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α西地区第一種市街地再開発事業に係る資産価額
事件番号平成26(行ウ)330
事件名α西地区第一種市街地再開発事業に係る資産価額
裁判年月日平成28年3月8日
法廷名東京地方裁判所
判示事項第一種市街地再開発事業の完成の期待と都市再開発法80条1項にいう「相当の価額」
裁判要旨第一種市街地再開発事業に関する都市計画等の見込み,決定等に基づく事業の完成の期待は,それに起因する施行地区内の宅地の価格の上昇が都市再開発法80条1項所定の評価基準日の時点で既に発生していると評価できる限り,当該宅地の同項にいう「相当の価額」の算定において考慮する余地がある。
裁判日:西暦2016-03-08
情報公開日2017-10-19 08:52:29
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平成28年3月8日判決言渡
平成26年(行ウ)第330号

α西地区第一種市街地再開発事業に係る資産価額

請求事件
主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
裁決行政庁が原告に対し平成26年1月23日付けでした,α西地区第一種市街地再開発事業の施行地区内にある別紙1-1物件目録記載1の土地並びに同記載2及び3の各建物の価額に関する裁決のうち,同土地の価額に関する部分を121億8255万円と変更する。

2
被告は,原告に対し,20億円及びこれに対する平成24年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
1
事案の概要
本件は,
α西地区第一種市街地再開発事業
(以下
本件再開発事業
という。

に関し,裁決行政庁において,都市再開発法85条3項,土地収用法94条8項に基づき,原告が施行地区内に有する宅地の価額(都市再開発法73条1項3号)を95億3998万6000円などと定める裁決をしたところ,これに不服のある原告が,①

都市再開発法85条3項,土地収用法133条2項に

基づき,同裁決の宅地の価額に関する部分を121億8255万円と変更(増額)すること(上記第1の1)に加え,②

施行者である被告に対し,これに

伴う清算金として,20億円及びこれに対する権利変換期日の翌日である平成24年12月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の2)を求める事案である。なお,上記①は行政事件訴訟法4条前段所定の当事者訴訟(当事者間の法律関係を形成する裁決に関する
訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの)であり,上記②は同条後段所定の当事者訴訟(公法上の法律関係に関する訴訟)又は民事訴訟である。
2
関係法令の定め
別紙2-1関係法令の定めのとおりである。以下では,条項及び用語の表記及び略称等は,同別紙の定めに従う。

3
前提事実
以下に掲げる事実は,当事者間に争いのない事実,顕著な事実又は証拠等により容易に認めることのできる事実である。なお,認定に用いた証拠等は,その旨又はその番号(特に断らない限り枝番を含む。)を各事実の末尾に括弧を付して掲げる(後記第4においても同様である。)。
(1)当事者等

原告は,不動産の売買,賃貸及び管理等を目的とする株式会社であり,別紙1-1物件目録記載1の土地(以下本件土地という。)及び
同記載2及び3の建物(以下本件各建物といい,本件土地と本件各建物とを併せて本件各不動産という。)を所有する者である。(争いのない事実,乙8,弁論の全趣旨)


被告は,本件再開発事業の施行者(市街地開発組合)である。(争いのない事実,乙7,弁論の全趣旨)


本件土地は,本件再開発事業の施行地区(後記(3)カ参照。以下本件施行地区という。)内にある。同施行地区は別紙1-2位置関係図の太線内であり,本件土地は同図面の3-1の土地である。本件各建物は,いずれも,本件土地上にある。
(争いのない事実,乙6~8,10)

(2)本件再開発事業の目的
本件再開発事業の目的は,土地の集約化による街区再編を行い,β駅前の玄関口としてふさわしい土地の合理的かつ健全な高度利用を図り,業務・商
業・文化・観光機能が融合した複合開発を行い,また,中央区指定有形文化財であるP1ビルを保存,活用し,γが育んできた歴史と伝統を維持・継承するとともに,P2δ線γ駅を利用する歩行者が快適となるよう駅機能を改善し,回遊・にぎわいの軸となる広場空間や貫通道路等を整備することで,β駅前地域の活力や魅力の更なる向上と都市再生への貢献を行うというものである。(乙7,10,13)
(3)本件再開発事業の推移1(被告の設立認可まで)

平成18年2月14日,被告の設立を準備することなどを目的とし,α西地区に土地所有権を有する者等を構成員とする法人でない社団として,P3準備組合(以下本件準備組合という。)が設立された。(争いのない事実,甲1,13,乙7)


本件準備組合は,平成21年1月15日,都市再生特別措置法37条1項に基づき,東京都知事に対し,要旨,別紙3-1都市再生特別地区変更計画及び別紙3-2計画図のとおり,東京都市計画都市再生特別地区都市再生特別地区(α×地区)を変更することを提案した。(乙13)


東京都知事は,平成21年6月22日,都市計画法21条2項,18条1項に基づき,上記イの提案のとおり,都市計画東京都市計画都市再生特別地区(α×地区)を変更した(以下この変更の決定を本件特区決定という。)。東京都知事は,同日,同法21条2項,20条1項に基づき,その旨を告示した(平成21年東京都告示948号)。本件特区決定により,本件施行地区における容積率の最高限度が,従来の800%又は700%(加重平均718%)から1330%に緩和された。(争いのない事実,甲8,乙14,弁論の全趣旨)


中央区長は,平成21年6月22日,都市計画法21条2項,19条1項に基づき,
都市計画
東京都市計画地区計画(ε・β駅前地区地区計画)

のうち,都市計画を定める土地の区域をα…地内等と変更した。中央区長は,同日,同法21条2項,20条1項に基づき,その旨を告示した(平成21年中央区告示125号)。(争いのない事実,乙16)オ
中央区長は,平成21年6月22日,都市計画法19条1項に基づき,別紙4本件都市計画の概要のとおり,本件再開発事業に係る都市計画を決定した(以下,この決定と上記エの変更の決定とを併せて本件都市計画決定という。)。中央区長は,同日,同法20条1項に基づき,その旨を告示した(平成21年中央区告示127号)。(争いのない事実,乙7,10,15)


東京都知事は,平成23年7月12日,都再法11条1項に基づき,被告(P4)の設立を認可した。東京都知事は,同日,同法19条1項に基づき,その旨を公告した。同認可に当たっては,本件再開発事業の事業計画(以下本件事業計画という。)が,要旨,別紙5本件事業計画の概要のとおり定められていた。(争いのない事実,乙7,10,21の1,弁論の全趣旨)

(4)本件再開発事業の推移2(権利変換計画の認可まで)

被告は,平成23年8月頃,都再法72条1項,73条1項に基づき,本件再開発事業の権利変換計画(以下本件権利変換計画という。)の策定を開始した。本件権利変換計画は,同法111条に基づき,施設建築敷地に地上権が設定されない手法を採用するものとされた。(争いのない事実,乙8,弁論の全趣旨)


一般財団法人P5(以下P5という。)は,平成23年9月21日頃,本件権利変換計画の策定のため,本件再開発事業の従前土地及び従後資産の価格等に関する調査(以下本件調査という。)を開始した。(乙
10)


被告は,平成24年1月頃,本件再開発事業の従前資産を評価する基準
として従前資産評価基準を,同年2月頃,同基準の運用に関する細目として従前資産評価基準細則をそれぞれ定めた。これらの規定のうち本件土地の価額の算定に関係する部分は,別紙2-2関係する評価基準等の定めのとおりである。(争いのない事実,乙10,19,20,弁論の全趣旨)

P5は,平成24年3月29日付けで,本件調査の結果を記載した調査報告書(乙10,24。以下本件調査報告書という。)を作成した。本件調査報告書は,
要旨,
別紙6-1
本件調査報告書の要旨
のとおり,
本件土地の価額(平成24年3月11日時点)を95億3998万6000円と査定した。(争いのない事実,乙10,24)


被告は,平成24年9月頃,都再法72条1項,73条1項に基づき,本件権利変換計画の策定を完了した。
被告は,
本件権利変換計画において,
本件土地の価額を95億3998万6000円と,本件各建物の価額を合計12億8210万1000円と,原告が与えられることとなる施設建築の部分(8区画)の価額の概算額を合計108億2208万7000円とそれぞれ定めた。(争いのない事実,乙8,21の1)


被告は,平成24年9月10日から同月24日まで,都再法83条1項に基づき,本件権利変換計画を公衆の縦覧に供した。(争いのない事実)

東京都知事は,平成24年12月7日,都再法72条1項に基づき,被告に対し,本件権利変換計画を認可した。(争いのない事実,乙7)
(5)本件再開発事業の推移3(権利変換期日以降)

本件再開発事業の権利変換期日は,平成24年12月14日であった。(争いのない事実)


被告は,都再法96条に基づき,平成25年4月1日を期限として,本件施行地区内の土地及び当該土地にある物件を占有している者(原告を含む。)に対し,土地の明渡しを求めた。(争いのない事実,乙21の1)

被告は,平成25年3月29日,都再法97条に基づき,上記イの者ら(原告を含む。)に対し,上記イの土地の明渡しに伴う損失を補償した。(争いのない事実,弁論の全趣旨)


平成25年4月1日,本件施行地区内にある建築物の解体工事が着工した。(争いのない事実,乙21の1)


P5は,平成25年9月30日付けで,本件調査の結果のうち従後資産の価格について軽微な変更を行う内容の調査報告書(以下本件変更報告書という。)を作成した。(乙11)

平成25年10月頃,本件再開発事業の施設建築物(以下本件施設建築物という。)の建築工事が着工した。(乙7,21の1)

本件施設建築物は,
平成28年10月頃に完成する予定である。
(乙7,
21の1)

(6)本件各不動産の価額に関する裁決

原告は,平成24年9月21日付けで,都再法83条2項に基づき,被告に対し,本件各不動産の価額についての意見書を提出した。(争いのない事実)


被告は,平成24年10月2日付けで,原告に対し,都再法83条3項に基づき,
上記アの意見書を採択しない旨を通知した。
(争いのない事実,
乙1)


原告は,平成24年10月31日付けで,裁決行政庁に対し,都再法85条1項に基づき,本件各不動産の価額についての裁決を申請した(以下では,この申請に基づく裁決行政庁の審理を本件審理という。)。原告は,上記申請において,本件土地の価額が115億3998万6000円であり,本件各建物の価額が13億8787万1000円である旨を申し立てた。(争いのない事実,乙1)


被告は,
本件審理において,
都再法85条3項,
土地収用法94条6項,

63条2項に基づき,裁決行政庁に対し,意見書を提出し,本件土地の価額が95億3998万6000円であり,本件各建物の価額が12億8210万1000円である旨を申し立てた。(乙1)

裁決行政庁は,本件審理において,都再法85条3項,土地収用法94条6項,65条1項2号に基づき,鑑定人に,本件各不動産の価格を鑑定させた。本件土地の価格に関する鑑定人(有限会社P6)は,平成25年4月24日付けで,裁決行政庁に対し,本件土地に関する不動産鑑定評価書(乙25。以下収用委鑑定書という。)を提出した。収用委鑑定書は,要旨,別紙7-1収用委鑑定書の要旨のとおり,本件土地の価額(平成24年3月11日時点)を45億2943万9800円と評価した。(乙1,25,弁論の全趣旨)


裁決行政庁は,平成26年1月23日付けで,都再法85条3項,土地収用法94条8項に基づき,原告に対し,本件土地の価額を95億3998万6000円,本件各建物の価額を13億0143万5074円とする旨の裁決(以下本件裁決という。)をした。なお,裁決行政庁は,本件土地の価額は45億2943万9800円をもって相当とすると判断したが,都再法85条1項,土地収用法94条8項を適用し,被告が意見書によって申し立てた価額(上記エ参照)である95億3998万6000円を採用した。(争いのない事実,乙1)

(7)本件訴えの提起等

原告は,平成26年7月18日,①

本件裁決のうち本件土地の価額に

関する部分を115億3998万6000円と変更するとともに,②

告に対して清算金20億円及び遅延損害金の支払(上記第1の2)を求める旨の本件訴えを提起した。(顕著な事実)

原告は,平成27年9月15日,上記ア①の請求を,本件裁決のうち本件土地の価額に関する部分を121億8255万円と変更する旨の請求
(上記第1の1)に拡張した。(顕著な事実)
4
争点
本件の争点は,本件土地の価額(都再法73条1項3号),すなわち,平成24年3月11日における本件土地の
相当の価額
(都再法80条1項)
が,
本件裁決の定めた95億3998万6000円(前提事実(6)カ参照)を上回るか否かである。
具体的には,
前提問題として,


第一種市街地再開発事業(以下,単に
再開発事業という。)の施行地区内の宅地の相当の価額(都再法80条1項)の算定に当たり,当該再開発事業による開発利益(その意味に関する当事者の主張は後記のとおりである。)を考慮することができるか(争点1),②本件土地の相当の価額の算定に当たり,本件特区決定(前提事実(3)ウ)の存在を考慮することができるか
(争点2)
が争われており,
その上で,



告の主張する本件土地の相当の価額の算定方法(評価手順及び内容)の合理性(争点3)が争われている。
なお,本件土地の相当の価額を算定する基準となる日が,都再法80条1項,71条5項に基づき,被告の設立の公告があった日(平成23年7月12日。前提事実(3)カ参照)から起算して30日及び6月の各期間経過後,更に30日を経過した日である平成24年3月11日(以下本件評価基準日という。)となることについては,当事者間に争いがない。
第3
1
争点についての当事者の主張の要旨
原告の主張
本件評価基準日における本件土地の
相当の価額
(都再法80条1項)
は,
121億8255万円であって,本件裁決が定めた95億3998万6000円を上回る。
(1)算定方法の要旨
本件土地の相当の価額
(都再法80条1項)は,要旨,別紙8-1原告による本件土地の価額の算定方法のとおり,算定されるべきである。その理由は,(2)以下のとおりである。
(2)相当の価額の算定において開発利益を考慮することの可否(争点1)都再法73条1項3号の宅地の価額は,同法71条1項又は5項の規定による30日の期間を経過した日(以下評価基準日という。)における近傍類似の土地の取引価格等を考慮して定める
相当の価額
とされている
(同
法80条1項)。
この点,
宅地の価格は,
再開発事業の施設が完成していなかったとしても,
その事業計画の実現が確実であれば上昇する。そうすると,当該事業による開発利益(ただし,開発利益の定義は一様でない。)は,その全てが当該事業の完成時に発生するのではなく,当該事業が予定され進行するに伴い,徐々に段階的に発生するのであって,開発利益には,評価基準日後に発生するもののみならず,評価基準日前に発生するものもある。したがって,評価基準日までに発生した価格の上昇分は,当該宅地の価額に反映されるべきである。
そうであるとすれば,上記の意味における開発利益は,当該宅地の相当の価額(都再法80条1項)の算定において,近傍類似の土地の取引価格との比準を通じ,具体的には,標準的画地の価格形成要因として,考慮(加味)されるべきである。なお,この主張は,①

当該宅地の相当の価額

の算定において,評価基準日後に発生することとなる開発利益(例えば,施行地区内の画地が一体利用(一筆化)されることによる開発利益がこれに当たり,特に,当該画地が形状の悪い土地や小規模の土地である場合には大きなものとなる。)を考慮すべきこと,②

