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行政処分取消等請求事件
事件番号平成27(行ウ)29
事件名行政処分取消等請求事件
裁判年月日平成29年9月8日
裁判所名・部千葉地方裁判所  民事第3部
裁判日:西暦2017-09-08
情報公開日2019-02-02 13:02:30
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平成27年(行ウ)第29号

行政処分取消等請求事件(第1事件)

平成28年(ワ)第140号

国家賠償請求事件(国賠)
(第2事件)

平成29年9月8日
口頭弁論終結日

千葉地方裁判所民事第3部判決

平成29年5月12日

主1文
千葉刑務所長が原告Aに対し平成27年4月8日付けでした原告Bへの信書の発信を禁止する処分を取り消す。

2
被告は,原告Aに対し,5000円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,原告Bに対し,3万5000円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用のうち,原告Aと被告の間に生じたものは,これを2分し,その1を原告Aの負担とし,その余を被告の負担とし,原告Bと被告の間に生じたも
のは,
これを10分し,
その9を原告の負担とし,
その余を被告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
第1事件
主文第1項と同旨

被告は,原告Aに対し,50万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
第2事件
被告は,原告Bに対し,50万円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
第1事件は,千葉刑務所に収容中の受刑者である原告Aが,千葉刑務所長が原告Aに対し平成27年4月8日付けでした原告Bへの信書の発信を禁止する処分が違法であると主張して,被告に対し,同発信禁止処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金50万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求
めた事案である。
第2事件は,原告Aと信書のやり取りをしていた原告Bが,千葉刑務所長が原告Aに対して上記発信禁止処分を含め7回にわたり原告Bとの信書の発受を禁止する処分をしたことはいずれも違法であると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金50万円及びこれに対する平成27年4
月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下刑事収容施設法という。
)の定め

刑事収容施設法126条は,刑事施設の長は,受刑者に対し,同法の規定により禁止される場合を除き,他の者との間で信書を発受することを許すものと定めている。
刑事収容施設法128条は,同条ただし書に該当する場合を除き,刑事施設の長は,犯罪性のある者その他受刑者が信書を発受することにより,刑事施設
の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者(受刑者の親族を除く。
)については,受刑者がその者との間で信
書を発受することを禁止することができると定めている。
また,刑事収容施設法129条1項は,同法127条の規定による検査の結果,受刑者が発受する信書について,その全部又は一部が発受によって,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき同法129条(
1項6号)
など同項各号のいずれかに該当する場合には,
その発受を差し止め,
又はその該当箇所を削除し,若しくは抹消することができると定めている。2
前提となる事実(争いのない事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
当事者


原告Aは,平成15年12月25日,さいたま地方裁判所において,殺人名誉毀損住居侵入恐喝及び強盗致傷の罪により,無期懲役に処する旨の判決の宣告を受け,平成18年9月20日,同判決が確定したことにより,同年11月20日,千葉刑務所に収容され,同日以降同刑務所で服役している。同判決では,原告Aが,C,D及びE(以下,C及びDと併せて共犯者3名という。
)と共謀の上,殺人及び名誉毀損の犯行を行

ったものであり,原告Aが同各事件の首謀者である旨認定されている。なお,上記殺人及び名誉毀損事件は,いわゆる桶川ストーカー殺人事件として大々的に報道された。
(乙1,17)

原告Bは,主に刑事事件を中心に取材活動をしているフリーのルポライターである(甲3)


信書の発受禁止処分に至る経緯の概要

原告Aは,平成24年6月6日から,原告Bと信書のやり取りを開始した。信書の内容は,主として,桶川ストーカー殺人事件に関するものであり,原告Bは,原告Aに対し,共犯者3名へ取材を依頼する手紙を出したこと,E及びDから返信があったこと,両名から少しずつ話を聞いている
こと等を記載した信書を送っていた。

原告Bは,原告A,E及びDとの信書のやり取り等を基に,桶川ストーカー殺人事件に関する記事を2本執筆し,それらは冤罪FileNo.19(平成25年5月28日発行・発売)冤罪FileNo.及び21(平成26年5月28日発行・発売)に掲載された。
(甲1,2)


千葉刑務所長は,平成25年7月18日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告Bからの信書(以下本件信書1という。)の
受信を禁止する処分(以下本件処分1という。
)をし,その旨原告Aに
告知した(乙5)


千葉刑務所長は,平成25年8月8日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告B宛ての信書(以下本件信書2という。
)の発

信を禁止する処分(以下本件処分2という。
)をし,その旨原告Aに告
知した(乙6)


千葉刑務所長は,平成25年10月9日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告Bからの信書(以下本件信書3という。)の
受信を禁止する処分(以下本件処分3という。
)及び原告Bからの信書

(以下
本件信書4
という。の受信を禁止する処分

(以下
本件処分4
という。
)をし,その旨原告Aに告知した(乙7,8)


千葉刑務所長は,平成26年1月10日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告Bからの信書(以下本件信書5という。)の
受信を禁止する処分(以下本件処分5をし,その旨原告Aに告知した
(乙9)


