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損害賠償請求控訴事件 不正競争 民事訴訟
事件番号平成28(ネ)10094
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日平成29年3月22日
法廷名知的財産高等裁判所
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号平成27(ワ)11759
裁判日:西暦2017-03-22
情報公開日2017-10-19 08:07:06
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平成29年3月22日判決言渡
平成28年(ネ)第10094号

損害賠償請求控訴事件(原審:大阪地方裁判所

平成27年(ワ)第11759号)
口頭弁論終結日

平成28年12月20日
判決控訴人
コスメディ製薬株式会社

控訴人X
上記2名訴訟代理人弁護士

伊原友己同加古尊温被控訴人
株式会社バイオセレンタック

被控訴人
Y1

被控訴人
Y2

被控訴人兼上記3名訴訟代理人弁護士
Y3
上記4名訴訟代理人弁護士
主1江黒文
本件各控訴をいずれも棄却する
早耶香

2
控訴費用は,控訴人らの負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人株式会社バイオセレンタック,同Y1及び同Y2は,控訴人コスメディ製薬株式会社に対し,各自2200万円及びこれに対する平成27年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被控訴人株式会社バイオセレンタック,同Y1,同Y2及び同Y3は,控訴人Xに対し,各自1100万円及びこれに対する平成27年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
第2

訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人らの負担とする。
事案の概要
本判決の略称は,特に断らない限り,原判決に従う。

1
事案の要旨
(1)被控訴人株式会社バイオセレンタック
(以下
被控訴人バイオ
という。

は,平成25年2月20日,控訴人コスメディ製薬株式会社(以下控訴人コスメディという。)が製造販売し,岩城製薬の販売する体内で溶解する微小針であるマイクロニードル技術を用いた化粧品(以下控訴人ら製品という。)が,被控訴人バイオ保有の本件特許権の特許発明の技術的範囲に属すると主張して,本件控訴人コスメディ及び岩城製薬を被告として,その製造販売の差止めと損害賠償等を求める別件侵害訴訟(東京地方裁判所平成25年(ワ)第4303号)を提起した。しかし,別件侵害訴訟は,第一審で被控訴人バイオの請求がいずれも棄却され,控訴審でも控訴がいずれも棄却されて被控訴人バイオ敗訴の一審判決が確定した。
(2)本件は,別件侵害訴訟の被告であった控訴人コスメディと同社の代表取締役である控訴人X(以下控訴人Xという。)が,同訴訟の原告であった被控訴人バイオ,同訴訟で同被控訴人を代表した代表取締役の被控訴人Y1(以下被控訴人Y1という。),被控訴人バイオの代表取締役であり本件特許の発明者である被控訴人Y2(以下被控訴人Y2という。)並びに別件侵害訴訟で第一審及び控訴審の訴訟代理人を務めた被控訴人Y3(以下被控訴人Y3という。)に対し,次のとおり損害賠償の支払を求める事案である。

控訴人コスメディの被控訴人バイオ,同Y2及び同Y1に対する請求控訴人コスメディは,被控訴人バイオ,同Y2及び同Y1に対し,同バイオが控訴人コスメディによる本件特許権侵害及び被控訴人Y2の研究成果盗用という虚偽の事実を岩城製薬及び資生堂に告知した行為は,平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項14号(現行法では15号であるが,本判決においても原審と同様に14号と表記する。)の不正競争に該当するところ,被控訴人バイオ及び同Y2は共同行為者として,被控訴人Y1は同バイオの取締役としてそれぞれ責任を負うと主張して,
被控訴人バイオ及び同Y2に対しては同法4条に基づき,
被控訴人Y1に対しては会社法429条1項に基づき,損害賠償として2200万円(信用毀損の損害として2000万円,弁護士費用として200万円の合計)及び不法行為の後の日である平成27年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。