相当の価額の算定過程とは別

個独立のものとして,当該宅地の価額を増額すべきことを求めるものではない。
ところで,事業の施行が予定されることによって当該土地の取引価格が低
下したと認められるときは,当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとされている(公共用地の取得に伴う損失補償基準(甲12。以下損失補償基準という。)8条3項,最高裁昭和48年10月18日第一小法廷判決・民集27巻9号1210頁参照)が,その趣旨は,被収用者が近傍において同等の代替地を取得できるようにすることにある。しかるに,事業の施行予定により当該土地の取引価格が上昇したと認められるときにおいて,当該事業の影響がないものとして当該土地の価額を算定すべきものとすると,被収用者が近傍において同等の代替地を取得することができなくなり,生活の復元に支障を来し,上記趣旨に反することにもなる。
(3)本件土地の相当の価額の算定において本件特区決定の存在を考慮することの可否(争点2)

本件特区決定は,本件施行地区の容積率を1330%と大幅に緩和するものであるところ,その効果は,当該容積率の施設建築物が完成したか否かに関係なく,本件特区決定がされた平成21年6月22日の時点で生じている。
この点,再開発事業の施行地区につき,評価基準日の時点で容積率を大幅に緩和する都市再生特別地区に係る決定がされている場合における宅地の価額は,そうでない場合の宅地の価額に比べ,高額になるというべきである。そうすると,本件特区決定の存在は,本件再開発事業による開発利益(上記(1)参照)を生じさせる重要な価格形成要因として,本件評価基準日(平成24年3月11日)における本件土地の相当の価額(都再法80条1項)の算定に当たり,考慮されるべきである。


被告は,本件特区決定は容積率の緩和と同時に壁面位置の制限を課しているから,本件土地の価額を容積率の緩和を理由に増額すれば,本件施行地区の周囲にある宅地の価額を壁面位置の制限を理由に減額すべきこと
となり,権利者間で不公平が生じる旨を主張する(後記2(3)ウ参照)。しかし,上記アの主張は,本件土地の価額の算定に当たり,本件特区決定の定めた容積率
(1330%)
を本件土地の個別的要因
(公法上の規制)
として直接考慮すべきというものではなく,そのような本件特区決定がされたことにより評価基準日までに本件土地の価額が上昇したことを考慮すべきであるというものにすぎない。
また,本件特区決定は,壁面の位置制限を伴うものであるとしても,周辺地域の土地の価格を上昇させることは十分に考えられる。
(4)原告の主張する本件土地の
相当の価額
の算定方法
(評価手順及び内容)
の合理性(争点3)

本件調査報告書の合理性
本件調査報告書(乙10)は,本件再開発事業の施行地区内の宅地及び建築物の価額を評価するために作成されたものである。
しかるところ,標準地比準評価法を採用した点,近隣地域Aと同Gとの地域格差修正率を71%とした点については,合理性が認められるから,採用されるべきである。しかし,本件特区決定による影響を除外している点,標準的画地と本件土地との個別格差修正率のうち規模+5,三方路+4とした点については,合理性が認められないから,是正されるべきである。
上記の理由は,別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第1の原告の主張のとおりである。


P7鑑定書の合理性
P7鑑定書(甲19,24)は,不動産鑑定評価基準に則って標準的画地aの価格を算定しており,妥当なものである。
上記の理由は,別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第2の原告の主張のとおりである。


収用委鑑定書の合理性
収用委鑑定書(乙25)は,前提となる評価条件を誤ったために,これによる本件土地の評価額が,その正常な取引価格を大きく下回っている。上記の理由は,別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第3の原告の主張のとおりである。

(5)開発利益の反映に関する合意の存在(事情)

合意の存在
P8検討会は,中央区(都市整備部)が主催し,本件準備組合及び被告と連続性のある団体であるところ,同検討会は,施行地区内の権利者に対し,同地区内の全土地を一体化することへの貢献度に応じた開発利益を配分するものとしていた。
また,中央区は,その職員が本件準備組合及び被告の理事会に必ず出席して討議に加わり,被告に開発協力金の支払を求めるなど,本件再開発事業に関与していたところ,原告は,中央区副区長との間で平成20年6月26日付け覚書(甲2。以下本件覚書という。)を作成し,自己の意向が権利変換計画に反映されることを条件として,本件再開発事業の都市計画案に同意した。
上記の経緯を踏まえると,原告に対する未配分の開発利益は,本件土地の価額(都再法73条1項3号)に反映されるべきである。


未配分の開発利益の額
原告に帰属すべき本件再開発事業による開発利益は,本件調査報告書を前提とすると,以下の計算式により,少なくとも約99億円となる。<計算式>

従後資産(本件施設建築物の敷地)の価額:約1250億円


従前資産(本件施行地区内の宅地)の価額:約608億円


本件土地の価額:約95億円

(A-B)×C/B=約99億円
しかるに,被告は,本件再開発事業において,開発利益を従前の宅地の価額に反映させる方法ではなく,保留床価格と権利床価格で調整する方法に基づき,原告に帰属する開発利益を約79億円と算定した。
そうすると,原告に対する未配分の開発利益は,20億円を下らない。2
被告の主張
本件評価基準日における本件土地の
相当の価額
(都再法80条1項)
は,
45億2943万9800円であって,本件裁決が定めた95億3998万6000円を上回るものではない。
(1)算定方法の要旨
本件土地の相当の価額(都再法80条1項)は,収用委鑑定書(乙25,別紙7収用委鑑定書の要旨参照)に従って算定されるべきである。その理由は,(2)以下のとおりである。
原告は,本件調査報告書(乙10)の一部を自己に有利に変更するという形で,本件土地の相当の価額を算定している(上記1(1)参照)。しかし,
不動産の価格は一義的なものでない上,
不動産の鑑定評価はその結論
(最
終的な価格)と算出過程(構成要素となる具体的な数値)とが有機的に関連しているから,不動産の鑑定評価の相当性は,当該評価を全体として検討しなければならない。したがって,上記のような算定方法は,そもそも成り立たない。
(2)相当の価額の算定において開発利益を考慮することの可否(争点1)都再法73条1項3項の宅地の価額は,評価基準日において,近傍類似の土地の取引価格等を考慮して定める相当の価額(都再法80条1項),すなわち,当該宅地の所有者が当該宅地と同等の代替地を取得し得る金額をいう。ここでいう代替地とは,再開発事業が予定されていない宅地であり,再開発事業が予定される前の従前資産と同等の経済的価値を有するものを
意味することが明らかであり,代替地を取得し得る金額とは,再開発事業が予定されていない宅地の取引価格等を意味することが明らかである。そもそも,再開発事業による開発利益とは,当該宅地が当該事業の施行地区に含まれ,かつ,評価基準日後に当該事業が完成することにより,発生するものであり,市街地再開発事業が実現することによって初めて生じるものである。したがって,評価基準日までに発生した開発利益というものを想定することはできない。また,原告は,将来において再開発事業が実現するという可能性をもって,評価基準日までに発生した開発利益である旨主張するが,上記の可能性を評価対象となる土地の価格形成要因として加味することは,
それが代替地の価格形成要因ではない以上,
できないというべきである。
したがって,再開発事業による開発利益は,当該宅地の相当の価額の算定に当たり,これを考慮することはできない。
なお,被告としても,再開発事業の施行が予定されることにより評価基準日までに既に発生している値上がり分を従前資産評価に反映させることは否定しないが,それは,近傍類似の土地の取引価格を介して対象土地の評価に加味されるものであり,当該宅地の相当の価額の算定に当たっては,上記取引価格を考慮すれば足り,これとは別個に上乗せすることはできない。(3)本件土地の相当の価額の算定において本件特区決定の存在を考慮することの可否(争点2)
本件特区決定がされた事実は,以下の理由により,本件土地の相当の価額(都再法80条1項)の算定に当たって考慮すべきではない。ア
影響の発生時期
上記(2)の考え方に従えば,宅地の価額を算定するに当たっては,特定の都市計画事業を前提としない一般の都市計画の決定(例えば,高度利用地区の都市計画の決定)は考慮すべきであるが,再開発事業そのものに関する都市計画の決定は考慮すべきではない。なぜならば,後者の都市計画
決定の効果は,当該事業が完成することにより初めて顕在化するからである。
しかるところ,本件特区決定は,用途地域による容積率制限の適用除外を設ける(容積率を緩和する)ものであるが,あくまで,本件都市計画決定(再開発事業そのものに関する都市計画の決定)と一体のものとしてされている。また,本件特区決定は,上記容積率の緩和と同時に,壁面位置の制限等を課し,本件施行地区の周囲に建築することのできない宅地を帯状に設定しているところ,その目的は,本件施設建築物を建築することにある。
したがって,本件特区決定の存在は,その事実自体が評価基準日前に発生していたとしても,本件再開発事業の実現可能性を示すものにほかならず,評価基準日後に開発利益を発生させる要因(本件施設建築物の敷地の価格形成要因)にすぎない。

資金計画との関係
本件特区決定による容積率の緩和は,本件再開発事業の資金計画上の要請に基づくものである。
すなわち,本件再開発事業においては,施設建築の部分(都再法2条10項参照)を,組合員(施行地区内の宅地の所有者等)に与えられるもの(以下権利床という。)と組合員以外の第三者に与えられるもの(以下保留床という。)とに分け,保留床の処分(原価を上回る金額での売却)による収入と補助金とで事業費を賄っている。そして,本件再開発事業の資金計画上,この保留床は,本件特区決定に基づく容積率の上乗せ分により生み出されることとされている。
このような本件再開発事業の資金計画の趣旨に鑑みると,上記容積率の緩和は,本件土地の相当の価額の算定において考慮しないことが妥当である。


容積率の緩和のみを考慮することの不合理性
本件特区決定は,上記アのとおり,容積率の緩和と同時に,壁面位置の制限を課し,本件施行地区の周囲に建築することのできない宅地を帯状に設定するものである。
そうすると,本件施行地区内の宅地の評価に当たり,本件特区決定による容積率の緩和を考慮して増額すべきであるとすれば,同時に,これによる壁面位置の制限等をも考慮して大幅に減額しなければならないのであって,前者のみを抜き出して考慮するということは合理性を欠くというべきである。
また,上記のように本件特区決定による容積率の緩和に加えて壁面位置の制限をも考慮すべきであるとすれば,一部の宅地の価額が大幅に減額されることとなり,権利者間で不公平が生じることになる。

(4)原告の主張する本件土地の
相当の価額
の算定方法
(評価手順及び内容)
の合理性(争点3)

本件調査報告書の合理性
(ア)

本件調査報告書の性格
再開発事業の施行地区内の宅地の価額は,資金計画及び事業計画の立
案の基礎となり,最終的には権利変換の内容にも影響するから,施行者は,相当の価額を下回らない範囲で,参加組合員を含めた組合員の幅広い合意が得られるよう,宅地の価額を算定する必要があるのである。しかるところ,本件調査報告書(乙10)も,本件再開発事業の円滑な実現を図ることを目的として,本件再開発事業の収支,組合員の合意形成の必要性といった諸般の事情を考慮し,本件施行地区内の宅地の価額が組合員の間でバランスのとれたものとなるように作成された。したがって,本件調査報告書による本件土地の価額が,直ちに,都再法80条1項にいう相当の価額になるわけではない。

(イ)

本件調査報告書の内容の合理性
別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第1の被告の主張のとおりである。イ
P7鑑定書の合理性
P7鑑定書(甲19,24)は,標準的画地aの価格を恣意的に高位に評価しており,妥当なものではない。
上記の理由は,別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第2の被告の主張のとおりである。


収用委鑑定書の合理性
収用委鑑定書(乙25)は,本件土地の価額を適正に評価しており,妥当なものである。
上記の理由は,別紙9鑑定書等の合理性に関する当事者の主張第3の被告の主張のとおりである。

(5)開発利益の反映に関する合意について
原告は,P8検討会(α西地区まちづくり検討会)での議論状況や本件覚書の存在等から,本件再開発事業による未分配の開発利益(少なくとも20億円)が原告に帰属し,その金額が本件土地の価額に反映されるべきである旨を主張する(上記1(5)参照)が,以下の理由により失当である。ア
合意の効力
上記検討会は,被告との間に連続性を有する団体ではない。また,本件覚書は,その作成に被告が全く関与しておらず(被告はその存在を本件審理中に初めて認識した。),被告を拘束するものではない上,都再法上,何らの効力も有しない。


開発利益の反映方法
(ア)

本件再開発事業による開発利益は,事業の前後で,宅地及び建築物
の価額の合計のバランスが図られることによって生じるものであるか
ら,宅地の価額のみを取り出して考慮することはできない。
すなわち,本件再開発事業においては,事業費を賄うことができるよう,保留床と権利床の価格及び面積が設定されるが,①
保留床の売却

代金と原価との差額により生じる開発利益は,権利床の単価の減額(すなわち床面積の増加)という形で,②

権利床の時価と事業計画におけ

る単価との差額という開発利益は,開業後の収入増加という形で,それぞれ組合員に還元されている。
原告に還元される開発利益は,上記①につき25億3700万円,上記②につき約79億円
(この金額には上記①も含まれている。となる。

(イ)

