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固定資産評価審査決定取消請求事件
事件番号平成26(行ウ)350
事件名固定資産評価審査決定取消請求事件
裁判年月日平成27年12月15日
法廷名東京地方裁判所
判示事項1 固定資産課税台帳に登録された一棟の建物の価格の算出が同建物の屋上に設置されたプレハブ小屋が同建物の増築部分に該当するとの認定の下にされた場合において,同該当性の有無は地方税法432条1項の審査申出事項に当たるか。
2 上記場合において,上記プレハブ小屋が上記建物の増築部分に該当するとされた事例。
裁判要旨1 固定資産課税台帳に登録された一棟の建物の価格の算出が同建物の屋上に設置されたプレハブ小屋が同建物の増築部分に該当するとの認定の下にされた場合において,同該当性の有無は地方税法432条1項の審査申出事項に当たる。
2 上記場合において,上記プレハブ小屋が上記建物の本体部分と強固に止められ,上記建物の設備とつながる形で電気設備や給排水設備が設けられ,人の居住の用に供されているなど判示の事情の下では,上記プレハブ小屋は上記建物の増築部分に該当する。
裁判日:西暦2015-12-15
情報公開日2017-10-19 09:20:37
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平成27年12月15日判決言渡
平成26年(行ウ)第350号

固定資産評価審査決定取消請求事件

主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求の趣旨
東京都固定資産評価審査委員会が原告に対して平成26年1月29日付けでした別紙物件目録記載の建物について固定資産課税台帳に登録された平成24年度の価格に係る審査の申出に対する決定を取り消す。

第2

事案の概要
本件は,別紙物件目録記載の一棟の建物(以下本件建物という。)の区分所有者である原告が,固定資産課税台帳に登録された本件建物の平成24年度の価格に不服があるとして地方税法(以下法という。)432条1項の規定に基づいてした審査の申出(以下本件審査申出という。)について,裁決行政庁である東京都固定資産評価審査委員会が平成26年1月29日付けで審査の申出を棄却する旨の裁決(以下本件決定という。)をしたため,裁決行政庁の所属する東京都を被告として,本件決定の取消しを求める事案である。
なお,訴状記載の原告の請求は,訴状添付の物件目録によると,固定資産課税台帳に登録された本件建物の平成24年度の価格のうち,原告の区分所有に係る部分についての取消しを求めるもののように読めなくもないが,法432条1項に定める固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格とは,区分所有に係る家屋にあっては,一棟の建物の価格をいうものであり,本件決定も本件建物についてされているから,その取消しを求める原告の請求は上記第1の趣旨のものと解される。

1
関係法令等の定め
(1)

法349条(土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準)1項
は,基準年度に係る賦課期日に所在する家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されたもの(以下登録価格という。)とする旨を定め,同項にいう価格について,法341条5号は,適正な時価をいう旨を定めている。なお法352条1項は,区分所有建物の固定資産税額について,一棟の家屋の価格から算出された固定資産税額を,区分所有者全員の共有に属する共有部分の持分割合によりあん分した額としている。
(2)

法403条1項は,市町村長(法734条1項により,東京都特別区に
おいては,東京都知事をいう。以下同じ。)は,法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない旨を定め,同項に基づき固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下評価基準という。)が告示されている(乙6)。東京都の特別区においては,評価基準だけでなく,これに基づいて定められた東京都固定資産(家屋)評価事務取扱要領(以下取扱要領といい,固定資産評価基準と併せて固定資産評価基準等という。)により家屋の評価を行っている(乙1)。
(3)

固定資産評価基準等によれば,家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以
外の家屋(以下非木造家屋という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点一点当たりの価額(本件では,非木造家屋の評点一点当たりの価額は1.10円である。)を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとされているが,その概要は以下のとおりである(乙1,6)。
なお,一棟の家屋に増築された部分があるときは,当該家屋を増築された
部分とその他の部分とに区分して評点数を付設することとされている。ア
各個の家屋の評点数は,再建築費評点数を基礎とし,これに当該家屋の経過年数等に応じた損耗の状況による減価を考慮した補正(以下経年減点補正という。)を行い,さらに,必要に応じて,建築様式が著しく旧式になった場合等の需給事情による減価を行うことによって算定される。

在来分の家屋(平成24年度において新たに課税の対象となる家屋以外の家屋)に係る単位当たり再建築費評点数は,基準年度の前年度(本件では平成23年度)における単位当たり再建築費評点に再建築費評点補正率(平成24年度に係る非木造家屋の再建築費評点補正率は0.96とされている。)を乗じて算定される。