千葉刑務所長は,平成27年1月13日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告Bからの信書(以下本件信書6という。)の
受信を禁止する処分(以下本件処分6という。
)をし,その旨原告Aに
告知した(乙10)



千葉刑務所長は,平成27年4月8日,原告Aに対し,刑事収容施設法128条に基づき,原告B宛ての信書(以下本件信書7といい,上記ア~キの各信書と併せて
本件各信書
という。の発信を禁止する処分

(以
下,
本件処分7
といい,
本件処分1~本件処分6と併せて
本件各処分
という。
)をし,その旨原告Aに告知した(乙11)


3
争点及び当事者の主張
原告Bが,
受刑者が信書を発受することにより
受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者
(刑事収容施設法128条本文)

当たるとして本件処分7をした千葉刑務所長の判断に裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した違法があるか
(被告の主張)
原告Bは,原告Aの意向に従って,共犯者3名と信書の発受をしていた。共犯者3名は,刑事施設に収容されている犯罪性のある者であり,本来原告Aとの外部交通が認められないものであるところ,原告Bは,D及びEとの信書の発受で得た両名の動向等を,原告Aへ伝達・仲介していた。そう
すると,原告Bが伝達・仲介することにより,原告Aと共犯者3名との間で交流が行われることになれば,受刑者の改善更生のため好ましくない社会関係を遮断するという刑事収容施設法128条の趣旨を潜脱することになる。また,原告Aは,真摯に受刑生活を送り,再び罪を犯さないよう,日々改善更生に努めているとは到底いえない状況であるところ,原告Bとの信書の
発受の中で,本来は交流を許されない共犯者3名の動向に関する情報を提供するよう執拗に打診し,あるいは打診しようとしており,原告Bとの信書の発受を継続した場合,共犯者3名の動向等に関する情報収集に執着するあまり,矯正処遇の目標達成への真摯な取組について更に期待できなくなるというべきである。したがって,原告Bとの信書の発受を許せば,原告Aの改善
更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる蓋然性があり,原告Aに対する適切な矯正処遇の実施のためには,原告Bとの交流自体を禁止する必要性があった。
なお,刑事収容施設法128条と同法129条は,異なる観点からの規制であって適用場面を異にしており,同法128条の措置による前提として同
法129条の措置を検討しなければならないものではない。
よって,原告Bが,
受刑者が信書を発受することにより
受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者に当たるとして本件処分7をした千葉刑務所長の判断に裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した違法があるということはできない。
(原告Aの主張)
原告Bは,桶川ストーカー殺人事件の取材をする目的で原告A及び共犯者3名との信書の発受を行っており,共犯者3名との信書の発受で得た情報を原告Aに伝達・仲介しようとしていたわけではないから,原告Bとの信書の発受が刑事収容施設法128条の趣旨を潜脱する脱法行為であるということはできない。原告Bはジャーナリストであり,その属性からして,原告Bと
の信書の発受自体を禁止する必要はない。仮に信書の内容に問題があれば,同法129条に基づく差止め,削除等をすれば足りるから,信書の発受禁止は必要かつ合理的な範囲を超えた規制というべきである。したがって,原告Bとの信書の発受を許しても,原告Aの改善更生に放置することのできない程度の障害が生ずる蓋然性はなく,
原告Bは,
受刑者が信書を発受することにより
受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者

当たらないというべきであるから,本件処分7をした千葉刑務所長の判断には裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した違法がある。
本件処分7は原告Aとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法か(原告Aの主張)

本件処分7は違法であり,原告Aとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法である。
(被告の主張)
本件処分7は適法であり,千葉刑務所長が本件処分7をしたことに職務上の義務違反はない。

本件各処分は原告Bとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法か(原告Bの主張)
原告Bは,受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者」に当たらないから,本件各処分は刑事収容施設法128条本文の要件を充足しない。そして,千葉刑務所長は,本件各処分をするに当たり,憲法21条の精神に照らし尊重される重要な権利である,原告Bの取材の自由に配慮すべき法的義務を負うところ,そのような配慮を全くしていないのであるから,本件各処分は国家賠償法1条1項の適用上違法である。(被告の主張)国家賠償法1条1項の「違法とは,国又は公共団体の公権力の行使に当
たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいい,公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り,
違法
の評価を受
ける。そして,個別の国民との関係で職務上の法的利益を保護すべき職務上の法的義務を負っていると認められなければ,当該個別の国民との関係で当
該公権力の行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となることはない。刑事収容施設法126条及び128条は,受刑者の利益と刑事施設内の規律及び秩序の確保等との調整を図り,一定の場合に信書の発受を禁止することとしたものであり,上記各規定が,受刑者との信書の発受を求める外部の者の固有の利益と刑事施設内の規律及び秩序の確保等との調整を図る趣旨を
含むものと解すべき根拠はない。本件各信書の発受についても,千葉刑務所長が,刑事収容施設法128条に基づく拒否の判断に際し,原告Aの利益を離れて,原告Bの固有の利益に配慮する義務を負うことはない。
また,本来信書の発受について上記のような制限を受けるべき立場にある刑務所に収容中の受刑者に対し取材活動をする者が自由に信書を発受して取
材活動をすることが権利として保障されているとまでいうことはできず,刑務所長が,取材活動をする者の取材活動として行われる受刑者との信書の発受に応ずべき法的義務は存在しない。本件各信書の発受についても,千葉刑務所長が,原告Bの取材活動として原告Aとの間で行われるこれらの発受に応ずべき法的義務は存在しない。
なお,本件各処分のうち本件処分7以外の処分も,刑事収容施設法128条の要件を充足する適法なものである。
したがって,本件各処分は原告Bとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法であるということはできない。
千葉刑務所長に過失があるか
(原告らの主張)

