎない可能性を否定することができないというべきである。
b
次に,P1とP2やP3らとの間のメールとされる乙25の1(乙31の3,
乙31の4)の一連のメールについてみる(内容は,別紙乙25の1(乙31の3,乙31の4)メールの内容参照)と,これらのメールの中で最も着目すべきメールは,

昨日はお疲れ様でした。三慶はパーフェクトの販売を完全に止め,フーズに移行するとする,ことの次第の報告に田辺本社をいつ頃訪問される予定でしょうか?

というものである。そして,被告らは,P1が,本件話合いの翌日であ
る平成23年9月14日にTo:P2,P3,P4の記載がある3名宛てに上記メールを送信したと主張する。
しかし,原告は,上記メールを受信したことを否認し,証人P3も,P1から田辺商事に一緒に行こうという趣旨のメールは来たが,三慶はパーフェクトの販売を完全に止め,フーズに移行するとするとの趣旨の記載はなかったと証言するところ,乙25の1(乙31の3,乙31の4)の一連のメールは,P1の携帯電話機や原告のパソコン等に保存されていたのものではなく,1年以上後の平成24年11月21日にP1の携帯電話機から送信を受けた被告サンケイフーズのパソコンに保存されていたものであり,その内容も引用符とは異なるもの(--------)
が表示されているなど,一連のやり取りが保存されているとおりになされたのかについては疑問を抱かざるを得ない。その点を措くとしても,そこでのP3の返信も,原告側はP1が田辺商事を訪問した後に訪問するというもので,原告と被告らが円満に協議を調えた状況ともうかがえず,このメールでいうことの次第というのは,やはり上記で指摘した本件話合いの場の状況と整合しない。

c
次に,本件案内文書のこの度,三慶株式会社より『パーフェクトPA』を継承し,サンケイフーズ株式会社の専売品として販売を継続して参ります事となりましたという記載も,被告らの主張に沿うものではあるが,被告らが本件案内文書を乙11の1に記載されたフードケアリ以外の代理店に配布したか否かについては,乙11の2において宛先が****とされているにすぎないことから,明確でない。この点について,被告らは,本件案内文書を広く代理店に配布したと主張して,乙43ないし46及び48を提出する。しかし,それらの書証については,被告らは,侵害論の審理の段階において,原告から複数回にわたり,乙11の1をフードケアリ以外の代理店に配布した点について疑義を示されながら,その証拠を乙11の2以外に提出しなかったにもかかわらず,損害論の審理に入った直後に提
出したものであるとの経緯に照らして,直ちに信用することができず,証拠の内容に照らして信用性を認め得るものがあるとしても,せいぜい大東物産への送信メー
ルである乙45の1にとどまる。そして,前記のフードケアリへの本件案内文書の送付及び大東物産への上記送信メールについても,上記aのメールと同様,本件話合いの場の状況とは整合しないことから,P1において,商品ラベルの偽装をやめれば,被告側によるパーフェクトPAの製造販売について原告側が口出ししないものと理解してしたにすぎない可能性を否定することができない。また,P1とP2やP3らとの間のメールとされる乙25の2(乙31の5)のメールは,代理店に対し下記のごとく案内し了解を得ましたなどとした上,本件案内文書と同趣旨の内容を指摘するものであるところ,原告は上記メールを受信したことを否認しており,これを認めるに足りる証拠はない。

d
さらに,P6は,平成23年9月15日にP1から原告旧商品表示を継承す
ることになった旨聞いたという趣旨の供述をするが,これまで乙37,乙25のメール,本件案内文書に関して指摘したのと同様,仮にP1がそのような発言をしていたとしても,そのことから直ちに,原告が,被告らに対し,原告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したとまでは認められない。
e
最後に,原告は,本件本訴を提起した平成29年3月1日までの間,被告サ
ンケイアクアが被告各旧商品を販売していることを把握しながら,その中止を求めるなどの働き掛けはしていない。しかし,証人P3の証言によれば,原告側では,偽物との疑いのある他社製品について,実際に販売されている商品の画像及び中身の入手のほか,流通販売経路,製造元と原料の把握等の証拠を収集しようと考えていたと認められるところ,これらを実際に入手等するためには相応の期間を要するのが通常である。また,原告が問題視していた商品は,被告旧商品1だけでなく他にも存在し,それらへの対応を同時並行で行っており,被告らに対する対応だけを行っていればよい状況ではなく,現に播磨食品についても提訴したのは平成28年
6月25日である。これらからすると,本件本訴の提訴までに時間が経過していることをもって,原告が被告らに対して原告各旧商品の製造販売を継承させ,原告旧
商品表示を使用し,被告品質表示の表示をした商品の製造販売を許諾したとまでは認められない。
(ウ)以上のとおり,被告らが,平成23年9月に,原告との間で,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の被告商品表示及び被告旧品質表示をすることについて合意したとは認められない。

黙示の許諾の有無

上記ア及びイで述べたところからすると,被告らが製造した殺菌料製剤に原告旧商品表示と同一の商品表示(被告商品表示)及び被告旧品質表示をすることについて,原告が黙示に許諾していたとも認められない。
(3)争点1(原告旧商品表示の周知性並びに原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1との誤認混同のおそれの有無)の検討

周知性の有無について

(ア)前記(1)で認定した事実によれば,原告旧商品1及び原告旧商品表示は,遅くとも,原告が原告旧商品1の製造を終了させた平成21年8月の時点で,原告ないし三慶グループの商品及び商品表示として,殺菌料製剤(食品添加物)の需要者の間において高い周知性を獲得していたものと認められる。
(イ)原告は,同月において原告旧商品1の製造中止をホームページでアナウンスしたが,同月から平成23年9月までの間も,被告らを通じて原告旧商品1の在庫販売が継続され,被告らは,自ら製造した殺菌料製剤についても原告らを製造元等
とする原告旧商品1として販売していたのであるから,同月までの間は,原告旧商品表示の周知性は継続したと認められる。
(ウ)平成23年10月以降,原告は,原告旧商品1の在庫販売も中止し,以後,原告自身が原告旧商品表示を使用することはなく,それに替わる形で被告旧商品1の販売が開始されたことは前記認定のとおりである。そして,被告らは,原告が原
告旧商品表示の使用を中止してから長期間が経過したことにより,その周知性は消滅したと主張する。

しかし,原告旧商品1及び原告旧商品表示が,原告ないし三慶グループの商品及び商品表示として高い周知性を獲得したことは前記のとおりであるところ,被告らは,従前,三慶グループの一員として原告旧商品1の販売を行っており,グループ内での取扱会社の変更は一般に行われることであるから,そのような被告らが被告旧商品1を販売するに当たり,それが三慶グループではない被告らを独自の出所とする商品であると需要者に認識されるためには,その旨を明確に周知する必要があると考えられる。ところが,被告旧商品1は,その商品名において原告旧商品表示と同一の被告商品表示を使用しているだけでなく,商品ラベルのデザインやパンフレットの内容も原告旧商品1と同一である。また,商品ラベルで製造販売元が表記
される部分には被告サンケイフーズと明記されているが,その記載された住所は原告及び三慶株式会社のものと同一である。これらからすると,商品の外観及び広告上は,被告旧商品1の商品主体が三慶グループでなくなったとは認識し難いものであるといえる。さらに,被告らは,本件案内文書を代理店に配布して製造販売主体の変更を告知したと主張するが,フードケアリ(及び他に含まれるとしても大東物
産)以外への同文書の配布が明確でないことは前記のとおりである上,その点を措くとしても,そこでは,単に

三慶株式会社より『パーフェクトPA』を継承し,サンケイフーズ株式会社の専売品として販売を継続して参ります事となりました。

と記載されているにとどまり,被告らが三慶グループから完全に独立したことが明確にされるものとはなっておらず,まして,被告旧商品1を代理店から購入
する最終ユーザーにおいて,どこまで商品主体に変更があったと認識されたのか明確でない。そして,現に,最終ユーザーである中山薬品から三慶株式会社に対して,平成29年2月20日と同年3月7日の2回にわたり,異なる担当者からパーフェクトPAのサンプルの依頼がされているところ,本件訴訟の提起前後の時期にこのようなサンプルの依頼がされた経緯は必ずしも明らかでないが,被告旧商品1
を継続的に購入していた中山薬品において,その商品主体が三慶グループとは異なることを認識しながら,異なる担当者から2回にわたって三慶株式会社にサンプル
依頼がされるとも考え難いから,この事実は,最終ユーザーにおける出所誤認をうかがわせるものである。
以上からすると,原告旧商品表示の原告ないし三慶グループの出所表示としての周知性はなお維持されていると認めるのが相当である。