確かに,再開発事業による開発利益の還元の方法としては,上記

(ア)の方法の外,開発利益を従前資産(施行地区内の宅地)の価額に上乗せする方法もある。
しかし,被告は,本件再開発事業において,事業上のリスクを負担しない多数の転出者が開発利益を先取りすることは不公平であるとの理由により,上記方法を採用しなかった。
なお,仮に本件再開発事業において上記方法が採用されたとしても,原告が開発利益の還元を受けることに変わりはない。もっとも,この方法を採用し,本件土地の価額に開発利益を上乗せした場合には,転出者にも開発利益を還元するために従後資産(本件施設建築物)の原価が高くなるから,結果として,原告に与えられる権利床の面積は,本件権利変換計画における権利床の面積と同水準又はそれ以下となる。
第4
1
当裁判所の判断
都再法73条1項3号の宅地の価額を審理判断する方法
本件土地の価額(都再法73条1項3号)は,裁決行政庁(東京都収用委員会)
が,
都再法85条3項,
土地収用法94条8項に基づき,
本件裁決により,
95億3998万6000円と定めている(前提事実(6)カ参照)。
この点,都再法73条1項3号の宅地の価額は,相当の価額(都再法80条1項)という不確定概念をもって定められているものではあるが,通常人の経験則及び社会通念に従って,客観的に認定され得るものであり,かつ,認定すべきものであって,上記相当の価額の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。
したがって,都再法85条3項,土地収用法133条2項所定の都再法73条1項3号に掲げる宅地の価額に関する訴えにおいて,裁判所は,収用委員会の当該宅地の価額に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく,証拠に基づき,評価基準日における当該宅地の相当の価額を客観的に認定し,収用委員会の裁決に定められた価額が上記認定額と異なるときは,裁決に定められた価額を違法とし,当該宅地の相当の価額を確定すべきものと解するのが相当である(最高裁平成5年(行ツ)第11号同9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号147頁参照)。そうすると,本件訴えにおいては,客観的に認定される本件土地の相当の価額(都再法80条1項)が,本件裁決が定めた価額を上回るか否かを検討すべきであって,前者が後者を上回らない限り,本件裁決を違法と判断することはできないと解される。
2
都再法80条1項にいう相当の価額の意義
再開発事業(第一種市街地再開発事業)のうち施設建築敷地に地上権が設定されない方式でされるもの(都再法111条前段,75条2項参照。以下地上権非設定型の再開発事業という。)においては,施行地区内の土地は,権利変換期日において,権利変換計画の定めるところに従い,新たに所有者となるべき者に帰属する(都再法87条1項,都再法73条1項4号等参照)。そして,
権利変換計画の定める施行地区内の宅地の価額
(都再法73条1項3号)
は,都再法80条1項により,評価基準日,すなわち,都再法71条1項又は5項の規定による30日の期間(施行地区内の宅地の所有者が権利変換を希望
しない旨を申し出ることのできる期間)を経過した日における近傍類似の土地の取引価格等を考慮して定める相当の価額でなければならない。
しかるところ,地上権非設定型の再開発事業においては,施行者は,施行地区内の宅地を有する者で,権利変換期日において当該権利を失い,かつ,当該権利に対応して施設建築の部分を与えられないもの(都再法73条1項12号参照。以下権利喪失者という。)に対し,その補償として,権利変換期日までに,上記相当の価額(ただし,物価の変動に応ずる所定の修正率を乗じる。)に,所定の利息相当額を付した金額(以下補償金という。)を支払わなければならない(都再法91条1項参照)。
また,施行者は,地上権非設定型の再開発事業の工事が完了した場合には,すみやかに,当該事業に要した費用の額を確定するとともに,その確定した額及び上記相当の価額を基準として,施設建築の部分の価額を確定した(都再法103条1項参照)上,その確定した額と,当該施設建築の部分を与えられた者(以下権利取得者という。)がこれに対応する権利として有していた施行地区内の宅地の価額とに差額があるときは,その差額に相当する金額(以下清算金という。)を徴収し,又は交付しなければならない(都再法104条1項参照)。
上記の都再法の規定に鑑みれば,地上権非設定型の再開発事業における補償金及び清算金の支払は,当該再開発事業のために宅地につき権利の変換がされる場合において,その権利変換によって当該宅地の所有者(権利取得者と権利喪失者のいずれであるかを問わない。)等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから,その金額は,権利変換の前後を通じて当該所有者の財産価値を等しくさせるよう,当該所有者が近傍において当該宅地と同等の代替地を取得することを得るに足りる金額であることを要すると解される。そして,都再法80条1項にいう相当の価額が,補償金及び清算金の額を算定する基準となることからすれば,同項は,上記の趣旨を明らかにした規
定であると解すべきであり,同項にいう相当の価額は,権利変換の前後を通じて当該宅地を有する者の財産価値が等しくなるよう,当該宅地を有する者が近傍において当該宅地と同等の代替地を取得することを得るに足りる金額であることを要するものと解される。
3
都再法80条1項にいう相当の価額の算定において開発利益を考慮することの可否(争点1)
(1)開発利益の概念等
原告は,再開発事業の対象となっている宅地につき,その価格が当該事業が予定されていることが原因となって評価基準日までの間に上昇した場合,その上昇分を開発利益として当該宅地の相当の価額(都再法80条1項)に反映すべきである旨を主張する(上記第3の1(2)参照)。この点,都再法上,開発利益の定義はなく,この語は実務において多義的に使用されているものであるが(甲25参照),差し当たりその意義を整理すれば,まず,①

開発利益とは,事業のもたらす全体の効用を指す概

念であり,粗効用-(工事費+資本コスト+用地費)として捉えるとするものがあり,これと類似するものとして,個別の事業において形成された従後資産(土地及び建物)の価値と,事業の原価たる従前資産(土地及び建物)及び事業費の合計額との差額をいうという捉え方(乙12参照)があり,次に,②

事業の施行区域内の土地の価値という観点から,開発利益とは,事
業により土地が一体利用されることによる価値の増分をいうという捉え方(甲1,17参照)があり,さらに,③

事業の施行区域の近隣の土地の価

値という観点から,開発利益とは,事業による市街地の活性化,利便性の向上等に伴う価値の増分をいうという捉え方(乙3参照)があるということができるところ,これらに加え,④

事業の施行区域内の土地の価値という観

点から,開発利益とは,都市計画等の見込み,決定等に基づく事業の完成の期待に伴う価値の増分をいうとの捉え方(甲25参照)も観念することがで
きる。そして,原告の主張する開発利益は,その主張内容に照らし,④に該当するものということができる
(以下,
これを
開発期待
と称する。。

このうち,上記①及び②の意味における開発利益は,その概念上,再開発事業の完成に伴って生じるものであるのに対し,上記③及び④の意味における開発利益ないし開発期待は,再開発事業に係る計画の実現が相当程度確実な段階に至れば,当該事業の完成の期待を反映して,需要が高まり,このような需給関係を反映して,土地の価格(客観的な交換価値)が上昇していると評価できる場合もあり得ると考えられるから,当該事業の完成前においても観念することができると解される。
そして,市街地都市再開発事業の施行地区内の宅地の相当の価額(都再法80条1項)を算定する基準となる日(評価基準日)は,原則として,再開発事業の事業計画を定めた組合の設立認可の後である(都再法80条1項,71条1項,19条1項,11条1項参照)ことに加え,評価基準日の時点では施行地区内の宅地の処分に関する制限はなく,施行地区内の宅地についても取引が成立し得ることからすれば,評価基準日における当該宅地については,その価格の上昇の局面にある可能性を一概に否定することはできないと考えられる。
(2)開発利益又は開発期待と都再法80条1項との関係
上記1のとおり,都再法80条1項の相当の価額は,再開発事業の権利変換の前後を通じて当該宅地を有する者の財産価値が等しくなるよう,当該宅地を有する者が近傍において当該宅地と同等の代替地を取得することを得るに足りる金額をいうところ,ここでいう当該宅地と同等の代替地の取得とは,評価基準日の時点におけるものを想定していることが明らかである。
そして,上記(1)①及び②の意味における開発利益は,評価基準日より後に発生したものであり,当該事業に参加しない宅地の所有者(権利喪失者)
においても当然にこれを享受し得るとする理由はないから,その者に対する補償金の額に反映させるべきではない(この点は,上記第3の1(2)のとおり,原告も争っていない。)。
これに対し,上記(1)③及び④の意味における開発利益ないし開発期待は,それに起因する土地の価格の上昇が評価基準日の時点で既に発生していると評価できる限り,権利の変換によって当該宅地の所有者が被る特別な犠牲の回復を図り,当該所有者をしてその前後を通じて等しい財産価値を保有ならしめるという都再法80条1項の趣旨(上記2参照)を踏まえると,当該宅地の相当の価額の算定において考慮する余地があると解される。この点,被告は,都再法80条1項の相当の価額において考慮できるのは,上記(1)③の意味における開発利益に限られる旨主張する(上記第3の2(2)参照)。しかしながら,都再法80条1項の趣旨に照らし,このように限定して解すべきではないことは,上記で判示したとおりである。4
本件土地の相当の価額の算定において本件特区決定の存在を考慮することの可否(争点2)
(1)原告は,本件特区決定の存在は,本件再開発事業による開発利益(開発期待)を生じさせる重要な価格形成要因として,本件評価基準日における本件土地の相当の価額(都再法80条1項)の算定に当たり考慮されるべきである旨を主張する(上記第3の1(3)参照)。
(2)検討

前提事実(3)及び(4)によれば,本件特区決定は,本件評価基準日の約2年8か月前である平成21年6月22日,本件都市計画決定(本件再開発事業に係る都市計画の決定)と同時に,かつ,被告(本件再開発事業の施行者)の前身である本件準備組合の提案に基づいてされたものであり(同(3)ア~オ参照),その内容は,本件事業計画(本件再開発事業の事業計画)に沿って,本件施行地区(本件再開発事業の施行地区)における容積
率の最高限度を1330%に緩和するとともに,壁面の位置の制限(建築物の外壁又はこれに代わる柱は別紙3-2計画図に示す壁面線を越えて建築してはならない旨の制限)を課すことなどである(同(3)イ,ウ,カ参照)そして,

その後の平成23年7月12日に被告が設立された
(同
(3)カ参照)上,平成24年3月11日の本件評価基準日を迎えたことが認められる。
なお,前提事実(4)及び(5)によれば,本件評価基準日の後における本件再開発事業の手続としては,平成24年3月29日付けで本件調査報告書が作成され(同(4)エ参照),同年12月7日に権利変換計画が認可され(同(4)キ参照),同月14日に権利変換期日が到来し(同(5)ア参照),平成25年4月1日に本件施行地区内にある建築物の解体工事が着工し(同(5)エ参照),同年10月頃に施設建築物の建築工事が着工した(同(5)カ参照)ことが認められる。

上記のとおり,本件特区決定は,本件施行地区(本件再開発事業の施行地区)における容積率の最高限度を1330%に緩和するものであり,それに伴う壁面位置の制限を考慮したとしても,本件施行地区内の土地全体の利用効率を増進する規制緩和であることは明らかである。そうすると,本件再開発事業の完成前の段階においても,本件特区決定による容積率の緩和が,同事業に係る計画の実現が相当程度確実な段階に至っているとの期待を反映して,本件施行地区内の各土地の価格(客観的な交換価値)の上昇をもたらしていると評価する余地があることを一概に否定することはできず,この意味において,上記3(1)④の開発期待をもたらし得るというべきである。
しかるに,上記3(2)で判示したとおり,上記の開発期待は,それに起因する土地の価格の上昇が評価基準日の時点で既に発生しているとすれば,その部分については,権利の変換によって当該宅地の所有者が被る特
別な犠牲の回復を図り,当該所有者をしてその前後を通じて等しい財産価値を保有ならしめるという都再法80条1項の趣旨(上記2参照)を踏まえると,当該宅地の相当の価額の算定において考慮する余地があると解され,本件特区決定がもたらし得る開発期待についても,同様に解することが相当である。
したがって,原告の上記主張は,上記の限度で採用することができる。ウ
被告は,①

本件特区決定の存在は本件再開発事業の実現可能性を示す

ものにほかならず,本件評価基準日より後に開発利益を発生させるにすぎないから,本件土地の相当の価額の算定において考慮すべきでない旨を主張し,②

本件特区決定に基づく容積率の上乗せ分によって保留床を

生み出すという本件再開発事業の資金計画の趣旨に鑑みると,この容積率の緩和は本件土地の相当の価額の算定において考慮すべきでない旨を主張する(上記第3の2(3)ア及びイ参照)。
しかし,上記の被告の主張は,上記3で判示した開発利益の概念の多義性と都再法80条1項との関係を正解しないものであり,採用することはできない。
5
原告の主張する本件土地の
相当の価額
の評価手順の合理性
(争点3の1)
(1)原告は,
本件調査報告書における本件土地の
相当の価額
の評価内容は,
一部を除き合理的であり,同報告書の誤りを修正すると,別紙8-1原告による本件土地の価額の算定方法のとおり,本件土地に係る上記相当の価額は,本件調査報告書上の価額である95億3998万6000円を超える121億8255万円となると主張する
(上記第3の1(1),
(4)ア参照)

(2)評価の手順について

前提事実(4)及び証拠(乙10)によれば,本件調査報告書における本件土地を含む従前資産の評価は,被告が定めた従前資産評価基準等に従って行われたとされているものである。

まず,従前資産評価基準(別紙2-2の1参照)においては,権利変換する土地の価額は正常な取引価格による(5条1項)ものとされ,この正常な取引価格は,近傍類地(近傍地及び類地を含む。)の取引価格を基準とし,これらの土地及び権利変換する土地について,街路条件,交通・接近条件,行政的条件,画地条件及びその他条件等の土地価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定し(6条1項),上記正常な取引価格を決定するときは,公示された標準地の価格を規準とする(同条2項)
ものとされている
(なお,
公示された標準地の価格を基準とする
ことの意義については,地価公示法11条,8条参照)。
また,従前資産評価基準細則(別紙2-2の2参照)においては,一画の土地
(画地)
は,
原則として標準価格比較法により評価し(第1の3),
各画地の価額を標準価格(標準的画地の価格)から比準して評価する場合の各画地の増減価率は,街路条件,交通・接近条件,環境条件,行政的条件,画地条件及びその他条件に係る個別的要因を総合的に比較考量し,本件施行地区の実情に合致するように適正に定める(第1の4)ものとされている。
そして,上記の標準価格比較法は,損失補償基準の別記1土地評価事務処理要領(甲12の2)4条にいう標準地比準評価法と同一の手法であると解され(甲11参照),同要領によれば,標準地比準評価法は,①用途的地域を地域的特性に着目して同一状況地域に区分する,②
同一状

況地域ごとに一の標準地を選定する,③

標準地

標準地を評価する,④

の評価格から比準して各画地の評価格を求めるという手順をとる(5条)ものとされている。
以上のような従前資産評価基準等による従前資産の評価方法は,都再法80条1項の趣旨に沿うものであると解される。したがって,本件土地を含む従前資産の評価手順が上記の従前資産評価基準等に従ったものであ
り,その内容においても合理性を有するのであれば,その評価額が,同項にいう相当の価額に当たるということができると解される。

これに対し,被告は,本件調査報告書に関し,本件再開発事業の収支,組合員の合意形成の必要性といった諸般の事情を考慮し,都再法80条1項にいう相当の価額を下回らない範囲で宅地の価額を算定したものにすぎず,本件調査報告書による本件土地の価額が,直ちに上記の相当の価額になるわけではない旨主張する(上記第3の2(4)ア参照)。しかしながら,本件調査報告書における本件土地を含む従前資産の評価手順自体は,従前資産評価基準等に従っており,都再法80条1項の趣旨に沿うものといえることは上記判示のとおりであるから,被告の上記主張はその限度で理由がない。


以上を踏まえ,以下では,本件調査報告書における従前資産の評価手順を前提として,原告が修正を主張する点及びそのまま採用すべきであると主張する点につき,その評価内容の合理性を検討する。

6
原告の主張する本件土地の
相当の価額
の評価内容の合理性
(争点3の2)
(1)標準的画地aの標準価格の査定について

原告は,本件調査報告書にいう近隣地域Aの標準的画地aの標
準価格(1050万円/㎡)に関し,P7鑑定書(甲19,24)に依拠して,別紙8-2P7鑑定書の要旨のとおり,標準的画地aの標準価格を1260万円/㎡と算定すべきである旨主張するので,以下,P7鑑定書の合理性を検討する。


