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関税更正処分等取消請求事件
事件番号平成23(行ウ)533等
事件名関税更正処分等取消請求事件
裁判年月日平成28年2月25日
法廷名東京地方裁判所
判示事項化粧品等の輸入,卸売販売等の事業を営む会社が,アメリカ合衆国所在の関連企業との間の問屋契約に基づき,上記関連企業が複数の製造者から購入した輸入貨物について,上記関連企業と製造者との間の売買が関税定率法(平成25年法律第6号による改正前のもの)4条1項の規定する輸入取引に該当し,同項の規定を適用して輸入貨物の課税価格を計算すべきであるなどとして,関税,消費税及び地方消費税の申告納税を行ったところ,上記売買は同項の規定する輸入取引には該当しないから,同法4条の3第1項1号等の規定に基づいて課税価格を計算すべきであるとしてされた更正処分等が,適法であるとされた事例
裁判要旨化粧品等の輸入,卸売販売等の事業を営む会社が,アメリカ合衆国所在の関連企業との間の問屋契約に基づき,上記関連企業が複数の製造者から購入した輸入貨物について,上記関連企業と製造者との間の売買が関税定率法(平成25年法律第6号による改正前のもの)4条1項の規定する輸入取引に該当し,同項の規定を適用して輸入貨物の課税価格を計算すべきであるなどとして,関税,消費税及び地方消費税の申告納税を行ったところ,上記売買は同項の規定する輸入取引には該当しないから,同法4条の3第1項1号等の規定に基づいて課税価格を計算すべきであるとしてされた更正処分等につき,同項にいう「輸入貨物に係る輸入取引がされた時」とは,1994年のガット7条及び世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1Aの1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定1条1項にいう「貨物が輸入国への輸出のために販売された場合」と同じ意味で用いられているものと解すべきであり,関税評価技術委員会における検討結果(勧告的意見14.1,解説22.1)に鑑みれば,上記の輸入国への輸出のための販売とは,輸入者が輸入貨物を輸入国に輸入することとなった売買取引をいうと解すべきであるところ,前記会社が輸入(納税)申告を行い,輸入貨物を引き取っているのは,前記関連企業との間の問屋契約により,輸入貨物を引き取って日本国内の顧客に販売することを合意したからであり,前記会社は,輸入に先立ち,輸入貨物の所有権を取得しているわけではなく,飽くまでも輸入貨物の販売を委託された問屋として輸入貨物を引き取っているにすぎず,前記会社が売買取引によって輸入貨物を日本に輸入したということはできないから,当該輸入貨物について同法4条1項にいう「当該輸入貨物に係る輸入取引」(前記協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)は存在しておらず,その課税価格を同法4条1項の規定する方法によって算定することはできないなどとして,前記更正処分等を適法とした事例
裁判日:西暦2016-02-25
情報公開日2017-10-19 08:53:35
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平成28年2月25日判決言渡
平成23年(行ウ)第533号

関税更正処分等取消請求事件【甲事件】

平成24年(行ウ)第848号

関税更正処分等取消請求事件【乙事件】

主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
甲事件
⑴ア

処分行政庁横浜税関本牧埠頭出張所長が別紙2の1処分目録1⑴の処分日欄記載の各日付で原告に対してした,同目録の輸入申告書番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分(平成23年5月11日付け財務大臣の裁決により一部取り消されたものについては,同裁決による一部取消し後のもの。)のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の更正前の税額欄記載の各金額を超える部分をいずれも取り消す。

処分行政庁横浜税関大黒埠頭出張所長が別紙2の2処分目録1⑵の各処分日欄記載の日付で原告に対してした,同目録の輸入申告書番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分(平成23年5月11日付け財務大臣の裁決により一部取り消されたものについては,同裁決による一部取消し後のもの。)のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の更正前の税額欄記載の各金額を超える部分をいずれも取り消す。

処分行政庁東京税関成田航空貨物出張所長が別紙2の3処分目録1⑶の処分日欄記載の各日付で原告に対してした,同目録の輸入申告書番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の更正前の税額欄記載の各金額を超える部分をいずれも取り消す。
⑵ア

処分行政庁横浜税関本牧埠頭出張所長が別紙2の4処分目録1⑷の処分日欄記載の各日付及び同目録の過少申告加算税賦課決定番号で原告に対してした,前記⑴アの各更正処分に係る各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。


処分行政庁横浜税関大黒埠頭出張所長が別紙2の5処分目録1⑸の処分日欄記載の各日付及び同目録の過少申告加算税賦課決定番号で原告に対してした,前記⑴イの各更正処分に係る各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。


処分行政庁東京税関成田航空貨物出張所長が別紙2の6処分目録1⑹の処分日欄記載の各日付及び同目録の過少申告加算税賦課決定番号
で原告に対してした,前記⑴ウの各更正処分に係る各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。

2
乙事件
⑴ア

処分行政庁横浜税関大黒埠頭出張所長が平成23年3月11日付けで原告に対してした,別紙3の1処分目録2⑴の輸入申告番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の当初輸入申告(更正処分前)の税額欄記載の各金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。

処分行政庁横浜税関本牧埠頭出張所長が平成23年3月11日付けで原告に対してした,別紙3の2処分目録2⑵の輸入申告番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の当初輸入申告(更正処分前)の税額欄記載の各金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。ウ
処分行政庁東京税関成田航空貨物出張所長が平成23年3月11日付けで原告に対してした,別紙3の3処分目録2⑶の輸入申告番号欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税についての各更正処分のうち,納付すべき関税,消費税及び地方消費税の各金額について同目録の当初輸入申告(更正処分前)の税額欄記載の各金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
⑵ア

処分行政庁横浜税関大黒埠頭出張所長が平成23年4月22日付けで原告に対してした,原告が別紙4の1処分目録3⑴の更正請求日欄記載の各日付で行った同目録の申告番号(BP)及び申告番号(IBP)欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の各通知処分をいずれも取り消す。


処分行政庁横浜税関本牧埠頭出張所長が平成23年4月22日付けで原告に対してした,原告が別紙4の2処分目録3⑵の更正請求日欄記載の各日付で行った同目録の申告番号(BP)及び申告番号(IBP)欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の各通知処分をいずれも取り消す。


処分行政庁東京税関成田航空貨物出張所長が平成23年4月22日付けで原告に対してした,原告が別紙4の3処分目録3⑶の更正請求日欄記載の各日付で行った同目録の申告番号(BP)及び申告番号(IBP)欄記載の各輸入申告書番号の納税申告に係る関税,消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の各通知処分をいずれも取り消す。
第2

事案の概要

1
事案の要旨


原告は,アメリカ合衆国(以下米国という。)所在のデラウェア州法人であるP1,Inc.(以下P1社という。)との間の問屋契約に基づき,本邦外に所在する複数の製造者(以下本件ベンダーという。)からP1社が購入した製品(輸入貨物)について,輸入申告を行うとともに,関税並びに消費税及び地方消費税(以下,併せて関税等という。)の納税申告を行った(以下,輸入申告及び納税申告を併せて輸入(納税)申告という。)。

⑵ア

処分行政庁横浜税関本牧埠頭出張所長
(以下
本牧出張所長
という。,

処分行政庁横浜税関大黒埠頭出張所長(以下大黒出張所長という。)及び処分行政庁東京税関成田航空貨物出張所長(以下成航出張所長といい,
本牧出張所長及び大黒出張所長と併せて
本件各出張所長
という。

は,平成21年9月29日付けで,原告が平成19年10月に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,同月において原告により国内販売された貨物と同一の製品番号の輸入貨物(別紙5の1輸入目録1の類型欄に1-1と記載されたもの。以下本件輸入貨物1-1という。)につき,関税定率法4条の4の規定に基づき課税価格を計算して,関税等の各更正処分(以下本件更正処分1-1という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下本件賦課決定処分1-1という。)を行った。


本件各出張所長は,平成21年9月29日付けで,原告が平成20年10月に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,同月において原告により国内販売された貨物と同一の製品番号の輸入貨物(別紙5の1の類型欄に1-2と記載されたもの。以下本件輸入貨物1-2といい,本
件輸入貨物1-1と併せて本件輸入貨物1という。)につき,関税定率法4条の4の規定に基づき課税価格を計算して,
関税等の各更正処分
(以
下本件更正処分1-2といい,本件更正処分1-1と併せて本件更正処分1という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下本件賦課決定処分1-2といい,本件賦課決定処分1-1と併せて本件賦課決定処分1という。)を行った。⑶ア

本件各出張所長は,平成21年9月30日付けで,原告が平成18年10月3日から平成20年4月15日までの間に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物(別紙5の1の類型欄に2-1と記載されたもの。以下本件輸入貨物2-1という。)につき,関税定率法4条の4の規定に基づき課税価格を計算して,関税等の更正処分(以下本件更正処分2-1という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下本件賦課決定処分2-1という。)を行った。


本件各出張所長は,平成21年9月30日付けで,原告が平成20年4月18日から同年11月27日までの間に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物(別紙5の1の類型欄に2-2と記載されたもの。以下本件輸入貨物2-2といい,本件輸入貨物2-1と併せて本件輸入貨物2という。)につき,関税定率法4条の4の規定に基づき課税価格を計算して,関税等の更正処分(以下本件更正処分2-2といい,本件更正処分2-1と併せて本件更正処分2という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下本件賦課決定処分2-2といい,本件賦課決定処分2-1と併せて本件賦課決定処分2という。)を行った。

⑷ア

本件各出張所長は,平成23年3月11日付けで,原告が平成20年11月28日から平成21年9月17日までの間に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,別紙5の2輸入目録2の類型欄に3と記載さ
れたもの(以下本件輸入貨物3という。)について,関税定率法(平成25年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)4条の3第1項1号の規定に基づき課税価格を計算して,関税等の更正処分(以下本件更正処分3という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下本件賦課決定処分3といい,本件賦課決定処分1及び本件賦課決定処分2〔以下本件賦課決定処分1・2という。〕と併せて本件各賦課決定処分という。)を行った。

本件各出張所長は,平成23年4月22日付けで,原告が平成21年9月30日から同年12月28日までの間に輸入(納税)申告した輸入貨物のうち,別紙5の3輸入目録3の類型欄に4と記載されたも
の(以下本件輸入貨物4といい,本件輸入貨物1ないし3と併せて本件各輸入貨物という。)に係る納税申告についてした更正の請求(以下本件更正請求という。)に対し,更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下本件通知処分という。)を行った。



本件は,
原告が,
本件各出張所長による前記⑵ないし⑷の各処分について,P1社と本件ベンダーとの間の売買が関税定率法4条1項の規定する輸入取引に該当し,同項の規定を適用して輸入貨物の課税価格を計算すべきであるなどと主張して,本件更正処分1及び本件賦課決定処分1並びに本件更正①
処分2及び本件賦課決定処分2
(以下,
併せて
本件甲事件各処分
という。

の各取消し(ただし,本件更正処分1及び本件更正処分2〔以下,併せて本件更正処分1・2といい,本件更正処分3と併せて本件各更正処分という。〕については,原告主張の税額を超える部分)を求め(甲事件),②本件更正処分3のうち原告主張の税額を超える部分及び本件賦課決定処分3並びに本件通知処分(以下,併せて本件乙事件各処分という。)の各取消し(ただし,本件更正処分3については,原告主張の税額を超える部分)を求めている(乙事件)事案である。

2
関係法令等の定め


輸入貨物の税関手続に係る関係法令の定め
関税法等の関税関係法令は,外国から本邦に到着した貨物が国内に引き取られるまでの税関手続等について,概要,以下のとおり定めている。ア
貨物を輸入しようとする者は税関長の許可を受けなければならず(関税法〔平成23年法律第7号による改正前のもの。以下同じ。〕67条),当該貨物に係る関税並びに内国消費税(輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律〔以下輸徴法という。〕2条1号に規定する内国消費税をいう。以下同じ。)及び地方消費税が納付されたこと,輸入に関して他の法令の規定により必要とされる許可,承認等を受けていること及び他の法令の規定により必要とされる検査を完了し,条件を具備していること等を税関長が事前に確認しなければ輸入を許可しないこととしている(関税法70条ないし72条)。また,輸入とは,外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては,保税地域を経て本邦に)引き取ることをいい(同法2条1項1号),輸出とは,内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう(同項2号)。


輸入貨物に係る一般的な税関手続は,以下のとおりである。
(ア)

外国から本邦に到着した貨物は,原則として,まず保税地域(関税
法29条)に搬入され(同法30条),これを輸入しようとする者(以下輸入者という。)は,当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を記載した輸入申告書(同法67条,関税法施行令59条)及び仕入書等(関税法68条)を税関長に対して提出し,輸入申告を行う(同法67条)。また,他の法令により輸入に関して許可,承認等を必要とする貨物については,輸入申告の際に当該許可,承認等を受けている旨を,他の法令により輸入に関して検査又は条件の具備を必要とする貨物については,輸入申告に係る税関の審査の際に当該検査の完了又は条件の具備を税関に証明しなければならない(同法70条)。
(イ)a

申告納税方式が適用される貨物(関税法6条の2第1項1号)の

輸入者は,税関長に対し,納税申告をしなければならない。納税申告は,輸入申告書に,当該貨物に係る課税標準,税額その他必要な事項を記載して,これを税関長に提出することにより行われる(同法7条1項及び2項,関税法施行令〔平成25年政令第117号による改正前のもの。以下同じ。〕4条1項,輸徴法6条1項,地方税法72条の101)。ただし,当該貨物の関税の課税標準となる価格(課税価格)の計算につき,関税定率法4条1項の適用を受ける場合(関税法68条の規定により提出する書類等によって課税価格の計算の基礎が明らかである場合に限る。)以外の場合には,輸入者は,課税価格の計算の基礎及びこれに関連する事項を併せて申告しなければならない(同法7条2項,関税法施行令4条1項3号。以下,課税価格の計算の基礎及びこれに関連する事項に係る申告を評価申告という。)。b
評価申告は,原則として,輸入申告の都度,評価申告に係る事項を輸入申告書に記載して提出することにより行われるが,この場合,輸入申告書への記載に代えて当該事項を記載した申告書(以下個別申告書という。)を輸入申告書と併せて税関長に提出することにより行うこともできる。また,貨物の輸入が同一人との間の継続した取引に係るものであり,かつ,評価申告に係る事項の記載が同一の内容となるときは,あらかじめ,当該事項を記載した申告書(以下包括申告書という。を税関長に提出することにより行うことができる

(同
条3項)。包括申告書を提出した場合においては,当該包括申告書が提出された日から起算して2年間に限り,個々の輸入申告書には,既に包括申告書を提出している旨を付記して,評価申告に係る事項の記載を省略することができる(同項)。
(ウ)

税関長は,提出された輸入申告書及びそれに関連する書類に不備が
なく,必要な検査を行い,当該貨物について輸入の許可の要件が充足されていると認められ,かつ,関税等の納付が確認された場合には,当該貨物の輸入を許可する(関税法67条,70条ないし72条)。
(エ)a

輸入者は,輸入(納税)申告の後,関税等の額に相当する担保を

提供して税関長による承認
(以下
輸入許可前貨物引取承認
という。

を受けた場合は,輸入の許可前であっても,外国貨物(関税法2条1項3号)を引き取ることができる(同法73条1項,輸徴法9条2項,地方税法72条の100第1項)。ただし,税関長は,輸入の許可を与えることができない場合(関税等が納付される前であることによる場合を除く。)においては,輸入許可前貨物引取承認をしてはならない(関税法73条2項)。

税関長は,輸入許可前貨物引取承認を受けて引き取られた貨物につき,その納税申告に誤りがないと認めた場合には,当該申告に係る税額及びその税額を納付すべき旨(関税等の納付を要しないときは,その旨)その他政令で定める事項を,書面により,当該輸入許可前貨物引取承認を受けた者に通知する
(関税法7条の17,
輸徴法9条3項,
地方税法72条の100第1項)。



関税等の課税標準等に係る関係法令の定め

関税の課税標準及び関税率
輸入貨物には,関税法及び関税定率法その他関税に関する法律により,関税を課するが,条約中に関税についての特別の規定があるときは,当該規定によるものとされている(関税法3条)。また,関税は,輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課すこととされ(関税定率法3条),税率については,関税定率法,関税暫定措置法等により定められている。なお,本件において問題となる輸入貨物については,次の(ア)ないし(ウ)の税率が適用される。
(ア)

関税定率法において定める税率
関税定率法3条及び同法別表において定められている税率
(基本税率)

(イ)

世界貿易機関を設立するマラケシュ協定に基づく税率
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成6年条約第15号)附
属書1Aの1994年の関税及び貿易に関する一般協定(以下1994年のガットという。)のマラケシュ議定書に附属する譲許表の第38表の日本国の譲許表に掲げられている税率(協定税率)
(ウ)

関税暫定措置法において定める税率
関税暫定措置法2条並びに同法別表第1及び別表第1の3により,期
限又は期間を定めて適用される税率(暫定税率)

消費税の課税標準等
(ア)

保税地域から引き取られる外国貨物(関税法2条1項3号)には消
費税を課すこととされている
(消費税法4条2項)
ところ,
課税貨物
(上
記外国貨物のうち同法6条2項の規定により非課税とされているもの以外のものをいう〔同法2条1項11号〕。)に係る消費税は,当該課税貨物につき関税定率法4条から4条の8までの規定に準じて算出した価格に当該課税貨物の保税地域からの引取りに係る消費税以外の消費税等(国税通則法2条3号に規定する消費税等をいう。)の額及び関税の額に相当する金額を加算した金額を課税標準として課すこととされている(消費税法
〔平成25年法律第6号による改正前のもの。28条3項)


(イ)

消費税が課税される貨物については,当該貨物を保税地域から引き
取る者に対し,当該保税地域所在の都道府県が消費税額を課税標準として地方消費税を貨物割によって課するものとされ(地方税法〔平成27年法律第2号による改正前のもの。〕72条の77第3号,72条の78第1項),貨物割の賦課徴収は,国が消費税の賦課徴収の例により,消費税の賦課徴収と併せて行うものとされている(同法72条の100第1項)。


輸入貨物の課税価格の決定方法に係る関税定率法の定め
関税定率法4条から4条の4は,関税の課税標準である輸入貨物の課税価格の決定方法について,概要,以下のとおり定めている。


関税定率法4条
(ア)

関税定率法4条1項は,
原則的な課税価格の決定方法を定めており,

輸入貨物の課税価格は,原則として当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時に買手により売手に対し又は売手のために,当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格
(以下
現実支払価格
という。

に,その含まれていない限度において,同項各号に掲げる金額(以下のaないしe)を加えた価格とする旨規定している(以下,同項の定める関税の課税価格の決定方法を現実支払価格による方法という。)。a
当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃,保険料等の費用(関税定率法4条1項1号)


当該輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用のうち次に掲げるもの(関税定率法4条1項2号)


仲介料その他の手数料(買付手数料を除く。)



当該輸入貨物の容器(当該輸入貨物の通常の容器と同一の種類及
び価値を有するものに限る。)の費用



当該輸入貨物の包装に要する費用
当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して,買手により無償で又
は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務のうち次に掲げるものに要する費用(関税定率法4条1項3号)


当該輸入貨物に組み込まれている材料,部分品又はこれらに類す
るもの


当該輸入貨物の生産のために使用された工具,鋳型又はこれらに
類するもの



当該輸入貨物の生産の過程で消費された物品



技術,設計その他当該輸入貨物の生産に関する役務で政令で定め
るもの


当該輸入貨物に係る特許権,意匠権,商標権その他これらに類するもの(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く。)で政令で定めるものの使用に伴う対価で,当該輸入貨物の輸入取引の条件として,買手により直接又は間接に支払われるもの(関税定率法4条1項4号)


買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものとされているもの(関税定率法4条1項5号)
(イ)

関税定率法4条2項本文は,輸入貨物に係る輸入取引に関し,買手
による当該輸入貨物の処分又は使用につき制限があることなど,同項各号に掲げる事情のいずれかがある場合における当該輸入貨物の課税価格の決定については,同法4条の2から4条の4までに定めるところによる旨規定している。

関税定率法4条の2
(ア)

関税定率法4条の2第1項は,同法4条1項の規定により輸入貨物
の課税価格を計算することができない場合又は同条2項本文の規定の適用がある場合において,当該輸入貨物と同種又は類似の貨物(当該輸入貨物の本邦への輸出の日又はこれに近接する日に本邦へ輸出されたもので,当該輸入貨物の生産国で生産されたものに限る。)に係る取引価格(同条1項の規定により課税価格とされたものに限る。以下同種類似貨物の取引価格という。)があるときは,当該輸入貨物の課税価格は,当該同種類似貨物の取引価格とする旨規定している(以下,同法4条の2第1項の定める関税の課税価格の決定方法を同種類似貨物の取引価格による方法という。)。(イ)

関税定率法4条の2第1項は,同種類似貨物の取引価格について,
輸入貨物の取引段階と同一の取引段階及び輸入貨物の取引数量と実質的に同一の取引数量により輸入取引がされた同種又は類似の貨物
(以下
同一の取引段階等による同種又は類似の貨物という。)に係る取引価格とし,当該輸入貨物と当該同一の取引段階等による同種又は類似の貨物との間に,運送距離又は運送形態が異なることにより輸入港までの運賃等に相当の差異があるときは,その差異により生じた価格差につき,必要な調整を行った後の取引価格とする旨規定している。
(ウ)

関税定率法4条の2第2項は,同一の取引段階等による同種又は類
似の貨物がない場合における同種類似貨物の取引価格について,取引段階又は取引数量の差異及び輸入港までの運賃等の差異による輸入貨物との間の価格差につき,必要な調整を行った後の価格とする旨規定している。

関税定率法4条の3
(ア)a

関税定率法4条の3第1項1号は,同法4条及び4条の2の規定

により輸入貨物の課税価格を計算することができない場合において,当該輸入貨物の国内販売価格又は当該輸入貨物と同種若しくは類似の貨物(当該輸入貨物の生産国で生産されたものに限る。)に係る国内販売価格があるときは,当該輸入貨物の課税価格は,当該国内販売価格から同号イないしハの金額(次の⒜ないし⒞)を控除して得られる価格とする旨規定している(以下,同法4条の3第1項1号の定める関税の課税価格の決定方法を国内販売価格による方法という。)。⒜

当該輸入貨物と同類の貨物(同一の産業部門において生産された
当該輸入貨物と同一の範疇に属する貨物)で輸入されたものの国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費(⒝に掲げる費用を除く。)(関税定率法4条の3第1項1号イ)


当該国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類
似の貨物に係る輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運賃,保険料その他当該運送に関連する費用(関税定率法4条の3第1項1号ロ)



当該国内において販売された輸入貨物又はこれと同種若しくは類
似の貨物に係る本邦において課された関税その他の課徴金(関税定率法4条の3第1項1号ハ)


関税定率法4条の3第1項1号に規定する国内販売価格について,関税定率法施行令(平成25年政令第117号による改正前のもの。以下同じ。)1条の10第1項は,輸入貨物の課税物件確定の時の属する日又はこれに近接する日における国内販売価格とし,これらの国内販売価格がないときは,当該課税物件確定の時の属する日後90日以内の最も早い日における国内販売価格とする旨規定しており,同条2項は,これらの貨物について国内における最初の取引段階における販売が2以上あり,当該販売に係る単価が異なる場合はそれらの単価のうち,最大の販売数量に係る単価(以下最大販売数量単価とい
う。)に基づいて計算した場合に得られる価格を国内販売価格とする旨規定している。

(イ)

関税定率法4条の3第2項は,同条1項の規定により輸入貨物の課
税価格を計算することができない場合において,当該輸入貨物の製造原価を確認することができるときは,当該輸入貨物の課税価格は,当該輸入貨物の製造原価に当該輸入貨物と同類の貨物の本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費並びに当該輸入貨物の輸入港までの運賃等の額を加えた価格とする旨規定している(以下,同条2項の定める関税の課税価格の決定方法を製造原価による方法という。)。
(ウ)

関税定率法4条の3第3項は,輸入貨物の製造原価を確認すること
ができる場合において,当該輸入貨物の輸入者が要請するときは,同条1項の規定に先立って同条2項の規定により当該輸入貨物の課税価格を計算する旨規定している。

関税定率法4条の4
関税定率法4条の4は,同法4条から4条の3までの規定により課税価格を計算することができない輸入貨物の課税価格は,これらの規定により計算される課税価格に準ずるものとして政令で定めるところにより計算される価格とする旨規定しており(以下,同法4条の4の定める関税の課税価格の決定方法をその他の方法という。),関税定率法施行令1条の11第1号は,関税定率法4条1項の規定により計算された課税価格又は同法4条の3第1項の規定を適用して計算された課税価格のうち,品質,性能,輸出の時期その他の事情の差異により生じた当該輸入貨物との価格差を明らかにすることができると認められる貨物に係るものがある場合には,当該課税価格にこれらの貨物の価格表による品質又は性能の差異に応ずる価格比,輸出の時期の差異による価格の変動率を乗ずる等当該課税価格についての品質,性能,輸出の時期その他の事情の差異により生じた当該輸入貨物との価格差につき必要な調整を行った後の価格とする旨規定している。また,関税定率法施行令1条の11第2号は,同条1号に該当する場合以外の場合には,1994年のガット7条及び世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1Aの1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定(以下関税評価協定という。)の規定に適合する方法として税関長が定める方法により計算される価格とする旨規定している。



1994年のガットにおける定め
1994年のガット7条2項⒜は,輸入貨物の関税上の価額は,関税を課せられる輸入貨物又は同種の貨物の実際の価額に基づくものでなければならない旨を定め,同項⒝は,
実際の価額とは,輸入国の法令で定める時に,
及びその法令で定める場所で,その貨物又は同種の貨物が通常の商取引において完全な競争的条件の下に販売され,又は販売のために提供される価格をいう旨を定め,また,同項⒞は,実際の価額を同項⒝の規定に従って確定することができないときは,関税上の価額は,その価額に最も近い相当額に基づくものでなければならない旨を定めている。


関税評価協定の定め等

関税評価協定は,別紙6関税評価協定の定め記載のとおりの内容を含んでいるところ,
関税定率法は,
関税の課税価格の決定方法等について,
関税評価協定に準拠しており,現実支払価格による方法は関税評価協定①
1条に,同種類似貨物の取引価格による方法は関税評価協定2条及び3②
条に,③国内販売価格による方法は関税評価協定5条に,④製造原価による方法は関税評価協定6条に,⑤その他の方法は関税評価協定7条に,それぞれ準拠している。

イ(ア)

関税定率法4条1項に規定する
輸入貨物に係る輸入取引がされた

が,関税評価協定1条1項に規定する貨物が輸入国への輸出のために販売されたと同じ意味であることについては,当事者間に争いがないところ,関税評価協定18条及び関税評価協定の附属書Ⅱパラグラフ1の規定に基づき,加盟国による関税評価協定の解釈及び適用の統一を技術的に確保するために設置されている関税協力理事会の主催する関税評価に関する技術委員会(以下関税評価技術委員会という。)は,1986年(昭和61年)10月10日,上記貨物が輸入国への輸出のために販売されたという表現の意味について,
勧告的意見14.1『輸入国への輸出のために販売された』という表現の意味(別紙7の1。以下勧告的意見14.1という。)を採択した。
(イ)

関税評価技術委員会は,2007年(平成19年)4月27日,貨
物の売買に係る2つ以上の連続する販売(一連の販売)がある場合における関税評価協定1条1項の適用に関して,解説22.1一連の販売における『輸入国への輸出のために販売された』という表現の意味(別
紙7の2。以下解説22.1という。)を採択した。
3
前提事実
(証拠等を掲げていない事実は,
当事者間に争いのない事実である。



当事者等

原告は,化粧品,美容用品その他のパーソナルケア製品及び栄養補助食品の卸売販売等の事業を営む株式会社であり,米国ユタ州の法人であるP2Inc.(以下P2社という。)の全額出資子会社である。

イ(ア)

P3Inc.(以下P3社という。は,パーソナルケア製品及び栄
養補助食品の販売等の事業を行う米国ユタ州の法人であり,P2社の全額出資子会社である。[乙36,弁論の全趣旨]
(イ)

P1社は,各国のディストリビューター・ネットワークを通じてパ
ーソナルケア製品及び栄養補助食品を販売する事業等を営む米国デラウェア州の法人であり,P2社の全額出資子会社である。[甲2の1,弁論の全趣旨]
ウ(ア)

P2社及びその全額出資子会社(以下,これらを併せてP4グループという。)は,世界約50の国と地域において,ネットワークマーケティングシステムと呼ばれる販売方法により,P3社との間でディストリビューター契約を締結した顧客(以下ディストリビューターという。)に対し,パーソナルケア製品及び栄養補助食品(以下,P4グループが販売する商品をP4製品という。)を販売するという事業を行っている。[甲2の1・2,甲49,50,53,乙36,弁論の全趣旨]
(イ)

ディストリビューターは,P3社との間で締結したディストリビュ
ーター契約に基づき,顧客への再販又は自己消費のためにP4製品の注文を行い,P4製品を小売販売し,スポンサー活動(第三者に対する勧誘活動)を行う者であり,P5(P3社からディストリビューターに支払われるボーナス等について規定する報酬制度)に従い,P4製品(ボーナス対象製品)の購入数等に応じて,P3社からボーナス(以下本件ボーナスという。)を受け取る資格を有している。[甲49,50,53,56]


本件に関する取引の概要
原告とP1社との間における問屋契約の締結等
(ア)

原告は,平成17年(2005年)7月1日付けで,P1社との間
において,TOIYAAGREEMENTと題する問屋契約(以

下本件問屋契約という。)を締結した。
(イ)

本件問屋契約に係る契約書(乙1の1・2。以下本件問屋契約書

という。)には,別紙8本件問屋契約書の内容記載の内容が含まれているところ,本件問屋契約における合意事項の主なものは,以下のとおりである(なお,同別紙は,原告が税関当局に提出した本件問屋契約書の仮訳文であるが,本件問屋契約4.1条の訳の正確性については,当事者間に争いがある
〔同条の原文は,
同別紙の別添
原文(4.1条)
記載のとおりである。〕。)。[乙1の1・2]

P1社は,日本におけるP4製品の販売のために,原告を問屋として指名する。原告は,自己の名義において,ただし,P1社の勘定及び危険負担において,P1社から受領するP4製品を販売する。(本件問屋契約2.1条)

b⒜

原告は,日本において販売されるP4製品を,自己の名義におい
て,
ただしP1社のために,
日本国内において調達することができ,
原告が日本国内において調達したP4製品(以下国内調達製品
という。)の所有権は,調達と同時に原告からP1社に移転し,原告が負担した費用は,P1社が補償する。
(本件問屋契約3.4条)


P4製品の所有権は,P1社からディストリビューターに直接移
転し,原告がP4製品に係る所有権を留保することはない。(本件問屋契約3.5条)


P1社は,
原告の指定する場所に,
P1社の標準的梱包形態により,
原告から特段の指定がない限り,P1社の選択する方法と運送業者によって,P4製品の発送を行う。原告は,本件問屋契約に基づき発送される全てのP4製品の輸入者であり,P4製品を輸入する際に必要な一切の措置をとる責務を負う。(本件問屋契約4.2条)

d⒜

原告は,P4製品(国内調達製品を含む。)の販売収益から,原
告の問屋としての報酬及びP1社に代わって原告が負担したP1社の経費等を控除した金額を,
P1社が指定した銀行口座に送金する。
(本件問屋契約6.4条)



P1社は,本件問屋契約に基づく原告の活動の対価として,営業
費用及び問屋としての報酬(月次売上げの3%に相当する金額)を支払う。(本件問屋契約6.5.1条)


P1社と本件ベンダーとの間の売買契約等
(ア)

原告が本件問屋契約に基づいて日本国内で引き取るP4製品(以下
本件対象貨物という。)は,いずれもP1社が,本邦外の国又は地域に所在する複数の生産者(本件ベンダー)との間において売買契約を締結して取得したものである(以下,P1社と本件ベンダーとの間における売買契約ないしこれによる売買を本件売買という。)。
(イ)

本件売買は,取引条件をFCA(FCAとは,FreeCarrierの略語
であり,指定された場所で指定された運送人に渡すまでの一切の費用とリスクを売主が負担し,それ以降の運賃や保険料,危険は,買主が負担するという貿易条件〔運送人渡し条件〕である。)又はFOBオリジン(FreeonboardOriginの略語であり,生産地点で売主から買主に貨物が引き渡され,その引渡し以降の運賃や保険料,危険は買主が負担するという米国内で使用される取引条件〔生産地点引渡し条件〕である。)としており,本件対象貨物の日本(原告)への貨物運送契約は,P1社が貨物利用運送事業者と締結している。
[甲3ないし6,弁論の全趣旨]

P1社とP3社との間におけるライセンス契約の締結等
(ア)

P1社は,2005年(平成17年)7月1日,P3社との間にお
いて,本邦のディストリビューター・ネットワークを使用すること等に関するライセンス契約(以下本件ライセンス契約という。)を締結した。[甲51]
(イ)

本件ライセンス契約には,以下の合意内容が含まれている。[甲5
1,52,弁論の全趣旨]

P3社は,P1社に対し,日本のディストリビューター・ネットワーク,ディストリビューターの名簿やP5に基づくボーナス制度などの無形資産を使用することを許諾すること。


P1社は,P5に基づくP3社のディストリビューターに対する本件ボーナスの支払債務を引き受けること。


P3社は,本件ボーナスの支払額の計算など,P5の管理事務を行うこと。


P1社は,P3社に対し,P5の管理事務費用相当額として,日本における本件ボーナスの支払対象製品等の売上高の一定割合(固定コミッション費用)
から実際のボーナス支払額を控除した金額
(以下
本件管理費用という。)を支払うこと(なお,上記割合は,当初43.5%であったが,2008年〔平成20年〕1月1日から44.0%に変更されている。)。

P1社は,P3社に対して,ライセンスフィー(以下本件ライセンス料という。)を支払うこと。

原告による本件対象貨物の取扱い等
(ア)

原告は,本件問屋契約に基づき,P1社が本件ベンダーから購入し
て本邦に向けて発送したP4製品(本件対象貨物)を,本邦の保税地域において引き取っており,その際,原告を本件対象貨物の輸入者として(なお,本件対象貨物の輸出者が誰であるかについては当事者間に争いがある。),輸入(納税)申告を行っている。この点,本件対象貨物に係る輸入(納税)申告書には,P1社が原告に対して発行したインボイス(仕入書。以下P1社インボイスという。)が添付されているところ,P1社インボイスにおいて,Shipper(荷送人)はP1社とされており,Consignee(荷受人)は原告とされている(ただし,原告については,P1社のためにP1社に代わって輸入者として活動するP6との付記がされている。)。[乙3の1・2,乙39,40,弁論の全趣旨]
(イ)

原告は,P1社の問屋として,本邦に居住している顧客(ディスト
リビューター)に対し,本件対象貨物(P4製品)を販売している。原告は,P4製品の販売に当たって,それぞれ製品1個当たりの卸売価格を設定しており,ディストリビューターに対し,①卸売価格,②卸売価格の5%割引価格,
又は,卸売価格の10%割引価格の3種類の単

価により,P4製品を販売している。また,原告は,P4製品の販売において,購入代金とは別に,全国一律の送料(以下本件配送料という。)の支払をディストリビューターから受けている。[甲53,乙67の1ないし3,弁論の全趣旨]


原告による本件対象貨物の輸入(納税)申告(平成17年7月12日から平成21年9月17日まで)
ア(ア)

原告は,平成17年7月12日から平成20年6月3日までの

間,P1社と本件ベンダーとの間の取引(本件売買)において本件ベンダーがP1社に対して発行するインボイスに記載された価格(以下ベンダーインボイス価格という。)が関税定率法4条1項に規定する輸入取引における現実支払価格であるとして,同項の規定を適用して本件対象貨物の課税価格を計算し,輸入(納税)申告を行っていた。
(イ)