本件各処分はいずれも刑事収容施設法128条の要件を充足しないものであり,千葉刑務所長には過失がある。
(被告の主張)
否認ないし争う。
損害

(原告Aの主張)
原告Aは,本件処分7により原告Bへの信書の発受が禁止されたことにより,報道機関との外部交通の機会を不当に奪われ,その表現の自由を過度に制約され,強い精神的苦痛を感じた。この精神的苦痛を慰謝するために必要な慰謝料は,50万円を下らない。

(原告Bの主張)
原告Bは,
本件各処分により,
原告Aとの信書の発受が禁止されたことで,
原告Aに対して取材を行う機会を不当に奪われ,その表現の自由を過度に制約され,強い精神的苦痛を感じた。この精神的苦痛を慰謝するために必要な慰謝料は,50万円を下らない。

(被告の主張)
争う。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提となる事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
原告Bと原告Aの信書のやり取り


原告Aは,平成24年2月23日付けで,冤罪File編集局に対し,自己の冤罪を訴えるとともに,自己の再審に関する取材を依頼する旨を記載した手紙を送付した(甲4)



当時冤罪Fileに定期的に寄稿していた原告Bは,冤罪File編集局での協議を経て,原告Aの取材を担当することになり,原告Aに対し平
成24年6月1日付け信書を送付した。その信書には,原告Bは個人的に以前から原告Aが主犯とされていることに疑問を感じていたこと,原告Aが再審請求をするのであれば,再審の動向や,捜査及び裁判の実態について話を聞きたいと思っていること,当面は原告Bが冤罪Fileの担当記者として,手紙などで色々と話を聞かせてもらいたいと思っていること等
が記載されていた。
(甲5)

原告Aは,平成24年6月7日付けで,原告Bに対し,どんな質問にも答えるつもりであること,共犯者達の証言は全てねつ造であること,F弁護士が弁護人となって再審請求をしていること等を記載した信書を送付した(甲6)



原告Bは,平成24年6月16日付けで,原告Aに対し,再審請求をするに当たり,新証拠としてどのようなものを考えているか,実行犯とされた人間は,原告Aの家族に対し宛てた手紙でどのようなことを書いているのか,事件の真相はどういうことなのか等の質問を記載した信書を送付し
た(甲7)

原告Aは,平成24年7月5日付けで,原告Bに対し,上記原告Bの質問に対する回答等を記載した信書を送付した(甲8)


原告Aは,平成24年8月21日付け及び同年9月13日付けで,原告
Bに対し,

Dとも,手紙のやりとりをして下さい。「Cになら?面会でき

るかもなので,会って下さい。
」などと,D及びCに対する接触を促す記載
のある信書を送付した(甲11,12)


原告Bが平成24年9月25日付けで原告A宛てに送付した信書には,お父さんのほうにも,Dさんの手紙がいっぱい届いているようですね。今度上京した時,時間がとれるようなら会わせて頂き,お話を聞かせて頂くと共に手紙も見せて頂けるようお願いしておきました。その手紙の内容次第では,この手紙自体が再審請求の無罪証拠になるのではないかという気がします。Aさんのほうに来ているDさんやEさんの手紙についても,そうではないかと思います。また,Eさんですが,過去の報道を調べていたら,週刊文春でも,裁判で嘘をついたという告白をしているのですね(もしも,この記事をご覧になられていないようでしたら,コピーを送らせて頂きます)お父さんのお話を聞く限り,Eさんがお父さんのほうに手紙を。書いてきたのはお金目的みたいに思えますのでで,接触する際には注意が必要だと思いますが,私もなんとか接触してみたいと思います。,

Cさんにも接触を試みてみたいと思います。

などと記載されていた。(甲13)

原告Aが平成24年10月16日付けで原告B宛てに送付した信書には,Cとぜひ文通してみて下さいとの記載があったが,抹消指導を受
け,当該記載部分については抹消された(甲15,乙2の2・20頁)。

原告Bが平成24年10月31日付けで原告A宛てに送付した信書には,Dさんたちの手紙は具体的な内容はわかりませんが,Aさんを有罪に追い込んだ証言を撤回する内容が書いてあるなら,再審の新証拠になりうるのではないかと思います。その詳細については,また教えて頂けましたら幸いです。私もDさんたちには,手紙を書いてみます。などと記載されていた(甲16)


原告Aが平成24年11月29日付けで原告B宛てに送付した信書には,

他の連中と文通は進んでいますか?動きがあったら?私にも送って下さいませ。

などと記載されていた(甲17)。


原告Bが平成24年12月28日付けで原告A宛てに送付した信書には,あと,他の連中の件ですが,原稿に追われていて,なかなか手紙を書けずにいました。仕事が遅くてすみません。これから全員にアプローチをかけていきたいと思います。進展がありましたら,その都度,ご報告させて頂きますね。などと記載されていた(甲18)。


