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公園施設設置許可取消処分等執行停止申立事件
事件番号平成28(行ク)121
事件名公園施設設置許可取消処分等執行停止申立事件
裁判年月日平成28年6月16日
法廷名東京地方裁判所
判示事項都市公園法5条1項の公園施設設置許可について,同法27条2項1号に基づきその一部を取り消して許可期間を短縮するとともに原状回復を命じた監督処分の効力の停止を求める申立てが,重大な損害を避けるため緊急の必要があるとはいえないとして,却下された事例
裁判要旨都市公園法5条1項に基づく売店である公園施設の設置許可について,同法27条2項1号に基づきその一部を取り消して許可期間を短縮するとともに原状回復を命じた監督処分の効力の停止を求める申立てが,①当該処分によって申立人に生じる許可期間の短縮による営業利益喪失の損害は,金銭に換算することのできる通常受けるべき損失の範囲にとどまり,同法28条1項の損失補償によって賄われるべきものであるから,重大な損害に当たらず,②申立人が,長期間にわたり許可が繰り返され,更新されることが前提となっていたのに,当該処分の効力が生じた場合,早晩廃業に至り唯一の生計の資を絶たれることになるなどと主張した損害は,許可の更新を前提とすることはできないし,申立人が当該売店の営業を一時的に他の場所で行うことを余儀なくされたとしても,直ちに廃業とか生計の資を絶たれるといった事態に及ぶとは解されないことから,重大な損害を避けるため緊急の必要があるとはいえないとして,却下された事例
裁判日:西暦2016-06-16
情報公開日2017-10-19 08:40:57
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平成28年(行ク)第121号
(本案事件

公園施設設置許可取消処分等執行停止申立事件

平成28年(行ウ)第167号

公園施設設置許可取消処分等取消請

求事件)
主文1
本件申立てを却下する。

2
申立費用は申立人の負担とする。

第1


申立て
処分行政庁が申立人に対し平成28年2月19日付けでした公園施設設置
許可取消処分及び当該施設の原状回復命令は,本案事件の判決確定までその効力を停止する。
第2

事案の概要
申立人(本案事件原告)は,相手方(本案事件被告)が設置する都市公園で
ある東京都立上野恩賜公園内の上野動物園正門に隣接する一画に,Aの名称で便益施設(売店)である公園施設の設置の許可(都市公園法5条1項)を受けて店舗建物を所有し,パンダを模して形取った人形焼きである○等の飲食物ないし土産物を販売している者である。
本案事件は,
申立人に対する直近の上記公園施設設置許可
(以下
本件許可
という。)の期間が平成27年4月1日から平成28年9月30日までとされていたところ,処分行政庁が,申立人に対し,同年2月19日付けで,上野恩賜公園再生基本計画に基づく動物園正門前広場の整備工事及び動物園の表門改築工事(以下本件工事という。)が必要となるためとして,都市公園法27条2項1号に基づき,同年6月30日限りをもって本件許可を取り消すとともに許可施設であるA出店場(以下本件施設という。)の原状回復を命ずる監督処分(以下本件処分という。)をしたことを不服として,申立人が,処分行政庁の所属する相手方に対し,本件処分の取消しを求める事案で
あり,本件は,申立人が,相手方に対し,申立人の重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして,本件処分の効力の停止を申し立てる事案である。第3
1
当裁判所の判断
行政事件訴訟法25条2項にいう重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに当たるか(1)本件許可期間の短縮による損害について
本件処分は,都市公園に関する工事のためやむを得ない必要が生じたとして,都市公園法27条2項1号に基づき,平成28年9月30日までであった本件許可を一部取り消し,その期間を同年6月30日までに3か月間短縮するものである。したがって,申立人は,本件処分により,本件許可期間の短縮に伴う損失を被ることになるが,都市公園法は,もとよりこのような損失が生じ得ることは想定して,同法27条2項の規定により処分をされ,又は必要な措置を命ぜられたことによって損失を受けたときは,その者に対し通常受けるべき損失を補償しなければならない旨を定めている(同法28条1項)。
そうすると,本件処分を受けた申立人の被る損失が,金銭に換算することのできる通常受けるべき損失の範囲にとどまる限りは,法が当然に予定するところに従い,この損失補償によって賄われ得ると解されるものであり,本件処分により生ずる重大な損害に当たるとはいえないというべきである。この点,本件許可の期間を3か月短縮されたことによる損害は,基本的に営業利益の喪失であると考えられるところ,このような損害は,金銭に換算することのできる通常受けるべき損失の範囲にとどまるものと解され,上記の損失補償によって賄われるべきものである。申立人は,相手方から,同項に基づく損失補償として,平成28年4月18日に,営業補償のほか,建物移転補償,土地に関する補償等を含む5377万8753円の弁済の提供を受け,
これが申立人のために供託されている事実も一応認められる
(疎乙7,

