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損害賠償等請求事件
事件番号平成27(行ウ)34
事件名損害賠償等請求事件
裁判年月日平成29年5月31日
裁判所名・部神戸地方裁判所  第6民事部
裁判日:西暦2017-05-31
情報公開日2017-10-27 19:53:44
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平成29年5月31日判決言渡
平成27年(行ウ)第34号
口頭弁論の終結の日

同日原本領収

裁判所書記官

損害賠償等請求事件

平成29年1月11日
判主決文1
本件訴えのうち任用の義務付けの請求に関する部分を却下する。

2
原告のそのほかの請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実と理由
請求

1
被告は平成27年4月1日付けで原告をいじめ等相談員として任用せよ。
2
被告は原告に対し500万円(ただし,上記1の請求が認容される場合は1
27万8464円)とこれに対する平成27年4月1日から支払いずみまで年5%の割合による金員を支払え。
3
被告は原告に対し100万円とこれに対する平成27年4月1日から支払い
ずみまで年5%の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要

本件は,任用期間を1年とする非常勤職員として被告(兵庫県小野市)に勤務していたが期間満了により平成27年3月31日に退職した原告が,職場において上司から受けたパワーハラスメント(パワハラ)を問題にしたがために違法に再任用を拒否されたなどと主張して,被告に対し,①行政事件訴訟法(以下行訴法という)上の義務付けの訴えとして,同年4月1日付けで原告を任用すべき旨を命ずることを求めるとともに,②国家賠償法1条1項に基づき,⒜再任用拒否を理由とする500万円の損害賠償(慰謝料500万円。ただし,①の請求が認容される場
合は,2か月分の給料・時間外勤務手当相当額27万8464円と慰謝料100万円の合計127万8464円を請求するとする)と⒝パワハラを理由とする100万円の損害賠償(慰謝料100万円)を求める事案である。1
関係法令の定め

本件に関係する次の法令の内容は別紙関係法令等の定めの1,2のとおりである。


地方公務員法(以下地公法という)



小野市非常勤職員の身分取扱い等に関する条例(平成22年小野市条例第2
8号。以下非常勤条例という)
2
基本的事実関係(当事者間に争いがないか,カッコ内の証拠と弁論の全趣旨
により認める。引用する書証は,特に枝番号を掲げるものを除き,すべての枝番号を含む)


原告の職歴と被告における身分

原告は現在51歳の女性であり,かつて,兵庫県加東市の教育委員会で両親教育インストラクター(専門相談員)として勤務し,また,兵庫県北播磨県民局でまちの子育てひろばコーディネーターあるいは親ひろばコーディネーターとして勤務した経験がある。
平成23年7月1日に被告の非常勤職員として任用され,いじめ等の相談員として相談業務に従事した。後記⑵のとおり平成24年から平成26年まで,いずれも4月1日に再任用されたが,平成27年4月1日に再任用されることはなく(以下本件再任用拒否という),同年3月31日をもって退職した。



勤務条件(甲1)

任用時の原告の勤務条件は次のとおりである。
任用期間

平成23年7月1日~平成24年3月31日

勤務場所

市民安全部

業務内容

いじめ等相談員

勤務時間

午前9時30分~午後5時(休憩時間45
分),週4日
時間外勤務

必要に応じてあり

休日

週休3日(土,日,祝日と指定された1日)

基本給

月給13万6800円,昇給なし

次期任用更新

あり(勤務が良好な場合)

任用期間(更新)の最高限度

最初の任用日から5年を超えない範囲とし,
業務上等必要な場合は最初の任用日から10
年を最高限度とする。

原告は平成24年から平成26年まで,毎年4月1日に任用期間をそれぞれ1年として3回にわたって再任用された。平成24年4月以降,勤務条件のうち次期任用更新については,勤務が良好かつ当該業務量が見込まれる場合に更新(再任用)する場合があるとされ,任用期間(更新)の最高限度については,任用時の募集要項に定められた雇用期限または定年年齢である65歳に達する年度末日のいずれか先に到達する日とされた。また勤務時間は,平成24年4月以降午前9時~午後4時30分とされ,平成26年4月以降は,午前9時30分~午後5時が週3日,午前9時~午後4時30分が週1日とされた。


ヒューマンライフグループ(甲13,乙2,8の2)