原告Bが平成25年1月14日付けで原告A宛てに送付した信書には,新年の挨拶のほか,

Eさん,Dさん,Cさんにも取材依頼の手紙を出しておきました。何か進展がありましたら,またご報告させて頂きます。

などと記載されていた
(甲20)この信書が原告Aに交付された同月19日頃

には,千葉刑務所において,今後共犯者からの伝言や情報仲介があれば禁止とするとの方針が決められた(乙2の2・26頁)



原告Bが平成25年2月1日付けで原告A宛てに送付した信書には,原告Aの再審請求書案に関することのほか,
あと,Eさん,Fさん,Dさんに手紙を出したところ,とりあえず,Eさんからは返事をもらえました。Eさんもまだ私の取材を受けるかどうか決めかねているようですが,とりあえずもう一度手紙を書いてみたいと思います。また何か進展がありましたら,ご連絡させて頂きます。などと記載されていた(甲22)。

原告Aが平成25年2月8日付けで原告B宛てに送付した信書には,話しが,バラバラになりましたが..E,D,千葉にいる共犯,それぞれク.セがあり,たかり屋の策士の所もありますので,充分注意して,接して下さいませなどと記載されていた(甲23)。


原告Bが平成25年2月10日付けで原告A宛てに送付した信書には,2月になってDさんからも手紙を頂きました。まだ取材を受けるかどうか決めかねているようですが,はがきの短い文面から罪の意識に苦しまれている思いのようなものが感じられ,感触は悪くないです。Eさんもそうでしたが,やはりDさんのほうがより罪の意識が強い印象がありますね。いずれにせよ,何か進展がありましたら,またご連絡させて頂くように致します。などと記載されていた(甲24)。

原告Bが平成25年2月21日付けで原告A宛てに送付した信書には,この16日,Eさんから二通目の手紙が届きました。手紙では,Aさんの再審請求への協力について前向きな気持ちが力強く綴られており,やはりEさんもAさんの件では長年,良心の呵責に苦しんでいたのだろうか・・・と感じましたが,私は甘いでしょうか?Eさんのことはあまり疑い過ぎず,かといって何から何まで信じないように,うまくやりとりしていきたいと思っています。などと記載されていた(甲25)。

原告Bが平成25年3月1日付けで原告A宛てに送付した信書には,原告Aが再審請求をしていることを記事にできないか冤罪Fileの担当者
に相談してみること等が記載されていた(甲26)


原告Bが平成25年3月8日付けで原告A宛てに送付した信書には,F弁護士に取材依頼をしたことのほか,
Eさん,Dさんからはその後,一度ずつ手紙をもらいました。二人共,『なんでも質問してください』とのことですので,色々聞いてみたいと思います。二人に話を聞いたら,Aさんにも新たにお聞きしたいことが出てくるのではないかと思います。その際はどうかよろしくお願い致します。などと記載されていた(甲27)。

原告Aが平成25年3月12日付けで原告B宛てに送付した信書には,共犯者達への質問で,追加で,絶対必要なので,以下,お願いします。①私を悪く言うように,ユウドウしていた,警察検事達のやりとり,②なぜ?殺人罪にすることに対して,嘘までついて,Aをおとし入れたのか?③全ての件で,Gなど知らないととぼけ,全てAのしわざと,嘘をつき通したりゆう,◎事件後Gと,何度も,ケイタイで話していた内容!本当の話しを訊いて。◎私が公務員,消防職員なのも知っていたのに,私の事を,ヤクザだと思っていたと,悪く言う事で,何のメリットがあったのか?(私におどされたとゆうストーリーを作っていたのか?)以上のような事も,裁判で何も出ていないのでなどと記載されていた(甲28)。

原告Aが平成25年4月23日付けで原告B宛てに送付した信書には,再審請求に関することのほか,彼らからの手紙は?どうですか?何か良い事があったら,教えて下さいませ・・などと記載されていた(甲31)。


原告Bが平成25年4月25日付けで原告A宛てに送付した信書には,原告Aの再審請求に関する記事を冤罪Fileに入稿したことのほか,Eさん,Dさんとのやりとりですが,なかなかペースが上がらず,すみませんが,少しずつ続けさせて頂いています。Aさんとしては,二人のことは一生許せないと思いますが,二人に本当のことを話してもらうためには,偽証を問い詰めるようなやり方では逃げられるだけだと思いますので,彼らの言うことにも耳を傾けて,少しずつ本当のことを聞き出していきたいと思います。そういう戦略でいきたいと思いますので,ご了承頂けましたら幸いです。などと記載されていた(甲32)。

原告Aが平成25年5月7日付けで原告B宛てに送付した信書には,共

犯者二人は,本当に,海千山千自分達の事しか考えてないようなやからですが,Bさんなら,上手く,聞き出してくれると思っておりますので宜しくお願い致します。

などと記載されていた。同信書では,共犯者3名は,氏名が黒塗りされ,収容中の刑務所名で特定されていた。
(甲33)