8)以上,本件処分により申立人が本件許可期間を短縮された3か月分の営業利益の喪失は,本件処分により生じる重大な損害であるとはいえず,これを避けるため本件処分の効力を停止する緊急の必要があるとはいえない。(2)本件施設を離れることによる損害について

もっとも,申立人は,本件施設の設置許可は,長期間にわたりこれまで何度も繰り返し行われてきているため,更新されることが前提となっており,本件許可は期限の定めのない許可と同視されるべきものであるとした上で,現在本件施設で行っている営業(以下本件営業という。)の性質上,それを本件施設以外の場所で行うことは不可能であるから,本件処分の効力が生じた場合,本件営業は早晩廃業に至ることが容易に推測され,申立人に生ずる損害は,本件許可期間の短縮される3か月間分の本件営業利益にとどまらず,申立人の唯一の生計の資を絶たれ,5名の従業員にも多大な影響を及ぼすことになる旨主張するところ,これらは金銭に換算することのできない,又は通常受けるべき範囲を超える損害である趣旨を述べているものとも解される。


しかしながら,都市公園法5条3項は,公園管理者以外の者が公園施設を設け,又は管理する期間は,10年をこえることができず,これを更新するときの期間についても同様とする旨を定めているところ,これは,同一の私人にあまりにも長期にわたって公園施設を設けさせたり管理させたりすると,その関係が不明確になるとか,いつのまにか公園を私物化してしまうといった弊害が生じ得ることから,公園管理者に,一定期間ごとに,同一私人に公園施設の設置又は管理を継続させるべきか否かを検討させる機会と,その関係を改めて明確にする機会を設けることによって,都市公園の管理の適正を期そうとしたものと考えられる(疎甲18参照)。そして,申立人に対する本件許可が,これより短い平成28年9月30日までの1年6か月の期間で本件施設の設置を許可するにとどめていたの
も,同様の趣旨に出たものと考えられることからすると,本件施設の設置に関する申立人の地位は,設置許可の更新時においては改めて継続の適否が審査され,いつでも見直される可能性の留保されているものであったといわざるを得ない。とはいえ,一般に,公園施設の設置許可は,特別の理由がない限り更新されるべきものであると考えられるが,そうであるとしても,本件のように,都市公園全体の在り方を見直す再生計画が実施されようとしている場合には,そのことが上記の特別の理由になり得ると解されるところである。
そうすると,本件許可を期限の定めのない許可と当然に同視することは困難であるから,本件処分により申立人に生ずる損害を,本件処分がなければ本件許可期間経過時に申立人に対して本件許可と同内容の公園施設の設置許可が更新されるであろうことを前提として,観念することはできない。

次に,本件営業を本件施設以外の場所で行うことについては,確かに,上野動物園に関連する飲食物ないし土産物を販売するという本件営業の性質上,本件処分の結果として申立人が主に上野恩賜公園外になることが想定される本件施設以外の場所で本件営業を行う場合には,現状の上野動物園正門に隣接する一画である本件施設場所と比較して,申立人に営業上の不利益が生じるであろうことは予想される。
しかしながら,仮に本件施設場所におけるのと同等の営業利益は上げることができないにしても,申立人が上野恩賜公園外の上野界隈で本件営業を行うことが全く不可能であるかは疑問がある上,申立人自身,本件処分に代わるより制限的でない手段として,本件工事期間中,申立人の本件営業を休止させるもののその終了後に本件営業を再開させる方法も採り得るなどと述べていること(疎甲3の10頁)や,申立人のために供託されている前記の損失補償額にも鑑みると,申立人が,本案事件の審理のため
に必要であると見込まれる程度の期間,一時的に本件施設以外の場所で本件営業を行うことを余儀なくされたとしても,直ちに廃業とか生計の資を絶たれるといった事態にまで及ぶとは解されない。

以上によれば,本件処分により申立人が本件施設を離れることによる損害を勘案したとしても,申立人に生ずる重大な損害を避けるため本件処分の効力を停止する緊急の必要があるとはいえない。(なお,仮に本件処分が取り消されれば,申立人に対する都市公園法28条に基づく上記の損失補償はその根拠を失うが,その後,本件許可の期間経過に伴い本件施設の設置の許可の更新が拒絶されたとした場合(上記イ参照)は,同条に基づく損失補償は行われないのであるから,上記の損失補償は,申立人が,本件許可期間中に本件処分を受けたことによって,受けられる状態になっているともいい得るものである。)

2
結論
よって,本件処分の効力の停止を求める申立人の本件申立ては,その余の点について判断するまでもなく,理由がないから,これを却下することとし,申立費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり決定する。
平成28年6月16日
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官

谷口豊
裁判官

平山馨
裁判官

馬場潤
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