地域要因の比較における開発期待の考慮について
P7鑑定書は,本件特区決定による将来の開発可能性が標準的画地aの価格形成要因となるとして,取引事例比較法による比準価格の算定(別紙8-2の6(1)参照)及び公示規準価格の算定(同(3)参照)に当たり,標準的画地aと取引事例(A~C)又は公示地との間の地域要因の比較の中
で,いずれも,環境条件の将来性として,5%の格差を付してい
る(甲23参照)。
この点,上記4で判示したとおり,本件特区決定による開発期待は,それに起因する土地の価格の上昇が評価基準日の時点で既に発生していると評価できる限り,当該宅地の相当の価額の算定において考慮する余地があると解される。
そこで検討すると,P7鑑定書において標準的画地aと比較の対象となった取引事例
(別紙8-2の6(1)参照)
は,
中央区ζ
(A)港区η

(B)
及び中央区θ(C)にそれぞれ所在するものであり,また,P7鑑定書において考慮の対象となった公示地(同(3)参照)は,中央区ιに所在し,標準的画地aから100m程度離れているものである。しかるに,取引事例Aや公示地が属する近隣地域であるβ駅周辺には,日本を代表する高度商業地域が広がり,λ,μ,γエリア等では近年再開発等が多く行われ,高度な商業集積が見られ,近年再開発事業等による建物建替等が進んでおり,既存ビルを中心とした従来の街並みから徐々に耐震性能や事務所機能等の優れた高スペックの大型の事務所ビルが増えてゆくものと予測されていること(乙10,25参照)に照らすと,再開発事業等に伴う容積率の緩和といった将来の開発可能性による期待が土地の価格に対して及ぼす影響の有無及びその程度につき,ν通り沿いの高度商業地域として十分に成熟している標準的画地aの所在地域と,上記の取引事例対象地や公示地との間において,有意の差を明確に見い出し得るのかどうかは必ずしも明らかではない。そうすると,P7鑑定書が,上記の地域要因の比較において,標準的画地aにつき,本件特区決定に係る将来の開発可能性(開発期待)を価格形成要因として考慮したことは,およそ不合理なものと断じることまではできないが,十分に合理性を有するものとまではいえない。また,P7鑑定書を補足する回答意見書(甲23)によっても,不動産
鑑定の手法として,容積率の緩和自体を捉えるのではなく,再開発事業等に伴う将来の開発可能性(開発期待)といった要素が施行地区内の宅地の価格に及ぼす影響を捉えるという前提において,当該影響を数量的に把握する方法が確立している状況にあることはうかがわれないところであり,また,施行地区内の宅地の評価基準日の直前における取引事例に基づく相場感といったものがあることもうかがわれないことを勘案すると,P7鑑定書が,標準的画地aと比較の対象となった取引事例等との間で,将来性として5%という僅少とはいえない格差を付するべきであるとしたことについても,十分に合理性を有するものとまではいえないと解される。ウ
取引事例比較法の適用について
被告は,P7鑑定書が取引事例比較法の適用に当たり環境条件(業務商業性等)の格差が著しく大きい取引事例を採用しているから,不動産鑑定評価基準所定の要件(要因比較の可能性)を備えたものであるとはいい難いなどと主張する(上記第3の2(4)イ,別紙9第2の2(1)参照)。確かに,
P7鑑定書(甲19別表1-1)
は,主に業務環境(環境条件)
の相違を理由に,標準的画地aと取引事例(事例地AないしC。別紙8-2の6(1)参照)との格差を+39%ないし+59%としていることが認められる。
しかし,近隣地域Aは,β駅周辺という我が国を代表する高度商業施設であること(甲19,23,乙10,25参照)からすると,要因(殊に環境条件)が完全に一致する取引事例が得られなかったとしても,およそ不自然であるとまではいえない。このことは,①

本件調査報告書が,主

に業務環境(環境条件)の相違を理由に,標準的画地aと取引事例との格差を+19%ないし+41%(取引事例を100とした場合)としていること(別紙6-1の3(2),乙10別表②参照),②
収用委鑑定書が,

主に顧客通行量・繁華性等(環境条件)の相違を理由に,本件土地に係る
標準的画地と取引事例との格差を-15%ないし+35%(取引事例を100とした場合)としていること(別紙7-1の5(1),乙25別表Ⅰ参照)からも裏付けられる。
そうすると,P7鑑定書による取引事例(事例地A~C)の選択それ自体が,およそ不合理なものであるとまで断じることは困難である。しかるところ,標準的画地aと上記取引事例との地域要因格差率(100:41~61)は,回答意見書(甲23)によれば,両者の路線価の比率(事例地Aにつき約100:40,同Bにつき約100:56,同Cにつき約100:40)と同水準であるといえなくもない。また,P7鑑定書の比準価格(1260万円/㎡)は,本件特区決定による影響(上記ア参照)を考慮して将来性5%の格差を付した公示規準価格(1110万円/㎡)と均衡がとれていないとまで断じることもできない。
なお,被告は,事例地Aが標準的画地aよりも街路条件(幅員)で3%劣るというP7鑑定書の判定は不当であると主張する(上記第3の2(4)イ,別紙9第2の2(2)参照)が,回答意見書(甲23)及び弁論の全趣旨に照らし,採用することができない。
以上によれば,P7鑑定書における取引事例比較法の適用(及びこれに基づく比準価格)は,およそ不合理なものとまで断じることは困難といわざるを得ない。

収益還元法の適用について
被告は,P7鑑定書が収益還元法を適用するに当たって査定した賃料水準が高位である上,将来の賃料上昇を賃料と利回りとで二重に計上しており,不当であるなどと主張する(上記第3の2(4)イ,別紙9第2の3(2)参照)。
確かに,1㎡当たりの月額支払賃料(共益費を含む。)ついて,P7鑑定書(甲19別表2)は,1階(店舗)が1万7090円,2階から10
階まで(事務所)が9190円と査定したところ,意見書(乙28)別表①によれば,本件評価基準日付近の賃貸事例は,店舗が5198円ないし1万3613円,事務所が4191円ないし8470円であり,仲介業者のヒアリング結果(ν通り沿いのもの)は,店舗が1万2100円ないし1万3600円,事務所が7400円ないし7700円であることが認められる。
しかし,上記賃貸事例には,築年数が相当古いものが含まれている(例えば,店舗の事例番号2は昭和35年築であり,事務所の事例番号8は昭和39年築である。)上,上記ヒアリング結果も,その金額の合理性を裏付ける的確な資料が提出されていないことなどからすると,それらが比較の対象として適切なものといえるかが必ずしも明らかではない。しかも,年間支払賃料(共益費を含む。)の総額についてみれば,P7鑑定書(甲19別表2)が3億8804万8140円であるのに対し,本件調査報告書(乙10)は3億7925万7678円であって,前者が後者よりも約2.3%高位であるにとどまる。
これらに照らすと,P7鑑定書における賃料の査定が不当に高位であるとまで断じるのは困難といわざるを得ない。
また,回答意見書(甲23)によれば,P7鑑定書は,賃料水準の将来の上昇を賃料の変動率(還元利回りを算出するための数値)の中でのみ考慮したと認められるから,これを二重に計上したとはいえない。以上のとおり,P7鑑定書における収益還元法の適用は,およそ不合理なものと断じることはできない。

床価格の水準について
被告は,P7鑑定書に基づく標準的画地aに係る土地建物一体の床価格(坪単価)が,P9の公表事例における新築のSクラスのビルの坪単価,及び本件評価報告書における本件施設建築物の坪単価を上回ることから
しても,P7鑑定書の評価額は不当に高位であると主張する(上記第3の2(4)イ,別紙9第2の4(2)参照)。
確かに,証拠によれば,①

標準的画地a及び同画地上に想定される建

物を一体としてみた場合における床価格は,P7鑑定書の評価額(1260万円/㎡)を前提とすると,768万7685円/坪となること(乙28参照),②

平成23年2月から平成25年12月までに東京都心3区

(千代田区,
中央区,
港区)
における取引事例は,
高額のものであっても,
新築のSクラスビル(特にオフィス立地として認知度の高い地域における基準階面積500坪以上等の条件を満たすもの)で700万円台半ば/坪であること(乙28別表③,乙34参照),③
本件変更報告書(前提事

実(5)オ参照)において,本件施設建築物の床価格が約731万6100円/坪
(221万7000円/㎡)
とされていること
(乙11,
28参照)
が認められる。
しかし,上記①の床価格が,上記②の取引事例の最高値及び上記③の床単価から,著しくかい離した金額とまで断じることはできない。しかも,上記③の床単価は,本件施設建築物の総額を面積で除したものにすぎず,本件変更報告書(乙11)によれば,本件施設建築物の床単価のうち最高額のもの(区画番号3101)は,約814万1100円/坪(246万7000円/㎡)に上ることが認められるのである。
以上からすると,P7鑑定書に基づく標準的画地aに係る土地建物一体の床価格(坪単価)に照らしても,その評価額が不当に高位であるとまでは断じ難い。

小括
以上のとおりであるから,標準的画地aの標準価格を1260万円/㎡と算定したP7鑑定書は,およそ不合理なものとまで断じることは困難であるが,十分に合理性があるとまではいえないと解される。

(2)近隣地域AとGとの地域格差修正率について

原告の主張は,本件調査報告書が近隣地域AとGとの地域格差修正率を71%としていることに依拠している(別紙8-1の3参照)ことから,その合理性を検討する。


表地と裏地との格差について
原告は,再開発予定地における表地と裏地との格差率が,商業地については,一般的に,表地10に対し裏地7又は6とされていることから,近隣地域AとGとの地域格差修正率71%は合理的であると主張する(上記第3の1(4)ア,別紙9第1の2(1)参照)。
この点,商業地については,一般的に,表地と裏地との格差率が,前者10に対し後者7又は6といわれることがある旨を指摘した不動産鑑定士の執筆による文献(甲20)があるが,上記文献は,表地と裏地との格差率の算定に当たっては,現地における通行量,店舗の特徴,各店舗との関係等の実査が必要であると指摘しているのであって,上記の割合が絶対的に正しいものとしていないことは明らかである。
そこで,近隣地域A(標準的画地a)と近隣地域G(標準的画地g)とを比較すると,証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

平成24年度の路線価は,近隣地域Aが896万円/㎡,近隣地域
Gが210万円/㎡であった。(乙31)
(イ)

平成24年1月1日時点における公示価格は,ν通り沿いの公示地中央○(中央区ι)が1200万円/㎡,ξ通沿いの公示地○(中央区π)が555万円/㎡であった。(乙10,25,30)(ウ)

標準的画地aの接する道路(ν通り。以下道路aという。)は,

幅員27.23mの両側歩道付舗装道路(国道)である。他方,標準的画地gの接する道路(ξ通り。以下道路gという。)は,幅員11mの両側歩道付舗装道路(区道)である。(乙10)

(エ)

平成18年9月26日の時点における自動車交通量(12時間当た
り)道路aが1万4173台であり,
は,
道路gが3178台であった。
(乙13)
(オ)

中央区が平成20年11月に策定したβ駅前地域のまちづくりガイドラインは,道路aはにぎわい骨格軸と,道路gは地区内回遊道路とそれぞれ位置付けていた。(乙13)上記認定事実のとおり,近隣地域Gの路線価が同Aの約23.4%にとどまる上(なお,原告が依拠しているP7鑑定書を作成したP7不動産鑑定士も,路線価は客観的な物差しとして決して小さくない信頼性が認められるとしているところである。甲23参照),ξ通り沿いの公示価格がν通り沿いの約46.3%にとどまっていることに加え,道路g(ξ通り)の幅員が道路a(ν通り)の約40%に,道路gの自動車交通量(12時間当たり)は道路aの約22.4%にそれぞれとどまり,中央区のガイドラインも,道路aのにぎわい骨格軸に対し,道路gを地区内回遊道路と位置付けるにとどまっていることを勘案すると,裏地(背後地)である近隣地域G(標準的画地g)は,表地である近隣地域A(標準的画地a)よりも街路条件(幅員)及び環境条件(繁華性,業務環境等)が著しく劣っており,
両者の地域格差修正率は,
容積率の差による修正率6%
(別
紙6-1の4参照)を含めても,一般的な表地と裏地との格差(30~40%)よりも明らかに大きいと認めるべきであり,近隣地域AとGとの地域格差修正率は,最大でも50%を上回ることはない(標準的画地aの標準価格を100とした場合には同gの標準価格は50以下である)といわざるを得ない。

近隣地域Fに係る地域格差修正率との整合性について
原告は,近隣地域AとFとの地域格差修正率62%との整合性からしても,近隣地域AとGとの地域格差修正率71%は合理的であると主張する
(上記第3の1(4),別紙9第1の2(1)参照)。
確かに,標準的画地aとgとの地域格差修正率(71%)と同aとfとのそれ(62%)とは,標準的画地gとfの環境条件等を勘案すれば,整合性がとれている旨の同不動産鑑定士の意見書(甲22)がある。しかし,上記意見書は,標準的画地aとfとの地域格差修正率が62%であることを前提とした意見であって,その合理性自体について何ら触れていないところ,上記地域格差修正率が62%であることを当然の前提とすることはできない。
そして,本件調査報告書(別紙6-2,乙10参照)によれば,近隣地域Fも同Gと同様にξ通り沿いであるから,上記アからすると,この修正率も50%を超える(標準的画地aの標準価格を100とした場合には同fの標準価格は50を下回る)といわざるを得ない。

小括
そうすると,本件調査報告書が近隣地域AとGとの地域格差修正率を71%としていることには,必ずしも合理性が認められず,上記修正率は,高く見積もったとしても,50%を上回ることはないといわざるを得ない。なお,①

再開発事業の実務家向けの文献においては,従前資産の所有

者に対して開発利益を分配することができるとするものがあること(甲14,
15,
乙23参照)②


本件調査報告書の作成を依頼した被告自身,

同報告書に関し,本件再開発事業の円滑な実現を図ることを目的として,本件再開発事業の収支,組合員の合意形成の必要性といった諸般の事情を考慮し,本件施行地区内の宅地の価額が組合員の間でバランスのとれたものとなるように作成されたものである旨主張していること(上記第3の2(4)ア参照),③

原告の主張によっても,原告は,自己の意向が権利変

換計画に反映されることを条件として,本件再開発事業の都市計画案に同意したというのであり(上記第3の1(5)参照),その後,本件調査報告
書が作成される以前の段階において,被告が原告に対して従前資産の評価の見直しの提案
(標準画地や個別格差の修正)
を行うなど
(甲21参照)

原告と被告との間で従前資産の評価に関する折衝があったことがうかがわれること,④

本件調査報告書のうち従後資産の部分については,権利

床の単価が時価より低く設定され,それにより原告に対して開発利益79億円が還元される仕組みとされていること(甲6,弁論の全趣旨)に照らすと,本件調査報告書における近隣地域AとGとの地域格差修正率については,組合員の合意形成の必要性を考慮して設定されたとみることが自然である(なお,このようにして設定された本件土地の価格は,都再法80条1項の相当の価額を上回る限り,同項に違反するものとはならないと解されるところである。)。
(3)標準的画地gと本件土地との個別格差修正率について

原告は,本件調査報告書にいう標準的画地gと本件土地との個別格差修正率(合計109%)に関し,合計116%と算定すべきである旨主張する(別紙8-1の4参照)ので,その合理性を検討する。


規模
原告は,本件調査報告書は本件土地(1173.43㎡)の規模による個別格差修正率として+5を採用したが,修正率を画地面積の増加に応じて逓増させる考え方を採用すれば,1200㎡の画地の修正率である+10を採用すべきであるなどと主張する(上記第3の1(4)ア,別紙9第1の4(1)ア参照)。
この点,本件土地が存する地域の比準表(乙28別表④)は,規模の増減価率として,標準的画地g(500㎡)を規準とした場合において,600㎡以上1200㎡未満の画地につき+5と,1200㎡以上2000㎡未満の画地につき+10とそれぞれ定めている。もっとも,国土庁土地局地価調査課監修土地価格比準表(乙32)第1の7によれば,上記
比準表が示されている格差率は,上限値又は下限値であり,基準地及び対象地に係る地域要因及び個別的要因の実態に応じ,格差率に係る数値の範囲内において適宜判断し適用するものとされている。
しかるところ,


本件土地の面積が1200㎡
(格差率+5)
を26.