被告は平成20年4月に施行された小野市いじめ等防止条例(平成19年小野市条例第33号)に基づいて市民安全部にヒューマンライフグループ(以下HLグループという)を設置し,ここに専任の相談員を置いていじめ等の相談に応じることとした。同条例においていじめ等とは,言葉,文書(電子媒体を含む。),暴力等による心理的及び物理的な攻撃,無視,差別的な扱い等による精神的な苦痛を与えるもの並びに児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号),高齢者の虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)及び配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)に規定する虐待,暴力等をいうとされている(同条例2条1号)。いじめ等相談員は,同条例に基づき小野市いじめ等相談員設置要綱によって設置されたものである。同要綱の規定は別紙関係法令等の定めの3のとおりである(同要綱は平成27年4月に改正されており,改正前の規定は証拠上明らかでないが,参考までに現行の規定を掲げる)。
HLグループの内部は,いじめ担当グループ(青少年センターを含む),人権啓発推進グループ,男女共同参画推進グループの3つの部門に分かれている。平成26年度の人員体制は,管理職として,全体統括と人権啓発推進グループの長を兼ねるA課長,男女共同参画推進グループの長であるB主幹,いじめ担当グループの長であるC主幹がおり,ほかに,3グループを兼務する正職員1名,啓発員1名,い
じめ等相談員3名(原告,D,E),青少年センターの所長とその相談員2名であった。C主幹は平成26年4月にHLグループに異動してきた男性(現在58歳)であり,いじめ等相談員3名と所長を含む青少年センターの職員3名はその指揮監督下にある。いじめ等相談員のDとEは原告と同じく非常勤職員であり,Dは平成20年4月から勤務していたが,Eは平成26年4月に勤務を始めたばかりであっ
た。なおEはいじめ等相談員と女性のための相談員を兼ねていた。平成26年度の市民安全部長は平成26年4月に兵庫県警察から派遣されたFであり,次長はGであった。市民安全部はHLグループ以外のグループも含めて1つの部屋を使用しており,F部長とG次長も,席は離れていたものの原告やC主幹らと同じ部屋で執務していた。



いじめ等相談員の日常の業務(乙5,6,16から18まで)

いじめ等の相談は,専用の電話(ONOひまわりほっとライン)か面接により常時受け付けており,相談員が応対する。面接による相談は市民安全部の執務室の外にある相談室ひまわりルーム等で行うこととされている。
相談者への対応は,相談者ごとに同じ相談員が継続して関わることとしているが,相談員の間で情報を共有するため,情報共有シート相談カードといった書類(これらはカルテと呼ばれている)を作成している。必要があれば,相談員だけではなく関係部署と連携して対応する。カルテは相談員のみが見る扱いであるが,相談員は,カルテとは別に,日々の相談の内容を記載した日報を作成するほか,必要に応じて関係部署への連絡等のための情報提供シートを作成し,これらは主幹に提出する。ただし,緊急の案件はただちに主幹に報告する。定期的な会合として,週に1回,課長,主幹との打合せがあり,月に1回,HLグループの連絡調整会議がある。また,家庭児童相談室,青少年センターといった関係部署とも定期的に情報交換を行う。
3


請求原因
任用の義務付けの請求


訴訟要件

原告は任用の対象者であり本件再任用拒否について直接の利害関係を有するから,任用の義務付けの訴えの原告適格がある。
原告と夫の収入により家族5人が生活しており,そのうち大学生の子2人に仕送りをしているため,原告が収入を得ることは重要である。被告以外に早急に相談員としての勤務先を見つけることは困難である。本件再任用拒否すなわち再任用がされないことにより重大な損害が生ずるおそれがあり,その損害を避けるため他に適当な方法がない。

裁量権の逸脱・濫用

原告は任用時にHLグループの課長から,契約期間は5年間であり,最長で10年間あるいは定年まで働くことができるという説明を受けており,勤務が良好かつ当該業務量が見込まれるかぎり再任用するという合意があった。Dも5年を超えて勤務している。平成25年度までの原告の勤務態度や勤務成績は高く評価されており,平成26年度も原告の相談業務について市民から苦情はなく,C主幹が相談業務を理解せずパワハラにあたる言動をして労働環境が悪化してもなお十分な相談業
務を行うなど勤務は良好であった。相談業務は恒常的に必要とされる業務であり,被告は平成27年4月以降新たに相談員1名を任用しているから,当該業務量が見込まれていた。また,専門職である相談員について,理由もなく再任用を拒否することは許されない。本件再任用拒否はパワハラの告発に対する報復とパワハラの隠蔽のために行われたのであり,裁量権を逸脱・濫用したもので違法である。ウ
まとめ

よって原告は被告が平成27年4月1日付けで原告をいじめ等相談員として任用すべき旨を命ずることを求める。


再任用拒否を理由とする国家賠償請求


原告に生じた損害

上記⑴イの事情からすれば,原告が平成27年4月以降再任用されると期待するのは当然であり,この期待は法的保護に値する。そして上記のとおり,本件再任用拒否は裁量権を逸脱・濫用したものであり違法である。この期待の侵害により原告は精神的苦痛を被っており,慰謝料は500万円を下らない。

義務付けの請求が認容される場合の損害

義務付けの請求が認容されたとしても,本件再任用拒否が違法であることに変わりはなく,これにより被った精神的苦痛についての慰謝料は100万円を下らない。そしてこの場合は,慰謝料に加えて逸失利益として次のとおりの損害賠償を請求することとする。すなわち平成26年度において,原告の給料は月額13万6800円であり,支払いを受けた時間外勤務手当の総額は2万9184円であったので,逸失利益の一部として2か月分の給料・時間外勤務手当に相当する27万8464
円を請求する。
(計算式)(136,800+29,184÷12)×2=278,464ウ
まとめ