非木造家屋の経年減点補正については,家屋の構造及び用途の別に応じて定められた非木造家屋経年減点補正率基準表から,評価対
象家屋に該当する補正率(以下経年減点補正率という。)を適用
することとされている。家屋の用途は,取扱要領において,現況の用途により判断するものとされ,事務所用建物とは室内において事務又は業務を取り扱うことを目的として建築された建物で,通常洋風構造の家屋,店舗用建物とは,専ら物品の販売又は客に飲食,休息,遊技などをさせることを目的として建築された家屋と定義されている。また,取扱要領では,家屋の用途が複数にわたる複合用途家屋については,主たる用途により,原則として一棟単位で経年減点補正率を適用するものとされ,複合構造家屋については,一棟単位又は構造別に経年減点補正率を適用するものとされている。

(4)

法432条(固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出)
1項は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格(登録価格)について不服がある場合においては,所定の期間内に,文書をもつて,固定資産評
価審査委員会に審査の申出をすることができる旨を定めている。
2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

原告は,不動産賃貸業等を目的とする特例有限会社である。

(2)

本件建物は,鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付11階建の構造
として登記された一棟の建物であり,その北東側にAビル,南西側にBビルとの名称が付され,それぞれが区分所有建物となっている。原告は,本件建物のうち,上記Bビルとの名称が付された部分の区分所有者である(以下,本件建物のうち原告の区分所有に係る部分をBビルといい,その余の部分をAビルという。)。本件建物のうちAビルは11階建であるが,Bビルは9階建であり,Bビルの屋上には,いわゆるプレハブで作られた小屋(以下本件プレハブ小屋という。)が設置されている。(甲2,6,乙5)
(3)

東京都知事は,平成24年3月30日付けで本件建物について,法34
1条6号の基準年度に当たる平成24年度の価格を決定し,東京都渋谷都税事務所長は同日付けで,これを家屋課税台帳に登録した。これによる登録価格は,1億0115万2800円であった(甲1,以下本件登録価格という。)。
(4)

東京都知事による本件建物の登録価格の算出の方法は,以下のとおりで
ある(甲3の1,3の2)。

本件建物は,本件プレハブ小屋を除くビル本体部分(以下本件ビル本体部分という。)が昭和57年に建築された後,屋上の本件プレハブ小屋部分が昭和61年に増築されたことから,本件ビル本体部分と屋上の本件プレハブ小屋部分ごとに評価額を求め,これらを合算することにより,本件建物全体の評価額を求めることとなる。


本件ビル本体部分については,争われることなく確定している平成23
年度の単位当たり再建築費評点が11万5400点であったことから,これに平成24年度の再建築費評点補正率の0.96を乗じて,平成24年度の単位当たり再建築費評点を11万0700点と算出した(100点未満切り捨て)。
そして,本件建物の大半が事務所として使用されていることから,固定資産評価基準の非木造家屋経年減点補正率基準表から事務所,銀行用建物及び2~7以外の建物の構造別区分鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の経過年数30年に対応する経年減点補正率0.6308を乗じ(1点未満切捨て),さらに本件ビル本体部分の各区分所有者の床面積を乗じて,各区分の総評点を算出し,これに評点1点当たりの価額1.10円をそれぞれ乗じて合算することにより,本件ビル本体部分の評価額1億0090万9100円を算出した。

次に,本件プレハブ小屋については,争われることなく確定している平成23年度の単位当たり再建築費評点が37,600点であったことから,これに平成24年度の再建築費評点補正率の0.96を乗じて,平成24年度の単位当たり再建築費評点を36,000点(100点未満切り捨て)と算出し,本件建物の大半が事務所として使用されていることから,評価基準の非木造家屋経年減点補正率基準表から事務所,銀行用建物及び2~7以外の建物の構造別区分鉄骨造(骨格材の肉厚が3㎜以下のもの)の経過年数24年以上に対応する経年減点補正率0.2000を乗じ(1点未満切捨て),さらに屋上の本件プレハブ小屋部分の床面積(30.78㎡)を乗じて,総評点を算出し,これに評点1点当たりの価額1.10円を乗ずることにより,本件プレハブ小屋部分の価額24万3700円を算出した。


上記のとおり算出された本件ビル本体部分の評価額1億0090万9100円と屋上の本件プレハブ小屋の評価額24万3700円を合算するこ
とにより,本件建物の価格1億0115万2800円を算出した。(5)