原告Bが平成25年5月7日付けで原告A宛てに送付した信書には,頂いた手紙を拝見し,話しが行き違いになっているようにも思いますが,EさんやDさんからは少しずつ話しを聴かせてもらっています。私は現時点では,Eさんが一人で暴走してしまったというのが,Hさん殺害に至る真相ではないかと思い始めています。また,Dさんは,Aさんが首謀者であると警察などから吹き込まれたことにより,本当にそう思い込んでいるのではないか・・・・・・という印象を受けています。いずれも現時点での見立てに過ぎませんが(つまり,今後,考えが変わる可能性もありますが),少しずつ真相に迫っていきたいと思います。などと記載されていた(甲34)


原告Bが平成25年6月7日付けで原告A宛てに送付した信書には,冤罪Fileの5月号に記事が掲載されたことのほか,E,D及びCにも編集部から同誌を一部ずつ送ってもらったこと等が記載されていた
(甲36)



原告Aが平成25年6月13日付けで原告B宛てに送付した信書には,冤罪FileNo.19が届いたことへの礼,同誌に掲載された記事に対する意見のほか,
現在,他の共犯者達は,Bさんに対して,どのような事を語っているのか?かいつまんでもかまいませんので,私にも説明してくださいませんか・・本当の事を言っているのかどうか?私が一番知っている事なので,お願いします。などと記載されていた(甲37)。

本件各信書の内容

平成25年7月3日付けの本件信書1(原告B作成,原告A宛て)(甲3
8)
本件信書1には,原告BがI弁護士に対し裁判記録の閲覧と取材の依頼
をした旨のほか,次のような記載があった。
3人との手紙のやりとりですが,Cさんは相変わらず音沙汰なしですが,Eさん,Dさんとは細々とやりとりを続けています。Eさんについては,冤罪Fileで書いた『AにもGにも指示を受けず,自分が勝手にやったことだった』という内容の証言で一貫しています。いやがらせ行為については,私が聞いていないこともあり話題に出ませんが,Eさんはいやがらせ行為のほうは関与していなかったのでしょうか?Dさんは,非常に協力的ですが,憶測や伝聞に基づく話が多いですね。たとえば殺害については,(殺害の)指示はGではなく,Aからあったと『聞いています』などという書き方をします。私が受ける印象としては,Dさんは嘘をついているわけではなく,取り調べで刑事から吹き込まれた情報などを信じてしまっているように感じます。Dさん自身,実は本当のことがよくわかっていないのではないかと私はにらんでいます。実際,Eさんの話によると,Hさんの殺害はEさんが勝手にやったことで,Dさんは『顔を傷つけるだけ』と思いながら現場に立ち会ったようですから,Dさんが本当のことを何も知らなくても不思議ではありません。いずれにしても,この2人の取り調べや裁判の証人尋問での証言内容については,裁判記録に目を通し,確認しておきたく思います。それをしないと,この2人からいくら話を聞いても,真相に関する理解が進みにくいと思えます。イ
本件信書2(原告A作成,原告B宛て)
(乙2の2)
本件信書2には次のような記載があった。

私が6月13日頃にB様にお手紙を出さしてもらってから本日までご返事が来ないので・・・何かあったでしょうか?もしも本が出て私との文通が不用になったとしてもどうかペンフレンドとしても文通を続けていただけたら大変嬉しいのですが・・・ウ
本件信書3(原告B作成,原告A宛て)
(乙2の2,乙7)
本件信書3には次のような記載があった。

私の手紙が入らないという話,お父さんから聞きました。何か対策を考えたく思います。大変ですが,がんばっていきましょう。引き続き,よろしくお願い致します。


平成25年9月6日付けの本件信書4(原告B作成,原告A宛て)(甲3
9)
本件信書4には次のような記載があった。
ご連絡が滞り,すみません。対応が遅くなってしまい恐縮ですが,私がAさんに出した手紙が届いていないという件について,どういう事情でそんなことになっているのか,千葉刑務所に確認してみたく思います。なくなっているのか,なるべく詳しく教えて頂けないでしょうか?千葉刑務所に確認の上,何らかの対処をしたいと思いますので,お手数かけてすみませんが,どうかよろしくお願い致します。裁判のことについては,事件のおおまかな流は分かりましたので,次はI弁護士から記録をもらい,詳細について理解を進めたいと思っています。また事実関係をお聞きしたことも色々出てくると思いますので,今後ともどうかよろしくお願い致します。オ
本件信書5(原告B作成,原告A宛て)
(乙2の2,乙9)
本件信書5には次のような記載があった。

今年は再び,手紙のヤリトチができるようにして,さらに面会もできるようにしたいですね。


本件信書6(原告B作成,原告A宛て)
(乙2の2,乙10)
本件信書6には次のような記載があった。

J弁護士から連絡がありました。訴訟がんばりましょう。本年もどうかよろしくお願い致します。


本件信書7(原告A作成,原告B宛て)
(乙2の2,乙11)
本件信書7には次のような記載があった。
大変ながらくお久しぶりです。お元気でやっているのは弁護士から訊いておりますが,又,文通できる喜びで一杯であります。前回の冤罪ファイルも見ました。さて,今年は更に共犯者とされる人間が2人も満期出所いたしますので,Bさんの仕事が更に忙しくなると思いますが,なにとぞお力ぞえを今後とも宜しくお願い致します。同信書につき,千葉刑務所長は,再考するよう指導したが,原告Aは,原状どおりでの発信を希望した(乙14)

