判例検索β > 平成25年(ワ)第3064号
損害賠償等請求
事件番号平成25(ワ)3064
事件名損害賠償等請求
裁判年月日平成29年3月31日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  民事第8部
裁判日:西暦2017-03-31
情報公開日2017-10-17 20:04:04
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平成29年3月31日判決言渡
平成25年

第3064号

損害賠償等請求事件
主1文
被告らは,原告に対し,連帯して1878万4718円及びうち
1085万円に対する平成25年2月1日から,
うち270万円に
対する同年11月8日から各支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。

2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は,これを5分し,その4を被告らの負担とし,その余
は原告の負担とする。

4
この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由

第1

請求
被告らは,原告に対し,連帯して2258万4718円及びうち1085万円に
対する平成25年2月1日から,
うち650万円に対する同年11月8日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要(なお,本判決における略語は,文中記載のもののほか,別紙1略語一覧表(省略)の例による。)

1
本件は,名古屋市内で飲食店を経営していた原告が,暴力団の幹部である被告Bから,
平成10年8月初め頃から平成22年8月25日までの間に計145回にわたり,みかじめ料の支払を要求され,これに応じて合計1085万円の支払を余儀なくされたところ,当該要求は威力利用資金獲得行為(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律〔以下暴対法という。〕31条の2)に該当し,暴力団の組長等である被告Aは,被告Bの使用者に該当するなどと主張して,被告Bに対しては,不法行為責任に基づく損害賠償請求(下記①,②に係る部分に限り,
予備的に不当利得に基づく返還請求)
として,
被告Aに対しては,
使用者責任(民法715条)及び暴対法31条の2に基づく損害賠償請求(暴対法31条の2に基づく請求は,
同条の適用対象である平成20年5月2日以降に
行われた被告Bの行為について,
使用者責任に基づく請求と選択的併合であると
解される。)として,被告らに対し,連帯して,2258万4718円(①上記みかじめ料1085万円,
②上記①の各支払金に対する各支払日から平成25年1月31日までの民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金523万4718円,③慰謝料500万円,④弁護士費用150万円の合計)及びうち1085万円(上記①)に対する平成25年2月1日から,うち650万円(上記③,④の合計)に対する同年11月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2
前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。
当事者等

原告は,a市出身の女性であり,平成10年7月頃から名古屋市b区内でクラブαを,
平成20年11月から同区内でクラブβをそれぞれ経営してい
た。(甲A13,弁論の全趣旨)


被告Aは,昭和59年6月以降,指定暴力団C(以下,四代目C,五代目C及び六代目Cを併せてCという。)の2次団体であるCD(以下Dという。)の会長となり,平成17年7月以降,Cの組長となった。(争いのない事実)


被告Bは,平成10年8月当時,Cの3次団体であり,Dの下部組織であるCDE(以下Eという。)の若頭であるとともに,Cの4次団体であり,Eの下部組織であるCDEF(以下Fという。)の会長であったが,平成21年2月,Eの総長となった。(争いのない事実,乙13)被告Bに係る刑事事件
被告Bは,同人に対する恐喝被告事件(d地方裁判所平成e年

第f号。以

下本件刑事事件という。)において,平成26年11月19日,懲役3年の実刑判決の宣告を受け,同判決において認定された罪となるべき事実は,要旨,被告Bは,原告に対し,平成20年7月28日,クラブα店内において,みかじめ料の支払を継続させようと考え,

新しい店をオープンしても払わなきゃいけない。新しい店に替わっても,若い衆に取りに行かせるよ。払わなければ放火されるぞ。

などと言って原告を畏怖させ,同年8月25日頃から平成22年8月25日頃までの間,前後24回にわたり,店員Gを介し,原告から現金合計78万円を喝取したというものである。(甲A6)
3
争点及びこれに関する当事者の主張
被告Bの行為の不法行為該当性の有無

について

(原告の主張)

みかじめ料の徴収を受け始めた経緯
原告は,平成7年頃,名古屋市b区内にあったクラブγにおいて,ホステスとして勤務するようになったところ,当時,クラブγには,C傘下の暴力団の組長及び組員が頻繁に来店しており,
クラブγのママから,
毎月,
暴力団の組長に対して金員を支払わされていると聞いた。また,原告は,クラブγに勤務している間に,
クラブγのホステスや客が暴力団組員とけ
んかになるのを目撃したことがあったため,暴力団を恐れるようになった。被告Bも,クラブγに客としてたびたび顔を見せていたところ,原告は,何度も暴力団がらみのトラブルを目にしていたため,被告Bと関わりたくなかったが,クラブγのホステスという立場上,被告Bと話をしたり顔見知りになったりすることを避けることはできなかった。
原告は,平成10年7月28日,クラブαを開店させた。すると,被告Bが,クラブα開店から間もない同年8月初め(遅くとも同月10日までに),突然,若い組員2人と共にクラブαを訪れ,原告に対し,

これからは毎月25日に若い衆が受け取りに来るからな。10万円を渡せ。

と低い声で言い,みかじめ料を支払うよう要求した。原告は,みかじめ料を支払わなければならない正当な理由はなく,みかじめ料を払うことで,被告Bにクラブαの面倒を見てもらいたくはなかったものの,クラブγにおいて何度も暴力団組員らによる暴行事件を目撃し,
暴力団の恐怖を痛
感し,到底抵抗できないと感じており,また,周囲の飲食店等もみな暴力団による暴力や脅迫に怯えてみかじめ料を支払わされていることを知っていたため,みかじめ料の支払を拒否すれば,クラブαへの嫌がらせはもちろん,原告自身や従業員の身に危害が加えられる危険があると感じた。そこで,原告は,やむを得ず被告Bの要求どおりに,平成10年7月分のみかじめ料として,クラブαのレジにあった当日の売上の中から10万円を取り出し,被告Bに交付した。被告Bは,当該10万円を懐にしまい,クラブαを立ち去った。