よって原告は被告に対し国家賠償法1条1項に基づき500万円(ただし,上記⑴の義務付けの請求が認容される場合は127万8464円)の損害賠償とこれに対する違法行為の日である平成27年4月1日から支払いずみまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金を請求する。⑶

パワハラを理由とする国家賠償請求

C主幹,B主幹,A課長,G次長は原告の上司であり,被告の公権力の行使にあたる公務員である。C主幹らがした別紙一覧表の1~32の原告の主張欄の言動(以下,個別に言動1などという。なお,別紙一覧表の原告の主張・時期欄のHは平成のことであり,ピリオドで区切られた3つの数字は年月日を,2つの数字は年月を表す)は,同じ職場で働く者に対して職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為または職場環境を悪化させる行為であるから,パワハラにあたる。C主幹らの上司であるF部長や人事課参事らはパワハラを認識しながらこれを放置した。
原告は約1年間にわたってこのような違法行為を受け続けたことにより精神的苦痛を被った。その慰謝料は100万円を下らない。
よって原告は被告に対し国家賠償法1条1項に基づき100万円の損害賠償とこれに対する違法行為の後である平成27年4月1日から支払いずみまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金を請求する。
4
おもな争点



義務付けの訴えの訴訟要件の有無


原告の主張

請求原因⑴アのとおりである。

被告の主張

原告と被告の関係は公法上の任用関係であり,任用期間は1年間で,平成27年3月31日をもって終了している。原告は同年4月1日以降に再び任用される権利もしくは任用を要求する権利または再び任用されることを期待する法的利益を有していない。したがって原告には再任用の義務付けの訴えの原告適格がない。再任用拒否による損害は事後的に補塡の可能性があるし,専門相談員の業務は他
の市でも行われていて一定の需要が存在する。そうである以上,再任用を義務付けなければ原告に重大な損害が生ずるとまではいえない。したがって原告は重大な損害の要件(行訴法37条の2第1項)も満たさない。⑵

本件再任用拒否を理由とする国家賠償請求の成否


原告の主張

請求原因⑵のとおりである。

被告の主張

原告を任用する際,任用期間は1年で勤務成績等に応じて最初の任用日から5年を超えない範囲で再任用される可能性がある,業務上等必要な場合には10年間勤務してもらう可能性もあると説明した。再任用時の任用期間も1年であり,1年ごとに勤務成績等を評価して再任用するか否かを判断することとしている。これらは原告に交付された労働条件通知書に明記されている。
原告の平成26年度の勤務成績評定は65点満点中28点と低く,勤務が良好であるとは到底認められず,組織の一員として業務が行えないという評価がされていた。被告はこのような客観的な評価プロセスを経て本件再任用拒否をしたのであり,期間満了の1か月以上も前の平成27年2月17日に,4月以降再任用しないこと
を告げている。後記⑶で詳述するとおり,原告の主張するパワハラの事実はなく,パワハラの隠蔽の意図などない。
以上のとおり,被告が原告に対して平成27年4月1日以降も再任用することを確約ないし保障したことはなく,期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情はない。したがって
本件再任用拒否を理由とする国家賠償請求が認められる余地はない。⑶

パワハラによる不法行為の成否


原告の主張

請求原因⑶のとおりである。
C主幹はいじめ等の相談業務に携わった経験がなく,その業務を十分に理解していなかったため,不適切な指示や業務命令を乱発する,大声で迫り威嚇する,承認を拒絶するといった態度で,部下で非常勤の女性職員である相談員3名を無理やり従わせようとした。相談員の言動を反抗や文句と決めつけ,常に疑いの目であら探しをするかのように動向を観察し,誤った思い込みから,私語であるとか,業務外のことをしているなどとして叱責していた。相談員を信頼して業務を進めるという考えがなく,主幹がすべての情報を管理し,判断し,決定するという考えに立ち,相談員は指示に従っていればいいという態度や言動をとったのである。イ
被告の主張
言動1~32について

言動1~32についての主張は,別紙一覧表の被告の主張欄のとおりである。パワハラの定義は原告が主張するとおりであるが,不法行為に該当するためには,質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。パワハラについても,人間関係,行為の動機,目的,時間,場所,態様等を総合考慮のうえ,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて通常人が許容しうる範囲を超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合にかぎり,人格権を侵害するものとして不法行為を構成すると解すべきである。
上記のような観点からすると,言動1~32は適正な業務の範囲を超えるものではないし,通常人の許容しうる範囲を超える圧力を加えたものでもないから,パワハラないし不法行為にあたらない。
C主幹と原告の関係について
相談員の作成する日報には相談者の主訴のみが記載されており,従来はその部分
のみが上司との間で共有されていたが,F部長やC主幹が異動してきた平成26年4月からは,市長の意向を受け,市民安全部の管理職は,これを問題であると考え,相談内容を正確に把握し,情報を共有し,相談内容等を組織的に検証したうえで組織的な対応に結びつけることが必要であると認識していた。しかし原告は,相談内容は個人情報であり,問題が生じないかぎりは相談員が把握しておけばたりると理
解しており,必要な情報を書面化して報告することに積極的でなかった。みずからの理解が正しくC主幹は業務を理解していないという姿勢であり,業務に関する報告を求められたり業務上の指示を受けたりしても,自分の意見と異なる場合は応じようとせず,大声で反論するなどの行為を繰り返していた。口論となりC主幹が適切とはいえない発言をしたこともあるが,一方的に原告を叱責したことはなかった。上司の対応について
C主幹らの行為はパワハラにあたらないから,これを上司が放置