57㎡しか下回っていないこと,②

本件調査報告書は,本件土地より約

100㎡広い取引事例2(1282㎡。別紙6-1の3(2)参照)については,規模+10の格差を付していること(乙10別表②参照),③

告においても,平成19年9月の時点では,本件土地の規模による格差率が+10であると判断していたこと
(甲21参照)
などを総合考慮すると,
原告の上記主張がおよそ不合理であるとまで断じることはできない(甲22参照)。
これに対し,被告は,上記比準表の格差は,当該宅地の面積に対応して与えられることとなる施設建築の部分の有効面積に基づいて設けられたから,合理的なものである旨主張する(上記第3の2(4)ア(イ),別紙9第1の4(1)イ参照)。しかし,このような考え方は,上記土地価格比準表にいう地域要因又は個別的要因の実態に応じた修正に含まれるかが明らかでないのみならず,
権利喪失者
(施設建築の部分を与えられない者)
に対する補償金の金額の算定根拠にもなる都再法80条1項の相当の価額(上記2参照)の算定方法として合理的であると解すべき根拠もにわかに見いだし難い。
そうすると,原告の上記主張がおよそ不合理であるとまで断じることはできない。

三方路
原告は,本件調査報告書は本件土地(1173.43㎡)の三方路による個別格差修正率として+4を採用したが,取引事例2(+5)との均衡からすれば,視認性・側道の状況等を勘案して+1の修正を施し,+5を
採用すべきであるなどと主張する(上記第3の1(4)ア,別紙9第1の4(2)ア参照)。
この点,本件土地が存する地域の比準表(乙28別表④)は,三方路の格差率として,1000㎡以下の画地につき+5と,1000㎡超の画地につき+4とそれぞれ定めている。もっとも,上記比準表は,視認性・側道の状況等を勘案して上記格差率を修正することができると定めている。しかるところ,本件調査報告書(乙10別表②参照)は,三方路の取引事例2(1282㎡,別紙6-1の3(2)参照)について,視認性・側道の状況等を勘案して+1の修正を施し,三方路+5の格差を付したものと認められる。そして,意見書(甲22)及び弁論の全趣旨によれば,上記取引事例2は,三方路の幅員が南東約27m,南西約8m,北西約8mであるが,正面道路(南東)は正面に歩道橋があるため車両が直接出入りすることができず,側道(南西)は系統連続性が劣るT字路であって,背面道(北西)の向かい側の土地は自転車保管場所等の低利用地であることが認められる。
これに対し,本件調査報告書(乙10)及び収用委鑑定書(乙25)によれば,本件土地(1173.43㎡)は,三方路の幅員が北西約11.0m,南西約8.0m,北東約7.3mであり,いずれも系統連続性は良好である上,車両の出入りにも特段の支障がないものと認められる。以上を総合考慮すると,
本件土地は,
取引事例2と規模が同程度であり,
かつ,視認性・側道の状況等でも劣っているとは認め難いから,原告の上記主張がおよそ不合理であるとまで断じることはできない。
この点,被告は,取引事例2につき,側道と背面道の存在によって大幅に利便性や建物レイアウト上の多様性が増すから,通常の場合よりも増加の程度が大きく,
本件土地とは状況が異なる旨主張する
(上記第3の2(4)
ア(イ),別紙9第1の4(2)イ参照)が,これを裏付ける的確な証拠がな
く,上記で認定したところに照らすと,採用することができない。なお,収用委鑑定書も,標準画地(300㎡)に対する本件土地の三方路による個別格差修正率を+8と査定しているところである(別紙7-1の3(2),乙25参照)。

小括
以上のとおりであるから,標準的画地gと本件土地との個別格差修正率116%とした原告の主張は,およそ不合理なものとまで断じることは困難といわざるを得ない。

(4)まとめ
以上によれば,別紙8-1原告による本件土地の価額の算定のうち,①

近隣地域Aの標準的画地aの標準価格を1260万円/㎡とした点(同
別紙2,上記(1)参照),及び,②

近隣地域Gの標準的画地gと本件土地

との個別格差修正率を116%とした点(同別紙4,上記(3)参照)については,その合理性を一概に否定することまではできない。
しかし,同別紙のうち,近隣地域AとGとの地域格差修正率を71%とした点(同別紙3,上記(2)参照)については,同修正率が最大でも50%を上回ることはないと考えられる以上,その合理性を認めることはできない。7
本件土地の価額(本件裁決の適法性)
以上によれば,仮に原告の主張する算定方法(別紙8-1原告による本件土地の価額の算定方法参照)のうち,その合理性を一概には否定できない部分を前提に,かつ,その合理性を認め難い部分に修正を加えて本件土地の価額を算定しても,その価額は85億7542万6440円を超えない(後記計算式参照)。
<計算式>
標準的画地aの価格:1260万円/㎡(上記6(1)参照)
×

地域格差修正率(最高値):50%(上記6(2)参照)

×

個別格差修正率:116%(上記6(3)参照)

×

地積:1173.43㎡



85億7542万6440円

そうすると,本件土地の価額(都再法73条1項3号),すなわち,本件評価基準日(平成24年3月11日)における本件土地の相当の価額(都再法80条1項)は,本件裁決の定めた95億3998万6000円を上回らないこととなる。
したがって,その余の点につき判断するまでもなく,本件裁決は適法であるというべきである。
8
結論
よって,原告の各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用の上,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部

裁判長裁判官

谷口豊
裁判官

工藤哲郎
裁判官

和久一彦
(別紙2-1)
関係法令の定め

1
都市再開発法(以下都再法という。)

(定義)
2条

この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。

宅地

公共施設の用に供されている国,地方公共団体その他政令で定め

る者の所有する土地以外の土地をいう。

施設建築物

市街地再開発事業によって建築される建築物をいう。


施設建築敷地


施設建築物の一部

市街地再開発事業によって造成される建築敷地をいう。
建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第

69号)第2条第1項に規定する区分所有権の目的たる施設建築物の部分(同条第4項に規定する共用部分の共有持分を含む。)をいう。

建築施設の部分

施設建築物の一部及び当該施設建築物の存する施設

建築敷地の共有持分をいう。
(認可)
11条
1項

第一種市街地再開発事業の施行区域内の宅地について所有権又は借地
権を有する者は,5人以上共同して,定款及び事業計画を定め,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。
2項

前項に規定する者は,事業計画の決定に先立って組合を設立する必要がある場合においては,同項の規定にかかわらず,5人以上共同して,定款及び事業基本方針を定め,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の認可を受けて組合を設立することができる。

3項

前項の規定により設立された組合は,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事の認可を受けて事業計画を定めるものとする。

(認可の公告等)
19条
1項

都道府県知事は,第11条第1項又は第3項の規定による認可をしたときは,遅滞なく,国土交通省令で定めるところにより,組合の名称,事業施行期間,
施行地区
(施行地区を工区に分けるときは,
施行地区及び工区。
以下この条において同じ。)その他国土交通省令で定める事項を公告し,かつ,国土交通大臣及び関係市町村長に施行地区及び設計の概要を表示する図書を送付しなければならない。

(権利変換を希望しない旨の申出等)
71条
1項

…第19条第1項の公告…があったときは,施行地区内の宅地の所有者,その宅地について借地権を有する者又は施行地区内の土地に権原に基づき建築物を所有する者は,その公告があった日から起算して30日以内に,施行者に対し,第87条又は第88条第1項及び第2項の規定による権利の変換を希望せず,自己の有する宅地,借地権若しくは建築物に代えて金銭の給付を希望し,又は自己の有する建築物を他に移転すべき旨を申し出ることができる。

5項

第1項の期間経過後6月以内に第83条の規定による権利変換計画の
縦覧の開始…がされないときは,当該6月の期間経過後30日以内に,第1項若しくは第3項の規定による申出を撤回し,又は新たに第1項若しくは第3項の規定による申出をすることができる。(以下略)
(権利変換計画の決定及び認可)
72条
1項

施行者は,前条の規定による手続に必要な期間の経過後,遅滞なく,施
行地区ごとに権利変換計画を定めなければならない。この場合においては,国土交通省令で定めるところにより,…組合…にあっては都道府県知事の認可を受けなければならない。
(権利変換計画の内容)
73条[111条後段による読替え後のもの]
1項

権利変換計画においては,国土交通省令で定めるところにより,次に掲げる事項を定めなければならない。

施行地区内に宅地,借地権又は権原に基づき建築物を有する者で,当該権利に対応して,施設建築の部分を与えられることとなるものの氏名又は名称及び住所


前号に掲げる者が施行地区内に有する宅地,借地権又は建築物及びその価額


第2号に掲げる者に前号に掲げる宅地,借地権又は建築物に対応して与えられることとなる施設建築の部分の明細及びその価額の概算額
十二

施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有す

る者で,
この法律の規定により,
権利変換期日において当該権利を失い,
かつ,当該権利に対応して,施設建築の部分又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないこととなるものの氏名又は名称及び住所,失われる宅地若しくは建築物又は権利並びにその価額
(施設建築敷地)
75条
2項

権利変換計画は,施設建築敷地には施設建築物の所有を目的とする地上権が設定されるものとして定めなければならない。

(宅地等の価額の算定基準)
80条[111条後段による読替え後のもの]
1項

第73条1項3号,第11号又は第12号の価額は,第71条第1項又
は第5項…の規定による30日の期間を経過した日における近傍類似の土地,近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。(権利変換計画の縦覧等)
83条
1項

個人施行者以外の施行者は,権利変換計画を定めようとするときは,権利変換計画を2週間公衆の縦覧に供しなければならない。(以下略)
(価額についての裁決申請等)
85条[111条後段による読替え後のもの]
1項

第73条第1項第3号…又は第12号の価額について第83条第3項
の規定により同条第2項の意見書を採択しない旨の通知を受けた者は,その通知を受けた日から起算して30日以内に,収用委員会にその価額の裁決を申請することができる。
3項

土地収用法第94条第3項から第8項まで,第133条及び第134条の規定は,第1項の規定による収用委員会の裁決及びその裁決に不服がある場合の訴えについて,準用する。この場合において必要な技術的読替えは,政令で定める。

4項

第1項の規定による収用委員会の裁決及び前項の規定による訴えに対
する裁判は,権利変換計画において与えられることと定められた施設建築の部分には影響を及ぼさないものとする。
(権利変換期日における権利の変換)
87条
1項

施行地区内の土地は,権利変換期日において,権利変換計画の定めるところに従い,新たに所有者となるべき者に帰属する。(以下略)

(補償金等)
91条[111条後段による読替え後のもの]

1項

施行者は,施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有する者で,この法律の規定により,権利変換期日において当該権利を失い,かつ,当該権利に対応して,施設建築の部分又は施設建築物の一部についての借家権を与えられないものに対し,その補償として,権利変換期日までに,第80条第1項の規定により算定した相当の価額に同項に規定する30日の期間を経過した日から権利変換計画の認可の公告の日までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額に,当該権利変換計画の認可の公告の日から補償金を支払う日までの期間につき年6パーセントの割合により算定した利息相当額を付してこれを支払わなければならない。この場合において,その修正率は,政令で定める方法によって算定するものとする。

(施設建築の部分の価額等の確定)
103条[111条後段による読替え後のもの]
1項

施行者は,第一種市街地再開発事業の工事が完了したときは,すみやかに,当該事業に要した費用の額を確定するとともに,政令で定めるところにより,その確定した額及び第80条第1項に規定する30日の期間を経過した日における近傍類似の土地,近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として,施設建築の部分を取得した者又は施行者の所有する施設建築物の一部について第77条第5項ただし書の規定により借家権が与えられるように定められ,第88条第5項の規定により借家権を取得した者ごとに,施設建築の部分の価額又は施行者が賃貸する施設建築物の一部の家賃の額を確定し,これらの者にその確定した額を通知しなければならない。

(清算)
104条[111条後段による読替え後のもの]

1項

前条第1項の規定により確定した施設建築の部分の価額とこれを与え
られた者がこれに対応する権利として有していた施行地区内の宅地,借地権又は建築物の価額とに差額があるときは,施行者は,その差額に相当する金額を徴収し,又は交付しなければならない。(以下略)
111条

施行者は,第75条第2項の規定により権利変換計画を定めることが
適当でないと認められる特別の事情があるときは,同項の規定にかかわらず,施設建築敷地に地上権(第109条の2第3項に規定する地上権を除く。)が設定されないものとして権利変換計画を定めることができる。この場合においては,第76条,第77条第2項後段及び第3項並びに第88条第1項の規定は適用せず,次の表の上欄に掲げる規定の同表中欄に掲げる字句は,同表下欄に掲げる字句に読み替えて,これらの規定を適用する。(以下略)

2
都市再開発法施行令(以下都再令という。)

(価額についての裁決申請等について土地収用法を準用する場合の読替え)33条

都再法第85条第3項の規定による技術的読替えは,次の表のとおりとする。(以下略)

3
土地収用法

(前3条による損失の補償の裁決手続)
94条[都再令33条による読替え後のもの]
3項

都再法(昭和44年法律第38号)第85条第1項の規定による裁決を申請しようとする者は,国土交通省令で定める様式に従い,左に掲げる事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければならない。一
裁決申請者の氏名及び住所


施行者の名称及び事務所の所在地


市街地再開発事業の名称


都再法第73条第1項の権利変換計画において定められた同項第3号,第11号又は第12号に掲げる宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利及びその価額


前号に掲げる宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利の価額の見積り及びその内訳


都再法第83条第2項の規定により提出した意見書の内容及び同条第3項の規定により施行者のした通知の内容

5項

収用委員会は,第3項の規定による裁決申請書を受理したときは,前項において準用する第19条第2項の規定により裁決申請書を却下する場合を除くの外,第3項の規定による裁決申請者及び裁決申請書に記載されている施行者にあらかじめ審理の期日及び場所を通知した上で,審理を開始しなければならない。

6項

第50条及び第5章第2節(第63条第1項を除く。)の規定は,収用委員会が前項の規定によって審理をする場合に準用する。(以下略)
7項

収用委員会は,都再法第85条第1項の規定による裁決の申請が都再法の規定に違反するときは,裁決をもって申請を却下しなければならない。
8項

収用委員会は,前項の規定によって申請を却下する場合を除くの外,都再法第73条第1項第3号,第11号又は第12号に掲げる宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利の価額について裁決しなければならない。この場合において,収用委員会は,裁決申請者及び施行者が裁決申請書又は第6項において準用する第63条第2項の規定による意見書若しくは第6項において準用する第65条第1項第1号の規定に基いて提出する意見書によって申し立てた範囲をこえて裁決してはならない。