原告は,横浜税関に対し,上記(ア)の輸入(納税)申告に当たり,
平成18年3月8日付け,同年7月28日付け,同年9月4日付け,同月11日付け,平成19年10月31日付け,平成20年1月17日付け及び同月24日付けの各包括申告書を提出したが,横浜税関は,これらの包括申告書の記載内容について原告との間で見解の相違があったことなどから,これらの包括申告書をいずれも審査未了として,その控えを原告に交付した。なお,これらの包括申告書においては,原告が輸入者,本件ベンダーが輸出者,P1社が輸入の委託者として記載されていた。[乙4の1ないし46]
イ(ア)

原告は,平成20年6月4日から平成21年9月17日までの間,
ベンダーインボイス価格が関税定率法4条の3第2項に規定する製造原価に代わるものであるとして,同項の規定を適用して本件対象貨物の課税価格を計算し輸入(納税)申告を行っていた。
(イ)

原告は,横浜税関に対し,上記(ア)の輸入(納税)申告に当たり,
平成20年6月3日付けの包括申告書を提出したが,横浜税関は,上記包括申告書の記載内容について原告との間で見解の相違があったことなどから,
上記包括申告書を審査未了として,
その控えを原告に交付した。
なお,上記包括申告書においては,原告が輸入者,P1社が輸出者として記載されていた。[乙5]


原告に対する立入調査の実施及びその後の経緯
ア(ア)

横浜税関調査部特別関税調査官(第2担当)P7(以下P7特調官という。)は,平成20年9月16日,原告の経理部長であるP8(以下P8経理部長という。)に電話を掛けて,原告が平成17年7月以降に行った輸入(納税)申告につき,原告に対する立入調査を行いたい旨を申し入れた。
(イ)

P7特調官は,P8経理部長との間において,数回にわたる日程調
整を行い,平成20年10月28日,P8経理部長に対し,立入調査の日程を同年11月17日から同月26日まで(正味7日間),調査人員を各日8名とする旨を記載した文書をファックスで送付した。[乙14の1・2,弁論の全趣旨]
イ(ア)

P7特調官,横浜税関調査部統括調査官(調査第12部門担当)P
9(以下P9統括官という。)及び同部所属の職員6名(以下,P7特調官及びP9統括官と併せて横浜税関調査担当官という。)は,平成20年11月17日から同月21日まで,同月26日及び同月27日,原告が平成17年11月から平成20年11月までに行った本件対象貨物の輸入(納税)申告について,原告に対する立入調査(以下本件立入調査1という。)を実施した(なお,上記の調査日程が決まるまでの経緯等については,当事者間に争いがある。)。
(イ)

P7特調官は,平成20年11月27日,原告の最高財務責任者で
あるP10(以下P10CFOという。)に対し,同日付け今回の立入調査の継続等についてと題する書面を交付し,平成21年1月中に1週間程度,原告に対する継続調査を行いたい旨を申し入れた。なお,上記書面には,本件立入調査1において原告による資料の提示及び説明が不十分であったため調査未了となったこと,
調査期日については,
平成20年12月5日までに書面で連絡をもらいたいこと,要求済み資料の写しの提出を重ねて求めること等が記載されている。
[乙18の4]
ウ(ア)

P7特調官は,原告に対し,継続調査の実施を繰り返し申し入れる
とともに,日程調整を試みたが,継続調査の実施には至らなかった(なお,継続調査の実施に至らなかった経緯等については当事者間に争いがある。)。
(イ)

P7特調官は,原告の代表取締役社長であるP11(以下P11

という。)に対し,平成21年9月10日付け貴社の輸入(納税)申告についてと題する書面(以下平成21年9月10日税関書面という。)を送付して,原告が累次にわたる継続調査の要請に応じないため,これ以上の調査は不可能と判断し,原告の平成17年11月から平成20年11月までの間の輸入(納税)申告に対する調査は打ち切る旨を伝えた。また,P7特調官は,平成21年9月10日税関書面により,本件対象貨物の課税価格は関税定率法4条の3第1項の規定を適用して決定すべきものであり,同法4条1項又は4条の3第2項の規定を適用して課税価格を計算した原告の輸入
(納税)
申告には誤りがあるとして,
原告に対して修正申告を行うことを要請するとともに,原告が修正申告を行わなければ,更正処分を行うこととなる旨を通知した。[乙23](ウ)

横浜税関調査部特別関税調査官(第1担当)P12(以下P12特調官という。)及びP7特調官は,平成21年9月28日午後3時頃,P10CFO及びP8経理部長と面会し,本件立入調査1の結果に基づき,関税定率法4条の4の規定を適用して,本件輸入貨物1及び本件輸入貨物2(以下,併せて本件輸入貨物1・2という。)の課税価格を計算して更正処分及び過少申告加算税賦課決定を行う旨を伝えた。[乙28,弁論の全趣旨]


本件甲事件各処分の内容等

本件更正処分1及び本件賦課決定処分1について
本件各出張所長は,本件輸入貨物1について,関税定率法4条1項,4条の2及び4条の3第2項に規定する方法によって課税価格を計算することができず,また,同法4条の3第1項に規定する方法によっても課税価格を計算することができなかったとして,本件立入調査1において原告から閲覧に供された書類のうち,横浜税関調査担当者が筆写することのできた,
平成19年10月における製品ごとの原告の売上げに関する
MonthlyProductsSalesListforOctober2007と題する資料(乙29の1。以下平成19年10月資料という。),平成20年10月における製品ごとの原告の売上げに関するMonthlyProductsSalesListforOctober2008と題する書類(乙29の2。以下平成20年10月資料といい,平成19年10月資料と併せて本件各売上資料という。),原告からP1社への送金及びその明細に関する書類(乙30の1ないし3)等に基づき,以下の(ア)及び(イ)のとおり,本件更正処分1及び本件賦課決定処分1(以下,併せて本件更正処分1等という。)を行った。
(ア)a

本件各出張所長は,平成21年9月29日付けで,原告が平成1

9年10月に輸入(納税)申告した本件対象貨物のうち,同月において原告により国内販売された貨物と同一の製品番号の本件輸入貨物1-1について,関税定率法4条の4の規定に基づき関税定率法施行令1条の11第2号の規定を適用し,同月における平均販売単価(販売金額〔消費税及び地方消費税[以下消費税等という。]を含まな
いもの。〕を販売数量で除すことによって得られる製品番号ごとの平均販売単価をいう。以下同じ。)に輸入数量を乗じて計算した価格を,関税定率法4条の3第1項1号に規定する国内販売価格とみなし,また,原告からP1社への同年1月ないし同年12月分の送金及びその明細に関する書類から計算される国内販売に係る経費等の額を同号イ及びロに規定する国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費等(以下国内経費等という。)の額とみなして,同号に
規定する方法に準じて課税価格を計算し,本件更正処分1-1及び本件賦課決定処分1-1を行った。

本件輸入貨物1-1の課税価格の計算(上記a)は,本件各出張所長が国内販売価格とみなした価格(以下みなし国内販売価格とい
う。)に対する国内経費等とみなされる額(以下みなし国内経費等の額という。)の割合(以下みなし国内経費等率という。)を計算した上で,本件輸入貨物1-1に係るみなし国内販売価格から,①同価格にみなし国内経費等率を乗じた金額を控除することにより,関税定率法4条の3第1項1号イ及びロ(通常の手数料又は利潤及び一般経費)
に相当する金額を控除し,上記①の計算後の価格を各製②
品に係る関税率に1を加えた数値で除することにより,同号ハ(関税その他の課徴金)に相当する金額を控除するという方法でされたものである。本件輸入貨物1-1に係るみなし国内経費等率(以下みなし国内経費等率(輸入貨物1-1)という。)は,0.63563526であり,
その算定方法は,
別紙9の1
みなし国内経費等率(本件輸入貨物1-1)の算定方法記載のとおりである。[乙32の2・
3,弁論の全趣旨]

(イ)a

本件各出張所長は,平成21年9月29日付けで,原告が平成2

0年10月に輸入(納税)申告した本件対象貨物のうち,同月において原告により国内販売された貨物と同一の製品番号の本件輸入貨物1-2について,関税定率法4条の4の規定に基づき関税定率法施行令1条の11第2号の規定を適用し,同月における平均販売単価に輸入数量を乗じて計算した価格を国内販売価格とみなし,また,原告からP1社への同年1月ないし同年9月分の送金及びその明細に関する書類から計算される国内販売に係る経費等の額を国内経費等の額とみなして,関税定率法4条の3第1項1号に規定する方法に準じて課税価格を計算し,本件更正処分1-2及び本件賦課決定処分1-2を行った。

本件輸入貨物1-2の課税価格の計算(上記a)は,本件輸入貨物1-2に係るみなし国内販売価格から,同価格にみなし国内経費等①
率を乗じた金額を控除することにより,関税定率法4条の3第1項1号イ及びロ(通常の手数料又は利潤及び一般経費)に相当する金額を控除し,上記①の計算後の価格を各製品に係る関税率に1を加えた②
数値で除することにより,同号ハ(関税その他の課徴金)に相当する金額を控除するという方法でされたものである。本件輸入貨物1-2に係るみなし国内経費等率(以下みなし国内経費等率(輸入貨物1-2)といい,みなし国内経費等率(輸入貨物1-1)と併せて本件各みなし国内経費等率という。)は,0.65197784であり,その算定方法は,別紙9の2みなし国内経費等率(本件輸入貨物1-2)の算定方法記載のとおりである(なお,以下,別紙9の1・2に添付されている各参考資料を併せてみなし国内経費等率の被告計算表という。)。[乙32の2・3,弁論の全趣旨]

本件更正処分2及び本件賦課決定処分2について
本件各出張所長は,本件輸入貨物2について,本件輸入貨物1の課税価格(前記ア(ア)・(イ))に基づき,以下の(ア)及び(イ)のとおり,本件更正処分2及び本件賦課決定処分2(以下,併せて本件更正処分2等という。)を行った。
(ア)

本件各出張所長は,平成21年9月30日付けで,原告が平成18
年10月3日から平成20年4月15日までの間に輸入(納税)申告した本件対象貨物のうち,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の本件輸入貨物2-1について,関税定率法4条の4の規定に基づき関税定率法施行令1条の11第2号の規定を適用し,本件輸入貨物1-1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物については本件更正処分1-1における本件輸入貨物1-1の課税価格を,本件輸入貨物1-2と同一の品名及び製品番号の輸入貨物(ただし,本件輸入貨物1-1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物を除く。)については本件更正処分1-2における本件輸入貨物1-2の課税価格を,それぞれ関税定率法4条の2第1項に規定する同種類似貨物の取引価格とみなして,同項に規定する方法に準じて課税価格を計算し,本件更正処分2-1及び本件賦課決定処分2-1を行った。
(イ)

本件各出張所長は,平成21年9月30日付けで,原告が平成20
年4月18日から同年11月27日までの間に輸入(納税)申告した本件対象貨物のうち,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の本件輸入貨物2-2について,関税定率法4条の4の規定に基づき関税定率法施行令1条の11第2号の規定を適用し,本件輸入貨物1-2と同一の品名及び製品番号の輸入貨物については本件更正処分1-2における本件輸入貨物1-2の課税価格を,本件輸入貨物1-1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物(ただし,本件輸入貨物1-2と同一の品名及び製品番号の輸入貨物を除く。)については本件更正処分1-1における本件輸入貨物1-1の課税価格を,それぞれ関税定率法4条の2第1項に規定する同種類似貨物の取引価格とみなして,同項に規定する方法に準じて課税価格を計算し,本件更正処分2-2及び本件賦課決定処分2-2を行った。


本件訴訟(甲事件)に至る経緯等

原告及びP1社は,平成21年11月27日付けで,本件甲事件各処分について,成航出張所長が行ったものについては東京税関長に対し,大黒出張所長及び本牧出張所長が行ったものについては横浜税関長に対し,それぞれ異議申立てを行い,東京税関長及び横浜税関長は,それぞれ,平成22年2月24日付けで,
P1社については異議申立てをいずれも却下し,
原告については異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。
イ(ア)

原告及びP1社は,平成22年3月24日付けで,本件甲事件各処
分について,関税に係る処分については財務大臣に対し,消費税等に係る処分については国税不服審判所長に対し,
それぞれ審査請求を行った。
(イ)a

国税不服審判所長は,平成23年3月16日付けで,P1社につ

いては審査請求をいずれも却下し,原告については審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。

財務大臣は,平成23年5月11日付けで,P1社については審査請求をいずれも却下し,原告については大黒出張所長及び本牧出張所長による関税に係る本件更正処分1-1の一部を取り消し,その余を棄却する旨の裁決をした。本件更正処分1-1のうち,上記裁決により一部取り消されたものは,次の⒜及び⒝である(以下,本件更正処分1-1は,上記一部取り消された後のものをいうものとする。)。⒜

大黒出張所長が行った本件更正処分1-1(更正第SK1000
1号)のうち,平成19年10月10日付け輸入(納税)申告(輸入申告番号21601981430)に係る関税の納付すべき税額636万5800円を超える部分



本牧出張所長が行った本件更正処分1-1(更正第63号)のう
ち,平成19年10月10日付け輸入(納税)申告(輸入申告番号21601967651)に係る関税の納付すべき税額1687万7100円を超える部分


原告は,平成23年9月12日,本件甲事件各処分(ただし,本件更正処分1・2については,原告主張の税額を超える部分)の各取消しを求める本件訴訟(甲事件)を提起した。[顕著な事実]


原告による本件対象貨物の輸入(納税)申告(平成21年9月30日から同年12月28日まで)
ア(ア)

原告は,平成21年9月17日付けで,横浜税関に対し,関税法施行
令4条3項の規定に基づき,包括申告書(乙57。以下平成21年9月17日付け包括申告書という。)を提出した。平成21年9月17日付け包括申告書には,本件対象貨物について,
関税定率法4条の4の規定
により,ベンダーインボイス価格を本件対象貨物の製造原価に準ずるものとして,同法4条の3第2項に規定する方法に準じた方法により課税価格を計算する旨記載されていた。なお,平成21年9月17日付け包括申告書においては,原告が輸入者,P1社が輸出者として記載されていた。[乙57]
(イ)

横浜税関は,本件対象貨物については,関税定率法に規定する適用
法条の優先順位に従って,
同法4条の3第1項の規定を適用して課税価格
を計算すべきものであると判断し,
平成21年9月17日付け包括申告書
を審査未了とし,
審査が終了できない理由として,
平成21年9月17日
付け包括申告書に記載された輸入貨物の課税価格の計算に関する適用法条及び計算方法は適正ではない旨を記載した書面を添付して,平成21年9月17日付け包括申告書の控えを原告に交付した。
イ(ア)

横浜税関が平成21年9月17日付け包括申告書を審査未了とし,
その控えを原告に交付した際,横浜税関業務部統括審査官(通関総括第1部門担当)P13(以下P13統括官という。),同部関税評価官(第1部門担当)P14(以下P14評価官という。)及び同税関の職員4名は,原告のサプライチェーン&マニュファクチュアリングスーパーバイザーであるP15及び原告のコンサルタントであるP16他1名(以下,併せてP15らという。)と面談した。P13統括官は,P15らに対し,本件対象貨物の輸入(納税)申告に当たっては,関税定率法4条の3第1項の規定により課税価格を計算するとともに,その計算の根拠となる資料を提出する必要がある旨を伝えた。れにこ
対し,P15らは,同項の規定により課税価格を計算するには時間を要するため,とりあえず,審査未了として交付された平成21年9月17日付け包括申告書に記載された方法により課税価格を計算して輸入(納税)申告を行うとともに,関税法73条1項の規定に基づき,必要な担保を提供した上で,輸入許可前貨物引取承認を受けて貨物を引き取りたい旨申し出た。[乙60,弁論の全趣旨]
(イ)

P13統括官は,平成21年9月18日,P15に電話を掛けて,
本件対象貨物について輸入許可前貨物引取承認を受けて引き取ることを認める旨,また,本件対象貨物の輸入を許可するに当たっては,当該貨物につき関税定率法4条の3第1項の規定により課税価格の計算をするための資料を早急に提出する必要がある旨を伝えた。P15は,その後,P13統括官に対し,本件対象貨物について,後から修正申告を行うので,平成21年9月17日付け包括申告書に記載された方法により,
従来どおり
ベンダーインボイス価格に基づき課税価格を計算して輸入(納税)申告を
行いたい旨の申出を再度行い,P13統括官は,P15に対し,原告からそのような輸入(納税)申告があったとしても,輸入(納税)申告書は受理するが,その課税価格を適正なものと認めるということではない旨を伝えた。[乙61]
(ウ)

原告は,平成21年9月30日から同年12月28日までの間,本件
各出張所長に対し,別紙5の3の輸入貨物欄記載の各輸入貨物について,
上記(イ)の申出のとおり,平成21年9月17日付け包括申告書に記載された方法により,関税定率法4条の4の規定を適用し,ベンダーインボイス価格を本件対象貨物の製造原価に準ずるものとして,同法4条の3第2項に規定する方法に準じて課税価格を計算して,輸入(納税)申告(以下本件当初申告という。)を行い,本件問屋契約に係る輸入貨物に係る関税等の額に相当する額の担保を提供し,輸入許可前貨物引取承認を受けて上記輸入貨物を引き取った(なお,本件輸入貨物4は,上記輸入貨物のうち,後述する修正申告の対象とされたものである。)。⑻

原告による修正申告の経緯等


P10CFO,P8経理部長及び原告の経理部シニアスーパーバイザー
であるP17(P10CFO及びP8経理部長と併せてP10らという。)は,平成22年1月29日,P13統括官,P14評価官及び業務部職員5名と面談し,本件輸入貨物4の課税価格を関税定率法4条の3第1項1号の規定により計算するための資料として,平成21年1月から同年9月までの期間における原告の各月の製品ごとの売上げに関する資料,同期間に係る原告及びP1社の損益計算書等を提出するとともに,国内経費等の額の国内販売価格に対する割合
(以下
国内経費等率
という。

として原告が自ら計算した率(90.2%。以下原告計算国内経費等率という。)を提示した。P14評価官は,同日,P10らに対し,原告計算国内経費等率は適正なものではない旨を伝えた。
[乙62の1・
2,乙63]
イ(ア)

P13統括官は,平成22年2月10日,P10CFOに対し,ファ
クシミリで文書を送付し,
平成21年10月から同年12月までの期間に
おける原告の各月の製品ごとの売上げに関する資料並びに同年1月から同年12月までの期間に係る原告及びP1社の損益計算書等の提出を要請した。[乙64の1・2]
(イ)

P10らは,
平成22年2月18日及び同年3月11日,
P13統括

官,P14評価官及び業務部職員4名と面談し,P13統括官がP10CFOに対して提出を要請した資料等を提出するとともに,
これらの資料等
について説明を行った。[乙64の1・2,乙65,66]
ウ(ア)

P13統括官,P14評価官及び業務部職員4名は,平成22年3
月26日,P10らと面談し,P10らに対し,それまでにP10らから提出された資料及びP10らの説明内容に基づき,
横浜税関が計算した
本件輸入貨物4に係る各製品1個当たりの国内販売価格を提示するとともに,国内経費等率の計算に係る横浜税関の見解を伝え,概算であることを断った上で,横浜税関が計算した国内経費等率(約57.9%)を口頭で伝えた。これに対し,P10らは,国内経費等率に係る横浜税関の見解はとりあえず理解したが,納得できるものではない旨申し立てるとともに,具体的な数字を挙げて国内経費等率の算出根拠を示してほしい旨要請したことから,P13統括官及びP14評価官は,国内経費等率に関し,別途,原告の意見を聴取する場を設ける用意がある旨及び当該要請については検討する旨伝えた。[乙67]
(イ)

P13統括官は,平成22年3月30日,P10CFOに対し,フ
ァクシミリで文書を送付し,
横浜税関が原告及びP1社の平成21年1月
1日から同年12月31日まで事業年度(以下平成21事業年度という。)に係る各損益計算書に基づき,平成22年3月26日におけるP10らからの説明の内容を踏まえて計算した国内経費等率59.
05%
(以
下試算国内経費等率という。)を提示した(なお,国内経費等率を算定する基礎となった本件対象貨物を本件同類貨物という。)。
[乙
68の1・2]
(ウ)

P13統括官,
P14評価官及び業務部職員5名は,
平成22年4月

19日,P10CFO,P17及びP16らと面談し,国内経費等率の計算に係る原告の意見を聴取した。
P13統括官が,
原告が国内経費等に該
当すると主張した経費等について検討して連絡する旨伝えたところ,P1
0CFOは,
本件輸入貨物4について,
横浜税関が出した結論に基づき修
正申告を行う旨述べた。[乙69]
(エ)

P13統括官は,平成22年4月21日,P10CFOに対し,ファ
クシミリで文書を送付し,原告が国内経費等に該当すると主張した経費等に係る検討に当たって,当該経費等に関する資料の提出を求めたところ,P10CFOは,同月26日付けでP13統括官に対して当該資料を提出した。[乙70,71]
(オ)

P13統括官は,平成22年5月7日,P10CFOに対し,ファ
クシミリで同日付けの文書を送付し,
原告が国内経費等に該当すると主張
した経費等のうち,
一部の費用については国内経費等に該当する可能性が
あるとした上で,
当該費用が国内経費等に含まれる場合の国内経費等率を
再計算し(59.49%),再度,国内経費等率の計算等に係る横浜税関の見解を伝えるとともに,同月17日までに,本件輸入貨物4に係る修正申告の具体的な予定を連絡するよう要請した。[乙72の1・2]エ(ア)

原告は,平成22年5月17日,本件輸入貨物4のうち,平成21
年9月30日付けで大黒出張所長に対して行った6件の輸入(納税)申告に係る輸入貨物(別紙5の3の整理番号1759ないし1782の輸入貨物)について,関税定率法4条の3第1項1号の規定を適用し,試算国内経費等率(59.05%)を用いて課税価格を計算して,大黒出張所長に対し,輸入の許可前における修正申告(以下本件修正申告1という。)を行った。
(イ)

本件修正申告1における課税価格の計算方法は,本件対象貨物の国
内販売価格から,国内販売価格に試算国内経費等率を乗じた金額を控①
除することにより,関税定率法4条の3第1項1号イ及びロ(通常の手数料又は利潤及び一般経費)
に相当する金額を控除し,上記①の計算

後の価格を各製品に係る関税率に1を加えた数値で除することにより,同号ハ(関税その他の課徴金)に相当する金額を控除するというものである。また,上記計算に用いられた国内販売価格は,原告の国内販売価格に係る資料に基づき,本件対象貨物が国内販売される場合の製品ごとに,それぞれ輸入(納税)申告された日の属する月における当該3種類の単価(前記⑵エ(イ)①ないし③)ごとの販売数量を算出して比較することにより最大販売数量単価を求め,これに基づいて計算されたものである。[乙75の1・2,乙76,77の1・2,弁論の全趣旨]オ(ア)

P13統括官,
P14評価官及び業務部職員4名は,
平成22年5月

21日,P10ら及びP16らと面談し,P13統括官は,原告が国内経費等に該当すると主張した経費等について検討した結果,
そのうち一部の
費用を国内経費等に該当すると判断した旨伝えるとともに,
当該費用を国
内経費等に含めて再度計算した国内経費等率59.49%(上記ウ(オ)の再計算による国内経費等率と同じ。以下平成21年国内経費等率という。)を提示した。[乙73]
(イ)

大黒出張所長は,平成22年6月2日,関税定率法4条の3第1項1
号の規定を適用し,平成21年国内経費等率を用いて本件修正申告1に係る輸入貨物の課税価格を計算したところ,本件修正申告1における納付すべき関税等の額が過大であることが判明したため,当該納付すべき関税等の額を減額する更正処分(以下本件減額更正処分という。)を行った。[乙74の1ないし6]
カ(ア)

原告は,平成22年9月2日から同年10月14日までの間,本件
輸入貨物4(ただし,本件修正申告1に係る輸入貨物を除く。)について,
関税定率法4条の3第1項1号の規定を適用し,
平成21年国内経費
等率を用いて課税価格を計算して,本件各出張所長に対し,輸入許可前における修正申告(以下本件修正申告2といい,本件修正申告1と併せて本件各修正申告という。)を行った。
(イ)

本件修正申告2における課税価格の計算方法は,本件対象貨物の国
内販売価格から,国内販売価格に平成21年国内経費等率を乗じた金①
額を控除することにより,関税定率法4条の3第1項1号イ及びロ(通常の手数料又は利潤及び一般経費)
に相当する金額を控除し,上記①

の計算後の価格を各製品に係る関税率に1を加えた数値で除することにより,同号ハ(関税その他の課徴金)に相当する金額を控除するというものである。また,上記計算に用いられた国内販売価格は,原告の国内販売価格に係る資料に基づき,本件対象貨物が国内販売される場合の製品ごとに,それぞれ輸入(納税)申告された日の属する月における当該3種類の単価(前記⑵エ(イ)①ないし③)ごとの販売数量を算出して比較することにより最大販売数量単価を求め,これに基づいて計算されたものである。[乙75の1・2,乙76,77の1・2,弁論の全趣旨]キ
本件各出張所長は,本件減額更正処分及び本件修正申告2における本件輸入貨物4に係る関税等の納付があったことを確認した後,本件輸入貨物4の輸入を許可した。



本件各修正申告における税額等に係る本件更正請求
原告は,平成22年9月29日付け及び同年11月1日付けで,本件各出張所長に対し,本件各修正申告(ただし,本件修正申告1については本件減額更正処分後のもの。以下同じ。)は,法令の適用及び課税価格等の計算に誤りがあり,納付すべき関税等の額が過大であるとして,関税法7条の15第1項,国税通則法23条1項及び地方税法72条の100第1項の規定に基づき,本件更正請求を行った。


横浜税関による立入調査
横浜税関調査部特別関税調査官(第2担当)は,平成22年11月8日ないし同月12日までの間,原告が平成20年11月28日ないし平成21年9月29日までの間に輸入した本件対象貨物を対象として,原告に対する立入調査(以下本件立入調査2という。)を実施した。


本件乙事件各処分の内容等

本件更正処分3及び本件賦課決定処分3について
(ア)

原告は,本件輸入貨物3について,関税定率法4条の3第2項の規
定に基づき課税価格を計算していたところ(前記⑶イ(ア)),本件各出張所長は,本件立入調査2の結果,本件輸入貨物3の課税価格については,関税定率法4条の3第1項に規定する方法によって計算すべきものと認められ,その輸入(納税)申告における税額等の計算には誤りがあり,関税額等が過少であったことが判明したとして,平成23年3月11日付けで,本件輸入貨物3につき,本件立入調査2において原告が提出した資料等に基づき関税定率法4条の3第1項1号に規定する方法により課税価格を計算して,本件更正処分3及び本件賦課決定処分3(以下本件更正処分3等といい,本件甲事件各処分と併せて本件各更正処分等という。)を行った。(イ)a

本件輸入貨物3の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の

規定を適用して計算されており(上記(ア)),その計算方法は,本件対象貨物の国内販売価格から,国内販売価格に国内経費等率を乗じ①
た金額を控除することにより,同号イ及びロ(通常の手数料又は利潤及び一般経費)に相当する金額を控除し,②上記①の計算後の価格を各製品に係る関税率に1を加えた数値で除することにより,
同号ハ
(関
税その他の課徴金)に相当する金額を控除するというものであり,本件対象貨物に係る国内経費等率は,原告の平成20年1月1日から①
同年12月31日までの事業年度
(以下
平成20事業年度
という。

について,0.6153(以下平成20年国内経費等率といい,
平成21年国内経費等率と併せて平成20・21国内経費等率と
いう。)であり,②原告の平成21事業年度について,0.5949(平成21年国内経費等率)であって,その算定方法は,別紙10の1平成20年国内経費等率の算定
及び別紙10の2
平成21年国内経費等率の算定記載のとおりである。

本件輸入貨物3の課税価格の計算に用いられた本件対象貨物の国内販売価格は,原告から入手した資料に基づき,本件対象貨物が国内販売される場合の製品ごとに,それぞれ輸入(納税)申告された日の属する月における当該3種類の単価(前記⑵エ(イ)①ないし③)ごとの販売数量を算出して比較して最大販売数量単価を求め,これに基づいて計算されたものである。
[乙78の1・2,乙80の1ないし14,
乙81の1ないし14,弁論の全趣旨]


本件通知処分について
本件各出張所長は,平成23年4月22日,本件各修正申告における課税価格等及び関税額等は,関税等に関する法令の規定に従って計算されており,
更正をすべき理由がないと判断したとして,
本件通知処分を行った。


本件訴訟(乙事件)に至る経緯等
ア(ア)

原告及びP1社は,平成23年5月10日付けで,本件乙事件各処
分のうち,成航出張所長が行った処分については東京税関長に対し,大黒出張所長及び本牧出張所長が行った処分については横浜税関長に対し,それぞれ異議申立てを行った。これに対し,東京税関長及び横浜税関長は,それぞれ,平成23年6月24日付けで,P1社による異議申立てをいずれも却下し,原告による異議申立てをいずれも棄却する旨の決定を行った。
(イ)

原告及びP1社は,平成23年7月15日付けで,本件乙事件各処
分のうち,関税に係る処分については財務大臣に対し,消費税等に係る処分については国税不服審判所長に対し,それぞれ審査請求を行ったところ,財務大臣は,平成24年6月14日付けで,P1社による審査請求をいずれも却下し,原告による審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行い,国税不服審判所長は,同月15日付けで,P1社による審査請求をいずれも却下し,原告による審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行った。

原告は,平成24年12月18日,本件乙事件各処分(ただし,本件更正処分3については,原告主張の税額を超える部分)の取消しを求める本件訴訟(乙事件)を提起した。[顕著な事実]


なお,原告は,本件訴訟において,本件各輸入貨物の課税価格の計算につき,関税定率法4条1項が適用されない場合において,同法4条の3第1項より優先して適用が問題となる他の条項(同法4条の2,4条の3第2項)を適用して課税価格を計算すべきという主張はしない旨の陳述をしている(したがって,本件訴訟においては,同法4条の2及び4条の3第2項の適用の可否は問題とならない。)。[顕著な事実]

4
本件各更正処分等の根拠及び適法性についての被告の主張
本件各更正処分等の根拠及び適法性についての被告の主張は,
別紙11の1
本件甲事件各処分の根拠及び適法性(被告の主張),別紙11の2本件更正処分3等の根拠及び適法性(被告の主張)記載のとおりである(なお,同別紙において定義した略語は,本文においても用いることとする。)。
5
争点


本件各輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定する方法により計算することができるか否か(P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が本件各輸入貨物に係る輸入取引に該当するか否か。)。



[争点1]

本件輸入貨物1・2の課税価格を関税定率法4条の3第1項の規定する方法により計算することができないのか否か(同法4条の4の規定する方法によって計算することの可否)。



[争点2]

本件更正処分1・2における本件輸入貨物1・2の課税価格の算定が1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合したものであるか否か。[争点3]


本件各更正処分及び本件各修正申告における本件各輸入貨物の課税価格の計算方法が適正なものであるか否か。

第3

[争点4]

争点に関する当事者の主張の要旨

1
争点1(本件各輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定する方法により計算することができるか否か〔P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が本件各輸入貨物に係る輸入取引に該当するか否か。〕。)について⑴

被告の主張
ア(ア)

関税定率法4条1項は,輸入貨物の課税価格について,同条2

項本文の適用がある場合を除き,当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時の現実支払価格に基づき決定される旨を規定している。同条1項の輸入貨物に係る輸入取引がされたとは,同項が準拠する
関税評価協定1条1項の貨物が輸入国への輸出のために販売されたと同じ意味で用いられているものと解されるところ,関税評価技術委員会の採択文書である勧告的意見14.1は,この表現の意義について,

貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できる。

としており,輸入国への輸出のための販売であることの要件が,貨物の実際の国際移動を伴う取引であることであると結論付けている。(イ)

勧告的意見14.1と同様に,関税評価協定1条1項の貨物が輸入国への輸出のために販売されたという表現の意義を明確にする
ことを目的とした関税評価技術委員会の採択文書である解説22.1
は,27項において,技術委員会は,通常,買手が輸入国に所在すること及び現実に支払われた又は支払われるべき価格が当該買手により支払われる価格に基づくことが第1条の基礎的前提とされていると考える。また,技術委員会は,一連の販売における輸入国への輸出のために販売される場合の輸入貨物の現実に支払われた又は支払われるべき価格は,前段階の販売ではなく,輸入貨物を輸入国に持ち込む前に行われた直近の販売を基に決定されるとして,貨物の買手が輸入国に所在しているという前提の下,
貨物が輸入されるまでの間に一連
の販売(複数の売買)がある場合には,輸入国への輸出のための販売は直近の販売であると結論付けており,このことは,勧告的意見
14.1が,関税評価協定1条1項に規定する輸入国への輸出のための販売であることの要件が貨物の実際の国際移動を伴う取引であ
ることであるとしていることと整合し,
それを具体的に裏付けるもの
である。
(ウ)

以上によれば,
関税評価協定1条1項に規定する輸入国への輸出

のための販売とは,
貨物の実際の国際移動を伴う取引,すなわち,
輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買を意味すると解すべきである。
イ(ア)

本件対象貨物は,本件問屋契約に基づき,原告の配送の要請を

もって(本件問屋契約4.1条),原告が指定する場所に,P1社により本邦に向けて輸出されるものであり
(本件問屋契約4.
2条)

本件各輸入貨物の輸入(納税)申告に係る輸入者は原告,輸出者はP1社である。したがって,本件各輸入貨物の本邦への輸入を実際にもたらしたのは,本件問屋契約に基づく原告とP1社の取引であり,本件ベンダーとP1社との間の本件売買は,本件各輸入貨物の本邦への輸入を実際にもたらしたものではなく,関税定率法4条1項に規定する輸入取引ではない。
(イ)

また,仮に,本件問屋契約が存在しなければ,本件売買には,本

件各輸入貨物の本邦への輸入をもたらすような要素は何ら存在しないから,本件売買は,本件各輸入貨物の本邦への輸入を実際にもたらした売買には該当しない。この点,本件ベンダーとP1社との間の本件売買そのものの効果として,
本件各輸入貨物の本邦への輸入が実際に
もたらされているということができないことは,勧告的意見14.1が,その事例5について,X国に所在するホテル・チェーンの本部とサプライヤーとの間の売買は,貨物の国際移動を伴っておらず,輸出国における国内販売にすぎないと指摘した上で,
同本部と傘下の各ホ
テルとの間の取引が輸入国への輸出のための販売であり,
関税評価協
定1条による関税評価の基礎となると結論付けていることからも裏付けられる。
(ウ)

以上によれば,本件ベンダーとP1社との間の本件売買は,輸入

国への貨物の輸入を現実にもたらしたものではなく,
輸入国への輸出
のための販売には該当しない。
ウ(ア)a

原告は,本件問屋契約に基づき発送される総ての本製品に係る輸入者であり(本件問屋契約4.2条),本件各輸入貨物の輸入(納税)申告に係る輸入者は原告,輸出者はP1社である。また,本件各輸入貨物は,本件問屋契約に基づき,原告の配送の
要請をもって(本件問屋契約4.1条),原告が指定する場所に,P1社により本邦に向けて輸出され,原告によって輸入されると
ころ(本件問屋契約4.2条),本件対象貨物の輸入が,原告の
書面による配送の要請によって行われていることは,VerificationofStockTransferOrder(在庫移転指示確認書)と題する書面(乙87。以下本件確認書面という。)及び準備依頼書類一覧表(乙100)からも明らかである。また,原告は,東京国税不服審判所国税審判官に提出した平成22年7月28日付け
反論書⑴(乙88)において,本件対象貨物が原告による配送要請に基づき本邦に輸入されることを自ら認めている。さらに,仮
に,原告の書面による配送の要請が存在しなかったとしても,本
件対象貨物の本邦への移動は,物流等を管理する統合情報システ
ムであるP18システム内の電磁的在庫移転指示(STO),す
なわち,本件ベンダーとP1社との間の本件売買とは別にP1社
内の手続により行われている。
以上のとおり,本件各輸入貨物は,書面又は電磁的データの処理
の違いはあるにせよ,本件問屋契約に基づき,原告による配送の要請をもって,P1社により本邦に向けて輸出され,原告によって輸入されている。

