判例検索β > 平成24年(ワ)第19125号
損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟
事件番号平成24(ワ)19125
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成27年3月25日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2015-03-25
情報公開日2017-10-19 09:55:23
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平成27年3月25日判決言渡
平成24年(ワ)第19125号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

損害賠償請求事件

平成27年1月21日
判決
東京都港区<以下略>
原告
株式会社MANGA

RAK

同訴訟代理人弁護士

四宮隆史同中村穂積同藤井康弘
同訴訟復代理人弁護士

秋山光
東京都港区<以下略>
被告株式會社Aⅰ
(以下被告Aⅰという。)
同訴訟代理人弁護士


同訴訟復代理人弁護士

堺同四田史里彦津元子佑
東京都港区<以下略>
被告
Aⅱ
(以下被告Aⅱという。)

同訴訟代理人弁護士

本山信
同訴訟復代理人弁護士

岩佐二祐郎希
京都市<以下略>
被告Aⅱ補助参加人

有限会社グループ・ゼロ
(以下被告補助参加人という。)

同訴訟代理人弁護士
横浜市<以下略>

岡本敬一郎被告
Aⅲ
(以下被告Aⅲという。)

東京都港区<以下略>
被告株式会社Aⅳ
(以下被告Aⅳという。)
上記2名訴訟代理人弁護士

草野多隆同外崎友隆同内田拓志
東京都目黒区<以下略>
被告
Aⅴ
(以下被告Aⅴという。)

同訴訟代理人弁護士
主1平石孝行文
被告Aⅰ及び被告Aⅱは,原告に対し,連帯して2777万5208円及びこれに対する平成22年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告Aⅰ及び被告Aⅲは,原告に対し,連帯して80万9280円及びこれに対する,被告Aⅰにつき平成24年7月27日から,被告Aⅲにつき同月28日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告Aⅱは,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成24年8月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被告Aⅱは,原告に対し,1億6440万1672円及び,うち1440万1672円に対する平成19年6月15日から,うち5000万円に対する同月21日から,うち5000万円に対する同年8月3日から,うち5000万円に対する同月21日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

6
訴訟費用のうち,補助参加によって生じた費用は被告補助参加人の,被告Aⅳ及び被告Aⅴに生じた費用は原告の負担とし,その余の費用はこれを10分し,その3を被告Aⅱの,その1を被告Aⅰの,その1を被告Aⅲの負担とし,その余を原告の負担とする。

7
この判決は,第1項から第4項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
請求
被告Aⅰ及び被告Aⅱは,原告に対し,連帯して3027万6988円及びこれに対する平成22年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告Aⅰ及び被告Aⅲは,原告に対し,連帯して2134万3200円及びこれに対する,被告Aⅰにつき平成24年7月27日から,被告Aⅲにつき同月28日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3(主位的請求)
被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴは,原告に対し,連帯して100万米ドル及びこれに対する,被告Aⅱにつき平成24年8月8日から,被告Aⅲにつき同年7月28日から,被告Aⅳ及び被告Aⅴにつき同月27日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)
被告Aⅴは,原告に対し,100万米ドル及びこれに対する平成24年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4
被告Aⅱ,被告Aⅲ及び被告Aⅳは,原告に対し,連帯して170万円及びこれに対する,被告Aⅱにつき平成24年8月8日から,被告Aⅲにつき同年7月28日から,被告Aⅳにつき同月27日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
被告Aⅱは,原告に対し,8000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

6(主位的請求)
被告Aⅱは,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(予備的請求)
被告Aⅱは,原告に対し,5000万円及びうち3000万円に対する平成19年9月27日から,うち1500万円に対する同年10月18日から,うち500万円に対する同年11月29日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7(請求1~5の予備的請求)
被告Aⅱは,原告に対し,2億円及びうち5000万円に対する平成19年6月15日から,うち5000万円に対する同月21日から,うち5000万円に対する同年8月3日から,うち5000万円に対する同月21日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,漫画原作者である被告Aⅱから著作物独占的利用権の設定を受けたと主張する原告(旧商号:平成19年6月5日までウクソンジャパン株式会社,平成21年1月29日まで被告Aⅵ株式会社,同年3月30日まで劇画村塾株式会社。同日以降現商号。甲1,25)が,被告らに対し,不法行為(独占的利用権の侵害)に基づく損害賠償を求める(請求の趣旨第1項~第5項)とともに,被告Aⅱに対し,貸金の返還を求め(請求の趣旨第6項),さらに,被告Aⅱに対し,請求の趣旨第1項~第5項の予備的請求として不当利得の返還を求める(請求の趣旨第7項)事案である。なお,被告Aⅱ及び被告Aⅴは原告の取締役であった者であるが(甲1),会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律53条により,原告の監
査役の監査範囲は会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなされるから,会社法2条9号により同法386条1項の適用はなく,同法349条1項により,代表取締役が原告を代表する。
1
請求原因
(1)

被告Aⅰ及び被告Aⅱの共同不法行為に基づく請求(請求の趣旨第1
項)

本件独占的利用許諾契約
(ア)

原告と被告Aⅱは,以下のa及びbを骨子とする平成20年1月2
5日付け著作物独占的利用許諾契約(以下本件独占的利用許諾契約といい,本件独占的利用許諾契約により原告が取得した独占的利用権を本件独占的利用権という。)を締結した(甲6,88)。

被告Aⅱは,原告に対し,原告が本著作物(被告Aⅱの著作に係る平成20年2月18日付け著作物利用に関する契約公正証書〔甲
6,88。以下本件公正証書という。〕別紙著作物目録記載の
各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物の総称。以下本著作物という。)を利用し,日
本あるいは海外において次の各事業(以下本件各事業とい
う。)に独占的に利用することを許諾する(1条,2条)。


原告が本著作物の全部又は一部を複製し,譲渡し,展示し,ある
いは本著作物の全部又は一部を翻訳・翻案して著作物を作成して
利用すること(著作権法21条,25条,26条の2,27条,
28条に示す権利の許諾を含む。)。



本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は一部を
翻訳・翻案して作成された著作物を,インタラクティブ配信,コ
ンテンツ配信等送信あるいは送信可能化事業を行うこと。



本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は一部を

翻訳・翻案して作成された著作物を,ゲーム,パチンコ,パチス
ロ及びこれらの周辺機器等,アミューズメント事業において利用
すること(送信あるいは送信可能化事業も含む。)。


本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は一部を
翻訳・翻案して作成された著作物を,商品化,商業化するマー
チャンダイジング事業を実施すること。


本件独占的利用許諾契約は,本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満了するまでの間存続する(6条)。

(イ)

原告の代理人であるAⅶ弁護士及び被告Aⅱの代理人であるAⅷ

(以下Aⅷという。)は,本件公正証書の作成を公証人に嘱託し
て,本件独占的利用許諾契約と同内容の平成20年1月25日付け著作物独占的利用許諾契約を締結した。

被告AⅱのAⅷに対する代理権授与等
(ア)

代理権授与
原告は,平成20年1月25日付けで,Aⅶ弁護士に対し,本件独占
的利用許諾契約を締結する代理権を授与した(乙イ1の2,甲88)。被告Aⅱは,平成20年1月25日付けで,Aⅷに対し,本件独占的利用許諾契約を締結する代理権を授与した(乙イ1の1,甲88)。(イ)

追認
仮に被告AⅱがAⅷに対して代理権を授与していないとしても,被告
Aⅱは,以下の事実により,Aⅷによる本件独占的利用許諾契約の締結を追認した。


被告Aⅱは,原告との間で,平成20年1月25日付け解約覚書(甲18,22)により,後述の旧公正証書契約を合意により解約し,これに代えて新たに規定する内容に係る公正証書を作成することに合意した。



被告Aⅱは,代理人弁護士を通じて,原告に対し,本件独占的利用許諾契約を解除する旨を通知する平成20年11月26日付け通知書(甲54)を送付し,この中で,本件独占的利用許諾契約を締結した経緯について,通知人は,貴社との間で,平成20年1月25日付け「著作物利用に関する契約を締結し,同契約の公正証書を同年2月18日付けで作成しました。この契約は,通知人の著作物について,その商品化に関する事業を貴社に委託するという委任契約であると理解しております。これは,貴社が十分に事業を展開してくれるものと見込んで契約したものです。」と述べた。



被告Aⅱは,原告との間で,平成22年1月26日付け確認書
(甲64)により,本件独占的利用許諾契約が有効に存続していること,本件独占的利用許諾契約に定める本著作物について被告Aⅱが原告に独占的利用権を許諾していることを確認した。



被告Aⅱは,原告及び被告Aⅰとの間で,平成22年2月9日付けAⅱ著作物出版に関する基本合意書(甲8,75)により,被告
Aⅱの著作物の出版に関する基本合意(以下本件基本合意とい
い,その合意書を本件基本合意書という。)を締結し,本件基
本合意書には,乙[被告Aⅱ]は,平成20年1月25日に乙[被告Aⅱ]が甲[原告]との間で合意し,平成20年2月18日に作成した「著作物利用に関する契約公正証書……に基づいて」との記載がある。