(訴訟)
133条[都再令33条による読替え後のもの]

2項

収用委員会の裁決のうち都再法第73条第1項第3号,第11号又は第12号に掲げる宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利の価額に関する訴えは,裁決書の正本の送達を受けた日から6月以内に提起しなければならない。

3項

前項の規定による訴えは,これを提起した者が施行者であるときは裁決申請者を,裁決申請者であるときは施行者を,それぞれ被告としなければならない。

4
都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)

(都市再生特別地区)
36条
1項

都市再生緊急整備地域(注)のうち,都市の再生に貢献し,土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途,容積,高さ,配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域については,都市計画に,都市再生特別地区を定めることができる。
(注)都市再生緊急整備地域とは,都市の再生の拠点として,都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域として政令で定める地域をいう(2条3項)。

2項

都市再生特別地区に関する都市計画には,都市計画法第8条第3項第1号及び第3号に掲げる事項のほか,…建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下略)の最高限度(10分の40以上の数値を定めるものに限る。)及び最低限度,建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)の最高限度,建築物の建築面積の最低限度,建築物の高さの最高限度並びに壁面の位置の制限を定めるものとする。
(都市再生事業を行おうとする者による都市計画の決定等の提案)37条

1項

都市再生事業を行おうとする者は,都市計画法第15条第1項の都道府県…に対し,当該都市再生事業を行うために必要な次に掲げる都市計画の決定又は変更をすることを提案することができる。この場合においては,当該提案に係る都市計画の素案を添えなければならない。
一5
第36条第1項の規定による都市再生特別地区に関する都市計画

建築基準法

(容積率)
52条
1項

建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下容積率という。)は,次の各号に掲げる区分に従い,当該各号に定める数値以下でなければならない。(以下略)

商業地域内の建築物

10分の20,10分の30,10分の40,
10分の50,10分の60,10分の70,
10分の80,
10分の90,
10分の100,
10分の110,10分の120又は10分の
130のうち当該地域に関する都市計画にお
いて定められたもの

(都市再生特別地区)
60条の2
1項

都市再生特別地区内においては,建築物の容積率及び建ぺい率,建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては,それぞれの建築面積)並びに建築物の高さは,都市再生特別地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。
(以下略)

2項

都市再生特別地区内においては,建築物の壁又はこれに代わる柱は,建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これ
に類するものを除き,都市再生特別地区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。(以下略)
4項

都市再生特別地区内の建築物については,当該都市再生特別地区に関する都市計画において定められた建築物の容積率の最高限度を第52条第1項各号に掲げる数値…とみなして,第52条の規定を適用する。
6
地価公示法

(標準地の価格の判定等)
2条
1項

土地鑑定委員会は,都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第2項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(…以下公示区域という。)内の標準地について,毎年1回,国土交通省令で定めるところにより,二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め,その結果を審査し,必要な調整を行って,一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し,これを公示するものとする。

2項

前項の正常な価格とは,土地について,自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引…において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には,これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。

(標準地の選定)
3条

前条第1項の標準地は,土地鑑定委員会が,国土交通省令で定めるところにより,自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において,土地の利用状況,環境等が通常と認められる一団の土地に
ついて選定するものとする。
(標準地についての鑑定評価の基準)
4条

不動産鑑定士は,第2条第1項の規定により標準地の鑑定評価を行うにあたっては,国土交通省令で定めるところにより,近傍類地の取引価格から算定される推定の価格,近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行わなければならない。

(標準地の価格等の公示)
6条

土地鑑定委員会は,第2条第1項の規定により標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは,すみやかに,次に掲げる事項を官報で公示しなければならない。

標準地の所在の郡,市,区,町村及び字並びに地番


標準地の単位面積当たりの価格及び価格判定の基準日


標準地の地積及び形状


標準地及びその周辺の土地の利用の現況


その他国土交通省令で定める事項

(不動産鑑定士の土地についての鑑定評価の準則)
8条

不動産鑑定士は,公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において,当該土地の正常な価格(第2条第2項に規定する正常な価格をいう。)を求めるときは,
第6条の規定により公示された標準地の価格
(以下
公示価格
という。)を規準としなければならない。

(公示価格を規準とすることの意義)
11条

前3条の場合において,公示価格を規準とするとは,対象土地の価格(当
該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には,これらの定着物又は権利が存しないものとして成立すると認められる価格)を求めるに際して,当該対象
土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置,
地積,
環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない,その結果に基づき,当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。

(別紙2-2)
関係する評価基準等の定め

1
従前資産評価基準(乙19)

(目的)
1条

この基準は,都再法(昭和44年法律第38号,以下法という。)により,P4が施行するα西地区第一種市街地再開発事業(以下事業という。)の施行に必要な土地等の従前資産評価の基準を定め,もって事業の円滑な遂行と適正な評価の確保を図ることを目的とする。

(土地等の価額算定の時期)
3条

事業の施行地区内の土地,借地権又は建物の価額の算定の時期は,法第80条第1項に規定する日とする。

(規準に定めのない場合の措置)
4条

この基準に定めのないもの又はこの基準により難いものについては,その実情に応じて適正に評価するものとする。

(土地の価額算定の基本原則)
5条
1項

権利変換又は取得する土地(土地の附加物を含む。以下同じ。)の価額は,正常な取引価格によるものとする。

2項

前項の場合において,当該土地に取得又は移転すべき建物その他の物件があるときは,当該物件がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

3項

第1項の場合において,事業の施行が予定されることによって当該土地の取引価格が低下したと認められるときは,当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

(土地の正常な取引価格)

6条
1項

前条の正常な取引価格は,
近傍類地
(近傍地及び類地を含む。
以下同じ。

の取引価格を基準とし,これらの土地及び権利変換又は取得する土地について,街路条件,交通・接近条件,行政的条件,画地条件及びその他条件等の土地価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。

2項

前項の規定により当該土地の正常な取引価格を決定するときは,地価公示法(昭和44年法律第49号)第6条の規定により公示された標準地の価格を規準とするものとする。

2
従前資産評価基準細則(乙20)
この細則は,α西地区市街地再開発事業従前資産評価基準(以下基準という。)の運用に関し,細則を定めるものである。
第1
1
基準第6条(土地の正常な取引価格)は,次により処理する。
土地は,一画の土地(以下画地という。)をその単位として評価するものとし,一画地は以下により処理するものとする。
(1)土地は,原則として一筆を範囲とする一画地の土地(以下画地という。)を単位として評価する。

3
各画地は,原則として標準価格比較法により評価するものとし,標準的画地の価格(以下標準価格という。)は,不動産鑑定士が鑑定評価した価格によるものとする。

4
各画地の価額を標準価格から比準して評価する場合の各画地の増減価率(個性率)は,街路条件,交通・接近条件,環境条件,行政的条件,画地条件及びその他条件に係る個別的要因を総合的に比較考量し,当該事業施行地区の実情に合致するように適正に定めるものとする。

5
各画地の価額は,次式により査定するものとする。

各画地の土地価額(※1)=標準価格×個別格差修正率(※2)×面積(※1)各画地の価額は,100円の単位を四捨五入するものとする。(※2)画地条件以外の各条件内での格差修正率は細項目の総和,画地条件に係る格差修正率は細項目の相乗積,個別格差修正率は各条件相互間の相乗積で個別格差修正率を査定するものとする。

(別紙3-1)
都市再生特別地区変更計画

1
種類
都市再生特別地区(α×地区)

2
面積
約1.0ha

3
建築物の容積率の最高限度
133/10
ただし,21/10以上を指定有形文化財,歴史・文化交流施設,店舗及びこれらに付随する施設とする。

4
建築物の容積率の最低限度
40/10

5
建築物の建ぺい率の最高限度
8/10

6
建築物の建築面積の最低限度
1,000㎡

7
建築物の高さの最高限度
高層部

:GL+190m

低層部A:GL+

56m

低層部B:GL+

31m

ただし,低層部Bについては,指定有形文化財で建築基準法3条1項3号に該当する部分を除く。

8
壁面の位置の制限
建築物の外壁又はこれに代わる柱は別紙3-2計画図に示す壁面線を超えて建築してはならない。ただし,次の各号の一に該当する建築物等はこの限りではない。
(1)歩行者の快適性及び安全性を高めるために設ける庇,その他これに類するもの
(2)地下鉄駅出入口施設等の公益上必要な建築物等で当該建築物の敷地内に存するもの
(3)給排気施設の部分
(4)建物の出入口の上部に位置する庇の部分
(5)景観形成上必要な意匠上の突起物

9
備考
(1)地下鉄駅出入口の用に供する部分は,800㎡を上限として除く。(2)中水道施設,防災用備蓄倉庫及び非常用発電の用に供する部分は,1,100㎡を上限として除く。
(3)指定有形文化財で,建築基準法3条1項3号に該当する部分を含む。(4)地下通路及び駅施設等整備並びに道路表層整備を行う。

10

変更の理由

土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため。

(別紙4)
本件都市計画の概要

1
都市計画の種類・名称
東京都市計画第一種市街地再開発事業

2
α西地区第一種市街地再開発事業

都市計画を定める土地の区域
中央区α地内

3
施行区域面積
約1.0ha

4
公共施設の配置及び規模(道路)
種別名称

([

幹線街路


]は全幅員を示す。)

都市計画道路

別に都市計画において定める

放射28号線
区画道路

備考

とおり

特別区道

幅員6.5m[12m]

拡幅

中京第433号線延長約80m
特別区道

幅員3.25m[6.5m]

中京第538号線延長約130m
特別区道

幅員4m[8m]

中京第540号線延長約130m

5
建築物の整備
(1)建築面積

既設
(再整備)
既設
(再整備)

約5,800㎡
(2)延べ面積(容積対象面積)
約119,500㎡(約106,200㎡)
(3)主要用途
業務施設,商業施設,公共公益施設等
(4)高さの限度
高層部

:GL+190m

低層部A:GL+

56m

低層部B:GL+

31m

(5)備考
ただし,低層部Bの高さの限度については,指定有形文化財で建築基準法3条1項3号に該当する部分を除く。

6
建築敷地の整備
(1)建築敷地面積
約7,990㎡
(2)整備計画
良好な都市環境づくり及び地域の防災性の向上のため,敷地内に歩道状空地及び貫通通路を設け,歩行者空間を確保する。

7
参考
地区計画区域内及び都市再生特別地区内にあり

(別紙5)
本件事業計画の概要

1
施行地区
東京都中央区α×・×番街区及び周辺道路(約1.0ha)

2
施設建築物の概要
(1)敷地面積
約7,990㎡
(2)延床面積
約118,140㎡
(3)使用建ぺい率
約72%
(4)使用容積率
約1,330%
(5)構造


再開発棟
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造地下3階付33階建て



P1棟
鉄骨鉄筋コンクリート造地下2階付9階建

(6)用途
店舗,公益施設,事務所,住宅ほか

3
事業施行期間
(1)事業施行期間

平成23年7月12日(事業認可公告の日)から平成29年3月末日まで(2)建築工事期間
平成25年10月から平成28年6月まで

(別紙6-1)
本件調査報告書の要旨

1
調査の条件
(1)対象確定条件
現況は建物,構築物等の敷地であるが,当該建物等がなく,かつ,使用収益を制約する権利が付着していないものとしての土地のみの調査
(2)付加条件


本件施行区域に係る都市計画制限については考慮外としての調査



従前土地の更地価格の査定に当たっては,都市再生特別地区による公法上の制限は考慮外としての調査

2
本件土地の価格の算定方法
(1)近隣地域の区分・標準的画地の設定
別紙6-2標準的画地設定図のとおり,価格形成要因の相違から,本件施行地区を7つの近隣区域(AからGまで)に区分し,標準的画地(aからgまで)を設定する。
近隣地域Aの範囲は,α×・×番街区のうちν通り沿いの地域であり,近隣地域Gの範囲は,α×番街区のうちξ通り沿いの地域である。本件土地は近隣地域Gに属する。
(2)近隣地域Aの標準的画地aの標準価格の査定
近隣地域Aの標準的画地aについて,取引事例比較法及び収益還元法を適用し,標準価格を査定する。
(3)近隣地域Gの標準的画地gの標準価格の査定
近隣地域Gについては,他の地域と比較して規模が大きい画地によって構成されるため,標準的使用の類似性の高い近隣地域Aの価格形成要因と,近隣地
域Gの価格形成要因とを比較し,近隣地域Aの標準価格を元に近隣地域Gの標準価格を査定する。
(4)本件土地の価格の査定
近隣地域Gの標準的画地gと本件土地に係る画地
(以下
本件画地
という。

の個別的要因の比較を行い,本件画地の個別格差修正率を査定し,近隣地域Gの標準価格に個別格差率を乗じて,本件画地の単価(1㎡当たりの価格)を査定する。
本件画地の単価に数量を乗じて,本件土地の価格を査定する。

3
近隣地域Aの標準的画地aの標準価格(上記2(2)参照)
10,500,000円/㎡
以下の(2)・(3)の価格と比較検討し,(1)の価格との均衡を十分に考慮して10,500,000円/㎡と査定する。
(1)公示価格を規準とした価格
10,500,000円/㎡
(公示地)
中央○12,000,000円/㎡(平成24年1月1日)
(2)取引事例比較法を適用して求めた価格
取引事例1:

11,300,000円/㎡

取引事例2:

10,400,000円/㎡

取引事例3:

12,200,000円/㎡

(3)収益還元法を適用して求めた価格
9,660,000円/㎡

4
近隣地域Gの標準的画地gの標準価格(上記2(3)参照)
7,460,000円/㎡

<計算式>
標準的画地aの価格:10,500,000円/㎡(上記2参照)×

地域格差修正率:71%(※)



7,460,000円/㎡


地域格差修正率の内訳
項目
格差率

(a)街路条件

95%

(b)交通・接近条件

要因・格差率
幅員

-5

繁華性

-5

100%

(c)環境条件

80%

業務環境
(d)行政的条件
(e)その他

94%

容積率

-15
-6

100%

(a)×(b)×(c)×(d)×(e)=71%

5
本件土地の価格(上記2(4)参照)
9,539,986,000円
<計算式>
標準的画地gの価格:7,460,000円/㎡(上記3参照)
×

個別格差修正率:109%(※)

×

地積:1,173.43㎡



9,539,986,000円(100円単位を四捨五入。従前資産評価基準細則第1の5参照)


個別格差修正率の内訳

(a)街路条件


格差率
100%

要因・格差率

(b)交通・接近条件

100%

(c)環境条件

100%

(d)行政的条件

100%

(e)画地条件

109%

(f)その他

+5

三方路地

(相乗積)