みかじめ料の徴収行為
原告は,
被告Bらの暴力団組員による暴力や脅迫を回避して平穏に店を
営業するためにはみかじめ料を支払わなければならないという恐怖を抱き続け,平成10年8月から平成22年8月までの間,別紙2の番号1ないし145に対応する年月日欄記載の各日(同番号1については,遅くとも同日まで)に,支払金額欄記載の各金額を,みかじめ料の徴収のために来店した被告Bの若い衆を通じて,
被告Bに対して支払わざるを
得なかった(以下,原告に対して毎月行われたみかじめ料の各徴収行為をまとめて本件徴収行為という。)。
なお,平成18年頃以降,クラブα及びクラブβの店員(経理担当)であった店員Gは,上記みかじめ料の支払に関与し,毎日,封筒に日付,売上金額,支出した経費等の標目及びその金額を記載し,売上金額から支出金額を差し引いた残金を封筒に入れて,原告に手渡しており,みかじめ料を支払った日には,当該封筒に支付25号¥30,000等の記載(中国語で25日の3万円の支払の意味である。)をしていた。
原告は,被告Bに対し,別紙2のとおり,平成15年12月25日までの間,月10万円のみかじめ料を支払っていたが,平成16年1月頃,クラブαの営業場所の賃貸借契約に係る賃貸人の従業員であるHに対し,みかじめ料の減額を求めて相談したが,交渉を拒否されたため,被告Bに対し,
恐怖心を押し殺して必死にみかじめ料の減額を願い出た。
その結果,
みかじめ料は月7万円になった。原告は,被告Bに対し,平成19年1月にもみかじめ料の減額を懇願した結果,みかじめ料は月5万円になった。原告は,平成20年7月28日,クラブαの10周年パーティ(以下本件パーティという。)を開催したが,その時点で,既に同年10月末にはクラブαを閉め,クラブβを開店することが決まっていた。原告は,
本件パーティ会場を訪れた被告Bに対し,
新しい店
(クラブβ)
を開いたらみかじめ料を支払わなくてもよいか尋ねたところ,
被告Bは原
告に対し,

店が替わっても毎月取りに行くからな。

と言って,クラブβ開店後もみかじめ料を支払い続けるよう要求し,
原告が

もう勘弁してください。

などと述べてみかじめ料の支払を拒絶しようとすると,

どこに行っても支払わなきゃいけない。そんなこと言っとったら放火されるぞ。

などと申し向け,みかじめ料の支払を継続しなければ,原告の店に放火し,従業員及び関係者の生命,身体,原告の財産及び店の営業等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示し,原告を脅した。原告は,それまでも十分に被告Bや暴力団を恐れていたが,
被告Bらに取り囲まれて座っ
た状態で放火などと言われたため,暴力団幹部である被告Bの要求を断れば,
被告Bや暴力団からどんな酷い目に遭わされるか分からないとい
う強い恐怖におののき,絶望の淵に立たされた。原告は,みかじめ料を支払い始めた際と同様に,
今後もみかじめ料を拒絶することは不可能である
と改めて強く感じた。
そのため,
原告は,
同年11月28日にクラブβを
開店させた後も,月3万円のみかじめ料の支払を継続せざるを得なかった。
平成15年から平成20年7月頃までの間に,
原告からみかじめ料の交
付を受けたI,同年8月25日,同年9月25日及び同年10月25日にみかじめ料の交付を受けたJ並びに同年12月25日頃から平成22年8月25日頃までの間にみかじめ料の交付を受けたKの3名は,
それぞれ
Fの若頭補佐等の地位にあり,
Fの執行部として組の運営に携わっていた
ものである上,Bさんの人ですなどと名乗っているから,Cの上納金の仕組みに照らしても,Iらが原告から取り立てたみかじめ料は,Fとして受け取ったものであり,被告Bと無関係に行われた行為ではない。ウ
本件徴収行為の違法性
みかじめ料の徴収とは,
被害者に多額の被害をもたらす暴力団の資金獲
得活動であり,縄張りとする地域を暴力団組織の威力(組長が支配し統制させる組織的暴力)を背景に支配し,縄張り内で営業する業者に対し,その意向に従わない場合,
いかなる危害を加えられるかもしれないという心
理的圧力を加えて行われるものであって,それ自体,反社会性が顕著である典型的な暴力団犯罪であり,
暴力やあからさまな脅し文句を伴っていな
いとしても,極めて違法性が高い。
みかじめ料の徴収は,
暴対法9条4号及び同条5号にも違反する違法行
為である。
本件徴収行為には,前記

及び

が当てはまり,単なる脅迫威迫という

概念を超え,暴力団の暴力性を背景にした組織的な違法行為である上,被告Bが所属するEが強度の暴力性を有することに照らすと,
極めて悪質な
組織暴力である。
そして,被告Bは,前記ア

及びイ
のとおり,平成10年8月初め頃

及び平成20年7月28日の各脅迫により,
原告を被告Bの意向に従わざ
るを得ない状態にした上で,本件徴収行為を行っており,本件徴収行為に係る全ての事実は,被告Bの暴力団員特有の組織的・計画的暴力性の圧力の下でなされた行為であり,全体として違法性を有する。

本件徴収行為に係る故意
被告Bは,原告に対し,暴力団の威力を背景として本件徴収行為を行っており,
原告の財産及び精神の自由を侵害することの認識があったことは明らかである。


本件徴収行為によって生じた損害
本件徴収行為により,原告が支払を余儀なくされたみかじめ料の総額は,別紙2のとおり,合計1085万円であり,その総額が損害となる。そして,同別紙の番号1ないし145の各支払金額欄記載の金額に対する当該年月日欄記載の各日から平成25年1月31日まで民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金は,計523万4718円となる。原告は,
被告Bから,
暴力団の威力を示した本件徴収行為を受け,
また,
本件刑事事件に係る具体的な恐喝行為も受け,
約12年間もの長期間にわ
たり,
暴力団の威力に恐怖しながらみかじめ料の支払を余儀なくされたものであり,その精神的苦痛を慰謝する慰謝料の額は,500万円を下回ることはない。
弁護士費用は,
不法行為によって損害を被った者が損害賠償義務者から
容易にその履行を得られないために自己の権利擁護上,
訴訟提起を余儀な
くされた場合,相当と認められる額の範囲内のものに限っては,不法行為と相当因果関係に立つ損害と認められる。
本件において,原告は,被告Bに対し,訴訟提起に先立って受任通知及び催告書を送付したにもかかわらず,
被告Bが任意に損害賠償金を支払お
うとしなかったことから,被告らに対する訴訟提起を余儀なくされた。また,原告は,弁護士に委任せずに,指定暴力団の最高幹部らを被告とする本件訴訟を提起することはほぼ不可能であった。
本件解決のために相当な弁護士費用額は,
前記
額と前記