原告Bと共犯者3名との信書のやり取り

契機
原告Bは,共犯事件では,言い分が共犯者同士で対立することが多いことから,共犯者3名にも取材する必要性があると考えた。そこで,原告Bは,
平成25年1月14日付けで,
共犯者3名
(当時,
Cは千葉刑務所に,
Dは大分刑務所に,Eは宮城刑務所に収容中の受刑者であった。
)に,原告

Aが冤罪ではないかと疑っていること,関係者に話を聞きたいと思い取材依頼の手紙を出したこと等を記載した信書をそれぞれ送付した。
(甲40,
64,122,原告B本人)

Eとのやり取り
原告Bは,平成25年1月23日付けのEの信書を受け取った。同信書には,Eが原告Bと信書のやり取りをするに当たっての質問等が記載されていた。
(甲65)
原告Bは,上記Eの信書に対し返信し,以降平成14年に週刊文春に掲載されたEの手記について質問する手紙を送るなど,Eとの信書のやり取
りを始めた。原告B宛ての信書には,上記原告Bの質問(共犯者の関係,事件に至る経緯,事件時の状況,事件後の状況等)に対する答え等が比較的詳細に記載されており,E宛ての信書には,原告Aの近況,Dの信書の内容等が記載されていることもあった(甲66~79)

原告Bは,本件処分1の後も,Eとの手紙のやり取りを続けた(甲80
~121)
。冤罪FileNo.21に掲載された記事は,主としてEの信
書の内容を基にしたものであった。

Dとのやり取り
原告Bは,平成25年1月14日付けの信書で,Dに対し,取材を申し込んだところ,同年2月2日付けで,DからCとEの立ち位置を教えてほしいとの信書を受け取り,同月8日付けで,Eと手紙のやり取りをしていること等を記載した信書に,週刊文春に掲載されたEの手記を同封して送
付した(甲41,42)

その後,原告Bは,Dに対し桶川ストーカー殺人事件について質問する内容の信書を送るなどして,Dと手紙のやり取りを続けていた(甲43~52)

原告Bは,本件処分1の後も,Dと信書のやり取りを続けていた(甲5
3~63)


Cとのやり取り
原告BがCに宛てた平成25年1月14日付け及び同年3月25日付けの各信書は,千葉刑務所長により受信を禁止する処分がされた(甲12
2,123,乙3,4)

原告Aの受刑状況及び矯正処遇の目標の達成度
原告Aの矯正処遇の目標として,①規則を遵守し,真摯な態度で受刑生活を送ること,②犯した罪を深く反省し,日々被害者の冥福を祈り,しょく罪に務め,罪を償うこと,③社会復帰を目指して忍耐強く地道に受刑生活に取
り組むことが掲げられている(乙12)

原告Aは,千葉刑務所において定められている既決被収容者遵守事項に違反して懲罰を受けている。また,上記処遇目標の達成状況は,A(矯正処遇の目標を達成している)
,B(矯正処遇の目標をおおむね達成している)
,C
(矯正処遇の目標を一部達成しているが不十分である)D
,(矯正処遇の目標

を少ししか達成していない)及びE(矯正処遇の目標を達成していない)の5段階で評価されるところ,平成18年12月から平成26年11月までの8回にわたる原告Aの矯正処遇の目標の達成度は,上記①の目標についてC評価7回,D評価1回,上記②の目標についてC評価5回,D評価2回,上記③の目標についてC評価7回,D評価1回となっている。(乙20)
2
争点

(原告Bが,
受刑者が信書を発受することにより
受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者刑事収容施設法128条本文)(
に当たるとして本件処分7をした千葉刑務所長の判断に裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した違法があるか)について
判断枠組み
刑事収容施設法は,基本的には信書の発受の相手方の範囲を限定せず,一
般的に受刑者の権利として保障しつつ,同法128条は,その例外として,犯罪性のある者のほか,
受刑者が信書を発受することにより,刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者と受刑者の間の信書の発受を禁止することができる旨定めている。ここで,表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的に鑑みる
と,
刑事施設の規律及び秩序を害し,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者に当たるとして受刑者とその者との信書の発受を禁止することができるのは,信書の発受の相手方の地位,経歴等の人的属性,受刑者との関係のほか,受刑者の性向,行状,刑事施設内の管理,保安の状況,当該信書の内容そのほかの具体的事情の下で,受刑者が信書の発
受という方法で当該信書の発受の相手方と交流すること自体を許すことにより,
刑事施設内の規律及び秩序の維持,
受刑者の身柄の確保,
受刑者の改善,
更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限られると解するべきである。そして,上記の放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるかどうか,及
びこれを防止するためにどのような内容,程度の制限措置が必要と認められるかは,刑事施設内の諸事情に通暁し,直接その衝に当たる刑事施設の長による個々の場合の具体的状況の下における裁量的判断にまつべき点が少なくないから,障害発生の相当の蓋然性があるとした刑事施設の長の認定に合理的根拠があり,その防止のために当該制限措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り,刑事施設の長の当該措置は適法として是認すべきものと解される(最高裁昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁,最高裁平成18年3月23日第一小法廷判決・裁判集民事219号947頁参照)