したことがパワハラであるとする原告の主張も理由がない。しかもF部長やG次長は,C主幹の言動に関する原告の不満に適切に対応してきた。
第3
1
争点に対する判断
争点⑴(義務付けの訴えの訴訟要件の有無)について
本件義務付けの訴えは行訴法3条6項1号所定のいわゆる非申請型義務付けの訴えであり,行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者にかぎり原告適格を有する(同法37条の2第3項)。この原告適格については取消訴訟の原告適格の場合と同様の観点から判断すべきである(同条4項参照)。取消訴訟の原告適格について規定する同法9条1項にいう当該処分
の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とは,当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれのある者をいうから,非申請型義務付けの訴えの原告適格を有する者とは,当該処分がされないことにより自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれのある者をいうことになる。

原告は任用期間の定めのある非常勤職員として被告に任用された地方公務員であり,任用期間が経過したときは期間満了により当然に退職する。したがって原告が,この任用期間の満了後に再び任用される権利もしくは任用を要求する権利または再任用されることを期待する法的利益を有すると認めることはできない(最一小判平成6年7月14日労働判例655号14頁参照)。

そうすると,原告について,平成27年4月1日に再任用がされないことにより自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されまたは必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから,原告は本件義務付けの訴えの原告適格を有しない。そのほかの点について判断するまでもなく,本件訴えのうち義務付けの請求に関する部分は不適法として却下を免れない。
2
争点⑵(本件再任用拒否を理由とする国家賠償請求の成否)について


判断枠組み

上記1で検討したところによれば,本件再任用拒否に仮に不適切なところがあったとしても,これにより原告の権利ないし法的利益が当然に侵害されたと解することはできない。もっとも,任用期間の定めのある非常勤職員であっても,任命権者が期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国家賠償法に基づく賠償を認める余地がありうる(上記最判参照)。そこで,本件についてこの特別の事情があるか検討を加える。


検討

定年まで働くことができるという説明を最初の任用時にHLグループの課長から受けており,これにより,勤務が良好かつ当該業務量が見込まれるかぎりは再任用するという合意が成立したと原告は主張し,本人尋問において同趣旨の供述をする。しかし原告が任用時に交付を受けた労働条件通知書(甲1)には,勤務が良好な場合には5年を超えない範囲で,業務上等必要な場合は10年を最高限度として,再
任用されることがあると記載されているのであって(基本的事実関係⑵参照),原告が供述するような内容となっていない。非常勤条例3条2項は,再任用しうる期間を最初の任用の日から5年を超えない範囲とし,特に業務遂行上支障が生ずるおそれがある場合は,勤務実績を考慮して10年を最高限度として再任用しうるとしており,上記労働条件通知書の記載はこれと同じである。しかもこれは再任用しう
る期間の限度であり,その限度に達するまで必ず再任用するというものでないことはいうまでもない。原告の上記供述は,任命権者でなく非常勤職員の労働条件について決定する権限もないHLグループの課長から条例に違反する内容の説明を受け,その内容で同課長との間で口頭により合意をしたというものであって,そもそも被告との間の法的合意の成立をいうものとは理解できない。定年まで働くことができると受け取られるような説明を仮にHLグループの課長がしたのであるとしても,自分に権限がないことを承知している以上,長く勤務してほしいという希望を表明したにすぎないというべきである。ほかに取り上げるべき事情も存在しないから,最初の任用時に,任命権者である市長が,原告に対し期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障したということは到底できない。
原告は,上記の最初の任用時の説明のほかに,本件再任用拒否を違法とすべき
特別の事情の主張をしていない。平成25年度までの評価は高く,平成26年度も市民からの苦情がないなど勤務は良好であったから,再任用される期待は現実的であったし,法的に保護される程度のものであったとの主張はあるが,ここで検討すべき特別の事情の中核となるものは,任用の継続を期待させる任命権者の行為の有無であって,職員が抱いた期待の有無ではない。被告において,非常勤職
員については,再任用の判断材料とするために毎年勤務評定をしているものの(乙9),その結果を本人には開示しておらず,実際,原告に対しても勤務評定の開示はしていなかったのであるから(争いがない),勤務状況に関し任命権者である市長が原告に対し任用の継続を期待させる行為をしたとはいえない。原告の主張する上記の事情は,それだけでは特別の事情になりえないものである。ほかに特別の事情になりうる事実も認められない。以上のとおり,本件再任用拒否について前記の特別の事情は存在しないから,これを理由とする国家賠償責任は成立しない。
3