原告は,平成24年8月1日,本件登録価格について,要旨,以下の点
に不服があるとして,法432条1項の規定に基づき,東京都固定資産評価審査委員会に対し,本件審査申出をした(甲1,乙15)。

本件登録価格の算定において本件プレハブ小屋に係る床面積が本件建物の床面積として算入されているが,本件プレハブ小屋は,固定資産税の課税客体としての家屋に当たらない。


本件プレハブ小屋が本件建物の一部をなしているとしても,本件プレハブ小屋の評価が不当に高額である。


本件登録価格は,本件建物の用途を事務所として算定しているが,店舗とすべきである。

(6)

東京都固定資産評価審査委員会は,平成26年1月29日,本件審査申
出に対し,①本件プレハブ小屋について,規模,構造,耐久性,使用目的,利用状況等を総合的に考慮すると,評価庁(東京都知事)が家屋として認定し,増築と評価したことは妥当である,②本件プレハブ小屋は適正に評価されている,③本件建物の用途を事務所と認定したことは妥当なものであるとし,本件審査申出を棄却する本件決定をした(甲1)。
原告は,平成26年2月8日,本件決定を受領した。
(7)
3
原告は,平成26年7月29日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
争点
本件の争点は,本件決定の適否であり,具体的には,以下の点である。(1)

本件プレハブ小屋を本件建物の増築部分として評価額を算定したことの
当否
(2)

本件プレハブ小屋についての評価の当否

(3)

本件建物の用途を店舗ではなく事務所として評価額を算定した

ことの当否

4
争点に対する当事者の主張の要旨
(1)

争点(1)(本件プレハブ小屋を本件建物の増築部分として評価額を算定し
たことの当否)について
(原告の主張の要旨)

Bビルの現況の床面積は1003.43㎡であるにもかかわらず,本件登録価格の算定においては,床面積を1034.21㎡としているが,これは,本件プレハブ小屋を含めて床面積を算定したものである。本件プレハブ小屋は,土台の上に乗せ,ワイヤで引っ張って固定するという簡単な構造になっており,永続的に土地に定着して使用されているものではなく固定資産税の課税客体としての家屋たり得ない。
本件登録価格の算定は,課税客体とはならない本件プレハブ小屋を課税客体に含めたものであり,違法である。
本件プレハブ小屋に係る評価額24万3700円は,本件登録価格から全額控除されるべきである。


被告は,本件プレハブ小屋が家屋に該当するかは,固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をすることができる事項(以下審査申出事項という。)に含まれないと主張する。
原告は本件登録価格が高すぎると主張して本件審査申出を行い,その理由の一つとして本件建物の床面積が間違っていると指摘したところ,被告から本件プレハブ小屋の床面積が加算されていると主張されたことから,初めて,本件プレハブ小屋が本件建物の一部を構成する家屋に該当するかどうかが問題点の一つであると明確化されたものである。本件プレハブ小屋が家屋に含まれるか否かは,数年を要した東京都固定資産評価審査委員会での審査の過程や本件訴訟の審理の過程でも,争点の一つとして原告及び被告の双方が主張,反論してきたものであり,訴訟の審理が進んだ段階になって本件プレハブ小屋が課税客体に当たるかについて別訴を提起せよ
というのは不合理である。
また,本件プレハブ小屋が家屋に該当するかは,本件建物の評価をするに当たっていかなる床面積を乗じるかというという問題にかかわり,本件建物の評価と切り離すことのできないほど不可分な関係にある。
(被告の主張の要旨)

本件建物は,在来分家屋であることから,平成24年度価格に係る単位当たり再建築費評点数は,評価基準第2章第3節四の在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法及び取扱要領に基づき,基準年度の前年度(平成23年度)における単位当たり再建築費評点数に再建築費評点補正率(0.96)を乗ずることにより算出しているので,適正妥当な評価ということができる。


原告は,本件プレハブ小屋は家屋に該当しないことから,これを家屋に該当するものとして,本件登録価格を決定したことが違法であると主張するが,本件プレハブ小屋が家屋に該当するかどうかは,課税客体の問題であるから,そもそも固定資産評価審査委員会に対する審査申出事項には含まれないというべきであり,これに関する原告の主張は却下されるべきである。


なお,本件プレハブ小屋は,家屋調査票によれば,内部仕上げ,床仕上げ,電気設備,給排水設備の確認が昭和62年に行われている。東京都固定資産評価審査委員会は,それら設備の状況,本件プレハブ小屋の規模,構造,設置の態様,設置の継続性等を総合的に考慮すると,これを家屋と認定し,増築と評価したことは妥当であると判断したものである。
(2)

