事件番号 | 平成30(わ)1245 |
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事件名 | 土地改良法違反 |
裁判年月日 | 平成30年10月5日 |
裁判所名・部 | 名古屋地方裁判所 刑事第4部 |
裁判日:西暦 | 2018-10-05 |
情報公開日 | 2019-02-02 12:43:04 |
被告人Aを懲役1年に,被告人Bを懲役10か月に処する。 被告人両名に対し,この裁判が確定した日から3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 被告人Aから金10万円を追徴する。 理由 【犯罪事実】 被告人Aは, C土地改良区の理事長として, 同土地改良区が発注する工事に関し, 入札指名業者の選定,予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務に従事していた者,被告人Bは,土木建築工事の請負等を業とするD建設株式会社の専務取締役を務めていた者であるが, 第1 被告人Aは,平成28年3月31日,愛知県愛西市a町bc番地dの飲食店 Eにおいて,被告人Bから,同土地改良区が平成27年度中に指名競争入札により発注した各工事につき予定価格から千円単位を切り捨てた金額を教示して有利かつ便宜な取り計らいをしたことに対する謝礼の趣旨及び今後も同土地改良区が指名競争入札により発注する各工事につき同様の有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金10万円の供与を受け,もって自己の職務に関して賄賂を収受し, 第2 被告人Bは,同日,前記飲食店において,被告人Aに対し,前記各趣旨の下 に現金10万円を供与し,もって同人の職務に関して賄賂を供与した。【法令の適用】 1 被告人Aについて (1)罰 条 土地改良法140条1項前段 (2)刑の執行猶予 刑法25条1項 (3)追 土地改良法140条4項(第1の犯行により収受した 徴 賄賂は没収することができないので,その価額を追徴する。 ) 2 被告人Bについて (1)罰 条 土地改良法141条1項 (2)刑種の選択 懲役刑を選択 (3)刑の執行猶予 刑法25条1項 【量刑の理由】 本件は,土地改良区の理事長であった被告人Aが,入札指名業者の建設会社で専務取締役の地位にあった被告人Bに対し,非公表情報である工事発注予定価格を内報し,その見返りとして,被告人両名の間で,現金10万円の収受が行われたという事案である。そして,本件は,長期間にわたって同種行為が繰り返される中での犯行であるところ,この種事犯が,公正に行われるべき土地改良事業への社会の信頼を傷つける悪質かつ反社会的な犯行というべきは明らかである。安易な癒着の構造の中,被告人Aは,得た現金を生活費や遊興費に充てようなどと考えて犯行に及び,また,被告人Bは,会社の利益を図ろうと惰性のままに犯行に及んでいるのであって,その各動機経緯にも酌むべきものは乏しい。 被告人両名は,いずれも厳しい非難を免れない。 しかし,他方で,被告人両名がいずれも事実を認めて反省の態度を示していること,当然ながら,被告人Aは本件土地改良区の理事長を辞任し,前記建設会社は指名停止措置の制裁を受け,被告人Bは現在自宅謹慎中の身であること,被告人Aについては叔父が,被告人Bについては長女が,それぞれ出廷の上,今後の指導監督を誓約していること,被告人Aに前科はなく,被告人Bにも業務上過失傷害による古い罰金前科のほかに前科はないことなど,それぞれ被告人両名のために酌むべき事情もある。 そこで,これらの事情を考慮し,被告人両名に対しては,それぞれ主文の各刑を科した上,いずれもその各刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。(求刑-被告人Aに対し懲役1年・金10万円追徴, 被告人Bに対し懲役10か月)平成30年10月5日 名古屋地方裁判所刑事第4部 裁判官 神田大助 |