争点⑶(パワハラによる不法行為の成否)についてパワハラとは

厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループの平成24年1月30日付け報告書は,職場のパワハラの概念とその行為類型を次のように説明している。職場のパワハラとは,同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える行為または職場環境を悪化させる行為をいう。その行為類型のうち典型的なものとしては,次の①~⑥が挙げられる。①

暴行傷害(身体的な攻撃)



脅迫名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)



隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)



業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害(過大な要求)



業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命ずることや仕事を与えないこと(過小な要求)



私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

当裁判所もこれを適切なものとして採用することとする。


言動1~32のうち不法行為に該当しない行為

原告は言動1~32がパワハラにあたると主張する。パワハラにあたるかどうかは,当該行為の動機,目的,内容,態様,時期・時間,場所,周囲の状況,当事者の人間関係などをもとにして,上記⑴の定義と行為類型に照らして総合的に判断すべきものである。言動1~32の中には,その主張自体からして,上記⑴の定義や典型的な行為類型からみて,当該行為がされた具体的状況について検討するまでもなくおよそパワハラとなりえないものが含まれている。また原告は国家賠償法1条1項に基づく請求をしているのであるから,被告が賠償責任を負うのは言動1~32について不法行為が成立する場合である。まずはこのような観点から検討を加える。


注意・指示について

言動1(私語の注意)・14(年休簿に記載せずに休んだとの注意)・16(無駄話の注意)・22(回覧資料に重複があるとの注意)は,いずれも業務上の注意であり,発言の内容・態様も不適切なものではなく,業務の適正な範囲を超えない。これらが誹謗・侮辱であるという原告の主張を採用することはできない。言動1・16に関し,原告自身もEとの会話について互いの理解のため業務以外の話もしていると思うと主張しており,時に私語をしていたこと自体は認めている。言動14・22を含め,注意の対象となるような行動を原告がしていたとのC主幹の判断が仮に誤解に基づくものであり,そのことについて謝罪がなかったとしても,業務上必要な注意であるとしてされた発言がパワハラとなるわけではない。言動2(視察に行く理由を示す資料の提出指示)・3(なぜ会議で発言しないの
かとの発言)・7(部長,次長に実名を見せてはいけないというのであれば両者の前で言うようにとの発言)・25(申入れの理由を文書で説明するようにとの指示)は,いずれも業務上の指示・指導であり,明らかに不要なことを強制したわけでもないから(典型的な行為類型④参照),業務の適正な範囲を超えない。原告が当該指示に納得できなかったからといって,これらが理不尽な要求としてパワハラとな
るわけではない。

原告に対する態度・対応について

言動8(今のところ結構ですとの発言)・11①(パワハラはないとの発言)・同②(どうしろというのかとの発言)・18①(原告らが無駄話をしているとの発言)・23①(Dの不在を確認してからの原告への業務指示)・同②(相談者への姓の告知)・32(相談中の入室)は,いずれも客観的にみて社会通念上許容される範囲を逸脱して精神的苦痛を与える行為とはいえず,これにより原告が気分を害したとしても,不法行為は成立しない。言動8について,吐き捨てるような言い方であったと原告は主張するが,当時作成したというメモ(甲31)には発言内容が記載されているのみで,そのような言い方であったとの記載はない。
言動19(Dのみの呼出し)・24(離席理由を尋ねる付箋の貼付)・27(電話先の報告を求める付箋の貼付)・31(不在時の連絡先を青少年センターの職員に預けること)については,部下のうち1人を呼び出すこと,不在時の連絡にあたり机に付箋を貼付すること,不在時の連絡先を部下である青少年センターの職員(基本的事実関係⑶参照)に預けることは,いずれも業務の遂行における一般的な行為である。不在時に付箋を貼ったのは平成26年12月24日(言動24)が初めてであり,不在のたびに付箋が貼られていたわけでもない。これらについて,情報共有の場から原告を排除する行為であるとか監視であるなどという原告の主張を採用すべき事情は認められない。相談員を信用しない行為であるともいうが,仮に原告がそのように受け止めたとしても,そのことによって当該行為がパワハラとなるわけではない。


業務遂行について

言動12(意見の却下)・23③(原告に帰宅を指示し,G次長への報告を代わってすること)・同④と26(超過勤務の承認拒絶)・28(同行を条件とする打合せの許可)は,C主幹がその権限に属する業務を自身の判断で遂行したにすぎず,業務の適正な範囲を超えない。C主幹の判断が原告の見解や意向に反するものであったからといって,これらがパワハラとなるわけではない。仮にC主幹の判断が誤っていたとしても同様である。
言動20②(発言しないこと)・29(C主幹による付箋貼付の放置)は,いずれも職場内の優位性を背景にしてされた行為ではなくパワハラとならない。エ
他の相談員に対する言動等について