この点,原告は,本邦における在庫管理は,P4製品の所有者で
あり,本件問屋契約の本人であるP1社が,自己の責任とリスクの下で行っており,
原告がP1社に対して配送の要請を行っているの
ではないなどと主張している。しかしながら,原告による配送の要請が存在しなかったとする原告の主張には信用性がなく,
本件確認
書面の内容を勘案すれば,P1社が,原告による配送の要請に基づき本件対象貨物を日本に配送していることは明らかである。また,本件問屋契約4.2条によれば,本件対象貨物が本件問屋契約に基づき発送されることは明らかであり,仮に,原告による配送の要請がなかったとしても,
本件問屋契約が本件各輸入貨物の本邦への輸
入を実際にもたらしたものであることに変わりはないから,告の

上記主張は失当である。

(イ)

前述のとおり(前記イ(ア)),本件各輸入貨物の本邦への輸入を
実際にもたらしたのは,
本件問屋契約に基づく原告とP1社の取引で
あるところ,本件問屋契約において,原告は,P1社の問屋として,自己の名義において,P1社の勘定及び危険負担の下,本件各輸入貨物をディストリビューターに販売することとされており
(本件問屋契
約2.1条),原告が本件各輸入貨物に係る所有権を留保することはないとされている(本件問屋契約3.5条)から,本件問屋契約に基づく原告とP1社の間の取引は売買取引ではない。
(ウ)

以上のとおり,
本件各輸入貨物の本邦への輸入を実際にもたらし

たのは,本件ベンダーとP1社の間の本件売買ではなく,本件問屋契約に基づく原告とP1社の取引であるところ,
当該取引は売買取引で
はないから,本件各輸入貨物は,関税定率法4条1項に規定する輸入取引により輸入したものに該当せず,
同項の規定する方法により,
本件各輸入貨物の課税価格を計算することはできない。
エ(ア)a

この点,原告は,勧告的意見14.1が,主観的な意図・目的を

示すwiththeviewtoを用いているなどとして,勧告的意見14.1は,輸入国への輸出のための販売であるためには,輸入国への輸出を意図した販売であること及びその意図どおりに輸入国への貨物の国際移動が実際に生じていることという2つの要件が必要であることを示している旨主張している。

しかしながら,原告の主張は,勧告的意見14.1の2項の第3パラグラフにおける第2文(原文:withtheviewtoexportthegoodstothecountryofimportation)につき,殊更に貨物を輸入国へ輸出することを意図してと訳出した上で,第2文と第3文が並列的に別個の事項を表しているものと独自に解釈することによって導き出されたものである。同項の第3パラグラフの本文は,
この点に関し,販売は,特定の輸出国で行われる必要はない。検討の対象となっている現下の販売が,貨物を輸入国へ輸出するためになされていることを輸入者が証明できるならば,協定第1条の適用が可能となる。したがって(原文:「Itfollowsthat),貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できる。」としているところ,その第2文及び第3文が,(…から)…という結果になるや当然…ということになるといったことを意味するItfollowsthat(したがって)という文言で結ばれていることに鑑みれば,第3文の内容は,第2文の内容から帰結する結論を示しているということができる。このことは,第2文にいう貨物を輸入国へ輸出するためになされている現下の販売が,第3文にいう貨物の実際の国際移動を伴う取引と同義であることを意味し
ており,輸入貨物が輸入されるまでの間に存在する売買が,関税評価協定1条1項に規定する輸入国への輸出のための販売であることの要件は,当該売買が貨物の実際の国際移動を伴う取引であることと
いう一点に集約されると解すべきである。また,勧告的意見14.1が例示する6つの事例についても,原告が主張する2つの要件を満たしているかどうかなどという観点からの検討は一切されておらず,原告の上記主張には理由がない。
(イ)a

原告は,解説22.1は,輸入国への輸出のための販売に該当す

る売買が複数存在する場合において,いずれの売買が取引価格による方法の基礎となるのかという論点についての見解を述べたものであり,貨物が輸入されるまでの間に1個の売買しかない場合には,当然にその売買が輸入国への輸出のための販売であるなどと主張する。

しかしながら,解説22.1は,勧告的意見14.1において検討に付されていない一連の販売が存在する状況という観点から,関
税評価協定1条1項の輸入国への輸出のために販売されたという
表現の意義について検討し,輸入国への輸出のための販売に該当するための要件を示しているのであり,検討の対象となっている複数の売買がいずれも輸入国への輸出のための販売に該当することを前提にしたものではなく,貨物が輸入されるまでの間に売買が1つだけしか存在しない場合において,常に当該売買が輸入国への輸出のための販売に該当するなどという見解を示してもいないのであって,原告の上記主張には理由がない。
(ウ)a

原告は,オランダ税関当局の文書(甲7の1・2。以下オランダ税関文書という。)を根拠として,日本と同様にWTO加盟国である欧州連合(以下EUという。)が,EUにおける問屋形式の
取引につき,関税評価協定1条に規定する方法によって関税評価を行うことを認めている旨主張している。しかしながら,オランダ税関文書は,P1社が輸入申告書上の輸入者であることを前提にしており,本件の取引形態とは全く異なっている上,本件各輸入貨物の関税評価は,関税評価協定及び我が国の関税定率法の趣旨等に照らしてされるべきものであるから,我が国の税関当局がオランダ税関当局の解釈に拘束される理由はない。

原告は,他国の弁護士資格を有するとする者の意見を根拠として,他の国や地域においても,ベンダーとP1社の間の売買が,関税評価の対象として現実支払価格による方法を用いるための基礎となり得るとされており,原告の主張の正当性が裏付けられているなどと主張している。しかしながら,他国の弁護士資格を有するとする者の個人的意見は,関税評価協定及び我が国の関税定率法の解釈に当たって何ら参考となるものではなく,原告の上記主張に理由がないことは明らかである。



原告の主張

関税評価協定は,1994年のガット7条を実施するための条約であるところ,同条は,輸入貨物の関税上の価額は,関税を課される輸入貨物又は同種の貨物の実際の価額に基づくものでなければならないこと,実際の価額とはその貨物又は同種の貨物が通常の商取引において完全な競争的条件の下に販売され,又は販売のために提供された価格をいうこと,
実際の価額を確定することができないときは,関税上の価額は,その価額に最も近い相当額に基づくものでなければならないことなどを規定している。そして,関税評価協定は,その前文において,貨物の関税評価の基礎として,可能な限り,貨物の取引価額が用いられるべきであると定めており,関税評価協定1条1項の解釈は,取引価額による方法を最大限可能な限り用いるべきであるとした趣旨に合致するものでなければならない。
イ(ア)

関税評価協定1条1項の
輸入国への輸出のために販売されたsold


forexporttothecountryofimportation)という表現の意味内容は,租税法規の解釈の原則に従い,その文言により解釈されなければならないところ,勧告的意見14.1は,輸入国への輸出のために販売のうち,のため(for)を,意図で(withtheviewto)という文言に置き換えた上で,検討の対象となっている現下の販売が,貨物を輸入国へ輸出するために(=意図で〔withtheviewto〕)なされていることを輸入者が証明できるならば,取引価額による方法を適用して関税評価をすることができる旨を明らかにしている。したがって,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売とは,輸入国への輸出を意図してなされた売買のことであるというのが勧告的意見14.1の示した解釈である。
(イ)

輸入国への輸出を意図して売買がなされても,その意図どおりに,
輸入国への輸出が実現しない場合(例えば,勧告的意見14.1の事例4のように,貨物が輸入国に到着する前に売買契約が解除され,別の売買契約が締結された場合など)があるところ,貨物が関税評価のために提示される事実により立証された
輸入国への輸出
に対応する売買は,
輸入国への輸出を意図した売買のうち,その意図どおりに輸入国への輸出が実際に生じ,貨物が関税評価のために提示されたという結果が発生した売買である。勧告的意見14.1は,この点を明らかにするため,貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できるとして,輸入国への輸出を貨物の実際の国際移動と言い換えた上で,輸入者が輸入国への輸出を意図した売買であることを立証した売買であっても,
その意図どおりに
実際の(actual)貨物の国際移動が伴った場合にのみ,取引価額による方法を適用して関税評価をすることが認められる旨を述べたものである。(ウ)

以上によれば,勧告的意見14.1は,関税評価協定1条1項にい
う輸入国への輸出のための販売について,輸入国への輸出を意図して①
貨物の売買がされたことの立証と,②その意図どおりに,実際に貨物の国際移動が生じていることの2つが要件であることを明らかにしていると解すべきであり,このような解釈は,貨物の取引価額を最大限可能な限り用いるべきであるとした関税評価協定の前記趣旨(前記ア)にも合致する。
(エ)a

なお,2002年(平成14年)2月26日の関税評価技術委員

会の第14回会議に提出された書面(甲61)には,関税評価協定1条1項の
輸入国への輸出のために販売された
の意義について,検

討の対象である現下の販売が輸入国への輸出を意図してなされたことと,実際の貨物の国際移動が存在することとが,

別個かつ独立の要
件として記載されており,原告の主張(前記(ウ))を裏付けている。b
関税評価技術委員会の採択文書である
研究1.中古車の取扱い
1
(甲43,59,乙89。以下研究1.1という。)は,もしも
検討の対象となっている現下の販売が貨物を輸入国へ輸出することを意図してなされていることを,輸入者が証明することができれば,関税評価協定1条の適用が可能であると述べた後,このような状況の下で,販売の後に直ちに輸入がなされるのであれば,その販売に係る現実に支払われ又は支払われるべき価格は,関税評価協定1条に規定するその他の要件や条件を充足する限り,関税評価協定1条の取引価額を立証する基礎として使用すべきであると述べており,研究1.1の上記内容は,原告の主張(前記(ウ))を裏付けるものである。

WTO関税評価協定ハンドブック(甲23)は,輸入国への輸出のための販売に該当するかどうかの検討において,売買が輸入国への輸出を意図して行われたかどうかということについては述べているものの,貨物の実際の国際移動については触れておらず,関税評価協
定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売という要件のため
が,当事者の意図を意味するものであることを明確に示している。

関税評価に関する古典的名著である関税上の物品の評価(甲2
0)は,EECの推定規定に関し,物品の申告が行われた場合,売買契約が締結された時点で,最終的な仕向地において物品を輸入する意図を有していたかどうかという問題について,税関当局は関知しなくてすむのであると述べており,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売という要件のためが,当事者の意図を意
味するものであることを当然の前提としている。


ガット関税評価協定コンメンタール(甲22)は,原産地国での引渡条件で,原産地の商品市場において匿名で商品を購入し,自らに宛てて,輸入国に対して物品を輸送する場合に関し,取引価額を可能な限り適用すべきであるとする関税評価協定のポリシーを理由に,輸入国への輸出のための販売の要件は充足されていると解釈すべきであると述べており,また,自らの荷物を持ち帰る旅行者による多くの物品購入についても,自らが輸出を行う予定であることを購入者が知っていることによって,取引価額を構成する取引となるに十分であるとしている。ガット関税評価協定コンメンタールの上記内容は,輸入国への輸出のための販売であるためには,輸入国へ輸出する意図のあることが必要であることを示すものである。
ウ(ア)

P1社は,日本のディストリビューター・ネットワークを通じてP
4製品の販売事業を行うため,複数のベンダー(本件ベンダー)との間において,
取引条件をFCA又はFOBオリジン,
仕向地を日本として,
P4製品の売買契約(本件売買)を締結しており,P1社が本件ベンダーから購入したP4製品(本件対象貨物)は,本件売買の条件どおり,本件ベンダーからフォワーダー(貨物利用運送事業者)に引き渡され,船舶又は航空運送により仕向地である日本まで輸送されている。このように,本件対象貨物(本件各輸入貨物)は,日本までの貨物の輸送を意図したP1社と本件ベンダーとの間の本件売買の結果,その意図どおりに日本まで国際輸送されたものである。したがって,P1社と本件ベンダーとの間の本件売買は,日本への輸出を意図した売買がなされたこ①
と,その意図どおりに貨物の国際移動があったことという2つの要件②
(前記イ(ウ))が立証されており,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に当たるから,本件各輸入貨物の課税価格は,取引価額による方法(現実支払価格による方法)により決定されるべきである。
なお,被告は,本件各輸入貨物における原告の輸入(納税)申告につき,輸入者が原告,輸出者がP1社であるとしているが,本件各輸入貨物の輸出者は本件ベンダーであり,P1社は,輸入の委託者である(乙4の1ないし46)。原告は,その後,輸出者をP1社と記載した包括評価申告書(乙5,57)を提出しているものの,これは妥協の産物にすぎない。
(イ)a

P1社は,本件の取引と同様の取引(EUにおける問屋形式の販

売)につき,関税評価協定1条による関税評価を行うことを認める旨のオランダ税関文書を取得しているところ,オランダ税関文書は,P1社とベンダーとの間の売買のみが,輸入に先立ち行われた売買である以上,当該売買が関税評価協定1条1項の規定する輸入国への輸出のための販売であると認定するに十分であるとしており,本件各輸入貨物についても現実取引価格による方法を適用して関税評価がされるべきである。なお,被告は,オランダ税関文書において,P1社が輸入者であることを問題としているが,誰が輸入者として輸入申告を行うかは,各国の法律によって異なるのであって,輸入貨物の価格に影響を与える事情ではない。

原告は,本件と同様の事実関係を前提として,米国,EU,カナダ,シンガポール共和国,オーストラリア,タイ王国及びロシア連邦において,どのような関税評価方法がとられるかにつき,各国の弁護士資格を有する者に質問票を送付する方法によって調査
(以下
原告調査
といい,その対象とされた国や地域を原告調査対象国という。)
を行った。
原告調査においては,
原告調査対象国のいずれにおいても,
ベンダーとP1社との間の売買が取引価額による方法を用いる際の基礎になり得るという回答が示されており,原告調査の結果は,原告の主張(前記(ア))の正当性を裏付けるものである。

エ(ア)

被告は,
勧告的意見14.
1の解釈について,したがって
(itfollowsthat)という文言の後に記載された文(

貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できる。

)が,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のために販売されたの意義を述べたものであり,上記貨物の実際の国際移動を伴う取引とは,輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買を意味するなどと主張している。
(イ)

しかしながら,前述のとおり(前記イ(ア)),勧告的意見14.1(本文の2項の第3パラグラフの第2文)は,関税評価協定1条1項の輸入国への輸出のために販売
につき,
あえて
意図で(withtheviewto)という文言に置き換えてその意味内容を明らかにしているのであり,被告の主張は,上記第2文を無意味にするものである。また,勧告的意見14.1の貨物の実際の国際移動を伴う取引(本文の2項の第3パラグラフの第3文)は,上記第2文を受けた記述であり,検討の対象となっている現下の販売で意図された輸入国への輸出という貨物の国際移動が実際に生じていることを意味していると解するのが自然であって,第2文と第3文は,輸入国への輸出を意図して貨物の売買がなされていることを立証できれば,取引価額による方法を適用することができるが,その意図どおりに実際に貨物の国際移動が生じていない場合には,取引価額による方法は適用できない旨を述べたものと解釈すべきである。したがって,被告の上記主張は失当である。
(ウ)a

勧告的意見14.1にいう実際の国際移動を伴う取引と,被

告の主張する輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買とは
同義でなく,輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買が何
を意味するのかも曖昧である。被告は,勧告的意見14.1の内容を自己に都合の良いように変更して主張しているにすぎず,実質的な理由を何ら述べていないのであり,被告の主張は,実際の国際移動を伴う取引を,別の曖昧な表現に置き換えることにより,輸入国への輸出のための販売の意味内容を変質させるものである。

関税評価技術委員会は,解説22.1の採択に先立ち,事務局に命じて,解説のたたき台を作成させており,同たたき台には,関税評価協定

1条の目的のための輸入国への輸出のための販売は,通常,輸入国への貨物の輸入につながる販売である。

との文言があった。日本国の行政当局は,同文言について,通常と輸入国へのを削
除し,

輸入国への輸出のための販売は,貨物の輸入につながる販売である。

と修正すべきであるとの見解を述べたが(同見解の貨物の輸入につながる販売とは,被告の主張している輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買と同義であると解される。),上記見解は採用されず,事務局のたたき台にあった上記文言自体も削除されている(甲64)。このような経緯に鑑みても,被告の主張が,他国の賛同を得られない日本独自の見解であることは明らかである。

仮に,被告が主張するとおり,勧告的意見14.1が,輸入国への輸出のために販売された場合について,輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買であるということを述べているならば,一連の販売の論点について,解説22.1を公表する必要はなく,その結論に至る理由も,輸入国への貨物の輸入が最後の販売によってもたらされているから,最後の販売が輸入国への輸出のための販売であるとすれば良かったはずである。しかしながら,勧告的意見14.1の採択後も,一連の販売の論点が問題となり,解説22.1は,被告の主張とは別の理由から,同論点に対する結論を示しているのであるから,勧告的意見14.1が被告の主張するような解釈を示すものでないことは明らかである。

(エ)a

被告は,勧告的意見14.1が,事例5において,X国に所在す

るホテル・チェーン本部とサプライヤーとの間の売買は,貨物の国際移動を伴っておらず,輸出国における国内販売にすぎないとしていることは,被告の主張を裏付けるものであるなどとも主張している。b
しかしながら,勧告的意見14.1の事例5は,ホテル・チェーン本部とサプライヤーとの間の売買と,同本部と傘下の各ホテルの間の売買という2つの売買のそれぞれについて,輸入国への輸出のための販売に該当するかどうかを個別に検討したものであり,被告の主張する見解を裏付けるものではない。上記事例において,同本部は,各ホテルからの必要品の注文を全部合計して種々のサプライヤーに発注し,サプライヤーは,同本部に請求書を送り,その後,同本部が各ホテルへ個別に請求書を送っており,サプライヤーから直接傘下の各ホテルに送付されているものと,サプライヤーから同本部に送付された後に各ホテルに送付されているものとの間には実質的な差異はなく,
また,
同本部には,サプライヤーから購入した必要品の配送場所を各ホテルとすべき固有の事業上の必要性が認められないことから,同本部とサプライヤーとの間の必要品の売買について,輸入国への輸出を意図した売買であると立証することは困難である。このため,勧告的意見14.1は,同本部とサプライヤーとの間の売買が輸入国への輸出を意図した売買ではなく,貨物の国際移動を伴った売買ではないと結論付けているのである。

なお,P1社は,日本に送付すべきP4製品のみを個別に本件ベンダーに発注しているから,勧告的意見14.1の事例5と異なり,P1社と本件ベンダーとの間の売買が日本への輸出を意図した売買であることを立証できる。また,P1社は,日本において,P4製品の在庫を所有し,原告を問屋として利用することによって,その在庫として所有するP4製品を日本の顧客(ディストリビューター)に販売しているのであるから,上記事例と異なり,P1社には,本件対象貨物を日本に送付すべき固有の事業上の必要性がある。

オ(ア)

被告は,解説22.1において,通常,買手が輸入国に所在してい
るという前提の下,
貨物が輸入されるまでに一連の販売がある場合には,
輸入国への輸出のための販売は直近の販売であると結論付けられていることは,勧告的意見14.1が輸入国への輸出のための販売を,貨物の実際の国際移動を伴う取引(輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買)としていることと整合しており,これを裏付けるものであるなどと主張している。
(イ)a

しかしながら,解説22.1は,その1項において,勧告的意見

14.1が

一連の販売の状況に適用される当該表現の意味を明確にしていない。本解説の目的は,この問題を明確にすることである。

と明確に述べており,一連の販売という特別な事案につき,勧告的意見14.1が示した解釈とは異なる理由によって結論を導いた文書であって,解説22.1は,前述のとおり(前記エ(ウ)c),勧告的意見14.1の解釈が被告の主張する内容ではないことを明確に示すものである。

解説22.1は,連続する複数の販売が存在し,かつ,連続する複数の販売のうち前段階の販売と後段階の販売の両者につき,貨物を輸入国へ輸出することを意図してなされていることを輸入者が証明できるという特別な事案について,前段階の販売と後段階の販売のいずれが取引価額による方法の基礎となるかという論点に対する見解を述べたものであり,関税評価協定1条1項の輸入国への輸出のために販売されたの意義を述べることを目的としたものではない
(解説22.
1の10項参照)。そして,貨物が輸入国へ輸出することを意図してなされていることを輸入者が証明できる売買が1個しか存在しない場合には,勧告的意見14.1が示した解釈だけで,関税評価に特段の問題が生じることはなく,当然に当該売買が輸入国への輸出のための販売に該当する(解説22.1の10項は,貨物の輸入に至るまでに1個の売買しか存在しない場合には,輸入国への輸出のための販売の認定は容易であるとしている。)。また,解説22.1は,一連の販売の論点について,通常,買手が輸入国に所在しているという前
提があるという理由によって,直近の販売により関税評価される
べきであるとの結論を示しており,その13項の注2には,

この仮定は,輸入国に買手が存在しない場合に適用されない。

という注記が付されている。したがって,
通常,買手が輸入国に所在している
という理由付けから,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売が輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買であるという解釈を導き出すことはできないのであり,被告の主張には論理の飛躍がある。

なお,一連の販売の事例(例えば,貨物がCからBに,さらに,BからAに販売がされた場合において,CからAに配送がされ,Aが輸入〔納税〕申告をした事例)において,BとCの間の売買を輸入国への輸出のための販売とすることが不当であると考えられる理由は,Bが,貨物を輸入国において処分するわけではなく,Aとの売買契約以外に輸入国に貨物を移動させる理由が存在しないからである。
これに対し,P1社は,日本において,P4製品の在庫を所有し,原告を問屋として利用することによって,P1社の在庫として所有するP4製品を日本のディストリビューターに販売する事業を行っているのであって,前述した一連の販売の事例とは利益状況が異なる。この点,ガット関税評価協定コンメンタール(甲22)は,輸出国における製造者Mと輸出者Eとの間の販売につき,引渡地を輸入国とすることによって,人為的に輸出販売とすることはできないが,輸出者Eが輸入国において意味のある事業活動を行っている場合(定期的に在庫を維持管理している場合等)においては,輸出国内におけるMのEに対する販売価格が取引価額となるとしており,本件についても同様に考えるべきである。

(ウ)

被告の主張は,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のため
の販売における買手が輸入国に所在しなければならないというものであるとも解される。しかしながら,関税評価協定は,買手が輸入国に所在しなければならないなどという条件は規定しておらず,取引価額による方法を最大限可能な限り用いるべきであるとしていることに鑑みても,輸入国への輸出のための販売に該当する限り,その売買当事者の居所にかかわらず,同項が適用されるべきである。このことは,関税評価の実務(甲8)に,

『輸入取引』とは,原則として,貨物を外国から本邦に向けて輸出することを目的として行われたときの売買をいい,売買当事者の居所及び売買契約が行われた場所は問いません。

と記載されていることからも明らかである。

仮に,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売が,被告の主張するとおり,輸入国への貨物の輸入を現実にもたらした売買であると解したとしても,以下に述べるとおり,本件問屋契約は,本件対象貨物を国際移動させる取引ではなく,P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が日本への輸入を現実にもたらした売買である。
(ア)

本件問屋契約は,原告が日本国内でP4製品(本件対象貨物)を問
屋として販売するという国内取引を合意したものであり,P1社から原告へのP4製品の配送という貨物の国際移動をもたらす取引が合意されているわけではない。
(イ)a

P4製品の日本における在庫管理は,P4製品の所有者であり,

本件問屋契約における本人であるP1社が,自己の責任とリスク負担の下で行っている。P1社は,日本における適正在庫が確保されるように,P4製品の日本における販売予測を行い,P4製品が適時に日本に到着するように,P4製品の売買を本件ベンダーに申し込んでおり,原告は,P1社が適正な在庫を日本で維持するために必要となる販売数量の予測に関する情報を提供しているにすぎない。

本件問屋契約4.1条は,原告が引渡依頼書(DeliveryRequest)という書面を発行した場合には,P1社は,当該引渡依頼書に従ってP4製品を引き渡さなければならず,引渡しの遅延により原告に損害が発生した場合にはP1社はその賠償をしなければならない旨を規定したものであり,
原告に引渡依頼書の発行を義務付けるものではない。
実際,P1社は,適切な販売予測により適切な在庫を日本に確保していたため,原告は引渡依頼書を発行しておらず,被告が主張するような配送の要請(本件問屋契約4.1条)を原告が行った事実はな
く,本件対象貨物の日本への国際移動は,原告による配送の要請
によって行われたものではない。
c⒜

この点,被告は,本件確認書面を根拠として,原告からP1社へ
の配送の要請が存在する旨主張している。しかしながら,本件確認書面にある在庫移転指示は,P1社が本件ベンダーから購入し
たP4製品を日本に発送し,P1社の日本における在庫とするためのP1社内における手続にすぎない。すなわち,P1社は,本件ベンダーとFCA又はFOBオリジンの貿易条件で本件売買をしており,日本への貨物の輸送は,買主であるP1社が行わなければならないところ,本件売買後,本件対象貨物の日本への輸送を行う手続を管理するため,P1社の物流部門において,社内のP18システムにより電磁的在庫移転指示(STO)を作成し,それを基に日本への船積みの手配を行っている。原告及びP1社は,共通のシステム(P18システム)を用いており,本件確認書面は,原告がP1社の作成したSTOに変更がないかを確認して輸入申告事務を円滑に行うために印刷した文書にすぎず(原告は,STOを入力することはできないが,P1社の物流部門が作成したSTOを閲覧して印刷することができる。),原告からP1社に対して在庫移転を指示する文書ではない。


被告は,東京国税不服審判所国税審判官宛ての反論書⑴における記載を理由として,原告からP1社に対する出荷要請が存在する旨主張している。しかしながら,被告が指摘する記載部分は,原告の代理人弁護士が,事実関係について十分な知識を得ない段階において,販売予測を出荷要請と誤って記載したにすぎない。

(ウ)

以上のとおり,原告からP1社に対する配送の要請はなく,P1

社が自己の判断で本件ベンダーと本件売買を締結してP4製品を日本に発送しているから,本件問屋契約と日本への本件各輸入貨物の国際移動との間には,何ら原因結果の関係はなく,本件各輸入貨物が日本に到着したのは,P1社が本件ベンダーとの間で日本への本件対象貨物の輸出を意図して本件売買を行ったことによるものである。
2
争点2(本件輸入貨物1・2の課税価格を関税定率法4条の3第1項の規定する方法により計算することができないのか否か〔同法4条の4の規定する方法によって計算することの可否〕。)


被告の主張

本件輸入貨物1・2は,原告により国内で販売されるものであることから,その課税価格については,本来,関税定率法4条の3第1項の規定により計算すべきものであるところ,①原告は,顧客(ディストリビューター)に対し,P4製品(本件対象貨物)を複数の単価で販売していることから(前提事実⑵エ(イ)),本件輸入貨物1・2の国内販売価格は,同項の規定により,
その最大販売数量単価に基づき計算する必要があり,
また,
②原告は,
P1社から輸入した本件対象貨物だけではなく,
国内調達製品
も顧客に販売していることから,本件輸入貨物1・2に係る国内経費等の額を把握するためには,原告が顧客に対して販売するP4製品について,本件対象貨物と国内調達製品とを区別する必要がある。


しかしながら,原告は,以下の(ア)ないし(エ)で述べるとおり,本件立入調査1並びにその後の継続調査及び資料提供の要請に対し,非協力的な態度を取り続け,原告から関税定率法4条の3第1項の規定を適用するための資料が十分に提供されなかったため,
同項を適用して本件輸入貨物1

2の課税価格を計算することは不可能であった。
(ア)

原告は,横浜税関に対し,度々,調査日程の変更を申し入れ,合理
的な理由もなく,
調査人員の変更や調査期間の短縮を要求した。
例えば,
本件立入調査1の日程は,P7特調官とP8経理部長との間の調整の結果,当初,平成20年11月17日から同月26日までの間(正味7日間)と決定していたが(乙9),その後,P8経理部長からP7特調官に対し,営業部門が営業セール会議の予定を入れてしまったことを理由に同月25日及び26日は立入調査を行わないでもらいたい旨の通知があり,上記決定を反故にされるということもあった。この点,原告は,横浜税関が当初決定した調査日程
(同月13日から同月20日まで)
を,
一方的に同月17日から同月26日に変更したなどと主張しているが,上記の変更は,P8経理部長がP7特調官に対し,上司及び物流担当者が出張となり対応できなくなったなどとして,変更を申し出たことによるものであって,事実と異なる(税関が一旦決まった調査の開始日を遅らせる理由などない。)。
(イ)a

P7特調官は,本件立入調査1の約2か月前である平成20年9

月26日,P8経理部長に対し,調査を受け入れる原告の負担を考慮しつつ,効率的な調査を図るために,原告に事前の準備を依頼する準備依頼書類一覧表(乙8の3。以下本件書類リストという。なお,本件書類リストの内容は,別紙13の1準備依頼書類一覧表記載のとおりである。)を送付して,調査に必要となる書類を具体的に明示していた。しかしながら,原告は,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官に対し,これらの書類を速やかに提示することをせず,一部のものしか閲覧に供しなかった(乙54の1・2)。

この点,原告は,横浜税関調査担当官が要請した資料は全て提示したなどと主張している。しかしながら,原告は,横浜税関が平成17年7月から平成20年11月までの期間に係る物流関係書類の提示を求めたにもかかわらず,①在庫管理書類(本件書類リストの11項)は同年4月分のみ,②物流センターへの出荷指図書(同12項)は同年6月分のみ,③保管料・作業料計算明細書(同22項)は同年1月から3月分のみ,④配送料等請求書(同24項)は同年10月分のみを提示した。また,原告は,⑤物流センターへの出荷依頼表(同18項)については,個人名の記載があるという理由で提示せず,⑥P1社の決算報告書(同21項)については,未公表であることを理由に提示していないのであり,原告の上記主張は事実と異なる。


横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,原告から閲覧に供された資料等に係る疑問点を解消すべく,P10CFO及びP8経理部長と対面して直接質問する機会を待ち続けたが,P10CFO及びP8経理部長は,会議や監査等により多忙であるとして,短い時間しか対面することができず(なお,調査6日目の平成20年11月26日は1度も対面していない〔乙53〕。),十分な質問をすることはできなかった。

(ウ)a

P7特調官は,
原告に対し,
平成20年11月20日付け文書
(乙

18の2。以下平成20年11月20日資料要請書面という。)
を交付し,別紙13の2要請資料一覧記載の資料について,その写しの提出又は当該書類の原本の貸出しを依頼した。しかしながら,原告は,同日付けの貴職からの弊社書簡請求に係る依頼書と題する
書面(乙18の3。以下平成20年11月20日原告回答書面と
いう。)において,資料の提出に当たり,税関内での参考資料としての回覧及び証拠資料としての不使用確約,提出書簡写しは,弊社の書面による事前許諾がない場合,今回の事後調査での使用以外は如何なる目的においても一切不開示など,課税庁として到底受け入れることができない条件を付すなどして,資料の提出に協力しなかった。

このため,横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,原告から提示された資料の一部につき,筆写又はノートブック型パソコンへの入力(以下パソコン入力といい,筆写と併せて筆写等と
いう。)をすることしかできなかった。横浜税関調査担当官が筆写等をすることができたものは,別紙14横浜税関調査担当官が筆写等をした資料一覧記載の資料(以下本件筆写等資料という。)が全てであり,本件筆写等資料によって,関税定率法4条の3第1項1号を適用するに当たり必要とされる最大販売数量単価及び国内経費等の額を把握することはできなかった。

(エ)a

横浜税関は,本件立入調査1の後においても,原告に対し,継続

調査の受入れや最大販売数量単価及び国内経費等の額に関する資料の貸出しを累次にわたり要請したが,原告は,①繁忙であることなどを理由に,継続調査の要請を立て続けに拒否した上,②資料の貸出しの要請に対し,

社是に基づき,一切の会計帳簿,データの持ち出しは制限されています。機密事項に関わる経理関係書類の貸し出しは辞退させていただきます。

と申し立てて(乙18の32),これを拒絶し,さらに,③原告が継続調査を受けるとした期間(平成21年5月11日から同月15日まで)についても,横浜税関が受容し難く,確約できないであろう条件を付す
(乙18の35)
などして,
実質的に,
調査に必要な書類の提供に係る依頼や継続調査の受入れを拒否し,これに応じることは一切なかった。

この点,原告は,輸入者に受忍義務が課せられているのは,帳簿書類の検査(提示)であり,関係資料の写しの提供又はその原本の貸出し(以下関係資料の提供等という。)をすべき義務までは課され
ていない旨主張している。しかしながら,税関職員の質問検査権は,個別の租税事案について適正に更正・決定等を行うために認められた権限であり,更正・決定及び賦課決定等を行うためには,課税要件事実に関する資料ないし情報の入手が必要であるところ,資料の入手について納税者の任意の協力が得られるとは限らないため,必要な資料の取得収集を可能ならしめるための権限として認められてきものである。したがって,税関職員は,必要な資料の取得収集の一環として,関係資料の提供等を求めることができ,輸入者等は,これを受忍する義務を負うと解すべきである(税関の調査において,調査に必要な書類の原本の貸出しを輸入者等に依頼することは一般に行われており,輸入者等も税関調査に協力するのが通常である
〔乙46の1ないし3〕)
。。
したがって,原告の上記主張には理由がない。

ウ(ア)

原告は,横浜税関が本件輸入貨物1・2の最大販売数量単価を得る
ための資料を入手できなかったのは,横浜税関調査担当官による調査の不手際が原因であったなどと主張している。
(イ)

しかしながら,横浜税関は,原告に対し,本件立入調査1の前にお
いて,本件書類リストに記載された資料の準備を依頼し,本件立入調査1においても,原告からの聴取により存在が判明した資料につき,具体的に特定して資料の提出や写しの提供を依頼しており(乙18の2),さらに,本件立入調査1の後も,資料の貸出しや継続調査の受入れを要請している。
(ウ)a

また,原告は,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官に

対し,調査対象期間における本件対象貨物の売上げ等に係るP18システム内のデータ(以下P18データという。)を記録したCD
-ROM24枚(以下本件各CDという。)を提示しているとこ
ろ,横浜税関調査担当官は,本件各CDに記録された販売取引データを基に,各月の製品ごとの各販売単価での販売数量の合計を求める方法を検討していたからこそ,原告に対して本件各CDを提出するように依頼したにもかかわらず,
原告は,
これに協力しなかった。
この点,
本件各CDのうち20枚は,本件立入調査1の最終日である平成20年11月27日の午前11時過ぎに提示されており(乙47,54の1),横浜税関調査担当官が残された時間で,1か月分の個々の販売取引データの筆写等をするのは到底不可能であった。

横浜税関調査担当官は,このような状況において,販売取引データの筆写等を断念せざるを得ず,本件立入調査1の対象となった本件対象貨物が実際に国内において販売されたのか否かという事実を確認すべく,MonthlyProductSalesListの筆写を優先するとともに,本件対象貨物の国内販売価格を立証するものとして,製品/セールスエイドリスト(2006年3月版,同年11月版及び2008年6月版)と題する書類に記載された製品名,卸売価格等のパソコン入力(乙41の3)を優先した。