控訴人Xの被控訴人ら全員に対する請求
控訴人Xは,被控訴人らに対し,被控訴人バイオが控訴人コスメディによる本件特許権侵害及び被控訴人Y2の研究成果盗用という虚偽の事実を岩城製薬や資生堂に告知して控訴人Xの名誉を毀損するところ,被控訴人バイオ,同Y2及び同Y3は共同行為者として,被控訴人Y1は同バイオの取締役としてそれぞれ責任を負うと主張して,被控訴人バイオ,同Y2及び同Y3に対しては民法709条(719条1項)に基づき,被控訴人Y1に対しては会社法429条1項に基づき,損害賠償として1100万円(名誉毀損の損害として1000万円,弁護士費用として100万円の合計)及び不法行為の後の日である平成27年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。2
前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張
次のとおり,付加,訂正するほかは,原判決の事実及び理由の第2の2及び3(原判決3頁21行目から14頁7行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁12行目に原審とあるのを第一審と,同13行目に別件特許権侵害訴訟とあるのを別件侵害訴訟と改める。(2)同5頁7行目冒頭から同9行目末尾までを次のとおり改める。なお,本件特許については,平成24年5月2日,控訴人コスメディが無効審判を請求し,特許庁は2度にわたり不成立審決をしたが,いずれも審決取消訴訟によって取り消され,現在,3度目の不成立審決に対する審決取消訴訟が当庁に係属中である(当庁平成28年(行ケ)第10160号)。(3)同6頁1行目,
同11頁8行目,
同21行目,
同12頁4行目,
同9行目,
同16行目,同25行目(2か所),同13頁24行目及び同26行目にそれぞれ棄損とあるのを毀損と改める。
(4)同7頁13行目,同11頁1行目,同20行目にそれぞれ原告の主張とあるのを控訴人コスメディの主張と,同13頁11行目,同25行目にそれぞれ原告の主張とあるのを控訴人Xの主張と改める。

第3

当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,後記1のとおり付加,訂正し,後記2のとおり当審における判断を付加するほかは,原判決の事実及び理由の第3の1及び2(原判決14頁9行目から21頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。1
原判決の補正
(1)原判決14頁14行目事実はの後に結果的にを加える。
(2)同18頁7行目から8行目にかけて本件特許登録後にとあるのを本件特許権の登録前にと改める。(3)同20頁10行目,同12行目,同13行目,同18行目,同23行目,同21頁5行目,同9行目,同18行目,同19行目及び同22行目にそれぞれ棄損とあるのを毀損と改める。
(4)同21頁2行目に不法行為法とあるのを不法行為と改める。
2
当審における付加判断
控訴理由に鑑み,必要な限度で判断を加える。
(1)不正競争(信用毀損行為)の成否について(争点1関係)