のみかじめ料の支払総

の慰謝料の合計額1585万円の約1割に相当する150万

円を下回ることはない。
(被告Bの主張)
後記アのとおりの原告と被告Bの関係,金員を交付するに至る経緯,交付の理由,
原告と被告Bを含めた暴力団組員らとの親交の程度等の諸事情に照らせば,当該金員交付に関して,原告に不法行為上保護されるべき権利や利益はなく,
本件刑事事件において恐喝罪の成立が認められた78万円に係る行為を除いて原告に対する不法行為は成立しない。

原告が面倒見を依頼した経緯
原告は,クラブα開店当時,既に内装業者との間に支払に関するトラブルを抱えており,また,クラブγのママとのトラブルを原因としてクラブγを辞めたためにクラブγから暴力団を介しての嫌がらせを受けることを心配していた。原告は,被告Bが上記界隈で人気がある大物ヤクザであり,クラブをよく利用する上客であることを認識した上で,上記トラブルを解決するため,また,クラブαの売上につなげるために,被告Bにクラブαの面倒見を頼むことにした。
原告がクラブαを開店させたgビルは,被告Bの実弟が経営する有限会社L(以下Lという。)が賃貸管理するビルであり,このことは,平成10年当時,
gビル界隈で飲食店や風俗店を経営する者であれば誰も
が知るところであったから,原告は,被告Bに接近するために,gビルにテナントして入居した。
原告は,
gビルに入居後,
gビルにてカジノ店を経営していたMに対し,
被告Bに面倒見を頼みたいので,被告Bを紹介してくれるよう依頼し,その謝礼として10万円を交付した。
Mは,被告Bに対し,上記依頼を取り次いだ。被告Bは,具体的な面倒見をFのNに任せた。Mは,クラブαにおいて,Nと原告を引き合わせた。
原告が被告Bに会ったのは,
上記面倒見開始から約1か月後に被告Bが
クラブαを訪れた際であり,その際,原告は,被告Bに対し,携帯電話の番号交換を申し出るなど,積極的に被告Bに取り入ろうとしていた。原告は,その後,Nに対し,任意に面倒見の対価を支払った。原告は,被告Bに対し,クラブα店舗の賃貸借契約について,消費税脱税のための名義変更,その隣室の賃貸借契約の締結や退去費用の減額等を依頼し,また,Nに対し,内装業者との間のトラブル,未収金代金に係るトラブル等の解決を依頼するなど,積極的に被告Bの名前を利用し,かつNに依頼してトラブル対応させていた。さらに,原告は,被告Bに対し,営業電話を繰り返し,高額な飲み代を支払わせていただけでなく,他のヤクザとも親密に交際し,面倒見の対価額を減額させた。一方,平成14年又は15年頃に捜査協力を通じて知り合ったO警察官や平成13年頃に知り合ったP弁護士に対し,平成20年8月に至るまで,みかじめ料について相談したことはなかった。
このような事実関係からすると,原告主張の事実関係は見当たらない。イ
本件パーティ以降の経緯
本件刑事事件の対象である平成20年7月28日の脅迫行為及び同日以降の金員(計78万円)の支払が原告の意思に反していたことについては,本件刑事事件の判決で認定されており,争わない。


不法行為の成否
被告Bは,原告から,いかなる種類のいかなる名目の金銭も受領したことはない。
なお,Nは,平成10年8月以降,原告より,月10万円を受領するようになったが,これは,縄張りとは関係がなく,飲食店経営者等のいわゆる堅気から面倒見(トラブル又は嫌がらせにつき,未然に防ぎ,解決すること,相談に乗ること等)を頼まれた場合その対価として依頼者から任意に受け取る金員,いわゆる守料である(以下本件守料という。)。本件において不法行為の成否は,
被告Bが指定暴力団の威力を示して金
員の交付に向けた要求行為を行ったか,原告が暴力団の威力を背景に,被告B又はEの組員によって強制的に金員を支払わされていたかによって判断される。そして,原告と被告Bの関係,金員を交付するに至る経緯,交付の理由,原告と被告Bを含めた暴力団組員らとの親交の程度,その他関連する事実関係等の諸要素を総合考慮した上で,原告の権利・利益が不法行為上保護されるべきか否かによって判断されるべきある。
前記アの原告の一連の行状に照らすと,
原告に不法行為上保護されるべ
き権利や利益があったとは思われない。したがって,本件刑事事件において恐喝罪の成立が認められた78万円に係る行為を除いて不法行為は成立しない。

原告主張の損害額については,否認し争う。
なお,原告は,Nを含むEの組員に対し,本件守料として,平成10年8月から平成15年12月までの間につき月10万円,
平成16年1月から平
成20年7月までの間につき月5万円,
同年8月から平成22年8月までの
間につき合計78万円(以上,合計1003万円)を支払った。

(被告Aの主張)
被告Bが原告に対し平成10年8月初め頃及び平成20年7月28日に脅迫したとの事実は認められず,
原告が被告B又はその若い衆に対して行った旨
主張する支払は,原告の自由な意思に基づくものであるから,そもそも被告Bの不法行為自体が成立しない。したがって,被告Aに対する使用者責任に基づく請求は,その前提を欠き,失当である。
被告B
(原告の主張)

原告は,被告Bの本件徴収行為により,やむを得ず,みかじめ料計1085万円を支払った。これは,被告Bが,法律上の原因なく,原告の財産によって利益を受け,そのために原告に損失を及ぼしたものであり,不当利得にも該当する。
被告Bは,原告に対し,自らみかじめ料を支払うよう申し向けてみかじめ料を支払わせたものであるから,
当初より法律上の原因がないことを知りな
がらみかじめ料を取得したものであり,悪意の受益者である。
したがって,
被告Bは,
原告に対し,
民法703条及び704条に基づき,
不当利得返還義務として,別紙2の支払金額欄記載の金員及びこれに対する年月日欄記載の日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務を負う。


被告Bが主張する準委任契約の成立は否認する。また,被告Bが主張する不法原因給付に係る事実は否認し,法的主張は争う。

(被告Bの主張)