本件各CDには,10万行を超えるデータが記録されており,原告は,横浜税関調査担当官がこれらのデータを全て筆写等することが現実的に不可能であることを容易に認識できたにもかかわらず,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官からの関係資料の提供等の要請に応じず,その後も,既に提出済みであるなどと虚偽の事実を述べて(乙18の14),上記の要請に応じなかった。なお,原告は,横浜税関調査担当官がADPセールスレポートの作成を依頼しなかったことを指摘しているが,税関職員は,輸入貨物に係る帳簿書類等の検査において,存在しない帳簿書類その他の物件を輸入者等に作成させてまで検査することを要するものではない。
(エ)

以上によれば,横浜税関が最大販売数量単価を把握できなかった原
因が横浜税関調査担当官による調査の不手際にあるなどとする原告の主張に理由がないことは明らかである。
エ(ア)

原告は,横浜税関が国内販売価格から控除すべき通常の利潤及び一
般経費の額を把握できなかったのは,横浜税関調査担当官がそもそも上記の額を算出し得ない資料の提出を求めていたからであり,原告の調査への非協力によるものではない旨主張している。
(イ)

しかしながら,横浜税関調査担当官は,国内販売価格から控除すべ
き通常の利潤及び一般経費の額を算出する資料として,本件立入調査1の前において,本件書類リストに記載されている資料の準備を依頼したのであり,原告が指摘する資料(RemittanceTotaltoP1や,その元資料であるDebitNote及びPrincipalExpense)のみの提示を求めたわけではない。原告も認めるとおり,国内販売価格による方法で控除すべき国内経費等の額を算定するために必要となる基礎資料は,P1社の損益計算書であるところ,原告は,横浜税関調査担当官がP1社の決算報告書の提示を求めたにもかかわらず,未公表であることを理由に提示しなかった(前記イ(イ)b⑥)。
(ウ)

また,横浜税関調査担当官は,本件対象貨物の国内販売に係る国内
経費等の額を算出するため,原告から提示を受けた資料につき,国内調達製品と輸入製品の切分けを試みようと考えて,P10CFOやP8経理部長に対してその旨を質問するなどしたが(乙47,102),原告は,国内調達製品に係る資料は,輸入製品に係る事後調査とは関係がないとして,当該資料の提示や提出を拒否したため(乙18の3・5,乙102),横浜税関調査担当官は,やむを得ず,本件各みなし国内経費等率を算出するために必要となるみなし国内経費等の額に関するデータ(乙30の1ないし3)を書き写したものである。
(エ)

以上によれば,横浜税関調査担当官は,原告を通じ,P1社の日本
だけの損益を示す損益計算書等の提出をP1社に依頼しようもなかったのであり,原告の上記主張に理由がないことは明らかである。
オ(ア)

原告は,P7特調官が作成した電話応答録(乙9ないし12,10
4。以下本件各電話応答録という。)及び本件立入調査1に係る応接録等(乙47,50,53,101,102。以下本件各応接記録といい,本件各電話応答録と併せて本件各記録書面という。)につき,客観的事実に反する内容が多く含まれており信用できないと主張する。しかしながら,本件各記録書面は,P7特調官や横浜税関調査担当官が,原告とやりとりをした際に,その都度,その内容を正確に記録したものであり,その信用性が否定されるものではない。
(イ)

この点,原告は,本件各記録書面の電子ファイルのプロパティの文
書作成日,最終更新日時及び編集時間について,平成26年11月17日付けで当事者照会を行っており,被告の同年12月1日付け回答書の内容(以下本件照会結果という。)を根拠として,本件各記録書面が電話応答等から年月が経過した後に作成され,多数回の修正加筆が加えられたものであると指摘している。
しかしながら,
被告の検証結果
(乙
108)によれば,本件照会結果をもって,本件各記録書面が原告とやり取りをした際に,その都度,その内容を記録したものではないということはできず(例えば,電子データを整理するため名前を付けて保存した場合,プロパティは更新される。),原告の上記主張には理由がない。


原告の主張

関税評価協定及び関税定率法は,
国家による恣意的な関税評価を防止し,
輸入者の権利利益を保護するために,関税評価の方法の適用順序等を定めており,国家が調査拒否を口実として,その他の方法を適用することは許されない。したがって,調査拒否を理由として関税定率法4条の3第1項を適用することができないというためには,調査担当者が,輸入者が調査を拒否していると主観的に思い込んだだけでは足りず,輸入者が調査を拒絶しているという事実があり,かつ,税関当局が調査を行うために社会通念上当然に要求される程度の努力を行ったにもかかわらず,調査を行うことが客観的に不可能であった場合であることを要するというべきである。なお,移転価格調査においては,独立企業間価格を算定するための帳簿書類の提出がないとしてシークレット・コンパラブルを適用した課税を行う場合,国税局の職員は,必ず帳簿書類を提出しなかった結果を納税者に説明するという慎重な対応をとることとされており(移転価格事務運営要領2-5),そのこととの対比からしても,調査拒否を理由としてその他の方法を適用するためには,税関職員から輸入者に対し,調査拒否をした場合の結果を事前に説明することが社会通念上必要であると考えられる。イ(ア)

原告は,横浜税関による調査を何度も受けており,いずれにおいて
も調査に協力してきたが,今回の事後調査(本件立入調査1)は,原告の税関に対する信頼を著しく損なう異常な態様のものであり,横浜税関調査担当官による異常な対応が,原告に対する事後調査の円滑な遂行を阻害する主要な要因であった。例えば,横浜税関調査担当官は,書類の取次ぎを行っていたP19(以下P19事務員という。)に対し,精神的に追い込むような発言を繰り返してP19事務員を泣かせ,関係者以外は立入禁止と明示した部屋に無断で侵入するという行為を行った。また,横浜税関調査担当官は,本件各CDのうち1枚を無断で持ち帰るという行為も行っており,本件立入調査1の態様が異常なものであったことは,原告の代理人弁護士山本英幸(以下山本弁護士という。)が横浜税関長に対し,
平成20年11月17日付け
関税調査について
と題する書面(以下平成20年11月17日抗議書面という。)を送付し,調査の態様について抗議していること等からも明らかである。(イ)

この点,被告は,原告が本件立入調査1の日程につき,P8経理部
長及びP10CFOが,P7特調官に対し,日程変更を申し入れたなどと主張している。しかしながら,原告は,横浜税関が要求するとおりの調査人員と調査期間により本件立入調査1を受け入れており,原告が日程調整のために交渉したからといって,調査に協力していないということにはならない。また,横浜税関は,原告との調整により,調査日程が平成20年11月13日から同月20日までの間(正味6日間)に決まったにもかかわらず,その後,原告の意向を聞くこともしないまま,一方的に,調査日程を同月17日から同月26日までの間に変更したのであり,被告の主張は事実と異なる(なお,P3社のP20は,2008年〔平成20年〕年10月3日,P10CFO及びP16に対し,

税関が,私たちの希望を尊重することなく調査日程を変更したことを遺憾に思います。

とのメールを送信している〔甲92〕。)。(ウ)

山本弁護士は,横浜税関長に対し,平成20年12月9日付けで抗
議書兼要望書(以下平成20年12月9日抗議書面という。)を送付して,横浜税関調査担当官の調査方法について抗議するとともに,正常な態様で調査をして欲しいことを要望した。しかしながら,P7特調官の原告に対する要求はますます異常さを増し,P10CFOが繁忙であること等を理由に平成21年4月以降までは継続調査を受け入れることができない旨を説明しているにもかかわらず,原告に対する一方的かつ非常識な要求を繰り返し行った。
ウ(ア)

横浜税関は,P10CFOが平成21年4月21日付けの継続調査依頼についてと題する書面(乙18の35。以下平成21年4月21日原告書面という。)において,継続調査の受入れに条件を付したこともって,原告が継続調査を拒否したなどとした。しかしながら,平成21年4月21日原告書面の趣旨は,示された条件が認められなければ継続調査を受け入れないというものではなく,P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年4月21日原告書面が調査を拒否したものではない旨を連絡し(乙18の37),実際,原告は,同年5月11日からの継続調査の受入れに向けて準備を進めていた。
(イ)

仮に,横浜税関が原告に対する継続調査により関税定率法4条の3
第1項を適用するための資料を入手できなかったとしても,それは,横浜税関が自らの意思で原告に対する継続調査を行わなかったためにすぎず,
原告が調査に協力しなかったことによるものではない
(横浜税関は,
原告に対して継続調査を行い,必要な資料を閲覧して筆写するか,あるいは,原告との間で破壊された信頼関係を修復する努力を行い,必要な資料の写しの提供を原告から受けるなどすればよかった。)。
エ(ア)

被告は,本件立入調査1に先立ち,事前に本件書類リストを送付し
たにもかかわらず,原告が,本件立入調査1において,これらの資料を速やかに提示しなかったなどと主張している。しかしながら,原告は,以下のaないしcのとおり,横浜税関から要求された資料を全て提示しており,被告の主張は事実と異なる。
a⒜

横浜税関調査担当官は,平成20年9月29日,原告に対し,事
後調査において必要な資料を個別にリストアップした本件書類リストを送付しており(甲91),原告は,横浜税関が要請した書類のうち,物流関係の書類については,一部の例外を除き,本件立入調査1を開始する前に原告の本社の会議室に運び込んでいた(その量は,ファイル数にして100冊前後,段ボール箱にして約20箱にも及ぶ。)。


原告は,物流関係の書類のうち,①在庫管理書類(本件書類リストの11項)②出荷指図書及び出荷依頼表

(同12項及び18項)

③配送料等請求書(同24項)については,余りにも膨大な書類であったため,物流関係の業務を取り扱うサプライチェーン(有明に所在する事務所)に保管し,横浜税関調査担当官の要請があった場合に,一定期間分をサンプルとして閲覧に供するという対応を取ることとし,実際,上記要請を受け,平成20年11月18日,3か月分の書類を原告の本社に送り,
閲覧に供している
(なお,
原告は,
横浜税関調査担当官が上記サプライチェーンを訪問した場合にも備えていた。)。


横浜税関が要請した関係資料のうち,
経理関係の書類は,紙ベー

スで存在するものと,②電子データとして存在するものがあったが,上記①については,横浜税関調査担当官から要請があり次第,対応する書類又はファイルを提示した。また,上記②については,当初,横浜税関調査担当官にP18システムへのアクセス権限を付与する方法による準備を進めていたが,本件立入調査1の直前になって,第三者にアクセス権限を付与することは禁止されている旨の連絡をP2社から受けたため,本件立入調査1の開始初日に閲覧に供することはできなかった。しかしながら,原告は,その後,膨大なデータをCD-ROMに取り込み,本件各CDを横浜税関調査担当官の閲覧に供している。なお,上記データは,本件更正処分3及び本件各修正申告において,
本件対象貨物の課税価格を計算するための資料とはされておらず,原告が本件立入調査1の初日に同データを閲覧に供することができなかったことは,横浜税関が本件更正処分1・2において,国内販売価格による方法で本件輸入貨物1・2の課税価格を計算することができなかったことと何の因果関係もない。

P1社が保存している資料(本件書類リストの9項及び10項)については,P20が準備し,本件立入調査1に持参した。
なお,被告は,P1社の決算報告書(本件書類リスト21項)を原告が提示していない旨主張しているが,同報告書は,全世界で取引を行うP1社の全世界における損益の状況を示す資料であり,日本の関税評価と直接関わりのない資料である上,P1社が公表している資料でもない。横浜税関調査担当官は,原告によるこのような説明を聞いた上で,
調査に必要なしと判断して提示の要請を撤回したものである。

(イ)

被告は,本件立入調査1において原告から十分な説明を得ることが
できなかった旨主張している。しかしながら,原告は,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官による質問に対し,繰り返し丁寧に回答しており,回答を途中で切り上げるようなことはしていない。なお,被告は,本件立入調査1において,原告に対する質問をしたこと自体は否定しておらず,原告がどのような質問に対してどのような不適切な回答をしたのかなどにつき,具体的な主張をしていない。仮に,横浜税関調査担当官が原告に対する質問によって必要な情報を得られなかったならば,それは,その質問事項や質問方法が稚拙であり,調査担当者として質問すべき事項を質問せず,あるいは,P10CFOやP8経理部長の回答内容を十分に理解する能力が欠如していたためにすぎない。

被告は,原告が調査に必要な関係資料の提供等の依頼を拒否したなどと主張しているが,そもそも税関による事後調査は,飽くまでも任意調査であって,輸入者は,輸入書類を税関に提示する義務はあるものの,その写しを提供したり,
その原本を貸し出したりすべき義務はない。
したがって,
原告が横浜税関に対して関係資料の提供等を行わなかったからといって,調査拒否に該当しないことは明らかである
(原告は,
一定の条件において,
横浜税関の要請する関係資料の原本の貸出しに応じる意向を示していたのであり,むしろ調査に協力していた。)。なお,P7特調官は,原告が関係資料を目的外に使用しないことを確約する内容の文書の交付を求めたのに対し,単にそのような確約をする義務はないと述べるだけで,原告と何ら話し合おうとしなかったのであり,原告がP7特調官に不信感を抱き,秘密確保のための措置も取られないという状況において,法的義務のない関係書類の提供等に応じることは到底できなかった(なお,原告は,写しの請求が横浜税関として公式の文書でなされ,原告の秘密確保についてしかるべき措置が取られるならば,関係資料の写しの提供に応じるつもりであった。)。

横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,本件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価を得るためにどのような基礎データが必要であるかにつき,適切な検討を行わず,原告に対して最大販売数量単価を得るための適切な資料を提示するように求めることもしなかった。原告は,前述のとおり(前記エ(ア)),横浜税関調査担当官から要請を受けた関係資料は全て提示していたのであり,以下の(ア)ないし(ウ)に鑑みれば,横浜税関が本件輸入貨物1・2の最大販売数量単価を得るための資料を入手できなかったのは,横浜税関調査担当官による調査の不手際が原因であったというべきである。
(ア)

被告は,原告が横浜税関調査担当官に対して一部又は全部を提示し
なかった資料として,①在庫管理書類(本件書類リストの11項),②物流センターへの出荷指図書(同12項),③保管料・作業料計算明細書(同22項),④配送料等請求書(同24項),⑤物流センターへの出荷依頼表(同18項),⑥P1社の決算報告書(同21項)がある旨主張しているが,仮に,上記①ないし⑥の各書類を原告が提示しなかったという事実があったとしても,これらの書類は,本件輸入貨物1・2の最大販売数量単価を求めるために用いられる基礎資料ではないから,原告が上記書類を提示しなかったことと,本件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価を算定するための基礎資料を横浜税関調査担当官が入手できなかったこととの間に因果関係はない。
(イ)a

横浜税関調査担当官が原告に対して提示を求めた資料のうち,国

内販売に関係するものは,①DailySalesReport(各日の各製品との販売数量合計や販売金額合計等が示された表),②MonthlyProductSalesList(各月のディストリビューター向けの,製品ごとの販売数量合計や販売金額合計等が示された表)③RWPMonthlyProductSales,
List(各月の小売顧客向けの,製品ごとの販売数量合計や販売金額合計等が示された表),④売上げに関するP18データだけであり,横浜税関調査担当官は,これらの資料のうち,上記②の2007年(平成19年)10月分及び2008年(平成20年)10月分のMonthlyProductSalesList(本件各売上資料)のみを筆写した。b
しかしながら,横浜税関調査担当官が筆写した本件各売上資料は,製品ごとの各月の販売数量合計と販売金額合計を示すものであり,本件各売上資料からは,
各製品の平均販売単価しか求めることはできず,
各販売単価での販売数量の合計を求めることはできない。他方,P18データ(上記a④)には,全ての販売取引データが含まれており,各製品の各月の各販売単価での販売数量の合計を求めることは,原理的に不可能ではない。


原告は,
前述のとおり
(前記エ(ア)b)平成20年11月19日,

平成20年(2008年)8月から10月分の売上げに関するP18データを記録した本件各CDを横浜税関調査担当官に提示したが,横浜税関調査担当官は,原告から提示された本件各CDについて何も記録しておらず,P18データに基づき,各製品の各月の各販売単価での販売数量の合計を求める方法を検討することもしていない(なお,横浜税関調査担当官は,本件各売上資料と同様,P18データの内容を分析して記録することも可能であったはずである。)。また,横浜税関調査担当官は,原告に対し,各製品の各月の各販売単価での販売数量の合計を求めるための具体的な追加資料を要請することもしていない。
(ウ)

なお,ADPセールスレポートは,P4製品の全ての売上げから定
価による販売を除いて,定価の5%引き及び10%引きによる販売(以下ADP販売という。)のみを集計した資料であるところ,ADPセールスレポートは,横浜税関の要請に基づき本件各修正申告のための資料として特別に作成したものであり,本件立入調査1の当時には存在しなかった資料である。
したがって,
横浜税関調査担当官が原告に対し,
ADPセールスレポートの提示を求めたり,そのような資料の作成を原告に要請したりした事実はない。
キ(ア)

本件輸入貨物1・2の課税価格を国内販売価格による方法によって
計算するためには,国内販売に係る通常の利潤及び一般経費を求める必要があるところ(関税定率法4条の3第1項1号,関税定率法施行令1条の10第2項),販売に係る利潤及び経費は,具体的には,同類貨物の一定期間の売上高を特定し,それに対応する一般経費を算定し,利潤を算出することによって求めることとなるから,通常,損益計算書が最も信頼できる基礎資料となる。そして,本件対象貨物の販売による経済的効果は,本件問屋契約の本人であるP1社に帰属し,原告による本件対象貨物の販売に係る利潤及び一般経費は,原告の帳簿ではなく,P1社の帳簿に計上されることから,本件対象貨物の課税価格を国内販売価格による方法によって計算するためには,P1社の帳簿に計上された①
日本における本件対象貨物の販売に係る損益データ(P1社の日本における取引だけを切り出した損益計算書)②P1社の日本における売上,
げに関する経理資料(国内調達製品と輸入貨物の売上げを区別することができる資料)を入手することが必要となる。実際,横浜税関は,本件更正処分3及び本件各修正申告における本件輸入貨物3及び本件輸入貨物4(以下,併せて本件輸入貨物3・4という。)の課税価格の計算に当たり,原告を通じてP1社に対し,上記①・②の提供を依頼し,これらに基づいて,控除すべき利潤及び一般経費を計算している。(イ)

しかしながら,横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,
原告に対し,P1社の日本における取引だけを切り出した損益計算書の作成等を要請することをしていない。
この点,被告は,原告が提示した資料について,国内調達製品と輸入製品の切分けをしようとしたが,国内経費等の額を把握することができなかったなどと主張している。しかしながら,横浜税関調査担当官が筆写したRemittanceTotaltoP1は,費用収益対応の原則に基づいて作成されたものではなく,原告とP1社との間の一定時点における債権債務額を集計し,その相殺後の資金決済額を計算するために作成された資料にすぎないから,これによって本件輸入貨物1・2の国内販売に係る通常の利潤及び一般経費を算定することはできない。
(ウ)

被告が原告から提示されなかったと主張する各資料(前記カ(ア)①
ないし⑥)は,そもそも本件輸入貨物1・2の国内販売価格に係る通常の利潤及び一般経費の額を求める基礎資料には当たらず,原告が上記各資料を提示しなかったために,通常の利潤及び一般経費の額を計算することができなかったわけではない。なお,上記各資料のうち,P1社の決算報告書(前記カ(ア)⑥)は,P1社の全世界における事業活動の成果が記載されており,日本における事業活動のみを切り出して記載されたものではなく,前述のとおり(前記エ(ア)c),横浜税関調査担当官は,原告からの説明を受けて,P1社の決算報告書の提示の要請を撤回している。
(エ)

以上によれば,横浜税関調査担当官が本件輸入貨物1・2の国内販
売に係る通常の利潤及び一般経費の額を把握することができなかったのは,国内販売価格による方法を適用するために必要な資料ではなく,そもそも上記の額を算出し得ない資料の提出を原告に求めて,それを闇雲に筆写等していたからにすぎず,原告の調査への非協力によるものではない。
ク(ア)

被告は,その主張する事実のほとんどを,横浜税関調査担当官が作
成した本件各記録書面によって立証している。しかしながら,本件各電話応答録は,個人が作成した単なる私的メモにすぎず,本件各応接記録は,税関職員が自己の対応が適切であったことを示すという保身目的で作成されたものであり,P10CFOやP8経理部長が認識している客観的な事実に反する記述が多く含まれていることに鑑みても,本件各記録書面を信用することはできない。
(イ)

この点,被告は,本件各記録書面につき,横浜税関調査担当官が原
告とのやりとりについて,その都度,その内容を記録したものであって信用することができるなどと主張している。しかしながら,本件照会結果(本件各記録書面の電子ファイルのプロパティ)によれば,本件各記録書面が電話応答等から相当の年月が経過した後に作成され,しかも多数回の修正加筆が加えられたものであることは明らかであり,横浜税関調査担当官が作成した本件各記録書面を信用することはできない。3
争点3(本件更正処分1・2における本件輸入貨物1・2の課税価格の算定が1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合したものであるか否か。)について


被告の主張

本件輸入貨物1・2の課税価格は,関税定率法4条から4条の3までの規定により計算することができないことから,同法4条の4の規定により計算されることとなるところ,本件輸入貨物1・2については,関税定率法施行令1条の11第1号に規定する価格を課税価格とすることができないため,同条2号に規定する1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合する方法によって計算される価格を課税価格とすることとなる。本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格は,本件輸入貨物1に係る国内における平均販売単価に輸入数量を乗じて計算した価格を国内販売価格とみなし,原告からP1社への送金及びその明細に関する書類から計算される国内販売に係る経費等の額を国内経費等とそれぞれみなして,同法4条の3第1項1号に規定する方法に準じて計算されており,また,本件更正処分2における本件輸入貨物2の課税価格は,上記のとおり計算された本件輸入貨物1の課税価格を同法4条の2第1項に規定する同種類似貨物の取引価格とみなして同項に規定する方法に準じて計算されているところ(前提事実⑸ア・イ),これらの課税価格は,いずれも,1994年のガット7条2項⒜に規定する国内原産の産品の価額又は任意の若しくは架空の価額に基づくものではなく,また,関税評価協定7条2項⒜ないし⒢に掲げる価格等のいずれかに基づくものでもない。
したがって,本件更正処分1・2における本件輸入貨物1・2の課税価格は,いずれも,1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合する方法により計算されたものであり,関税定率法4条の4の規定に適合する。
イ(ア)

原告は,本件更正処分2における本件輸入貨物2の課税価格は,従
前に決定されたものでも,関税評価協定5条及び6条に定める方法によって決定されたものでない課税価格(本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格)に基づき決定されたものであるから,関税評価協定7条に違反するなどと主張している。しかしながら,関税評価協定の附属書Ⅰの第7条の規定に関する注釈の1項の規定する従前に決定された課税価額から,関税評価協定7条に規定する方法によって決定された課税価額を除外する旨の規定はなく,同条に規定する方法によって決定された課税価額を用いることが禁止されているとは解されない。また,本件更正処分1は,本件更正処分2の前日に行われており,本件輸入貨物1の課税価格に基づいて計算された本件輸入貨物2の課税価格は,正に,従前に決定された課税価額に基づいたものにほかならない。さらに,本件輸入貨物2の課税価格は,本件更正処分2において,関税定率法4条の4の規定に基づき,同法4条の2第1項に規定する方法に準じて計算されており,上記注釈の2項の規定に何ら違反するものではない。よって,原告の上記主張は失当である。
(イ)

原告は,関税評価協定5条に規定する方法と異なる方法により関税
評価を行うのであれば,横浜税関は,原告に対して説明や資料の提出を行う機会を与えなければならず,輸入者である原告との協議を行わずにされた本件更正処分1には,関税評価協定上の手続違反がある旨主張している。しかしながら,前述のとおり(前記2⑴参照),原告は,本件立入調査1において,横浜税関への資料の提供を実質的に拒否し,本件立入調査1の後においても,累次にわたる横浜税関からの調査の要請を実質的に拒否しているのであって,原告の上記主張は,原告自身の横浜税関の調査に対する非協力を顧みない独自の見解に基づくものである。(ウ)

原告は,本件更正処分1・2が関税評価協定7条3項及び16条に
違反する旨主張している。しかしながら,原告が横浜税関に対して上記の各規定に基づく要請を行った事実はない。また,本件各出張所長は,本件更正処分1・2に係る関税更正通知書の別紙及び別添において,本件輸入貨物1・2の課税価格の決定方法等を具体的に記載しており,原告の上記主張は事実と異なる。


原告の主張
関税定率法4条の4(関税評価協定7条)に基づく関税評価は,1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合した方法によってされなければならない(関税定率法施行令1条の11第2号)。しかしながら,本件更正処分1・2は,以下に述べるとおり,これらの規定に適合しない方法によってされており,違法である。
ア(ア)

関税評価協定の附属書Ⅰの
第7条の規定に関する注釈
の1項は,

第7条の規定により決定される輸入貨物の課税価額は,可能な限り,従前に決定された課税価額に基づいたものとすべきである。

と規定している。しかしながら,本件更正処分2は,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品である本件輸入貨物2について,これから決定される見込みである課税価格,すなわち,本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格を,同種貨物の取引価額とみなして課税価格を計算しており,本件更正処分2は,従前に決定された課税価額に基づいて計算すべき旨を定めた関税評価協定7条に違反するというべきである。
(イ)

関税評価協定の附属書Ⅰの
第7条の規定に関する注釈
の2項は,

第7条の規定により用いられる関税評価方法は,第1条から第6条までに定める方法のいずれかとすべきであるが,これらの方法の弾力的な使用は,合理的なものである限り,第7条の規定及びその目的に適合するものと認められる。と規定し,関税評価協定1条から6条までに定める方法の弾力的な使用を認めており,上記注釈の3項は,同種貨物又は類似貨物の取引価額による方法において,関税評価協定5条又は6条に定める方法により従前に決定された同種貨物又は類似貨物の課税価額を関税評価協定2条又は3条の取引価格とみなして用いることは,合理的な弾力的な使用であるとしている。しかしながら,本件更正処分2において,同種貨物の取引価額とみなして用いられたのは,従前に決定された価額ではなく(前記(ア)),関税評価協定5条又は6条に定める方法以外の方法である関税評価協定7条に基づき算定された課税価額(本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格)であって,本件更正処分2における課税価額の算定方法は,もはや関税評価協定1条から6条までに定める方法の弾力的な使用には当たらない。なお,弾力的な使用といえない方法であっても,その他の方法として用いることが許容される場合はあり得るが,それは,最後の手段というべきであって(関税評価技術委員会による勧告的意見12.1),本件各輸入貨物については,本件売買における販売価格を基礎として,積算価額による方法(関税評価協定6条)を弾力的に適用するという合理的な方法が存在する。

関税評価協定の序説の2項は,関税評価協定1条の規定により課税価格を決定することができない場合において,

第2条又は第3条の規定に基づき課税価額の基礎について合意に達することを目的として,関税当局と輸入者との間で協議が行われるべきである。

と規定して,関税評価が税関当局と輸入者との間における協議のプロセスであることを示しており,この趣旨は,関税評価協定2条及び3条以外の評価方法についても妥当する。しかしながら,横浜税関は,原告に対し,本件輸入貨物1・2につき,関税評価協定5条によらない方法で関税評価を行う理由を具体的に説明したり,追加での説明や資料の提出を行う機会を付与したりすることなく,本件更正処分1・2を行っており,関税評価協定の重大な手続違反があるというべきである。


関税評価協定7条3項は,

輸入者が要請する場合には,この条の規定により決定された課税価格及びその決定方法を書面で輸入者に通知する。

と規定し,関税評価協定16条は,

輸入者は,書面で要請する場合には,自己の輸入貨物の課税価額の決定方法についての説明を輸入国の関税当局から書面で受ける権利を有する。

と定めている。しかしながら,横浜税関は,原告が,本件更正処分1・2において原告に適用された決定方法を書面で通知するように求めたにもかかわらず,課税価格の具体的な計算方法を原告に通知していない。したがって,本件更正処分1・2は,関税評価協定7条3項及び16条に違反するものというべきである。
4
争点4(本件各更正処分及び本件各修正申告における本件各輸入貨物の課税価格の計算方法が適正なものであるか否か。)について


被告の主張

関税定率法4条の3第1項1号の趣旨等
(ア)

本件各輸入貨物は,輸入後,日本国内において,原告からディスト
リビューターに対して販売されており,国内販売価格を有するものであるから,本件各輸入貨物の課税価格は,関税定率法に規定する適用法条の優先順位に従い,同法4条の3第1項1号の規定に基づき計算されるべきである(ただし,本件輸入貨物1・2の課税価格については,同項の規定する方法によって計算することができないため〔前記2⑴〕,同法4条の4の規定に基づいて計算している〔前提事実⑸ア・イ〕。)。(イ)

関税定率法4条の3第1項1号の趣旨は,検討の対象となる貨物の
課税価格を同法4条1項により計算できない場合において,当該貨物の国内販売価格から,本邦への到着後に国内において付加された価値を減ずることによって,当該貨物の課税価格を同項の規定によって計算するとした場合に本来得られるであろう価格を,理論値として逆算的に算出するというものであり,
当該価格は,
当該貨物が輸入国に到着した時点,
すなわち,
輸入国の国境における当該貨物の価値全体を表すものである。
(ウ)

関税定率法4条の3第1項1号に規定する方法(国内販売価格によ
る方法)によって算出される課税価格は,WTO関税評価協定ハンドブック(乙56)が,

控除方式による価格とは輸入者が輸入貨物を輸入国において顧客に対して販売したときの価格から,輸入者の利潤としての売買差益並びに顧客への販売及び配送に係る費用を差し引いたものである。

とした上で,

この方式の基本的な原理は,輸入後におけるこれらの費用を輸入者による国内販売価格から控除することができるならば,その結果は国境における貨物の価格を反映しているであろうということである。

としていることに鑑みても,飽くまでも,輸入者が当該輸入貨物を輸入国において顧客に対して販売したときの価格から,輸入者の利潤としての売買差益並びに顧客への販売及び配送に係る費用を差し引いたものであり,輸入者以外の者における利潤としての売買差益,又は,輸入者以外の者が要した販売及び配送に係る費用,あるいは,当該輸入貨物が本邦に到着するまでの間に付加された価値は,控除の対象とならない。

本件各みなし国内経費等率及び平成20・21国内経費等率(以下,併せて本件各国内経費等率という。)の算定においてP1社の利潤及び本件ライセンス料を控除することの要否
(ア)

原告は,本件各国内経費等率の算定過程(別紙9の1・2,別紙10
の1・2参照)において,みなし国内販売価格ないし国内販売価格(以下国内販売価格等という。)からP1社の利潤を控除すべきである旨主張している。しかしながら,本件対象貨物の輸出者であるP1社に帰属する利潤に相当する価値は,P1社が本件対象貨物を本件ベンダーから購入した後,本邦に到着するまでの間に本件対象貨物に付加され,本件対象貨物が本邦に到着した時点における本件対象貨物の価値全体の中に含まれていたというべきであり,本件対象貨物が本邦に輸入された後に,本邦内において本件対象貨物に対して新たな付加価値を発生させる要因となったものではないから,上記主張には理由がない。
(イ)

原告は,本件各国内経費等率の算定過程において,P1社がP3社に支払う本件ライセンス料を国内販売価格等から控除する対象に含めなければならない旨主張している。しかしながら,本件ライセンス料は,本件問屋契約とは別個の契約である本件ライセンス契約に基づき,本件対象貨物の輸出者であるP1社によりP3社に対し,米国内で支払われるものであり,本件ライセンス料の金額に相当する価値は,本件対象貨物が本邦に到着するまでの間に既に本件対象貨物に付加され,本件対象貨物が本邦に到着した時点における本件対象貨物の価値全体の中に含まれていたというべきであるから,上記主張には理由がない。

本件各みなし国内経費等率の計算の適否
(ア)

本件各みなし国内経費等率は,適正な方法により正しく計算されて
おり(別紙9の1・2参照),本件輸入貨物1・2の課税価格は,関税定率法4条の4の規定に適合したものである。
(イ)

この点,原告は,本件各みなし国内経費等率の計算に誤りがある旨
主張しているが,以下に述べるとおり,原告の主張には理由がない。a
原告は,本件各みなし国内経費等率の計算において,P1社の利潤及び本件ライセンス料をみなし国内販売価格から控除すべきであると主張しているが,前述のとおり(前記イ),原告の主張には理由がない。


原告は,みなし国内経費等率の被告計算表のディストリビューターへのボーナスの支払欄には,原告が仮払いをした金額のみが計上され,ディストリビューターに支払う本件ボーナスの実額が計上されていない旨主張している。しかしながら,同欄記載の各金額は,本件立入調査1において,原告が横浜税関調査担当官に対して閲覧に供した借方票(DebitNote)にディストリビューターへの本件ボーナスの支払に係る金額として記載されていた金額を,横浜税関調査担当官が筆写した金額(乙30の2)を集計したものである。そして,本件問屋契約3.7条によれば,原告がディストリビューターに支払う本件ボーナスに係る金額と,本件ボーナスに関して,原告がP1社から受領する金額とは異ならないこととなるから,
原告の主張に理由はない。

原告は,みなし国内経費等率の被告計算表の国内調達製品の購入に係る費用欄に国内調達製品の調達額が計上されているなどとして,
本件各みなし国内経費等率の計算の分母において,
当該
製品売上高
欄記載の金額に含まれる国内調達製品の売上高を使用すべきである旨主張している。しかしながら,本件各みなし国内経費等率の計算に当たり,分子として用いられている金額には,国内調達製品だけではなく,本件対象貨物に係る金額も含まれているのであるから,その分母のみを国内調達製品に係る金額とすべきであるとする上記主張に理由がないことは明らかである。


原告は,
みなし国内経費等率の被告計算表の
P1社の経費商の品除却損欄に記載されている金額が,みなし国内販売価格から控除する対象として考慮されていない旨主張する。しかしながら,商品除却損の内容によっては原価性が認められ,関税定率法4条の3第1項1号イに規定する国内販売に係る通常の一般経費に該当すると認められる場合もあり得るものの,本件立入調査1において原告から閲覧に供された書類のうち,横浜税関調査担当官が筆写等をすることができた資料の全てによっても,上記商品除却損が国内販売に係る通常
の一般経費に該当すると認めることはできなかったのであるから,原告の上記主張には理由がない。


原告は,本件各みなし国内経費等率の算定に当たり,本件輸入貨物1に係る各製品の最大販売数量単価が使用されていない誤りがある旨主張する。しかしながら,本件立入調査1において原告から閲覧に供された書類のうち,横浜税関調査担当官が筆写等をすることができた資料の全てによっても,本件輸入貨物1に係る各製品の最大販売数量単価を算出することはできず,原告は,横浜税関が本件立入調査1の後も累次にわたり,資料の提出や継続調査の受入れを要請したにもかかわらず,これを実質的に拒否した(前記2⑴参照)。本件輸入貨物1の課税価格は,原告から閲覧に供された書類に基づき算出した,本件輸入貨物1に係る輸入(納税)申告がされた月における平均販売単価を用いて合理的に計算されたものであり,原告の上記主張には理由がない。

原告は,本件賦課決定処分1・2に係る過少申告加算税及び本件更正処分1・2に係る延滞税が,みなし国内販売価格から控除されるべきである旨主張しているものと解されるが,これらは,輸入又は国内販売を理由として課されるものではなく,関税定率法4条の3第1項1号ハに掲げる関税その他の課徴金に該当しないから,原告
の上記主張には理由がない。


平成20・21国内経費等率の計算の適否
(ア)