誤認混同のおそれの有無について

(ア)原告旧商品表示と被告商品表示が同一であり,これらが使用される商品も高度サラシ粉製剤(液剤)であるとうたわれている商品である点で同一であることに照らせば,原告旧商品1と被告旧商品1について出所が同一であると誤認混同のおそれがあることは明らかである。
(イ)これに対し,被告らは,原告旧商品1の需要者であった数の子処理加工業者が原告旧商品1と被告旧商品1について出所が同一であるなどと誤認していないことを指摘する。しかし,その事実を認めるに足りる証拠はない上,混同を生じさせる行為とは,実際に誤認混同が生じていなくても,誤認混同のおそれのある行為を含むと解される以上,仮に,数の子処理加工業者が原告旧商品1と被告旧商品
1について出所が同一であるなどと誤認混同していないとしても,このことは,上記(ア)で説示した結論を左右させるものではない。
2
争点3(原告の営業上の利益の侵害の有無,本訴請求の権利濫用性等)及び
争点7(原告新品質表示の品質誤認表示該当性)について
(1)判断の基礎となる事実関係

高度サラシ粉や次亜塩素酸塩に関する確認試験法

(ア)第8版食品添加物公定書解説書の定め
a
高度サラシ粉の成分規格(甲8の2,38,40)

第8版食品添加物公定書に収載されている高度サラシ粉に関する同解説書記載の成分規格は,以下のとおりである。
(a)含量:本品は,有効塩素60.0%以上を含む。注1本品は次亜塩素酸カルシウムCa(OCl)2を主成分としたものとヒドロキシ次亜塩素酸カルシウム〔Ca(ClO)2・
2Ca(OH)2又はCa(ClO)2・Ca(OH)2〕を主成分としたものとの2種類がある。(b)性状:本品は,白~類白色の粉末又は粒で,塩素のにおいがある。(c)確認試験:(1)

本品0.5gに水5mlを加えて振り混ぜ,これに赤色リト

マス紙を浸すとき,リトマス紙は青変し,次に退色する。
(2)

本品0.1gに酢酸(1→4)2mlを加えるとき,ガスを発生して溶ける。
これに水5mlを加えてろ過した液は,カルシウム塩の反応を呈する。以下,これらの確認試験を符号の順序に従って,上記(1)のものを本件確認試験1などといい,本件確認試験1及び2を総称して本件各確認試験という。b
次亜塩素酸塩の定性反応試験法

第8版食品添加物公定書における一般試験法中の25.定性反応試験法に示されている次亜塩素酸塩の定性反応試験法は,以下のとおりである(乙17)。
別に規定するもののほか,試料の液の濃度は約1%にして行う
(a)次亜塩素酸塩溶液5mlに塩酸2mlを加えるとき,ガスを発生して泡立つ。
(b)次亜塩素酸塩の溶液(1→1,000)5mlに水酸化ナトリウム溶液(1→2,500)1ml及びヨウ化カリウム試液0.2mlを加えるとき,液は黄色となり,これにデンプン試液0.5mlを加えるとき,液は濃青色を呈する。
(c)次亜塩素酸塩の溶液(1→4)5mlに過マンガン酸カリウム溶液(1→300)0.1mlを加え,これに硫酸(1→20)1mlを加えるとき,液の赤紫色は退色しない
(亜塩素酸塩との区別)。
以下,これらの定性反応試験法を符号の順序に従って,上記(a)のものを本件定性反応試験法1などといい,本件定性反応試験法1ないし3を総称して本件各定性反応試験法という。(イ)次亜塩素酸塩に関する紫外部吸収スペクトル法(乙19の2,20の1,弁
論の全趣旨)
紫外部吸収スペクトル法は,試料の紫外部(波長が約200~360nm)スペクトル
を予想物質のスペクトルと比較して成分を判断する試験する方法で,試料が次亜塩素酸塩を含む場合には,波長292nm付近に極大吸収部が見られ,亜塩素酸塩を含む場合には波長260nm付近に極大吸収部が見られることになる。イ
原告新商品を試料とする試験結果

(ア)本件各定性反応試験法による試験結果
a
品質分析等を業とする株式会社ニチユ・テクノ(以下ニチユ・テクノと
いう。)実施分(乙19の1,20の2)
ニチユ・テクノが原告新商品を試料として行った本件各定性反応試験法による試験結果は,以下のとおりである。
(a)本件定性反応試験法1:不適合(泡立たない)
(b)本件定性反応試験法2:不適合(濃青色に変色しない)
(c)本件定性反応試験法3:不適合(赤紫色が退色した)
b
被告サンケイアクアによる試験(乙18)

被告サンケイアクアが原告新商品を試料として行った本件各定性反応試験法による試験結果は,以下のとおりである。
(a)本件定性反応試験法1:泡立たない。
(b)本件定性反応試験法2:濃青色に変色しない。
(c)本件定性反応試験法3:赤紫色が退色した。
c
原告による試験(甲44)

(a)本件定性反応試験法1:不適合(泡立たない)
(b)本件定性反応試験法2:不適合(変色しない)
(c)本件定性反応試験法3:不適合(退色する)
(イ)紫外部吸収スペクトル法による試験結果
ニチユ・テクノが原告新商品を試料として行った紫外部吸収スペクトル法による
試験結果は,以下のとおりである。
a
平成28年8月31日実施分:波長の極大吸収部は,260.60nm付近に見ら
れた(乙19の2)。
b
平成29年4月5日実施分:波長の極大吸収部は,261.40nm付近に見られ
た(乙20の2)。

原告が原告新商品の主剤であるとするネオクリーンCLを試料とする試
験結果
(ア)本件各確認試験等の試験結果
a
ニチユ・テクノ実施分

ニチユ・テクノがネオクリーンCLを試料として行った本件各確認試験等の結果は,以下のとおりである(甲45)。
(a)含量:適合(75.5%)
(b)性状:適合
(c)本件各確認試験:適合
b
一般財団法人日本食品分析センター(以下日本食品分析センターとい
う。)実施分
日本食品分析センターがネオクリーンCLを試料として行った本件各確認試験等の結果は,以下のとおりである(甲46)。
(a)含量:適(77.0%)
(b)性状:適(粒)
(c)本件各確認試験:適

(イ)成分分析結果
原告が原告新商品及びネオクリーンCLを試料として行った成分分析は,以下のとおりである(甲44)。
試料

塩化物イオン(Cl-)

亜塩素酸イオン(ClO2-)

有効塩素

ネオクリーンCL

82,945

441,415

879,305

ネオクリーンPAS

30,853

29,679

62,301
(単位は,いずれもppm)

(ウ)本件各定性反応試験法による試験結果
原告が原告新商品及びネオクリーンCLを試料として行った本件各定性反応試験法による試験結果は,以下のとおりである(甲44)。
(a)本件定性反応試験法1:適合(泡立つ)
(b)本件定性反応試験法2:適合(変色する)
(c)本件定性反応試験法3:適合(退色しない)
(2)原告新品質表示の品質誤認表示該当性について