規模

+4

100%

(a)×(b)×(c)×(d)×(e)×(f)=109%

(別紙7-1)
収用委鑑定書の要旨

1
鑑定評価の条件等


評価対象地の地形,間口,奥行,高低,その他個別的要因を考慮した価格であること。



評価対象地に所有権以外の権利又は建物その他の物件が存するときは,当該権利又は当該建物その他の物件が存しないものとしての価格であること。


地価公示区域においては,地価公示法による公示価格を基準とし,相互の関連を明らかにした価格であること。



事業の施行が予定されることにより当該評価対象地の価格が低下したと認められるときは,当該事業の影響がなかったものとしての価格を求める。
2
近隣地域の地域要因
(1)範囲
本件土地を中心として北東方約60m,北西方約45m,南西方約30m,南東方約40mの中高層の店舗付事務所ビルないし事務所ビルを中心とする業務型の商業地域と判定した(別紙7-2周辺状況図のとおり)。(2)同一受給圏の範囲及び市場参加者の属性等
同一受給圏の範囲は,中央区内にあってβ駅周辺に形成される商業集積の高い商業地域と判定した。当該地域における典型的な市場参加者としては,資本力を有する大手企業,不動産業者,投資ファンド関連業者等が中心となるものと考えられる。
(3)標準的使用
規模約300㎡(15×20m)程度の中高層店舗付事務所の敷地
3
個別的要因の分析及び最有効使用の判定
(1)最有効使用の判定
本件土地の存する近隣地域における標準的使用,
及び本件土地の規模,
形状,
公法上の規制等の個別的要因を総合的に勘案の上,最有効使用を高層の店舗付事務所ビルと判定した。
(2)個別的要因に基づく個別格差修正率の判定
本件土地と標準画地とを比較し,個別格差修正率を113%(※)と判定した。


個別格差修正率の内訳
項目
(a)画地条件

格差率
113%

要因・格差率

(b)街路条件

+5

100%

(c)環境条件

+8

規模

(相乗積)

三方路

100%

(a)×(b)×(c)=113%

4
鑑定評価の方針
本件土地の特性に鑑み,取引事例比較法及び収益還元法(土地残余法)を適用し,求められた各試算価格を調整の上,鑑定評価額を決定する。なお,鑑定評価額の決定に当たっては,対象地周辺の地価公示標準地の公示価格を規準とした価格等との均衡に十分留意するものとする。
対象不動産は既成市街地に存し,再調達原価の把握が困難であるため,原価法は適用しない。

5
鑑定評価方式の適用
(1)取引事例比較法による比準価格

3,860,000円/㎡
<計算式>
標準画地の比準価格:3,420,000円/㎡(※)
×

個別格差修正率:113%(上記4(2)参照)



3,860,000円/㎡



標準画地の比準価格の算定

取引事例

標準画地との価格形成要因の比較を踏まえた修正価格


3,710,000円/㎡


3,436,000円/㎡


3,159,000円/㎡


3,460,000円/㎡


3,320,000円/㎡

上記価格には軽重の差がなく,相互に妥当性を有するものと判断し,上記価格を相互に関連付け,標準画地の比準価格を3,420,000円/㎡と査定した。
(2)収益還元法(土地残余法)による収益価格
3,280,000円/㎡
(3)地価公示標準地価格を規準とした価格(規準価格)
3,700,000円/㎡
<計算式>
標準画地の規準価格:3,270,000円/㎡
×

個別格差修正率:113%(上記4(2)参照)



3,860,000円/㎡

(公示地)
中央○5,550,000円/㎡(平成24年1月1日)

6
試算価格の調整
比準価格(上記5(1)参照),収益価格(同(2)参照)及び規準価格(同(3)参照)には開差が認められる。
比準価格は,市場性に着目し,現実の売買市場に基礎を置く取引価格について価格形成要因の比較を行って求められており,不動産市場を反映する規範性,実証性の高い価格といえる。
収益価格は,対象不動産の収益性に着目した価格であり,その過程において将来の賃料変動をも織り込むなど理論的な価格であるが,想定要素を多く含むという点を内包する。
規準価格は,公的土地評価による価格を基礎としており,取引に当たり指標とすべき性格を有するものでその精度も高い。
本件土地の周辺地域では近年再開発等の進行により街並みが変わりつつあるという地域の実情及び将来性,並びに上記の事情を総合的に勘案した結果,比準価格を中心に検討を行い,収益価格を参考として,規準価格との均衡を十分に考慮し,本件土地の1㎡当たりの価格を3,860,000円と査定する。
7
本件土地の価格の決定
4,529,439,800円
<計算式>
本件土地の1㎡当たりの価格:3,860,000円(上記6参照)×

地積:1,173.43㎡



4,529,439,800円

(別紙8-1)
原告による本件土地の価額の算定方法

1
本件土地の価格の算定方法
本件調査報告書の方法(別紙6-1の2参照)を採用する。

2
近隣地域Aの標準的画地aの標準価格
12,600,000円/㎡(※)


P7不動産鑑定士の作成した不動産鑑定評価書(甲19,24。以下P7鑑定書という。別紙8-2P7鑑定書の要旨参照)による。
3
近隣地域Gの標準的画地gの標準価格
8,950,000円/㎡
<計算式>
標準的画地aの価格:12,600,000円/㎡(上記2参照)×


8,950,000円/㎡



4
地域格差修正率:71%(※)

本件調査報告書の数値(別紙6-1の4参照)を採用する。

本件土地の価格
12,182,550,000円
<計算式>
標準的画地gの価格:8,950,000円/㎡(上記3参照)
×

個別格差修正率:116%(※)

×

地積:1,173.43㎡



12,182,550,000円(100円単位を四捨五入。従前資産評
価基準細則第1の5参照)



個別格差修正率の内訳
項目
増減価率

判定理由

(a)規模

+10%

地積が大きいことによる市場性の増加

(b)三方路



接面状況等を考慮

(a)×(b)=116%

5%

(別紙8-2)
P7鑑定書の要旨

1
対象不動産
本件調査報告書における標準的画地a(別紙6-1の2(1)参照)(所在)中央区α×番21外
(地目)宅地
(数量)500.00㎡

2
鑑定評価の条件


不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において,その土地のみを建物等が存しない独立のもの
(更地)
としての土地のみの評価である。



本件施行区域に係る都市計画制限については考慮外とする。



事業の施行が予定されることにより当該評価対象地の価格が低下したと認められるときは,当該事業の影響がなかったものとしての価格を求める。
3
対象不動産に係る市場の特性
(1)同一需給圏の判定
対象不動産の所在する近隣地域は,高層の店舗付事務所ビル等が建ち並ぶ商業施設であり,代替競争関係にある類似不動産の存する範囲は,中央区,千代田区,港区の都心3区を中心とした高度商業地域
(2)同一需給圏における市場参加者の属性及び行動
対象不動産は,高層の店舗付事務所ビル等が最有効使用と判定される土地であり,需要者は総額との観点から,大手不動産業者等と判定される。また,β駅に近いγ界隈において,まとまった土地は希少性が高いため,価格時点当時不動産市況はやや低迷していたとはいえ,既に底値感が出ていた市場において
取得するためには,競争は避けられないものと判定される。
(3)市場の需給動向等
価格時点当時,開発可能性に係る将来性が見込まれていた近隣地域において,まとまった規模の土地であれば,相応の需要が見込まれたものと判定される。
4
近隣地域の状況
(1)範囲
α×・×番街区のうちν通り沿いの地域(本件調査報告書における標準的画地aの属する近隣地域。別紙6-1の2(1)参照)
(2)将来動向
本件再開発事業の進捗等に伴い,より一層に商業繁華性等が向上するものと予測する。
(3)標準的使用
高層の店舗付事務所ビルの敷地
(4)標準的画地
間口25m,奥行20m,地積500㎡の長方形の中間画地

5
鑑定評価の方針
取引事例比較法及び収益還元法(土地残余法)を適用し,公示価格等を規準とした価格との均衡にも留意して鑑定評価額を決定するものとする。なお,対象不動産は既成市街地に存し,土地の再調達原価の把握が困難であるため,原価法は適用しない。

6
鑑定評価方式の適用
(1)取引事例比較法による比準価格
12,600,000円/㎡(※)



比準価格の算定

取引事例

比準価格(※※)


11,820,000円/㎡


12,630,000円/㎡


13,300,000円/㎡

3取引事例は周辺の類似地域に存する事例を採用した。上記価格はやや開差が認められるが,各事例は実際の市場で成立した価格に適正な補修正を行ったものであり,いずれも同等の規範性を有するものと判断されるので,ほぼ中庸値を採用して比準価格を12,600,000円/㎡と試算した。※※

地域要因の比較において,環境条件の将来性として,5%の
格差を付した。

(2)収益還元法(土地残余法)による収益価格
10,200,000円/㎡
(3)公示価格等を規準とした価格
11,100,000円/㎡
<計算式>
公示価格:12,000,000円/㎡
×

地域格差修正:100/108(※)



11,100,000円/㎡

(公示地)
中央○12,000,000円/㎡(平成24年1月1日)


地域要因の比較において,環境条件の将来性として,5%の格
差を付した。

7
試算価格の調整
比準価格は,取引事例が対象不動産との類似性の高い周辺商業地域に存する規
範性の高い事例であり,また,各補修正率の判定,計算の過程も適切に行われ,現実の取引市場の実態を反映した実証的な価格であると判定される。比準価格に比べ収益価格がやや低位に試算されたが,これは対象不動産で想定されている規模(500㎡)が都心の高度商業地域としては小さいため,想定される建物の規模が小さい(都心高度商業地域では大型のビル程高い賃料収入が可能となる。)ことに加え,賃貸可能な有効率も下がることが要因と判定され,高度商業地域であるν通り沿いの価格を求めるに当たり,収益価格は比準価格に比べ,説得力,妥当性等が劣るものと判定される。
対象不動産は,ν通り沿いの高度商業地域における土地であり,また,再開発等の進行により街並みが変わりつつあるという地域の実情及び将来性等を総合的に考慮した結果,規範性を有する比準価格を基準とし,収益価格を参考とすることを相当とし,公示価格等を規準とした価格との均衡にも十分留意をして,対象不動産の鑑定評価額(単価)を12,600,000円/㎡と決定した。
8
鑑定評価額の決定
6,300,000,000円(12,600,000円/㎡)

(別紙9)
鑑定書等の合理性に関する当事者の主張

第1
1
本件調査報告書(乙10)の合理性
標準地比準評価法の採用
(1)原告の主張
再開発事業の従前資産である土地の評価は,標準地比準評価法によって行うべきである(損失補償基準8条,別記1土地評価事務処理要領4条参照)。本件再開発事業においても,各土地(画地)は,原則として標準価格比較法により評価するものとされている(従前資産評価基準細則(別紙2-2の2参照)第1の3参照)。
本件調査報告書は,施行地区を7つの近隣区域に区分し,それぞれの地域要因を備えた標準的使用を前提とする標準的画地の標準価格を査定し,当該標準価格に各宅地の個別格差修正率を乗じることにより,各地区の宅地の土地価格を決定している。この手法は,それ自体,適切なものである。(2)被告の主張
一般的に,再開発事業の施行地区内の宅地の価額は,標準地比準評価法により算定されるべきである。
しかるところ,本件調査報告書は,組合員への説明を重視する観点から,本件施行地区内を複数のブロックに分けた上,同ブロックのうち地域要因が同様のものを近隣地域(同一状況地域)と設定している。
もっとも,近隣地域(不動産鑑定評価基準)又は同一状況地域(損失補償基準の別記1土地評価事務処理要領)対象不動産と地域要因を共通にし,は,
また,価格水準が同程度の地域であればよいのであって,再開発事業の施行地区内にあるか否かを問わない。そうすると,本件調査報告書の上記区分は唯一のものではない。

2
地域格差修正率の数値
(1)原告の主張
本件調査報告書は,本件土地が存する近隣地域Gの標準的画地gの標準価格を算定するに当たり,同地域との類似性の高い近隣地域Aの標準的画地aの標準価格に,道路の幅員,繁華性,業務環境及び容積率を踏まえた地域格差修正率71%を乗じている。
この点,再開発予定地における表地と裏地との格差率は,商業地については,一般的に,表地10に対し裏地7又は6とされている。
また,標準的画地gの地域格差修正率71%は,標準的画地fの地域格差修正率62%を前提とすると,両者の環境条件の相違(近隣地域Gは同Fより高度商業地域としての成熟度が高い。)等を勘案すれば,整合性がとれている。
そうすると,標準的画地gの同aに対する地域格差修正率は,本件調査報告書が採用した71%が合理的である。
(2)被告の主張
裁判所が本件土地の相当の価額を算定するに当たっては,本件調査報告書が採用した,近隣地域Aと近隣地域Gとの格差修正率71%を採用すべきではない。
収用委鑑定書が採用した公示地中央○(β駅とε駅のほぼ中間地)の規準価格327万円/㎡は,本件調査報告書が採用した公示地中央○(ν通り沿い)の規準価格1050万円/㎡の約31%にとどまる。
また,平成24年分財産評価基準書の路線価によれば,α西地区のν通り沿いを100とした場合,ξ通り沿いは23である。
したがって,ν通り沿いの土地とν通りに面さない背後地とでは,その評価額に大幅な差があることは明らかである。

3
本件特区決定による影響の除外

(1)原告の主張
従前資産評価基準細則(別紙2-2参照)は,標準的画地の価格は,不動産鑑定士が鑑定評価した価格によるものとすると定めている。しかるところ,不動産の鑑定評価(不動産鑑定評価基準に基づく評価)においては,適切な鑑定評価を行うため,公法上の規制の改廃等に権能を持つ公的機関から依頼された場合に限り,地域要因に想定上の条件を付加することができるのであって,恣意的に条件を設定することは許されていない。
しかるに,本件調査報告書は,都市再生特別地区による公法上の規制は考慮外という条件を付し,標準的画地aの価格を1050万円/㎡と算定しているが,本件評価基準日前に生じた本件特区決定の地価に対する影響(本文第3の1(3)参照)を考慮しておらず,不動産鑑定評価基準に則っていない(同報告書はそのことを認めている。)。その結果,本件調査報告書における本件土地の価額は,適正な価格よりも低くなっている。
標準的画地aの評価額は,P7鑑定書により1260万円/㎡と算定すべきである。なお,P7鑑定書が,本件特区決定による影響を考慮した合理的なものであることは,後記2のとおりである。
(2)被告の主張
本件調査報告書は,都市再生特別地区による公法上の規制は考慮外との条件を付していることからも明らかなとおり,不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価書ではない。
しかし,都再法80条は,宅地の価額は相当の価額によると定めているにすぎず,必ずしも不動産鑑定評価基準に則って鑑定評価をしなければならないとはしていない。
また,不動産の鑑定評価に関する法律2条にいう不動産の鑑定評価,及び従前資産評価基準細則(別紙2-2の2参照)第1の3にいう鑑定評価とは,不動産の経済価値を判定した結果を価額に表示することをいうか
ら,いわゆる価格等調査を含む概念であって,不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価であるか否かは問わない。したがって,本件調査報告書は,上記の各規定に違反するものではない。
なお,本件調査報告書は,標準的画地cの将来性として20%を加算している(乙10別表⑤参照)。この加算は,本件施行地区の表地(繁華な前面道路に面している土地)の価額と背後地(そうでない土地)の価額との間に大きな開差が生じ,背後地の所有者の合意が得られないことにならないよう,背後地の所有者等の協力を貢献として評価したものであり,その割合の20%は,価格の全体的なバランスを考慮したものである。
4
個別格差修正率の数値
(1)規模