特許権侵害の事実を告知したとの点について
(ア)控訴人コスメディは,原判決が,被控訴人バイオが別件侵害訴訟の訴訟手続を通じて控訴人ら製品が本件特許権の侵害品であるとの事実を岩城製薬に告知した面はあると認定しながら,不正競争防止法2条1項14号の不正競争(虚偽事実の告知)に該当しないと結論付けた論旨が不明であると主張する。
よって検討するに,確かに,別件侵害訴訟は,控訴人コスメディのみならず,その取引先である岩城製薬をも共同被告(侵害者)として提起されたものであるところ,
同訴訟においては,
本件特許の無効を理由に,
本件特許権の侵害を理由とする被控訴人バイオの請求が認められず,同請求を棄却した一審判決が控訴棄却により確定したのであるから,結果として,同訴訟において被控訴人バイオが主張していた事実(控訴人ら製品が本件特許権の侵害品であるとの事実)は,虚偽であったことになり,また,かかる訴訟手続を通じて,その虚偽の事実が岩城製薬に告知されたことになる。したがって,かかる岩城製薬に対する告知は,形式的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する。
しかしながら,かかる告知は岩城製薬に対する訴訟提起によってなされたものであるから,これを違法とするかどうかは,別の観点からの考察も必要である。すなわち,訴えの提起が相手方に対する違法な行為となるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる(最高裁第三小法廷昭和63年1月26日判決・民集42巻1号1頁参照)。かかる要件を満たさないのに,訴訟提起という形による虚偽事実の告知が形式的に不正競争に当たることを理由として,これを違法とすることは,たとえ訴訟提起の相手方(本件では岩城製薬)との関係で違法と評価するものではなかったとしても(不正競争かどうかは,飽くまで競業者である控訴人コスメディとの関係において問題となるものである。),結局はこれを不当提訴であると断じるに等しく,裁判制度の自由な利用を著しく阻害することとなり妥当でない(むしろ,特許権者が自己の権利を侵害されているとの認識の下に,当該侵害者を相手方として訴訟を提起することは,当該訴訟が不当訴訟と評価されるような特段の事情がない限り,裁判を受ける権利の行使として当然許される行為であるというべきである。)。したがって,かかる制度的観点からは,特許権者が,競業者ないしその取引先に対する関係でおよそ請求が成り立たないことを知りながら,あるいは,当然そのことを知り得たはずであるのに,あえて当該取引先をも共同被告として訴訟を提起するなど,訴訟制度を濫用的に利用したと評価し得るような特別な事情が存する場合は格別として,そのような場合でなければ,外形的には不正競争に当たり得るとしても,訴訟提起自体を違法と評価することはできないというべきである。
これを本件についてみるに,控訴人コスメディは,控訴人ら製品を製造して資生堂に販売し,資生堂において商品として完成させて岩城製薬に販売し,岩城製薬において市販していたというのであるから,仮に控訴人ら製品が本件特許権の侵害品に当たるとすれば,岩城製薬の行為自体が本件発明の実施行為として本件特許権の侵害に当たるものであることは明らかである。また,別件侵害訴訟においては,結果的に新規性欠如の無効理由によって本件特許が無効にされるべきものであるとの判断が確定しているが,被控訴人バイオが,あらかじめ本件特許にかかる無効理由が存することを知りながら,あるいは,これを当然知り得たはずであるのに,あえて(無理を承知で)同訴訟を提訴したというような事情はうかがわれないし(別件侵害訴訟の提起に先立ち控訴人コスメディから無効審判請求がなされていたが,被控訴人バイオとしては,これを争っており,かつ,提訴の時点ではまだ確定的な判断は示されていなかったのであるから,それだけでは,被控訴人バイオが無効理由の存在を知り,あるいは,当然知り得たというには足りない。),被控訴人バイオに,専ら控訴人コスメディの信用を毀損する目的など,訴訟制度を濫用的に利用したと評価されるべき不当な目的があったことを認めるに足りる的確な証拠もない。
以上によれば,被控訴人バイオが岩城製薬を共同被告として別件侵害訴訟を提起したのは,正当な権利行使の一環というべきであって,それが外形的には不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当し得る行為であったとしても,正当行為として違法性が阻却されるものと認めるのが相当である。原判決の認定判断もかかる趣旨を述べるものと理解することが可能であって,論旨不明との指摘は当たらない。
よって,これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。
(イ)控訴人コスメディは,資生堂に対する告知行為の有無に関して,被控訴人バイオは,別件侵害訴訟の被告商品の中間流通段階に位置する資生堂をあえて飛ばして,控訴人コスメディと岩城製薬とを被告にしたものであって,当然,別件侵害訴訟の顛末は控訴人らから資生堂にも伝わることを知悉していたものであるから,被控訴人バイオは,控訴人らを介して,資生堂に伝達した(告知した)と評価すべきものであると主張する。
しかしながら,原判決が指摘するとおり,不正競争防止法2条1項14号における告知とは,自己が関知した一定の事実を特定の人に知らせる伝達行為をいうものと解されるところ,別件侵害訴訟は飽くまで控訴人コスメディと岩城製薬を被告とするものであって資生堂を被告とするものではないから,同訴訟の提起とその後の訴訟手続をもって資生堂に対する告知行為と評価することは相当でないし,被控訴人バイオにその意図があったと認めるに足りる証拠もない。
したがって,資生堂に対する告知行為を認めなかった原判決の認定判断は正当であり,
これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。