言動4・10①・同②・15・17はいずれもEに対する言動であり,言動30は子育て支援課に対する言動であるから,原告に対するパワハラにならない。オ
まとめ

以上のとおり,上記ア~エの言動に関する原告の損害賠償請求は,当時の状況について事実認定をしたうえで検討するまでもなく理由がない。
以下では,残りの言動すなわち言動5(あんたが会議に出ればいいとの発言)・6(無視)・9(次長と話をするときは許可を得るようにとの発言)・13(職場放棄になるとの発言)・18②(そんなんでよう相談業務ができますねとの発言)・20①(叱責,職場放棄であるとの発言)・21(休日の電話)について検討する。

認定事実

基本的事実関係に加え,証拠(カッコ内のものほか甲31,47,48,乙22から24まで,証人F,証人D,証人C,原告)と弁論の全趣旨により以下の事実を認める。

原告のC主幹に対する態度

いじめ等の相談業務に関しては,従来,市民安全部長にもたらされる相談内容の情報は,日報に簡潔に記載される相談者の主訴程度にとどまっていた。平成26年4月に着任したF部長は,市長の意向を踏まえ,相談内容を正確に把握し,情報を共有し,被告としての組織的な対応に結びつける必要があると考え,部内の管理職に対してもそのような方針を示した。F部長と同時に着任したC主幹は,この方針の下,相談員から積極的にいじめ等の情報を収集し,みずからも積極的に上司や関
係部署と情報共有をしていくという姿勢で相談業務にあたることとなった。ところが原告は,C主幹の着任当初の言動を見て,相談業務に対して無理解な人物であると決めつけ,C主幹が上記の方針を相談員に対して丁寧に説明しなかったこともあって,不信感を抱いて反発し,周囲の職員に対し,C主幹は発達障害者である(注・発言内容は特定の障害名を指摘するものだが,ここではその名称は伏せ
る),5歳児が理解できるようなことを理解できないなどと悪口を言うようになった。また,相談者の個人情報の保護に過敏になっていたこともあって,上司に対して書面で報告をすることに消極的であり,相談内容や他の部署との情報共有の状況等を書面で報告するようC主幹から求められても容易には従わなかった。同年7月頃からは,C主幹の指示に従わない場面が増え,業務についての意見が
対立すると大声で怒鳴るなどして自分の意見を通そうとするようになった。相談者がいない時にEとともにひまわりルームに行くことが増え,そこで2,3時間すごすこともあった。イ
7月14日~16日の出来事(言動5・6関係)

同年7月14日,C主幹と相談員3名で打合せを行った際,原告はC主幹に対し,次回のいじめ等防止市民会議において,前回の会議でC主幹がした回答を補足説明するよう求めた。終わったことであるとしてC主幹が応じなかったため,原告は大声で自分の意見を繰り返し,口論となった。C主幹はそんなこと言うんやったら今度からあんたが会議に出たらええんやと大声で怒鳴り,原告はそれはあなたの仕事でしょうなどと大声で怒鳴り返した。原告はそれ以前から7月15日に有給休暇を申請しており,予定どおりに取得し
た。16日には出勤したが,C主幹から話しかけられず,謝罪も挨拶もないことを不満に感じた。

8月4日の出来事(言動9関係)とその後のパワハラの訴え

原告は同年8月4日,G次長のところに行って業務の話をしていた。C主幹はこれを見て,何の話をしているかはわからなかったものの,原告が頻繁にF部長やG次長のところに行って話をしているという苦情を他の職員から聞いていたことから,この機会に注意しようと考え,原告のそばに行き,次長と話をするときはC主幹の許可を得てからするようにと告げた。
原告とEは翌日,F部長とG次長に対し,C主幹の言動等について相談をもちかけ,上記発言(言動9)を問題にしたほか,ほかの日にもC主幹から恫喝された,
A課長に訴えても対処してくれないなどと訴えた。F部長とG次長は8月7日,A課長,C主幹と面談して事実確認を行い,パワハラはしていないと説明を受けたが,C主幹の地声が大きいことと相談員に対する説明が不十分であることに問題の一端があると考え,指示をする場合は声のトーンを落とし,意図をわかりやすく説明するようにと指導した。

原告とEは8月14日,再びF部長とG次長に面談を求め,組織として再発防止策と救済策を講じてほしいなどと訴えた。原告らの希望により総務課の職員も加わって事情聴取が行われた結果,総務課は9月初め頃,パワハラの事実はなく,C主幹と原告らの間のコミュニケーション不足の問題であると結論づけた。それでも,C主幹の席から自席が遠くなるようにしてほしいと原告が希望したため,9月12日,他のグループの管理職と同じ位置にいたG次長が,そこから離れたHLグループの管理職と同じ位置に移動し,C主幹と原告の席はやや離れることとなった(甲13)。

9月18日の出来事(言動13関係)

C主幹は同年9月18日,兵庫県健康福祉部こども局児童課長から依頼されたストーカーに関するアンケートの回答書を作成した。が,HLグループ全体の意見を集約したものであり,いじめ等相談員の意見に沿ったものではなかったため,再度相談員の話を聞いて作りなおすことを決め,予定の空いていた原告と協議することとした。協議は相談室で行うことになったが,原告はC主幹と2人で協議することはできないと述べてA課長とB主幹に同席を求めた。断られたため,さらにF部長に話をもちかけようとした原告に対し,G次長は