被告Aⅱは,原告との間で平成22年7月1日付け原稿料及び印税に関する合意書(甲66)により,被告Aⅱの著作物出版時の原稿料及び印税に関する合意(以下本件印税合意といい,その合
意書を本件印税合意書という。)を締結し,本件独占的利用許
諾契約が有効に存続し,本件独占的利用許諾契約に定める本著作物に
ついて被告Aⅱが原告に本件独占的利用権を許諾していることを確認した。

被告Aⅰによる本件書籍1の無断出版
被告Aⅰは,平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間,原告の許諾なくして,別紙1出版物一覧(平成20年1月25日から平成22年6月30日まで)記載の書籍99点(以下本件書籍1-1~本件書籍1-99といい,併せて本件書籍1という。)を出版した。
本件書籍1は,いずれも原告が独占的利用権を有する本著作物に含まれる。
原告は,被告Aⅰの無断出版により,本件書籍1の出版事業を独占的に利用することができなくなり,本件独占的利用権を侵害された。


被告Aⅰの故意
上記ウの平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間,被告Aⅰの代表取締役は,原告と本件独占的利用許諾契約を締結した被告Aⅱであった(甲4)。
したがって,被告Aⅰは,原告に無断で本件書籍1を出版することが原告の本件独占的利用権を侵害することを明確に認識していたのであり,被告Aⅰの原告に対する債権侵害は故意によってなされたものである。

損害
被告Aⅰの本件独占的利用権を侵害する本件書籍1の無断出版により,原告は,被告Aⅰから得べかりし印税相当額3027万6988円の損害を被った。


被告Aⅱの被告Aⅰ代表取締役としての不法行為責任
被告Aⅱは,上記ウの平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間,被告Aⅰの代表取締役を務めていたのであり(甲4),上記ウ
の債権侵害は,被告Aⅰの代表取締役である被告Aⅱが,その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,被告Aⅰがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅱも連帯して損害賠償責任を負う。

よって,原告は,被告Aⅰ及び被告Aⅱに対し,原告の本件独占的利用権を侵害した共同不法行為に基づき,3027万6988円及びこれに対する最後の不法行為の後の日である平成22年7月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2)

被告Aⅰ及び被告Aⅲの共同不法行為に基づく請求(請求の趣旨第2
項)

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等上記(1)ア,イと同じ。


被告Aⅰによる本件書籍2の無断出版
被告Aⅰは,平成23年9月13日から平成24年9月10日までの間,原告の許諾なくして,別紙2出版物一覧(平成23年9月13日から本訴状送達日前日まで)記載の書籍104点(以下本件書籍2-1~本件書籍2-104といい,合わせて本件書籍2という。)を出版した。
本件書籍2は,いずれも原告が独占的利用権を有する本著作物に含まれる。
原告は,被告Aⅰの無断出版により,本件書籍2の出版事業を独占的に利用することができなくなり,本件独占的利用権を侵害された。


被告Aⅰの故意

(以下の事実は,被告Aⅰの故意を基礎付ける事実として主張するものであり,独立の不法行為を主張するものではない。)
(ア)

本件基本合意の締結

原告,被告Aⅱ及び被告Aⅰは,平成22年2月9日,本件基本合意を締結した(甲8,75)。その骨子は,①原告が被告Aⅰに対して本件基本合意の有効期間中,原告が許諾した本著作物を利用し出版することを許諾すること(1条1項),②被告Aⅱは本件独占的利用許諾契約に基づき,作画家などの関係著作権者若しくは第三者からの権利主張,異議,苦情,損害賠償請求等が生じないよう,被告Aⅱの責任において権利処理すること,③被告Aⅰは原告と,出版物ごとに個別の出版契約書を取り交わすこと(3条1項),④被告Aⅰが上記出版契約書に基づいて被告Aⅱの著者印税を原告に支払い,原告はその2割を被告Aⅱに支払うこと(2条),⑤本件基本合意の有効期間は2年間とし,原告,被告Aⅱ又は被告Aⅰのいずれかが契約期間満了の3か月前までに文書により契約の終了を通知しない場合は,同一の条件をもって2年間ずつ延長されること(4条),⑥原告,被告Aⅱ又は被告Aⅰは,相手方が本件基本合意を継続しがたい重大な背信行為を行った場合,書面による通知をもって本件基本合意を解除できること(5条)などである。(イ)

被告Aⅰによる乾いて候の無断出版
被告Aⅰは,平成23年9月12日,本件基本合意3条1項に違反し
て,原告と個別出版契約書を取り交わすことなく,本著作物に含まれる被告Aⅱの著作物である乾いて候を出版した。
(ウ)

本件基本合意の解除
原告は,被告Aⅰに対し,平成23年9月12日,上記(イ)の行為が
本件基本合意を継続しがたい重大な背信行為に当たるとして,本件基本合意を解除することを通知した(甲11)。
(エ)

被告Aⅰは,被告Aⅱと原告との間の本件独占的利用許諾契約の存
在を知っており,原告から本件基本合意を解除する旨の通知も受けている。したがって,被告Aⅰは,原告に無断で本件書籍2を出版すること
が,原告の本件独占的利用権を侵害することを明確に認識していたのであり,被告Aⅰの原告に対する債権侵害は故意によってなされたものである。

損害
被告Aⅰの本件独占的利用権を侵害する本件書籍2の無断出版により,原告は,被告Aⅰから得べかりし印税相当額2134万3200円の損害を被った。


被告Aⅲの被告Aⅰ代表取締役としての不法行為責任
被告Aⅲは,上記イの平成23年9月13日から平成24年9月10日までの間,被告Aⅰの代表取締役を務めていたのであり(甲2),上記イの債権侵害は,被告Aⅰの代表取締役である被告Aⅲが,その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,被告Aⅰがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅲも連帯して損害賠償責任を負う。


よって,原告は,被告Aⅰ及び被告Aⅲに対し,原告の本件独占的利用権を侵害した共同不法行為に基づき,2134万3200円及びこれに対する訴状送達日である,被告Aⅰにつき平成24年7月27日から,被告Aⅲにつき同月28日から,各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(なお,原告は,訴状において,訴状送達日からの遅延損害金の請求をした後,本件書籍2の最後の発行日が平成24年9月10日である旨の主張をしたが,遅延損害金の起算日を繰り下げなかった。)。

(3)

被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法行為に基づく請
求(請求の趣旨第3,4項)

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等上記(1)ア,イと同じ。


被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡

被告Aⅱは,平成20年4月9日,株式会社KK
KKTRIBE(以下TRIBEという。)に対し,本著作物に含まれる著作物で
ある子連れ狼,忘八武士道,首斬り朝,修羅雪姫,
オークションハウス,御用牙及び盗撮影手パパラッチ(以
下本件7作品という。)についての著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を譲渡し,同年8月12日,かかる譲渡について著作権法に基づく登録がなされた(甲12〔枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ〕)。
原告の本件独占的利用権は,KK

TRIBEが著作権譲渡登録を経た

後も,依然として被告Aⅱに対する債権として効力が残存している。原告は,被告Aⅱ及びKK

TRIBEによる上記著作権譲渡により,

上記各著作物を独占的に利用することができなくなり,本件独占的利用権を侵害された。

被告AⅱのKK

TRIBEに対する著作権譲渡の登録は,譲渡契約が

平成23年4月27日に解除されたとして,同年11月4日抹消された(甲12)。

被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡
被告Aⅱは,平成23年5月10日,被告Aⅳに対し,本件7作品についての著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を譲渡し,同年11月4日,かかる譲渡について著作権法に基づく登録がなされた(甲12,72)。
原告の本件独占的利用権は,被告Aⅳが著作権譲渡登録を経た後も,依然として被告Aⅱに対する債権として効力が残存している。
原告は,被告Aⅱ及び被告Aⅳによる上記著作権譲渡により,上記各著作物を独占的に利用することができなくなり,本件独占的利用権を侵害さ
れた。

被告Aⅱの故意
被告Aⅱは,本件独占的利用許諾契約の当事者であるから,上記イ,エの著作権譲渡が原告の本件独占的利用権を侵害することを明確に認識していたのであり,被告Aⅱの原告に対する債権侵害は故意によってなされたものである。


KK

TRIBE及び被告Aⅴの故意

上記イの著作権譲渡の当時(平成20年4月9日),KK

TRIBE

の代表取締役は被告Aⅴであり(甲5),被告Aⅴは,平成19年6月5日から平成20年10月14日まで原告の取締役を務めていた(甲1)。そのため,被告Aⅴは,被告Aⅱと原告との間で本件独占的利用許諾契約が締結されていることを知っており,上記イの著作権譲渡が原告の本件独占的利用権を侵害することを明確に認識していた。したがって,KK

RIBEの原告に対する債権侵害は故意によってなされたものである。上記イの不法行為は,KK

TRIBEの代表取締役である被告Aⅴが,

その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,KK

RIBEがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅴも損害賠償責任を負う(なお,KK

TRIBEは,平成23年6月3

0日株主総会決議により解散している。)。

被告Aⅳ及び被告Aⅲの故意
上記エの著作権譲渡の当時(平成23年5月10日),被告Aⅳの代表取締役は被告Aⅲであり(甲3),被告Aⅲは被告Aⅰの取締役も務めていた(甲2,4)。そのため,被告Aⅲは,被告Aⅱと原告との間で本件独占的利用許諾契約が締結されていることを知っており,上記エの著作権譲渡が原告の本件独占的利用権を侵害することを明確に認識していた。したがって,被告Aⅳの原告に対する債権侵害は故意によってなされたもの
である。
上記エの不法行為は,被告Aⅳの代表取締役である被告Aⅲが,その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,被告Aⅳがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅲも連帯して損害賠償責任を負う。