平成20・21国内経費等率は,適正な方法により正しく計算され
ており(別紙10の1・2参照),本件輸入貨物3・4の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定に適合したものである。
(イ)

この点,原告は,平成20・21国内経費等率の計算に誤りがある
旨主張しているが,以下に述べるとおり,原告の主張には理由がない。a
原告は,平成20・21国内経費等率の計算において,P1社の利潤及び本件ライセンス料を国内販売価格から控除すべきであると主張しているが,前述のとおり(前記イ),原告の主張には理由がない。

原告は,平成20・21国内経費等率の計算において,P1社がP5に係る費用(販売手数料)が一般経費として適正に控除されていない旨主張している。しかしながら,平成20・21国内経費等率の計算においては,原告が本件問屋契約3.7条に基づきディストリビューターに支払う本件ボーナスに相当する金額コミッショネアフィコ(ミッションの金額)が,国内販売に係る一般経費に含まれるものとして,
正しく控除の対象とされており,
原告の上記主張は誤りである。

原告は,本件輸入貨物3・4の国内販売価格は,本件配送料を含まない純粋な製品売上金額であり,平成20・21国内経費等率を算定するための分母となるべき売上高も本件配送料を含まない製品売上高でなければならない旨主張している。しかしながら,平成20・21国内経費等率は,
その算定のために分子とすべき国内経費等の金額に,
商品発送費として,本件対象貨物の国内における配送費用(本件
配送料)を含めて算定されているのであるから,当該輸入貨物の国内における配送料としての売上高であるその他売上高
(本件配送料)
の金額が,当該算定のための分母の金額に含まれなければならないのは当然であり,原告の主張には理由がない。なお,原告が主張するように,平成20・21国内経費等率の算定のための分母とすべき金額から,
その他売上高
に係る金額を除外すべきだとするのであれば,
当該算定のための分子とすべき金額からも,同様にその他売上高
に相当する金額を除外すべきであって,そのようにして国内経費等率を再計算した数値(平成20事業年度につき61.13%,平成21事業年度につき59.13%)は,従前よりも低くなるから,原告の主張によれば,本件輸入貨物3・4の課税価格は,かえって本件更正処分3及び本件各修正申告における課税価格よりも過大となってしまう。



原告の主張

関税定率法4条の3第1項1号の趣旨等
(ア)

国内販売価格による方法(関税定率法4条の3第1項1号,関税評価協定5条)は,大まかにいえば,輸入貨物の国内販売価格から,①同類貨物の国内販売に係る通常の利潤及び経費,輸入国における輸送費②
及び保険料,輸入又は国内販売を理由として課される関税及び内国税③
等を控除することにより,当該輸入貨物の課税価格を算定する方法である。
(イ)

国内販売価格による方法の基礎には,輸入貨物の国内販売をする者
が,関税や輸送費等を負担し,さらには,販売に直接又は間接に要する経費及び利潤をマークアップとして加えて国内で販売していることから,当該輸入貨物が国境を越えて輸入国に入った時点における
実際の価額
(1994年のガット7条2項⒝にいう商取引において完全な競争的条件の下に販売され,又は販売のために提供される価格)は,国内販売価格から国内販売時までに付加された価値(国内販売に係る利潤及び経費)を控除した金額であるはずであるという考え方がある。
したがって,国内販売価格による方法において控除すべき通常の利潤及び一般経費(関税定率法4条の3第1項1号)とは,輸入貨物の販売に直接又は間接に要する費用と輸入貨物の販売に係る利潤の全てである。(ウ)

また,輸入貨物の国内販売に係る利潤は,輸入貨物の転売価格(国
内販売価格)から当該輸入貨物の取得価格と,転売(国内販売)のために要した経費とを控除することにより算出されるものであることに鑑みれば,国内販売価格による方法において控除されるべき国内販売に係る利潤及び経費(関税定率法4条の3第1条1号)とは,輸入貨物の所有者が当該輸入貨物を転売する際に支出した経費であり,その結果として得た利潤でなければならない。

本件各国内経費等率の算定においてP1社の利潤及び本件ライセンス料を控除することの要否
仮に,本件各輸入貨物の課税価格を,関税定率法4条の3第1項の規定に基づいて計算すべきであるとしても,以下に述べるとおり,本件各国内経費等率の算定において,国内販売に係る経費及び利潤(P1社の利潤及び本件ライセンス料)が国内販売価格等から適正に控除されていない。(ア)

P1社は,原告に対し,問屋としてP1社の所有する本件対象貨物
を販売することを委託することによって,本邦においてP4製品を販売する事業を行っており,問屋が物品を販売すると,法的には問屋がその販売に係る権利義務の帰属主体となるが,その経済的効果は,本人に帰属し,経済的・実質的には,本人が自らその貨物を販売した場合と同様になる。そうである以上,本件においては,問屋(原告)の販売によって本人(P1社)に帰属する本件対象貨物の販売収益から当該収益に対応する本人(P1社)の負担する費用を控除した金額が,本件対象貨物の販売に係る利潤となる。しかしながら,被告は,本件各国内経費等率の算定において,問屋である原告が支出した経費と報酬のみをもって,国内販売に係る経費及び報酬とし,本件対象貨物の所有者であるP1社が支出した国内販売のための経費及び利潤を,国内販売に係る経費及び利潤に含めていない。したがって,本件各国内経費等率に基づいて算定された本件各輸入貨物の課税価格には,本件各輸入貨物の国内販売に係る利潤が全く控除されていないという重大な誤りがある。
(イ)a

この点,被告は,P1社に帰属する利潤に相当する価値は,P1

社が本件対象貨物を本件ベンダーから購入した後,本邦に到着するまでの間に付加されており,本件対象貨物が本邦に到着した時点における本件対象貨物の価値全体の中に含まれている旨主張している。しかしながら,P1社が本件ベンダーから購入した本件対象貨物は,購入時のそのままの状態で本邦に国際移動しており,P1社が購入した後に本邦へ到着するまでの間に付加された価値がないことは明らかであって,被告の上記主張は失当である。

被告は,WTO関税評価協定ハンドブックの記載内容につき,控除方式による価格とは輸入者が輸入貨物を輸入国において顧客に対して販売した価格から,輸入者の利潤としての売買差益並びに顧客への販売及び配送に係る費用を差し引いたものであると訳した上で,輸入者以外の者の利潤や経費は控除の対象とならない旨主張しているが,上記の訳(下線部分)は誤っており,同部分は,利潤及び販売と顧客への配送に係るその他の経費相当額の輸入者のマークアップと訳すべきである。そして,マークアップとは,物の所有者が販売に
際して当該物の取得価額に上乗せする金額のことを指すものである(甲
66)。したがって,WTO関税評価協定ハンドブックの上記記載内容は,問屋である原告の支出した経費と取得した報酬が国内販売価格から控除する経費及び利潤となることを示したものではなく,む
しろ本件対象貨物の所有者であるP1社の経費及び販売利益が控除されるべき
経費及び利潤
であることを示したものというべきである。

(ウ)

本件対象貨物(本件各輸入貨物)の国内販売は,P3社の有するデ
ィストリビューター・ネットワークを用いて行われており,同ネットワークの使用許諾の対価としてP1社がP3社に支払う本件ライセンス料が,P4製品の国内販売に係る直接又は間接の費用であることは明らかであるところ,被告は,本件各国内経費等率の算定において,P1社がP3社に対して支払った本件ライセンス料を国内販売に係る経費として控除していない。したがって,本件各国内経費等率に基づいて算定された本件各輸入貨物の課税価格には,本件各輸入貨物の国内販売に係る経費(一般経費)が正しく控除されていないという重大な誤りがある。(エ)a

この点,被告は,本件ライセンス料について,本件問屋契約とは

別個の契約である本件ライセンス契約に基づき,本件対象貨物の輸出者であるP1社により米国内でP3社に支払われたものであり,本件ライセンス料に相当する金額は,本件各輸入貨物が本邦に到着した時点における本件各輸入貨物の価値全体に含まれているから,本件ライセンス料は,控除すべき対象には含まれないなどと主張している。b
しかしながら,P3社がディストリビューター・ネットワークの使用を許諾しなければ,
本件対象貨物の販売は実現しないのであるから,
本件ライセンス料が国内販売に係る一般経費に含まれることは明らかである。この点,被告は,控除の対象となるべき利潤及び経費が,問屋としての利潤及び経費であることを前提としているものと解されるが,前述のとおり,国内販売価格から控除されるべき経費及び利潤とは,
本件対象貨物の所有者であるP1社の経費及び利潤であるから
(前
記ア(ウ)),その前提には誤りがある。また,控除の対象となる一般経費に該当するかどうかは,本件対象貨物の国内販売に直接又は間接に必要な費用であるかどうかによって判断されるのであり,費用の支払場所は,一般経費の該当性の判断とは無関係である。さらに,本件対象貨物は,本件ベンダーから購入されたままの状況で輸入されるのであり,本件ライセンス料を支払うことによって,輸入までの間に本件対象貨物の価値が高まるものでもない。以上によれば,被告の上記主張が失当であることは明らかである。


本件各みなし国内経費等率の計算の適否
本件輸入貨物1(本件輸入貨物2)の課税価格の算定に用いられた本件各みなし国内経費等率の計算は,以下に述べるとおり,誤っているから,これを前提とする本件更正処分1・2は,違法である。
(ア)

本件各みなし国内経費等率の計算において,P1社の利潤及び本件
ライセンス料がみなし国内販売価格から適正に控除されていない(前記イ)。
(イ)

みなし国内経費等率の被告計算表のディストリビューターへのボーナスの支払欄には,
原告が仮払いをした金額のみが計上されており,
P1社がディストリビューターへ実際に支払った金額が計上されていない。
(ウ)

みなし国内経費等率の被告計算表のP1社の経費欄の国内調達製品の購入に係る費用(消費税を含む)及び国内調達製品の購入に係る費用の各欄に記載されている金額は,国内調達製品の調達額であって売上額ではない。したがって,P1社の売上欄の(製品売上高)を本件各みなし国内経費等率の分母として使用する場合には,当該製品売上高に含まれる国内調達製品の売上高を使用すべきである。(エ)

本件各みなし国内経費等率の計算に当たり,みなし国内経費等率の
被告計算表のP1社の経費の商品除却損欄に記載された金額が
除外されているが,
国内販売に係る経費として含めるべきである。
なお,
被告は,平成21年国内経費等率を提示するに当たり,商品除却損が通常の経費に当たることを認めている(甲28ないし40)。
(オ)

本件各みなし国内経費等率の計算に当たり,各製品の単価ごとの販
売に係る数量が最大である販売に係る単価(最大販売数量単価)を使用していない。
(カ)

本件各みなし国内経費等率の計算に当たり,その他の課徴金(過少
申告加算税及び延滞税を含む。)が控除されていない。

平成20・21国内経費等率の計算の適否
(ア)

本件輸入貨物3・4の課税価格の算定に用いられた平成20・21
国内経費等率の計算は,以下に述べるとおり,誤っている。

平成20・21国内経費等率の計算において,P1社の利潤及び本件ライセンス料が国内販売価格から適正に控除されていない
(前記イ)



P1社は,P5に係る費用(販売手数料)として,①ディストリビューターに対して支払う本件ボーナスと,P3社に対して支払う本②
件管理費用を負担しており,これらは,国内販売に係る経費(一般経費)に該当する(なお,上記②の金額は,平成20事業年度及び平成21事業年度においては,
ボーナス対象売上高の合計44%である
〔甲
52〕。)。しかしながら,被告は,平成20・21国内経費等率の計算において,上記費用の金額を国内販売価格から正しく控除していない。
c⒜

平成20・21国内経費等率は,分母となる本件同類貨物の売上
高の金額にその他売上高(本件配送料)を含めて算定されてい
る。
しかしながら,
本件輸入貨物3・4の国内販売に係る経費等は,
本件輸入貨物3・4の純粋な製品売上金額(本件配送料を含まないもの)に,平成20・21国内経費等率を乗じることによって算定されているのであるから,平成20・21国内経費等率の算定のために分母となるべき売上高も本件配送料を含まない製品売上高でなければならず,この点において,平成20・21国内経費等率の計算には誤りがある。



この点,被告は,平成20・21国内経費等率を算定するために
分母とすべき金額から,その他売上高(本件配送料)に係る金
額を除外するならば,その分子とすべき金額からも本件配送料に係る金額を除外すべきであると主張するが,関税定率法4条の3第1項1号ロは,輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運賃,保険料その他当該運送に関連する費用を控除すべき旨を規定しており,本件配送料に係る金額を控除したのでは,通常の運送費用は算出できないから,上記主張は誤りである。本件配送料は,輸入貨物を販売する際に顧客から販売単価とは別に徴収する配送費であることから,当該販売単価に含まれないことは明白であり,本件各輸入貨物の売上高に含めるべきものではない。他方において,分子は,実際に要した一般経費の合計額であるから,当該合計額から本件配送料に係る金額を控除した場合,実際に要した配送費用の合計額よりもその他売上高(本件配送料)分だけ小
さくなるのであり,そのような金額は,輸入国で負担される通常の輸送費とはいえないから,被告の主張は不合理である。(イ)

本件同類貨物の国内経費率を正しく計算した結果は,別紙12国内経費等率の計算(原告の主張)記載のとおり,平成20事業年度において91.88%,平成21事業年度において92.53%である(以下,これらを併せて原告主張国内経費等率という。)。本件更正処分3及び本件各修正申告は,平成20・21国内経費等率(平成20事業年度につき61.53%,平成21事業年度につき59.49%)を用いることによって,本件輸入貨物3・4の課税価格及び納付すべき税額を過大に計算しており,これを前提とする本件更正処分3及び本件各通知処分は,違法である。
第4
1
当裁判所の判断
争点1(本件各輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定する方法により計算することができるか否か〔P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が本件各輸入貨物に係る輸入取引に該当するか否か。〕。)について⑴ア

関税定率法4条1項は,輸入貨物の課税価格について,同条2項本文の規定の適用がある場合を除き,輸入貨物に係る輸入取引がされた時に買手により売手に対し又は売手のために,当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に基づいて決定される旨を規定しているところ,上記の輸入貨物に係る輸入取引がされた時と
は,関税評価協定1条1項にいう貨物が輸入国への輸出のために販売された場合同じ意味で用いられているものと解すべきである上と

記の解釈については,当事者間に争いがない。)。
イ(ア)

そこで,関税評価協定1条1項にいう貨物が輸入国への輸出のために販売されたという表現の意味について検討するに,勧告的意見14.1は,その本文の末尾において,

したがって,貨物の実際の国際移動を伴う取引のみが,取引価格方式によって商品を関税評価する場合に使用できる。

としている。また,勧告的意見14.1は,6つの具体的事例を検討することにより,輸入国への輸出のための販売の意義を補足して説明しているところ,事例2及び事例3において,売手の所在地又は輸出国がいずれであるかは重要ではない旨を指摘しているが,事例1から6までのいずれの事例においても,輸入国に所在する買手が行う売買につき,輸入国への輸出のための販売といえるか否かを検討していることに鑑みれば,勧告的意見14.1は,関税評価の基礎となる輸入貨物の売買取引(関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)について,当該売買取引の買手が,輸入国に所在する者であることを前提とした上で,当該売買が貨物の実際の国際移動(輸入国への輸入)を伴ったものであるか否かを問題としているということができる。(イ)

また,解説22.1は,一連の販売(複数の売買)がある場合に

おける輸入国への輸出のために販売されたという表現の意味につ
き,その結論部分において,通常,買手が輸入国に所在すること及び現実に支払われた又は支払われるべき価格が当該買手により支払われる価格に基づくことが関税評価協定1条の基礎的前提とされてい
ると考えられる旨を指摘した上で,
一連の販売における輸入国への輸出のために販売される場合の輸入貨物の現実に支払われた又は支払われるべき価格は,前段階の販売ではなく,輸入貨物を輸入国に持ち込む前に行われた直近の販売を基に決定されると結論付けている。そして,解説22.1が,関税評価協定の各条項における規定内容を検討した上で,上記の結論に至っていることに鑑みれば,解説22.1は,
関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売とは,
輸入国に所在する買手が輸入貨物を輸入国に持ち込むこととなった売買を意味することを明らかにしているということができる。
(ウ)

関税評価技術委員会におけるこれらの検討結果に鑑みれば,関税評
価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売とは,輸入者が輸入貨物を輸入国に輸入することとなった売買取引をいうと解すべきであり,通常,輸入国に所在する者を買手とする売買取引がこれに該当するものと解される。
⑵ア(ア)

この点,原告は,勧告的意見14.1は,関税評価協定1条1

項にいう輸入国への輸出のための販売について,①輸入国への輸出を意図して貨物の売買がされたことの立証と,②その意図どおりに,実際に貨物の物理的国際移動が生じていることの2つが要件であることを明らかにしている旨主張している。
(イ)

しかしながら,勧告的意見14.1の記述内容を精査しても,原告
の主張するような2つの要件は,その本文部分には明記されておらず,6つの具体的事例の検討により説明を補足した部分においても,輸入国への輸出のために販売されたといえるか否かについて,上記要件の有無という観点から検討を加えたものは見当たらない。
また,勧告的意見14.1は,X国に所在する多国籍ホテル・チェーンの本部が,X国に所在する種々のサプライヤーに必要品を発注して,当該必要品が,サプライヤーによって,ホテル・チェーン傘下の各ホテル(I国,I2国及びI3国に所在するホテル)に直接送られるか,または,当該本部に送られた後に各ホテルに送られるという事例(事例5)につき,当該本部と各ホテルとの間の取引が輸入国への輸出のための販売であると結論付けているところ,原告の主張を前提とするならば,X国に所在する本部とサプライヤーとの間の売買のうち,サプライヤーから各ホテルに直接送られる取引については,輸入国(I国,I2国及びI3国)に対する輸出を意図して行われた売買であり,かつ,実際に貨物の国際移動も生じていることになると解される。しかしながら,勧告的意見14.1は,貨物の国際移動が伴っていないことを理由として,X国に所在する本部とサプライヤーとの間の売買は,輸出国における国内販売であると説明し,原告の指摘するような観点からの検討を何ら加えていないのであり,事例5に関する記述内容に鑑みても,勧告的意見14.1が原告の主張するような解釈を示していると解することはできない。
なお,原告は,勧告的意見14.1が,事例5につき,多国籍ホテル・チェーンの本部とサプライヤーとの間の取引を輸入国への輸出のための販売としなかったのは,当該本部が,傘下の各ホテルからの必要品の注文を全部合計してサプライヤーに発注しており,当該本部とサプライヤーとの間の売買が輸入国への輸出を意図した売買であることを立証することができないからであるなどとするが,勧告的意見14.1は,事例5について,売買取引における主観的意図の立証の可否ないし難易に言及した記述をしていないのであって,独自の見解であるといわざるを得ない。
(ウ)

また,関税評価協定1条1項にいう貨物が輸入国への輸出のために販売されたという表現が,輸入貨物の売買における意図(目的)を意味するものであると解する余地があるとしても,前述のとおり(前記⑴イ(イ)),解説22.1が,一連の販売(複数の売買)がある場合において,直近の販売を基礎として,輸入貨物の課税価格が決定される旨を明らかにしていることに鑑みれば,輸入貨物の売買における意図(目的)は,輸入者が輸入国に輸入貨物を輸入することとなった売買取引について問題になるのであり,輸入者の関与しない売買取引において,輸入国への国際移動が意図され,現実に輸入国への国際移動があったからといって,そのことをもって,当該売買取引が,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に該当するということはできないというべきである(なお,輸入者が輸入貨物を輸入国に輸入することとなるのは,当該輸入者の関与する取引がされたからであり,輸入国に所在する者を買手とする売買取引については,
輸入国への国際移動の意図
〔目
的〕が当該買手にあることは明らかである。)。
(エ)
イ(ア)

以上によれば,原告の主張(前記(ア))を採用することはできない。原告は,解説22.1の目的は,関税評価協定1条1項の輸入国への輸出のために販売されたという表現の意義を述べることではなく,
連続する複数の販売が存在し,かつ,連続する複数の販売のうち前段階の販売と後段階の販売の両者につき,貨物を輸入国へ輸出することを意図してなされていることを輸入者が証明できるという特別な事案について,前段階の販売と後段階の販売のいずれが,輸入貨物の取引価額による方法(現実支払価格による方法)の基礎となるかを明らかにしたものである旨主張している。
(イ)

しかしながら,解説22.1の表題は,一連の販売における『輸入国への輸出のために販売された』という表現の意味であり,その記述内容に鑑みても,解説22.1が,一連の販売という事例を前提にして,関税評価協定1条1項の輸入国への輸出のために販売されたという表現の意義を説明したものであることは明らかである。また,解説22.1は,一連の販売の論点につき,前段階の販売ではなく,輸入貨物を輸入国に持ち込む前に行われた直近の販売を基に決定されるとの結論に至る根拠として,①関税評価協定1条1項⒜(ⅰ)が,輸入国への輸出のために販売された貨物の買手が通常輸入国に所在することを想定した規定であると解されること(解説22.1の13項),②取引価格を前段階の販売に基づいて決定すると,関税評価協定8条による調整を行うことができないこと(解説22.1の14項ないし21項),③関税評価協定の附属書Ⅰの第6条の規定に関する注釈及び関税評価協定7条1項の規定内容によれば,輸入貨物の課税価格は,輸入貨物の輸入国において入手可能な資料(データ)に基づいて決定することが想定されていると考えられること(解説22.1の22項),④関税評価協定7条2項は輸出国の国内市場における貨物の価格に基づいて関税評価を行ってはならないとしており,
関税評価協定1条に基づき課税価格を決定するに当たり,
同一国に所
在する製造業者と販売者との販売を用いるべきではないと解されること(解説22.1の23項),⑤関税評価協定は,輸入取引に一つの販売が関与する場合と一連の販売が関与する場合とによって取引価格の決定が異なることを想定しておらず,通常,輸入国の買手により支払われる価格を基に取引価格を決定することを想定していると考えられること(解説22.1の24項及び25項)を列挙しており,これらの内容に鑑みれば,解説22.1は,関税評価協定における他の条項等との整合性をも踏まえて,
関税評価協定1条1項を合理的に解
釈した結果として,同項にいう輸入国への輸出のための販売とは,輸入国に所在する買手が輸入貨物を輸入国に持ち込むこととなった売買(直近の販売)
を意味することを明らかにしたものと解すべきである。
そして,解説22.1による上記の解釈が,関税評価協定の全体的整合性をも考慮して導き出されたものであることに照らせば,
同解釈は,
一連の販売(連続する売買)以外の事例においても妥当するというべきである。
(ウ)

この点,
原告は,
関税評価協定1条1項の解釈は,
勧告的意見14.
1によって明らかにされており,同項の解釈のためにあえて解説22.1を公表する必要はないという趣旨の指摘をしている。しかしながら,解説22.1は,勧告的意見14.1のみでは一連の販売の事例における同項の適用について疑義があり得ることから,一連の販売の事例に基づき,その解釈・適用の在り方を具体的に示したものであり,原告の上記指摘は,独自の見解にすぎない。また,原告の主張によれば,解説22.1は,直近の販売と前段階の販売のいずれもが,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に該当し,取引価額の基礎となり得るにもかかわらず,あえて直近の販売を基礎として取引価額を決定すべきであるという新たな法規範を示したものと解することとなる。しかしながら,関税評価技術委員会は,関税評価協定の解釈及び適用の統一を技術的に図るための機関であって(関税評価協定18条,関税評価協定の附属書Ⅱのパラグラフ1),解説22.1は,その記述内容に鑑みても,関税評価技術委員会が一連の販売の事例における関税評価協定1条1項の解釈として,同項にいう輸入国への輸出のための販売は,前段階の販売ではなく,直近の販売であるとの結論を示したも
のと解するのが自然かつ合理的である。
(エ)

以上によれば,原告の主張(前記(ア))を採用することはできない。
ウ(ア)

原告は,
売買取引が1個しか存在しない場合には,
勧告的意見14.

1が示した解釈だけで,関税評価に特段の問題は生じず,当然に当該売買取引が輸入国への輸出のための販売に該当する旨主張している。しかしながら,勧告的意見14.1及び解説22.1の記述内容を精査しても,関税評価技術委員会が,関税評価協定1条1項について,輸入貨物の輸入国への輸出に至るまでの間にされた売買取引が一つのみであるならば,当然に当該売買取引が同項にいう輸入国への輸出のための販売に該当するといった見解を採用しているものと解することはできない。また,輸入貨物に係る売買取引が,輸出国における売買取引のみである場合,当該売買取引における輸入貨物の価格は,飽くまでも輸出国の国内市場における価格にすぎないのであって,
輸入貨物の取引価額
(輸
入国への輸出のために販売された場合に現実に支払われた又は支払われるべき価格)
を関税評価の基礎とした趣旨に反するというべきである
(関
税評価協定7条2項⒞,解説22.1の23項参照)。さらに,勧告的意見14.1及び解説22.1が検討している具体的事例は,いずれも売買取引における買手が輸入国に所在することを前提としていることを併せ考えれば,原告の上記主張を採用することはできない。
(イ)a

原告は,解説22.1が,一連の売買の論点について,通常,買手が輸入国に所在しているという理由により,直近の販売により関税評価されるべきであるとの結論を示しており,その13項に注2として,

ただし,この仮定は,輸入国に買手が存在しない場合に適用されない。

という注記が付されていることを指摘して,関税評価協定1条1項につき,買手が輸入国に所在していることを前提とする解釈を導き出すことはできない旨主張している。

しかしながら,前記検討のとおり(前記イ(イ)),解説22.1は,関税評価協定における他の条項等との整合性をも踏まえて関税評価協定1条1項を合理的に解釈した結果として,通常,買手が輸入国に所在すること及び現実に支払われた又は支払われるべき価格が当該買手により支払われる価格に基づくことが第1条の基礎的前提とされていると考えると結論付けているのであり,上記の結論部分に通常という語があるからといって,解説22.1が,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売につき,買手が輸入国に所在することを前提としていないということはできない。また,原告の指摘する注記は,解説22.1の13項の

協定第1条1⒜(ⅰ)が輸入国への輸出のために販売された貨物の買手が通常輸入国に所在することを基本的に想定していることを示す指針である。

との記載部分に付されており,同注記は,輸入国に買手が存在しなければ,関税評価協定1条1項⒜(ⅰ)が規定する

法令又は当局により輸入国において課され又は要求される制限がないこと。

という条件の適用が問題とならないことを意味したものであると解される(このような理解によれば,同注記は,関税評価協定1条1項が,輸入国に輸出するための販売につき,輸入国に買手が存在していることを予定している根拠として,同項⒜(ⅰ)を摘示するものであるということができる。)。c
以上によれば,原告の前記主張(前記a)を採用することはできない。


なお,解説22.1が,その結論部分において,通常,買手が輸入国に所在しているという表現を用いていることに鑑みれば,解説22.1は,輸入貨物の売買取引における買手が輸入国に所在しないものの,当該売買取引が関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に該当する事例があり得ることは否定していないものと解される(ただし,勧告的意見14.1や解説22.1を精査しても,そのような事例を具体的に記載した部分は見当たらない。)。
しかしながら,前記検討のとおり(前記⑴イ(ア)ないし(ウ)),買手が輸入国に所在することは,関税評価協定1条の基礎的前提とされているのであって,輸入貨物に係る売買取引の買手が輸入国にいないならば,本来,当該貨物を買手のいない輸入国に国際移動させる必要はないはずであることに鑑みれば,そのような売買取引が,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に該当するためには,売買取引の買手が輸入国に所在しないにもかかわらず,輸入者が,当該売買取引によって,輸入貨物を輸入国に輸入したと評価し得る特段の事情を要するというべきである。
エ(ア)

原告は,自己の主張を裏付けるものとして,複数の文献等を指摘し
ているが,以下に述べるとおり,これらは,原告の主張を裏付けるものではない。

原告は,関税評価技術委員会の第14回会議に提出された書面(甲61)における記載が原告の主張を裏付ける旨主張している。しかしながら,原告が指摘する部分は,勧告的意見14.1の本文の内容を記載したものにすぎず,解説22.1が,一連の販売(連続する売買)の論点につき,前段階の販売が取引価格による方法の基礎とならない旨を明らかにしていることに照らしても,上記書面は,原告の主張を裏付けるものではない。


原告は,研究1.1の内容が原告の主張を裏付ける旨主張しているが,研究1.1は,輸入国に所在する買手が輸出国において輸入貨物を購入したという事例につき,関税評価協定1条1項の適用の可否を検討したものであって,その内容を精査しても,研究1.1が原告の主張を裏付けるものであるということはできない。


原告は,WTO関税評価協定ハンドブック(甲23)が原告の主張を裏付ける旨主張している。しかしながら,原告が指摘する部分は,勧告的意見14.1の本文の内容を記載したものにすぎず,WTO関税評価協定ハンドブックが原告の主張を裏付けるものであるということはできない。


原告は,関税上の物品の評価という文献(甲20)が,原告の
主張を裏付ける旨主張している。しかしながら,原告が指摘する部分は,EECの推定規定について検討したものにすぎない。また,同文献は,一連の販売(連続する売買)の論点につき,前段階の販売における取引価格が関税評価の基礎となり得るとして,解説22.1と矛盾する見解を採用しているのであり,同文献をもって,原告の主張を裏付けることはできない。

原告は,ガット関税評価協定コンメンタール(甲22)における記載内容が,原告の主張を裏付ける旨主張している。しかしながら,原告が指摘する部分は,輸入国に所在する輸入者が,輸出国で物品を購入し,
自らに宛てて物品を輸出するという事例を検討したものであり,
その内容を精査しても,原告の主張を裏付けるものであるということはできない。この点,同コンメンタールは,売買がなく,取引価格が存在しないために,関税評価協定1条を適用することができない場合の例として,①輸出者であるEが,輸入国に所在する代理人に対し,E所有のまま物品を輸送して,販売を委託し,当該代理人は,物品の販売代金から委託料その他の経費を控除して,残額をEに入金するという事例,②製造者であるMが,輸入国にある支店に対し,物品を移送する場合(ただし,輸出国に所在する本店又は支店が,輸入国にある支店の代理人として物品を購入する場合を除く。)を挙げているところ(甲22〔3,10枚目〕),上記例に照らせば,輸出国に所在する本人が,問屋契約に基づき,輸入国に所在する問屋に対し,販売を委託することとして,本人所有のまま,物品を輸送したような事例については,売買がなく,取引価格が存在しない場合であると考えるのが合理的である。

(イ)a

なお,原告は,オランダ税関文書を根拠として,EUにおいては,
P1社とベンダーとの間の売買が関税評価協定1条1項の規定する輸入国への輸出のための販売であるとされており,本件についても同様に解釈すべきである旨主張しているところ,オランダ税関文書には,P1社がベンダーから物品を購入して,
ヨーロッパに輸送し,(コ
問屋
ミッショネア)を通じて当該物品を販売するという事例について,P1社とベンダーとの間の取引が関税評価の基礎になる旨を記載した部分がある(甲7の1・2)。しかしながら,オランダ税関文書は,P1社が,輸入申告書上の輸入者として上記物品を輸入した上で,問屋を通じて当該物品を販売することを前提としており,原告を輸入者とする本件各輸入貨物の輸入と事実関係が異なるというべきである。また,オランダ税関文書は,オランダ(EU)に適用される関税関係法規を前提とするオランダ税関の見解を記載したものにすぎず,関税評価協定及び我が国の関税定率法の解釈について,オランダ税関文書と同様の解釈をとるべきであるということもできない。

原告は,原告調査の結果によって,原告の主張の正当性が裏付けられる旨主張している。しかしながら,原告調査の結果は,原告が設定した事実関係に基づく質問に対し,原告調査対象国の弁護士資格を有する者が回答したものにすぎず,原告調査をもって,原告調査対象国における関税手続の取扱いが明らかになったということはできない。また,原告調査の結果は,飽くまでも原告調査対象国における関税関係法規の適用に関する個人の見解を示したものであり,関税評価協定及び我が国の関税定率法の解釈に当たって参考になるものでもない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

⑶ア

以上を踏まえて,本件各輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定する方法(現実取引価格による方法)によって算定することができるか否かを検討するに,同項を適用するためには,本件各輸入貨物について,同項にいう当該輸入貨物に係る輸入取引(関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)が存在していることが必要となる。そして,前記検討のとおり(前記⑴イ(ウ)),輸入国への輸出のための販売とは,輸入者が輸入貨物を輸入国に輸入することとなった売買取引をいうところ,本件各輸入貨物の輸入者は,本件各輸入貨物の輸入(納税)申告を行い,本件各輸入貨物を引き取っている原告であるから(前提事実⑵エ(ア),⑶ア(ア),イ(ア),⑺ア(ア),イ(ウ)),本件各輸入貨物に係る輸入取引(輸出国への輸出のための販売)の有無は,原告が本件各輸入貨物を売買取引によって本邦に輸入したのか否かという観点から検討することになるというべきである。

前記前提事実によれば,原告が本件各輸入貨物について輸入(納税)申告を行い,
本件各輸入貨物を引き取っているのは,
本件問屋契約により,
本邦においてP4製品(本件対象貨物)を引き取って,本邦の顧客(ディストリビューター)
に販売することを合意したからである
(前提事実⑵ア,
エ)。そして,原告は,本件対象貨物(本件各輸入貨物)の所有者ではなく,P1社と本件問屋契約を締結しなければ,本件対象貨物を本邦において引き取り,これを顧客(ディストリビューター)に販売する権限を有していないのであるから,原告は,本件問屋契約に基づく取引によって,本件対象貨物(本件各輸入貨物)を本邦に輸入したということができる。そして,原告は,本件各輸入貨物の輸入に先立ち,本件各輸入貨物の所有権を取得しているわけではなく,飽くまでも本件各輸入貨物の販売を委託された問屋として本件各輸入貨物を引き取っているにすぎないから,本件各輸入貨物について,原告を買手とする売買取引は存在せず,原告が売買取引によって本件各輸入貨物を本邦に輸入したということはできない。

そうすると,本件各輸入貨物について,関税定率法4条1項にいう当該輸入貨物に係る輸入取引(関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)は存在しておらず,本件各輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定する方法(現実取引価格による方法)によって算定することはできない。

⑷ア(ア)

この点,原告は,P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が,関税
定率法4条1項にいう当該輸入貨物に係る輸入取引(関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)に該当する旨を主張している。
(イ)

そこで検討するに,本件各輸入貨物は,原告が,輸入(納税)申告
を行い,これを引き取っており(前提事実⑵エ(ア),⑶ア(ア),イ(ア),⑺ア(ア),イ(ウ)),本件各輸入貨物の輸入者は,原告であって,本件売買の買手であるP1社ではない(本件問屋契約4.2条は,原告が,本件問屋契約に基づき発送される全てのP4製品
〔本件対象貨物〕輸の入者である旨を明記している。)。また,P1社は,米国デラウェア州の法人であり(前提事実⑴イ(イ)),輸入国である日本に所在する企業ではなく(P1社が本邦に支店ないし事業所を設けて,本件対象貨物の輸入ないし販売に係る事業を行っていることをうかがわせる事実ないし証拠はない。),P1社と別の取引主体である原告が問屋として本件各輸入貨物を引き取り,自ら顧客に販売しているのであるから,P1社が本邦において本件各輸入貨物を輸入しているということはできないというべきである。
(ウ)a⒜

原告は,本件各輸入貨物の輸出者は本件ベンダーであり,P1

社は,
輸入の委託者である旨主張しており,
P1社インボイスには,
原告がP1社のためにP1社に代わって輸入者として活動している旨が付記され(前提事実⑵エ(ア)),原告は,一時期,本件対象貨物に係る包括申告書において,本件ベンダーが輸出者,P1社が輸入の委託者である旨を記載している(前提事実⑶ア(イ))。⒝

しかしながら,本件売買の取引条件がFCA又はFOBオリジン
であることに鑑みれば,本件ベンダーは,生産地において貨物利用運送事業者に本件対象貨物を引き渡すことによって,P1社に対する売主としての債務は全て履行したとみることができる上,本件対象貨物の貨物運送契約が貨物利用運送事業者とP1社との間で締結されていること(前提事実⑵イ(イ))を併せ考えても,本件対象貨物の輸出者は,本件ベンダーではなく,P1社であると解される。b⒜

この点,原告は,P1社が,本邦において,P4製品の在庫を有
し,原告を問屋として利用することにより,P1社自身の事業として,その所有するP4製品を顧客に販売する事業を行い,そのために本件対象貨物を本邦に輸入している旨主張している。



しかしながら,本邦の顧客(ディストリビューター)に対するP
4製品の販売は,原告が,自己の名義で独立の契約当事者として行うものであり,P1社が顧客との間で契約関係を結ぶわけではない(本件問屋契約2.
3条は,
原告が顧客に対してP4製品を販売し,
P1社が当該顧客との間で直接契約関係に立たない旨を明記し,本件問屋契約2.4条は,原告がP4製品を販売した場合,原告と顧客は,通常の販売取引における当事者の関係となり,本件問屋契約の内容は,原告と当該顧客との間の法律関係に影響を及ぼさない旨を明記している。)。原告は,P1社の問屋であり,P4製品(本件対象貨物)の販売による経済的利益及び損失は,本人であるP1社に帰属するが(本件問屋契約2.1条参照),そうであるからといって,原告が独立の取引当事者として行っているP4製品の販売事業を,顧客と契約関係に立つこともない米国のP1社による事業と同視することはできない。



また,本件各輸入貨物の所有権は,P1社に留保され,P4製品
の販売により,P1社から顧客に移転するとされているものの(本件問屋契約3.5条),前記検討のとおり(前記⒝),原告が独立の取引当事者としてP4製品を顧客に販売している以上,本件各輸入貨物は,原告による販売に係る事業に供される在庫(商品)であるとみるのが自然である。さらに,本邦における本件対象貨物の管理は,原告が倉庫業者に業務を委託して行っていること(乙98の1ないし3)を併せ考えても,P1社が,本件各輸入貨物を在庫として保有することによって,日本国内で販売事業を営んでいると評価することはできない。


なお,仮に,米国にいる企業が本邦において物品の販売事業を直
接営むならば,当該事業を行うための施設(支店,事業所等)を設けるのが自然かつ合理的であって,その場合には,当該事業による収益は,本邦に所在する上記施設に帰属することになると考えられる。この点,P1社は,別個の法人である原告を問屋として活用することによって,原告が独立の取引当事者としてP4製品を本邦の顧客に販売することによる収益(問屋手数料等の経費を控除したもの。)を,米国にいながらにして取得しているのであり,本件対象貨物をP1社の在庫と評価することによって,P1社が本件対象貨物の販売事業を日本において行っているとみることは,P1社が原告を問屋として活用する本件問屋契約の枠組みとも整合しないというべきである。


これらの検討によれば,本件各輸入貨物の輸出者はP1社であり,P1社を本件各輸入貨物の輸入者と同視することはできないというべきである。

(エ)

P1社と本件ベンダーの間の本件売買において,本件各輸入貨物の
仕向地は,日本に所在する原告とされているが,前記検討のとおり(前記⑶イ),原告は,本件問屋契約に基づき,問屋として本件各輸入貨物を引き取り,これをディストリビューターに販売しているのであって,本件各輸入貨物の輸入者である原告は,本件売買の当事者ではなく,本件売買に基づき,本件各輸入貨物の所有権を取得したわけでもない。そうである以上,本件売買における仕向地が日本に所在する原告とされていることをもって,原告が,本件売買によって,本件各輸入貨物を本邦に引き取っているということはできず,また,P1社と本件ベンダーとの間の本件売買を原告による売買取引と同視することもできないというべきである。
(オ)

前記検討のとおり(前記⑵ウ(イ)d),輸入国に所在しない買手に
よる売買取引が,関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売に該当する場合はあり得るということはできるものの,本件全証拠を精査しても,本件各輸入貨物の輸入者である原告が,米国にいるP1社が行った本件売買によって,本件各輸入貨物を輸入国である日本に輸入したと評価し得る特段の事情を認めるに足りる事実ないし証拠はない。(カ)

以上によれば,P1社と本件ベンダーとの間の本件売買が,関税定
率法4条1項にいう当該輸入貨物に係る輸入取引(関税評価協定1条1項にいう輸入国への輸出のための販売)に該当するということはできない。
イ(ア)

原告は,原告からP1社に対する配送の要請
(本件問屋契約4.

