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国家賠償請求酵素事件
事件番号平成26(ネ)4240
事件名国家賠償請求酵素事件
裁判年月日平成27年9月16日
法廷名東京高等裁判所
判示事項受刑者とその妻との面会を不許可とした刑事施設の長の処分が,国家賠償法1条1項の適用上適法とされた事例
裁判要旨受刑者と再審請求弁護人との面会の回数に関しては,刑事収容施設法114条による制約に服するものと解するのが相当であるところ,受刑者とその再審請求に係る弁護人との面会を含めれば当該受刑者の面会が規定回数を超えることを理由としてされた当該受刑者とその妻との面会を不許可とする旨の処分は,当該受刑者の当該月の面会回数が規定回数に達しており,当該受刑者と当該面会申出者は前日にも面会を行ったばかりであり,その内容も単なる近況報告に収支していた上,同日の面会の用件が当該面会の用件とほぼ同様であったなどの判示の経緯及び事情に鑑みれば,刑事施設の長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したとはいえないと判断された事例。
裁判日:西暦2015-09-16
情報公開日2017-10-19 09:33:13
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平成27年9月16日判決言渡し
平成26年(ネ)第4240号

国家賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成

23年(ワ)第36742号)
主1文
1審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1)

1審被告は,1審原告Aに対し,1万円及びこれに対する平成24
年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2)

1審原告Aのその余の請求及びその余の1審原告らの請求をいずれ
も棄却する。
2
1審原告らの本件各控訴をいずれも棄却する

3
訴訟費用は,1・2審を通じて,1審原告らの負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
1審原告ら
(1)

原判決中,1審原告ら敗訴部分を取り消す。

(2)

1審被告は,1審原告Aに対し,更に294万円及びこれに対する平成2
4年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(3)

1審被告は,1審原告Bに対し,100万円及びこれに対する平成22年
5月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)

1審被告は,1審原告Cに対し,100万円及びこれに対する平成22年
5月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)

1審被告は,1審原告Dに対し,100万円及びこれに対する平成22年
6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)

1審被告は,1審原告Eに対し,100万円及びこれに対する平成22年
6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(7)

1審被告は,1審原告Fに対し,100万円及びこれに対する平成22年
7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(8)

1審被告は,1審原告Gに対し,100万円及びこれに対する平成22年
7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(9)

1審被告は,1審原告Hに対し,100万円及びこれに対する平成22年
8月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
1審被告
(1)

原判決主文1項のうち,面会不許可処分の違法を理由として5万円及びこ
れに対する遅延損害金の支払を命じた部分を取り消す。
(2)
第2
1
上記取消しに係る1審原告Aの請求を棄却する。

事案の概要(以下,原判決の略称をそのまま用いる。)
本件は,徳島刑務所長が,無期懲役刑で同刑務所に服役中の受刑者Iに対する,同人の妻である1審原告Aの申出による面会を不許可とし(本件第1面会不許可処分),その他の1審原告らの申出による各面会も不許可としたこと(本件第2ないし第7面会不許可処分)並びに1審原告AがIに宛てた9通の信書(本件第1ないし第9信書)の各一部を抹消したこと(本件第1ないし第9抹消処分)につき,1審原告らが,これらの処分(本件各処分)はいずれも徳島刑務所長がその裁量権の範囲を逸脱し又は裁量権を濫用して行った違法なものであるなどと主張して,1審被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,1審原告Aにつき慰謝料合計300万円及びこれに対する最終の不法行為時から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,その他の1審原告らにつきそれぞれ交通費及び慰謝料合計100万円及びこれらに対する各不法行為時から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,徳島刑務所長が行った本件各処分のうち,本件第1面会不許可処分並びに本件第1及び第2抹消処分はそれぞれ刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)に違反し,同刑務所長の裁量権の範囲を逸
脱し又はこれを濫用した違法があって,国家賠償法上も違法であり,過失があるとして,1審被告に対し,1審原告Aにつき,慰謝料6万円(本件第1面会不許可処分につき5万円,本件第1及び第2抹消処分につき各5000円)及びこれに対する最終の不法行為日であると主張する平成24年3月27日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で1審原告Aの本件請求を認容し,同1審原告のその余の請求並びにその他の1審原告らの本件各請求をいずれも棄却した。1審原告ら及び1審被告は,それぞれの敗訴部分を不服として(ただし,1審被告は,本件第1面会不許可処分についてのみ不服を申し立てた。),本件各控訴を提起した。
2
本件における関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者
双方の主張は,後記3において原判決を補正し,後記4において当審における当事者双方の主張を補足ないし付加するほかは,原判決事実及び理由欄の第2事案の概要の1ないし3(原判決2頁22行目から同49頁6行目
まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3
原判決の補正

(1)