部長に言いに行くのではなく,相談(業務)のことやから(部屋の)中に入って話をしてください。部屋に入らないのなら職場放棄になりますよ

と言った。これを聞いた原告は他の職員や来庁者がいる方向に向かってパワハラされたと大声で数回叫んだ。

12月10日の出来事(言動18②関係)

同年12月9日,地域包括支援センターから自殺企図者に関する情報提供があった。C主幹は原告とともにセンターの職員から話を聞き,相談記録を預かり,これに指示事項をメモして原告に交付した。
翌日,C主幹は原告に対し,前日に交付した相談記録を見せるよう求めたが,原告がこれを拒否したため口論となった。長時間のやりとりがあった後,原告は両面印刷されている相談記録の片面のみをコピーして提出し,C主幹に指摘されて両面
をコピーしなおしたものの,これをC主幹の机にたたきつけるように置いた。C主幹は原告の言動を見かねてそんなんで,よう相談業務ができますねと言った。原告はきちんとしておりますと言い返した。カ
12月11日の出来事(言動20①関係)

原告は同年12月11日,C主幹とともに教育委員会との打合せを行い,結果をA課長に報告することになった。A課長は教育委員会の作成したメモを事前に受け取っていなかったため,報告を始めようとした原告にそのことを注意したところ,原告は怖いですと言って報告をしないまま立ち去ろうとした。A課長は報告をするよう求め,しないのであれば職場放棄ですよと言ったが,原告はそのまま立ち去った。
原告は同日,情報共有の場において部屋から出ていこうとしたら職場放棄だと言
われた,これはパワハラであるとF部長に訴えた。いろいろなケースが考えられるのでその言葉だけをとらえて即座にパワハラだとは判断しがたいとF部長が答えると,じゃあ部長はパワハラではないというんですね,ちゃんと組合に言いますと言って立ち去った。

12月19日の出来事(言動21関係)

C主幹は同年12月19日,Eの親戚の訃報を伝えるため,指定休日であった原告の携帯電話と自宅に複数回電話をかけた。原告は応答しなかったが,C主幹から来たものだとわかったので,Dに連絡をとって何の用件であるのかを聞いた。C主幹は訃報のことをすでに原告が知っているとDから聞き,それ以降電話をかけることはなかった。


判断


言動5・6・18②について

原告はC主幹のそんなこと言うんやったら今度からあんたが会議に出たらええんやという発言(言動5),そんなんでよう相談業務ができますねという発言(言動18②)がパワハラにあたると主張する。しかしこれらは業務の遂行過程で発生した口論時の発言であり(認定事実イ,オ参照),職場内の優位性を背景にした行為であるとはいえないから,パワハラにはあたらない。言動18②は同①(無駄話をしているとの発言)と連続してされた発言であり,口論時にされたのではないと原告は主張し,本人尋問においてそのように供述する。しかし平成26年12月当時原告が作成したというメモ(甲47)には2つの出来事が別個の用紙に記録されており,このことからして言動18①と同②が同一の機会の出来事であったとは認められないから,原告のこの供述を信用することはできない。そしてC主幹とDの証言によれば,認定事実オのとおり認定することができる。
C主幹から7月16日に無視されたこと(言動6)がパワハラにあたるとも原告は主張し,原告が当時作成したというノート(甲31)の同日の欄には,C主幹が
Dに話しかけたが原告に話しかけなかったこと,C主幹から言動5についての謝罪や挨拶がなかったことが記載されている。しかし,相談員としての経験年数が最も長いのはDであると着任時に聞かされていたC主幹が,従前から相談員に用件があるときにDに話をすることが多かったことは,原告自身が本人尋問で認めている。C主幹がDのみに話しかけることがあったとしても,それが特に不自然であるとは
いえない。また,話しかけられなかったということ以上に,原告が話しかけたにもかかわらずC主幹が応対しなかったとか,原告に伝達すべき事項を伝えなかったなどの事実は認められない。上記のノートには,原告がF部長らにパワハラを訴えた8月5日の欄にも,C主幹が大声で恫喝し,従えという態度をとるという記載はあるが,無視するという記載はない。これらの事情をふまえると,仮に7月16日,
C主幹が原告に挨拶を返さないなどの対応をとったとしても,これをもって原告をことさらに無視する態度をとっていたと評価することはできない。言動6についてもパワハラは成立しない。