被告Bは,原告から,いかなる種類のいかなる名目の金銭も受領したことはない。


原告主張の損失額については,否認し争う。
なお,原告がNを含むEの組員に対し,本件守料として支払った金員は,前記


の被告Bの主張エのとおりである。

原告は,平成10年8月初旬頃,Fの若頭(当時)であったNとの間で,原告のクラブ経営に際し生じる困りごとを未然に防止するとともに,実際に
困りごとが発生した場合は,
直ちに相談に乗り解決に導くことを委任事項と
する準委任契約又はこれに類似する契約を締結し,
その報酬を月10万円と
約束した(以下本件準委任契約という。)。その後,上記報酬は月5万円,3万円と減額されたが,委任事項に変更はない。
したがって,原告が被告Bの関係するEの組員に金員を交付したのは,本件準委任契約の対価として支払ったものである。

仮に,本件準委任契約が公序良俗違反によって無効であれば,被告Bの関係するEの組員らが原告から受領した金員は不当利得となるが,
上記金員受
領は,原告から面倒見の依頼があり,原告が任意に金員を交付したために行われたものである。
原告は,Eの組員による面倒見が始まってから,Eの組員らを利用して数々のトラブル処理にあたらせ,進んで被告Bと親密になり,被告Bを原告経営のクラブに呼んで高額の飲み代を支払わせ,
店舗の賃貸借契約において
も被告Bを利用できるだけ利用するなどしている。
原告の一連の言動を見ると,公序良俗に違反する契約を締結し,その関係を維持してきた原因及び責任の大半は原告側にある。
したがって,
原告は
不法な原因のために給付をした者
に該当するので,
支払った対価について不当利得の返還を請求できない。
被告A

(原告の主張)

使用者性
Cは,組長と擬制的血縁関係を結んだ組員から成る1次組織,1次組織の組員が組長として同様の擬制的血縁関係を結んだ組員から成る2次組織,同
様に2次組織の組員が組長となる3次組織,
3次組織の組員が組長となる4
次組織,4次組織の組員が組長となる5次組織から構成され,C組長を頂点とするピラミッド型の階層的組織を形成している。
Cの1次組織は,下部組織の構成員に対し,Cの名称,代紋を使用するなどして,その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認する一方,C構成員の行動規範を定め,1次組織の決定,指示等を詳細に定め,末端組織の構成員にまで伝達して,1次組織の指揮命令に従わせている。
このようなCの構造から,被告Aは,D会長又はC組長として,下部組織の構成員を,その直接間接の指揮監督の下,C又はDの威力を利用しての資金獲得活動にかかる事業に従事させていたということができる。したがって,被告Aとその下部組織の構成員との間には,上記事業につき,民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立しているといえ,
被告Aと被告
Bとは,遅くとも平成10年以降は,使用者と被用者の関係にあったといわなければならない。

事業性及び事業執行性
暴力団組員は,暴力団の威力を背景に飲食業者等にみかじめ料(名目は,用心棒代,カスリ,守代,所場代等)を支払わせる。そのみかじめ料として得た金は,上部組織に上納され,当該暴力団組織の運営及び維持に使用される。
Cにおいても,暴力を組織化することにより形成される威力を背景に,合法的な経済活動にとどまらず,
非合法的な経済的活動による利益も取得する
ことを目的として活動し,
現実にも擬似的血縁関係を基礎に手段としてのま
とまりを持って,合法非合法の手段を問わず,利益を得るためのシノギと呼ばれる資金獲得活動をしている。そして,C組長は,1次組織の組員から毎月上納金を受領し,
2次組織以下の下部組織の組長も所属組員から毎月上納
金を受領している。したがって,C及びその下部組織の行う合法非合法の手段を問わない資金獲得活動は,全体として見て,Cの事業であるという他ない。
被告Bの本件徴収行為は,
被告BがC及びDの組員であることを認識して
いた原告に対し,C及びDの威力を示して,いわれのないみかじめ料の支払を迫り,これを徴収することで経済的利益を得ようとするものであるから,典型的な資金獲得活動であり,C及びDの事業を執行する行為である。(被告Aの主張)
Cの組員は,それぞれが独自に経済活動を営んでおり,そこから得た利益を所属する組や上部団体又はその長に上納することはないし,被告Aも,被告Bの経済活動によって経済的利益を得たことはない。また,被告BがC又はDの威力を利用した事実もない。
したがって,
被告Bの経済活動がDやC又は被告Aの事業に当たることはあ
りえない。
被告A
(原告の主張)
被告Aは,指定暴力団の代表者等,被告Bは当該指定暴力団の指定暴力団員である。そして,本件徴収行為は,前記
イのとおり,威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,
又は当該資金を得るために必要な地位を得
る行為)に該当し,これを行うについて,原告の身体及び財産を侵害した。したがって,被告Aは,暴対法31条の2に基づいて,前記

オの損害のう

ち,
平成20年5月2日以降に行われた被告Bの行為によって生じたものを賠償する責任を負う。
(被告Aの主張)
被告Aが暴対法の指定暴力団に指定されているCの組長であることは認めるが,その余の原告の主張は争う。被告Bの不法行為自体が成立しないから,被告Aが使用者責任の特則とされる暴対法31条の2に基づく責任を負うことはない。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実,
後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認め
られる。
Cについて
証拠(甲B1の2ないし1の9,甲C1,2)及び弁論の全趣旨からすると,以下の事実が認められる。

Cは,我が国最大の広域暴力団であり,平成24年12月末現在,その勢力は,1都1道2府41県にまたがり,構成員総数は,約1万3100名に及んでいる。兵庫県公安委員会は,平成4年6月,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律3条の規定に基づき,
Cが,
同条所定の指定要件を,
いずれも充足するものと認め,
その暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的
不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団として指定し,その
後,3年ごとに,この指定暴力団の再指定をしている。なお,同条所定の指定要件は,
平成28年6月時点において,
①名目上の目的のいかんを問わず,
当該暴力団の暴力団員が当該暴力団の威力を利用して生計の維持,財産の形
成又は事業の遂行のための資金を得ることができるようにするため,当該暴
力団の威力をその暴力団員に利用させ,
又は当該暴力団の威力をその暴力団
員が利用することを容認することを実質上の目的としていること,②当該暴
力団の幹部の人数又は全暴力団員の人数のうちに占める犯罪経歴保有者の人数の比率が政令で定める比率を超えていること,
③当該暴力団の代表者等
の統制の下に階層的に構成されている団体であることである。