原判決9頁10行目の徳島刑務所ではの次に,過剰収容の状態の下,職員の目を盗んで受刑者が密書のやり取りを頻繁に行うなどの状況が見られていたため,その是正等として,暴力団関係受刑者を他の刑事施設に移送することとして他の被収容者から隔離したところ,これに反発した別の暴力団関係受刑者数名がを加え,同行から11行目にかけての数名の受刑者らがを削り,同12行目の乙6の次に,弁論の全趣旨(1審被告の原審における準備書面(1))を加える。(2)

原判決9頁24行目の規定を削る。

(3)

原判決10頁13行目の

取扱いとしていた。

の次にそして,面会申出者に対する掲示においても,一般面会について,『交友関係の維持,その他面会することを必要とする事情があり,かつ,面会により受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる者についても面会できることがありますが,これは旧友等を対象としております。したがって,本項により面会を希望する方は,保険証,社員証等の身分証明書の提示が必要です。』とのみ記載していた(乙19)。を加え,同16行目から17行目にかけての出所後の元受刑者と面会して不良な交友関係を維持,強化しようとするなどを,在所中に受刑者同士で関係を築き,出所後に元受刑者が受刑者と面会を行い,他の出所者や暴力団関係者の動向を受刑者に知らせ,その不良な交友関係を維持,強化しようとしたり,面会人を介して同一施設内又は他の刑事施設に服役中の受刑者や暴力団関係者と外部交通目的の養子縁組を行い,本来であれば許可されない面会を行おうとする者も散見された上,受刑者の知人と称して,面会することを必要とするような関係を有していない報道関係者が受刑者と面会する事案まで発生するなどに改め,同18行目の18の次に,19を加える。
(4)

原判決10頁20行目の平成20年10月を平成20年10月8日,「達示の一部改正について(同日付け徳島刑務所長達示第20号)(乙4)及び外部交通の取扱いが改正されたことに関し,特に留意すべき事項について(試行)(同日付け処遇首席指示第32号)(乙7)を発出し」に,同11頁3行目から4行目にかけての乙7,弁論の全趣旨を乙4,6,7,弁論の全趣旨にそれぞれ改める。
(5)

原判決11頁6行目の更新について」の次に(処遇首席指示第5号)(乙8)を,同10行目の第13号の次に(甲6)を,同16行目から17行目にかけての不許可とすることとしたの次に。ただし,徳島刑務所においては,受刑者の面会規定回数が満了していても,その親族等から更なる面会の申出があった場合において,当該規定回数の満了のみをもって一律的に面会を不許可とするのではなく,面会申込書の「面会の用件欄に面会の目的として記載される事情のほか,当該面会申出者と受刑
者との関係,当該面会の申出に至った事情,規定回数を超えて更に当該面会申出者と受刑者との面会を認める必要性や緊急性の有無,程度等を個別具体的に考慮し,規定回数を超えていても更に面会を許可すべきか否かも判断していた」を,同17行目の乙6の次に,弁論の全趣旨(1審被告の原審における準備書面(1),(2))をそれぞれ加える。(6)

原判決14頁8行目の甲7〔5頁〕を弁論の全趣旨(甲7)に改

める。
(7)

原判決14頁17行目の岩井弁護士はの次に,平成22年9月8日,徳島刑務所長に宛てて「面会申請書を提出し,面会の理由及び必要性を再審請求補充書の準備とし,希望する面会時間を記載した上で刑務官の立会いのない面会の申入れをし」を加える。
(8)

原判決14頁21行目の原告Aはの次に,面会の用件を『安否,近況報告,再審,活動報告』としてIとの面会を申し入れを加える。(9)

原判決14頁24行目の原告Aはの次に,面会の用件を『安否,近況,再審,運動』としてを,同25行目の徳島刑務所長はの次に,Iの同月の面会規定回数が満了に達しており,本件第1面会の前日にもIと1審原告Aとの面会が行われ,その内容も単なる近況報告に終始していた上,本件第1面会の用件も前日とほぼ同様であったことからを,同15頁初行の乙の次に11,をそれぞれ加える。
4
当審における当事者双方の主張の補充
(1)

1審原告ら
本件第2ないし第7面会不許可処分について
(ア)

刑事施設における被収容者の外部交通は,旧監獄法においては恩恵
的なものとされていて,原則として親族との面会しか認めない扱いであったが,行刑改革会議提言を受けて,受刑者処遇法が制定され,現行の刑事収容施設法に引き継がれた経緯を踏まえれば,同法111条2項に
おける知人・友人等との面会(裁量面会)は積極的に認められるよう運用することが求められていることが明らかであり,したがって,その必要性の判断も刑事施設の長の裁量に委ねるのではなく,特に害悪が発生する具体的な蓋然性が認められない限り,原判決が判示する社会ないし面会申出者との健全で良好な関係などを基準とすることなく,基本的権利として認められるべきである。
また,最高裁判所平成18年3月23日第1小法廷判決(最高裁平成18年判決)は,信書の発受に関する判例ではあるが,同判例は,受刑者処遇法の施行直前に同法の内容を念頭において判断されたものというべきであり,同判例を踏まえると,信書に限らず外部交通全般に類推され,外部交通を拡大する解釈がなされるべきである。
さらに,冤罪を訴え,再審請求を行う受刑者にとっては,支援者の存在はその精神的な支えとなるものであり,再審支援の運動をより多くの人々に広めていくためにも外部交通がとりわけ重要であるから,支援者が再審請求人と面会して交流を図る必要性は大きい。
(イ)