1条)はなく,P1社が自己の判断で本件ベンダーと本件売買を行い,本件各輸入貨物を日本に発送しているから,本件問屋契約と本件各輸入貨物の国際移動との間には,原因と結果の関係はないなどと主張している。
(イ)

そこで,原告からP1社に対する配送の要請
(本件問屋契約4.

1条)の有無について検討するに,証拠(甲4ないし6,67ないし71,126,乙87)及び弁論の全趣旨によれば,P1社が原告に対してP4製品を発送するまでの流れについて,以下の事実を認めることができる。
a⒜

P1社の社員
(P4製品の需要予測を担当している社員。P以下1予測担当社員という。)は,物流等を管理する統合情報システムであるP18システムのディマンドと呼ばれる機能を用いて,日本におけるP4製品の需要を予測する表(以下需要予測表とい
う。)を作成する。


P1予測担当社員は,毎月第2週目までの間,日本における売上
げの動向等を踏まえて,需要予測表を適宜修正し,第3週目に,原告の社員(日本におけるP4製品の需要予測を担当している社員。以下原告予測担当社員という。)に対し,需要予測表(○デー
タ)を送信する。



原告予測担当社員は,社内の会議を経て,第4週目において,P
1予測担当社員に対し,P4製品の需要に関する情報を提供するとともに,需要予測表の修正の要否等について助言を行い,必要に応じてP1予測担当社員と情報交換や協議を行う。



需要予測表は,最終的にP1予測担当社員によって決定(確定)
される。


P1社の社員(P4製品の購入を担当している社員)は,P18システムを用いて,注文するP4製品の種類・数量,注文日程を決定し,本件ベンダーに対する発注を行う。

c⒜

P1社の社員(P4製品の国際物流を担当している社員)は,P
18システムを用いて,日本向けのP4製品(本件対象貨物)の輸送日程を管理している。同システムによって,日本への到着予定の約2か月前には,在庫移転指示書(STO:StockTransferOrderの略)が作成され,上記社員は,同指示書に基づいて,P4製品(本件対象貨物)の発送を手配する。



原告は,P18システムをP1社と共有し,P1社がP18シス
テムを用いて作成したデータを閲覧して,本邦に向けて発送されるP4製品(本件対象貨物)の種類・数量,輸送日程等を把握しており,
在庫移転指示書を印刷した在庫移転指示確認書
(Verificationof
StockTransferOrder)を用いて,それらの内容を確認する。なお,原告の担当社員は,少なくとも平成17年7月から平成24年8月までの間,在庫移転指示確認書を用いて輸送日程等を確認する作業を行っていた。

在庫移転指示確認書は,
日本に輸送する本件対象貨物の種類・数量,
輸送日程等が記載され,本文末尾の承認欄に原告の担当者が,同
確認欄にP1社の担当者が,それぞれ署名を併記し得る形式とな
っている。

(ウ)

P1社が原告に対してP4製品(本件対象貨物)を発送するまでの
流れは,上記認定のとおりであり,原告が,実際の運用として,個々の貨物ごとに,P1社に書面を送付することにより配送の要請をしていたとまで認めることはできない。
しかしながら,P1社は,原告が本件問屋契約に基づき顧客(ディストリビューター)
に販売するP4製品を原告に発送しているのであって,
P1社が,
原告の関与を経て,
本件ベンダーに発注するP4製品の種類・
数量を決定し(前記(イ)a⒜ないし⒟。なお,本件問屋契約4.2条は,原告が,P1社の依頼を受けて,P4製品の発送手配に関してP1社を援助する旨を定めている。),原告とP1社が,P18システムを用いて本件ベンダーに発注するP4製品の種類・数量,輸送日程等の情報を共有していること(前記(イ)c⒝)に鑑みても,P1社から原告に対するP4製品(本件対象貨物)の発送が,本件問屋契約に基づく取引の一環として行われていることは明らかである。また,在庫移転指示確認書に原告とP1社の担当者が署名する承認欄及び確認欄が設けられていること(前記(イ)d)に照らせば,少なくともP18システム上は,在庫移転指示書を印刷した書面(在庫移転指示確認書)を書面による配送の要請として利用し得るシステムが構築されていたと推認することができる(原告とP1社は,P18システムを共有しているため,あえて在庫移転指示確認書を用いるまでの必要がなかったものと考えられる。。)
そして,本件問屋契約の内容を通覧すれば,本件問屋契約が,P1社が本件問屋契約に基づき原告に対してP4製品を発送し,原告が本件問屋契約に基づきP4製品を受け取ることを前提としていることは明らかであり(本件問屋契約1.9条,3.1条⒞,3.5条参照),原告は本件問屋契約に基づき発送される全てのP4製品(本件対象貨物)に係る輸入者であるとされていること(本件問屋契約4.2条)を併せ考えれば,本件対象貨物の国際移動は,本件問屋契約に基づくものであると解することができる。
(エ)

以上によれば,原告が,本件対象貨物に係る個々の輸送手続におい
て,実際の運用として,書面による配送の要請をしていたか否かにかかわらず,本件対象貨物(本件各輸入貨物)は,本件問屋契約を前提とし,本件問屋契約に基づく取引として,P1社から原告に発送され,原告が本件問屋契約に基づき本邦において受け取るものであることは明らかであり,原告の前記主張(前記(ア))を採用することはできない。⑸ア

以上に検討したとおり,本件各輸入貨物に係る輸入取引(輸入国への輸出のための販売)は存在しないから,関税定率法4条1項の規定する方法(現実取引価格による方法)によって,本件各輸入貨物の課税価格を計算することはできない。

イ(ア)

輸入貨物の課税価格を関税定率法4条1項の規定により計算するこ
とができない場合には,
同法4条の2第1項の適用が問題となるところ,
本件全証拠を精査しても,本件各輸入貨物と同種又は類似の貨物に係る取引価格があることを認めるに足りる事実ないし証拠はなく,同法4条の2第1項の規定する方法(同種類似貨物の取引価格による方法)によって,本件各輸入貨物の課税価格を計算することはできない(この点,原告は,同法4条の2を適用して課税価格を計算すべきであるという主張はしない旨を明らかにしている〔前提事実⑿ウ〕。)。
(イ)

輸入貨物の課税価格を関税定率法4条及び同法4条の2の規定によ
り計算することができない場合には,同法4条の3の適用が問題となるところ,原告が本件各輸入貨物を本邦の顧客(ディストリビューター)に販売していることについては,当事者間に争いがなく,本件各輸入貨物が国内販売価格を有することは明らかである。そうである以上,本件各輸入貨物の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定する方法(国内販売価格による方法)によって計算されるべきものである。なお,原告が,同条2項の規定を適用して輸入(納税)申告を行っていたこと(前提事実⑶イ(ア))に照らせば,同条1項に優先して,同条2項の規定を適用すべきかが一応問題となり得るが,本件全証拠を精査しても,
本件各輸入貨物の製造原価を認めるに足りる事実ないし証拠はなく,同項の規定する方法(製造原価による方法)によって,本件各輸入貨物の課税価格を計算することはできない(原告は,同法4条の3第2項を適用して課税価格を計算すべきであるという主張はしない旨を明らかにしている〔前提事実⑿ウ〕。)。
2
争点2(本件輸入貨物1・2の課税価格を関税定率法4条の3第1項の規定する方法により計算することができないのか否か〔同法4条の4の規定する方法によって計算することの可否〕。)について


認定事実
被告は,原告が調査等に協力せず,関税定率法4条の3第1項の規定を適用するための資料が十分に提供されなかったため,同項の規定により本件輸入貨物1・2の課税価格を計算することが不可能であった旨主張しているところ,前記前提事実に加えて,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件更正処分1・2に至る経緯等につき,以下のアないしエの事実を認めることができ,これらの認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。

本件問屋契約が締結されるまでの経緯等
(ア)a

原告は,
平成11年頃までは,P3社がベンダーからP4製品


を購入し,②それをP21Inc.(以下P21社という。)がP3社から購入し,さらに,③それを原告がP21社から購入するという取引形態をとり,P21社から原告に対する請求書(インボイス)記載の金額を基礎として輸入貨物の課税価格を算定し,輸入(納税)申告を行っていた。[乙36]

原告は,平成11年7月,横浜税関に対し,ベンダーからP3社に対する請求書(インボイス)記載の金額を基礎として輸入貨物の課税価格を算定するよう申入れを行い,同年10月以降,上記金額を基礎として輸入貨物の課税価格を算定し,輸入(納税)申告を行うようになった(なお,原告は,P21社及びP3社との間において,P21社及びP3社が原告の代理人として活動すること等を内容とする覚書を締結している。)。[乙36]


原告,P21社及びP3社は,平成14年7月1日,P21社が取引関係から離脱し,P3社が原告を代理して,原告のためにベンダーから製品を購入すること等を内容とする覚書を締結した。原告は,横浜税関に対し,原告を輸入者かつ買手とし,ベンダーを輸出者かつ売手とする包括申告書を提出し,これを前提とする輸入(納税)申告をするようになった。[乙36]

(イ)a

横浜税関は,平成12年5月から平成16年5月までの間,合計

4度にわたり,原告に対する調査を実施した。横浜税関は,これらの調査の際,原告に対し,関係資料の提供等を依頼しており,原告は,横浜税関の特別関税調査官名の受領証の交付を受けて,横浜税関に対し,関係資料の写しを提供していた。[甲103,104,乙36,弁論の全趣旨]
b⒜

本件各出張所長は,平成16年10月から平成17年6月までの
間,原告に対し,原告が平成14年10月から平成16年10月までに行った輸入(納税)申告に係る輸入取引における売手は,原告の代理人であると称するP3社であるなどとして,関税等の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を順次行った。[乙36]



原告は,平成16年10月から平成17年6月までに行った輸入
(納税)申告に係る輸入取引に関し,輸入取引の売手はP3社であるとして,関税等の申告納税をした後,売手はベンダーであるとして更正の請求をしたところ,大黒出張所長及び本牧出張所長は,上記各更正の請求には理由がない旨の通知処分をした。[乙36]


なお,原告は,前記bの各処分が違法であるとして,その各取消しを求める訴訟(東京地方裁判所平成18年(行ウ)第719号関税更正処分取消等請求事件,同平成19年(行ウ)第454号通知処分取消請求事件。以下前件訴訟という。)を提起したが,東京地方裁
判所は,
平成23年3月25日,
概要,原告の輸入取引については,

形式的にはP3社が原告の代理人とされているが,P3社は自己の計算と危険負担の下で原告と取引を行い,P3社が原告の代理人としての役割を果たしていたと認めることはできず,原告とP3社の間に売買があったと認められる,原告の主張するファーストセール理論を②
採用することはできないなどと判断して,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決をした。原告は,上記判決を不服として控訴したが,東京高等裁判所は,平成24年11月28日,原告の控訴を棄却する旨の判決をし,原告は,同判決について上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成25年11月6日,原告の上告を棄却するとともに,上告審として受理しない旨の決定をして,前件訴訟における原告の敗訴判決が確定した。[乙36,91,92]
(ウ)

原告は,平成17年6月23日頃,横浜税関に対し,P1社の法人
登記資料,販売の流れに関するフローチャート及び取引形態の説明文書等を提出し,P4グループの事業再編が行われ,今後,P1社が原告に対してP4製品の販売を委託して販売事業を行うという取引形態になる旨を説明した。なお,原告が横浜税関に提出した上記資料には,P1社から横浜税関長に対する通知書面
(①P4グループが事業再編を行うこ
とを通知する同月21日付け書面,P1社が関係書類を提出して事後②
調査に協力するので,事後調査をする場合には,必要な情報を収集するため,少なくとも60日前までに連絡をもらいたい旨を記載した同月16日付け書面,P16をP1社の日本の関税に関するコンサルタント③
とした旨を記載した同日付け書面)が含まれていた。[甲10ないし12,弁論の全趣旨]

本件立入調査1の開始(平成20年11月17日)に至るまでの経緯等(ア)a

原告は,横浜税関に対し,本件対象貨物の評価申告について,平

成18年3月8日付け,同年7月28日付け,同年9月4日付け,同月11日付け,平成19年10月31日付け,平成20年1月17日付け,同月24日付け及び同年6月3日付けの各包括申告書を提出したが,横浜税関は,原告による資料提出及び説明が不十分であるとして,これらの包括申告書をいずれも審査未了として,その控えを原告に交付した。[前提事実⑶ア・イ,甲13,14,乙4の1ないし46,乙5]

横浜税関は,
原告による包括申告書の提出を受けた後,
原告に対し,
関係資料の提出を求めており,平成20年2月13日には,横浜税関が提出を求める関係資料のリスト(3枚紙のもの)をファクシミリで原告に送信しているところ,同リストには,P1社の決算関係書類,P1社と原告との間における取引関係書類(出荷依頼書,ボーナス支払報告書等)
や経理関係書類
(販売代金送金明細等)
が含まれていた。
[甲13,15]
(イ)a

P7特調官は,平成20年9月16日午後1時52分頃,P8経

理部長に電話を掛け,原告が平成17年7月以降に行った本件対象貨物に係る輸入(納税)申告について,平成20年11月13日から同月21日までの正味7日間で立入調査を実施したい旨を申し入れた。[乙6の1,弁論の全趣旨]

P8経理部長は,平成20年9月26日午後5時40分頃,P7特調官に電話を掛け,原告に対する立入調査につき,同年11月13日から同月20日までの間(正味6日間)としてもらいたい旨を申し入れた。P7特調官は,上記の申入れを受け,P8経理部長に対し,追加調査が必要となる場合があり得る旨を伝えた上で,上記の日程で原告に対する立入調査を実施する旨を伝えた。[乙7,弁論の全趣旨]

P7特調官は,平成20年9月26日,P8経理部長に対し,同年11月13日から同月20日までの間(正味6日間)に,各日調査人員8名による立入調査を実施するとし,別紙15準備依頼書類一覧記載の書類を準備してもらいたい旨を記載した同年9月26日付け書面(以下本件準備依頼書面という。)とともに,具体的に準備し
てもらいたい書面を一覧表にした本件書類リスト(別紙13の1)をファクシミリで送付した。なお,P7特調官は,同月29日,P8経理部長から本件書類リストが送信されていない旨の連絡を受けて,P8経理部長に対し,
本件書類リストを再度ファクシミリで送信しており,
上記連絡の際,P18システムを閲覧するパソコン2台及びプリンターの準備を依頼するとともに,資料のコピーをお願いすることになる旨を申し入れた。[乙8の1ないし3,乙103,104,弁論の全趣旨]
(ウ)a

P8経理部長は,平成20年10月2日午前9時35分頃,P7

特調官に電話を掛け,
上司及び原告の物流担当者が出張で不在のため,
立入調査の日程を変更してもらいたい旨を申し出た。P7特調官は,同日午前9時45分頃,P8経理部長に電話を掛け,上記の日程を同年11月17日から同月26日までの間(正味7日間)とすることを提案したところ,P8経理部長は,同日程に不都合はない旨を回答した。P7特調官は,P8経理部長に対し,立入調査の際,原告のP18システムを閲覧できるように手配してもらいたい旨を併せて申し入れていたが,P8経理部長は,この申入れに対し,監査用の閲覧権限を付与することを検討している旨を回答した。
[乙9,弁論の全趣旨]
b⒜

P8経理部長は,平成20年10月9日午前11時7分頃,P7
特調官に電話を掛け,立入調査の日程(上記a)につき,正味7日間では長すぎるので同年11月17日から同月21日までの間に変更し,調査人員8名も多すぎるので変更してもらいたい旨を申し入れた。P7特調官は,これに対し,若干の日程変更は可能ではあるが,
正味7日間の日程を確保してもらいたい旨を伝えた。
[乙10,
弁論の全趣旨]



P8経理部長は,平成20年10月10日午後5時29分頃,P
7特調官に電話を掛けて,同年11月17日から同月21日までに立入調査を実施することに支障はないものの,同月25日及び26日については,営業セールの会議が入っているため,立入調査の日程から除いてもらいたい旨を申し入れた。P7特調官は,上記の申入れを受けて,P8経理部長に対し,同年12月第1週から同月第2週の間に,別途2日間の調査日を用意してもらいたい旨を申し入れた。[乙11,弁論の全趣旨]
c⒜

P8経理部長は,平成20年10月20日午後2時25分頃,P
7特調官に電話を掛け,同年12月は原告の決算期であり,立入調査に対応することはできない旨を申し入れた。P7特調官が立入調査の日程は事前に調整して約束したものである旨を指摘すると,P8経理部長から電話を代わったP10CFOは,立入調査の日程を約束した覚えはなく,8人の調査人員で,同年11月17日から21日までの調査日程で立入調査を終えることができないのかなどと述べた。P7特調官は,P10CFOに対し,同年12月に2日間の調査日を設けるよう再考してもらいたい旨を申し入れた。[乙12,弁論の全趣旨]



P16は,平成20年10月27日午後5時20分頃,P7特調
官に電話を掛け,同年11月25日及び同月26日については,小さいが会議室を用意できるが,原告の内部監査があるため,立入調査への対応はほとんどできない旨を申し入れた。これに対し,P7特調官は,立入調査の件は,通関士又は弁護士としか話すことができないと説明した上,P8経理部長から直接話しを聞きたい旨を要請した。[乙13,105,弁論の全趣旨]



P8経理部長は,平成20年10月28日午後6時10分頃,P
7特調官に電話を掛け,調査日程を同年11月17日から同月26日まで(正味7日間)とすることについて了解した旨を述べるとともに,P18システムの閲覧については,監査権限によるアクセス権限を付与するつもりである旨を述べた。また,P8経理部長は,立入調査にP16を同席させる予定である旨を申し出たが,これに対し,P7特調官は,立入調査に通関士又は弁護士でない者の立会いを認めることはできないので,P16の立会いは遠慮してもらいたい旨を回答した。[乙13,弁論の全趣旨]

P7特調官は,平成20年10月28日,P8経理部長に対し,原告に対する立入調査の日程を同年11月17日から同月26日までの間(正味7日間),調査人員を各日8名とする旨を記載した文書をファクシミリで送付した。[乙14の1・2]

e⒜

原告の経理部所属のP19事務員は,平成20年11月11日午
後1時50分頃,P7特調官に対し電話を掛け,社長の指示による電話であるとした上で,立入調査の件はP16と話しをしてもらいたい旨を述べるとともに,P16の立会いが認められないのであれば,その旨を示す横浜税関長の文書をもらいたい旨を申し立てた。P7特調官は,P16の件については,P8経理部長に説明済みであり,文書を出すことはできない旨を回答するとともに,P8経理部長から電話をもらいたい旨を依頼した。
[乙16,弁論の全趣旨]



P19事務員は,平成20年11月13日午後3時50分頃,P
7特調官に電話を掛け,立入調査の時間を確認するとともに,原告の顧問弁護士は,P16の立会いをさせないのは憲法に反すると言っているなどとして,立入調査においてP16の立会いが認められない旨を示す文書をもらいたい旨を繰り返し求めた。
P7特調官は,
通関業法の規定によりP16の立会いは認められない旨を説明し,文書を出すことはしない旨を回答した。[乙17,弁論の全趣旨]

本件立入調査1の実施状況等
(ア)

横浜税関調査担当官は,平成20年11月17日午前10時頃,原
告の事務所を訪れて,本件立入調査1を開始した。なお,本件立入調査1の開始に当たり,横浜税関調査担当官が案内された会議室内には,P10CFO及びP8経理部長のほか,P1社のP22,P3社のP20及び通訳の男性1名並びにP16が待機しており,P7特調官が,P16に対し,P16は第三者であり,通関業法に抵触するおそれがある旨を説明して退室を求め,P16が同会議室から退室するということがあった。[乙18の1]
(イ)a

山本弁護士は,横浜税関長に対し,平成20年11月17日抗議

書面をファクシミリで送付しており,平成20年11月17日抗議書面には,
概要,P16の立入調査への臨席を拒否したことに抗議し,

P16の臨席を拒否することができる根拠等を明らかにするよう要望する,P18システムの使用についての要請を撤回してもらいたい,②
③国内調達製品に関する資料は,
外国貨物についての帳簿書類ではな
いから,
同資料の提出についての要請を撤回してもらいたい,横浜

税関調査担当官が,調査の際,

関係者以外の立入は禁止します。

と明示したドアから無断で原告の事務所内に侵入し,違法に社員に対する質問を行っており,同行為について抗議するとともに,このような違法行為が行われないように厳しく指導を求める旨が記載されていた。[甲26,乙18の5]

なお,平成20年11月17日抗議書面に記載された事項のうち,上記a④の事実に係る経緯は,次のとおりである。すなわち,P7特調官は,平成20年11月17日午前,P19事務員を通じ,P8経理部長に対し,
同日午後1時30分頃に連絡をもらいたい旨を依頼し,
同日午後2時まで待機していたが,P8経理部長から連絡はなく,P19事務員の内線電話に電話を掛けても,留守番電話対応のため連絡が付かない状況であった。このため,P7特調官は,同日午後2時30分頃,原告の受付に行き,P8経理部長の所在する経理部の事務室の場所を確認し,同事務室の入口付近において,原告の社員に対してP8経理部長の所在を尋ねていたところ,P10CFOが,P7特調官に対し,部屋から退去するように求めたという経緯があった。[乙18の6,乙49,50,弁論の全趣旨]
(ウ)a

原告は,本件立入調査1の開始に当たり,横浜税関調査担当官に

提示するための関係資料を原告の会議室に運び込んでおり,その資料の量は,物流関係の資料だけでも,段ボール箱20箱以上に及ぶ量であった。[甲74,94ないし96,弁論の全趣旨]

横浜税関調査担当官は,平成20年11月17日から同月26日までの調査日程(ただし,休日〔同月22日から同月24日まで〕を除く。)で本件立入調査1を開始したが,調査開始後,原告の会議室の関係から同月25日は立入調査を実施できないこととなり,同月27日が調査日として追加されることとなった。[乙18の1,弁論の全趣旨]

(エ)a

横浜税関は,原告に対し,本件立入調査1に先立ち,本件準備依

頼書面及び本件書類リストを送付して,調査に必要な資料の準備をあらかじめ依頼していたところ(前記イ(イ)c),横浜税関調査担当官は,平成20年11月18日,P10CFOに対し,調査に必要な資料を具体的に特定して列挙した手書きのメモを交付して,調査に必要な関係資料の提供等を口頭で要請した。
これに対し,
P10CFOは,
P7特調官に対し,関係資料の提供等については,正式な文書をもって依頼するように要求した。
[甲102,乙18の1,弁論の全趣旨]

P7特調官は,平成20年11月20日,P10CFOに対し,平成20年11月20日資料要請書面を交付し,本件輸入貨物1・2の課税価格及び税額を調査する上で必要な書類の提出を依頼した
(なお,
提出を依頼した書類は,上記aのメモに記載したものと同じものである。)。平成20年11月20日資料要請書面は,関税法第105条第1項第6号及び消費税法第62条第3項に基づき,別紙記載の関係書類を検査する必要があることから,当該関係書類の写しを平成20年11月28日迄に提出していただくようお願いします。なお,当該関係書類の写しを提出することが困難な場合は,当該関係書類の原本を提出していただければ,当方にて複写の上,速やかに原本を返却いたします。と記載され,P7特調官の記名押印がされた文書であり,別紙13の2記載の資料の提出を求める内容であった。[乙18の2]

P10CFOは,平成20年11月20日,P7特調官に対し,平成20年11月20日原告回答書面を交付し,以下の⒜から⒞までにつき,公式な書簡(公印を押印したもの)をもって回答することを条件として,資料の写しの提供に応じる旨を回答した。[乙18の3]⒜

法人税確定申告書が必要な理由及び法的根拠の開示



国内調達製品の調達価格が含まれている資料については,事後調
査業務以外における使用(例えば,税関内での参考資料としての回覧及び証拠資料としての使用)をしない旨の確約



書証の写しについて,原告の書面による事前許諾がなければ,今
回の事後調査での使用以外には,いかなる目的においても一切開示しないこと


P7特調官は,P10CFOに対し,平成20年11月20日原告回答書面において求めている文書を出すことはしない旨を口頭で説明した。なお,P7特調官は,平成20年11月27日,P10CFOに対し,本件輸入貨物1・2の課税価格が適正でなければ更正処分を行うこととなり,原告が当該処分に不服があれば,審査請求や訴訟に至るのであって,事後調査において入手した資料をそれらの手続において使うことができないというようなことは確約できないこと,横浜税関調査担当官は公務員であり,守秘義務を負っていること等を説明した。[乙18の1,乙47,弁論の全趣旨]
(オ)a

原告は,本件立入調査1において,横浜税関が原告に対して要請

した関係資料の全てを提示したわけではなく,原告が,本件立入調査1において横浜税関調査担当官に対して提示した資料は,別紙16本件立入調査1における資料提示の状況等記載の文書のうち,提示日欄に記載のあるものであり,その閲覧に供された日は,同欄記載のとおりであった。また,原告は,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官に対し,関係資料の提供等をすることはなかった。[乙18の1,乙22,29の1・2,乙30の1ないし3,乙37,41の1ないし7,乙54の1・2,弁論の全趣旨]

原告は,
横浜税関があらかじめ要請していた物流関係の書類のうち,
①在庫管理書類(本件書類リストの11項),②物流センターへの出荷指図書
(同12項)③保管料・作業料計算明細書

(同22項)

④配送料等請求書(同24項)については,横浜コンテナセンターに保管したままであった。ただし,原告は,横浜税関調査担当官の要請を受けて,平成20年11月18日には,上記①ないし④について,一部の期間(上記①につき平成20年4月30日分,上記②につき同年6月分,上記③につき同年1月ないし同年3月分,上記④につき同年10月分)に係る資料を原告の会議室に運び入れた。[甲74,乙54の1,弁論の全趣旨]

c⒜

P7特調官は,本件立入調査1に先立ち,P8経理部長に対し,
P18システムの閲覧ができるパソコン2台及びプリンターの準備を依頼しており(前記イ(イ)c,(ウ)a,c⒞),P8経理部長は,横浜税関調査担当官に対してアクセス権限を付与する方向で準備を進め,平成20年11月11日,P4グループ全体の情報管理業務を統括しているP2社の担当部署に対し,アクセス権限の付与についての承認申請を行ったが,同月14日に至り,P2社から,P4グループの情報管理規程に基づき,社員以外にアクセス権限を付与することは禁止されているとの回答を受けた。[甲74,97ないし100,弁論の全趣旨]


原告は,横浜税関調査担当官にP18システムへのアクセス権限
を付与することができなくなったことを受けて,横浜税関が要請している売上げに関する資料(本件書類リストの17項)のうち,売上げ等に係るP18データについては,CD-ROMに記録して閲覧に供することとし,上記P18データを記録した本件各CDを横浜税関調査担当官に対し,提示した。原告が横浜税関調査担当官に対して本件各CD(合計24枚)を提示した時期は,①平成20年8月ないし同年10月分(合計3枚)が同年11月19日,②平成19年分(1枚)が平成20年11月26日,③平成18年1月ないし同年12月分(合計12枚)並びに平成20年1月ないし7月分(合計7枚)及び同年10月分(上記①と同じ内容。1枚)が同年11月27日であった。なお,本件各CDには,10万行を超えるデータが記録されていた。
[甲74,乙54の1,弁論の全趣旨]


原告は,横浜税関が要請した資料のうち,①ベンダー別製品プライスリスト
(本件書類リストの2項)
については,
存在しないと回答し,
②ボーナス支払報告書(同15項)については,独立の報告書はないと回答した。また,原告は,③物流センターへの出荷依頼表(同18項)
については,
個人名の記載があるため提示できないと回答し,P

1社の決算報告書(同21項)については,未公表であるとして,これらの提示を拒否しており,横浜税関が本件準備依頼書面により準備を依頼していた経理関係書類のうち,総勘定元帳,補助台帳,補助簿(別紙15記載の4①)については,これを提示しなかった。[乙18の1,乙54の1・2,弁論の全趣旨]
(カ)a

横浜税関調査担当官は,P10CFOが,関係資料の提供等につ

いて,
横浜税関として応じることのできない条件を付したことから
(前
記(エ)c),本件立入調査1において原告から関係資料の提供等の協力は得られないものと認識し,原告から提示を受けた資料のうち,原告が本件輸入貨物1・2を日本国内で販売している事実を確認するための資料を筆写する作業及び本件対象貨物の国内販売価格を立証する資料をパソコン入力する作業を優先して行うこととし,調査時間の多くを,これらの作業に充てることとなった。横浜税関調査担当官が,本件立入調査1において筆写等をすることができた資料は,本件筆写等資料(別紙14)が全てであった。[乙18の1,乙29の1・2,乙30の1ないし3,
乙37,
乙41の1ないし7,
乙54の1・2,
弁論の全趣旨]
b⒜

横浜税関調査担当官による質問は,P10CFOの要請により,
まず,横浜税関調査担当官がP19事務員に質問内容を伝え,P19事務員が聞き取った内容を,P19事務員からP8経理部長又はP10CFOに伝えて,
その回答を待つという形で行われた。
また,
原告に対する質問については,
主としてP8経理部長が対応したが,
その回答時間は30分程度であり,横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,関係資料の内容について十分な質問を行うことはできなかった。[甲74,乙18の1,弁論の全趣旨]



P10CFO及びP8経理部長は,原告の社内監査等があり忙し
いなどの理由から,1日に1回から3回の頻度で,1回につき20分から30分程度,本件立入調査1に立ち会う程度であり,平成20年11月26日においては,本件立入調査1に立ち会うことはなかった。[乙18の1,乙53,弁論の全趣旨]



横浜税関調査担当官からP19事務員への質問の伝達の依頼が繰
り返される状況において,P19事務員が,P10CFOに対し,調査態様についての苦情を泣きながら訴えるということがあり,P10CFOは,本件立入調査1の間,P7特調官に対し,2度にわたり,横浜税関調査担当官による行為がパワーハラスメントに当たるとの抗議をした。なお,P7特調官は,上記抗議に対し,パワーハラスメントに当たる行為をした事実はないが,そのように受け止められたのであれば申し訳ないとして陳謝した。[甲74,乙18の1・6,乙22,47,102,弁論の全趣旨]
(キ)

P7特調官は,平成20年11月27日,同日付けの今回の立入調査の継続等についてと題する書面を手交し,原告に対する調査が未了となったため,平成21年1月中に1週間程度の継続調査を行いたい旨を伝えた。なお,上記書面には,税関が必要と認めた資料の提示及び説明が不十分であったため,調査未了となったこと,継続調査の期日につき,平成20年12月5日までに書面で回答をもらいたいこと,併せて,要求済み資料の写の提出を重ねてお願いすること等が記載されていた。また,P7特調官は,その際,説明書面を添付した上で,P10CFO及びP8経理部長に対し,本件輸入貨物1・2は,原告が本件問屋契約に基づき,委託販売のために輸入する貨物であり,売買によらない貨物に該当するから,その課税価格は,関税定率法4条1項の規定により計算することはできず,同法4条の3第1項に基づき計算されるべきものである旨の説明を併せて行った。[甲25の1・2,甲41,乙18の1・4,乙47,弁論の全趣旨]
(ク)