被告らの主張について

被告らは,原告新商品を試料として行われた本件各定性反応試験法による試験結果等において,原告新商品からは次亜塩素酸塩が含有する場合に呈するとされている反応が示されなかったことを根拠に,原告新商品が高度サラシ粉を含有していないと主張している。この主張は,高度サラシ粉が,次亜塩素酸カルシウムを主成分としたものと定められていることに着目したものであると理解される。確かに,上記(1)イ(ア)のとおり,原告,被告サンケイアクア及びニチユ・テクノ
が行ったいずれの試験においても,原告新商品からは次亜塩素酸塩が含有する場合に呈するとされている反応が示されていない。しかし,原告新商品は,高度サラシ粉そのものではなく,高度サラシ粉製剤(液剤)であり,高度サラシ粉を成分重量にして7.5%含有させたものであるとされている(甲2)。そして,次亜塩素酸塩は化学的に不安定であることがうかがわれる(甲39,乙53)ところ,被
告らも,次亜塩素酸が化学的に不安定であるために測定することは容易ではないと主張し,被告新商品1が高度サラシ粉を成分重量にして12%含有させたものであるか否かを明らかにするための成分分析を行った際も次亜塩素酸イオンの測定は行っていないこと(乙23)を始めとする弁論の全趣旨によれば,高度サラシ粉を含有させた水溶液では,電離直後は次亜塩素酸イオンが生成するものの,不安定であ
るために経時変化により塩化物イオンに変化すると認められる。これらの点を踏まえると,高度サラシ粉を含有させた水溶液であるとされる原告新商品が次亜塩素酸
塩を含有する場合に呈するとされている反応を示さなかったからといって直ちに,原告新商品が高度サラシ粉を含有していないと結論付けることはできない。イ
原告の説明について

原告は,原告新商品の主剤とされているネオクリーンCLは,食品添加物公定書解説書に定められた高度サラシ粉の成分規格に合致するものであるところ,原告新商品の成分分析の結果とネオクリーンCLの成分分析の結果を照らし合わせた結果は,原告新商品が高度サラシ粉であるネオクリーンCLを成分重量にして7.5%含有するということと整合するものであると主張している。
まず,上記(1)ウ(ア),(ウ)のとおり,ネオクリーンCLは,次亜塩素酸を主
成分とするなど,食品添加物公定書に定められた高度サラシ粉の成分規格に適合するものであるから,高度サラシ粉に当たるといえる。そして,原告新商品の亜塩素酸イオン(ClO2-)及び有効塩素の成分重量(亜塩素酸イオン:29,679,有効塩素:62,301。単位はいずれもppm)は,ネオクリーンCLの亜塩素酸イオン(ClO2-)及び有効塩素の成分重量の7.5%(亜塩素酸イオン:33,106,有効塩素:65,947。
単位はいずれもppm)に近い値となっていることに照らせば,原告新商品がネオクリーンCLを成分重量にして7.5%含有するという原告の主張が虚偽であると排斥することは困難である。

被告らのその他の指摘について

被告らは,①原告新商品を試料として行ったイオンクロマトグラフィー試験法によると,原告新商品が亜塩素酸塩を含有していること,②原告新商品の塩化物イオンの濃度が,高度サラシ粉7.5%に由来する塩化物イオンの濃度と整合しないことも指摘している。
まず,①についてみると,確かに,原告新商品には亜塩素酸や亜塩素酸イオンが含有していることが確認されている(甲44,乙20の4,21の2)ものの,そ
うであるからといって,ネオクリーンCLが,食品添加物公定書解説書に定められた高度サラシ粉の成分規格に適合しており,原告新商品がそのネオクリーンCLを
成分重量にして7.5%含有するという原告の主張を虚偽として排斥し得るものではない。
次に,②についてみると,被告サンケイアクアが原告新商品と高度サラシ粉(他社製のもの)を試料として行った塩化物イオンの定量試験によれば,原告新商品の塩化物イオン(Cl-)の濃度(2.56%)は,高度サラシ粉の塩化物イオン(Cl-)の濃度の7.5%(0.74%)よりもかなり大きな値となっている(乙22)。また,原告が行った試験(甲44)によっても,原告新商品の塩化物イオン(Cl-)の濃度(30,853ppm)は,ネオクリーンCLの塩化物イオン(Cl-)の濃度の7.5%(6,220ppm)よりもかなり大きな値となっている。しかし,原告は,原告新商品に
は副剤として塩化物が使用されており,この塩化物に由来する塩化物イオンが検出されたためにこのような差が生じていると主張しており,これを否定するに足りる証拠はない。そうすると,原告新商品の塩化物イオン(Cl-)の濃度が高度サラシ粉やネオクリーンCLの塩化物イオン(Cl-)の濃度から算定される理論値と整合しないからいって直ちに,原告新商品がネオクリーンCLを成分重量にして7.5
%含有するという原告の主張を虚偽として排斥することはできない。なお,被告らは,本件の審理が損害論に入った後に,原告が高度サラシ粉を製造できるだけの大型設備を有していないことを理由に原告新商品は高度サラシ粉を含有していないと主張する。しかし,上記イのとおり,原告新商品に高度サラシ粉が含有しているという原告の主張が虚偽であると排斥することが困難であることは,
各種試験結果という客観的な事情によって裏付けられており,被告らが指摘する上記事情によって左右されるものではない。

小括

以上によれば,原告新商品が高度サラシ粉を7.5%含有していないと認めることはできない。したがって,原告新商品が高度サラシ粉を7.5%含有するとの原告新商品表示は虚偽の品質表示ではなく,それが品質誤認表示であるとは認められないから,それを前提とする被告らの反訴請求及び本訴請求に対する権利濫用等の
抗弁は,いずれも理由がない。
また,前記1のとおり,原告が被告らに対して原告旧商品表示や原告旧品質表示の使用を許諾したとは認められないから,それを前提とする被告らの本訴請求に対する権利濫用等の抗弁も理由がない。
3
争点5(被告らの共同不法行為責任の成否)について

(1)被告らは,原告が被告各旧商品の販売行為の主体が被告サンケイフーズであると主張した事実を自白した後,平成22年頃以降の販売行為の主体は被告サンケイアクアであると主張して,自白を撤回したことから,まず,この撤回の可否について検討するに,証拠によれば,被告サンケイアクアの売上高は平成21年11月期から平成22年11月期の間に急激に増大していること,平成26年3月以降の被告各旧商品及び被告新商品1の売上等はいずれも,被告サンケイアクアに帰属していたことが認められ(乙54ないし56,58,弁論の全趣旨),その被告サンケイアクアが,被告旧商品1の出荷及び受注業務を担当していること(甲56,乙16)から,被告旧商品2及び被告新商品1も同様であったと推認される。これら
の事実からすると,それらの被告各旧商品の販売行為の主体は,平成22年頃以降,被告サンケイアクアであったと認められ,上記の自白は真実に反するものであると認められるから,特段の事情がない限り,錯誤に基づくものであると推定されるところ,本件全証拠によっても上記特段の事情は認められないから,錯誤に基づくものであると認められる。

以上より,被告らによる自白の撤回は有効であり,被告各旧商品の販売行為による不正競争行為の主体は被告サンケイアクアであったと認められ,このことは被告新商品1についても同様であると認められる(前記1(1)での認定事実はこれを前提とするものである。)。
(2)他方で,被告サンケイフーズは,被告サンケイアクアと平成29年2月25
日までは本店所在地こそ異にしたものの,自社のウェブサイトに表示している住所が被告サンケイアクアの本店所在地と同じであるだけでなく,電話番号及びFAX
番号も被告サンケイアクアのそれと同じであること(甲3,4,30,31)から,被告サンケイアクアと経済的に密接な関係にあると推認されるところ,被告サンケイフーズは,被告各旧商品及び被告新商品1の商品ラベルの製造販売元が表記される部分に自己の社名やその本店所在地(被告新商品1については上記自社のウェブサイトに表示している住所)を表示させる(甲3,5,7,28)だけでなく,ウェブサイトには商品案内として被告旧商品1を紹介していたこと(甲30)を併せ考えると,被告サンケイフーズは,被告各旧商品及び被告新商品1に被告商品表示や被告品質表示を使用するとともに,上記の一連の行為によって被告サンケイアクアによる販売を容易にし,助長したといえるから,被告サンケイアクアの販売
行為による不正競争を幇助したものとして,被告サンケイアクアの不正競争に基づく損害賠償責任について,連帯責任を負うと解するのが相当である。4
争点6(原告の損害の有無及び額)について

(1)不正競争防止法5条2項の適用の有無

不正競争防止法5条2項は,民法の原則の下では,不正競争によって営業上
の利益を侵害された者(以下被侵害者という。)が被った損害の賠償を求めるためには,被侵害者において,損害の発生及び額,これと不正競争との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が不正競争によって利益を受けているときは,その利益額を被侵害者の損害額と推定す
るとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。このように同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定であって,その効果も推定にすぎないことからすれば,同項を適用するための要件を,殊更厳格なものとする合理的な理由はないというべきである。
したがって,被侵害者に,侵害者による不正競争がなかったならば利益が得られ
たであろうという事情が存在する場合には,同項の適用が認められると解すべきである。