1審原告Bは,病気の子供を抱えながら1審原告Aと交友関係を続
け,とりわけ育児に関して1審原告Aの多大な支援を受けてきたため,特別な思いでIの支援を続けているのであって,1審原告Bは,I及び1審原告Aの双方にとって特別に重要な人間関係にあるから,その者との交友関係の維持その他面会することを必要とする事情(刑事収容施設法111条2項)が認められる。
(ウ)

1審原告Cは,当時,再審開始決定が確定していたところ,再審を
認めさせつつある先達との交流による経験の継承は,再審を請求している受刑者にとって極めて重要であるから,同人との面会を不許可としたことは徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。なお,1審原告Cは,平成20年1月8日にI宛てに信書を送っている
が,同信書は犯罪性のある者との交信(同法128条)として交付禁止となっており,交付禁止の措置はこれが解除される平成24年5月まで継続されていたから,その間,Iが1審原告Cに対して信書を発信することは不可能であって,このような両者間の信書の授受の事情を消極要素として考慮することは許されない。
(エ)

1審原告D及び1審原告Eは,1審原告AがIと面会を行うたびに
多大な時間をかけて送迎を行っており,Iもそれを把握していて,1審原告D及び1審原告Eに対して深く感謝しているのであるから,このようなIにとって,1審原告D及び1審原告Eと直接に会ってやり取りをすることは何物にも代え難い意義を有するものである。よって,同人らとの面会を不許可としたことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。
(オ)

1審原告Gは,Iと2回面会した実績があり,岡山県におけるI再
審支援活動の中心に位置して熱心な活動を続けており,1審原告Fは,同じくIと2回面会した実績があるところ,平成18年9月の最初の面会から平成21年5月の第2回面会まで3年近く面会していない期間があるが,これは,徳島刑務所においてIに対する面会を不許可としたためにすぎないから,同人らとの面会を不許可としたことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。
(カ)

1審原告Hは,Iの学生時代からの友人でIの支援活動の中心人物
の一人であるところ,平成21年7月及び平成22年6月の信書において

敵は国家権力です。

面会拒否については,あらゆる方法で反撃していきます。

などの表現を用いたことがあったが,これは,徳島刑務所においてIに対する面会不許可の事態が継続していたことに対し,Iの支援活動の中心人物の一人である1審原告Hが反撃の先頭に立つことを表明したものであって当然のことである。また,1審原告Hは,本
件デモを企画し主導したが,これを理由に面会を不許可とすることは,表現の自由を定めた憲法21条に違反するとともに請願権を定める憲法16条にも違反するものであるから,同人との面会を不許可としたことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。

本件第1面会不許可処分について
(ア)

ア(ア)の第1段落及び第2段落の趣旨に加え,未決拘禁者等につい
ては,確かに身体の拘束を受けている被告人及び被疑者(刑事訴訟法39条1項)という地位に基づく要請はあるものの,刑事収容施設法は,未決拘禁者等と弁護人の面会においても全く無制約としているのではなく,刑事施設の規律及び秩序の維持(同法114条1項)に鑑みて一定の範囲内で制約を課しており(同法117条,119条,122条,123条,125条等),また,同法114条は,包括的に面会の態様の制限について規定しているのに対し,未決拘禁者等と弁護人等との面会については,個別に具体的な規定(同法118条,119条,123条)を設けているのであって,これらに鑑みれば,受刑者と未決拘禁者等との相違だけをもって同法を解釈すべきではない。
(イ)

受刑者と再審請求弁護人との面会について,最高裁判所平成25年
12月10日第3小法廷判決(最高裁平成25年判決)が,面会回数についても制限されないことを射程に入れていることは明らかである。(ウ)

本件第1面会は,1審原告AとIとの結婚記念日における面会で特
別意味のある面会であるから,これを予告なしに拒否された1審原告Aは,耐え難い精神的苦痛を受けた。これを慰謝するには,原審の認定額に加えて更に195万円の慰謝料の支払が必要である。

本件第1ないし第9抹消処分について
(ア)