暴力団は,
その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を
行うことを助長するおそれがある団体であり(暴対法2条2号),その共通した性格は,
その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて
利益の獲得を追求するところにある。暴力団においては,盃事といわれる儀式を通じ,構成員同士で,親子,兄弟という血縁関係が成立したものと擬制する擬制的血縁関係を結び,首領を親分,配下を子分,先輩を兄貴分等と位置づける特徴が見られる。また,暴力団の組長や執行部等からの指示命令は下部組織の組員に対しても伝達され,
遵守すべきものとされており,
組員は,
組長に対する全人格的包括的な服従統制下に置かれている。
Cは,組長が直接盃を交わして親子,兄弟の擬制的血縁関係を結んだ組員(直参)から成る1次組織(総本部),1次組織の組員が組長(直系組長)として同様の擬制的血縁関係を結んだ組員から成る2次組織,
同様に2次組
織の組員が組長となる3次組織,3次組織の組員が組長となる4次組織,4次組織の組員が組長となる5次組織から構成され,
組長を頂点とするピラミ
ッド型の階層的組織を形成している。Cの総本部は,下部組織を含むCの構成員全員の行動規範としてC綱領を定め,また,総本部における決定,指示等は,
抗争に関する指示から構成員の生活に関する事項に至るまで事細
かに行われ,通達,告等と題する文書により,末端組織の構成員に至るまで伝達され,その遵守を徹底させる体制が採られ,伝達された決定,指示等は,下部組織の構成員に対して強い拘束力と強制力を持ち,これに反した場合には,当該構成員は,指詰め等の制裁を受けることもある。なお,Cの総本部の意思決定は,形式上,執行部又は最高幹部会において行われているが,組織運営の方針等についての団体としての意思決定をするのは,最終的には組長である。
Cの総本部は,その下部組織の構成員に対し,Cの名称,代紋を使用するなど,その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認する一方,その対価として,その所属組織又は上部組織に対し,上納金を定期的に納めさせている。被告Aは,Dの会長であった時期においてはCの2次組織であるDの組員から,Cの組長である時期においてはCの1次組織の組員から,それぞれ毎月上納金を受け取り,Cの2次組織以下の組長は,それぞれその所属組員から,毎月上納金を受け取っており,被告Bも,Cの3次組織であるEの組員から毎月上納金を受け取っていた。
本件徴収行為の開始及び継続

原告は,平成9年頃,クラブγで勤務しており,クラブγに来店していた被告Bが暴力団員であることを知った。また,原告は,クラブγに勤務していた頃,クラブγが暴力団に対してみかじめ料を支払っていることを知っていた。(甲A6,弁論の全趣旨)


原告は,平成10年,クラブαを開店するため,gビル3階301号室(以下301号室という。)をLから賃借した。当時のLの代表取締役は,被告Bの弟の友人であった。(甲A6,14,15)


原告は,平成10年7月28日,301号室において,クラブαを開店した。
被告Bは,同年8月初め頃(遅くとも同月10日),他の暴力団組員を伴ってクラブαに来店し,原告に対し,毎月25日に被告Bの部下がお金を取りに来るから,その者に10万円を渡すよう強い口調で言った(以下本件要求行為1という。)。原告は,クラブγに勤務していた頃から,みかじめ料について,飲食店等を経営する者等が,当該店舗で起こるトラブル等を解決してもらうという名目で暴力団に対して支払う金銭であり,その支
払を拒んだ場合には,暴力団組員から,当該店舗の経営を継続できなくなるような嫌がらせを受けたり,
当該店舗の従業員や客の身体に危害を加えられ
たりするおそれがあると認識していた。そのため,原告は,被告Bの上記発言を聞いて,被告Bが原告に対し,みかじめ料を要求していると理解し,被告Bに対してみかじめ料を支払う意思はなかったものの,
上記嫌がらせや危
害を避けるためには被告Bの要求に従うほかないと畏怖した。原告は,クラブαのレジから現金10万円を取り出し,
被告Bらに対して交付した。
(以
上につき,甲A6,11,13,原告本人,弁論の全趣旨)


原告は,平成10年8月から平成15年12月までの約5年間にわたり,毎月25日頃,被告Bの部下である暴力団組員の来店を受け,当該組員に対し,みかじめ料として,各10万円を交付した。原告は,平成15年頃からクラブαの売上が減少したため,せめて,みかじめ料の金額を下げてもらいたいと考え,みかじめ料を受け取りに来た暴力団組員を通じて,被告Bに対し,電話でクラブαに係るみかじめ料の減額を懇請した。被告Bは,これを受けて,平成16年1月以降のクラブαに係るみかじめ料を月7万円に減額した。
原告は,その後,平成18年12月末までの3年間にわたり,毎月25日頃,被告Bの部下である暴力団組員の来店を受け,当該組員に対しみかじめ料として,各7万円を交付した。原告は,その後もクラブαの経営が厳しかったことから,再度,被告Bに対し,電話で,クラブαに係るみかじめ料の減額を懇請した。被告Bは,これを受けて,平成19年1月以降のクラブαに係るみかじめ料を月5万円に減額した。
原告は,同月から平成20年10月までの約2年間にわたり,毎月25日頃,被告Bの部下である暴力団組員の来店を受け,当該組員に対しみかじめ料として,各5万円を交付した。(以上につき,甲A13,原告本人)オ
前記エの毎月のみかじめ料の取立の際には,被告Bの部下(Fの若頭補佐等)の暴力団組員からBさんのところの者です,
25日の者だ,
10分くらいで取りに行く等という電話を受け,クラブαに来店した当該組員に対し,現金を交付していた。(甲A6,7,11,13,原告本人,弁論の全趣旨)
本件パーティ以降の本件徴収行為


原告は,平成20年7月28日,クラブαの10周年パーティ(本件パーティ)を開催した。被告Bは,原告から,本件パーティへの出席を勧誘されたため,男性2名を連れてクラブαを訪れた。原告は,被告Bに,原告が近いうちにクラブαを閉店し,名古屋市b区cに新しい店を開くことを知られたため,被告Bに対し,新しい店を開いた後においては,みかじめ料を支払わずに済ませることはできないか尋ねた。すると,被告Bは,原告に対し,

新しい店をオープンしても払わなきゃいけない。新しい店に替わっても,若い衆に取りに行かせるよ。払わなければ放火されるぞ。

などと言い,
もしみかじめ料の支払を継続しなければ同店の財産及び営業等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示してみかじめ料の支払を要求した(以下本件要求行為2という。)。そのため,原告は,恐怖し,被告Bに対するみかじめ料の支払を継続するしかないと考えた。(甲A6,13,原告本人,弁論の全趣旨)