不正競争防止法2条1項14号関係

(ア)不正競争防止法5条2項は,同条1項や3項と異なり,適用対象となる不正競争を限定していないから,その文言上,同法2条1項14号の不正競争も適用対象としていると解されるが,前記のとおり,同法5条2項が適用される前提として,被侵害者に,侵害者による不正競争がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在することが必要であることから,その事情の有無を検討する必要がある。そして,被告サンケイアクアが販売していた被告各旧商品と原告が販売していた原告新商品は,いずれも殺菌料製剤(液剤)であり,両商品自体の市場は競合しているといえるが,被告らは,高度サラシ粉製剤(液剤)を始めとする殺菌料製剤
(液剤)が原告新商品等の競合品であることはもとより,高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)もこれらの競合品であるとした上で(他方,原告は,後者だけでなく前者もこれらの競合品ではないと主張する。),これらが多数存在することを踏まえると,同法5条2項の適用が認められないと主張するところ,被告らが指摘する殺菌料製剤(液剤)や高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)の性質次第では,14
号関係での上記事情の有無が左右されると考えられることから,以下検討する。(イ)被告らが被告各旧商品及び原告新商品の競合品であると主張する商品等に関して,以下の事実が認められる。
a
高度サラシ粉やその主成分等

次亜塩素酸カルシウムは,化学安定性に優れ,殺菌,消毒,漂白の目的で様々な分野で使用されており,その次亜塩素酸カルシウムを主成分とし,有効塩素濃度が60%以上である高度サラシ粉も,化学安定性に優れ,殺菌,消毒,漂白の目的で様々な分野で使用されている塩素臭のある粉末状又は粒状のものである(顆粒剤や錠剤のものもある)ところ,酸化力が強いために野菜や果物等の食品に使用する場合にはそのままの形で使用されるわけではなく,水に溶解した形で使用されるもの
の,この形で使用される場合であっても当該食品に塩素臭が付着してしまう(甲6,8ないし10,27,38,40,41,47,乙62の3,95,96,105,
弁論の全趣旨)。
亜塩素酸は,次亜塩素酸よりも酸化力が強いとされ,亜塩酸塩の1つである亜塩素酸ナトリウムは,食品等の漂白等に使用されており,例えば,その浸漬液は,数の子加工品等の殺菌,漂白に使用されている(甲9,10,39,乙26)。b
原告新商品並びに被告各旧商品及び被告新商品1(いずれも液剤)
(a)原告新商品
原告新商品は,高度サラシ粉を7.5%含有する高度サラシ粉製剤(液剤)であって,加工食品の原材料の殺菌又は除菌洗浄処理のために使用されるものであり,原告旧商品1が有していた特徴である低塩素臭及び低刺激性,すなわち,塩素臭が付着して食味や臭味を損なわず,作業者の目や皮膚等に対する刺激が少ないという特徴を有するだけでなく,pHを中性域で安定させて殺菌力や除菌力を長時間持続させられるという特徴を有している(甲2,16,27,乙104,弁論の全趣旨)。他方で,原告新商品の宣伝広告用パンフレットには,これまでの高度サラシ粉製剤(液剤)とは異なり亜塩素酸を豊富に含んでいるとか,亜塩素酸を豊富に含
むことによりこれまでの高度サラシ粉製剤(液剤)とは異なる用途,使用方法,効果があるなどといった記載はなく,原告が保有する特許(甲47)に係る発明の実施品であるなどという記載もない(甲2,乙102)。有効塩素濃度は6%であるが,原告旧商品の有効塩素濃度(12%以上)と同等の効果を得るためには,原告旧商品の1.5倍の量を使用すれば足りる(甲33)。単価は1200円/kgで
ある(甲35,44,弁論の全趣旨)。
(b)被告各旧商品
被告旧商品1は,原告旧商品1と同じ成分規格と製法で製造されたものであるから,有する特徴も原告旧商品1と同じである。両商品はいずれも,高度サラシ粉を12%含有する高度サラシ製剤(液剤)であるとうたわれていたものの,実際には
次亜塩素酸カルシウムを主成分とするのではなく亜塩素酸塩を主成分とするものであったが,低塩素臭及び低刺激性という特徴は有しており,宣伝広告用パンフレッ
トには,水産加工食品の原料下処理殺菌料と銘打たれ,あらゆる水産物の下処理剤といたしまして,安心して使用することができますとの宣伝文句が使用されていた(甲6,27,弁論の全趣旨)。有効塩素濃度は12.9%であり(甲13),単価は729円/kgであった(乙49の平成29年10月分までのうち販売量の少ない1kgボトルを除いた平均による。)。
被告旧商品2は,被告旧商品1との違いは大東物産向けのプライベートブランド商品であったか否かにあるだけで,内容は同じであったことから,同様の特徴を有していた(甲7,弁論の全趣旨)。有効塩素濃度は12.8%であり(甲14),単価は740円/kgであった(乙49の平成29年10月分までの平均によ
る。)
(c)被告新商品1
被告新商品1は,成分規格の変更により,実際に高度サラシ粉を12%含有するとされる高度サラシ粉製剤(液剤)である(乙23,24。なお,被告新商品1は14号については関係しないが,便宜上ここで取り上げる。)。そして,争点4に
関する当事者の主張のとおり,被告新商品1について,原告が,次亜塩素酸を主成分とする高度サラシ粉を主剤とする液剤の問題点である,カルシウム塩が残渣として残り,塩素臭が強く,濁りや沈殿が生じるという問題点が解消されているとは考えられない旨主張したのに対して,被告らは,被告新商品1の商品性に問題はないとしてこれを争っていることや,被告新商品1は被告旧商品1と同じ商品名で継続
的に販売されており,その間に特徴の相違があるとの告知がされたことは何らうかがわれず,実際の被告新商品1の分析もなされていないことからすると,原告が問題とする低塩素臭及び低刺激性という特徴について,被告新商品1は被告旧商品1と顕著な差がないものと推認される。有効塩素濃度は12.6%であり(乙23),単価は741円/kgであった(乙49の平成29年11月分のうち販売量の少な
い1kgボトルを除いた平均による。)。
c
その他の液剤商品

(a)FKハイパー
FKハイパーは,原告新商品の株式会社リンクス向けのプライベートブランド商品であるところ,宣伝広告用パンフレットの記載ぶりも,原告新商品と同様である(甲2,乙33,76,弁論の全趣旨)。
(b)カルクロール,ワンダーMASA
カルクロールは,高度サラシ粉を(有効塩素として)6%以上含有するとされる高度サラシ粉製剤(液剤)であって,食品や食品加工器具類の洗浄殺菌のために使用されるものであるところ,カルクロールを紹介する販売業者(株式会社ユニフィードエンジニアリング)のウェブサイトには,通常ペレットもしくは,粒状の市販品が多く,濃度調整が困難で使いにくい欠点を解消するため,液状にしたうえで安定化しているという特徴が紹介されているものの,原告新商品や被告各旧商品と同様の特徴(低塩素臭及び低刺激性という特徴や殺菌力や除菌力を長時間持続させられるという特徴)を有しているなどという紹介はされていない(乙32,76)。有効塩素濃度は上記のとおり6%以上であった(乙32)。
ワンダーMASAは,高度サラシ粉を14.5%含有するとされる高度サラシ粉製剤(液剤)であるところ,その商品ラベルには,食品に使用することも想定された記載(食品添加物,食品への表示例)がされているが,どのような特徴を有しているかは不明である(乙34。なお,原告は,ワンダーMASAは高度サラシ粉を含有せず,亜塩素酸ナトリウムを含有するにすぎない疑いがあると主張す
るが,その主張は具体的な根拠に欠ける上,仮に亜塩素酸ナトリウムを含有するにすぎなかったとしても,原告旧商品1,被告各旧商品がそうであったように殺菌料製剤〔液剤〕であることに変わりはない。)。
(c)サニロン6,シーエルオー,PA-12,フレッシュバリア及びフレッシュバリアSS並びにニュースピリット(液剤)