刑事収容施設法126条は,受刑者の信書の発受に関し,それが禁
止される場合を除いて許すものとし,相手方の範囲に制限なく,基本的
にこれを認めるものとしているところ,最高裁平成18年判決は,受刑者の外部交通の制限について,害悪発生の蓋然性及び必要かつ合理的な範囲内での制限という二重に厳しい要件を課しているのであり,これは刑事収容施設法にも妥当するというべきであるにもかかわらず,徳島刑務所長は,害悪発生の蓋然性に関する厳密な審査を怠った違法がある。(イ)

本件第3及び第4抹消処分は,Jに関する部分であるが,Jは,一
貫して無実を訴えながら服役を余儀なくされ,刑期を終えて出所した経験から,自身の悔しさと無実のIの心情を慮ってI再審運動に尽力しているのであって,平成16年の出所後,何らの問題も生じさせていないのであるから犯罪性のある者と判断することは誤りというほかはなく,同各部分を抹消したことは徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。
(ウ)

本件第5抹消処分は,他の刑事施設に収容中の受刑者及び死刑確定
者に関する部分であるが,これをもって1審原告Aを通じて他の受刑者と直接信書を発受するのと同様の効果が生ずる筈などなく,受刑者の矯正処遇の適切な実施において放置することのできない程度の支障を生ずる相当の蓋然性がある場合に当たらないことは明らかであるから,同部分を抹消したことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。
(エ)

本件第6ないし第8抹消処分は,1審原告Hに関する部分であると
ころ,1審原告Hは,本件デモを主導し,同デモにおいてシュプレヒコールをあげた事実はあるものの,本件デモはあくまでも合法的に実施され,その内容も国際人権規約に則り受刑者の処遇の適切な改善を求めるものであるから,そのようなデモの中心的人物に関するものであることを理由に同各部分を抹消したことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。

(オ)

本件第9抹消処分は,1審原告Aが,本件デモの参加者に礼を述

べ,本件デモの様子を描写して賞賛し,その感想を述べた部分であるが,同部分は,1審原告Aの感謝や感動等を控え目に表現したにすぎず,妻の愛情に溢れている内容であって,Iの適切な矯正処遇の実施や徳島刑務所の規律及び秩序維持に支障を生じさせるおそれのないことは明らかであるから,同部分を抹消したことは,徳島刑務所長の裁量権を明らかに逸脱しており違法である。
(カ)

本件第1ないし第8抹消処分については,各10万円の慰謝料が相
当であり,本件第9抹消処分については,1審原告Aの肉声による愛情表現の発言部分について全面的に黒塗りされて夫に届かなかったことを踏まえると,20万円の慰謝料が相当である。よって,本件第1及び第2抹消処分について,それぞれ更に9万5000円の支払を求める。(2)

1審被告


本件第1面会不許可処分について

(ア)

刑事収容施設法は,114条において,刑事施設の長に対し,被収
容者の面会の相手方の人数,場所,日及び時間帯,時間及び回数その他面会の態様に関する刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることを認めているが,同条において被収容者と再審請求弁護人との面会を例外としていないことは明らかである。そもそも,同条は,刑事施設における人的物的な制約と被収容者に対し面会の機会を平等に保障することを総合考慮するべく,刑事施設の長に合理的な裁量のもとでの外形的な制限をすることを認めたものであるから,未決拘禁者等(未決拘禁者としての地位を有しない被告人又は被疑者である被収容者を含む(いわゆる在宅捜査・公訴提起の対象となっている被収容者)。)と弁護人等以外の者との面会について,面会の相手方の人数,場所,日及び時間帯,時間及び回数その他面会の態様に関する制限を全て上記刑事施設の長の裁量に委ねることとしているが,他方において,同法は,上記未決拘禁者等と弁護人等との面会については,面会の時間及び回数について,上記制限の対象外とし(同法118条1項ないし4項,119条,123条,145条及び同法施行規則74条),刑事訴訟法39条1項における身体の拘束を受けている被告人又は被疑者に該当するとされる上記未決拘禁者等の接見交通権を保障して,その防御権を実質的に侵害しないようにしている。
このような刑事収容施設法によれば,受刑者等の被収容者と再審請求弁護人の面会が重要であるとしても,それを被告人又は被疑者と弁護人等との面会と常に同一に取り扱わなければ刑事収容施設法上違法となるものではない。
(イ)

最高裁平成25年判決は,死刑確定者と再審請求弁護人との面会の
際に刑事収容施設法121条に基づき立会を付すことの国家賠償法上の違法性について判断したものであり,受刑者と再審請求弁護人との面会を同法114条に基づく規定回数に計上することの違法性については何ら判断しておらず,その射程は本件には及ばない。ちなみに,上記判決の事案における1審原告らが,死刑確定者が再審請求に向けた打合せをするために再審請求弁護人と面会する場合の刑事訴訟法39条1項の適用ないし準用を否定した原判決を不服として上告及び上告受理を申し立てたところ,最高裁判所第3小法廷は,平成25年11月29日,上告棄却及び上告不受理の決定をしているところであり,これによっても,受刑者と再審請求弁護人との面会が未決拘禁者とその刑事弁護人との面会と全く同一の権利を保障されるものでないことが明らかである。(ウ)