原告は,平成20年8月25日,同年9月25日及び同年10月25日,クラブαの出入口付近において,クラブαの従業員であったGを介し,みかじめ料を受け取るためにクラブαを訪れたF若頭補佐(当時)のJに対し,みかじめ料として,各5万円を交付した。当該みかじめ料は,暴力団組員であるJが個人的に受け取ったものではなく,Fとして(Fのために)受け取ったものであった。Jは,原告から受領したみかじめ料を,Fにおいて金銭管理を行っていたKに交付した。(甲A1の1,甲A6,8,弁論の全趣旨)


原告は,平成20年11月28日,クラブβを開店した。原告は,被告Bに対し,みかじめ料の減額を懇請し,クラブβに係るみかじめ料を月3万円とすることにつき了承を得た。原告は,同年12月から平成22年8月までの間,毎月25日頃,クラブβの出入口付近において,クラブβの従業員であったGを介し,みかじめ料を受け取るためにクラブβを訪れたF若頭補佐(当時)のKに対し,みかじめ料として,各3万円を交付した。(甲
A1の2ないし1の8,甲A6,9,13,弁論の全趣旨)


原告は,平成22年9月頃,愛知県暴力団排除条例(以下本件条例という。)施行後,みかじめ料を支払うことも処罰の対象となりうることを知り,被告Bに対し,みかじめ料の支払も犯罪になるため,同月以降,みかじめ料を支払うことはできない旨伝えた。被告Bは,原告に対し,同月以降,みかじめ料の徴収を行わなかった。(甲A13,原告本人)
なお,原告は,同月以降,クラブβにおける接客を従業員に任せ,自らは,クラブβの売上のうち一定額を受領するようになり,平成24年9月に,クラブβを閉店した。(原告本人)
事実認定についての補足説明

上納金制度
被告Aは,Cの組員は,それぞれが独自に経済活動を営んでおり,そこから得た利益を所属する組や上部団体又はその長に上納することはない旨主張するが,上記のとおり,原告からみかじめ料を受領した暴力団組員が当該みかじめ料をFとして受領したものとして扱っていること,
少なくとも平成
4年時点では,Cに上納金制度が存在すると認められるところ(甲B1の4),その後,Cにおいて,上納金制度が廃止されたことをうかがわせる証拠はないことに照らすと,被告Aの上記主張は採用できない。


原告がみかじめ料を支払うに至った経緯

被告らは,原告が,本件クラブαを開店するに際し,内装業者等との間のトラブルを解決し,また,クラブαの売上につなげるため,自ら,被告Bの実弟が経営する会社が賃貸管理するgビルに入居し,Mを通じて,被告Bに対して面倒見を依頼した旨主張する。


しかし,被告Bが,原告に対し,本件要求行為2を行ったことが認められるところ(前示

ア),

新しい店に替わっても,若い衆に取りに行かせるよ。払わなければ放火するぞ。

という脅迫は,本件パーティ以前の金銭の支払が任意のものであることとは整合せず,むしろ,本件パーティ以前の金銭の支払も原告を畏怖させて行わせたものであったことを利用し,クラブβ開店後も金銭の支払を継続させる目的で行われたものとみるのが相当である。

この点,Mの本件刑事事件の証人尋問における供述調書の内容は,Mは,原告がクラブαを開店させた頃に原告及びQから,被告Bに面倒見を頼む目的で,被告Bへの紹介を依頼され,その旨を被告Bに伝えたという旨のものである(乙4)。
しかし,Mの同証人尋問における供述調書中には,①原告とは,クラブαの開店が決まった後,クラブγのママから原告を紹介されて初めて知り合った間柄であり,②Mが,Qに対し,被告BやN等のEの関係者と知り合いであることについて話していなかった旨の部分もあることに照らすと,仮に,MとQが数年来の知り合いであったとしても,原告及びQにおいて,
Mが被告Bに他人の面倒見を依頼できるような関係
であると考えて,被告Bに面倒見を頼む目的で,Mに対し,被告Bへの紹介を依頼したとは考えにくいから,前掲乙4の記載内容(Mの上記供述内容)は,にわかに採用できない。
そして,
Mが同証人尋問において被告BやN等のEの関係者と知り合
いである旨述べていることも併せ鑑みると,その利害関係からしても,前掲乙4の記載内容(Mの上記供述内容)は,にわかに採用することができない。

Rの本件刑事事件の証人尋問における供述調書の内容は,
原告がクラ
ブαを開店する際,暴力団組員である被告Bと関係があるという理由でgビルを賃貸し,暴力団と関係するgビルにおいてクラブαを開店することについてかえって便利だと述べたというものである(乙3)。しかし,
被告Bの弟がLの代表取締役に就任したのは平成12年6月
14日であること(甲A14,15)からすると,原告が,クラブαを開店した平成10年7月頃当時,gビルについて,被告Bと関係があると認識していたとは認められないから,前掲乙3の記載内容(Rの上記供述内容)を直ちに採用することはできない。


そして,他に,前記aの被告らの主張に沿う事実を認めるに足りる証拠はない。

被告Bは,Mからクラブαの面倒見を依頼された被告Bがクラブαの具体的な面倒見をNに任せた旨主張する。


しかし,前記aの主張は,いずれも前記
であり,前記

のとおり,前記

aの事実を前提とするもの

aの事実が認められない以上,その前

提を欠く。

この点,被告Bの本件刑事事件の被告人質問における供述内容は,Mから,原告が被告Bを紹介してほしいと述べていることを聞き,クラブαの面倒見をする者としてNを選び,Nに対してMが原告を紹介してくれることを伝えたという旨のものであり(乙8),被告B作成の陳述書(乙13)にはこれと同旨の記載がある。また,証人Nは,被告Bから原告の面倒見を担当するよう言われた旨の供述をし,
同人作成の陳述
書(乙10)にはこれと同旨の記載がある。
しかし,被告Bは,平成24年11月10日,検察官に対し,本件徴収行為が始まった経緯について,原告から直接,面倒見の依頼を受けた旨供述しており(甲A10),本件刑事事件の被告人質問における供述との間に大きな相違があるところ,
以上のとおりの供述の相違ないし変
遷が生じた理由について,記憶喚起されたためと説明するのみであって,合理的な説明がされていないから,前掲乙8の記載内容(被告Bの上記供述内容)は,採用できない。
また,証人Nの上記供述等は,被告Bの上記供述と合致するものの,Nが現在,Eの下部組織であるSを組織する立場にあること(証人N)に照らすと,その利害関係からしても,その信用性には疑問が残り,にわかにこれを採用できない。