サニロン6(12%),シーエルオー(12%),PA-12(11.6%),フレッシュバリア(12%)及びフレッシュバリアSS(14.5%)並びにニュ
ースピリット(12%)は,いずれも高度サラシ粉を括弧内の濃度で含有するとされる高度サラシ粉製剤(液剤)である。原告が平成23年9月当時被告旧商品1とともに問題視していた商品である(甲54)ことから,上記6商品はいずれも食品の殺菌等のために使用される液剤であると推認されるが,どのような特徴を有しているかまでは不明である。単価は,次のとおりである(サニロン6〔750円/kg〕,シーエルオー〔900円/kg〕,PA-12〔1000円/kg〕,フレッシュバリア〔800円/kg〕。甲54)。
(d)CHC-15
被告らが,CHC-15は株式会社フロンティアが販売する高度サラシ粉を含有
するとされる高度サラシ粉製剤(液剤)であると主張するのに対し,原告は,同商品は国内向けには販売されていないと指摘しているところ,被告らが提出する乙35をもってしてもCHC-15が国内向けに販売されているとは認められない。d
高度サラシ粉商品(粉剤,顆粒剤,錠剤)

(a)スタークロンシリーズ
スタークロンシリーズは,南海化学株式会社(以下南海化学という。)が製造している高度サラシ粉であり,以下の商品がある(乙65)。


スタークロンF(粉剤),スタークロンG(顆粒剤),スタークロンT(錠
剤),スタークロンT100S/T200S(錠剤)
スタークロンF等は,南海化学のウェブサイトでは,用途が生鮮食品・加工食品の殺菌・消毒,漂白…プール水・上水の殺菌消毒などと紹介されている高度サラシ粉である(乙65)ところ,スタークロンT及びスタークロンT200Sの販売業者(サイブ株式会社)のウェブサイトでは,両商品はプール関係の商品として紹介されるとともに,有効塩素濃度は70~77.5%であるとされている(乙68)。



スタークロンPG(顆粒剤),スタークロンPT(錠剤),スタークロンP
T100S/PT200S(錠剤)

スタークロンPG等は,南海化学のウェブサイトでは,成分規格が医薬品,用途がプール水の殺菌・消毒プール洗い場,腰洗い場での殺菌・消毒浄化槽放流水の殺菌・消毒と紹介されている高度サラシ粉である(乙65)。(b)ハイクロンシリーズ等
ハイクロンシリーズ等は,日本曹達株式会社(以下日本曹達という。)が製造している高度サラシ粉であり,同社のウェブサイトでは,プールや公営浴場での水の殺菌消毒剤として,高いシェアを有しており,代表的な用途がプール水および水道水の殺菌・消毒剤と紹介されていて,以下の商品がある(甲60,乙98,弁論の全趣旨)。



ハイクロンFH(顆粒剤),ハイクロンQ(錠剤),ハイクロンLT-10
0(錠剤),ハイクロンLT-200(錠剤)
ハイクロンFHは,日本曹達の宣伝広告用パンフレットでは,具体的な使用例がプールでの使用法だけでなく,生野菜,果物の除菌漬物用野菜の前処理
などと紹介されている高度サラシ粉である(乙98)。有効塩素は70%であり,単価は725円/kgであった(乙98,104)。
ハイクロンQは,日本曹達の宣伝広告用パンフレットでは,食品添加物とはされているものの,具体的な使用例としてプールでの使用法だけが挙げられている高度サラシ粉であるところ,Amazonのウェブサイトでは,次亜塩素酸カルシウムの検索ワードでヒットした商品が表示された画面において,食品添加物と
いう表示がされているものの,プールという表示もされているとともに,…コンタクトレンズ・ケア用品>消毒・中和剤のカテゴリーに位置付けられており,商品の説明としてプール水に使用する場合の使用方法が記載されており(販売者:栗本薬品工業株式会社),楽天のウェブサイトでも,同様の記載となっている(販売者:栗本薬品工業株式会社。乙66の2,70の1,98,104)。有効
塩素は70%であり,単価は762円/kg,800円/kgであり,小分け売りされているものについては1000円/kgであった(乙66の2,70の1,9
8,104)。
ハイクロンLT-100,ハイクロンLT-200は,日本曹達の宣伝広告用パンフレットでは,食品添加物とはされているものの,具体的な使用例としてプールでの使用法だけが挙げられている高度サラシ粉である(乙98)。有効塩素は70%であり,単価は725円/kgであり,小分け売りされているものについては1000円/kgであった(乙98,104)。


ハイクロン1kg顆粒

ハイクロオン1kg顆粒は,Amazonのウェブサイトでは,次亜塩素酸カルシウムの検索ワードでヒットした商品が表示された画面において,食品添加物という表示がされているものの,プール用衛生管理剤という表示もされている(乙104)とともに,楽天のウェブサイトでは,食品添加物という表示がされているものの,プール用衛生管理剤という表示もされており,特徴として速やかに残留塩素濃度を上げたい場合や小型プール・浴槽に使用する場合に最適ですなどと記載されている(販売者:栗本薬品工業株式会社。乙70の2)高度
サラシ粉である。単価は3700円/kg,3990円/kg,4200円/kgであった(乙66の2,70の2,104)。


日曹ハイクロン,ハイクロンTB-200,ハイクロンGB(いずれも固
形)
日曹ハイクロン,ハイクロンTB-200,ハイクロンGBは,販売業者(道都化学産業株式会社)のウェブサイトでは,取扱商品の1つである医薬品殺菌・消毒剤に関して,プール用消毒剤,浄化槽用殺菌・消毒剤等,医薬品(第2類医薬品)登録されている固形塩素剤(次亜塩素酸カルシウム)を各種取り揃えていると紹介されている高度サラシ粉である(乙88)。


ハイクロンS(錠剤)

ハイクロンSは,楽天のウェブサイトでは,用途が浄化槽放流水処理剤小型,中型浄化槽の殺菌・消毒などと紹介されたり(販売者:三和合名会社),商品詳
細としてプールの水,プール用足洗い場及び腰洗い槽水,飲料水の殺菌消毒などと紹介されたりしており(販売者:森川産業株式会社),YAHOO!JAPANショッピングのウェブサイトでは,プールの水,プール用足洗い場及び腰洗い槽水,飲料水及び汚水などの殺菌消毒用錠剤などと紹介されている(販売者:くすりのレデイハートショップ。甲58の1,乙71,72)高度サラシ粉である。有効塩素は70%以上であり,単価は1166円/kg,1193円/kgであった(甲58の1,乙72)。


高度サラシ粉70(剤形は不明)

高度サラシ粉70は,YAHOO!JAPANショッピングのウェブサイトでは,日本曹達高度サラシ粉の検索ワードでヒットした高度サラシ粉である(乙66の1)。
有効塩素濃度は71.2%であり,単価は629円/kgや650円/kgであった(甲12,乙66の1,104)。
(c)トヨクロンシリーズ
トヨクロンシリーズは,東ソー株式会社が製造している高度サラシ粉であり,総合カタログでは,トヨクロン(トヨクロンファインは,トヨクロンにスケール防止剤を添加したグレードであるとされている。)は医薬品と食品添加物の2種類をラインナップしているとされ,食品添加物としてラインナップされている商品の剤形としては粉剤,顆粒剤,錠剤のものがあるところ,同社のウェブサイトでは,様々な分野でご活用いただけますとして,野菜など食品の殺菌・消毒も挙
げられているものの,主な用途が食品に限られるものはなく,プールの衛生管理,浴場の衛生管理,浄化槽の衛生管理については推奨商品や使用方法を説明したウェブページが別途設けられている(乙67,99,103)。有効塩素濃度は73.9%であり,単価は972円/kgであった(甲12,乙104)。

(d)その他


高度サラシ粉(販売者:太田隆),高度サラシ粉(販売者不明),高度サラ
シ粉(製造者:昭和化学株式会社)
販売者が太田隆の高度サラシ粉(顆粒剤)は,e健康ショップのウェブサイトでは,食品添加物とされ,商品の特徴が殺菌・漂白・脱臭に強力な効果を発揮しますと紹介されている(乙73)。有効塩素濃度は70%であり,単価は1944円/kgであった(乙73)。
販売者不明の高度サラシ粉(剤形は不明)は,モノタロウのウェブサイトでは,野菜などの消毒や,プール,工業用水などの消毒,漂白剤としても使用できますと紹介されているとともに,

