判例検索β > 平成27年(わ)第951号
建造物侵入、窃盗、傷害致死被告事件
事件番号平成27(わ)951
事件名建造物侵入,窃盗,傷害致死被告事件
裁判年月日平成29年1月24日
裁判所名・部札幌地方裁判所
判示事項の要旨被告人両名が,共謀の上,ひったくり及び複数回の侵入盗をしたほか,知人である被害者に対して,複数の薬物を多量に混入したアルコール飲料等を飲ませて死亡させた傷害致死等被告事件において,被告人両名にいずれも懲役8年を言い渡した事例
裁判日:西暦2017-01-24
情報公開日2017-10-13 01:33:54
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
平成29年1月24日宣告
平成27

951号,第1042号,第1104号
判本籍
札幌市a区・・・・・

住居決
不定
A本籍
北海道江別市・・・・・

住居
不定

上記両名に対する各建造物侵入窃盗傷害致死被告事件について,当裁判所は,検察官濵田武文及び同明石悠理子,国選弁護人森谷拓朗(主任)及び同川上有(被告人A関係)並びに国選弁護人谷地和憲(主任)及び同菅野亮(被告人B関係)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
被告人両名をそれぞれ懲役8年に処する
被告人両名に対し,未決勾留日数中各250日を,それぞれその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人両名は,
第1

共謀の上,平成27年9月22日午後11時5分頃,札幌市b区・・・・・付近路上において,同所を自転車で通行中のC(当時27歳)に,被告人Bが,右後方から自転車を運転して近づき,追い抜きざまに,前記Cが自転車のハンドルにかけていた同人所有の現金約8400円及び財布等13点在中のトートバッグ1個(時価合計約1万1000円相当)をひったくり窃取し第2

アルコール度数96度のウォッカに抗うつ剤テトラミド及び精神情動安定剤スルピリド等の薬物を多量に混入して調合した飲料(以下本件アルコール飲料という。)をかねて作製していたところ,同月23日,Dが被告人両名との約束に遅れたことから,罰ゲームとして本件アルコール飲料を飲ませようと考え,共謀の上,同日午後9時36分頃,b区・・・・・(当時の被告人両名方)において,情を知らない前記D(当時21歳)に対し,本件アルコール飲料等を飲ませ,よって,致死性不整脈等の薬物中毒の傷害を負わせ,同月25日午前0時58分頃,同市a区・・・・・E病院・・・・・において,前記Dを前記傷害に基づく多臓器不全により死亡させ

第3

共謀の上,窃盗の目的で,同年10月3日午後6時頃から同月5日午前7時頃までの間,株式会社F代表取締役Gが看守する同市c区・・・・・に所在する建築中の家屋に,合鍵を使用して侵入し,その頃,同所において,H他1名所有の丸のこ等16点(時価合計約13万4500円相当)を窃取し
第4

共謀の上,窃盗の目的で,同月10日午後6時30分頃から同月11日午前9時45分頃までの間,株式会社I札幌営業所工事課工事長Jが看守するc区・・・・・に所在する建築中の家屋に,合鍵を使用して侵入し,その頃,同所において,K所有の小型集塵機等2点(時価合計約2万円相当)を窃取し
第5

共謀の上,窃盗の目的で,同月11日頃,株式会社L代表取締役Mが看守するc区・・・・・に所在する建築中の家屋に,合鍵を使用して侵入し,その頃,同所において,N他1名所有の丸のこ等18点(時価合計約69万5000円相当)を窃取し

第6

共謀の上,窃盗の目的で,同日,O株式会社代表取締役Pが看守するc
区・・・・・に所在する建築中の家屋に,合鍵を使用して侵入し,その頃,同所において,Q他1名所有のコンプレッサー等21点(時価合計約66万3500円相当)を窃取し
たものである。
(法令の適用:被告人両名の関係)


判示第1の所為

刑法60条,235条

判示第2の所為

刑法60条,205条

判示第3ないし第6の所為のうち
建造物侵入の点

いずれも刑法60条,130条前段

窃盗の点

いずれも刑法60条,235条

科刑上一罪の処理

刑法54条1項後段,10条(判示第3ないし第
6につき,各建造物侵入と各窃盗は手段結果の関
係にあるのでいずれも重い窃盗罪の刑で処断)

刑種の選択
判示第1及び第3ないし第6の各罪につき
併合罪の処理

いずれも懲役刑

刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い
判示第2の罪の刑に法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)
量刑上,最も重視されるべき,傷害致死の事案についてみると,被告人両名は,治療に用いられる分量を大幅に超える複数種類の抗うつ剤等をウォッカに混入し,Dに飲ませている。被告人らの行為が,意識障害や昏睡など身体に重大な悪影響を与える危険なものであることは常識的に明らかである。被告人Aは,事前に本件アルコール飲料を飲み,短くとも18時間以上の昏睡状態に陥り,目覚めた後も体が思うように動かなかったというのであり,被告人Bもその様子を見聞きしていたのであるから,その危険性を十分に認識していた。Dが約束に遅れたことの罰ゲームとして本件行為に及んだという点も幼稚で短絡的である。Dの異変を察知した後も,直ちに救急隊に通報するなどしていないが,被告人らが適切に対応していれば,Dの生命が救われた可能性もあり,事後の対応についても不適切との非難を免れ得ない。Dの生命が失われたという結果が重大であるのはいうまでもない。Dは,21歳と若く,テレビ番組の製作に携わるという夢の実現に向け,最初の一歩を踏み出したところであった。それなのに,突如このような形で短い生涯を終えざるを得なかったDの無念さは察するに余りある。遺族の悲しみも大きい。Dの母親は,夢の実現に向けて懸命に努力する息子の姿を頼もしく見守り,その成長を楽しみにしていた。その息子の生命が理不尽に奪われたのであるから,被告人両名に対し,厳しい処罰を望むのも親の心情として当然である。
次に窃盗の事案についてみると,夜間に女性を狙ったひったくりを行ったり,建築中の家屋4軒に忍び込んで工具類を盗んだりしている。いずれも手慣れた手口であり,被害額も合計で150万円以上に及んでいることからすれば,被害品の大部分が返還されているとはいえ,その責任を軽視することはできない。被告人Aは,実際にDに本件アルコール飲料等を飲ませるなどし,その後も長時間Dの側におり,その異変に応じた対応ができたはずであったにもかかわらず,放置した。ひったくりについては,渋る被告人Bをしつこく説得して,実行させた。他方で,被告人Bは,Dに本件アルコール飲料を飲ませた際,その場にはいなかったものの,LINEを通じ,何度も,本件アルコール飲料を飲むよう促している。また,被告人Aに比べ,Dと一緒にいた時間は短いとはいえ,Dの異変を察知した後も特段の対応を取らなかった点では同じである。ひったくりについては,被告人Aからの説得があったとはいえ,結局実行している。そうすると,両名の責任の重さに大きな違いはない。
以上からすると,被告人両名が,客観的に危険な行為をそのように認識しつつ軽率に行い,行為の後も,長時間にわたって放置したために死亡の結果を招いたという点で,傷害致死の事案の中でも特に軽いものとはいえない。さらに,ひったくりや複数の侵入盗に及んでいる点も踏まえると,法廷において,自らの責任と向き合う姿勢を示し始めていることを考慮しても,8年間は刑務所において,更に反省させる必要がある。
(求刑

被告人両名につき各懲役10年)

平成29年1月24日
札幌地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

中桐圭一
裁判官

高杉昌希
裁判官

北島睦大
トップに戻る

saiban.in