本件処分7の適否についての検討

そして,被告の主張を踏まえると,本件処分7の適否については,原告Bとの信書の発受を許すことによって,原告Aの改善,更生の点において
放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとの千葉刑務所長の判断に合理的根拠があるかどうかを中心に検討すべきことになる。

そこで,まず原告Bの人的属性について検討すると,原告Bは,フリーのルポライターであって,原告A及び共犯者3名と信書をやり取りするな
どして桶川ストーカー殺人事件についての取材をしていたものであり(前記認定事実



犯罪性のある者
には当たらず,
上記取材を始めるまで,

原告A及び共犯者3名との交流はなかったことがうかがわれる。

のとおり,原告Bは,原告Aと信書のやり取りをす
るほか,共犯者3名に対しても信書を送付し,そのうちE及びDとは信書のやり取りを行うようになった。
前記認定

のとおり,

原告Aは,原告Bに対し,複数回にわたり,共犯者3名への接触を促しているが,原告Bは,取材の対象としている桶川ストーカー殺人事件が原告A及び共犯者3名の共犯事件であることから,共犯者3名にも取材を依頼したものであって,事件の性質上自然な経緯であるといえ,原告Aの意向に従って共犯者3名に接触したと認めるに足りる証拠はない。

サ~ソ,同チ,同ツ,同ネのとおり,原告Bは,原告A
宛ての信書において,共犯者3名に信書を送付したこと,E及びDから返事があり,信書のやり取りを続けている旨記載していたこと,他方,原告Aも,原告B宛ての信書において,上記両名に対し質問してほしいことや
上記両名とのやり取りについて教えてほしい旨記載していたことが認められる。他方で,原告Bは,後に,再審請求の中で,原告Aが,原告Bを通じて,共犯者と口裏合わせをした等の疑念を抱かれることのないよう,E及びDに対する取材の進歩状況等を抽象的に伝えるにとどめ,両名からの信書の内容を逐一具体的に原告Aに伝えていたわけではなかった。原告B
は,
原告Aの上記要望についても,
二人に本当のことを話してもらうためには,偽証を問い詰めるようなやり方では逃げられるだけだと思いますので,彼らの言うことにも耳を傾けて,少しずつ本当のことを聞き出していきたいと思います。などと自分の取材の方針を伝えている(前記認定事実
。証拠上,原告Bが,E及びDに対して,原告Aの質問をそのまま記
載した信書を送った事実も認められない。
この点,本件信書1にはE及びDの信書の内容が記載されている。その内容についてみると,Eの証言は冤罪FileNo.19で書いたとおり一貫しているなどと記載されているにすぎず,既に同誌は原告Aに対して交付されていたことも併せて考えると,Eの動向についての情報を伝達・
仲介したと評価することは困難である。また,Dの情報についても,原告Bの事件に対する見方も交えながら,Dの信書のごく一部の内容を記載したにとどまるものといえる。原告Aからも信書のやり取りを通じて取材を続けるという原告Bの意図からしても,不必要な記載であるとは断定できず,これが原告A・共犯者3名間の情報を伝達・仲介する意図の下に行わ
れたとまでいうことはできない。本件信書1以外の本件各信書の内容についてみても,原告Bが,原告A・共犯者3名間の情報の伝達・仲介を担っていたことをうかがわせる記載はない。これらの事情に照らすと,原告Bが,原告A・共犯者3名間の情報を伝達・仲介していたと判断したことについて合理的根拠があったとはいい難い。

そもそも,原告Aの原告Bとの信書の発受は,本件処分1まで1年以上にわたり制限されていなかったのであるから,当該信書に共犯者三人の動
向等に関する内容が記載されていることが原告Aの矯正処遇上の支障になり得るとしても,刑事収容施設法129条に基づく発受の差止め等で対応することが十分可能であると考えられる。そうすると,上記のような記載があったからといって,直ちに原告Bが信書で交流すること自体に問題のある人物と評価することに合理的根拠があるということにもならない。
被告は,刑事収容施設法128条と同法129条は異なる観点からの規制であり,同法128条の措置を執る前提として同法129条の措置によることを検討すべきものではないと指摘するが,上記事実関係の下では,千葉刑務所長が同法128条の措置を執ったことに合理的根拠があるかどうかを判断する過程で,同法129条による対処が可能かどうかを検討す
ることが,同法の解釈適用上妨げられるものではないというべきである。カ
被告は,原告Aが矯正処遇の目標達成への真摯な取組をしていなかったことを指摘する。確かに,