そして,他に,前記aの被告Bの主張に沿う事実を認めるに足りる証拠はない。
被告Bは,原告が本人尋問において,虚偽供述に加え,原告作成の陳述書,
本件刑事事件における被告人質問又は本件刑事事件の記録と矛盾する供述や不自然な供述を行い,また,不誠実な態度であることから,原告の供述は信用性がない旨主張する。
しかし,
被告Bが指摘する点はいずれも原告がみかじめ料を支払うに至
った経緯との関連性は低く,また,原告作成の陳述書,本件刑事事件における被告人質問と矛盾すると指摘された点はいずれも表現ぶり等の些細な不一致にとどまるし,原告の本人尋問における供述態度に照らしても,原告がみかじめ料を支払うに至った経緯に係る原告供述の信用性は,否定
されない。
以上判示したところに,弁論の全趣旨を総合すると,原告がみかじめ料を支払うに至った経緯
2
と認められる。

被告B

)について

被告Bの本件徴収行為の違法性等

ついて,その支払を拒んだ場合には,暴力団組員から,クラブαの経営を継続できなくなるような嫌がらせを受けたり,クラブαの従業員や客の身体に危害を加えられたりするおそれがあると認識していたところ,被告Bは,原告がクラブγに勤務していた時期に原告と知り合っており,クラブα開店時には暴力団やみかじめ料についての認識を有していることが容易に想定されるにもかかわらず,同月10日頃,原告に対し,毎月25日に被告Bの部下がお金を取りに来るため,各10万円を渡すよう強い口調で言い,原告を畏怖させて10万円を交付させ(本件要求行為1),その後のクラブαの営業期間においても,原告の畏怖状態を利用して,継続的に月5万円,7万円又は10万円の金銭を支払わせていたこと,②本件パーティにおいて,

払わなければ放火されるぞ。

などと原告経営のクラブや原告の生命及び身体に対する危害を加えかねない旨の脅迫を行って畏怖させ(本件
要求行為2),その後のクラブβの営業期間においても,原告の畏怖状態を利用して,継続的に月3万円の金銭を支払わせていたことが認められる。このような被告Bの本件徴収行為は,原告の意思決定の自由を奪って,原告の意思に反した財産処分を強制する行為であり,
原告の意思決定の自由及
び財産を侵害する行為に当たる。

この点,被告Bは,原告から,いかなる種類のいかなる名目の金銭も受領したことはなく,
原告から本件守料を受領していたNは,
本件守料について,
縄張りとは関係がなく,面倒見の対価として受領したものである旨主張する。しかし,本件徴収行為が本件要求行為1及び本件要求行為2に基づいて行われたこと,原告又はGからみかじめ料を受領したI,J及びKが

Bさんのところの者です。

などと述べたこと(前示1
オ),Jが原告から受

領したみかじめ料について,Fとして(Fのために)受領したものとして,Fにおいて金銭管理を行っていたKに交付していたこと
(前示1

イ及び同

ウ)に照らすと,原告からのみかじめ料の徴収は,I,J,Kらの被告Bの部下である暴力団員を介してなされたものの,その主体は,当該各暴力団員ではなく,被告Bにほかならないといえる。

また,
被告Bは,
原告が301号室の賃貸借契約や他人とのトラブルに
関して,
積極的に被告Bの名前を利用し,
かつNに依頼してトラブルに対
応させていたことや,原告が,被告Bに対し,営業電話を繰り返し,高額な飲み代を支払わせていただけでなく,
他のヤクザとも親密に交際し,

倒見の対価額を減額させる一方,平成14年又は15年頃に捜査協力を通じて知り合ったOや平成13年頃に知り合ったPに対し,平成20年8月に至るまで,
みかじめ料について相談しなかったことからすると,

告には,不法行為上保護されるべき権利や利益があったとは思われない旨主張する。
そこで検討するに,原告は,クラブα開店時にLから301号室を賃借したところ(前示1

イ),証拠(甲A6,原告本人)によれば,原告

は,①平成12年8月1日,Lに対し,税金負担を免れる目的で,301号室の賃借人の名義をTに変更したい旨申し入れ,
名義変更料50万円を
5回に分割して支払ったこと,②平成15年6月1日頃,Lに対し,税金負担を免れる目的で,
301号室の賃借人の名義をUに変更したい旨申し
入れ,名義変更料45万円を9回に分割して支払ったこと,③平成19年1月24日,クラブαの更衣室として利用するために,301号室の隣の302号室をU名義で賃借したこと,④同年5月31日頃,Lに対し,税金負担を免れる目的で,
301号室及び302号室の賃借人の名義をV
に変更したい旨申し入れ,
名義変更料31万5000円を一括して支払っ
たこと,⑤302号室については,保証金が不要とされ,原状回復義務も負わないものとされたこと,
⑥301号室及び302号室に係る賃貸借契
約を合意解除する際,原状回復費用が当初218万円とされたところ,減額交渉の末,最終的には200万円とされ,退去後1か月分の賃料支払を免除されたことが認められる。
また,証拠(原告本人)によれば,⑦原告がクラブγを辞めたことによりクラブγのママと商売敵の関係になったこと及び⑧クラブα開店時の内装工事を依頼した請負人が下請人に対して報酬を支払わなかったために,原告が当該下請人から報酬を請求されたことが認められる。そして,証拠(乙3ないし6,8,11,13)中,原告が前記①ないし⑧に関して被告Bの名前を出して同人を利用したとの旨の部分がある。しかし,そのうち,H(乙5)及びW(乙6)に係る部分については,当該両名は,
被告Bの実弟が経営する会社又はその関連会社の従業員ない
し役員であって,被告Bとの間に密接な人的関係があり,その信用性に疑問が残るし,M(乙4),R(乙3,11)及び被告B(乙8,13)に係る部分については,前示1