研究成果盗用の事実を告知したとの点について
控訴人コスメディは,原判決添付の別紙一覧表(別紙問題記載箇所一覧表)記載の各記載内容(以下本件各記載内容という。)は,誰がみても,一貫して,被控訴人Y2の研究室から,控訴人Xが技術情報を盗取した(アクセスして控訴人らの事業に使用するなどしている)ことと読み取れるし,被控訴人バイオにおいても,そのような点における悪質性を謳いあげて,別件侵害訴訟で裁判所の侵害心証を形成したかったものであることは明らかであるところ,結局,被控訴人バイオにおいては,客観的証拠に基づく具体的事実の指摘ができずに,言いっ放しになっているとして,上記の点について不正競争(虚偽事実の告知)の成立を認めなかった原判決の認定判断は誤りであると主張する。
しかしながら,かかる控訴人コスメディの主張も採用できない。
すなわち,不正競争防止法2条1項14号の不正競争の成立を主張する以上,不正競争を構成する具体的事実の主張立証責任は,飽くまで不正競争の存在を主張する側にあるというべきであるから,本件各記載内容に含まれる研究成果盗用の指摘が虚偽事実の告知に当たると主張するのであれば,これを主張する控訴人コスメディの側において,かかる指摘が虚偽の事実であることを具体的に主張立証する必要がある。
さらにいえば,
本件においては,
被控訴人バイオの側から,
控訴人Xは,
京都薬大在籍時に被控訴人Y2の研究成果にアクセス可能であったことや,同大学在籍中に控訴人コスメディの前身となる会社を設立し,その後,本件特許権の登録前に,控訴人コスメディが控訴人ら製品を製造販売し始めた経緯があったこと,控訴人Xが発明者の一人となって控訴人コスメディが平成20年に出願した特許(乙9)に係る発明は,被控訴人Y2の発明に係る自己溶解性マイクロニードルの基材物質の一つであるヒアルロン酸を使用していることなど,控訴人Xが何らかの形で被控訴人Y2の研究成果にアクセスしてこれを取得し,利用したことを推認させる方向に働く具体的事情の存在が指摘されているのであるから,控訴人コスメディにおいても,上記推認を弱める方向に働く事実を具体的に主張立証しようとするのが通常の対応であるという余地もある。
そして,これらの主張立証の方法として最も効果的であり,かつ,控訴人Xにとって容易であるのは,控訴人Xが控訴人ら製品を独自に開発した過程を明らかにすることであると考えられるところ,
控訴人コスメディは,
本件訴訟の控訴審に至るまで,これを全く行っていないのであるから,このような控訴人らの対応も含めて考えると,本件各記載内容が虚偽の事実であると断定することには疑問があるといわざるを得ない。
したがって,上記の点(研究成果盗用の事実を告知したとの点)について,不正競争防止法2条1項14号における不正競争(虚偽事実の告知)の成立を認めなかった原判決の認定判断に誤りはないというべきであり,これに反する控訴人コスメディの主張は採用できない。