原告Aの矯正処遇の

目標の達成状況が芳しくなかったことは認められる。しかし,原告Aは,平成24年2月23日付け信書を冤罪File編集局に送付した時点において既に冤罪を訴えており

,犯した罪を深く反省し,

日々被害者の冥福を祈り,しょく罪に努め,罪を償うことという処遇目標とは相容れない状況にあったのであり,本件処分1がされるまで,原告Aは1年以上にわたり原告Bと信書の発受をしていたところ,そのこと自体が原告Aの矯正処遇の適切な実施にどのような支障を与えていたかについては証拠上明らかではなく,他に原告Bとの信書の発受を許すと原告Aが矯正処遇の目標達成への真摯な取組について更に期待できなくなるような状況であったとの評価を基礎付ける事実関係も認められない。

そうすると,千葉刑務所長が,原告Bとの信書の発受を許すことによって,原告Aの改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると判断したことについて合理的根拠があった
ということはできない。
小括
よって,千葉刑務所長が,原告Bが受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者に当たるとして本件処分7をしたことは,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものであって,違法であるというべき
である。
3
争点(本件各処分は原告Bとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法か)について
判断枠組み


国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであって,同項の適用上違法といえるためには,公務員が当該行為によって損害を被ったと主張する者に対して負う職務上の法的義務に違反したと認められることが必要である。


ところで,刑事収容施設法は,基本的には信書の発受の相手方の範囲を限定せず,一般的に受刑者の権利として保障しつつ,刑事施設の長は,被収容者と外部の者との信書の発受を一定の場合に禁止し又は差止め等をする権限を有しているところ,当該施設の規律及び秩序の維持,被収容者の
矯正処遇の適切な実施等の観点からその権限を適切に行使するよう職務上義務付けられていると解される。そして,他人と信書の発受をすることは表現の自由として憲法21条により保障されている重要な権利利益であることからすると,刑事施設の長が,刑事収容施設法128条の要件に該当しない者との信書の発受を禁止した場合には,当該信書の発受の相手方との関係において,合理的な理由なく信書の発受を妨げられないという法的利益を侵害するものであり,当該相手方に対して負う職務上の法的義務に
違反するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となるというべきである。

被告は,前記第2の

(被告の主張)のとおり主張し,最高裁平成2

0年4月15日第三小法廷判決・民集62巻5号1005頁を引用する。同判決は,弁護士会である原告が,人権擁護委員会の調査活動は法律上保護された利益であって,刑務所長が同委員会に対し受刑者との接見を許さなかったことは,平成17年法律第50号による改正前の監獄法45条2項に基づく刑務所長の裁量権を逸脱又は濫用するものとして,国家賠償法1条1項の適用上も違法となるなどと主張して損害賠償を求めた事案であ
り,上記監獄法45条2項は,受刑者については親族以外の者との接見を原則として禁止する一方,刑務所長において特に必要ありと認める場合はこれを許すこととしていた。そうすると,受刑者の信書の発受を原則として許すものとしている刑事収容施設法の規定に基づいてされた信書の発受の禁止の違法性が問題となる本件に直ちに当てはまる判断ではないと解す
べきである。
また,
被告が引用する大阪高等裁判所平成20年6月6日判決
(乙19)
は,刑務所に収容中の受刑者のみが原告となり,刑事施設の長がした刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成18年法律第58号による改正前のもの)95条に基づく受信の禁止処分は国家賠償法1条1項の適用
上違法であると主張した事案であるが,そもそも受刑者との関係において信書の受信を禁止する処分は法律上の要件を充足し,国家賠償法1条1項の適用上違法ではないと判断されており,本件とは前提となる事実関係を異にする。したがって,同判決における判示を直ちに採用することはできない。
本件各処分についての検討
そして,本件各処分は,いずれも原告Bが受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者に当たるとしてされたものであるところ,
前記認定事実及び前記2で述べたところによれば,本件各処分は,いずれも千葉刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用してされたものであって刑事収容施設法128条の適用上違法であり,原告Bとの関係においても,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきである。

4
Aとの関係で国家賠償法1条1項の適用上違法か)

について
前記2のとおり,本件処分7は違法であって取り消されるべきところ,前述したところによれば,千葉刑務所長が本件処分7をしたことは,原告Aとの関係で国家賠償法1条1項の適用上も違法であるというべきであり,そのことに
ついて過失も認められる。
そして,
本件信書7の内容等前記事実関係に照らし,
原告Aの被った精神的苦痛に対する慰謝料は5000円と認めるのが相当である。
また,前記3のとおり,千葉刑務所長が本件各処分をしたことは,原告Bとの関係においても国家賠償法1条1項の適用上違法であるところ,前述したと
ころによれば,そのことについて過失も認められる。そして,本件各信書の内容等前記事実関係に照らし,原告Bの被った精神的苦痛に対する慰謝料は3万5000円と認めるのが相当である。
第4
結論
以上によれば,原告Aの請求は本件処分7の取消し並びに慰謝料5000円及びこれに対する平成27年4月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において,原告Bの請求は慰謝料3万5000円及びこれに対する同日から支払済みまで上記割合による遅延損害金の支払を求める限度において,それぞれ理由があり,その余は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

阪本


裁判官

野中伸子

裁判官

小橋陽一郎)

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