徳島刑務所は,犯罪傾向の進んだ受刑者を収容する施設であって,
暴力団組織など反社会組織に属している者などの処遇に多大な困難を伴う者を多数収容していたため,施設の規律及び秩序維持のためには受刑者の処遇場面に多数の職員を当てなければ対応が困難な状況にあった。また,面会室も6室(うち2室が弁護人面会用)と限られているため,多数の一般面会を認めれば,面会対応以外の職務に当てられる職員数が削られ,不測の事態に対する適切な対応に不安が生じる弊害もあったから,弁護人と同様の権利が保障されていない再審請求弁護人の面会を原則どおり一般面会として規定回数に計上していたものであり,このような対応は当時の事情に鑑みれば合理的であって,徳島刑務所長の裁量の範囲内である。
(エ)

1審原告Aは,前日にIと30分間面会を実施しており,本件第1
面会の目的も前日と全く同一で,前日の面会内容も近況報告の範疇に止まるものであったことから,徳島刑務所長は,上記各事情を考慮した上で,規定回数を超えてまで面会を許可する必要性は認められないとして本件第1面会不許可処分をしたものであり,その判断に裁量権の逸脱又は濫用はない。
(オ)

国家賠償法は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個
別の国民に対して負担する職務上の注意義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定しているが(1条1項),仮に公務員の行為に行政法規に違反する違法があったとしても,そのことから直ちに国家賠償法上も違法と評価されるものではなく,当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情がある場合に限り,国家賠償法上も違法となると解されるところ(最高裁判所平成5年3月11日第1小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁判所平成11年1月21日第1小法廷判決・判例時報1675号48頁),そもそも,刑事収容施設法は,114条において,刑事施設における人的物的な制約と被収容者に対し面会の機会を平等に保障することを総合考慮した上で,刑事施設の長において,各刑事施設の実情及び各受刑者の優遇区分等に鑑みて面会回数の制限等について裁量判断することを認めているものであって,親族及び非親族を問わず面会申出者の固有の利益に配慮して面会回数等の制限をすることを義務づけているものではない上,最高裁判所平成20年4月15日第3小法廷判決(最高裁平成20年判決)も,旧監獄法下に関するものであって親族の面会が問題となっている事案ではないものの,同法において調整が図られているのはあくまでも受刑者の利益であることを前提として,接見を申し入れた者の利益との調整が求められるか否かを判示したものであって,接見を申し入れた者が親族か非親族かを区別したものではないから,同判例を踏まえても,弁護人等又は再審請求弁護人以外の面会申出人には,国家賠償法上,保護に値すべき固有の利益は認められない。

本件第2ないし第7面会不許可処分について
刑事収容施設法111条2項による裁量面会が許されるためには,交友関係の維持その他面会することを必要とする事情がなければならないところ,これは,社会通念上,積極的に面会を許すべき事情をいい,また,同項にいう交友関係の維持に当たる友人知人も,その趣旨及び目的からすれば,その前提として継続的な交際の事実がある上,その関係も好ましいものであることが必要である。さらに,裁量面会については,このような面会の必要がある事情に加えて,その他の同項の要件を満たす場合において,刑事施設の長により許されるものであるところ,本件第2ないし第7面会については,いずれも上記各要件が認められなかったために不許可となったものであり,徳島刑務所長に裁量権の逸脱又は濫用はない。


本件第3ないし第9抹消処分について
信書の発受の制限に関する処置については,刑事施設内の事情に通暁し,直接その任に当たる刑事施設の長の裁量に委ねられているところ,本件各信書は,いずれもIの改善更生のために好ましくない社会との関係を遮断する必要があるという観点から,その矯正処遇の適切な実施に支障が生ずるおそれがあり,また,Iとの外部交通により徳島刑務所の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められたために不許可となったものであり,徳島刑務所長に裁量権の逸脱又は濫用はない。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所は,原判決とは異なり,1審原告Aの本件各請求のうち,本件第1
面会不許可処分について国家賠償法に基づき損害賠償を請求する部分については理由がないものと判断する。そして,その余の点については原判決と同じく,本件第1及び第2抹消処分については原判決が認容した各5000円の限度でその請求を認容し,その余の請求及び本件第3ないし第9抹消処分に関する請求並びにその他の1審原告らの本件各請求は,いずれも理由がないからこれらをいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,以下に認定,説示するとおりである。
2
争点1(本件第1面会不許可処分の違法性)について
(1)