原告の主張
本件調査報告書は,本件土地(約1173㎡)の規模による個別格差修正率として+5を採用している。
他方で,本件調査報告書は,画地番号①(660㎡)につき+5,画地番号②(1920㎡)につき+10,別表①の公示地中央○(2237㎡)につき+15,別表②の取引事例2(1282㎡)につき+10,取引事例3(2194㎡)につき+15としているところ,本件土地は取引事例2(修正率+10)に最も近く,画地番号①(修正率+5)よりは明らかに大きい。
本件調査報告書に係る比準表(乙28別表④)によれば,規模による個別格差修正率は,標準的画地a(500㎡)を基準とすると,600㎡以上1200㎡未満が+5となり,1200㎡以上2000㎡未満が+10となる。しかし,同比準表は,1200㎡を境に数値が異なる根拠を示していない上,修正率を画地面積の増加に応じて逓増させるという考え方を採用しておらず,余りに硬直的である(国土交通省監修の土地価格比準表
は,
実態に応じ,
修正率を所定の範囲内で補正すべきであるとしている。。

しかるところ,本件土地(1173.43㎡)は,1200㎡(修正率+10)を26.57㎡しか下回っていないから,+10の近似値を採用すべきである。
なお,被告は,
平成19年9月の時点では,原告に対し,
規模+10
という修正率を提示していたが,
その後,
特段の理由を説明することなく,
その半分の規模+5を採用した。
以上によれば,本件土地の規模による個別格差修正率として,+10を採用すべきである。

被告の主張
本件調査報告書は,比準表(乙28別表④)に基づき,本件土地の規模に関する個別格差修正率として,標準的画地a(500㎡=400㎡以上600㎡未満)の増減価率+15と,本件土地(1173㎡=600㎡以上1200㎡未満)の増減価率+20との差である+5を採用した。上記修正率の区分は,賃料水準やビルの競争力の格差が有効面積によって区分されるグレードにより生じることに加え,全ての権利者間のバランスにも考慮し,当該宅地の面積に対応して与えられることとなる施設建築の部分の有効面積に基づき設定された(具体的には,宅地600㎡に対応する施設建築の部分は概ね100坪,宅地1200㎡に対応する施設建築の部分は概ね200坪)。したがって,上記比準表の区分は,客観的かつ実態に即した合理的なものである。
なお,確かに,被告は,従前,原告に対して規模+10の修正率を示したことはある(上記ア参照)。しかし,上記数値はあくまで概算によるもので確定的なものでなく,被告は,本件権利変換計画を作成する段階で精査を加え,その結果,上記比準表の数値を採用した。
原告の主張するように上記比準表の階級の数値を変更すれば,格差を設
けざるを得ない関係上,他の権利者間で同様の議論が繰り返されるという不合理な事態が生じることになる。
(2)三方路

原告の主張
本件調査報告書は,本件土地(約1173㎡)の三方路による個別格差修正率として+4を採用している。
もっとも,他方で,本件調査報告書は,別表②の取引事例2(1282㎡)につき+5としている。取引事例2については,本来であれば1000㎡超の格差率である+4が採用されるところ,視認性・側道の状況等を勘案して+1の修正が行われたと思われる。しかるに,取引事例2は,三方路の幅員が南東27m,南西8m,北西8mで,背道の向かい側が自転車保管所等の低利用地である上,側道はT字路で系統の劣る道であり,視認性が優っている状況にはない。そうすると,本件土地は,取引事例2と規模が同程度であり,かつ,視認性・側道の状況等でも劣らない。したがって,本件土地の三方路による個別格差修正率として,+5を採用すべきである。


被告の主張
本件調査報告書は,比準表(乙28別表④)に基づき,本件土地の三方路に関する個別格差修正率として,
本件土地
(1173㎡=1000㎡超)
の格差率+4を採用した。
本件調査報告書は,取引事例2(1282㎡)の格差率につき,視認性・側道の状況等を勘案して修正することができるという比準表の定めに基づき,+5と修正している。すなわち,取引事例2は,正面の利便性に制約があり(歩道橋があるため直接車両等が出入りすることができない。),この点が環境条件(業務環境)で考慮されているが,反面,側道と背面道の存在によって大幅に利便性や建物レイアウト上の多様性が増
すため,通常の三方路地より増価の程度が大きいため,比準表を修正する必要がある。このように,取引事例2と本件土地とは状況が異なる。
第2
1
P7鑑定書(甲19,24)の合理性
本件特区決定による影響の考慮
(1)原告の主張
P7鑑定書は,本文第3の1(3)の考え方に基づき,本件再開発事業に係る都市計画制限については考慮外としているが,本件特区決定による公法上の規制を地域要因として考慮しており,不動産鑑定評価基準に則り,公平に条件を設定している。
すなわち,P7鑑定書は,本件特区決定がされていることにつき,本件評価基準日の時点で,標準的画地aがいまだ容積率の緩和等の直接的・具体的な恩恵を受けていなくとも,これを将来の開発可能性による市場への影響等という価格形成要因として考慮している。
より具体的には,P7鑑定書は,取引事例比較法を適用するに当たり,標準的画地aと事例地との地域要因(環境条件)の比較において,標準的画地aの所在する地域が高度商業地域として十分に成熟していることを踏まえても,
将来性
として5%の格差を付している。
なお,
本件調査報告書が,
背後地にとどまる標準的画地cに係る将来性を20%と評価していることからすれば,幹線道路に接面する標準的画地aについても5%程度の将来性を考慮しなければ,地権者間の公平を著しく害することになる。(2)被告の主張
P7鑑定書は,本件特区決定による容積率の緩和等につき特段の条件を設定しておらず,これによる影響を考慮している箇所が具体的に認められないから,恣意的に標準的画地aの価格を増額しているにすぎない。
仮に,P7鑑定書が,上記容積率の緩和又は本件再開発事業の実現可能性
等を,取引事例比較法(将来性5%)又は収益還元法(還元利回り)の中で考慮しているとしても,これを標準的画地aの価格に反映させる具体的な過程が明らかでない。すなわち,P7鑑定書は,上記容積率の緩和による影響のみをどのように抜き出して考慮したのか,その結果として5%という数値がなぜ採用されたのかについて,全く明らかにしていない。
しかも,本件再開発事業の実現可能性を,取引事例比較法における価格形成要因(将来性5%)として考慮するという手法は,この可能性が既に反映されている近傍類似の土地の取引価格を考慮するというものではなく(比較の対象となった取引事例AないしCは,本件施行地区から地理的に相当離れているから,本件再開発事業の実現可能性による影響は及んでいない。),この可能性により標準的画地aの価格が5%上昇したと別個に評価し,その上昇分を同画地の価格に直接加算するというものにほかならない。このような手法は,本文第3の2(2)のとおり,許されるものではない。2
取引事例比較法の適用
(1)事例の選択

原告の主張
P7鑑定書は,比準価格の算定に当たり,地域要因に関して2倍以上の格差修正をしているが,適格を充足し,実務上規範性の高い事例を採用していることから,問題はない。
すなわち,標準的画地aは,我が国有数の高度商業地にあり,その価格水準も非常に高位にあるから,比準に適切な事例として,価格水準(地域要因格差)及び場所(対象地との距離,商業地としての性格を含む。)の観点から,全てが完璧に揃ったものが得られない。このことは,本件調査報告書においても,場所的にやや遠い事例(港区)が採用されていることからも明らかである。
しかるところ,P7鑑定書は,価格水準的な開差はやや大きいが,場所
的な類似性がより近く,かつ,その取引価格が適切と判定される事例を選択している。このことは,選択された3事例の地域要因格差率が,概ね路線価の比率(標準的画地aの路線価/事例地の路線価)である100/40~100/51と同水準であることからも明らかである。この点,路線価は,絶対視することはできないが,適切な課税を行うために毎年公表されているものであるから,客観的な物差しとしての信頼性は大きい。しかも,P7鑑定書の比準価格(1260万円/㎡)は,公示価格等による規準価格(1110万円/㎡)ともバランスがとれている。

被告の主張
取引事例比較法において採用される取引事例は,①場所的同一性,②取引事情の正常性,③時点修正可能性,④要因比較の可能性の4要件を満たしていることが必要である(不動産鑑定評価基準総論第7章第1節Ⅲ2(1)参照)。そして,取引事例比較法は,市場参加者(需要者)が代替性のある複数の物件を比較検討する際に諸要素を数値化するという行動原理に着目した手法であるから,その適用に当たっては,需要者がいかなる要素に着目するかという視点を欠くことはできない。
近隣地域Aは,我が国を代表する高度商業地域であるν通り沿いにあり,主たる需要者(資金調達力を有する大手の不動産会社等)が特に希少性の高い高度商業地域の物件の中で比較検討する傾向にあることに照らすと,オフィス街として品等の劣る地区の物件とは需要者層を異にする。そうすると,比較対象の取引事例としては,単に場所的に類似する事例のみならず,より広域的に品等が類似する事例を選択すべきである。
しかるに,P7鑑定書は,いずれも,環境条件の業務商業性(賃貸オフィスの立地としての品等,グレード)等の格差が著しく大きい取引事例を採用し,事例地A(環境条件▲50,地域要因格差100/48)及び事例地C(環境条件▲60,地域要因格差100/41)については,2倍
以上の大幅な上方修正をしている。そうすると,P7鑑定書が採用した取引事例は,上記④の要件を備えているとはいえない。なお,路線価は路線に面する複数の土地の代替性を考慮していないから,地域要因格差率と路線価の比率とが整合するとしても,直ちに事例の選択が適切なものとなるわけではない。
(2)比準の内容

原告の主張
P7鑑定書は,標準的画地a(接面道路幅員約27m)と事例地Aとの比準において,事例地Aの前面道路を北側区道(幅員16m)と,側道を東側都道(幅員44m)と判定した上,事例地Aの街路条件が標準的画地aよりも3%劣るとしている。
この点,事例地Aの東側都道は,北側区道よりも幅員は広いが,車道と車道の間に首都高速道路(高架)が介在し,その路線価が北側区道の約半分であることを考慮すれば,事例地Aの前面道路(その効用に最も寄与する道路)が北側区道であるという判定は妥当である。


被告の主張
P7鑑定書は,事例地Aが標準的画地aよりも街路条件(幅員)で3%劣るとしているが,事例地Aの接面道路の幅員は44m,標準的画地aの幅員は約27mであることからすれば,上記の評価は不当である。
3
収益還元法の適用
(1)原告の主張
P7鑑定書は,収益還元法の適用において,月額の支払賃料(共益費を含む。)として,1階(店舗)につき1万7090円/㎡,上層階(事務所)につき9190円/㎡と査定している。
この点,1階の賃料については,本件調査報告書(1万3613円/㎡)より高位であるが,京橋2丁目のν通りの路面店舗賃料に関するデータ,事
例,ヒアリング等に照らし,妥当な水準である。また,年間の支払賃料の総額でも,本件調査報告書よりも約2.6%高位であるが,この差をもってP7鑑定書が不当であるということもできない。
(2)被告の主張
収益還元法による評価額は,想定賃料と還元利回りとによって算定されるから,想定賃料を高く又は還元利回りを低く見積もると高くなる。しかるに,P7鑑定書の査定した賃料水準は,賃貸事例及び仲介業者へのヒアリング結果によれば,いずれも高位である。この点,P7鑑定書は,賃料の査定に当たって依拠したデータ,事例,ヒアリング等の結果を示していない。
また,P7鑑定書は,基本利率から賃料の変動率を控除して還元利回りを求めているが,仮に上記賃料水準が将来の上昇予測に基づくものであるならば,同一の要因を賃料と利回りの双方において二重に計上していることとなる。
4
床価格の水準
(1)原告の主張
被告は,P7鑑定書に基づく床価格(坪単価)の観点からしても,上記評価額が不当に高位であると主張する(後記(2)参照)。
しかし,標準的画地aとP9の公表事例とは所在地や他の要因が異なる以上,これらを比較することに合理性はない。
また,従前地の一部に係る土地建物一体の床単価は,常に,従後資産の見込価格から求めた床単価を下回るわけではない。なぜならば,再開発事業においては,地価水準の高い表地と地価水準の低い背後地とが一体になることにより,全体として従前資産の価値よりも従後資産の価値が増加するが,個々の宅地ごとに,規模,形状,道路との関係等に照らして増価の程度が異なるからである。

したがって,上記のような単純な比較により,P7鑑定書の評価額が不当に高位であるということはできない。
(2)被告の主張
P7鑑定書に基づき,
標準的画地aに係る土地建物一体の床価格
(坪単価)
を算定すると,約769万円となる。
これに対し,P9の公表事例(本件評価基準日の前後のもの)によれば,新築のSクラスのビル(基準階有効面積500坪以上等)で坪単価が700万円台半ばである(なお,P9の公表事例は,数多くの公表事例から都心3区の事例を抽出したもので,市場で取引される建物の床価格の適正範囲を示したものである。)。また,本件評価報告書における本件施設建築物の床見込価格(坪単価)は,約733万円である。
そうすると,P7鑑定書の評価額を採用すれば,標準的画地aの上に建っていると想定される中規模ビルの床価格が,Sクラスの再開発ビルの床価格を上回るという,市場ではおよそあり得ない事態が生じることとなる。これらの点に照らしても,P7鑑定書による標準的画地aの評価が高位であることは明らかである。

第3
1
収用委鑑定書(乙25)の合理性
本件特区決定による影響の考慮
(原告の主張)
収用委鑑定書は,事業の施行が予定されることにより当該評価対象地の価格が低下したと認められるときは,当該事業の影響がなかったものとしての価格を求める,市街地再開発事業地区(本件では考慮しない)という条件を定めていることに加え,その内容に照らしても,本件評価基準日前に生じた本件特区決定による影響(本文第3の1(3)参照)を考慮していない。
2
近隣地域の設定

(1)原告の主張
従前資産評価基準及び同細則(別紙2-2参照)に基づく標準地比準評価法によれば,再開発事業の施行地区内の土地を評価するに当たっては,行政的条件に着目し,施行地区の範囲を近隣地域に設定すべきである。本件調査報告書も,本件土地の近隣地域として,本件施行地区を設定している(上記(4)ア参照)。
しかるに,収用委鑑定書は,本件再開発事業を考慮外とする前提条件を定め,本件施行地区外を含む範囲を近隣地域に設定している。
(2)被告の主張
収用委鑑定書は,本件土地の近隣地域(すなわち同一状況地域)として,地域要因の共通性という観点から,ξ通り沿いの地域のうち複数の街区(本件施行地区外の土地を含む。)を設定しているが,上記第1の2(1)のとおり,そもそも,近隣地域又は同一状況地域は,再開発事業の施行地区の内外を問わずに設定することができるから,妥当性を欠くものではない。
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