事件番号 | 平成26(あ)1546 |
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事件名 | 児童福祉法違反被告事件 |
裁判年月日 | 平成28年6月21日 |
法廷名 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | 刑集 第70巻5号369頁 |
原審裁判所名 | 福岡高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成26(う)218 |
原審裁判年月日 | 平成26年9月19日 |
判示事項 | 1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」の意義 2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かの判断方法 |
裁判要旨 | 1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,これに含まれる。 2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきである。 |
参照法条 | (1,2につき)児童福祉法34条1項6号,児童福祉法60条1項 (1につき)児童福祉法1条 |
裁判日:西暦 | 2016-06-21 |
情報公開日 | 2017-10-17 13:50:02 |
平成28年6月21日 児童福祉法違反被告事件 第一小法廷決定 主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 所論に鑑み,職権で判断する。 児童福祉法34条1項6号にいう淫行とは,同法の趣旨(同法1条)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう淫行に含まれる。そして,同号にいうさせる行為とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって,被告人の行為は,同号にいう児童に淫行をさせる行為に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 池上政幸 小池 裁判官 裕 裁判官 櫻井龍子 大谷直人) 裁判官 山浦善樹 裁判官 |