規定回数を超えたことなどを理由として本件第1面会不許可処分をしたこ
との適否

1審原告らは,再審請求中の受刑者と再審請求弁護人との接見は規定回数の制限を受けないと解すべきであり,仮に制限に服するとしても含めることにつき合理的な理由が必要である旨を主張するのに対し,1審被告は,規定回数の制約に服し,本件岩井弁護士面会をカウントすることにより規定回数を超えることになり,1審原告Aには規定回数を超えて面会を許可する事情は認められない旨を主張する。そこで,まず,規定回数に再審請求弁護人の面会を含めることの当否について検討する。


刑事収容施設法及び同法施行規則における被収容者に対する処遇等に関する規律について
刑事収容施設法は,刑事収容施設の適正な管理運営を図るとともに,被収容者等の人権を尊重しつつ,これらの者の状況に応じた適切な処置を行うことを目的としているところ(同法1条),刑事収容施設における被収容者の収容を確保するとともに,その処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持するためには刑事収容施設における規律及び秩序の維持が必要不可欠であるが,刑事収容施設の人的物的能力には自ずと限界があることから,個々の被収容者の権利・利益に対して必要な制約を課すこともまた不可欠となるものといわざるをえない。このようにして,規律及び秩序の維持,被収容者の矯正処遇の適切な実施等を図ることになるが,その際には,被収容者の人権を尊重する趣旨から,被収容者の権利義務の範囲を明らかにするとともに,それらに対して制限を加える必要がある場合には,その根拠及び限界を定め,被収容者の法的地位や個別の状況に応じて適切な処遇を実施することとしている。
そして,このような立法目的を実現するため,同法は,被収容者の処遇に関し,第2編被収容者等の処遇において,第1章処遇の原則を設け,受刑者(30条),未決拘禁者(31条)及び死刑確定者(32条)ごとに処遇の原則を定めた上,受刑者については,改善更生の意欲を喚起するため,一定期間ごとの受刑態度の評価に応じ,面会の回数等について優遇措置を講ずること(89条)を規定している。なお,同法は,未決拘禁者については,受刑者と異なり,有罪であることを前提とした権利・利益の制限が認められないことから,未決拘禁者については,防御権の尊重に特に留意することを明示している(31条)。
ところで,刑事収容施設法は,適正な処遇の実現のため,受刑者については,人道上の要請等から親族等の一定の範囲の者との外部交通を保障するのが適当である上,収容中においても社会との健全で良好な関係を維持,改善し,円滑な社会復帰を目指すことが重要であると考えられることから,その趣旨をより積極的に明示するため,外部交通の有意義性について留意事項を規定しているが(110条),同条も,自由刑という拘禁を本質とする制裁を受けている受刑者に対する規定であって,そのような法的地位のもとで改善更生を図ることを目的としているのであるから,受刑者について,場所的移動の自由の剥奪に加えて,外部交通を含めた様々な行動の自由を剥奪しあるいは制限されることを前提としていることは明らかである。

以上を前提として,受刑者に対する面会に関する規律について具体的にみると,刑事収容施設法は,受刑者(第2編第2章第11節第2款第1目。111条以下)を,その他の被収容者である未決拘禁者(同第2目。115条以下),未決拘禁者としての地位を有する受刑者(同第3目119条以下)及び死刑確定者(同第4目120条以下)等と区別した上で,受刑者については,前記のとおり,自由刑を執行し拘禁することにより,好ましくない社会関係を遮断するという要請に応えた上で,受刑者の改善更生と円滑な社会復帰のため,その親族(111条1項1号),受刑者の重要用務のために面会が必要な者(同項2号),受刑者の改善更生に資すると認められる者(同項3号)について面会を認めるとともに(権利面会),自由刑の趣旨からすれば,友人や知人との面会を絶対的に保障する必要性までは認められないものの,その有意義性が全く否定されるものでもないため,面会を必要とする事情があって,かつ,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ,又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り,刑事施設の長の裁量により,これを許すこととしていること(同条2項。裁量面会)が窺える。
その上で,更に,実際に面会を実施させるに当たっては,面会室の整備,面会室への受刑者の連行,面会時における立会い,面会時における受刑者の逃走,金品・信書の授受の防止などの的確な管理運営が必要不可欠であるところ,刑事施設における人的物的能力には限りがある一方,被収容者には対しては平等に面会の機会を保障することが求められるため,刑事施設の長において,受刑者の面会に関し,刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限ができるものとしている(114条)。ただし,この場合であっても,被告人又は被疑者である被収容者であって未決拘禁者としての地位を有しない受刑者については,弁護人等以外の者との面会の回数についてのみ制限をすることができるものと定め(同法施行規則74条),上記受刑者の防御権を適切に保障することとしているものと理解される。

