事件番号 | 平成30(わ)136 |
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事件名 | 窃盗,住居侵入,強盗致傷被告事件 |
裁判年月日 | 平成30年8月29日 |
裁判所名・部 | 札幌地方裁判所 |
判示事項の要旨 | 被告人が共犯者3名と共謀して,自動車からナンバープレートを窃取した2件の窃盗及び,強盗を実行しようとして民家に侵入し,その際家人に傷害を負わせた強盗致傷について,被告人に有罪判決(懲役4年6月)を言い渡した事案(裁判員裁判) |
裁判日:西暦 | 2018-08-29 |
情報公開日 | 2018-10-05 16:00:17 |
窃盗,住居侵入,強盗致傷被告事件 主文 被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 被告人は,A,B(少年)及びCらと共謀の上 第1 平成29年11月27日午前0時28分頃から同日午前0時38分頃までの間に,北海道浦河郡a町内の路上において,同所に駐車中の自動車前部から,D株式会社代表取締役E管理のナンバープレート1枚(時価約860円相当)を窃取し 第2 前記日時頃,同町内のアパート敷地内において,同所に駐車中の自動車前部から,F管理のナンバープレート1枚(時価約860円相当)を窃取し 第3 北海道幌泉郡b町内のG方に侵入して金品を強奪しようと企て,同日午前2時8分頃,同人方玄関ドアから侵入し,その頃,同人方において,同人(当時74歳)に対し,左足等を持っていたバールで数回殴るなどの暴行を加え,同人の反抗を抑圧して金品を強奪しようとしたが,同人に抵抗されるなどしたためその目的を遂げず,その際,前記暴行により,同人に加療約2週間を要する左大腿挫創等の傷害を負わせ たものである。 (証拠の標目) (略) (法令の適用) 被告人の判示第1,第2の各行為はいずれも刑法60条,235条に,判示第3の行為のうち住居侵入の点は同法60条,130条前段に,強盗致傷の点は同法6 0条,240条前段にそれぞれ該当するところ,判示第3の住居侵入と強盗致傷との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い強盗致傷罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示第1及び第2の各罪については懲役刑を,判示第3の罪については有期懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。(量刑の理由) 本件は,被告人が,複数の共犯者らと共謀の上,駐車中の自動車2台からナンバープレート合計2枚を窃取し,凶器を用いて民家への侵入強盗を実行しようとしたが,財物奪取には至らず,その際家人に傷害を負わせたという,窃盗2件,住居侵入,強盗致傷の事案である。 量刑判断の中心となる住居侵入,強盗致傷の犯行全体についてみると,多額の現金があるとの情報に基づき,複数人で,使用する車両やバール,結束バンド等を準備し,発覚を免れるために車両に取り付けるナンバープレート2枚を窃取した(第1,第2)上で実行された計画的犯行といえる。また,被害者方には被告人ら2人がバールを使って無理やり侵入し,居合わせた被害者はその足をバールで複数回たたかれており,その手口は危険かつ悪質である。財産的被害は生じなかったものの,被害者は決して軽くないけがを負っている。 被告人個人についてみると,計画立案には関与せず,共犯者からの指示を受ける従属的な立場にあった。しかし,その指示によるものとはいえ,移動・逃走手段となる車両を提供した上,自らもバールを持って被害者方に侵入しており,十分重要な役割を果たしたといえる(なお,Bは,被告人も被害者をバールでたたいた旨証言したが,被害者は一貫して,たたいてきたのは最初に侵入してきた犯人だけであ った旨証言し,最初に侵入したのはBであることは証拠上明らかである。また,被告人も,自身は被害者に暴行は加えていない旨供述している。Bの上記証言は,被害者証言等と大きく反している上,特に裏付けがないことなどからすると,十分な信用性があるとはいい難く,被告人が被害者に対してバールで暴行を加えた事実を認定することはできない。。また,被告人は,結局は金銭欲しさから犯行に加わる) に至ったと認められ,動機は身勝手といわざるを得ない。暴力団員を名乗る共犯者からの誘いを断ることができなかった旨被告人が述べていることを考慮しても,同情の余地は大きくない。 これらの事情をもとに,同種・類似事案の量刑傾向をふまえて検討すると,検察官の求刑に係る懲役6年はやや重過ぎ,酌量減軽をした刑期の範囲内で量刑を行うべきものと考えられる。一方,弁護人が主張するように刑の執行を猶予するのは相当ではない。 以上のほか,被告人は年若く前科がないこと,自分なりに反省の弁を述べていることなども併せて考慮し,被告人に対しては,主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑 懲役6年 弁護人の科刑意見・懲役3年,執行猶予) 平成30年8月30日 札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官 駒田秀和 裁判官 坂田正史 裁判官 先﨑春奈 |