本件筆写等資料の全てによっても,本件輸入貨物1・2に係る最


大販売数量単価を把握することはできず,本件輸入貨物1・2の国内②
販売に係る国内経費等の額を把握することはできない。[乙18の1,乙29の1・2,乙30の1ないし3,乙37,乙41の1ないし7,弁論の全趣旨]

本件立入調査1の実施後における状況等
(ア)a⒜

P9統括官は,平成20年11月28日午前9時頃,本件立入

調査1の際に原告の事務所に持参して使用した横浜税関所有のノートブック型パソコンを確認したところ,原告が本件立入調査1の際に閲覧に供した本件各CDのうちの1枚(原告の平成18年12月期の売上げ及び一般管理費に関するデータが記録されたもの。以下本件CD1枚という。)を誤って持ち帰ってしまったことに気
付いた。P9統括官は,同日午前9時45分頃,P8経理部長の留守番電話に,本件CD1枚を誤って持ち帰ってしまったことを陳謝するとともに,同日午後に原告の事務所に赴いて,本件CD1枚を返却したい旨を録音した。[乙19の1,弁論の全趣旨]


P9統括官は,P8経理部長及びP10CFOから,本件CD1
枚の件は弁護士と対応を協議しており,平成20年11月28日に返却に来なくてもよい旨の連絡を受けたが,
同日午後1時10分頃,
本件CD1枚を持参して原告の事務所の受付に行き,P10CFO又はP8経理部長への取次ぎを依頼した。P9統括官は,その後,山本弁護士から,原告を代理して本件CD1枚を受領する旨の連絡を受け,同日午後2時30分頃,山本弁護士の事務所を訪問して,本件CD1枚を返却した。[甲16,24の1・2,乙19の1ないし3,乙20]


山本弁護士は,平成20年12月9日,横浜税関長に対し,平成20年12月9日抗議書面を送付した。平成20年12月9日抗議書面の内容は,本件立入調査1が,

通常の調査と異なり,
常軌を逸する,
②P16の臨席を拒否したことは,
任意調査の限界を超え,
適正手続
の保障に反する,③横浜税関調査担当官が,無断で原告の事務所内に侵入して,原告の社員を違法に尋問した,④本件CD1枚に持ち出し厳禁と明記されていたにもかかわらず,横浜税関調査担当官が本件CD1枚を違法に持ち出した,横浜税関調査担当官は,

P19事
務員に対し,執拗な質問を行い,侮蔑する言動を浴びせるなどして,P19事務員の人格権を侵害する行為を行った,横浜税関調査部が,⑥
原告に対し,国内販売価格の算定に必要であるとして,原告及び取引先の営業秘密に属する事項を含む膨大な資料の全ての閲覧と写しの交付を要求することは,任意調査の限界を超え,適正手続の保障に反する,⑦横浜税関調査部による調査は,原告の繁忙時を狙い撃ちし,原告を困惑狼狽させるという不当な目的によるものである,P7特調⑧
官は,原告に対し,平成21年1月中に継続調査を実施したい旨を通告しているが,繁忙期である決算日の翌月を調査日とする継続調査の要求は,原告を困惑狼狽させるという不当な目的によるものである,⑨横浜税関調査部による一連の調査は,
原告が前件訴訟において過年
度の更正処分を争っていることに対する懲罰を目的とした不当な嫌がらせであるなどとして,本件立入調査1における横浜税関の調査態様に抗議し,調査の中止を要請するとともに,当該抗議及び要請に対して横浜税関がどのような対応を行ったのかについて,原告に対して文書により回答することを要請するというものであった。
[乙18の7]
(イ)a⒜

P10CFOは,P7特調官に対し,平成20年12月16日

付け文書を送付し,平成21年1月は決算日の翌月であり最も繁忙な時期に当たり,継続調査の要請に対する回答については,平成20年12月9日抗議書面に対する横浜税関長からの回答を受領した後に行う旨を申し立てた。[乙18の8]


P7特調官は,P10CFOに対し,平成20年12月19日付
けの継続調査等の再要請についてと題する文書を送付し,上記
⒜の書面に対し,平成20年12月9日抗議書面については文書による回答は行わないこと,原告の求めがあれば,P10CFOと面会し,直接口頭で横浜税関の考えを伝えること,平成21年1月中の継続調査については,決算日の翌月で繁忙な時期であるとのことであれば,同年2月中に1週間程度,継続調査を行いたいので,同年1月15日までに書面で回答をもらいたいこと等を伝えた。[乙18の9]


P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年1月21日付け
文書を送付し,原告は,同年4月以降までは,監査等への対応で最も繁忙な時期に当たり,継続調査の要請に対する回答は,平成20年12月9日抗議書面に対する横浜税関長からの回答を受領した後に行う旨を申し立てた。[乙18の10]



P7特調官は,P10CFOに対し,平成21年1月23日付け
の継続調査等の再要請についてと題する文書を送付し,同年2
月中に1週間程度,継続調査を行いたいので,同年1月30日までに書面で回答をもらいたい旨を再度伝えるとともに,平成20年12月9日抗議書面については文書による回答は行わないことを伝えた。[乙18の11]



P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年2月10日付け
文書を送付し,原告は,同年4月以降までは,監査等への対応で最も繁忙な時期に当たり,継続調査の要請に対する回答は,平成20年12月9日抗議書面に対する横浜税関長からの回答を受領した後に行う旨を再度申し立てた。[乙18の12]

b⒜

横浜税関調査部長P23(以下P23調査部長という。)は,
原告の代表者
(P11)
に対し,
平成21年2月9日付けの書面
(以
下平成21年2月9日税関書面という。)を送付して,原告に
対し,
別紙17
横浜税関調査部長による要請の内容
記載のとおり,
①本件立入調査1において原告から閲覧に供された書類に関する質問を行うとともに,本件輸入貨物1・2の課税価格及び税額に係

る調査に必要な書類の写しの提出を要請した。[乙18の13]


P10CFOは,P23調査部長に対し,平成21年2月19日
付けの書面(以下平成21年2月19日原告回答書面という。)
を送付して,平成21年2月9日税関書面に対する回答を行った。P10CFOは,
平成21年2月19日原告回答書面において,平

成17年11月分から平成20年10月分の送金
RemittanceTotaltoP1(9315)
の各項目に関する質問
(別紙17記載1)
については,
既に開示して説明を行った内容であるとして,具体的な内訳や数額を明らかにすることをせず,平成17年11月から平成20年1

0月の間に販売した物品について,月別の製品コードごとの販売単価と販売数量の質問(別紙17記載2)については,

消費税申告書写を提出済みです。

とのみ回答し,③関係書類の写しの提出の要求(別紙17記載3)については,原告が関係書類の写しを提出した事実がないにもかかわらず,
既に提出済みであると回答した。
また,
P10CFOは,平成21年2月19日原告回答書面において,横浜税関長が平成20年11月17日抗議書面について公式な書面による説明がいまだ行われていないとして,
その回答を併せて求めた。
[乙18の14]



P23調査部長は,原告の代表者(P11)に対し,平成21年
3月3日付けの書面
(以下
平成21年3月3日税関書面
という。

を送付し,P10CFOは,

平成21年2月19日原告回答書面
において,
平成21年2月9日税関書面における質問等については,
全て横浜税関調査担当者に説明済みであり,関係資料の写しも提出済みであるとしているが,
そのような事実はないこと,原告の本

件立入調査1における対応,その後の質問に対する対応等は,虚偽陳述,
虚偽答弁又は検査忌避に該当する疑いがあること,繰り返

し連絡しているとおり,平成20年11月17日抗議書面及び平成20年12月9日抗議書面に対して,書面により回答することは,今後もしないこと,横浜税関職員をして継続調査を実施させる予

定であるので,別途担当官から連絡する旨を申し入れた。[乙18の15]
c⒜

P7特調官は,P10CFOに対し,平成21年3月3日付けの
継続調査の実施についてと題する文書を送付し,原告に対する
継続調査を,関税法105条1項6号及び消費税法62条3項に基づき,同月5日から同月11日までの日程で,調査人員8人で実施する旨を通知した。[乙18の16]



P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年3月4日付けの
継続調査実施通知についてと題する書面を送付し,原告が同年
4月初旬までは,原告は会計年度の決算手続に忙殺されており,継続調査に対応することは困難であり,さらに,同年3月5日からP10CFOを含めて,原告の幹部職員が不在のために対応することは不可能であるとして,継続調査を同年4月以降にしてもらいたい旨を申し出るとともに,平成20年12月9日抗議書面に対する回答をもらいたい旨を繰り返し要求した。P7特調官は,P10CFOに対し,原告の幹部職員が不在であるならば,上記日程での継続調査は実施しないこととするが,日程調整をしたいので,平成21年3月11日までに連絡をもらいたい旨を記載した書面をファクシミリで送付した。[乙18の17,乙21]

d⒜

山本弁護士は,横浜税関長に対し,平成21年3月9日付け書面
(以下平成21年3月9日質問書面という。)を送付して,P
23調査部長が平成21年3月3日税関書面において,P10CFOによる平成21年2月19日原告回答書面の内容が虚偽陳述及び虚偽答弁,又は検査忌避に該当する疑いがあるとしている点について,その具体的な根拠を教えてもらいたい旨質問する内容の書面を送付した。[乙18の18]


P10CFOは,横浜税関長に対し,平成21年3月10日付け
文書を送付し,平成21年3月3日税関書面について,原告は本件立入調査1において最大限の協力しており,今後もその方針に変わりはない旨を説明するとともに,平成20年12月9日抗議書面に対する回答を書面で行うように要求した。[乙18の20]

(ウ)a⒜

P10CFO及びP8経理部長は,平成21年3月11日,P

7特調官に電話を掛けて,継続調査の日程につき,同年5月11日の週又は同月25日の週とすることで,P22と調整中であるなどと連絡し,これに対し,P7特調官は,同年4月における継続調査の受入れを再度要請した。[乙22]


P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年3月13日付け
文書を送付して,
事後調査については,
P22に連絡をとり,
現在,
同年5月11日から同月15日の日程で調整中であるが,現時点で確定していない旨を通知した。[乙18の21]

b⒜

P7特調官は,平成21年3月16日,P10CFOに対し,同
日付けの文書をファクシミリで送付して,原告に対する早急な調

査が必要なため,同年4月1日からの継続調査を設定してもらいたいこと,②本来は,帳簿書類等及び取引関係書類の原本を提示してもらうこととなるが,効率的な調査を実施するため,以前から要請している全ての資料を同年3月25日までに貸し出してもらいたいこと(郵送等が困難であれば税関から受取りに行くこと),③継続調査は,輸入者(納税者)である原告に対するものであり,第三者であるP1社のP22の予定をもって継続調査の受入れの可否を判断することは,横浜税関として受け入れることはできない旨を申し入れた。[乙18の22]


P10CFOは,P23調査部長に対し,平成21年3月19日
付けの平成21年3月16日付P7特別関税調査官(第2担当)の書簡についてと題する文書を送付し,原告が他社から聞き及

んでいる通常の事後調査と比較して明らかに異常な調査を受け入れたとして,原告が継続調査を拒んでいるとの指摘について強く抗議し,
平成21年3月9日質問書面に対する回答を強く要請し,横

浜税関調査担当官が,本件立入調査1に当たり,P22から直接事情を聴きたいと指摘していたにもかかわらず,同月16日付けの文書(上記⒜)においては,P22が第三者であるとしており,このような見解の変更について理由を説明するよう要請し,事後調査

におけるP16の立会いを認めることに関し,平成20年12月9日抗議書面に対する回答を含めて,横浜税関長名の公文書による回答を要請するとともに,④追伸として,

5月11日から15日までであれば,任意調査を受ける予定を取る事は可能であります。

と付記した。[乙18の23]



P7特調官は,平成21年3月26日,P10CFOに対し,同
日付けの文書をファクシミリで送付し,同月19日付けのP23調査部長宛ての文書(上記⒝)を拝読した旨を伝えるとともに,同月16日付けの文書(前記⒜)による同年4月1日からの継続調査の受入れ及び資料の貸出しの要請に対する回答を要請し,P23調査部長からP10CFOに対して回答の書面を発することはない旨を伝えた。[乙18の24]
(エ)a⒜

P7特調官は,平成21年3月31日,P10CFOに対し,

同日付けの文書をファクシミリで送付し,同年4月1日からの継続調査の設定及び資料の貸出しの要請(前記(ウ)b⒜)に対する回答がないことを遺憾に思うとした上で,継続調査及び資料の借受けのため,同日午前10時に原告の事務所に赴く旨を伝えて,その対応を要請した。これに対し,P10CFOは,同年3月31日,P7特調官に対し,同日付けの文書をファクシミリで送信して,同月26日付けの書面(前記(ウ)b⒞)に対する回答書面を現在準備しているところであり,原告の四半期決算がスタートするため,継続調査を受け入れる状態にはなく,同年4月1日の継続調査については断る旨を回答した。[乙18の25・26]


P7特調官は,平成21年3月31日,P10CFOに対し,同
日付けの文書をファクシミリで送付し,同年4月1日の継続調査を断る旨の回答(上記⒜)について誠に遺憾に思うとした上で,貸出しを要請した資料を同日に受取りに赴くとして準備を要請した。これに対し,P10CFOは,同年3月31日,P7特調官に対し,同日付けの文書をファクシミリで送信して,前会計年度と第一四半期の報告のために繁忙であり継続調査に対応することはできないとし,これ以上の一方的な要求は原告に対する業務妨害と理解させてもらう旨を回答した。[乙18の27・28]

b⒜

P7特調官は,平成21年4月1日,P10CFOに対し,同日
付け文書をファクシミリで送付し,原告の準備ができていないと

いうことであるので,
同日の継続調査は見合わせる旨,同日午後

3時頃,貸出しを要請した関係書類を受取りに原告の事務所に赴く旨を伝えた(なお,P7特調官は,同書面において,受取りに参る資料は,貴社が,何度も,ご用意いただいている旨を表明している資料ですので,貴殿やP8氏に,多くの時間を割いて対応いただく必要はないと考えております。本来,3月25日までにお送りいただくか,当方が受取りに行くかということでしたが,未だ何らの回答も無いことから,貴社ご多忙とのことですが,こちらからお伺いいたしますと記載していた。)。これに対し,P10CFOは,同年4月1日,P7特調官に対し,同日付けの文書をファクシミリで送付し,4月は様々な会計処理で忙しく対応不可能である旨を回答した。[乙18の29・30]


P7特調官は,平成21年4月1日,P10CFOに対し,同日
付けの文書をファクシミリで送付し,重ねて資料の貸出しを依頼するとともに,貸出しを要請した資料の受取りに赴くに当たって都合のよい日時を連絡するように依頼した。なお,P7特調官は,同文書において,貸出しを求めている資料は,原告が用意している旨を何度も表明していた資料であり,忙しいという理由で資料の貸出しを断るのは理解しかねる旨,資料の受取りに要する時間は,借用資料の確認などのために30分程度あれば十分であり,立ち会う者は原告の社員であれば誰でも構わない旨,別添のとおり借用書を送付するので,事前に貸し出す資料と借用書の記載との対照確認をお願いする旨を記載していた。[乙18の31]



P10CFOは,平成21年4月2日,P7特調官に対し,同日
付け文書をファクシミリで送付して,P7特調官の依頼(上記⒝)に対し,

社是に基づき,一切の会計書類,データの持ち出しは制限されています。機密事項に関わる経理関係書類の貸し出しは辞退させていただきます。

と申し立てた。[乙18の32]

P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年4月2日付けで,貴職平成21年3月26日付書簡について
と題する文書を送付し,
同文書において,同年3月26日付けの文書(前記(ウ)b⒞)による要請のうち,調査日程については,同月19日付けの文書(前記(ウ)b⒝)で,同年5月11日から同月15日までの間であれば任意調査を受ける予定を取ることは可能である旨の記載をもって既に回答しているとし,また,資料提出については,既に説明しているとおり,原告の会計関係帳票を社外に持ち出すことは禁止されているので断る旨を申し入れるとともに,平成20年12月9日抗議書面及び平成21年3月9日質問書面に対する回答を要請した。[乙18の33]

P7特調官は,平成21年4月14日,P10CFOに対し,同日付けの継続調査の実施についてと題する文書をファクシミリで送
付し,本件立入調査1において,横浜税関が必要と認めた関係資料の提示及び説明が不十分であったため調査未了となったことを踏まえて,継続調査を要請してきたが,本件立入調査1から5か月も経過したにもかかわらず,いまだに継続調査の実施に至っておらず,原告の輸入取引の内容の確認及び資料の分析を完遂するべく,同年5月11日から同月15日までの間,調査人員8名による継続調査を実施する旨を通知した。なお,P7特調官は,同文書において,上記日程は,原告の十分な協力が得られることを前提とする目安であり,調査期間は,輸入取引内容の確認及び資料の分析の完了までである旨を付記していた。[乙18の34]

(オ)a

P10CFOは,P7特調官に対し,平成21年4月21日付け

の継続調査依頼についてと題する書面(以下平成21年4月21日原告書面という。を送付して,

同月14日付けの文書
(前記(エ)
d)に対し,

調査日程について『期間については,貴社の十分な協力が得られることが前提の目安であり,輸入取引の内容の確認及び資料の分析の完了までとなります。』との趣旨で継続調査を行われるのであれば,

調査には応じられないとした上で,①継続調査の期間を同年5月11日から同月15日まで(10時から16時まで)とすること,②調査人員を5名とすること,③今回の追加調査をもって継続調査を完了し,適正な最終結論を公文書で開示すること,④平成20年12月9日抗議書面及び平成21年3月9日質問書面に回答すること,P16の継続調査への同席を認めることという条件を示した⑤
上で,これらの条件が満たされるのであれば,平成21年5月11日から同月15日までの追加調査を受諾する旨を通知した。また,P10CFOは,平成21年4月21日原告書面において,これに対する回答が同年4月24日午後3時までにされない場合には,横浜税関において事後調査の意思がないものとして取り扱う旨を付記した。[乙18の35]
b⒜

P7特調官は,平成21年4月23日,P10CFOに対し,同
日付け継続調査の実施についてと題する文書をファクシミリで
送付して,平成21年4月21日原告書面による原告の申入れは,法的根拠がなく受け入れることのできない不当な要求であり,事実上の調査拒否と理解せざるを得ない旨を申し入れた。[乙18の36]



P10CFOは,平成21年4月27日,P7特調官に対し,同
日付け書面をファクシミリで送付し,
同月23日付け文書
(前記⒜)
について,平成21年4月21日原告書面に記載したとおり,調査拒否をした事実はなく,P7特調官による一方的な偏見と誤解によるものである旨を申し入れた。[乙18の37]


P7特調官は,P11に対し,平成21年9月10日税関書面を送付して,原告が関係書類の提出及び継続調査に係る要請に応じなか①
ったことから,これ以上の調査は不可能であると判断し,原告の平成17年11月から平成20年11月までの間の輸入(納税)申告に対する調査を打ち切る旨,②本件対象貨物の課税価格は,関税定率法4条の3第1項の規定を適用して決定すべきものであり,同法4条1項又は4条の3第2項を適用して課税価格を計算した原告の輸入
(納税)
申告には誤りがあるとして,原告に対して修正申告を行うことを要請する旨,③原告が修正申告の要請に応じるのであれば,修正申告する場合の計算方法等については別途お知らせするので,修正申告を行う意思の有無について,原告の代表権のある者の文書による回答を要請するとともに,原告が修正申告を行わなければ,更正処分を行うこととなる旨を通知した。なお,P7特調官は,平成21年9月10日税関書面において,修正申告すべき内容等について,事前に説明を受けたいとの意向が原告にあるならば,これに応じる用意がある旨を付記していた。[乙23]
d⒜

P8経理部長は,平成21年9月16日,P7特調官に対し,同
日付け平成21年9月10日付貴職書簡に対する回答と題する
文書を送付し,同文書において,原告が継続事後調査を忌避又は回避した事実はないとした上で,修正申告の要請につき,具体的にどのような申告内容が関税関係法令の規定に従っていなかったのかの説明がなく,具体的な修正申告の方法について説明が行われていないため修正申告の是非について検討を行うことは困難であり,具体的な修正について説明があれば,原告において検討する旨を通知した。[乙24]



P7特調官は,
平成21年9月17日,
P8経理部長に対し,
平成21年9月16日付貴職書簡についてと題する文書をファクシミリで送付し,同文書において,同月16日付けのP8経理部長の文書
(上記⒜)原告の代表権のある者によるものではないため,
は,
原告が意思表示を行ったものとは認めない旨を伝えた。また,P7特調官は,同文書において,P8経理部長に対し,修正申告の方法については,平成21年9月10日税関書面に記載したとおり,原告の代表権のあるものの文書により,修正申告の意思がある旨を回答してもらえれば,
更に詳細を説明する用意がある旨を再度伝えた。
[乙25]


山本弁護士は,平成21年9月18日,P7特調官に対し,平成21年9月17日付貴職書簡についてと題する文書をファクシミリで送付し,同文書において,同月16日付けのP8経理部長の文書(前記⒜)は,原告の意思を有効に表示するものであり,原告の代表者名での回答が期限までないからという理由で,継続調査に対して協力する意思を明示している原告に対して,法令違反の具体的理由や更正の内容を原告に明らかにし,原告の意見を聴取するという手続を経ることなく,適正手続に反した一方的な更正処分を行うことがないよう申し入れた。[乙26の1・2]


P11は,P7特調官に対し,平成21年9月18日付けの平成21年9月10日付貴職書簡に対する回答と題する文書(以下平成21年9月18日原告書面という。)を送付し,原告が継続事後調査を忌避又は回避した事実はないとした上で,修正申告の要請につき,具体的にどのような申告内容が関税関係法令の規定に従っていなかったのかの説明がなく,具体的な修正申告の方法について説明が行われていないため修正申告の是非について検討を行うことは困難である旨を通知した。[乙27]


P12特調官及びP7特調官は,
平成21年9月28日午後3時頃,
原告の事務所において,P10CFO及びP8経理部長と面会し,平成21年9月18日原告書面において原告の修正申告に係る意思が表示されていなかったことから,本件立入調査1の結果に基づき,関税定率法4条の4の規定を適用し,本件各輸入貨物の課税価格を計算して本件更正処分12及び本件賦課決定処分12を行う旨を伝えた。・

[乙28]


検討
ア(ア)

前記認定事実を踏まえて検討するに,原告は,横浜税関調査担当官
が本件準備依頼書面や本件書類リストを送付して,調査に必要な関係資料をあらかじめ伝えていたにもかかわらず(認定事実イ(イ)c),本件立入調査1において,横浜税関の要請する関係書類を全て提示することをせず(認定事実ウ(オ)aないしd),横浜税関調査担当官は,調査に必要な資料について,十分な質問を行うことはできなかった(認定事実ウ(カ)b⒜)。また,原告は,横浜税関調査担当官が平成20年11月20日資料要請書面を交付して,調査に必要な関係資料につき,関係書類の提供等を依頼したものの,横浜税関がおよそ応ずることのできない条件を付すなどして,
上記依頼に協力せず
(認定事実ウ(エ)aないしc)

横浜税関は,その結果,本件立入調査1において,原告から提示を受けた関係資料の筆写等をする作業に多くの時間を充てなければならない状況となり,原告に対する調査を完了することができなかったものである(認定事実ウ(カ)・(キ))。そして,横浜税関が,本件立入調査1の後において,追加調査の実施及び関係資料の提供等を繰り返し依頼したにもかかわらず,原告は,繁忙であること等を理由として,これに応じることをせず(認定事実エ(イ)ないし(オ)),平成21年2月19日原告回答書面においては,横浜税関の要請する関係資料は既に提出済みであるなどと,事実と異なる説明をした上(認定事実エ(イ)b⒝),平成21年4月21日原告書面においては,横浜税関が応じることのできない条件を付して,当該条件が満たされるならば,追加調査に応じる旨を通知するなどしている(認定事実エ(オ)a)。なお,原告は,横浜税関が,平成21年9月10日税関書面により,原告に対する調査を打ち切り,修正申告がされなければ更正処分を行う旨を通知するとともに,修正申告の内容等について事前に説明を受ける機会を付与したにもかかわらず(認定事実エ(オ)cないしe),これに応じることをしていない。(イ)

このような一連の事実経緯に鑑みれば,横浜税関は,関税法105
条1項6号に基づく質問検査について,原告から十分な協力を得ることができなかったことは明らかである。そして,横浜税関が本件立入調査1において入手した本件筆写等資料の全てによっても,
本件輸入貨物1

2に係る最大販売数量単価を把握することができず,本件輸入貨物1・2の国内販売に係る国内経費等を把握することもできないのであるから(認定事実ウ(ク)),本件各出張所長は,関税定率法4条の3第1項の規定を適用して,本件輸入貨物1・2の課税価格を計算することができなかったというべきであり,本件全証拠を精査しても,上記の認定及び判断を覆すに足りる事実ないし証拠はない。
イ(ア)a

原告は,横浜税関調査担当官による調査の態様が,原告の税関に

対する信頼を著しく損なう異常な態様のものであり,P7特調官による追加調査及び関係資料の提供等の要請は一方的かつ非常識な要求であったなどと主張している。
b⒜

しかしながら,本件立入調査1の実施状況等は,前記認定のとお
りであり(認定事実ウ(ア)ないし(キ)),横浜税関調査担当官による調査の態様が適正を欠くものであったということはできない。なお,原告(山本弁護士)は,横浜税関長に対し,平成20年11月17日抗議書面及び平成20年12月9日抗議書面を送付し,横浜税関調査担当官による調査の態様等について抗議しているが(認定事実ウ(イ)a,エ(ア)b),これらの書面は,原告側の認識を記載したものにすぎず,本件全証拠を精査しても,横浜税関調査担当官による調査の態様が適正を欠いたものであったことを認めるに足りる的確な証拠はない。


この点,P7特調官は,平成20年11月27日以降,P10C
FOに対し,相当回数にわたり,追加調査の実施や関係書類の提供等を要請している。しかしながら,横浜税関調査担当官は,本件立入調査1において,原告に対する事後調査を完了させることができなかったのであるから(認定事実ウ(カ)a,b⒜・⒝,(キ)),横浜税関において,原告に対して追加調査及び関係資料の提供等を要請する必要があったことは明らかである。そして,P7特調官が,原告から追加調査の実施や関係書類の提供等について具体的な協力を得られないという状況において,原告に対し,繰り返し,その協力を要請するのは至極当然であり,本件全証拠を精査しても,その態様が適正を欠くものであったと認めるに足りる事実ないし証拠はない。



なお,原告は,横浜税関が一方的に調査日程を変更したとしてお
り,P20の平成20年10月3日付けのメール(甲92)には,横浜税関が調査日程を変更した旨の記載部分がある。
しかしながら,
同メールを通覧しても,日程変更の具体的内容は明らかではなく,本件立入調査1の前後の経緯に照らせば,横浜税関が,真実,原告の意に反して,一方的に調査日程を変更したならば,原告が素直にこれに応じたのかという疑問も生じる。また,原告が調査日程の変更について横浜税関に直接抗議したことをうかがわせる事実ないし証拠もないことを併せ考えれば,横浜税関が一方的に日程を変更したと認めることはできず,その他これを認めるに足りる的確な証拠はない。

以上によれば,原告の主張(前記a)を採用することはできない。
(イ)a

原告は,平成21年4月21日原告書面について,横浜税関によ

る継続調査の受入れを拒否したものではないなどと主張している。b⒜

そこで検討するに,原告は,平成21年4月21日原告書面にお
いて,横浜税関による継続調査の申入れに対し,調査日程について『期間については,貴社の十分な協力が得られることが前提の目安であり,輸入取引の内容の確認及び資料の分析の完了までとなります。』との趣旨で継続調査を行われるのであれば,辞退させて頂きます。とした上で,①継続調査の期間を平成21年5月11日から同月15日までとすること,調査人員を5名とすること,


今回の追加調査をもって継続調査を完了し,適正な最終結論を公文書で開示すること,平成20年12月9日抗議書面及び平成21

年3月9日質問書面に回答すること,P16の継続調査への同席

を認めることという条件を提示し,これらの条件が満たされるのであれば,
追加調査を受諾する旨を通知している
(認定事実エ(オ)a)




しかしながら,関税法105条1項による税関職員の職務執行を
拒むなどした場合につき罰則規定が設けられていること(同法114条の2第10号)に照らせば,原告は,本件対象貨物に係る帳簿書類その他の物件について,税関職員による質問検査を受忍する義務を負っているというべきであり(同法105条1項6号),被調査者である原告において,同号に基づく質問検査(継続調査)を受け入れるか否かそれ自体についての条件を付することは,上記の受忍義務と抵触する行為であるといわざるを得ない。また,原告が横浜税関に提示した条件の内容についてみても,横浜税関が必要な事後調査を実施できなければ,関税法105条1項6号に基づく事後調査(追加調査)を完了させることはできないのであり,原告の十分な協力が得られるかどうかも不確かな状況において,横浜税関が上記⒜③の条件に応じる余地などないことは明らかである。また,横浜税関は,原告に対し,平成20年12月9日抗議書面及び平成21年3月9日質問書面に対する回答は行わない旨を繰り返し申し入れており(認定事実エ(イ)a⒝・⒟,b⒞,(ウ)b⒞),横浜税関が上記各書面に回答すべき義務を負っていないことに鑑みても,上記⒜④の条件に合理性があるということはできず,横浜税関がこれに応じないことは明らかである。さらに,同号に基づく調査(質問検査)に被調査者以外の第三者を同席させることの可否は,調査の実施主体である税関職員が判断すべきものであり,守秘義務の観点からも税関職員が第三者の同席を拒否するのは至極当然である。そして,横浜税関が原告に対し,継続調査に通関士又は弁護士ではないP16を臨席させることはできない旨を既に説明していたこと(認定事実イ(ウ)c⒝・⒞,e⒝,ウ(ア))に鑑みても,上記⒜⑤の条件に合理性があるということはできず,横浜税関がこれに応じるとはおよそ考え難い。

以上によれば,原告は,平成21年4月21日原告書面において,横浜税関による継続調査を受け入れるための条件として,横浜税関が応じることのできない条件を提示していたということができる。そして,原告が,本件立入調査1の後,約5か月間にわたり,追加調査の実施及び関係資料の提供等を繰り返し依頼されたにもかかわらず,これに応じなかったという経緯に鑑みても,原告は,平成21年4月21日原告書面において,横浜税関による追加調査の受入れを事実上拒否したものというべきである。よって,原告の主張(前記a)を採用することはできない。
(ウ)a

原告は,本件立入調査1において,横浜税関から要求された関係

資料を全て提示している旨主張している。しかしながら,原告が,本件立入調査1において,横浜税関が要請した関係資料の全てを提示していなかったことは,前記認定のとおりであり(認定事実ウ(オ)aないしd),本件全証拠を精査しても,同認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。よって,原告の上記主張を採用することはできない。b
原告は,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官による質問に対し,繰り返し丁寧に回答しており,横浜税関調査担当官が原告に対する質問によって必要な情報を得られなかったならば,それは調査担当者としての能力が欠如していたことによるものであるなどと主張している。しかしながら,横浜税関調査担当官が,本件立入調査1において,関係資料の内容について十分な質問を行うことができなかったことは前記認定のとおりであり(認定事実ウ(カ)b⒜・⒝),本件全証拠を精査しても,同認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。この点,P8経理部長は,その陳述書(甲74〔16頁〕)において,質問時間が30分程度であったことは特段否定していないところ,横浜税関調査担当官が,関係資料の提供等について協力を得られない状況(認定事実ウ(エ)・(オ))において,関係資料につき,調査に必要な質問を尽くすことができたともおよそ考え難い。また,税関職員が事後調査において必要な情報を得ることができなければ,追加調査を要請することもやむを得ないというべきであって,調査手法の巧拙いかんは,当該調査の適法性に影響を与える事情には当たらない。よって,原告の上記主張を採用することはできない。

(エ)a

原告は,横浜税関による本件立入調査1は,任意調査であり,関

係資料等の提出に応ずべき義務はないから,横浜税関が要請する関係資料等の提出をしなかったことをもって,調査拒否をしたということはできない旨主張している。

そこで検討するに,関税法105条1項6号は,税関職員は,輸入貨物に係る輸入者その他の関係者に質問し,輸入貨物に係る帳簿書類その他の物件を検査することができる旨を規定しており,前述のとおり(前記(イ)b⒝),輸入者である原告は,同号に基づく質問検査を受忍すべき義務を負っていると解すべきである(なお,同号に基づく質問検査は,
任意調査の方法であるが,
任意調査であるということは,
質問又は検査を受けた場合に,これを自由に拒否できるということではなく,税関職員が実力を行使して直接強制の方法にでることが認められていないことを意味するものであるというべきである。)。そして,関税法105条1項6号にいう検査とは,輸入貨物に係る帳
簿書類その他の物件の形状,内容等を五官で認識するものであるところ,検査の方法は,対象物件の性質・分量,検査の実施状況等に応じて異なり得るものであり,例えば,検査の対象物件が帳簿書類であって,その内容が複雑であったり,その分量が相当規模に及んだりするような場合には,所持者の負担等をも考慮し,当該書類の写しの提供や原本の貸出しを受けることも,同号に基づく検査の一態様であ
るということができる。

c⒜

本件についてみるに,横浜税関調査担当官が原告に対して提出を
要請した関係資料は,相当な分量であり,例えば,物流関係の資料だけでも段ボール箱20箱以上に及び(認定事実ウ(ウ)a),本件各CDには,
10万行を超えるデータが含まれている
(認定事実ウ(オ)
c⒝)。このように膨大な関係資料の内容を,本件立入調査1の間に,全て閲覧のみの方法で把握することが不可能であることは明らかであり,横浜税関担当職員が,原告に対し,平成20年11月20日資料要請書面を交付するなどして,関係資料の提供等を求めたこと(認定事実ウ(エ)a・b)は,関税法105条1項6号に基づく検査の方法として,適切かつ合理的なものであり,本件立入調査1を受け入れる原告の負担の軽減という観点からみてもむしろ望ましいものであったということができる。


原告は,平成20年11月20日資料要請書面に対し,平成20
年11月20日回答書面において,法人税確定申告書が必要な理

由及び法的根拠の開示,国内調達製品の調達価格が含まれている

資料を事後調査業務以外に使用(例えば,税関内での参考資料としての回覧及び証拠資料としての使用)
しない旨の確約,原告の書

面による事前許諾がなければ,書証の写しを一切開示しないことについて,公式の書簡で回答することを条件として,関係資料の提供等に応じる旨回答している。
しかしながら,本件立入調査1の結果,本件輸入貨物1・2に係
る輸入(納税)申告における課税価格が適正でないことが判明すれば,更正処分が行われ,原告が当該処分に不服があれば,審査請求手続や訴訟手続に至ることとなる。このような場合において,関税当局が,本件立入調査1により入手した関係資料を更正処分のための資料や争訟手続における証拠として利用することは当然あり得るのであり,横浜税関が,本件立入調査1において入手した関係資料について,証拠資料として使用しない旨を確約する(上記②),あるいは,原告の事前許諾がなければ,一切開示しない(上記③)といった条件に応じることができないことは明らかである。そうである以上,原告は,平成20年11月20日回答書面において,横浜税関が応じることのできない条件を付すことにより,関係資料の提供等を事実上拒否していたというべきである。そして,原告が,横浜税関調査担当官に対し,関係資料の内容を検査し得るだけの閲覧等の機会を付与することもしていないこと(横浜税関調査担当官が本件立入調査1において関係資料の全てを検査することが不可能であったことは前記検討のとおりである。を併せ考えれば,

原告は,
横浜税関調査担当官による関係資料の提供等を事実上拒否することによって,関税法105条1項6号に基づく検査についても事実上拒否していたということができる。
d⒜

