判例検索β > 平成30年(わ)第180号
関税法違反、消費税法違反、地方税法違反
事件番号平成30(わ)180
事件名関税法違反,消費税法違反,地方税法違反
裁判年月日平成30年5月11日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  刑事第5部
裁判日:西暦2018-05-11
情報公開日2019-02-02 12:48:36
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主文1
被告人を懲役1年6月及び罰金50万円に処する

2
未決勾留日数中30日をその懲役刑に算入する。

3
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。

4
この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

5
名古屋地方検察庁で保管中の金地金5個
(平成30年領第488号符号1,
3,5,8及び10)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A,B,C,D及び氏名不詳者らと共謀の上,シンガポール共和国から金地金を不正に輸入し,これに対する消費税及び地方消費税を免れようと考え,平成29年7月23日,Aが,シンガポール共和国所在のa国際空港において,b航空c便に搭乗する際,金地金5個(合計5キログラム)を携行し,同日,台湾所在のd国際空港において,e国際空港到着後に非外国貿易機に資格変更する予定のf航空g便に乗り換えた上,同航空機内において,携行していた前記金地金5個を同航空機左尾翼部後方トイレ内の便座一体型壁パネルの裏側に隠匿し,同航空機により,同日午後7時27分頃,愛知県常滑市所在のe国際空港に到着し,同日午後7時44分頃,同空港内の名古屋税関e空港税関支署旅具検査場において,法令により通関に関する税関長の権限の委託を受けた同税関支署長に対し,金地金を輸入する事実を秘し,申告すべきものはない旨の虚偽の輸入及び納税の申告を行い,非外国貿易機への資格変更後の同航空機に前記金地金5個を積載させたまま,同航空機を同空港からh国際空港に向けて出発させようとし,
税関長の許可を受けないで,
前記金地金5個を輸入しようとするとともに,不正の行為により保税地域から引き取られる課税貨物である前記金地金5個(課税価格2280万1031円相当)に対する消費税143万6400円及び地方消費税38万7600円を免れようとしたが,同支署職員によって前記金地金5個を発見されたため,その目的を遂げなかったものである。
(法令の適用)
1
罰条
無許可で金地金を輸入しようとしたが未遂に終わった点
刑法60条,関税法111条3項,1項1号,67条
不正の行為により消費税を免れようとした点
刑法60条,消費税法64条1項1号
不正の行為により地方消費税を免れようとした点
刑法60条,地方税法72条の109第1項

2
科刑上一罪の処理
刑法54条1項前段,10条
(刑及び犯情の最も重い消費税法違反の罪の刑で処断)

3
刑種の選択
懲役刑及び罰金刑

4
未決勾留日数の懲役刑への算入
刑法21条

5
労役場留置
刑法18条(金5000円を1日に換算)

6
懲役刑の執行猶予
刑法25条1項

7
金地金の没収
刑法19条1項1号(関税法違反の罪を組成)
,2項本文

8
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,無許可で金地金を輸入するとともに不正の行為により消費税及び地方消費税を免れようとしたが,税関職員に金地金を発見されたために未遂に終わったという事案である。密輸入しようとした金地金の重量は5kg
(課税価格2280万1031円相当)免れようとした消費税及び地方,
消費税の総額は182万4000円であり,公判請求がなされる密輸ないし脱税の事案としては高額なものといえないが,密輸入した金地金を国内において消費税を上乗せして売りさばくことによって利益を得るために,実行犯として金地金を携行して国際線航空機に搭乗し機内に金地金を隠匿する運搬役,その後国内線となった航空機に搭乗して隠匿された金地金を回収する回収役,回収された金地金を売りさばく換金役,換金により得られた現金を国外へ持ち出す持ち出し役,経理を担当する経理役等の役割を大勢で分担した上で,判示のとおり極めて巧妙な手口で密輸入を図り,脱税しようとしたものであり,組織的かつ計画的に行われた悪質な犯行である。
被告人は,本件犯行において,国外にいる共犯者に金地金の購入資金を届けるために,過去に密輸入した金地金を換金して得た現金をAに手渡しているほか,密輸入が成功していれば換金役も務めることになっていたものであって,その役割は小さくない上,平成28年10月頃,勤務先の社長から金地金の密輸入の話を持ち掛けられて報酬欲しさの気持ちなどからこれを承諾し,その後繰り返し行われた金地金の密輸入及びこれと一体となる脱税に関与していたものであって,常習性が認められる。もっとも,本件犯行の首謀者は国外にいるとみられる氏名不詳の外国人であると認められ,組織における被告人の地位は高くなく,本件犯行に係る密輸入が成功して金地金の換金ができた場合であっても被告人が受け取る報酬は7万5000円程度が見込まれていたに過ぎないことなども,十分留意する必要がある。これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は相応に重く,主文掲記の懲役刑は免れないが,被告人が事実を認めて反省していることや,被告人には古い異種前科に係る1件の罰金前科以外に前科がないことなども併せ考慮すると,その執行については猶予するのが相当である。また,被告人は報酬目当てに本件犯行に加担したものであり,そのような行為が経済的にも割に合わないことを示すために罰金刑をも科すことが相当ではあるが,本件につき予定されていた被告人の報酬額等からすると,罰金200万円という検察官の求刑はいささか重過ぎるといわざるを得ず,主文掲記の金額にとどめるのが相当である。
(求刑

懲役2年及び罰金200万円,金地金の没収)

平成30年5月11日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判官

村瀬賢裕
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