判例検索β > 平成30年(わ)第400号
強盗致傷、建造物侵入、窃盗被告事件
事件番号平成30(わ)400
事件名強盗致傷,建造物侵入,窃盗被告事件
裁判年月日平成30年12月17日
裁判所名・部札幌地方裁判所
裁判日:西暦2018-12-17
情報公開日2019-01-24 20:00:08
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文
被告人Aを懲役7年に,被告人Bを懲役6年4月に,被告人Cを懲役5年8月に処する
未決勾留日数中,被告人A及び被告人Bに対しては各130日を,被告人Cに対しては100日を,それぞれその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1

被告人Aは,Dと共謀の上,平成29年10月10日,北海道北広島市内の駐車場において,同所に駐車中の自動車内から,E所有又は管理の現金約3500円及びキャッシュカード等5点在中の財布1個(時価合計約4万円相当)を窃取した。

第2

被告人Aは,Dと共謀の上,判示第1の日及び場所において,同所に駐車中の自動車内から,F所有又は管理の現金約9400円及びアイコス等約28点在中のショルダーバッグ1個(時価合計約10万円相当)を窃取した。
第3

被告人3名は,共謀の上,金品を強取しようと考え,平成30年1月3日午前1時45分頃,札幌市内の路上において,同所を徒歩で通行中のG(当時47歳)に対し,みぞおち付近を膝蹴りし,右脇腹付近を足蹴りするなどの暴行を加え,その反抗を抑圧し,同人所有又は管理の現金約1万8400円及び自動車運転免許証等8点在中の財布1個並びにスマートフォン等2点(時価合計約4万5000円相当)を強取し,その際,前記暴行により,同人に加療約1か月間を要する右第6肋骨骨折等の傷害を負わせた。

第4

被告人A及び同Bは,共謀の上,金品窃取の目的で,同年2月12日午後4時30分頃から同月13日午前7時30分頃までの間に,H株式会社施工管理部課長代理Iが看守する札幌市所在の新築工事中の住宅内に,2階南西側窓の施錠を解いて侵入し,その頃,同所において,Jほか1名所有のジェットヒー
ター等4点(時価合計約8万2000円相当)を窃取した。
(証拠の標目)
(略)
(判示第3の事実認定に関する補足説明)
第1

争点

それぞれの弁護人は,被告人Aは窃盗の共同正犯が成立するにとどまり,同Cは無罪である旨主張しているので,判示のとおり認定した理由を説明する。第2

本件の事実経過

関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
1
被告人Aは,本件前日夜から,交際相手を助手席に,同B及び同Cを後部座
席に乗せて,車で札幌市内やその周辺を移動していた。被告人らが現場近くのコンビニエンスストアの駐車場に入ると,被害者が酒に酔った様子で手荷物を持たずに同店から出てきた。被告人Aは,駐車場で車をとめ,運転席から被害者が歩いて行く方向を見ていたが,約3分後,被害者の進行方向に,ヘッドライトを点けずに車をゆっくりと発進させて後を追った。
2
被告人Aは,進路右側を歩く被害者に対し,これに横付けするように近づき
低速で運転しながら,
何道歩いてんだと高圧的に声をかけ,同B又は同Cも
待てなどと声をかけた。被害者がふと車に手を触れると,被告人B,同Cのいずれかが何触ってんだと言い,すぐにその両名が,次いで同Aが車を降りて被害者の方に向かい,同Bが被害者の正面に,同C及び同Aがそれぞれ被害者の左右に立ち,取り囲むような状況になった。
3
被告人Bは,被害者の胸倉をつかんでみぞおちに膝蹴りをし,その頃同C,
同Aのいずれかが被害者の左腰付近を蹴った。被告人Bは,被害者の胸倉をつかんだまま前後に揺するようにしながら道路の反対側まで行き,同Cも被害者の左側付近に付き従って移動し,同Bが被害者の正面に,同C及び同Aがそれぞれ被害者の左右に立ち,再び取り囲むような状況になった。被害者が被告人Bを制止するよう
に手を前に伸ばしたところ,同被告人はタイマン張るんかなどと言い,同Cは被害者の左脇腹を,同Aはその右脇腹を蹴った。被害者は,右脇腹の強い痛みから倒れ込み,その頃,被告人らは,被害者の着衣から財布とスマートフォンを,左手首から腕時計を奪うと,いっせいに逃走した。
第3