横浜税関は,本件立入調査1の後において,原告に対し,関係資
料の提供等を繰り返し要請しているところ,それらの関係資料は,横浜税関が,本件立入調査1に先立ち,あるいは,本件立入調査1において,
繰り返し提供等を要請していた資料であり
(認定事実イ(イ)
c,ウ(エ)a・b,エ(イ)b⒜,(ウ)b⒜,(エ)b⒜・⒝),これらの関係資料の提供等を行うことが原告にとって困難であったとは考え難い(なお,P8経理部長の陳述書〔甲74〕には,原告が本件立入調査1のために準備した資料をそのまま保管していた旨の記載部分がある。)。そして,原告は,本件立入調査1の後,約5か月もの間,追加調査の実施及び関係資料の提供等に応じていないところ,その間,平成20年11月17日抗議書面や平成20年12月9日抗議書面についての回答を求めることに固執し,横浜税関が書面による回答はしない旨を繰り返し説明しているにもかかわらず,その回答を継続調査の受入れの条件とするなどし(認定事実エ(イ)a⒜・⒞・⒠,b⒝,c⒝,d⒝,(ウ)b⒝,(エ)c,(オ)a),平成21年2月19日原告回答書面においては,関係資料を既に提出済みであるなどと事実と異なる説明をしていたのであり(認定事実エ(イ)b⒝),このような経緯に鑑みれば,原告は,本件立入調査1の後においても,関係資料の提供等に応じないことによって,関税法105条1項6号に基づく検査を事実上拒否していたということができる。


なお,原告は,関係資料の提供等の要請が,横浜税関として公式
の文書でされ,原告の秘密確保についてしかるべき措置が取られるならば,関係資料の写しの提供に応じるつもりであったなどとしている。しかしながら,P7特調官は,関税法105条1項6号に基づく質問検査権の行使として関係資料の提供等を求めていたのであり(認定事実ウ(エ)b),P23調査部長がP11に対して平成21年2月9日税関書面を送付し,関係資料の写しの提出を要請したこと(認定事実エ(イ)b⒜)に鑑みても,原告に対する関係資料の提供等の要請が横浜税関として正式にされたものであることは明らかである。また,横浜税関調査担当官は,公務員として守秘義務を負っているところ,P10CFOは,業務の繁忙や社是を理由
に,
関係資料の提供等の要請を拒否し
(認定事実エ(エ)a⒝,
b⒜・
⒞,c),秘密保護の措置を求めることを特段しておらず,原告が従前の継続調査では横浜税関に対する資料の貸出しに応じていたこと(認定事実ア(イ)a)に照らしても,原告が秘密確保の措置の有無等を理由として,関係資料の提供等を拒否していたとはおよそ考え難い。


以上によれば,原告の主張(前記a)を採用することはできない。
(オ)a

原告は,横浜税関調査担当官が,本件立入調査1において,①本
件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価,②本件輸入貨物1・2の国内販売に係る通常の利潤及び一般経費の額を得るための資料を入手できなかったのは,横浜税関調査担当官による調査の不手際が原因であったなどと主張する。

しかしながら,原告は,前記認定のとおり,本件立入調査1において,横浜税関が要請する資料を全て提示せず(認定事実ウ(オ)aないしd),関係資料の提供等の要請にも協力せず(認定事実ウ(エ)),その結果,横浜税関調査担当官は,調査時間の多くを関係資料の筆写等に充てざるを得なかったのであり(認定事実ウ(カ)a),これらの事実経緯によれば,横浜税関調査担当官が必要な資料を入手できなかった原因が,調査の不手際にあったなどということはできない。
なお,原告は,横浜税関調査担当官が関係資料の提供等を求めた書類によっては,本件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価,本


件輸入貨物1・2の国内販売に係る通常の利潤及び一般経費の額を算出することはできなかったなどと指摘する。しかしながら,原告が,本件立入調査1において,横浜税関調査担当官の要請する関係資料を全て提示し,また,関係資料の提供等に協力したならば,横浜税関調査担当官において,上記①及び②に関する資料を更に特定して原告に要請することなども可能であったというべきであり,原告の指摘する事情は,原告による調査拒否を正当化する事情には当たらない。

以上によれば,原告の主張(前記a)を採用することはできない。
(カ)

原告は,調査拒否を理由として関税定率法4条の3第1項を適用す
ることができないというためには,輸入者が調査を拒絶し,かつ,税関当局が調査を行うために社会通念上当然に要求される程度の努力を行ったにもかかわらず,調査を行うことが客観的に不可能であった場合であることを要するなどと主張している。しかしながら,横浜税関は,平成20年11月28日に本件立入調査1を終えた後,平成21年4月23日税関書面を送付するまでの約5か月もの長期間にわたり,追加調査の実施及び関係資料の提供等を繰り返し要請していたのであって,原告における業務が決算等により繁忙であること等を最大限考慮しても,横浜税関は,原告に対する事後調査を行うために社会通念上要求される程度の努力をしていたということができる。そして,既に検討したとおり,横浜税関は,原告から十分な協力を得られなかった結果,関税定率法4条の3第1項を適用して,本件輸入貨物1・2の課税価格を計算することができなかったのであり,
原告の上記主張を採用することはできない。
(キ)

原告は,本件各記録書面について,P10CFOやP8経理部長が
認識している客観的な事実に反する記述が多く含まれており,信用できないなどと主張している。
しかしながら,本件各記録書面は,横浜税関担当職員が,その事実経過を記録化するために職務上作成した書面であり,相当具体的な内容を多く含んでおり,その記載内容や,他の証拠との整合性について,特段不自然,不合理な点はなく,十分信用することができる。この点,原告は,本件照会結果(本件各記録書面の電子ファイルのプロパティ)を根拠として,本件各記録書面が実際の電話応答等から相当の年月が経過した後に作成されたものであるなどと指摘しているが,証拠(甲138,乙108)によれば,電子ファイルのプロパティの日時は,例えば,文章の内容を一切修正することなく,名前を付けて保存や上書き保存をした場合であっても更新されるものであると認められ,プロパティの各種日時が文書の作成日付よりも後であるからといって,そのことから直ちに当該文書の内容自体が事後的に作成されたものであると推認することはできない。本件各記録書面の内容が十分信用できるものであることは前記検討のとおりであり,関税職員が殊更に虚偽の文書を作成したとも考え難いことに鑑みれば,本件照会結果の内容は,本件各記録書面の信用性を否定するまでの事情には当たらないというべきである。以上によれば,原告の上記主張を採用することはできない。


小括
前記検討(前記⑴・⑵)によれば,本件各出張所長は,関税定率法4条の3第1項の規定を適用して,本件輸入貨物1・2の課税価格を計算することはできなかったということができるから,
本件輸入貨物12の課税価格は,

同法4条の4の規定を適用して計算されることになるというべきである。3
争点3(本件更正処分1・2における本件輸入貨物1・2の課税価格の算定が1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合したものであるか否か。)について
⑴ア

前記検討のとおり,本件各輸入貨物の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定する方法により計算されるべきものであるが
(前記1⑸)

本件各輸入貨物のうち,本件輸入貨物1・2の課税価格については,同項の規定する方法により計算することができないため(前記2⑶),同法4条の4の規定する方法(その他の方法)によって計算することとなる。そして,関税定率法施行令1条の11は,関税定率法4条の4を受けて,課税価格の計算方法を定めているところ,本件輸入貨物1・2については,関税定率法施行令1条の11第1号に規定する価格を課税価格とすることができる場合に当たるということはできないから,同条2号の規定する方法,すなわち,1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合する方法として税関長が定める方法により,その課税価格を計算すべきこととなる。


関税評価協定7条1項は,関税評価協定1条から6条までの規定により輸入貨物の課税価額を決定することができない場合には,関税評価協定及び1994年のガット7条の原則並びにこれらの一般協定に適合する方法により,輸入貨物の輸入国において入手可能なデータに基づいて決定する旨を規定し,関税評価協定7条2項は,同項⒜ないし⒢に掲げる価格等に基づいて課税価額を決定してはならない旨を規定している。また,関税評価協定の附属書Ⅰの第7条の規定に関する注釈は,その1項において,関税評価協定7条に基づく課税価額の決定は,可能な限り,従前に決定された課税価額に基づいたものとすべきであるとし,同注釈の2項は,関税評価協定1条から6条までに定める方法の弾力的な使用は,合理的なものである限り,7条の規定及びその目的に適合するものであると認められるとしている。
⑵ア

本件更正処分1において,本件輸入貨物1の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号に規定する方法に準じて計算されたものであるところ,前記検討(前記2⑵ア(イ))のとおり,横浜税関が本件立入調査1において入手した資料の全てによっても,本件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価を把握することができなかったことに鑑みれば,上記資料に基づき平均販売単価に輸入数量を乗じて計算した価格を国内販売価格とみなすことは合理的なものであるということができる。また,本件問屋契約書においては,本件対象貨物の国内販売のために原告が負担した費用は,P1社が補償し,原告は,P4製品(国内調達製品を含む。)の販売収益から,原告の問屋としての報酬及びP1社に代わって原告が負担した費用等を控除した金額をP1社の銀行口座に送金する(本件問屋契約6.4条)ものとされているから,前記検討(前記2⑵ア(イ))のとおり,本件輸入貨物1・2の国内販売に係る国内経費等を把握することができない状況において,平成19年1月ないし同年12月における原告からP1社への送金及びその明細に関する書類から国内販売に係る経費等の額を計算し,これを国内経費等の額とみなすことによって,本件各みなし国内経費等率を算定すること(別紙9の1・2参照)は合理的なものであるということができる。そして,これらの合理的な方法によって算定されたみなし国内販売価格及び本件各みなし国内経費等率に基づき,関税定率法4条の3第1項1号の規定する方法により決定された本件輸入貨物1の課税価格は,関税評価協定7条2項⒜ないし⒢に掲げる価格等に基づくものではなく,その決定方法は,同号の規定する方法の弾力的な使用であり,かつ,合理的なものであるというべきである。

本件更正処分2において,本件輸入貨物2の課税価格は,上記アのとおり計算された本件輸入貨物1の課税価格を同法4条の2第1項に規定する同種類似貨物の取引価格とみなして同項に規定する方法に準じて計算されたものであるところ(前提事実⑸イ),前記検討(前記2⑵ア(イ))のとおり,本件輸入貨物1・2に係る最大販売数量単価及び国内販売に係る国内経費等を把握することができない状況において,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物について,本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格を同種類似貨物の取引価格とみなすという方法(前提事実⑸イ(ア)・(イ))により決定された本件輸入貨物2の課税価格は,関税評価協定7条2項⒜ないし⒢に掲げる価格等に基づくものではなく,その決定方法は,関税定率法4条の2第1項に規定する方法の弾力的な使用であり,かつ,合理的なものであるというべきである。

⑶ア

原告は,本件更正処分2の課税価格につき,これから決定される見込みである課税価格(本件更正処分1における本件輸入貨物1の課税価格)を同種貨物の取引価額とみなし,その課税価格を計算しているとして,上記の計算方法が従前に決定された課税価額に基づいて計算すべき旨を定めた関税評価協定7条に違反すると主張している。
しかしながら,本件更正処分1が平成21年9月29日付けでされているのに対し,本件更正処分2は,同月30日付けでされているから,原告の上記主張は,その前提を欠くものである。なお,関税評価協定の附属書Ⅰの第7条の規定に関する注釈は,飽くまでも可能な限り従前に
決定された課税価額に基づいて課税価額を決定すべき旨を述べているのであり,従前に決定された課税価額に基づかないことのみをもって,その計算方法が関税評価協定7条に適合しないということはできない。
よって,原告の上記主張を採用することはできない。


原告は,本件更正処分2における本件輸入貨物2の課税価格の算定について,関税評価協定の附属書Ⅰの第7条の規定に関する注釈の2項は,関税評価協定1条から6条までに定める方法の弾力的な使用を認めており,関税評価協定7条に規定する方法により課税価格を決定することは許されない旨主張している。
しかしながら,
関税評価協定の附属書Ⅰの
第7条の規定に関する注釈
は,可能な限り,従前に決定された課税価額に基づいたものとすべき旨規定しているが,上記従前に決定された課税価額から,関税評価協定7条に規定する方法によって決定された課税価額を明示的に除外しているわけではない。また,本件輸入貨物2の課税価格は,前述のとおり(前記⑵イ),本件輸入貨物1の課税価格を用いて,本件輸入貨物1と同一の品名及び製品番号の輸入貨物の課税価格を同種類似貨物の取引価格とみなすことにより,関税定率法4条の2第1項に規定する方法に準じて計算されたものであるから,上記の計算方法は,関税評価協定2条及び3条(関税定率法4条の2第1項)に定める方法を弾力的に使用したものであり,同注釈の2項の内容に沿ったものであるということができる。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,関税当局が,関税評価協定5条によらない方法で関税評価を行う理由を具体的に説明したり,追加での説明や資料の提出を行う機会を付与したりしておらず,本件更正処分1・2には,関税評価協定上の手続違反がある旨主張している。しかしながら,P7特調官は,本件立入調査1の際,原告に対し,本件輸入貨物1・2の課税価格は,関税定率法4条の3第1項に基づき計算されるべきものであると説明しており(認定事実ウ(キ)),また,P11に対し,平成21年9月10日税関書面をもって,修正申告をしょうようするとともに,修正申告の内容等について事前に説明をする機会を付与しているが,原告は,横浜税関に対して課税価格の計算方法等について,積極的に説明を求めることもしなかったのである(認定事実エ(オ)cないしe)。また,前記検討のとおり,原告は,本件立入調査1並びにその後の継続調査及び資料提供の要請に対して非協力的な態度を取り続けていたのであり(前記2⑵ア),一連の事実経緯(前記2⑴)に鑑みれば,横浜税関が,原告との間において,国内販売価格による方法による課税価格の計算の基礎について合意することを目的として,互いに協議し得る状況になかったことは明らかである。さらに,横浜税関が,本件立入調査1において原告から提示を受けた資料に基づき,本件輸入貨物1・2の課税価格を算定しており,原告が認識しない事実ないし資料に基づいて課税価格を計算しているわけではないことを併せ考えれば,本件更正処分1・2が関税評価協定(序説の2項)に反するということはできない。
よって,原告の上記主張を採用することはできない。

原告は,本件更正処分1・2が,関税評価協定7条3項及び16条に違反する旨主張している。しかしながら,原告は,関税評価協定7条3項又は関税評価協定16条の規定に基づく要請を行ったことについて,具体的な証拠を提出しておらず,本件全証拠を精査しても,原告がそのような要請を行ったことをうかがわせる事実ないし証拠はない。関税評価協定7条3項及び16条は,輸入者が関税当局に対して要請をした場合において,関税当局が輸入貨物の課税価額及びその決定方法を書面で通知すべき旨を定めたものであり,原告がそのような要請を行ったということができない以上,原告の上記主張に理由がないことは明らかである。また,証拠(乙44の1ないし6,乙45の1ないし9)によれば,本件各出張所長は,本件更正処分1・2に係る関税更正通知書の別紙において,本件輸入貨物1・2の課税価格の決定方法を明記するとともに,その別添2において,課税価格の計算方法の例を具体的に記載していることが認められるから,実質的にみても,本件更正処分1・2が関税評価協定7条3項又は16条に違反しているということはできない。


本件更正処分1・2は,本件各出張所長により行われたものであり,本件各出張所長は,関税定率法施行令1条の11第2号に基づく課税価格の計算について,税関長の委任を受けているところ(関税法施行令92条1項2号ハ),前記検討(前記⑴・⑵)によれば,本件各出張所長が本件更正処分1・2における本件輸入貨物1・2の課税価格を計算した方法は,1994年のガット7条及び関税評価協定の規定に適合したものであるということができ,本件全証拠を精査しても,同判断を覆すに足りる事実ないし証拠はない。
4
争点4(本件各更正処分及び本件各修正申告における本件各輸入貨物の課税価格の計算方法が適正なものであるか否か。)について
⑴ア

前記検討(前記1⑸)のとおり,本件各輸入貨物の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定する方法によって算定されるべきものであるところ,同号が,輸入貨物の課税価格を同法4条及び4条の2の規定によって計算できない場合において,国内における販売に係る通常の手数①
料又は利潤及び一般経費(同法4条の3第1項1号イ),②輸入港到着後国内において販売するまでの運送に要する通常の運賃,
保険料等
(同号ロ)

③本邦において輸入貨物に課された関税その他の課徴金(同号ハ)
を控除
して得られる価格を当該輸入貨物の課税価格とする旨を定めていることに鑑みれば,同号の趣旨は,輸入貨物の課税価格を同法4条又は4条の2の規定によって計算できない場合において,当該輸入貨物の国内販売価格から,本邦に到着した後に国内において付加された価値を控除することによって,当該輸入貨物が国内に到着した時点における価格を課税価格として逆算的に算出するというものであると解される。


なお,本件輸入貨物1・2の課税価格は,前記検討のとおり,関税定率法4条の3第1項の規定する方法により計算すべきであるが
(前記1⑸)

同項の規定する方法により計算することができないため(前記2⑶),同法4条の4に基づいて算定することとなる(前記3⑴ア)。前記前提事実のとおり,本件各出張所長は,関税定率法4条の4の規定に基づき,①本件輸入貨物1の課税価格については同法4条の3第1項1号に規定する方法に準じて計算し(前提事実⑸ア),②本件輸入貨物2の課税価格については,上記①のとおり計算した本件輸入貨物1の課税価格を同種類似貨物の取引価格とみなして,同法4条の2第1項に規定する方法に準じて課税価格を計算しており(前提事実⑸イ),本件輸入貨物1の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定する方法に準じて計算されたものであるから,上記アにおいて述べたところは,本件輸入貨物1・2の課税価格について,関税定率法4条の4の規定に基づき,同法4条の3第1項1号(本件輸入貨物1)又は同法4条の2第1項(本件輸入貨物2)に準じて計算する際に用いられた本件各みなし国内経費等率についても妥当するものである。


原告は,本件各更正処分及び本件各修正申告における本件各輸入貨物の課税価格の計算の基礎とされた本件各国内経費等率の算定が誤っている旨主張しているところ,その主張内容に鑑みて,①本件各国内経費等率の算定においてP1社の利潤及び本件ライセンス料を控除することの要否,本件各み②
なし国内経費等率の計算の適否,平成20・21国内経費等率の計算の適③
否につき,前記アの内容を踏まえて,順次検討する。

本件各国内経費等率の算定においてP1社の利潤及び本件ライセンス料を控除することの要否について
(ア)

本件各輸入貨物は,原告から本邦の顧客(ディストリビューター)
に対して販売されており(前提事実⑵エ(イ)),本件各輸入貨物の課税価格を国内販売価格による方法(関税定率法4条の3第1項1号)に基づいて算定する際の基礎となる国内販売とは,原告と本邦の顧客との間の売買であることは明らかである。そうである以上,国内販売価格による方法に基づいて課税価格を算定する際の基礎となる国内販売価格とは,原告が顧客に対して本件各輸入貨物を販売した価格であり,また,同号の適用に当たり,当該価格から控除されるべき金額(同号イないしハ)とは,原告と顧客との間の売買(国内販売)に係る経費及び利潤であるというべきである。
(イ)a

この点,原告は,本件各輸入貨物の所有者はP1社であり,国内

販売は原告がP1社の問屋として行うものであるから,本件各輸入貨物の国内販売価格から,P1社の利潤を控除すべきである旨主張している。

しかしながら,顧客(ディストリビューター)に対するP4製品の販売は,飽くまでも原告を当事者(売主)とする売買であって,P1社は,上記売買における当事者ではない。本件問屋契約2.1条は,原告が,P1社の問屋として,P1社の計算において,P4製品(本件対象貨物)を販売することを規定しているところ,原告は,P1社の法的代理人として行動する権限は有しないとされ
(本件問屋契約2.
2条),前記検討のとおり(前記1⑷ア(ウ)b⒝),P1社と顧客との間に直接の契約関係は生じず(本件問屋契約2.3条),原告及び顧客が販売取引の契約当事者であり,本件問屋契約の内容は,原告と顧客との間の法律関係に影響しないとされている(本件問屋契約2.4条)。これらの内容に鑑みれば,原告がP1社の問屋として国内販売を行い,その利益が本人であるP1社に帰属するからといって,本件各輸入貨物の国内販売を,P1社による国内販売と同視することはできない。
前記検討のとおり(前記(ア)),関税定率法4条の3第1項1号によって本件各輸入貨物の課税価格を算定する際の基礎となる国内販売価格が,原告が顧客に対して本件各輸入貨物を販売した価格である以上,当該価格から控除されるべき利潤(同号イ)も,国内販売の売主である原告に帰属する利潤であるというべきである。
そして,
原告が,
本件問屋契約に基づき,P1社の問屋として,本件各輸入貨物を顧客に販売していることに鑑みれば,本件各輸入貨物から控除されるべき利潤(国内販売の売主である原告に帰属する利潤)は,P1社から原告に支払われる問屋手数料であるというべきである。

また,原告が国内販売価格から控除すべきであると主張するP1社の利潤は,P1社が,本件問屋契約に基づいて,原告を問屋として指名し,本邦の顧客に対する販売業務を原告に委託したことにより発生するものであって,本邦における原告の国内販売によって直接P1社に生じるものであるということはできない。なお,P1社の利潤は,問屋である原告が本件対象貨物を顧客に販売することを通じて本人として取得するものであるから,上記利潤は,本件対象貨物が本邦に到着した後において具体化(現実化)するものであるということはできるものの,米国にいるP1社が,本邦において,本件対象貨物の販売に特段関与するわけでもない以上,P1社が取得する利潤は,本件対象貨物が本邦に持ち込まれた後,原告による国内販売がされるまでの間に,日本国内で付加される価値には当たらないというべきである。

原告は,輸入貨物の国内販売価格から控除されるべき経費及び利潤は,当該輸入貨物の所有者が上乗せした利潤及び経費と解すべきであると指摘している。しかしながら,関税定率法4条の3第1項1号イは,国内販売価格から控除すべき利潤及び経費について,国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費と規定しており,
また,同条が準拠している関税評価協定5条は,国内販売価格から控除すべき利潤及び経費について,輸入貨物の輸入国における同類貨物の販売に関し,通常支払われ若しくはその支払が合意される手数料又は通常付加される利潤及び一般経費と規定しているのであって
(同
条1項⒜(ⅰ)),国内販売の当事者ではない当該輸入貨物の所有者に生じた経費及び利潤を控除する理由はないというべきである。また,本件各輸入貨物の国内販売価格は,米国にいるP1社から本邦に持ち込まれた本件各輸入貨物を日本国内の取引市場で販売することによる取引価格であるのに対し,P1社の利潤及び経費は,米国におけるP1社の企業活動(例えば,本件ベンダーから本件対象貨物を購入して,本件問屋契約に基づき,原告に対し,本邦における販売業務を委託することなど)
によって発生したものであるということができるところ,
日本国内における国内販売価格から輸出国内において生じた経費及び利潤を控除することは,関税評価協定及びこれに準拠する関税定率法の予定するものではないというべきである。

以上によれば,原告の前記主張(前記a)を採用することはできない。

(ウ)a

原告は,本件各輸入貨物の国内販売は,P3社の有するディスト

リビューター・ネットワークを用いて行われているから,P1社がP3社に対して支払った本件ライセンス料を,国内販売に係る費用として国内販売価格から控除すべきである旨主張している。

しかしながら,本件ライセンス料は,P1社が,米国内において,P3社に対して支払うものであり,本件各輸入貨物の国内販売の当事者(売主)である原告が本件各輸入貨物の販売について負担している経費でないことは明らかである。原告は,日本国内のディストリビューター・ネットワークを用いて本件各輸入貨物(P4製品)を販売しているものの,当該ネットワークの使用等について原告が費用を負担しているわけではないから,本件ライセンス料を原告の経費として控除すべき理由はない。また,原告は,ディストリビューター・ネットワークの使用等に対する対価を負担することなく,当該ネットワークを利用して,本件対象貨物を販売することができるのであり,原告が本件問屋契約に基づき輸入した本件各輸入貨物には,(原告が負担することのない)本件ライセンス料に相当する価値が含まれているということもできる。

(エ)

よって,原告の前記主張(前記a)を採用することはできない。
以上のとおり,本件各国内経費等率の算定においてP1社の利潤及
び本件ライセンス料を控除することは要しないというべきである。イ
本件各みなし国内経費等率の計算の適否について
原告は,本件輸入貨物1(本件輸入貨物2)の課税価格の算定に用いられた本件各みなし国内経費等率の計算が誤っている旨主張しているが(前記第3の4⑵ウ(ア)ないし(カ)),以下に述べるとおり,原告の主張を採用することはできない。
(ア)

原告は,本件各みなし国内経費等率の計算において,P1社の利潤
及び本件ライセンス料をみなし国内販売価格から控除すべきであると主張しているが,前記検討のとおり(前記ア(イ)・(ウ)),原告の主張には理由がない。
(イ)

原告は,みなし国内経費等率の被告計算表のディストリビューターへのボーナスの支払欄には,原告が仮払いをした金額のみが計上され,ディストリビューターに支払うボーナスの実額が計上されていない旨主張している。しかしながら,本件問屋契約によれば,P1社は,顧客(ディストリビューター)に対する本件ボーナスの支払に関する義務を原告に移転及び委譲し,原告による本件ボーナスの支払は,P1社が営業費用として補償するものとされており(本件問屋契約3.7条),原告がディストリビューターに支払う本件ボーナスに係る金額と,その支払いに関して,原告がP1社から受領する金額とは同一であるということができる。そして,証拠(乙30の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告の指摘する同欄記載の各金額は,本件立入調査1において,原告が横浜税関調査担当官に対して閲覧に供した借方票(DebitNote)にディストリビューターに対する本件ボーナスの支払に係る金額として記載されていた金額を横浜税関調査担当官が筆写して集計したものであると認められ,同認定を覆すに足りる事実ないし証拠もない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(ウ)

原告は,みなし国内経費等率の被告計算表の国内調達製品の購入に係る費用欄に国内調達製品の調達額が計上されているなどとして,本件各みなし国内経費等率の計算の分母において,当該製品売上高欄記載の金額に含まれる国内調達製品の売上高を使用すべきである旨主張している。しかしながら,本件各みなし国内経費等率は,前記検討のとおり,国内調達製品と輸入製品である本件輸入貨物1・2と国内調達製品とを区別することができなかったことから,平成19年1月ないし12月における原告からP1社への送金及びその明細に関する書類から国内販売に係る経費等の額を計算し,これを国内経費の額とみなすことによって,本件各みなし国内経費等率を算定したものであり(前記3⑵ア・イ),原告の上記主張に理由がないことは明らかである。
(エ)

原告は,
みなし国内経費等率の被告計算表の
P1社の経費商の品除却損欄に記載されている金額が,みなし国内販売価格から控除する対象として考慮されていない旨主張している。しかしながら,横浜税関が本件立入調査1において入手した本件筆写等資料を精査しても,原告の指摘する商品除却損が,国内における販売に係る通常の一般経費に該当すると認めることはできないから,原告の主張に理由がないことは明らかである。なお,原告は,平成20・21国内経費等率において,商品除却損が一般経費として考慮されていることを指摘するが,それは,平成20・21国内経費等率の算定において,具体的な資料に基づき,当該商品除却損が一般経費に該当すると判断されたからであって(甲28ないし38),本件各みなし国内経費等率について,同様に取り扱うべき理由はない。
(オ)

原告は,本件各みなし国内経費等率の算定に当たり,本件輸入貨物
1に係る各製品の最大販売数量単価が使用されていない誤りがある旨主張する。しかしながら,本件各みなし国内経費等率は,本件各筆写等資料の全てによっても,本件輸入貨物1・2に係る各製品の最大販売数量単価を算出することはできず,原告が,本件立入調査1の後も資料の提出や継続調査の受入れに協力しなかったことから,本件輸入貨物1に係る輸入(納税)申告がされた月における平均販売単価を用いて国内販売価格とみなしたものであり,その方法は合理的なものであるというべきである(前記3⑵ア)。したがって,原告の上記主張には理由がない。(カ)

原告は,本件各みなし国内経費等率の計算に当たり,その他の課徴
金(過少申告加算税及び延滞税を含む。)が控除されていない旨主張しており,同主張は,本件更正処分1・2に係る過少申告加算税及び本件更正処分1・2に係る延滞税が,みなし国内販売価格から控除されるべきであるという趣旨であると解される。
しかしながら,
本件更正処分1・
2に係る過少申告加算税及び本件更正処分1・2に係る延滞税は,輸入又は国内販売を理由として課されるものではなく,関税定率法4条の3第1項1号ハに掲げる関税その他の課徴金に該当しないから,上記主張に理由がないことは明らかである。

平成20・21国内経費等率の計算の適否等について
原告は,本件輸入貨物3・4の課税価格の算定に用いられた平成20・21国内経費等率の計算が誤っている旨主張しているが(前記第3の4⑵エ(ア)aないしc),以下に述べるとおり,原告の主張を採用することはできない。
(ア)

原告は,平成20・21国内経費等率の計算において,P1社の利
潤及び本件ライセンス料を国内販売価格から控除すべきであると主張しているが,前記検討のとおり(前記ア(イ)・(ウ)),原告の主張には理由がない。
(イ)a

原告は,平成20・21国内経費等率の計算において,P1社が

P5に係る販売手数料(①本件ボーナス,②本件管理費用)が一般経費として適正に控除されていない旨主張している。

そこで検討するに,原告が国内販売価格から控除すべきであると主張する販売手数料のうち,本件ボーナスは,本件問屋契約において,原告が,
P1社に代わって,
顧客
(ディストリビューター)
に支払い,
その後,P1社が原告に対して営業費用として補償するものとされているところ(本件問屋契約3.7条),証拠(乙86の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,本邦の顧客に対して支払われた本件ボーナスは,平成20・21国内経費等率の算定に当たり,営業費用とし
て適正に控除されていると認められ(別紙10の1・2参照),本件全証拠を精査しても同認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。


また,原告が国内販売価格から控除すべきであると主張する販売手数料のうち,本件管理費用は,本件ライセンス契約によれば,P1社が,P3社に対し,P5の管理事務に対する対価として支払うものであり
(前提事実⑵ウ(イ)d)本件各輸入貨物の国内販売の当事者,
(売
主)である原告が本件各輸入貨物の販売について負担している経費でないことは明らかである。そして,原告は,P1社に代わり,本件ボーナスの支払事務を行っているものの,P5の管理等について原告が費用を負担しているわけではなく,本件管理費用は,本件各輸入貨物の課税価格の決定に当たり,その国内販売価格から控除すべき経費には当たらない。

以上によれば,原告の前記主張(前記a)には理由がない。

(ウ)a

原告は,本件輸入貨物3・4の国内販売価格は,本件配送料を含

まない純粋な製品売上金額であり,平成20・21国内経費等率を算定するための分母となるべき売上高も本件配送料を含まない製品売上高でなければならない旨主張している。

しかしながら,平成20・21国内経費等率は,本件各輸入貨物の国内販売価格に含まれる経費及び利潤の割合として算出されたものであるところ,原告は,本件各輸入貨物の販売において,顧客に対する配送料を原告が経費として負担するのではなく,顧客に一定額(本件配送料)を負担させることとし,当該配送料をその他売上高とし
て売上高に含めているのであって,本件各輸入貨物の国内販売価格に含まれる経費及び利潤の割合
(国内経費等率)
を算出する際の分子
(経
費及び利潤の合計)に,上記その他売上高を含める以上,その分
母(国内販売価格として観念する金額)に,上記その他売上高を
含めるべきことは当然である。この点,原告の主張するとおり,分子にその他売上高を含め,かつ,分母からその他売上高の金額
を除外して計算することとした場合,
配送料を顧客の負担としており,
原告は当該配送料を負担しないにもかかわらず,当該経費を原告の経費として計上することとなり,計算方法として合理性を有しないことは明らかである。
なお,本件輸入貨物3・4の課税価格は,本件輸入貨物3・4の国内販売価格から,同価格に平成20・21国内経費等率を乗じた金額を控除すること等によって算定されたものであり
(前提事実⑻エ(イ),
カ(イ),⑾ア(イ)a),上記国内販売価格には,原告が指摘するとおり,本件配送料は含まれていないが,そうであるからといって,国内経費等率の計算において,原告の主張するような計算方法をとることはできない。また,本件各輸入貨物の課税価格を計算する際に,その基礎となる金額(国内販売価格)にその他売上高が含まれないこ
とによって,本件各輸入貨物の課税価格が過大に計算されているということができないことも明らかである。



よって,原告の前記主張(前記a)には理由がない。

本件各輸入貨物の課税価格は,本件各輸入貨物の国内販売価格等から,同価格に本件各国内経費等率を乗じた金額を控除することによって計算されたものであるところ,上記検討によれば,本件各国内経費等率の計算が誤っている旨の原告の主張には理由がなく,その算定方法(別紙9の1・2,別紙10の1・2)を精査しても,特段不合理な点は見当たらない。また,本件輸入貨物1・2に係るみなし国内販売価格は,前記検討のとおり,合理的な方法で算定されたものであり(前記3⑵ア),また,本件輸入貨物3・4に係る国内販売価格は,原告が提出した資料に基づき,国内販売される製品ごとに,輸入(納税)申告された日の属する月において販売数量が最大である単価に基づいて計算されたものであり(前提事実⑻エ(イ),カ(イ),⑾ア(イ)b),関税定率法施行令1条の10に適合したものということができる。そうである以上,本件各輸入貨物の国内販売価格等から,同価格に本件各国内経費等率を乗じた金額を控除するという計算方法は,関税定率法4条の3第1項1号に基づき又は同号の規定する方法に準じて本件各輸入貨物の課税価格を計算する方法として適正なものであるということができる。したがって,本件各更正処分及び本件各修正申告における本件各輸入貨物の課税価格は,関税定率法4条の3第1項1号の規定に基づき又は同号の規定する方法に準じて,適正な方法で算出されたものであると認められ,本件全証拠を精査しても,同認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。
5
本件甲事件各処分及び本件乙事件各処分の適法性について


本件各更正処分
前記検討したところを踏まえて,関税定率法,消費税法,地方税法等の関係法令により,本件輸入貨物1・2及び本件輸入貨物3について,原告が納付すべき関税額,消費税額及び地方消費税額を算出した内容は,別紙11の1の別表1ないし4及び別紙11の2の別表1の納付すべき関税額欄,納付すべき消費税額欄及び納付すべき貨物割額欄各記載のとおりであると認められ,これらの金額は,いずれも本件各更正処分における納付すべき関税額,消費税額及び地方消費税額と同額であるから,本件各更正処分はいずれも適法であると認められる。



本件各賦課決定処分
前記⑴のとおり,本件各更正処分は適法であり,原告は本件輸入貨物1・2及び本件輸入貨物3に係る関税等について納付すべき税額を過少に申告していたものであり,本件全証拠を精査しても,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,原告に関税法12条の2第3項及び国税通則法65条4項に規定する正当な理由があることを認めることはできない。そして,本件各更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,関税法12条の2第1項,2項及び5項の規定,国税通則法65条1項及び2項の規定並びに地方税法72条の106第1項の規定に基づき,関税等について,本件各更正処分により納付すべきこととなった税額にそれぞれ上記規定に定める税率を乗じて算出される金額は,本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であると認められるから,本件各賦課決定処分はいずれも適法である。



本件通知処分
前記検討したところによれば,原告が本件通知処分の違法性として主張するところにはいずれも理由がないと認められるから,本件更正請求はいずれも理由がなく,本件通知処分はいずれも適法であると認められる。第5

結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

増田
裁判官

村田一広
裁判官

高橋心平稔
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