小括
以上の次第であるから,上記ア,イいずれの点においても,不正競争防止法2条1項14号の不正競争は成立しない。

(2)名誉毀損の成否について(争点4関係)
控訴人Xは,原判決が,本件各記載内容は,要するに,控訴人Xがアクセスして得た被控訴人Y2の研究に係る技術情報を不正に利用して控訴人ら製品を開発したことを指摘するものであり,かかる事実の指摘が控訴人Xの名誉を毀損するものであると認めながら,結論において不法行為の成立を否定したのは誤りであると主張する。
しかしながら,かかる主張は採用できない。
すなわち,民事訴訟は,私的紛争の当事者が相互に攻撃防御を尽くして事実関係を究明すると共に,法律的見解について論争を展開し,裁判所が双方の主張・立証活動を踏まえて判断を示すことにより紛争を解決する制度であり,当事者の法律上又は事実上の利害関係が鋭く対立するにつれて相互の利害や感情の対立も激しくなるという傾向があり,時には一方当事者の主張・立証活動が相手方当事者等の名誉・信用を損なうような事態を招くこともある。しかし,それは,飽くまでも紛争を解決するための訴訟手続の過程における当事者の暫定的又は主観的な主張・立証活動の一環にすぎず,もしそれが一定の許容限度を超えるものであれば,裁判所がそれを指摘して適切に訴訟指揮権を行使することによって適宜是正することが可能であるし,相手方には,それに反駁し,反対証拠を提出するなどの訴訟活動を展開する機会が制度上保証されているほか,当事者の主張・立証の当否等は最終的に裁判所の裁判によって判断されるから,これにより一旦は損なわれた名誉・信用を回復することができる仕組みになっている。このような民事訴訟における訴訟活動の特質及び仕組みに照らすと,当事者の主張・立証活動について,相手方等の名誉等を損なうようなものがあったとしても,それが直ちに名誉毀損として不法行為を構成するものではなく,訴訟行為と関連し,訴訟行為遂行のために必要であり,主張方法も不当とは認められない場合には,違法性が阻却されると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,本件各記載内容に係る事実の主張は,つまるところ控訴人ら製品が本件発明に依拠するものであることを指摘するものであって,いずれも,別件侵害訴訟において特許権侵害の事実,すなわち控訴人ら製品が本件発明の技術的範囲に属することを社会的事実の側面(控訴人ら製品が製造販売されるようになった経緯)
から裏付けようとし,
あるいは,
公知技術から想到容易であることを理由に本件特許が無効とされることを免れようとしてなされたものであることが,その内容からして明らかである。したがって,本件各記載内容が別件侵害訴訟における主張立証命題と関連性を有する間接事実に当たることは明らかというべきであるし,間接事実の一つになり得るものである以上,それが訴訟行為遂行のために不必要であったということもできないから,必要性も認められる。
また,本件各記載内容は,他人の研究成果を盗用した(原判決添付の別紙一覧表記載4)などと一部穏当でない表現も含んでいるが,前記のとおり,控訴人Xと被控訴人Y2が一時期同じ大学に在籍しており,控訴人Xが被控訴人Y2の研究成果にアクセス可能であったことや,控訴人Xが同大学在籍中に控訴人コスメディの前身となる会社を設立し,その後,本件特許権の登録前に,控訴人コスメディが控訴人ら製品を製造販売し始めた経緯があったこと,控訴人Xが発明者の一人となって控訴人コスメディが平成20年に出願した特許(乙9)に係る発明は,被控訴人Y2の発明に係る自己溶解性マイクロニードルの基材物質の一つであるヒアルロン酸を使用していることなど,控訴人Xが何らかの形で被控訴人Y2の研究成果にアクセスしてこれを取得し,利用したことを推認させる方向に働く具体的事情が存することからすれば,被控訴人Y2がそのように疑って上記のような強い表現を伴う主張を行うことにも無理からぬ面がないとはいえない。
加えて,
上記表現は,
被控訴人Y2の訴訟代理人が作成した裁判所宛ての上申書(甲12)においてなされているところ,同上申書は,別件侵害訴訟の口頭弁論終結後に,裁判所から進歩性欠如の無効理由が存することを理由に訴えの取下げ勧告を受けたことを契機としてその直後に提出されたものであって(かかる取下げ勧告自体が被控訴人Y2にとって承服し難いものであったことは,その文面からして明らかである。),かかる上申書が提出されるに至った経緯やその提出時期をも考慮すれば,
盗用
との表現を含んでいることの一事をもって,
その主張方法を不当と決めつけることは相当でない。そして,ほかにその主張方法を不当とすべき事情は見当たらない。
以上によれば,本件各記載内容に係る事実の主張は,形式的には控訴人Xの名誉を毀損するものであったとしても,違法性が阻却されるというべきであって,これに反する控訴人Xの主張は採用できないものというのが相当である。
第4

結論
以上の次第であるから,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がない。
よって,本件各控訴をいずれも棄却することし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官

鶴岡稔彦
裁判官

大西勝滋
裁判官

寺田利彦
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