損害
(ア)

原告の子連れ狼映画化事業
原告は,本件各事業の一つの事業として,本著作物に含まれる著作物
である子連れ狼の映画化を企画し,平成20年10月29日,米国法人シーエスデヴコ・エルエルシー(CSDevco,LLC。以下CSデヴコという。)との間で,子連れ狼に関する取引基本合意書(子連れ狼)」(甲13,21)により,以下の合意を締結した。その骨子は,①初回オプション報酬は12か月間の初回オプション期間における選択権の対価として2万5000米ドル以上7万5000米ドル以下の額とし,初回オプション期間は正式な契約の署名かCSデヴコによるチェーン・オブ・タイトル(正当な権利者から途切れることなく権利が譲渡され又は許諾されること)の承認のいずれか遅い時点に開始して,そのときに(CSデヴコから原告に)初回オプション報酬が支払われること,②CSデヴコは,さらに2万5000米ドル以上7万5000米ドル以下の額の第2オプション報酬を支払うことにより,初回オプション期間をさらに12か月間延長することができること,③原告はCSデヴコに対し,オプション期間において,子連れ狼の全ての権利等を購入(原告は,被告Aⅱから許諾を受けた独占的利用権に基づきCSデヴコに権利を許諾することを予定していたものである。)する選択権を付与すること,④子連れ狼の全ての権利等の購入価格は100万米ドルとすること,⑤原告は映画の純利益の5%相当額を受領
することなどである。
(イ)

子連れ狼の映画化の中断
上記イ,エの著作権譲渡登録のため,原告は現在までCSデヴコによ
るチェーン・オブ・タイトルの承認を得ることができず,正式契約を締結することができずにいる。原告は,上記イ,エの著作権譲渡がなければ,CSデヴコによるチェーン・オブ・タイトルの承認を得られ,原告とCSデヴコとの間で正式契約が締結されて,CSデヴコが子連れ狼を映画化することにより,映画の純利益の5%相当額を含めないとしても,少なくとも100万米ドルの対価が得られたはずである。したがって,原告の得べかりし利益である100万米ドルが,上記イ,エの不法行為と因果関係のある損害である。
(ウ)

原告の子連れ狼のテレビドラマ化事業
原告は,平成20年3月頃,株式会社アクトエンタープライズから,
本著作物に含まれる著作物である子連れ狼のテレビドラマ化の提案を受けた。そこで,原告は,本件独占的利用権に基づき株式会社フジテレビジョン(以下フジテレビという。)に権利を許諾することに
より,子連れ狼をテレビドラマ化することに応じることとし,フジテレビは子連れ狼のテレビドラマ化を決定し,平成23年夏頃にはシナリオが完成し,主演をAⅸとするなどのキャスティングも決定して,同年11月からのクランクインのスケジュールも決定した。
(エ)

子連れ狼のテレビドラマ化の中止
平成23年11月頃,上記エの著作権譲渡が判明し,平成23年11
月28日,フジテレビからの申し入れにより子連れ狼のテレビドラマ化は中止となった。
上記エの著作権譲渡がなければ,子連れ狼がテレビドラマ化され,原告がフジテレビから支払われるはずであった許諾料相当額は170万
円を下らず,原告の被った損害は同額を下らない。
(オ)

被告Aⅳからラッキー17に対する譲渡
被告Aⅳは,上記エにより被告Aⅱから譲り受けた子連れ狼の著

作権につき,平成24年1月16日,米国法人ラッキー17フィルムズ・エルエルシー(Lucky17films,LLC。以下ラッキー17という。)に対し,同日から平成26年4月19日までの間に譲渡担保契約による著作権(翻案権)のうち実写映画権及びこれから派生した実写テレビドラマシリーズ化権を譲渡した(甲12の1,甲74)。
被告Aⅳがラッキー17から受領した権利譲渡の対価は,イニシャル・フィーに限っても50万米ドルを下らない。
被告Aⅱ及び被告Aⅳによる上記エの不法行為がなければ,ラッキー17に対する実写映画化権及びドラマシリーズ化権の許諾は原告が行い,その対価は原告が得ていたはずである。したがって,被告Aⅳがラッキー17に対して権利を譲渡したことにより受領した対価相当額が,上記エの不法行為と因果関係のある原告の損害となる。
上記(イ)のCSデヴコを通じた子連れ狼の映画化と,ラッキー17に対する権利の許諾は両立するものではないから,上記(イ)の損害とこの損害のいずれか小さい方の損害は大きい方の損害に包含される関係にある。

被告Aⅴに対する原告の取締役としての責任(予備的請求)
上記イの著作権譲渡の当時(平成20年4月9日),被告Aⅴは原告の取締役であった(甲1)。
被告Aⅴが,KK

TRIBEの代表取締役として被告Aⅱから本件7

作品の著作権の譲渡を受けた行為は,原告の取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反し,取締役としての任務を怠る行為でもある。被告Aⅴの取締役としての任務懈怠行為により,原告は上記クの損害を
被った。

よって,原告は,主位的には,
(ア)

被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴに対し,上記イ,エの
原告の本件独占的利用権を侵害した共同不法行為に基づく損害賠償として,連帯して,100万米ドル(被告Aⅱ,被告Aⅲ及び被告Aⅳについては,選択的に50万米ドル)及びこれに対する訴状送達日である,被告Aⅱにつき平成24年8月8日から,被告Aⅲにつき同年7月28日から,被告Aⅳ及び被告Aⅴにつき同月27日から,各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金,
(イ)

被告Aⅱ,被告Aⅲ及び被告Aⅳに対し,上記エの原告の本件独占
的利用権を侵害した共同不法行為に基づく損害賠償として,連帯して,170万円及びこれに対する訴状送達日である,被告Aⅱにつき平成24年8月8日から,被告Aⅲにつき同年7月28日から,被告Aⅳにつき同月27日から,各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金,
の支払を求めるとともに,予備的に,
(ウ)

被告Aⅴに対し,原告の取締役としての任務懈怠責任(会社法42
3条1項)に基づく損害賠償として,100万米ドル及びこれに対する訴状送達日である平成24年7月27日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(4)

被告Aⅱの債務不履行に基づく請求(請求の趣旨第5項)
被告Aⅱと大成商事有限会社との間の著作物利用許諾契約
被告Aⅱは,平成16年8月3日,大成商事有限会社との間で著作物およびキャラクターの商品化権に関する原作契約書(甲15)を締結して,被告Aⅱの著作物の商品化権を許諾し,その有効期間は平成21年8月3日までであった。


旧公正証書契約
(ア)

原告と被告Aⅱは,以下の内容の平成19年6月11日付け著作物独占的利用許諾契約(以下旧公正証書契約という。)を締結した
(甲14,87)。


被告Aⅱは,平成19年11月26日付け

著作物利用に関する契約公正証書(甲14,87。以下「旧公正証書

という。)別紙著作物目録記載の著作物と今後制作される著作物(本著作物)を原告が利用して日本あるいは海外において本件各事業に独占的に利用することを許諾する(1条,2条1項)。



前項の規定にもかかわらず,被告Aⅱが旧公正証書契約前に商品
化権ないし配信権を許諾している,大成商事有限会社(PTS)に対して許諾した被告Aⅱの作品の商品化権(パチンコ,パチスロ及びこれらの周辺機器を含む。)については,被告Aⅱにおいて使用許諾契約期間満了と同時に旧公正証書契約の対象となる事項に含むものとして取り扱うこととし,その具体的条件については個別に原告と被告Aⅱ間で協議して決定する(2条4項1号)。

(イ)

原告の代理人であるAⅶ弁護士及び被告Aⅱの代理人であるAⅹ

(以下Aⅹという。)は,平成19年11月26日付け旧公正
証書の作成を公証人に嘱託して,旧公正証書契約と同内容の平成19年6月11日付け著作物独占的利用許諾契約を締結した(甲14,87)。
(ウ)

原告は,平成19年11月2日付けで,Aⅶ弁護士に対し,旧公

正証書契約を締結する代理権を授与した(甲87)。
被告Aⅱは,平成19年10月26日付けで,旧公正証書契約を締結する代理権をAⅹに授与した(甲37,87)。
(エ)

旧公正証書契約により,被告Aⅱは,原告に無断で上記アの利用

許諾期間を延長させない義務を負担した。

被告AⅱのPTSに対する利用許諾期間延長
被告Aⅱは,平成19年9月27日,大成商事有限会社の契約上の地位を承継した株式会社PTS(以下PTSという。)との間で,原告に無断で,平成21年8月3日までとされていた上記アの利用許諾期間を15年間延長し,平成36年8月3日までとすることを合意した(甲16)。
これは,旧公正証書契約に基づき被告Aⅱが負担した上記イ(エ)の義務の債務不履行に当たる。


旧公正証書契約は,平成20年1月25日,本件独占的利用許諾契約締結のために合意により解約されているが(甲18,22),同日に締結された本件独占的利用許諾契約にも上記イ(ア)②と同様の定めがあり(甲6・2条4項),合意解約前の債務不履行により生じた原告の損害賠償請求が否定されるものではない。