争点(2)(本件プレハブ小屋についての評価の当否)について

(原告の主張の要旨)
仮に,本件プレハブ小屋が本件建物の一部であるとしても,本件プレハブ小屋の評価額を,鉄骨鉄筋コンクリートの構造物と同じ基準で算定されてい
るため,評価額が不当に高額となっており,違法である。
また,本件プレハブ小屋は,本件建物の売却の際に撤去を求められるものであり,本件建物の交換価値を減少させることはあっても増加させるものではない。
(被告の主張の要旨)
本件プレハブ小屋は,昭和61年に増築されたときに,軽量鉄骨造の標準家屋に比準して評価されている。家屋評価計算書においても,本件建物の当初の構造が鉄骨鉄筋コンクリート造とされているのに対し,増築部分である本件プレハブ小屋の構造は鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下のもの)とされていて,平成24年度の評価額は両者を合算することにより算定されているから,増築部分を鉄骨鉄筋コンクリートの構造物と同じ基準で算定しているとする原告の主張は前提において失当である。
また,固定資産評価基準等によれば,家屋の評価については,再建築価格を基準として評価する方法(再建築価格方式)が採用されているのであり,本件プレハブ小屋が本件建物の交換価値を減少させるとの原告の主張は失当である。
(3)

争点(3)(本件建物の用途を店舗ではなく事務所として評価額を
算定したことの当否)について
(原告の主張の要旨)
本件建物の登録価格は,本件建物の現況の用途を事務所として築30年の経年減点補正率(0.6308)を適用して算定している。しかし,本件建物は,新築当時及び現在において主として店舗として使用されていることから店舗としての築30年の経年減点補正率(0.52)を適用すべきである。店舗としての経年減点補正率を適用すれば,本件建物のうちBビルについて評価額は6353万7500円となることから,本件建物全体の登録価格は,少なくとも1378万1500円減額されるべきである。

(被告の主張の要旨)
取扱要領によれば,経年減点補正率を適用する際の用途については,現況の用途により判断することとされており,事務所用建物とは

室内において事務又は業務を取扱うことを目的として建築された建物で,通常洋風構造の家屋をいう。

とされ,店舗用建物とは

専ら物品の販売又は客に飲食,休息,遊戯などをさせることを目的として建築された家屋をいう。

とされているところ,かかる規定に照らしてみると,本件建物の用途について,店舗に該当する部分は一部しかなく,大半は事務所に該当するものであることは外観上明らかであることから,原告の主張は失当である。
第3
1
当裁判所の判断
争点(1)(本件プレハブ小屋を本件建物の増築部分として評価額を算定したことの当否)について
(1)

原告は,本件プレハブ小屋が固定資産税の課税客体である家屋に該当し
ないにもかかわらず,これを本件建物に含めて本件登録価格を決定したことが違法であると主張し,これに対し,被告は,本件プレハブ小屋が家屋に該当するかどうかは,課税客体の問題であるから,そもそも法432条1項の規定による固定資産評価審査委員会に対する審査申出事項には含まれないと主張している。
(2)

しかしながら,本件では,本件プレハブ小屋を独立の家屋として課税対
象としているものではなく,本件プレハブ小屋を本件建物の増築部分と認定して,それを本件建物の登録価格の評価に当たって考慮したというものであって,かかる認定の適否が問題とされるべきものである。
この点,固定資産課税台帳の一つである家屋課税台帳には,当該家屋の価格のほか,不動産登記簿に記載されている当該家屋の床面積等の登記事項が登録されるところ(法381条3項,不動産登記法44条1項),建物の増築がされたときには,所有者は表題部の変更登記を申請する義務を負う(不
動産登記法51条1項)ものではあるが,かかる申請がされるとは限らないことから,固定資産評価員による固定資産の実地調査(法408条)を踏まえた上で現況に即した評価とそれに基づく価格の算定がされることが評価制度上予定されているというべきであり,その意味において増築についての認定は家屋の価格評価手続の一環ということができる。固定資産評価基準が,床面積の算定について定める(第2章第3節二2。乙6)とともに,増築された家屋の評価について,一棟の家屋に増築された部分があるときは,当該家屋を増築された部分とその他の部分とに区分して評点数を付設するものとする。ただし,実情に応じ増築された部分とその他の部分とに区分することが困難であると認められる場合においては,これを区分しないで評点数を付設しても差し支えないものとする。と定めている(第2章第1節四。乙6)のも,かかる実情調査の結果を踏まえた家屋の価格評価手法の一端を定めた趣旨のものといえる。そうすると,本件プレハブ小屋が増築部分であるかどうかの認定は,本件家屋の価格の評価過程の一環を成すものというべきであって,かかる認定についての不服は,固定資産課税台帳に登録された価格についての不服(法432条1項)に当たると解するのが相当であり,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる事項(審査申出事項)というべきである。本件決定も,これと同様の観点から,本件プレハブ小屋が本件建物の増築部分に当たるか否かが審査対象になるとの前提で判断を示したものと推測される。
なお,審査申出事項に当たらないとの判断を示したものとして被告が挙げる裁判例(乙12)は,家屋に付着した設備が別個の所有権の対象となり,別個の課税客体となるかが問題となった事案についてのものであって,本件とは事案を異にするものというべきである。
(3)

