事件番号 | 平成31(わ)192 |
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事件名 | 職業安定法違反 |
裁判年月日 | 令和元年5月29日 |
法廷名 | 京都地方裁判所 |
裁判日:西暦 | 2019-05-29 |
情報公開日 | 2019-07-17 18:00:11 |
被告人Aを懲役1年10月に,被告人Bを懲役1年6月に処す る。 2 被告人両名に対し,この裁判が確定した日から各3年間,それぞ れその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実) 第1 被告人Aは,C,D,E及びFと共謀の上,平成30年1月23日頃,京都 市a区b通c町d番地e所在のGビル内において,無店舗型性風俗特殊営業店Hの人事を担当しているIに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,J(当時20歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。 第2 被告人Bは,C,D,K及びFと共謀の上,同年3月20日頃,前記Gビル 内において,前記無店舗型性風俗特殊営業店Hの人事を担当している前記Iに対し,同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫,口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら,同店の従業員として就業させる目的で,L(当時19歳)を女性従業員として紹介して雇用させ,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。 (法令の適用) 被告人両名につきいずれも 罰条 刑法60条,職業安定法63条2号 刑種の選択 懲役刑 刑の執行猶予 刑法25条1項 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担) (量刑の理由) 1 本件は,被告人両名が,それぞれ,共犯者らと共謀の上,公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,女性1名を性風俗店の人事担当者に女性従業員として紹介して雇用させたという事案である。 2共通の情状 被告人らは,各種のマニュアル等を整え,指示役,経理担当者,女性のスカウト役,性風俗店側への紹介役や仲介役等の役割分担のもと,スカウト役が街頭で声をかけた女性に繰り返し連絡を取り,一緒に食事をするなどして女性に好意を抱かせて被告人ら運営の飲食店に誘い込み,スカウト役と交際するためには売上に貢献する必要がある旨言ったり,高額の飲食をさせたりした上で,稼げる店があるなどとして半ば強引に勧誘して性風俗店での就労を決意させており,巧妙な手口による組織的かつ職業的な犯行であるとともに,女性の人格を踏みにじる卑劣な犯行である。 3個別の情状 ⑴被告人A 被告人Aは,上位の共犯者の指示に従って行動するなど従属的な面もあったものの,紹介役を担当し,女性を勧誘して性風俗店での就労を決意させ,同店側に取り次ぐなどの重要な役割を果たしている。もとより報酬欲しさなどという利欲的な動機に酌量の余地はない。以上の犯情によれば,被告人Aの刑事責任は相当に重いといわざるを得ず,懲役刑の選択はやむを得ない。しかしながら,他方,被告人Aは,事実関係を認めるなどして反省の態度を示していること,若年で前科がないこと,母親が出廷して監督を約していることなどの有利な一般情状が認められることから,これらについても一定程度考慮し,同被告人に対しては今回に限り社会内で自力更生する機会を与えることとした。 ⑵被告人B 被告人Bは,上位の共犯者らの指示に従って行動するなど従属的立場にあったものの,紹介役を担当し,性風俗店での就労を決意した女性に仕事の内容を説明し,同店側との仲介役に取り次ぐなどの重要な役割を果たしている。もとより報酬欲しさなどという利欲的な動機に酌量の余地はない。以上の犯情によれば,被告人Bの刑事責任は相応に重いといえ,懲役刑の選択はやむを得ない。 しかしながら,他方,被告人Bは,事実関係を認めるなどして反省の態度を示していること,若年で前科前歴がないこと,父親が出廷して同被告人のために証言していることなどの有利な一般情状が認められることから,これらについても一定程度考慮し,同被告人に対しては今回に限り社会内で自力更生する機会を与えることとした。 4よって,主文のとおり判決する。 (検察官升田雅己並びに国選弁護人橋本阿玲芙〔被告人A関係〕及び同大久保勇輝〔被告人B関係〕各出席) (求刑被告人両名につきそれぞれ懲役2年) 令和元年5月29日 京都地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官 入子 裁判官 片多 裁判官 伊藤光臣康祐貴 |