損害
(ア)

PTSは,平成19年2月14日,被告Aⅱから利用許諾を受けた
権利を株式会社平和(以下平和という。)に再許諾し(甲1
7),平和は,PTSに対し,3年間の有効期間中,子連れ狼,
修羅雪姫,花平バズーカ及び弐十手物語のタイトル,キャ
ラクターの形状等を,日本及び大韓民国において遊技機に使用することを許諾された対価として,子連れ狼については半金で4000万円(消費税別)(別途の覚書により独占的利用許諾に変更された後に残りの半金4000万円),修羅雪姫について6500万円(消費税
別),花平バズーカにつき3200万円(消費税別),弐十手物語について4000万円(消費税別)の合計1億7700万円(子連れ狼についての残りの半金を含めず)を支払うとされており,さら
に,遊技機の販売台数に応じて追加の利用料を支払うとされている。(イ)

原告は,被告Aⅱによる上記ウの債務不履行がなければ,平成21
年8月4日から平成36年8月3日までの15年間,原告が被告Aⅱの著作物の商品化権を第三者に許諾できていたはずである。
4作品についての3年間の利用許諾の対価が少なくとも1億7700万円であるから,15年間にかかる4作品及びその他の被告Aⅱの著作物の商品化権を第三者に許諾できていたときに得べかりし利益は1億7700万円を下らない。原告は,被告Aⅱの上記ウの債務不履行により,同額の損害を被った。
(ウ)

原告は株式会社であり,旧公正証書契約に基づく債務は商行為に

よって生じた債務であるから,その債務不履行に基づく損害賠償債務も商行為によって生じた債務である。

よって,原告は,被告Aⅱに対し,旧公正証書契約上の義務の債務不履行に基づく損害賠償の一部請求として,8000万円及びこれに対する訴状送達日である平成24年8月8日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(5)

被告Aⅱに対する金銭消費貸借契約に基づく請求(請求の趣旨第6項)平成19年9月26日付け貸付
原告は,被告Aⅱに対し,平成19年9月26日,弁済期の定めなく,3000万円を,三井住友銀行麹町支店の原告名義(被告Aⅵ株式会社名義)の預金口座から三菱東京UFJ銀行都立大学駅前支店の被告Aⅱ名義(Aⅱ名義)の預金口座に振込送金することにより貸し付け(甲19),被告Aⅱは返還することを約してこれを受領した。


平成19年10月17日付け貸付
(ア)

原告は,被告Aⅱに対し,平成19年10月17日,弁済期の定め
なく,1500万円を,三井住友銀行麹町支店のBⅰ名義の預金口座か
ら三菱東京UFJ銀行都立大学駅前支店の被告Aⅱ名義(Aⅱ名義)の預金口座に振込送金することにより貸し付け(甲20),被告Aⅱは返還することを約してこれを受領した。
(イ)

上記の振込送金がBⅰ名義でなされたのは,当時原告がBⅰに対し
て1500万円の立替金債権を有していたことから,Bⅰが原告に同額を弁済することに代えて,原告の被告Aⅱに対する貸付金として,同額を被告Aⅱの預金口座に振込送金したものである。

平成19年11月28日付け貸付
原告は,被告Aⅱに対し,平成19年11月28日,弁済期の定めなく,500万円を,現金で交付することにより貸し付け,被告Aⅱは返還することを約してこれを受領した。


原告は,平成24年8月8日被告Aⅱに送達された本件訴状により,上記ア~ウの貸金の返還を催告した。


不当利得返還請求(予備的請求)
仮に,被告Aⅱが,上記ア~ウの金銭の受領につき返還約束をしていなかった場合,原告は,被告Aⅱに対し,法律上の原因なくして上記ア~ウの合計5000万円の金銭を受領したことになり,被告Aⅱはこれにより同額の利益を受け,原告は同額の損失を被った。
被告Aⅱは,上記ア~ウの時点で悪意の受益者である。


よって,原告は,被告Aⅱに対し,主位的には,
(ア)

金銭消費貸借契約に基づき,貸金合計5000万円及びこれに対す
る訴状送達日である平成24年8月8日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,
予備的には,
(イ)

不当利得返還請求権(民法703条,704条)に基づき,500
0万円及び,うち3000万円に対する受益の日の翌日である平成19
年9月27日から,うち1500万円に対する受益の日の翌日である同年10月18日から,うち500万円に対する受益の日の翌日である同年11月29日から,各支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払を求める。
(6)

被告Aⅱに対する不当利得返還請求(請求の趣旨第7項)
原告は,平成19年6月14日,原告の取締役であったBⅱ名義で,被告Aⅱの口座に5000万円を送金した(甲7)。


原告は,平成19年6月20日,原告の代表取締役であるBⅲ名義で,被告Aⅱの口座に5000万円を送金した(甲7)。
上記ア,イの振込名義がBⅱ及びBⅲ名義となったのは,原告が新株発行により被告Aⅱに支払う2億円の原資を調達する予定であったが,被告Aⅱが2億円の支払を急ぐよう求め,資金調達が間に合わなかったことから,原告の代表者であるBⅲ(以下Bⅲという。)及び原告の取締役であるBⅱが立て替えて支払ったものである。Bⅲ及びBⅱが立て替えた各5000万円は,後に原告からBⅲ及びBⅱに返還されている。

原告は,平成19年8月2日,被告Aⅱの口座に5000万円を送金した(甲7)。


原告は,平成19年8月20日,被告Aⅱの口座に5000万円を送金した(甲7)。


上記ア~エの合計2億円は,本件独占的利用許諾契約による独占的利用権設定の対価である。


仮に本件独占的利用許諾契約が無権代理ないし無効であれば,被告Aⅱは,上記ア~エの2億円を法律上の原因なくして利得し,原告は同額の損失を被っていることになる。
被告Aⅱは悪意の受益者である。


仮に本件独占的利用許諾契約が解除された場合には,被告Aⅱは,原告
に対し,民法545条1項に基づき原状回復義務を負う。なお,継続的契約の債務不履行による解除は将来に向かった解除であるとしても,未だ独占的利用権が許諾されていない期間について受領した対価については原状回復義務を負う。

よって,原告は,上記(1)~(4)の請求の予備的請求として,被告Aⅱに対し,不当利得返還請求権(民法703条,704条)又は解除による原状回復請求権(民法545条)に基づき,2億円及び,うち5000万円に対する受益の日の翌日である平成19年6月15日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同月21日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同年8月3日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同月21日から,各支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払を求める。

2
請求原因に対する被告Aⅱの認否,抗弁
(1)

請求原因(1)

被告Aⅰ及び被告Aⅱの共同不法行為に基づく請求(請

求の趣旨第1項)について

本件独占的利用許諾契約
原告と被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約を締結したことは否認する。本件公正証書に添付されている著作物利用に関する契約書(甲8
8・30~52頁)には被告Aⅱ名下の押印があるが,被告Aⅱが押印したことは否認する。
同契約書の作成日付は,解約覚書(甲18,22)の作成日付と同日の平成20年1月25日であり,文書の体裁も,自署ではなくあらかじめワープロ打ちされ,押印欄が同じ大きさの円定規を用いた丸で囲んであるとの共通点がある。したがって,原告は,同契約書を作成した日(同年1月25日)において,被告Aⅱ名義の印章を使用,押印することができ,同契約書は被告Aⅱの関与なしに作成されたものと推認され
る。
したがって,同契約書は,被告Aⅱの関与なしに作成されたものといえる。

被告AⅱのAⅷに対する代理権授与等
(ア)

被告AⅱのAⅷに対する代理権授与は否認する。被告Aⅱは,Aⅷ
に対する委任状(甲88・29頁,乙イ1の1)に押印しておらず,同委任状の印影が被告Aⅱの印章により顕出されたことも否認する。同委任状の作成日付も,解約覚書(甲18,22)の作成日付と同日の平成20年1月25日であり,文書の体裁も,自署ではなくあらかじめワープロ打ちされ,押印欄が同じ大きさの円定規を用いた丸で囲んであるとの共通点がある。したがって,原告は,同委任状を作成した日においても,自由に被告Aⅱ名義の押印ができた可能性が高く,同委任状は,被告Aⅱの関与なしに作成されたものである。
(イ)

実質的自己契約
また,本件公正証書は,原告が,自己の従業員(Aⅷ)に対し,契約
相手(被告Aⅱ)の代理人となることを業務命令として指示し,作成したものである。それゆえ,相手方当事者から委任を受けた代理人(Aⅷ)による公正証書作成の代理行為は,当事者本人(被告Aⅱ)の利益を害するおそれがある場合に該当する。したがって,本件公正証書の作成は,実質的に民法108条本文が規定する自己契約に該当し,無効である。
(ウ)

追認の主張はいずれも否認する。
原告が真正に成立すると主張する乙イ1の1及び2の委任状(ただ
し,被告Aⅱらは,これらが真正に成立したことを争っている。)の記載内容によれば,各委任の内容は,各委任状別紙契約の趣旨の契約を締結する代理権ではなく,各委任状別紙契約の公正証書を作成する事実行
為と考えるのが合理的である。
また,本件公正証書(甲6,88)では,本公証人は,当事者の嘱託により,次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取し,この証書を作成すると記載されており,AⅷとAⅶ弁護士が,代理権授与に基づく本件独占的利用許諾契約を締結していないことは明らかである。
したがって,無権代理人による法律行為が存在しないので,原告が追認を主張する各事実は民法113条1項の追認に該当せず,契約の時にさかのぼって効力が生ずる(同法116条本文)ことはない。①

