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業務上過失致死被告事件
事件番号平成30(わ)28
事件名業務上過失致死被告事件
裁判年月日平成30年9月14日
裁判所名・部盛岡地方裁判所  刑事部
裁判日:西暦2018-09-14
情報公開日2018-10-25 16:03:12
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平成30年9月14日宣告
平成30年(わ)第28号
判決主文
被告人を禁錮1年に処する
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,盛岡市ab丁目c番d号eビルf階所在の認可外保育施設Aを経営し,乳幼児の保育委託を受け,その体調をみるなどして健康等に留意しながら保育するなどの業務に従事していたものであるが,平成27年8月17日午前10時30分頃から同月18日午前0時5分頃までの間に,同施設において,B(平成26年8月18日生)を預かり保育中,同人は,腎機能等が十分発育していない当時生後11か月又は1歳の幼児であり,食塩を摂取させれば,塩化ナトリウム中毒を発症させるなどして健康を害するおそれがあったのであるから,同人に対し食塩を摂取させることを極力差し控え,やむを得ず食塩を摂取させるのであれば,ごく微量にとどめて同人の健康を害さないようにすべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,同人に対し,漫然とその健康を害する量の塩分を含む食塩を経口摂取させた過失により,同人に塩化ナトリウム中毒の傷害を負わせ,よって,同日午前4時43分頃,同市gh番i号所在のC病院において,同人を同傷害により死亡させた。
(法令の適用)
1
罰条

刑法211条前段

2
刑種の選択

禁錮刑

3
刑の執行猶予

刑法25条1項
4
訴訟費用の不負担

刑訴法181条1項ただし書

(量刑の理由)
1
本件は,略式命令の請求に対し,略式命令不相当の判断がされたことにより
通常の規定に従い審判されることになったものである。すなわち,被告人は,平成29年7月11日,本件について,傷害致死の容疑で逮捕され,同月13日勾留されたが,同年8月1日,処分保留のまま釈放された。そして,検察官は,平成30年1月23日,本件公訴を提起すると同時に略式命令を請求したのであるが,同月25日,盛岡簡易裁判所は,略式命令不相当と判断した(その後,同裁判所は,本件を盛岡地方裁判所に移送する旨決定した。)。このような経過により,本件では,被告人に対し罰金刑を科すべきか,それとも禁錮刑以上の刑を科すべきかが問題となったが,結論として,当裁判所は,主文のとおり,執行猶予付きの禁錮刑を科すのが相当と判断した。以下,その理由を説明する。
2
保育施設であろうと,一般家庭であろうと,乳幼児に与える飲食物に食塩を
加えるということは,普通はないことであり,そのことは,被告人も当然承知していたはずである。そうであるのに,被告人が,生後約12か月の被害者に対し,相当量の食塩をそれと分かりながら摂取させたのは,それ自体,非常識極まりない行為というほかない。これだけをみても,被告人は厳しい非難を免れない。しかも,被告人は,認可外保育施設を営み,その業務として被害者の保育委託を受けていた者であり,被害者の身体の安全保持に努める職責を負っていたのに,上記行為に及んでいることを併せ考慮すれば,本件の過失は重く,他に酌量すべき事情を見出せない限り,罰金刑を選択すべき事案ではないというべきである。
そこで,被告人が上記行為に及んだ経緯,動機等に酌量の余地があるかについてみるに,この点,被告人は,公判において,被害者が発熱したことから,熱中症になることを懸念し,これを防ぐには塩分が必要だと思って,市販の乳幼児用イオン飲料に食塩を加えたものを被害者に飲ませた旨供述する。しかし,被害者に食塩を摂取させた態様についての被告人の供述には,変遷があると窺われる上,本件当日の気温はさほど高くなく,被害者の発熱の程度も深刻なものではなかったことなどを踏まえると,具体的な本件の態様や被告人が被害者に食塩を与えた理由,動機について,被告人が述べるところをそのまま信じるのは困難である。とはいえ,関係証拠上,上記被告人の供述を虚偽と断ずることまではできず,その供述内容と異なる動機等を認定できるわけでもない。結局,被告人が,何故に,被害者に食塩を摂取させるという行為に及んだのか,詳らかにすることはできないというほかない。もっとも,上記被告人の供述を前提としても,乳幼児の飲み物に食塩を混ぜて飲ませるという特異な対応を,医師等の専門家に相談することもなく行ったのは,思慮が欠けすぎた軽率な行為というべきであり,酌量の余地はない。その他,関係証拠をよく検討しても,被告人が過失を犯した経緯,動機,背景事情等に酌量すべき事情は見出せない。
以上のとおりであるから,本件は,その犯情に照らし,罰金刑を選択すべき事案ではない。他方で,被告人が被害者に対し行った行為の具体的な態様が十分に解明されておらず,被告人が上記行為に及んだ経緯,動機等を詳らかにすることもできないという本件の証拠関係の下では,被告人に対し禁錮刑の実刑や懲役刑を科すに足りる違法性や責任非難までは認められない。
3
続いて,一般情状を検討する。被害者の両親は,公判廷において,愛する我
が子を失ったことに対する心痛を吐露するとともに,峻厳な処罰感情を表明している。本件の内容や上記被告人の供述状況に加え,被告人が,現在まで,損害賠償等の措置を講じていないことを考慮すれば,上記の被害者の両親の態度はやむを得ないものといえる。他方で,被告人が刑事責任を認め,本件について,一生忘れずに償っていきたいと述べていること,前科がないことなど,被告人のために斟酌することのできる事情も認められる。これらの事情も併せ考慮し,主文のとおり判決した次第である。
(求刑

罰金50万円)

平成30年9月14日
盛岡地方裁判所刑事部

裁判官

中島経太
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