言動9について

G次長と話をしていた原告に対し,次長と話をするときは自分の許可を得るようにとC主幹が告げたことは当事者間に争いがない。そして,たとえC主幹が原告の直属の上司であるとしても,職場内で他の職員と話をすることについていちいちC主幹の許可を得る必要などなく,C主幹にそのような要求をする権限もないことは当然である。
しかしC主幹が上記の発言をした際,G次長と業務の話をしていたと原告は主張している。業務についてはまず直属の上司であるC主幹に話をし,C主幹からその上司であるA課長なりG次長に話してもらうのが職制にのっとった原則的な仕事の進め方である。特に理由もないのに直属の上司を飛び越えてその上司と直接業務の話をすることは,直属の上司を上司として扱わないとも見られる行為であるばかりでなく,上位者の手を無用に煩わせることにもなるのであって,効率的に業務を処理するための組織の合理的なルールに反する行為である。原告は同年9月にも,C
主幹と2人で協議することを嫌がり,B主幹とA課長に同席を頼んだものの断られ,F部長に話をもっていこうとしたが,HLグループ内で処理するようG次長にたしなめられているのであり(言動13),日頃から上記のルールを守っていなかったと認められる。
言動9は上記のルール違反の行為をしている原告を注意するための発言であり,
このC主幹の発言の意図は,原告にも十分了解可能であったといえる。もちろん,注意をするにしても,原告とG次長の話の内容を確認してからにするのが適切であり,いきなり注意をしたという点で軽率であったことは否定できないが,以上のような発言の意図,目的,発言当時の状況,原告が日頃からC主幹を上司とも思わないような態度をとっていたことなどからすれば,言動9が社会通念上許容される範
囲を超えた違法な行為であると認めることはできない。

言動13について

原告はG次長がした職場放棄になるとの発言がパワハラにあたると主張する。しかしG次長の発言は,C主幹によるパワハラはないとの総務課の判断が出された後もなお,業務上必要なC主幹との協議を拒否し,市民安全部のトップであるF部長に直接話をもっていこうとした部下に対し,相談業務のことであるからHLグループ内部で処理するよう求める業務上の指示である(認定事実エ参照)。発言内容も不当なものではないから,業務の適正な範囲を超えず,パワハラにあたらない。エ
言動20①について

原告はA課長がした叱責と職場放棄であるとの発言がパワハラにあたると主張する。しかしA課長は,報告にあたって必要な資料を渡さなかったこと,業務上の報告を行わず立ち去ろうとしたことについて注意をしたのであり(認定事実カ参照),発言内容も不適切なものではなく,業務の適正な範囲を超えないから,パワハラにあたらない。

言動21について

原告はC主幹が指定休日に複数回電話をかけてきた行為がパワハラにあたると主張する。しかしC主幹はEの親戚の訃報という緊急の用件を伝えるため業務上の必要から何度か連絡を試みたにすぎず(認定事実キ参照),これがパワハラにあたらないことは明らかである。


まとめ

以上のとおり,言動1~32のいずれについても,行為者のパワハラによる不法行為は成立しないし,上司がこれを放置したことが不法行為となることもない。いずれについてもパワハラによる不法行為は成立しない。
4
結論

本件訴えのうち任用の義務付けの請求に関する部分は不適法であるから却下を免れず,そのほかの請求はいずれも理由がないから棄却する
神戸地方裁判所第6民事部

裁判長裁判官

倉地康弘
裁判官

達野ゆき
裁判官

若林貴

別紙

関1係法令等の定め
地公法(地方公務員法)

職員の職に欠員を生じた場合においては,任命権者は,採用,昇任,降任または転任のいずれかの方法により,職員を任命することができる(17条1項)。
2
非常勤条例(小野市非常勤職員の身分取扱い等に関する条例)

非常勤条例は,地公法17条1項の規定に基づく一般職の非常勤職員(以下非常勤職員という)の賃金,勤務時間等の取扱いおよび任用について必要な事項を定めるものとする(1条)。
非常勤職員の任用は,専門的技能,知識または経験を有する者(最初の任用年度の初日の前日において65歳未満の者にかぎる。ただし,市長が必要と認めたときはこのかぎりでない)について,地公法17条の規定に準じ選考によるものとする(2条)。
任用期間は1年以内とする(3条1項)。
市長が必要と認めた場合は,最初の任用の日から5年を超えない範囲の任用期間で再任用することができる。ただし,その業務において,退職または任用替えをすることにより,業務遂行上支障が生ずるおそれがある場合は,再任用する者の勤務実績を考慮して最初の任用の日から10年を最高限度として再任用することができる(同条2項)。
再任用の限度は,65歳に達する年度までとし,任用期間中にその年齢に達したときは,その年齢に達した日以後における最初の3月31日に退職する。ただし,市長が必要と認めたときはこのかぎりでない(同条3項)。
3
小野市いじめ等相談員設置要綱

小野市いじめ等防止条例に基づき,いじめ等のない明るく住みよい社会の実現を推進するために,相談員を設置する(1条)。
相談員は,社会的信望があり,かつ,1条に規定する職務を行うために必要な熱意と見識を有する者のうちから,別途市長が任命したものをもって充てる(2条)。相談員は,次に掲げる事務を行うものとする(3条)。


市民等からのあらゆるいじめの相談に関すること。



ヒューマンライフグループ内の連携に関すること。



その他職務上,上司から命じられた事項に関すること。

相談員は,その業務を遂行するにあたっては,個人の人格を尊重し,上司の指揮監督のもと,業務により知り得た秘密は,その目的以外に使用してはならず,かつ,政治的又は宗教的目的のためにその業務上の地位を利用してはならない(4条)。
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