被告Aⅱが解約覚書(甲18,22)を取り交わした事実はな
いが,平成20年2月18日に作成された本件公正証書による本件独占的利用許諾契約の締結を,それより以前の平成20年1月25日に追認したとの主張は理解できない。



解除通知書(甲54)は,被告Aⅱの代理人であったBⅳ弁護士が作成したものであるが,この通知書は解除に主眼がある上,その時点では正確な事実関係を把握していなかったのではないかと想像される。



確認書(甲64),本件基本合意書(甲8,75),本件印税合意書(甲66)は,原告の執筆妨害行為により被告Aⅱの収入がなくなり,原告の威迫の中,収入確保を主眼として作成した文書であり,本件公正証書による本件独占的利用許諾契約の有効性を追認する趣旨ではない。


被告Aⅰによる本件書籍1の無断出版
被告Aⅰが本件書籍1を出版したことは争わないが,被告Aⅱは本件独占的利用許諾契約を締結した認識がなく,原告に無断で違法に出版したわけではない。


被告Aⅰの故意

被告Aⅱが平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間被告Aⅰの代表取締役であったことは認めるが,被告Aⅱは本件独占的利用許諾契約を締結した認識がなく,被告Aⅰに原告の債権を侵害する故意はなかった。

損害
争う。


被告Aⅱの被告Aⅰ代表取締役としての不法行為責任
被告Aⅱが平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間被告Aⅰの代表取締役であったことは認めるが,被告Aⅰ及び被告Aⅱが損害賠償責任を負うとの主張は争う。


本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反
(ア)

契約の範囲が無限定であり,利用期間が極めて長いこと
本件独占的利用許諾契約の内容は,対象となる著作物につき,甲[被告Aⅱ]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物と定めている(甲6・1条)。これは,内容が包括的であるだけでなく,将来,被告Aⅱが著述する現在未完成の著作物まで一切含む点で,著作物の特定が抽象的,かつ,無限定である。
また,本件独占的利用許諾契約において,原告の利用期間は,本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満了するまで(甲6・6条),すなわち,著作者の死後50年(著作権法51条2項)と極めて長期間である。
以上から,本件独占的利用許諾契約の内容は,被告Aⅱにとって,過去のほぼすべての著作物と将来,著述するすべての著作物を,作成時から同人の死後50年まで,著作者自身が自由に利用できず,原告が独占的に利用することを許諾したという内容になっている。

もともとの利用許諾期間である3年間(乙イ2・5条1項)から,著作者の死後50年の期間に,被告Aⅱに不利益な方向に一方的に変更されており,不当に強力な拘束である。
(イ)

対価や許諾料の定めが一切ないこと
本件利用許諾契約の内容には,原告の利用許諾に対する対価の記

載条項がなく,また,原告が本著作物を利用した際の,被告Aⅱに対する許諾料の支払いについて,何らの定めがない。
この意味で,契約の主要な要素が欠落した契約書であるといえる。(ウ)

契約解除事由や中途解約権が明記されておらず,不利益を受ける一
方当事者を不当に長期間拘束する内容である。
上記(ア)ないし(ウ)から,本件使用許諾契約は,まさに人身拘束的,奴隷契約的な内容であり,公序良俗に違反し(民法第90条),無効な内容である。

本件独占的利用許諾契約の解除
(ア)

原告による被告Aⅱの本著作物利用妨害,連載執筆妨害
日本経済新聞連載妨害事件
平成21年,被告Aⅱは,親鸞聖人に関する作品を創作し,日刊新聞紙初の連載劇画として,同年5月,日本経済新聞において,結い親鸞と題する劇画作品の連載を開始した(乙イ3,4)。原告は,同年5月末,日本経済新聞社に面会を申し入れ,本件公正証書を示して,自らが著作権者であるとの虚偽の主張,刑事告訴する旨を告知し,連載の中止を要求した(乙イ5)。
このため,日本経済新聞は,被告Aⅱの連載を休止(実質中止終了)した(乙イ6)。


御用牙舞台上演中止要求事件
平成21年3月,星野事務所が,被告Aⅱの了解を得て,被告Aⅱ
の著作物である御用牙の舞台化上演(紀伊国屋サザンシアター)
を行おうとしたところ,原告は,自らが著作権者であると主張し,上演中止要求を行った(上演は行われた)。

原告は,平成21年頃,自らが本著作物の著作権者であり,原告の許諾がなければ,本著作物は出版することも,ドラマ化・舞台化などの二次利用することもできないと,関係各所に主張した。
このため,日本経済新聞社をはじめ,大手メディア・出版社等の
取引先は,原告とのトラブルに巻き込まれることを回避し,本著作物の出版や二次利用をやめてしまった。


上記のとおり,原告は,被告Aⅱによる本著作物の利用を妨害し,被告Aⅱの連載執筆活動を妨害する行動に出続けたのである。原告の行為は,被告Aⅱの意思に反し,同人に不利益を与える行為であり,信任関係を前提とする著作物利用許諾契約の信頼関係を破壊し,著作権者からの契約解除事由となることは明らかである。

(イ)

原告の報告義務違反
本件独占的利用許諾契約によれば,原告は,被告Aⅱから許諾された
本著作物を利用し,本件各事業を実施する場合,被告Aⅱにその内容を報告する義務を負っている(甲6・3条1項)。
しかるに,原告は,本件公正証書作成以降,被告Aⅱに対し,報告を行っていない。
CSデヴコとの映画化の話,フジテレビとの子連れ狼テレビド
ラマ化の話などは,被告Aⅱに一切の相談や報告なしに原告が進めたものである。
(ウ)被告Aⅱに対する印税不払及び報告のない出版許諾
本件公正証書(甲6,88)作成後の平成20年3月分から,本件基本合意書(甲8,75)の作成後の平成22年8月分までの間,原
告は,被告Aⅱに対して,一切印税を支払っていなかった。
また,原告は,平成25年8月29日付け準備書面(7)において主張するまで,被告Aⅱに対する報告や印税の支払をすることなく,出版許諾を行っていた。
(エ)

原告による出版拒否
原告は,平成23年9月12日,作画家(亡Bⅴ)の出版許諾を得
ていないことを理由に,被告Aⅰによる乾いて候の出版許諾申出
を拒否し,本件基本合意の解除を通知した(甲11)。しかし,被告Aⅰは,『乾いて候』及び『子連れ狼』の作画家である故Bⅴ先生の遺族(著作権承継者)から,適正に出版許諾を得ている(乙イ11)。したがって,原告による被告Aⅰへの上記非難は言いがかりであり,原告は,本件基本合意の解除通知を行うことで,被告Aⅱ及び被告Aⅰに対し,収入源の断絶を意図して,嫌がらせ行為を行ったものと考えられる。
(オ)原告による刑事告訴
原告は,被告Aⅱに対し,2億円詐取の詐欺罪で刑事告訴したと述べたり,被告Aⅰの従業員を使って,従わなければ,すぐに逮捕されるぞ

今,警察が会社の前にきています。小池先生はすぐに逃げてください

などと(虚偽の)脅かしを行い,被告Aⅱを精神的に追い詰めていった。しかし,平成21年12月の刑事告訴以来,3年6か月が経過しても,被告Aⅱに対し,警察署からの連絡は一切ない。著作物の利用許諾を受けている者が著作権者を刑事告訴すること自体,委任契約における信任関係を著しく破壊する加害行為である。(カ)原告による著作権譲渡の強要
原告は,被告Aⅱに対し,被告Aⅱの著作物の著作権を譲渡した旨の文書にサインするよう強要し,被告Aⅱは,これを断りつづける状態が
続いた。周りを取り囲まれた上,腕を押さえられて,ペンを握らされ,署名するよう強く威迫されたこともあった。乙イ15の1~3,乙イ16の1・2は,いずれも原告が作成し,被告Aⅱに署名押印を強要した文書である。
(キ)

映画化事業を妨害
原告は,被告Aⅴの映画化事業を妨害する意図のもと,形だけCSデヴコとの契約書(甲13,21)を2通作成した。
また,原告は,被告Aⅱ及び被告Aⅳがラッキー17と進めているハリウッドの実写映画化事業に対しても,CSデヴコとの契約を理由に中止を要求した。
このように,原告は,CSデヴコとの契約書(甲13,甲21)との契約書を理由に,被告Aⅴによるハリウッド映画化事業,被告Aⅳによる実写映画化事業を妨害する言動をとりつづけている。同言動は,著作権者である被告Aⅱとの関係で,信頼関係を破壊するものである。

(ク)

本件独占的利用許諾契約の解除
被告Aⅱは,平成23年9月15日,原告に対し,本件独占的利用許
諾契約の公序良俗違反による無効を通知し,念のため,不利益行為及び債務不履行(報告義務違反,印税支払義務違反)に基づき本件独占的利用許諾契約を解除する旨を通知した(乙イ7。以下本件解除通知
という。)。
本件独占的利用許諾契約は,著作権者である被告Aⅱと原告との間の準委任契約(民法656条)であり,被告Aⅱと原告との間の信頼関係を基礎として成り立っていることから,任意解除権(民法651条1項)が放棄されている場合でも,やむを得ない事由があるときは被告Aⅱからの解除が可能であると解される。