実験・研究・分析用の商品のため,研究者および法人向けです。試験・研究用途以外の目的に…いただけません

と紹介されてい
る(乙74)。
製造者が日本社団法人日本試薬協会の会員である昭和化学株式会社の高度さらし粉は,安全データシートでは,推奨用途は試薬であり,参考として野菜,果物などの殺菌などとされている(甲59,乙85)。②

PULUCALA(販売者不明),高度さらし粉(製造者:昭和化学工業株
式会社),高度サラシ粉70%顆粒品(製造者:小川化工株式会社),高度カルキ(販売者:MATSUBA)
PULUCALAは,楽天のウェブサイトでは,次亜塩素酸カルシウム等を成分とするプール専用入浴剤であり,1包入れてよくかき混ぜるだけで,普段の味気ないプールがカラフルに彩られると紹介されている(乙75)。
昭和化学工業株式会社は,高度サラシ粉(剤形は不明)を製造販売しているが,その用途等は明らかではない(乙86.なお,原告は,高度サラシ粉ではないなどと主張するが,商品ラベルには次亜塩素酸カルシウムの前に高度さらし粉と記載されている以上,上記主張は憶測の域を出ないと言わざるを得ない。)。小川化工株式会社は,高度サラシ粉(剤形は不明)を製造販売しているが,その
用途等は明らかではない(乙87)。
Amazonのウェブサイトでは,次亜塩素酸カルシウムの検索ワードでヒット
した商品の1つである高度カルキ(販売者:MATSUBSA)について,食品添加物という表示がされているが,その用途等は明らかではない(乙104)。単価は1400円/kgであった(乙104)。
(ウ)検討
a
確かに,原告新商品及び被告各旧商品以外にも,高度サラシ粉製剤(液剤)
が複数販売されている(上記(イ)c)だけでなく,原告も高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)であることを争っていない高度サラシ粉製造大手3社製の商品だけを取り上げてみても多数販売されており(上記(イ)d(a)ないし(c)),そのうち単に食品添加物という表示にとどまらず,具体的な用途として食品の殺菌等が指摘されているものに限ってみても相当数存在する(スタークロンF等,ハイクロンFH,トヨクロンシリーズの一部)。そうすると,これら全てが原告新商品の競合品であるのであれば,原告新商品と被告各旧商品とが競合関係にあるからといって,被告旧品質表示がされなかったとした場合に,被告各旧商品を購入した需要者の中に原告新商品を購入したであろう者がおり,原告が利益を得られたであろうという
関係を直ちに見いだすのは困難である。
しかし,まず,スタークロンF等のような高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)についてみると,上記(イ)のとおり,高度サラシ粉製剤(液剤)を始めとする殺菌料製剤(液剤)が,高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)と比較して,有効塩素(漂白作用に有効な塩素〔甲47,弁論の全趣旨〕)濃度が数倍低いにもかかわら
ず,同様の価格帯で販売されていることに照らせば,高度サラシ粉製剤(液剤)を始めとする殺菌料製剤(液剤)の方が,実質的には数倍高価な商品であるという見方ができる。特にハイクロンFHでは,有効塩素70%と高濃度ですから,液体次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素10%)に比べ,取扱量が1/7で済みますなどと,広告宣伝文句として,殺菌料製剤(液剤)との比較がうたわれている(乙9
8)。にもかかわらず,被告各旧商品のユーザーは,液剤である被告各旧商品を選択したわけであるが,液剤ではいずれも主たる用途として食品用が掲げられ,液剤
の利点については,カルクロールの広告において,粉剤等が濃度調整が困難で使いにくい欠点を解消するため,液状にしたうえで安定化しているとされている。これらの点を併せ考えると,高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)の需要者層と高度サラシ粉製剤(液剤)の需要者層とでは,殺菌料製剤を使用する需要者の中でも異なっていると推認されるから,スタークロンF等のような高度サラシ粉(粉剤,顆粒剤,錠剤)が,高度サラシ粉製剤(液剤)の1つである被告各旧商品及び原告新商品の競合品であるとは認められない(同様の理由により,殺菌料製剤〔液剤〕ではない上記(イ)d(d)の商品も原告新商品等の競合品であるとは認められない。)。次に,上記(イ)cの高度サラシ粉製剤(液剤)を始めとする殺菌料製剤(液剤)
についてみると,FKハイパーは,原告がOEM販売している商品であり,原告の損害発生の有無を検討するに当たっての競合関係にないから,競合品として市場に存在するものは8商品(カルクロール,ワンダーMASA,サニロン6,シーエルオー,PA-12,フレッシュバリア,フレッシュバリアSS,ニュースピリット)にとどまる(もっとも,フレッシュバリア,フレッシュバリアSSは,販売業
者であった播磨食品開発が平成28年11月に解散したことに照らせば,遅くともその頃以降は販売されていないと推認される〔乙83〕。)。
以上の市場の状況に照らせば,被告旧品質表示がされなかったとした場合に,被告各旧商品を購入した需要者の中に原告新商品を購入したであろう者がおり,原告が利益を得られたであろうという関係が成り立ち得ると認められるから,14号の
不正競争による損害額について同法5条2項が適用されると解される。b
これに対し,被告らは,①上記(イ)で指摘した商品全てが原告新商品等の競
合品であること,②原告新商品の品質表示である原告新品質表示が品質誤認表示であることを前提として,同項は適用されないと主張する。しかし,これまで説示したとおり,上記①及び②はいずれも前提を誤るものであるから,被告らの上記主張は採用できない。

不正競争防止法2条1項1号関係

上記イ(ウ)で検討した市場の状況からすると,被告商品表示についても,被告商品表示がされなかったとした場合に,被告旧商品1及び被告新商品1を購入した需要者の中に原告新商品を購入したであろう者がおり,原告が利益を得られたであろうという関係が優に成り立ち得ると認められるから,1号の不正競争による損害額についても同法5条2項が適用されると解される。
これに対し,被告らは,①被告旧商品1及び被告新商品1が原告新商品と誤認混同されていないことに照らせば,同項が適用される前提となる損害の発生自体が認められないし,②仮に,損害の発生自体が肯定されるとしても,本件の事情の下では,同項が適用されるために不可欠である混同惹起行為がなければ,周知商品表示の使用者が同表示又はこれと類似した表示をした商品を販売できたであろうという関係が認められないと主張する。しかし,上記のとおり,被侵害者に,侵害者による不正競争がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,被侵害者自身が周知性を有する商品表示をもはや使用しておらず,したがって,被侵害者が現に販売する商品との間での誤認混同は生じないとしても,同項
の適用が認められると解するのが相当であるから,被告らの上記主張は採用できない。

小括

以上のとおり,被告サンケイアクアによる不正競争たる販売行為には,不正競争防止法5条2項が適用されるから,以下,不正競争によって被告サンケイアクアが得た利益の額について検討することとする。
(2)各商品の販売利益の額

各商品の売上額

証拠(乙59,89)及び弁論の全趣旨によれば,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上額は,別紙損害額算定表の①欄のとおりと認められる。イ
控除すべき経費の額

不正競争防止法5条2項の利益とは,いわゆる限界利益,すなわち侵害品の
売上合計額から侵害品の製造,販売のために追加的に必要となった経費のみを控除したものを指すと解するのが相当である。そこで,各商品の製造,販売のために追加的に必要となった経費を検討すると,次のとおりとなる。
(ア)販売原価率
被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売原価が,その販売のために追加的に必要となった経費であることについては,当事者間に争いはない。そして,原告は,被告サンケイアクアの損益計算書上の売上/食添1の額と仕入/食添1の額から算定できる平成26年12月1日から平成29年11月30日までの間における売上/食添1や仕入/食添1に分類される商品の販売原価率
をもって,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売原価率とすべきであるという趣旨の主張をするところ,弁論の全趣旨によれば,被告サンケイアクアの損益計算書上,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上高は売上/食添1に計上され,販売原価は仕入/食添1に計上されていること,被告らも被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売原価率の算定方法自体は
積極的に争っておらず,原告の主張する算定方法が不合理であるとまではいえないことに照らせば,原告主張の算定方法をもって,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売原価率を算定するのが相当である。
そして,証拠(乙55)によれば,平成26年12月1日から平成29年11月30日までの間における売上/食添1の合計額は,2億7231万3949円
である。他方,証拠(乙55)によれば,同期間における仕入/食添1の合計額は,1億5377万5359円である。したがって,同期間における売上/食添1や仕入/食添1に分類される商品,ひいては上記期間の前後も販売実績のある被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売原価率は,56.5%であると認めるのが相当である。