ところで,受刑者には,前記のとおり,公訴を提起されて被告人の地位にある者又は捜査の対象である被疑者の地位に置かれている者が存するほか,受刑者を有罪として懲役刑等を言い渡した確定判決について再審の請求をする者も存するところ,これらの者についても,その防御権を適切に保障する必要があることは明らかであるから,憲法34条に基づく弁護人依頼権を認められ,この弁護人依頼権については,弁護人に相談し,助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障するための,弁護人との接見交通権(刑事訴訟法39条)が含まれるものと解される(最高裁平成25年判決参照)。そして,刑事施設において,受刑者が再審請求弁護人と面会するに当たっても,職員の立会いのない秘密面会を実施することが求められるというべきであり,前提事実によれば,この点については,既に徳島刑務所においても実施していることが認められる。しかしながら,これまでに概観したとおり,刑事収容施設法は,受刑者については,飽くまで懲役刑等の確定判決の効力に基づいて自由刑に服している地位にあるとの前提に立って種々の規律を設けていることが明らかであり,ただ,訴追機関により訴追された被告人又は捜査機関により捜査の対象となっている被疑者である被収容者であって未決拘禁者としての地位を有しない受刑者としての地位に置かれた者に限って,その弁護人等との面会について回数の制限を受けないことを規定しているにとどまっていることや(同法施行規則74条),そもそも検察官以外の者で再審の請求を行っている受刑者(刑事訴訟法440条1項)は,自ら任意に再審の請求を行っているにとどまり,前記被告人又は被疑者である被収容者であって未決拘禁者としての地位を有しない受刑者のように,現に他の刑事事件について,刑事訴訟手続上,裁判確定前の法的地位に置かれているものでもなく,有罪の確定判決の効力によって自由刑に服する受刑者としての法的地位に置かれているにすぎないことに鑑みると,再審請求中の受刑者については,再審請求弁護人との間において,秘密面会を行う権利・利益は有するものの,面会の回数については,いまだ刑事収容施設法114条における面会に関する制限に服するものと解するのが相当である。
以上に対し,1審原告らは,最高裁平成18年判決によって外部交通全般を拡大する解釈が求められていること,刑事収容施設法も,未決拘禁者等と弁護人との面会を全く無制約としているものではないから,受刑者と未決拘禁者等との違いのみをもって同法を限定的に解釈すべきではないこと,最高裁平成25年判決は受刑者と再審請求弁護人との面会が無制限に認められるべきことも含意していることなどを主張する。
しかしながら,最高裁平成18年判決は,旧監獄法の下における受刑者の非親族との間の信書の発受について,表現の自由を保障した憲法21条の趣旨及び目的に鑑み,監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善更生の観点から放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められるときに限ってこれを制限することができると判示したものであって,受刑者と再審請求弁護人との面会に関して判断したものではないから,1審原告らのこの点に関する主張は理由がない。また,刑事収容施設法が,未決拘禁者等と弁護人との面会についても制限する場合があることを規定したのは,弁護人等が犯罪の実行を共謀したり,あおったり,唆すなど,およそ正当な弁護活動を行わない場合を想定したにすぎないのであって,同法におけるそれらの規定の存在をもって,同法における受刑者と再審請求弁護人との面会に関する規律の解釈に影響を与えるものとは到底解されないところである。さらに,最高裁平成25年判決は,飽くまでも,死刑確定者又はその再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合について判断したものであり,再審請求弁護人から援助を受ける機会を実質的に確保する必要から双方の秘密面会の利益を肯定し,その面会により,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるなどの特段の事情がある場合を除き,これを許さない措置は違法になるとしたもので,その事案の内容及び判事事項に照らすと,面会の回数そのものが無制限に認められることまで判断したものではないと解されるから,1審原告らの上記各主張は,いずれも採用することができない。

以上によれば,そもそも,受刑者と再審請求弁護人との面会は,その回数に関しては,刑事収容施設法114条による制約に服するものと解するのが相当であるところ,前提事実(当審における補正後のもの)によれば,Iは,本件第1面会不許可処分の当時,優遇区分第4類に指定されていて,1か月間に行える面会の回数(規定回数)は2回とされており,平成22年9月についてみると,同月10日に再審請求弁護人である岩井弁護士との面会(本件岩井弁護士面会)が行われ,同月16日に1審原告Aが,面会の用件を安否,近況報告,再審,活動報告としてIとの面会を行ったため,Iについては,同月の面会規定回数に達していたことが明らかである。以上の経緯のもと,翌17日,1審原告Aが,面会の用件を安否,近況,再審,運動としてIとの再度の面会(本件第1面会)の申出を行ったことから,徳島刑務所長は,当該規定回数の満了のみを理由として一律に不許可とすることなく,当該面会の用件,面会申出者と受刑者との関係,当該面会の申出に至った事情,規定回数を超えて更に当該面会申出者と受刑者との面会を認める必要性や緊急性の有無,程度等について検討したところ,Iは前日にも1審原告Aと面会を行ったばかりであり,その内容も単なる近況報告に終始していた上,1審原告Aが記載した同日の面会の用件が本件第1面会の用件とほぼ同様であったことから当該申出に係る面会を不許可としたというのであって,このような経緯及び事情に鑑みれば,徳島刑務所長において,本件第1面会を不許可処分としたことについて,刑事収容施設法114条に違反する点は認められず,したがって,国家賠償法上も,刑事施設の長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法を認めることもできないというべきである。(2)