上記解除の意思表示は,民法651条1項に基づく任意解除及びやむを得ない事由に基づく解除の趣旨を含んでいる。
本件独占的利用許諾契約は,著作権者である被告Aⅱと原告との間の準委任契約(民法656条)であり,被告Aⅱと原告との間の信頼関係を基礎として成立するものであるから,民法541条以下による債務不履行を理由とする解除とは異なり,催告は不要である。
仮に催告が必要だとしても,相当期間の経過により,解除は有効である。
(2)

請求原因(3)

被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法

行為に基づく請求(請求の趣旨第3,4項)について

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等認否は上記(1)ア,イと同じ,抗弁は上記(1)キ,クと同じ。

被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡

被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡は認め,原告の本件

独占的利用権が侵害されたとの主張は争う。

被告AⅱのKK

TRIBEに対する著作権譲渡の登録が契約解除によ

り抹消されたことは認める。

被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡
被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡は認め,原告の本件独占的利用権が侵害されたとの主張は争う。


被告Aⅱの故意
被告Aⅱの故意は否認する。


ク損害について

原告の事業は不知,損害の主張は争う。被告Aⅱは原告の事業につき報告を受けていない。
なお,原告とCSデヴコとの間の取引基本合意書(甲13,22)には,
原告が署名位置の異なる2通の契約文書を所持していること(甲13の1,甲22),押印もなく署名も誰のものか判別できないこと,日付について,一般に米国人は月/日/年の順,すなわち12/10/2008
と書くのに2008/12/10と記載されていることなどの疑問点がある。
(3)

請求原因(4)

被告Aⅱの債務不履行に基づく請求(請求の趣旨第5

項)について

被告Aⅱと大成商事有限会社との間の著作物利用許諾契約
認める。


旧公正証書契約
(ア)

原告と被告Aⅱが旧公正証書契約を締結したことは否認する。
被告Aⅱは,原告との間で,平成19年6月11日付け著作物利用に関する契約書(乙イ2)を取り交わしたことはある。同契約書にも,原告主張の請求原因(4)イ(ア)②と同様の定めはあった(乙イ2・1条4項1号)。
(イ)

Aⅶ弁護士とAⅹが,原告及び被告Aⅱの代理人として旧公正証書
契約を締結したことは否認する。
甲37,甲87・18頁の委任状の記載によれば,各委任の内容は,別紙契約の趣旨の契約を締結する代理権ではなく,別紙契約の公正証書を作成する事実行為と考えるのが合理的である。
また,旧公正証書(甲14,87)では,本公証人は,当事者の嘱託により,次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取し,この証書を作成すると記載されており,Aⅹ及びAⅶ弁護士が代理権授与に基づき旧公正証書契約を締結していないことは明らかである。
(ウ)

旧公正証書(甲14,87)の作成の嘱託を委任する被告Aⅱから
Aⅹ宛ての委任状(甲37,甲87・18頁)があるが,被告Aⅱは,
Aⅹに代理権を授与したことはない。
被告Aⅱは,明確な記憶はないが,委任状(甲37,甲87・18頁)が真正なものであれば,おそらく平成19年6月11日付け著作物利用に関する契約書(乙イ2)を公正証書にするという説明を受けて,自署押印したものと思われる。
しかし,被告Aⅱは,Aⅹという人物を知らず,自署時に同委任状にAⅹの名前は記載されていなかったと思われる。
また,甲87・19~28頁の平成19年6月11日付け著作物利用に関する契約書は添付・契印されていなかったのではないかと思われる。
平成19年6月11日付け著作物に関する契約書(乙イ2)をよ
く読むと,そこでの本著作物の内容は「甲の著作物に係る別紙著作物目録記載の各著作物」とされ(ただし,別紙は添付されていな
い。),今後制作される著作物は含まれていない。
これに対し,旧公正証書(甲14,87)の本著作物の内容は「甲の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物と今後制作される著作物」が一緒に含められている。
すなわち,平成19年6月11日付け著作物利用に関する契約書
と旧公正証書とでは,本著作物の対象が同一ではなく,異なっている。
つまり,旧公正証書は,委任状に添付されている契約書(甲87・19~28頁)の内容と相違し,権限を踰越して作成されたことになる。さらに,平成19年6月11日付け著作物利用に関する契約書第
1条1項(1)には,乙(原告)がデジタル著作物を作成することと明記され,(2)ないし(4)においてもデジタル著作物が対象となっている。

すなわち,原告が被告Aⅱから独占的利用許諾を受けたのは,デジタル著作物に限定されたものであり,それ以外の通常の出版事業は,それまでどおり,被告Aⅰにおいて自由に行うことが当然の前提となっていた。
(エ)

被告Aⅱが,原告に無断で大成商事有限会社ないしPTSの利用許
諾期間を延長させない義務を負担したとの主張は争う。

被告AⅱのPTSに対する利用許諾期間延長
被告AⅱとPTSとの合意は認め,それが原告に対する債務不履行であるとの主張は争う。


旧公正証書契約が合意解約されたとの事実は否認する。被告Aⅱは,解約覚書(甲18,22)に押印しておらず,同覚書の印影が被告Aⅱの印章により顕出されたことも否認する。同覚書には,原告が押印位置の異なる2通の文書を所持していること(甲18,22)等の疑問がある。

損害
不知ないし争う。

(4)

請求原因(5)

被告Aⅱに対する金銭消費貸借契約に基づく請求(請求

の趣旨第6項)について

平成19年9月26日付け貸付
原告から3000万円の送金を受けたことは認め,これが貸金であること,返還約束は否認する。


平成19年10月17日付け貸付
Bⅰから1500万円の送金を受けたことは認め,これが原告による貸金であること,返還約束は否認する。


平成19年11月28日付け貸付
平成19年11月28日に原告から現金交付を受けたこと及び返還約束は不知(記憶にない。)。


原告が本件訴状により催告をしたことは認めるが,その効果は争う。

弁済の抗弁
仮に上記アないしウにおける原告に対する貸金債務が存在したのであれば,原告が督促しないとは考えられず,被告Aⅱは早期に返済しているはずである。


(5)

不当利得の主張は争う。
請求原因(6)

被告Aⅱに対する不当利得返還請求(請求の趣旨第7

項)について
被告Aⅱが原告から合計2億円の資金提供を受けた事実は認め,これが本件独占的利用権設定の対価であることは否認し,不当利得であるとの主張は争う。
当時の事実関係を前提にすると,上記2億円は,


原告が,被告Aⅱの名前を冠したマンガ家養成塾を開業するための承諾料・名称使用料,



原告が,乙イ2の内容(同契約書別紙の著作物についての3年間の独占的利用許諾)で,被告Aⅱの著作物の著作権の利用許諾を受け,二次使用等の権利許諾ビジネスを行うことの許諾料・契約金,



原告代表者の被告Aⅱ及び関係会社の窮状に対する個人的なパトロネージ(=芸術活動に対する精神的・経済的支援)

という複合的な性格を有する資金提供であったものと考えられる。なお,被告Aⅱは,原告から,役員報酬,劇画村塾の講師料を一切受領しておらず,④これら役務提供に対する包括的な前払金という意味合いもあったと思われる。
したがって,上記2億円の受領には法律上の原因があり,被告Aⅱが返還義務を負う理由はない。
被告Aⅱの悪意は否認する。被告Aⅱは,善意の利得者として,提供資
金を被告Aⅰその他の関係会社の運転資金(賃料・人件費)等に使っており,現に存する利益はない(民法703条)。
継続的契約の債務不履行による解除は,遡及効のない,将来に向かった解除と解されるから,被告Aⅱは原状回復義務を負うものではない上,過去の資金提供は原状回復の内容ではない。
(6)

相殺の抗弁(請求原因(1),(3)ないし(6)に対して)
請求原因(1),(3)ないし(6)で,原告の被告Aⅱに対する何らかの金銭請
求が認められる場合,被告Aⅱは,原告に対する以下の金銭債権を自働債権として,対当額で相殺する。

原告に対する損害賠償債権

(ア)

原告は,平成21年5月以降,被告Aⅱの執筆活動を妨害してき
た。特に,上記(1)ク(ア)の日本経済新聞連載妨害事件は,被告Aⅱに多大な経済的な損失を与えるものであった。

(イ)

平成21年,被告Aⅱは,親鸞聖人に関する作品を創作し,日刊新
聞紙初の連載劇画として,同年5月,日本経済新聞において,『結い親鸞』と題する劇画作品の連載を開始した(乙イ3,4)。
被告Aⅱは,原告に対しても,新作を創作活動中であることを話していたが,原告は,同年5月末,突然,日本経済新聞社に面会を申し入れ,本件公正証書の存在を示して,自らが著作権者であると主張して抗議し,連載の中止を要求した(乙イ5)。
このため,日本経済新聞は,被告Aⅱの連載を休止(実質中止終
了)した(乙イ6)。
(ウ)

原告による上記行為は,被告Aⅱの執筆活動に対する不当な妨害で
あり,民法上の不法行為(709条)を構成するものである。
(エ)