153,775,359÷272,313,949×100≒56,5(小数点第2位以下四捨五入)(イ)運送費率及び販売手数料率

a
運送費及び販売手数料はいずれも,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新
商品1の販売のために追加的に必要となった経費であると考えるのが合理的であるから,これらをおよそ控除すべきでないという原告の主張は採用できない。b
他方で,被告らは,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売の
ために追加的に必要となった運送費及び販売手数料の額は,被告サンケイアクアにおいて計上されている運送費の全額及び販売手数料の80%であると主張する。しかし,弁論の全趣旨によれば,被告サンケイアクアは,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の以外の商品も取り扱っていることが認められる。そして,証拠(乙55,59,89)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年12月1日から
平成29年11月30日までの間における被告サンケイアクアが販売した全商品の合計売上額が4億6554万9597円であり,同期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の合計売上額が1億9302万1004円であると認められるから,全商品の合計売上額に占める被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の合計売上額の割合は41.5%にとどまる。

193,021,004÷465,549,597×100≒41.5(小数点第2位以下四捨五入)そうすると,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売に当たって要した運送費及び販売手数料が,被告サンケイアクアにおいて計上されている運送費及び販売手数料のうち上記の程度を占めるとは考えられる。しかし,これを超えて被告らが主張する程度まで運送費及び販売手数料を要したと認めるには,これを裏
付ける具体的な事情が必要であるところ,これを認めるに足りる証拠はない。したがって,運送費及び販売手数料については,上記の売上割合により,全運送費及び販売手数料の41.5%の限度で経費と認めるのが相当である。
そして,証拠(乙101)によれば,上記期間(平成26年12月1日から平成29年11月30日まで)における被告サンケイアクアの合計運送費が1935万
5976円,合計販売手数料が1146万2231円であるから,同期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売のために追加的に必要となっ
た運送費及び販売手数料の額は,その41.5%である1278万9556円であると認められる。
(19,355,976+11,462,231)×0.415≒12,789,556(小数点以下四捨五入)c
もっとも,上記期間(平成26年12月1日から平成29年11月30日ま
で)の前後の期間の運送費及び販売手数料の額については,それらの全体額を認めるに足りる証拠がない。しかし,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1は,上記期間の前後も販売実績があるところ,上記期間内とその前後とで運送費率及び販売手数料率に有意な差異があるとは考え難いことから,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の上記期間における運送費及び販売手数料の額のそれら商品
の売上額に対する割合をもって,全期間におけるそれら商品の運送費及び販売手数料の合計と認めるのが相当である。
そして,上記期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の合計売上額が1億9302万1004円であるところ,同期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売のために追加的に必要となった運送費及び販
売手数料の額は1278万9556円であるから,同期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の運送費率及び販売手数料率の合計は,6.6%である。したがって,売上額の6.6%をもって,全期間における被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の運送費及び販売手数料の合計と認めるのが相当である。

12,789,556÷193,021,004×100≒6.6(小数点第2位以下四捨五入)(ウ)被告らは,運送費及び販売手数料以外の販管費も経費として控除すべきであると主張するが,それらの販管費が被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の販売のために追加的に必要になったとは認められないから,被告らのこの主張は採用できない。


推定される販売利益の額

以上に基づき,被告旧商品1,被告旧商品2及び被告新商品1の売上額に,製造
原価率(56.5%)並びに運送費率及び販売手数料率(合計6.6%)を踏まえて経費を控除すると,各商品の利益率は36.9%である(1-(0.565+0.066)×100=36.9)。そして,証拠(乙54,55,59及び89)によれば,これらの金額は消費税抜きの金額であると認められるから,被告サンケイアクアが得た利益を算定するには,平成26年3月分については5%,同年4月以降分については8%を加算する必要がある(原告の消費税に関する主張はこの趣旨を含むと解される。)。以上によれば,被告サンケイアクアの販売利益は,別紙損害額算定表の②欄のとおりになる。
(3)推定覆滅事由の検討


被告旧商品1関係について

(ア)被告旧商品1は,被告商品表示と被告旧品質表示の双方が使用されているところ,被告らは,被告旧商品1には多数の競合品があることにより,推定が大幅に覆滅されると主張する。
(イ)しかし,上記(1)イ及びウで述べたとおり,高度サラシ粉等(粉剤,顆粒剤,錠剤等)と液剤のうちのFKハイパーについては,原告新商品等の競合品であるとは認められないから,被告旧商品1が吸収した需要をそれらの製剤が吸収したであろうとは認められない。
(ウ)そこで,その余の高度サラシ粉製剤(液剤)が,被告旧商品1が吸収した需要を吸収する覆滅事由と評価できるだけの競合品であるか否かについて検討する。
a
前記(1)イ(ウ)のとおり,高度サラシ粉の液剤については,食品への使用を主
たる用途とし,粉剤や錠剤よりも濃度調整が容易であるという利点があり,液剤を購入する需要者は,このような利点のために,有効塩素量の観点からは高価格になる液剤を購入するものと考えられ,このことは,被告旧商品1の購入者においても同様であると推認される。また,表示上の高度サラシ粉含有濃度と価格は,被告旧製品1が12.9%含有,729円/kgであるのに対し,他の高度サラシ粉製剤(液剤)でも,同様の含有濃度と価格のものが複数存在する(少なくともワンダー
MASA,サニロン6,シーエルオー,PA-12)。このように,いずれも液剤である点で取扱いの容易性に差異はなく,価格帯にも有意な差異は見られない。ところが,被告旧商品1には,低塩素臭及び低刺激性という特徴があり,そのことが宣伝広告パンフレットでも強調されているところ,原告新商品を除けば,他の高度サラシ粉製剤(液剤)でそのような特徴がうたわれていると認められるものはない。そうすると,このように実質的に同じ価格帯の複数の高度サラシ粉製剤(液剤)の中で,被告旧商品1が選択されるに当たっては,低塩素臭及び低刺激性という特徴がかなりの程度寄与したものと考えられる。また,被告らが被告旧商品1を被告新商品1に変更するに当たり,内容成分高度サラシ粉12.00%との被告
品質表示を変更するのではなく,逆に成分規格を同表示に沿うものとなるように変更したことからすると,被告品質表示自体も,他の高度サラシ粉製剤(液剤)と競争する前提として重要な寄与をしたと推認される。そしてまた,被告旧商品1と同じ成分規格,特徴及び商品表示である原告旧商品1及び原告旧商品表示の周知性も,同様の特徴を有するものとしての周知性を獲得したものと推認される。
以上のことからすると,被告旧商品1において,亜塩素酸塩を主成分とすることから内容成分高度サラシ粉また,「PERFECT12.00%との被告品質表示が使用されず,
PA」等との被告商品表示も使用されないとした場合,

被告旧商品1が吸収した需要が被告旧商品1にとどまることは考え難く,唯一同様の特徴をうたう高度サラシ粉製剤(液剤)である原告新商品が基本的に吸収した可能性が高いというべきである。
b
もっとも,被告旧商品1は前記のとおり有効塩素12.9%,価格729円
/kgであるのに対し,原告新商品は,有効塩素6%,価格1200円/kgで,原告旧商品1と同様の効果を得るためには1.5倍の使用量を要するから,原告旧商品1と同一の成分規格である被告旧商品と同等の効果を得るためには1800円/kgを要し,実質的な価格が被告旧商品1の2倍以上であることになる。そして,被告旧商品1と他の競合品とは同様の価格帯にあるから,それらの中で被告旧商品
1が選ばれるについては,低塩素臭や低刺激との特徴が相応の寄与を果たしたと認められるが,実質価格が2倍になる場合には,これらの商品の用途が業務上のものであり,経費増加に敏感であると考えられることを考慮すると,そのような特徴よりも価格の安さを重視して他の競合品を選択するに至るであろう需要者も一定程度存在すると考えられる。
c
以上からすると,被告旧商品1において,亜塩素酸塩を主成分とすることか
ら内容成分高度サラシ粉た,「PERFECT12.00%との被告品質表示が使用されず,ま
PA」等との被告商品表示が使用されないとした場合でも,