以上検討したところを踏まえ,本件プレハブ小屋が本件建物の増築部分
といえるかどうかについて検討する。本件プレハブ小屋は,本件ビル本体部
分の屋上に設置されているものであり,区分所有の対象となる場合を除いて独立の不動産となるものではないから,本件ビル本体部分への定着の程度等を勘案し,本件建物の増築部分に当たるかを判断すべきこととなる。昭和62年に実施された本件プレハブ小屋の家屋調査票(乙4)及び本件プレハブ小屋の現状を撮影した写真(甲4,乙5)からは,本件プレハブ小屋は,通気口を有する基礎の上に構築され,移動を防止するためワイヤで本件ビル本体部分と強固に止められ,昭和61年1月30日の建築時から長期間にわたり本件ビルの9階屋上部分にあること,屋根及び周壁等によって外界から遮断され,床面積は30㎡以上もある鉄骨造の建造物であること,内部には寝室,クロ-ゼット兼納戸,ユニットバス等があり,本件建物の設備とつながる形で電気設備や給排水設備が設けられ,現在に至るまで人の居住の用に利用されていることが認められ,これらを総合的に考慮すると,本件プレハブ小屋は,社会通念上,本件建物の一部分ということができ,増築部分に該当するものというべきである。
原告は,本件プレハブ小屋が本件建物の増築部分といえるためには設置面を壊さない限り分離できない程に本件ビル本体部分に結合していなければならない旨主張する。しかしながら,固定資産評価基準に

一棟の家屋に増築された部分があるときは,当該家屋を増築された部分とその他の部分とに区分して評点数を付設するものとする。

と定められている(第2章第1節四。乙6)ことからも明らかなとおり,増築といえるかどうかについては,設置した部分が設置前の家屋との間で一棟の家屋と評価できるかどうかが問われるべきであるところ,両者を一棟の家屋として結合するための工法には様々なものがあると解されるから,原告の主張するように設置面ないし結合面を壊さない限り分離できないことをもって増築認定の必須の要件と解することはできない。増築といえるどうかは,設置部分と設置前の家屋との物理的な結合の有無,程度に加えて,設置部分の目的や利用状況等も踏まえた上で,
設置部分と設置前の家屋とが一棟の家屋といえるかどうかとの観点から判断されるべきものと解するのが相当であるが,本件プレハブ小屋の本件ビル本体部分との結合状況が既にみたとおりであって,同小屋が仮設工事等の一時的な目的のために設置されたものではなく,継続的に人の居住の用に供されていること等を考慮すれば,本件プレハブ小屋は,本件ビル本体部分と共に一棟の家屋を成すものということができ,本件建物の増築部分と認められる。したがって,本件プレハブ小屋は,本件建物の一部分(増築部分)に該当するというべきである。
2
争点(2)(本件プレハブ小屋についての評価の当否)について
(1)

原告は,本件プレハブ小屋の評価額が鉄骨鉄筋コンクリートの構造物と
同じ基準で算定されているため,不当に高額となっていると主張する。しかし,平成24年度の本件プレハブ小屋を含む本件登録価格の算定は,前記前提事実(4)で認定したように,本件建物を本件ビル本体部分と本件プレハブ小屋とに区分した上で,それぞれについての価格を算定しているところ,本件プレハブ小屋については,建築当初から軽量鉄骨造の専用住宅に比準して単位当たり再建築費評点が算出され(乙4,14)これを引き継いだ平成23年度の単位当たり再建築費評点が3万7600点であったことから,これに平成24年度の再建築費評点補正率の0.96を乗じて,平成24年度の単位当たり再建築費評点を3万6000点と算出しているのであって,鉄骨鉄筋コンクリートの構造物と同じ基準で算定しているものではないから,原告の主張は採用できない。
(2)