執筆妨害による被告Aⅱの直接の損害金額は,連載が支障なく継続
していた場合の原稿料収入及びその後の単行本出版時の印税収入であ
る。


連載期間最短1年(週1回連載=50回)



原稿料1頁3万円×1回4頁×50回=600万円



印税

新聞4頁=単行本16頁分
×50回=単行本800頁分=単行本3巻分
単行本定価650円×印税5%×10万部=325万円
325万円×3巻=975万円
※親鸞聖人を題材にしたテーマであり,浄土真宗門徒数から
考えると,1冊10万部以上と見込まれた。



(オ)

その他アニメ化・映画化等の二次使用料も発生し得た。
②と③の合計1575万円

原告による被告Aⅱに対する執筆妨害は,その後も断続的に続き,被告Aⅱは社会的信用を毀損された。
このため,被告Aⅱへの原稿依頼や過去の作品の出版及び二次使用依頼が激減する経済的損害を現在なお被り続けている。
平成21年6月から平成26年5月までの丸5年の間,少なくとも上記日経新聞の損害額(上記②及び③)の倍額の年間3000万円を下らない経済的損害が生じていると換算すれば,合計1億5000万円となる。

(カ)

以上のとおり,被告Aⅱは,原告に対し,(エ)及び(オ)の合計1億657
5万円の損害賠償債権を有しており,これを自働債権とし,被告Aⅱの原告に対する金銭債務が存在する場合は,以下の順位(各主たる請求と附帯請求の順位付けは,いずれも主たる請求を先順位とする。)で被告Aⅱの原告に対する金銭債務を受働債権として対当額で相殺する。


原告の被告Aⅱに対する消費貸借契約に基づく貸金返還請求権(5000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済までの年5分
の割合による遅延損害金。請求の趣旨第6項の主位的請求)


原告の被告Aⅱに対する著作物利用許諾契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権(8000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済までの年6分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第5項,一部請求)



原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(170万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第4項。)



原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(100万米ドル及びこれに対する平成24年8月8日から支払済までの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第3項。)



原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(4879万6038円及びこれに対する平成22年7月1日から支払済までの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第1項。)


原告の被告Aⅱに対する不当利得に基づく利得返還請求権(2億円及びうち5000万円に対する平成19年6月15日から,うち5000万円に対する同月21日から,うち5000万円に対する8月3日から,うち5000万円に対する同月21日から,支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第7項,請求の趣旨第1項ないし第5項の予備的請求)



原告の被告Aⅱに対する不当利得に基づく利得返還請求権(5000万円及びうち3000万円に対する平成19年9月27日から,うち1500万円に対する同年10月18日から,うち500万円に対する同年11月29日から,支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第6項の予備的請求)


原告に対する印税相当損害賠償債権

(ア)

原告は,被告Aⅱの承諾を得ず,何らの報告も行うことなく,被告
Aⅱ著作物の無断使用を継続している。
被告Aⅱに判明したものだけでも,以下のものがある。
①プレジデント社『新

上がってなンぼ!!』ムック,既刊3巻

小学館『実験人形ダミーオスカー』ムック,既刊7巻
宝島社DVDムック『子連れ狼テレビドラマ版』3冊
13冊分,1冊あたり50万円として合計650万円
②タトルモリ,ダークホース等海外出版許諾料
1000万円は下らない。
③平成20年3月から平成22年8月までの間の印税原告の主張によれば,1か月分の著者印税額は168万円とのことであるから,30か月分で合計5040万円となる。
(イ)

以上合計6690万円。
①及び②は,被告Aⅱの著作物を,原告が使用して利益を得ているこ
とから,被告Aⅱは,原告に対し,著作権法113条,114条2項又は3項に基づき,印税相当の損害賠償請求権を有する。
③についても,著作権法113条,114条3項に基づき,印税相当の損害賠償請求権を有する。
被告Aⅱは,平成26年9月25日の本件第16回弁論準備手続期日において陳述した同年7月25日付け被告Aⅱ準備書面(7)をもって,原告に対する上記印税債権(著作権侵害に基づく損害賠償請求権)6690万円を自働債権として,被告Aⅱの原告に対する金銭債務が存在する場合は,以下の順位(各主たる請求と附帯請求の順位付けは,いずれも主たる請求を先順位とする。)で被告Aⅱの原告に対する金銭債務を受働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をした(自働債権の法的根拠及び受働債権の充当順序は,同年10月28日付け被告Aⅱ準備書
面(9)で補充した。)。


原告の被告Aⅱに対する消費貸借契約に基づく貸金返還請求権(5000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済までの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第6項の主位的請求)



原告の被告Aⅱに対する著作物利用許諾契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権(8000万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済までの年6分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第5項,一部請求)



原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(170万円及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第4項。)



原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(100万米ドル及びこれに対する平成24年8月8日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第3項。)


原告の被告Aⅱに対する独占的利用許諾権侵害に基づく損害賠償請求権(4879万6038円及びこれに対する平成22年7月1日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第1項。)



原告の被告Aⅱに対する不当利得に基づく利得返還請求権(2億円及びうち5000万円に対する平成19年6月5日から,うち5000万円に対する同月21日から,うち5000万円に対する8月3日から,うち5000万円に対する同月21日から,支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第7項,請求の趣旨第1項ないし第5項の予備的請求)



原告の被告Aⅱに対する不当利得に基づく利得返還請求権(5000万円及びうち3000万円に対する平成19年9月27日から,う
ち1500万円に対する同年10月18日から,うち500万円に対する同年11月29日から,支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金。請求の趣旨第6項の予備的請求)

民法509条との関係
原告の被告Aⅱに対する請求の中には,不法行為(積極的債権侵害)に
基づく損害賠償請求があるが,本件では,以下の理由により,民法509条が適用されるべき場面ではないと考える。
第1に,原告の積極的債権侵害の主張は,いわゆる取引型不法行為であり,実質的には,原告主張の独占的利用許諾契約違反という契約責任と同一である。
第2に,民法509条の相殺禁止の趣旨は,回収困難な債権者が,債務者に対し,報復的な不法行為を行い,相殺を主張することを禁止し,不法行為の惹起を防止することにあるとされているところ,本件事案においては,不法行為とされる相殺主張者の行為は,取引内においてすでに完了しており,今後,不法行為が惹起される可能性がない。
第3に,被告Aⅱも,原告による連載及び執筆妨害の不法行為を主張しており,一連の社会的事実から発生した双方不法行為の主張であり,相殺を禁止すべき合理的理由がない。
3
請求原因に対する被告Aⅰの認否,抗弁
(1)

請求原因(1)

被告Aⅰ及び被告Aⅱの共同不法行為に基づく請求(請

求の趣旨第1項)について

本件独占的利用許諾契約
原告と被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約を締結したことは不知。

被告AⅱのAⅷに対する代理権授与等
不知。


被告Aⅰによる本件書籍1の無断出版

被告Aⅰが本件書籍1を出版したことは認め,それが原告の本件独占的利用権を侵害するとの主張は争う。
本件書籍1-55は,被告Aⅱは原案者となっているにすぎないため,被告Aⅱの著作物に当たらず,印税は発生していない。
本件書籍1-89,1-90の印税は,平成22年7月5日に支払済みである(乙ア1)。
本件書籍1-91~1-99は,被告Aⅱは責任編集(実際の編集業務には関わっていない。)に携わっただけであり,被告Aⅱの著作物に当たらず,印税は発生していない。

被告Aⅰの故意
平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間,被告Aⅰの代表取締役が被告Aⅱであったことは認めるが,被告Aⅰの故意は否認する。
被告Aⅰは,本件独占的利用許諾契約の存在を知らなかった。
債権が重複して存在すること自体は,一般的に容認されており,被告Aⅰは著作権者である被告Aⅱの許諾を得て本件書籍1の出版を行ったのであり,被告Aⅰが本件独占的利用許諾契約の存在を知っていたとしても,違法になるものではない。
また,本件独占的利用許諾契約の存在を知っていたとしても,それが無効だと思っていた場合には,債権侵害の故意は欠ける。


損害
争う。
なお,平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間に被告Aⅰが発行した本件書籍1の出版部数は,合計189万3800部であり,このうち96万4891部が返品されていることから,実際に販売された部数は92万8909部である(乙ア11)。被告Aⅱに発生した印
税額は,2854万9025円となる。

本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反,解除
本件独占的利用許諾契約が公序良俗違反により無効であること,被告Aⅱによる解除により無効となったことにつき,被告Aⅱの2(1)キ,クの主張を援用する。
被告Aⅰが被告Aⅱの解除権行使を援用することが権利濫用であるとの原告の主張は争う。

(2)

請求原因(2)

被告Aⅰ及び被告Aⅲの共同不法行為に基づく請求(請

求の趣旨第2項)について

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等認否は上記(1)ア,イと同じ,抗弁は上記(1)カと同じ。