被害者の証言の信用性について

前記認定事実を支える主な証拠として被害者の証言があるところ,同証言は以下のとおり信用できる。
1
被害者は,記憶と推測のいずれによるものかを区別した上で,個々の暴行
した者についてはその位置関係等から判断して特定するなど,正確さに注意しながら慎重に証言している。その内容は,事態の推移として自然なもので,右脇腹に強い暴行を加えられたという点は,実際の負傷状況から裏付けられている。捜査段階から一部供述内容が変更された点もあるが,記憶の整理や根拠に基づく修正というべきものにすぎない。被害者は,3名の犯人について,赤色ジャンパーを着ていた者(被告人B)
,サングラスを唯一着用していなかった運転席の者(同A)といったように特徴のある外見等を手がかりに区別して証言しており,それぞれの行動を混同しているおそれも少ないといえる。被害者は,被告人らと面識等はなく,ある者の責任を別の者に押し付けようとしているおそれもない。なお,被害者は,酒に酔っていたものの,飲酒後それなりに時間が経過していたことや,コンビニエンスストアの店内外での様子や歩き方などからして,被害状況等の認識や記憶に大きな支障が出るような酔いではなかったと認められる。
2
左右脇腹への足蹴りを誰がしたのかについては,三者がそれぞれ争っており,
特に被告人Cの弁護人は,その暴行は,正面にいた同Bの回し蹴りなどの可能性があると主張する。しかし,被害者からほど近い範囲に被告人らがそろって位置していたことからすると,その可能性は考えにくい。弁護人らの主張は,この点の被害者証言の信用性を左右するものではない(なお,左腰部への蹴りは,被害者が述べる被害状況や被告人らの位置関係からして被告人Aによる可能性も残るものとして
前記のとおり認定した。。

3
以上から,被害者の証言は,前記被害状況を認定する上で十分信用できると
認められる。
第4
1
被告人らの認識等について
被告人らは,被告人A等が被害者に因縁をつけた後,降車して被害者の方に
向かうと,同Bがみぞおちへの膝蹴りという暴行に及び,誰もこういった展開に驚いたり動揺したりする様子なく,むしろ一体となって,被害者を取り囲むような位置取りを保ちながら,それぞれ更に暴行をした上で,抵抗できなくなった被害者からいずれかが所持品を奪っている。暴力以外の手段で金品を奪おうとすることなくこのような行動に及んでいることからして,被告人らは,被害者に因縁をつけたときには,本件のような暴力を使ってでも金品を奪おうという意思を通じ合わせていたことは明らかである。
しかも,手荷物を持たない相手から身に着けている金品を奪う際は,抵抗にあうなどして実力行使に出る展開となることが容易に予想できる。被告人Aは,コンビニエンスストアの駐車場にいた頃に,手荷物を持っていないことを認識した上で被害者に狙いを定めており,場合によっては本件のような暴力を使ってでも金品を奪い取ろうとする意思があったと認められ,同B及び同Cも,その行動の状況等からして,同じ頃に同Aと同じ認識や意思を共有していたと認められる(被告人B,同Cはその頃車内で寝ていたと供述するが,不自然で信用できない。。)
2
以上より,被告人らは,少なくとも駐車場を出る頃には,ともに強盗をする
意思を有し,その共謀が成立していたと認められる。
第5
1
被告人らの供述について
被告人らの供述は,被害者の証言と食い違う上,相互に矛盾する点,不自然
な点が多く,その中には,被告人Bは同A及び同Cに,同A及び同Cは同Bにそれぞれ責任を押し付けようとする部分もある。
被告人Aは,被害者を囲んで身体を触るなどして,隙を突いて金品を奪う
という認識でおり,本件のような暴行は想定外でパニックになったと述べている。しかし,そのような方法で手荷物を持たない相手から金品を奪えるとは考えられず,不合理である。被告人Aは,同Bが強度の暴行をした後も,ナンバープレートを見られないよう車を移動させるなど冷静に行動していたと認められ,その点でも不自然である。なお,被害者の胸倉をつかんで転ばせようとする程度は想定内であったとも述べているが,そうであれば強盗を実行する意思があったことにほかならない。被告人Cは,金品を奪うつもりも,金品を奪う目的で暴行をするつもりもなかったと述べている。しかし,その供述には,被告人Bに続いて降車したのは単に同被告人がけんかを始めることなどへの興味本位からであったとか,被害者が金品を奪われる場面を一切見ていないなど,不自然な部分が多い。なお,本件の翌日には,被告人Aから,再び本件同様の行為をすることをLINEで誘われると,躊躇なく即座にこれに応じる返信をしている。これによれば,被告人Cは,その前日の本件に際しても,同Aらとともにこのような行為をする意思があったとしても何らおかしくないといえる。
なお,被告人Bは,降車後にはじめて相手が手ぶらだと分かり,暴力を振るってでも金品を奪うしかないと思ったとか,自身は被害者の胸倉をつかんで揺さぶるなどしたにとどまると述べている。しかし,その供述にあるように,仮に,途中で被告人Bに代わって同Cが被害者の胸倉をつかみ,膝蹴りなどを繰り返したとすれば,着衣の色の違いなどもあって,被害者の印象や記憶に残るであろうにもかかわらず,被害者はそうは述べていない。被告人Bの供述には,大きな内容の変化や,犯行直前まで寝ていたなどという不自然な部分もある。
3
以上のとおり,被告人らの供述はいずれも信用できず,被害者証言の信用性
や被告人らの認識に関する判断に影響を及ぼすものではない。
第6