また,原告は,本件プレハブ小屋は,本件建物の売却の際には,撤去を
求められるようなものであり,交換価値を減少させるとも主張する。これは被告が行った固定資産評価基準の定めに従った評価方法(再建築費評点数を基礎とするもの)では適正な評価ができない特段の事情があることを主張する趣旨のものと解されるが,本件プレハブ小屋が本件建物の交換価値を当然
に減少させると認めるに足りる事情があるとはいえず,したがって,上記特段の事情があるとはいえないから,原告の上記主張は採用できない。3
争点(3)(本件建物の用途を店舗ではなく事務所として評価額を算定したことの当否)について
(1)

原告は,本件建物は,新築当時より,主として店舗として使用されてき
ているものであり,店舗としての経年減点補正率(0.52)を適用すべきであると主張する。
(2)

経年減点補正率は,通常の維持管理を行うものとした場合において,年
数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであるが,建物の構造別及び用途別にこれを定められているのは,経年による建物の損耗の程度はその構造のみならず,建物の用途によっても異なるものであるから,これを建物の評価に適切に反映させるためと解される。取扱要領では,家屋の用途は,現況の用途により判断するものとされ,店舗用建物は専ら物品の販売又は客に飲食,休息,遊戯などをさせることを目的として建築された家屋,事務所用建物は室内において事務又は業務を取り扱うことを目的として建築された建物で,通常洋風構造の家屋と定義され,評価基準では,店舗用及び病院用の建物の経年減点補正率は事務所,銀行用及び2~7以外建物の補正率よりも大きく(評価額が下がる方向に)定められている。これは,不特定多数人が常時来訪し,物品の販売や役務の提供等が行われる部分が多くを占める建物は,そのような部分が一部に限られる建物に比して,より損耗の程度が大きいと一般的に評価できるからであり,合理的なものである。
(3)

その上で,取扱要領では,家屋の用途が複数にわたる複合用途家屋に
ついては,主たる用途により,原則として一棟単位で経年減点補正率を適用するものとされているところ,このような取扱いは,経年減点補正率の適用が,対象となる建物の現況の用途から想定される損耗の程度を考慮
した上でされるものであることに照らすと合理的なものといえる。そして,固定資産税の賦課期日(平成24年1月1日)に近接する同年11月12日に撮影された写真(乙5)を見る限り,店舗又は病院があるのは本件建物のうちBビルの低層階部分(1階の店舗及び2階の歯科医院)に過ぎず,他は事務所であると認められる。そうすると,本件登録価格の算定に当たって,上記取扱いに基づいて,本件ビル本体部分について,評価基準の定める事務所,銀行用建物及び2~7以外の建物の構造別区分鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の経過年数30年に対応する経年減点補正率0.6308を適用したことは合理的であり,その算定は適法に行われたものといえる。
(4)

なお,評価基準では,一棟の家屋に増築された部分があるときは,当
該家屋を増築された部分とその他の部分とに区分して評点数を付設することとし,取扱要領では,複合構造家屋については,一棟単位又は構造別に経年減点補正率を適用するものとしていることから,経年減点補正率の適用において,本件ビル本体部分と本件プレハブ小屋部分の用途を区別せず一律に事務所としての経年減点補正率を適用するのではなく,本件プレハブ小屋部分については,現況の用途である住宅,アパート用建物の経年減点補正率(乙16)を適用することが,上記評価基準等の趣旨により適合するものと考えられなくもない。しかし,本件プレハブ小屋は,昭和61年に増築されたものであり,固定資産税の賦課期日(平成24年1月1日)時点で築24年を超えており,事務所,銀行用建物及び2~7以外の建物の経年減点補正率によって算定しても住宅,アパート用建物の経年減点補正率によって算定しても補正率はいずれも0.200と同一であることから,この点は,本件登録価格に影響を及ぼさないものである。
4
小括

以上のとおり,原告の主張は,いずれも採用することができず,他に本件において,本件決定が違法であることをうかがわせる証拠は存しない。したがって,本件登録価格は,平成24年1月1日における本件建物の適正な時価を超えないものというべきであり,本件決定は適法である。第4

結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

小林宏司
裁判官

堀内元城
裁判官

水野峻志
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