原告新商品を選択せず,他の競合品を選択する需要者が一定程度存在するであろうと認められる。そして,そのことによる推定覆滅の割合は3割と認めるのが相当である。
なお,被告らは,自身の営業努力が販売量維持に貢献してきたと主張するが,被告らが通常の営業努力以上の格別の努力をしたと認めるに足りる証拠はない。イ
被告旧商品2関係について

被告旧商品2には,被告品質表示のみが使用されているところ,その内容成分は被告旧商品1と同じで,価格も同程度であるから,被告旧商品2が選択されるに当たっては,被告旧製品1と同様に,被告品質表示が重要な前提をなした上で,低塩素臭及び低刺激性という特徴がかなりの程度寄与したものと考えられる一方,原告新商品との実質価格の差があることも同様である。

そうすると,被告旧商品2において,亜塩素酸塩を主成分とすることから内容成分高度サラシ粉12.00%との被告品質表示が使用されない場合,被告
旧商品1におけると同様に,推定覆滅の割合は3割と認めるのが相当である。ウ
被告新商品1関係について

被告新商品1には,被告商品表示のみが使用されているところ,被告旧商品1と異なり,内容成分高度サラシ粉12.00%との被告品質表示を使用する
ことができ,かつ,低塩素臭及び低刺激性という特徴において顕著な差はないと推
認されるから,品質面はほぼ同様のものである。また,被告旧商品1には,商品名だけが異なる被告旧商品2があるが,別紙損害額計算表の①欄のとおり,同じ平成26年3月から平成29年10月までの売上額について,被告旧商品1が1億9608万円余であるのに対し,被告旧商品2は,大東物産1社向けのみのプライベートブランド商品であるにもかかわらず,4303万円余と被告旧商品1の約22%に上っており,このことからすると,被告旧商品1の販売において被告商品表示の寄与は限定的なものであったことがうかがわれる。このことに加え,前記認定のとおり被告旧商品1と被告新商品1の価格は同程度である反面,原告新商品の価格はその2倍以上に上ることも考慮すると,被告旧商品1が吸収した需要は,被告
商品表示が使用されなかった場合にもなお被告旧商品1にとどまるものが一定程度存すると考えられ,また,他の競合品が吸収するものもある程度存すると考えられるから,被告新商品1についての推定覆滅の割合は5割と認めるのが相当である。(4)原告の損害額

以上によれば,原告の逸失利益の額は,別紙損害額算定表の③欄のとお
りであり,合計額は7500万6268円となる。
原告は,予備的に不正競争防止法5条3項に基づく算定による損害額を主張しているところ,原告が主張する使用料率である5%を前提としても,その金額が同条2項に基づき算定された上記損害額を上回らない。

弁護士費用

上記アの認容額を始めとする本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告らによる本件の不正競争行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の損害額は,750万円と認めるのが相当である。

合計及び遅延損害金の起算日

(ア)以上によれば,被告サンケイアクアの不正競争による原告の損害額は,8250万6268円である。
(イ)原告は,被告旧商品1及び被告旧商品2の平成26年3月から平成29年2
月までの間の販売分に対応する逸失利益については,訴状送達の日の翌日(被告サンケイフーズについては平成29年3月13日,被告サンケイアクアについては同月11日)を起算日とする遅延損害金の支払を請求しているところ,上記期間における両商品の販売分に対応する逸失利益の合計額は,別紙損害額算定表の④欄のとおり5387万4677円である。
次に,原告は,被告旧商品2の平成29年3月から同年10月までの間の販売分に対応する逸失利益については,同年11月1日を起算日とする遅延損害金の支払を請求しているところ,上記期間における被告旧商品2の間の販売分に対応する逸失利益の額は,別紙損害額算定表の⑤欄のとおり160万6051円である。
最後に,原告は,被告旧商品1及び被告新商品1の平成29年3月から平成30年8月までの間の販売分に対応する逸失利益については,平成30年9月1日を起算日とする遅延損害金の支払を請求しているところ,上記期間における両商品の販売分に対応する逸失利益の合計額は,別紙損害額算定表の⑥欄のとおり1952万5540円である。

5
争点4(被告らが被告商品表示及び被告品質表示をするおそれの有無と廃棄
の要否)について
(1)不正競争防止法2条1項1号関係

差止請求

被告らは,現在は食品添加物である殺菌料製剤に別紙被告商品表示目録記載1又は2の表示(被告商品表示)を使用せずに別の商品表示を使用し(被告サンケイフーズ),その殺菌料製剤を販売している(被告サンケイアクア)ことが認められるが,被告らが密接な関係を有しており,その被告らが被告商品表示と同一の商品表示である原告旧商品表示の周知性の有無を争うとともに使用許諾等を主張していることなどからすると,なお被告らいずれもが食品添加物である殺菌料製剤に被
告商品表示を使用し,その殺菌料製剤を販売等するおそれは認められるから,そのような殺菌料製剤の譲渡等の差止請求は理由がある。


廃棄請求

弁論の全趣旨によれば,被告らが被告商品表示を使用した食品添加物である殺菌料製剤たる被告旧商品1ないし被告新商品1の在庫を保有していることを否定していない以上,その廃棄請求についても理由がある。
(2)不正競争防止法2条1項14号関係
被告らは,被告旧商品1及び被告旧商品2に被告品質表示を付すことが品質誤認表示に当たることを自認した上,被告品質表示をすることが品質誤認表示に当たらないように成分規格を切り替えたと主張しているところ,被告らが被告新商品1及び被告新商品2に含有させていると主張するHSR-96は,次亜塩素酸を主
成分とするなど,食品添加物公定書に定められた高度サラシ粉の成分規格に適合するものである(乙23,24)から,高度サラシ粉に当たるといえ,被告各新商品の有効塩素濃度(12.6%)は,HSR-96の有効塩素濃度の12.0%(11.5%)に近い値となっていることに照らせば,被告新商品1がHSR-96を成分重量にして12.0%含有するという被告らの主張が虚偽であると排斥するこ
とは困難であり,被告新商品1と同じ成分規格であると推認される被告新商品2についても同様である。
これに対し,原告は,被告新商品1及び被告新商品2の商品性に問題があることに照らせば,被告らが被告旧商品1及び被告旧商品2の販売を再開するおそれがある以上,ひいては,被告品質表示を付した被告旧商品1及び被告旧商品2を販売す
るという品質誤認表示行為を行うおそれがなお存在すると主張するが,被告新商品1及び被告新商品2に原告が指摘するような問題点があると認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告らが原告が指摘するような品質誤認表示行為を行うおそれがあるとまでは認められない以上,差止請求は理由がないし,これに理由があることを
前提とする廃棄請求も理由がない。
第4

結論

以上の次第で,原告の本訴請求は,主文第1項ないし第4項の限度で理由があるから,その限度で認容することとし(なお,主文第1項及び第2項については,仮執行宣言を付するのは相当でないから,これを付さないこととする。),その余はいずれも理由がないから棄却することとし,被告らの反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官

髙松宏之野上誠一
裁判官
裁判官

大門宏一郎
(別紙)
被告商品表示目録

1
PERFECT・PA

2
パーフェクト・ピュアーエース
以上
(別紙)
被告商品目録

1
商品名:PERFECT・PA(パーフェクト・ピュアーエース)
2
商品名:ビューティック12
以上
(別紙)
被告品質表示目録

内容成分

高度サラシ粉

12.00%
以上
(別紙)
原告商品目録

商品名:ネオクリーンPA

S以上
(別紙)
原告品質表示目録

1
高度さらし粉液体製剤

2
成分<主剤>高度さらし粉

7.50%
以上
(別紙)
原告旧商品表示目録

1
PERFECT・PA

2
パーフェクト・ピュアーエース
以上
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