結論

以上により,被告人らには強盗致傷の共同正犯が成立するので,判示のとおり認定した。

(法令の適用)
1
被告人Aについて(判示事実全部)
被告人Aの判示第1及び第2の各行為はいずれも刑法60条,235条に,判示
第3の行為は同法60条,240条前段に,判示第4の行為のうち建造物侵入の点は同法60条,130条前段に,窃盗の点は同法60条,235条にそれぞれ該当するところ,判示第4の建造物侵入窃盗との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い窃盗罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第1,第2及び第4の各罪についてはいずれも懲役刑を,判示第3の罪については有期懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Aを懲役7年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人Aに負担させないこととする。
2
被告人Bについて(判示第3,第4)
被告人Bの判示第3の行為は刑法60条,240条前段に,判示第4の行為のう
建造物侵入の点は同法60条,130条前段に,窃盗の点は同法60条,235条にそれぞれ該当するところ,判示第4の建造物侵入窃盗との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い窃盗罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第3の罪については有期懲役刑を,判示第4の罪については懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Bを懲役6年4月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人Bに負担させないこととする。
3
被告人Cについて(判示第3)
被告人Cの判示第3の行為は刑法60条,240条前段に該当するところ,所定
刑中有期懲役刑を選択し,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人Cを懲役5年8月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中100日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人Cに負担させないこととする。(量刑の理由)
1
強盗致傷の犯行態様は,深夜,人の気配のない路上で,酒に酔った被害者を
被告人3名で取り囲み,一方的に暴行に及んで財布等を奪ったという卑劣かつ悪質なものである。被害者は肋骨骨折等の重大な傷害を負い,被害額も少なくない。金銭欲しさという身勝手な動機から,偶然通りかかった被害者に狙いを定めて躊躇せず犯行に及んでおり,強い非難に値する。各自がどの程度利益を得たかは明らかではないが,各被告人は暴行に及び,互いの行為等を利用し連携して金品を奪う目的を遂げており,責任は等しく重い。
2
また,近い時期に被告人Aは3件の窃盗等に,同Bは1件の窃盗等にもそれ
ぞれ及んでいる。
3
以上のとおり,本件は,同種の強盗致傷事案と比較しても相応に重い事案で
ある。そこで,同種事案の量刑傾向に照らし,以上の主要な事情のほか,被告人Bは,強盗致傷の被害者に対する被害弁償金5万円を準備し,母の監督が見込まれること,その一方で,いずれの被告人も責任を回避・転嫁しようとしており,同A及び同Cは特に不合理な弁解をしているなど,反省の態度はそれぞれに十分とはいい難いことなどをも踏まえて検討し,各々主文の刑に処するのが相当と判断した。(検察官の求刑

被告人A・懲役7年6月,被告人B・懲役7年,被告人C・懲役

6年)
(各弁護人の科刑意見

被告人A・執行猶予,被告人B・懲役4年)

平成30年12月17日
札幌地方裁判所刑事第3部

裁判長裁判官

駒田秀和
裁判官

坂田正史
裁判官

先﨑春奈
トップに戻る

saiban.in