イのM,R及び被告Bの各供述の信用性に

関する判断内容に照らして,やはりその信用性に疑問が残る。そして,他に,
原告が前記①ないし⑧に関して被告Bの名前を出して同人を利用したとの事実を認めるに足りる証拠はない。
以上により,
原告が前記①ないし⑧に関して被告Bの名前を出して同人を利用したとの事実は認められない。
さらに,前示のとおり,原告は,複数回にわたり,被告Bに対し,みかじめ料の支払金額を減らすよう懇願して,その了解を得ているものの,みかじめ料の支払を拒否できないという原告の心理状態と,
原告の営む店の
収入の減少を理由に現実に支払可能な程度にまでみかじめ料の支払額を軽減するよう懇願した原告の行動とは必ずしも矛盾するものではない。む
しろ,原告は,前示のとおり,本件条例の施行により,みかじめ料を支払うことも処罰の対象となりうることを知って初めて,
みかじめ料の支払を
拒否できる心理状態に至り,被告Bに対し,その旨申し出たものとみるのが相当である。
また,原告がO及びPに対して,平成20年8月までみかじめ料を支払っていることについて全く相談しなかったのは,むしろ,その時まで,原告が被告Bの本件要求行為1及びこれに基づく本件徴収行為により畏怖していたためであるとも考えられるから,上記の点は,特に不自然ないし不合理ではない。
以上により,
被告Bの本件徴収行為によって原告の権利ないし法律上保
護されるべき利益が侵害されたといえるのであって,
被告Bの前記

の主

張は採用できない。

したがって,被告Bの本件徴収行為は,原告に対する不法行為に当たる。損害


前記1

及び同

のとおり,
原告は,
被告Bに対し,
本件徴収行為により,
別紙2支払金額一覧表の年月日欄記載の日において,これに対応する同別紙の支払金額欄記載の金額(計1085万円)をみかじめ料として交付したことが認められるから,上記1085万円は,被告Bの本件徴収行為と相当因果関係を有する損害であると認められる。
そして,同別紙の年月日欄記載の各日付における各支払に係る各損害賠償債務は,各損害の発生と同時に遅滞に陥るから,同別紙の年月日欄記載の各日付から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金が発生するところ,
そのうちの平成25年1月31日時点での確定遅延損害
金は,別紙2のとおり,計523万4718円となる。

進んで,慰謝料の点につき判断するに,本件徴収行為の態様,すなわち,前示1

及び同

のとおり,原告に対し,クラブα開店時にCの威力を利

用して畏怖させ,定期的なみかじめ料の支払を強要し(本件要求行為1),その後も原告の畏怖状態を利用して,
継続的に原告の意思に反するみかじめ
料の支払を強要し,さらには,本件パーティにおいて,原告に対し,

新しい店に替わっても,若い衆に取りに行かせるよ。払わなければ放火されるぞ。

などとさらに具体的な脅迫を行って(本件要求行為2),クラブαを閉店し,クラブβを開店した後においてもみかじめ料の支払を継続させており,原告の財産が侵害されたというにとどまらず,原告の意思決定の自由が侵害されていたことのほか,前示1で認定した諸事情に照らせば,本件徴収行為により原告の被った精神的苦痛は金銭的な慰謝に十分に値するところ,その慰謝料額については,その他本件に現れた一切の事情を併せ考えると,150万円とするのが相当である。

弁論の全趣旨によれば,原告は,本件訴訟の提起及び追行を訴訟代理人弁護士らに委任し,その報酬の支払を約したことが認められるところ,そのうち被告Bの前記不法行為と相当因果関係にある額は,
本件事案の内容,
性質,
認容額,審理経過その他諸般の事情を斟酌して,120万円と認める。エ
したがって,原告の被告Bに対する不法行為責任に基づく損害賠償請求は,
1878万4718円及びうち1085万円に対する平成25年2月1日から,うち270万円に対する同年11月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(なお,上記のとおり,みかじめ料支払相当額とこれに関する確定遅延損害金に係る主位的損害賠償請求は,その全部が認容されるため,予備的不当利得返還請求(みかじめ料支払相当額とこれに関する法定利息)に対する判断を要しない。)

3
被告Aの使用者責任の有無(争点
前示1

)について

のとおり,①Cは,その威力をその暴力団員に利用させ,又はその
威力をその暴力団員が利用することを容認することを実質上の目的とし,下部
組織の構成員に対しても,Cの名称,代紋を使用するなど,その威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたこと,②被告Aは,Dの会長であった時期においては,Cの2次組織であるDの組員から,Cの組長である時期においては,Cの1次組織の組員から,それぞれ毎月上納金を受け取り,また,Cの2次組織以下の組長は,それぞれその所属組員から,毎月上納金を受け取り,
前記①の資金獲得活動による収益が被告Aに取り込まれる体制が採られていたこと,③被告Aは,Dの会長であった時期においては,Dの下部組織であるE及びFの構成員を,Cの組長である時期においては,ピラミッド型の階層的組織を形成するCの頂点に立ち,Cの構成員を,それぞれ擬制的血縁関係に基づく服従統制下に置き,
被告Aの意向がD又はCの下部に位置する末端組織
の構成員に至るまで伝達徹底される体制が採られていたことが明らかである。したがって,被告Aは,D又はCの下部組織の構成員を,その直接間接の指揮監督の下,
D又はCの威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させ
ていたということができるから,被告AとCの下部組織の構成員との間には,同事業につき,
民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立していた
と解するのが相当である。
また,被告Bの原告に対する本件徴収行為は,原告が暴力団やみかじめ料についての認識を有していることを知りながら,
自身がD又はCの下部組織の構
成員であるという立場を利用して原告を畏怖させ,
その意思に反してみかじめ
料を徴収する行為である。また,本件徴収行為によって被告Bが取得するみかじめ料は,D又はCの威力を利用して資金獲得活動をすることの対価として,上納金制度を介して上部組織であるD又はCに支払われている。
したがって,被告Bの原告に対する本件徴収行為は,D又はCの威力を利用しての資金獲得活動に係る被告Aの事業の執行として行われたといえる。以上により,被告Aは,同人の事業の執行について被告Bが原告に加えた損害を賠償する責任を負うから,被告Bと連帯して,原告に対し,1878万4718円及びうち1085万円に対する平成25年2月1日から,うち270
万円に対する同年11月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
(なお,以上の認定説示からすれば,原告の暴対法31条の2に基づく請求の認容額は,
これと選択的併合の関係にある使用者責任に基づく請求についての認容額を超えないことが明らかである。)
4
結論
よって,主文のとおり判決する。

名古屋地方裁判所民事第8部

裁判長裁判官

加島滋人
裁判官

前田志
裁判官

川村
久美子

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