事前の告知や事情聴取をしないまま第1面会不許可処分を行ったことの適

原判決事実及び理由欄の第3当裁判所の判断の1(2)(原判決5
4頁12行目から同25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(3)

以上によれば,本件第1面会不許可処分は適法であるから,この点に関す
る1審原告Aの請求は理由がない。
3
争点2(1審原告A以外の1審原告らに対する各面会不許可処分の違法性)
について
(1)

後記(2)において原判決を補正するほかは,原判決事実及び理由の
第3当裁判所の判断の2(原判決57頁10行目から同68頁末行ま
で)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)

原判決の補正


原判決59頁8行目の同判決の趣旨をから同10行目の許すものとした上までを刑事収容施設法は,信書の発受に関し,これを原則として許すものとした上に,同12行目の内容等の差止め等を内容等の削除や抹消等にそれぞれ改める。

原判決60頁4行目から5行目にかけての第2回口頭弁論期日におけるの次に1審原告Bのを加える。

原判決61頁15行目の第1回口頭弁論期日におけるの次に1審原告Cのを加え,同62頁7行目の次に,行を改めて次のとおり加える。
なお,1審原告らは,Iから1審原告Cに対する信書が送られていなかった点について,1審原告CからIに宛てた信書は徳島刑務所長が刑事収容施設法128条に基づいて交付禁止の措置をとっていたために,Iからの1審原告Cに対する発信もなかったのであって,同人らについて信書の発受に関する事情を考慮することは許されない旨を主張するが,1審原告CがIに宛てて3通の信書を送信した当時,1審原告Cは,再審開始決定を受けていたとはいえ無期懲役刑の仮釈放中の身であったのであるから,1審原告CからIに宛てた信書の交付禁止の措置が直ちに違法であったと解することはできず,これらの事情を背景として,1審原告CがIから信書の送信を受けたことがなかったことを判断事情の1つとすることが不適切であるということもできないから,この点に関する1審原告らの主張は採用できない。

原判決67頁7行目のあったところの次に,徳島刑務所では,本件デモに先立ち,近隣住民から当日の外出の可否について問い合わせを受けるなどしていた上を加え,同10行目の同刑務所内のから11行目のIに聞こえておりまでを同刑務所内のIに向かって大音量で呼びかけを行っており,Iに対する上記呼びかけ等は,Iに聞こえていただけでなく,他の被収容者にも聞こえていたため,被収容者の中には,立ち上がって窓から外をのぞき見たり,職員に問い掛けをするなどの事態が生じていたものであってに改める。オ
原判決67頁24行目の呼びかけを行うものであったことからすれば
を太鼓を打ち鳴らすとともに拡声器を用いて大音量で呼びかけを行うものであり,刑事収容施設法により刑事施設に求められる刑事施設の規律及び秩序並びに受刑者の矯正処遇の適切な実施の観点からは,多大な支障をもたらしていたものであることが明らかであったことからすれば,手続上は合法的に実施されたものであることを考慮に入れたとしてもに改める。4
争点3(1審原告Aに対する各信書の一部抹消処分の違法性)について原判決事実及び理由の第3当裁判所の判断の3(原判決69頁初

行から同86頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決86頁6行目の次に,行を改めて次のとおり加える。なお,1審原告らは,当審においても,本件第3ないし第9抹消処分の各違法性について縷々主張するが,これらの処分が適法であることは引用に係る原判決が説示するとおりであるから,上記の点に関する1審原告らの主張はいずれも採用できない。5
争点4(1審原告Aの損害の有無及び額)について
1審原告Aの被った精神的損害(慰謝料)については,本件第1及び第2抹消処分の内容や分量等に照らし,それぞれ5000円(合計1万円)と認めるのが相当である。

6
以上に認定,説示したところによれば,1審原告Aの本件各請求のうち,本件第1及び第2抹消処分について国家賠償法に基づいて損害賠償を求める請求は,1万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成24年3月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余の損害についての請求はいずれも理由がなく,本件第1面会不許可処分及び本件第3ないし第9抹消処分について国家賠償法に基づく損害賠償を求める部分はいずれも理由がなく,その他の1審原告らの本件各請求についてはいずれも理由がないから,1審被告の控訴に基づき,これと異なる原判決を主文1項記載のとおり変更するのが相当である。そして,1審原告らの本件各控訴は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部

裁判長裁判官

奥田正昭
裁判官

吉村真幸
裁判官

三村義

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