被告Aⅰによる本件書籍2の無断出版
本件書籍2-1~2-3,2-11~2-19については,平成23年9月13日より前に出版しており,既に印税を支払済みである(乙ア2~4)。
本件書籍2-4~2-10,2-20については,重版として原告主張の時期に出版したが,平成23年9月13日以降に出版したものは本件書籍2-10,2-20のみであり,その余の6作品は平成23年9月13日より前に出版している。
本件書籍2-57は平成23年1月25日ではなく平成24年1月に,本件書籍2-58は平成23年2月10日ではなく平成24年2月に,本件書籍2-59は平成23年2月28日ではなく平成24年2月に発行している。
本件書籍2-95~2-104は,被告Aⅰの訴状送達日前日である平成24年7月26日以降の発行であるから,認否を行わない。訴状送達日以降の出版に基づく損害を,訴状において請求することはできない。
その余の本件書籍2を出版したことは認めるが,それが原告の本件独占的利用権を侵害するとの主張は争う。

被告Aⅰの故意
(ア)

本件基本合意の締結
被告Aⅰが原告と本件基本合意を締結したことは認める。

(イ)

被告Aⅰによる乾いて候の無断出版
被告Aⅰが乾いて候を出版したこと,原告に許諾依頼書(甲9の

1)を送付したことは認める。被告Aⅰは,平成23年6月28日,それまでの通例どおり,原告に許諾依頼書(甲9の1)を送付した後,乾いて候の作画家であるBⅴの相続人であるBⅵから許諾を得た
(乙イ11)。その後,被告Aⅰは,通常どおり,原告に対し出版許諾を求めたところ,原告は同出版について口頭で了承した。しかし,被告Aⅱが著作権譲渡の強要を拒否したため,原告は,同年9月12日,本件基本合意解除の意思表示をするとともに,個別出版契約書の取り交わしを拒否したものである。
(ウ)

本件基本合意の解除
原告が本件基本合意の解除の意思表示をしたことは認め,その効果は
争う。
(エ)

被告Aⅰの故意は否認する。
被告Aⅱは,平成23年9月15日,本件独占的利用許諾契約を解除
した(乙イ7)ため,被告Aⅰは,同日以降,原告が本著作物につきいかなる利用権も有していないものと認識していた。

損害
争う。
なお,平成23年9月13日から被告Aⅰに本件訴状が送達された前日である平成24年7月26日までの間に被告Aⅰで発行した本件書籍2の
出版部数は,合計121万6400部であり,このうち61万4263部が返品されていることから,実際に販売された部数は60万2137部である(乙ア12)。被告Aⅱに発生した印税額は,1969万0303円となる。
4
請求原因に対する被告Aⅳ及び被告Aⅲの認否,抗弁
(1)

請求原因(2)

被告Aⅰ及び被告Aⅲの共同不法行為に基づく請求(請

求の趣旨第2項)について

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等原告と被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約を締結したことは不知。

被告Aⅰによる本件書籍2の無断出版
被告Aⅰによる本件書籍2の出版は認め,それが原告の本件独占的利用権を侵害するとの主張は争う。


被告Aⅰの故意
(ア)

本件基本合意の締結
被告Aⅰが本件基本合意を締結したことは認める。

(イ)

被告Aⅰによる乾いて候の無断出版
被告Aⅰが乾いて候を出版したこと,原告に許諾依頼書(甲9の

1)を送付したことは認める。被告Aⅰは,平成23年6月28日,それまでの通例どおり,原告に許諾依頼書(甲9の1)を送付した後,乾いて候の作画家であるBⅴの相続人であるBⅵから許諾を得た
(乙イ11)。その後,被告Aⅰは,通常どおり,原告に対し出版許諾を求めたところ,原告は同出版について口頭で了承した。しかし,被告Aⅱが著作権譲渡の強要を拒否したため,原告は,同年9月12日,本件基本合意解除の意思表示をするとともに,個別出版契約書の取り交わしを拒否したものである。
(ウ)

本件基本合意の解除

原告が本件基本合意の解除の意思表示をしたことは認め,その効果は争う。
(エ)

被告Aⅰの故意は否認する。
被告Aⅱは,平成23年9月15日,本件独占的利用許諾契約を解除
した(乙イ7)ため,被告Aⅲは,同日以降,原告が本著作物につきいかなる利用権も有していないものと認識していた。

損害
争う。


被告Aⅲの被告Aⅰ代表取締役としての不法行為責任
被告Aⅲが平成23年9月13日から平成24年9月10日までの間,被告Aⅰの代表取締役を務めていたことは認めるが,被告Aⅲが不法行為責任を負うとの主張は争う。


本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反,解除
本件独占的利用許諾契約が公序良俗違反により無効であること,被告Aⅱによる解除により無効となったことにつき,被告Aⅱの2(1)キ,クの主張を援用する。

(2)

請求原因(3)

被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法

行為に基づく請求(請求の趣旨第3,4項)について

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等認否は上記(1)アと同じ,抗弁は上記(1)カと同じ。


被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡

認める。

被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡登録が抹消されたこ

とは認める。

被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡
被告Aⅳが被告Aⅱから本件7作品の著作権譲渡を受けたことは認め,
それにより原告の本件独占的利用権が侵害されたとの主張は争う。上記著作権譲渡登録は,平成23年9月15日の被告Aⅱによる本件独占的利用許諾契約解除の後になされたものであるから,何らの違法性も有しない。
また,被告Aⅲは,本件基本合意(甲8,75)締結の時点では,本件公正証書(甲6,88)自体を見たことはなく,その存在は,伝え聞いて認識していたが,内容の詳細については認識していなかった。
そして,被告Aⅲは,本件基本合意書(甲8,75)の存在及び内容については認識していたものであるところ,被告Aⅲは,被告Aⅱから,本件公正証書(甲6,88)では,あくまで,被告Aⅱが有する著作権に係る著作物に関しては,出版物に係る権利の使用権のみが原告に認められていて,被告Aⅱの著作物を,映画化したり,パチンコ・パチスロに利用したりする形での権利の使用は原告には認められていない旨,聞かされていた。そして,被告Aⅲが認識していた本件基本合意書(甲8,75)の存在及び内容,すなわち,本件基本合意書(甲8,75)においては,出版物に関する記載しか存在しなかったことから,被告Aⅲは,前記被告Aⅱの言をそのまま信じた。

キ被告Aⅳ及び被告Aⅲの故意について

平成23年5月10日当時,被告Aⅲが被告Aⅳの代表取締役を務め,被告Aⅰの取締役を務めていたことは認め,被告Aⅳ及び被告Aⅲの故意は否認する。

ク損害について

原告の事業は不知。被告Aⅳがラッキー17に権利を譲渡したことは認め,損害の主張は争う。
5
請求原因に対する被告Aⅴの認否,抗弁
(1)

請求原因(3)

被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法

行為に基づく請求(請求の趣旨第3,4項)について

本件独占的利用許諾契約及び被告AⅱからAⅷに対する代理権授与等原告と被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約を締結したことは不知。

被告AⅱからKK
KK

TRIBEに対する著作権譲渡

TRIBEが被告Aⅱから本件7作品の著作権譲渡を受けたこと

は認め,それにより原告の本件独占的利用権が侵害されたとの主張は争う。

被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡登録が抹消されたこ

とは認める。

被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡
不知。


KKTRIBE及び被告Aⅴの故意について

被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡(平成20年4月9

日)の当時,被告AⅴがKK

TRIBEの代表取締役であったこと,原

告の取締役であったことは認め,KK

TRIBE及び被告Aⅴの故意は

否認する。
被告Aⅴは,平成19年6月5日から平成20年10月14日までの間,原告の取締役として登記されているが,あくまでも名目的取締役であり,原告事務所には被告Aⅴの席はなく,役員報酬の支給もなく,原告の経営には参画していない。被告Aⅴは,原告の取締役在任中,原告の経営に関与することが期待されておらず,実際にも経営上の重要な情報の開示を受けたり,重要な決定に関する議論に加わったりしたこともなく,旧公正証書(甲14,87)及び本件公正証書(甲6,88)の存在及び内容については何も知らされていなかった。

ク損害について

事実は不知,損害の主張は争う。

本件7作品の著作権が被告AⅱからKK

TRIBEに譲渡されかつ登

録も完了したことにより,原告が本件7作品の利用権をKK

TRIBE

に対抗することができないこととなったことは著作権法上明白である。原告は,平成20年8月頃,被告AⅱからKK

TRIBEに対する本件7

作品の著作権譲渡の事実を知ったというのであり,その事実を知った上で,平成20年10月29日,CSデヴコとの間で取引基本合意を締結したことになる。よって,仮に当該譲渡行為が不法行為に該当するとしても,原告代表者が著作権譲渡及び登録の事実を知った後に,本件7作品の著作権がKK

TRIBEに帰属している状況下において,単に本件7作

品に含まれる著作権に係る一定の利用権を後日自ら取得した上でそれをCSデヴコに利用許諾して利益を得ることを期待したとしても,そのような期待利益は法的保護に値するものではなく,原告の損害とはならず,かつ仮に損害に該当するとしても被告Aⅴの行為との間に因果関係はない。キ
ケ被告Aⅴに対する原告の取締役としての責任(予備的請求)に

ついて
被告AⅱからKK

TRIBEに対する著作権譲渡の当時(平成20年

4月9日),被告Aⅴが原告の取締役であったことは認め,被告Aⅴが原告の取締役としての任務懈怠責任を負うとの主張は争う。
被告Aⅴは,上記譲渡の当時,本件独占的利用許諾契約の存在及び内容を知らなかった。
また,被告Aⅴは,原告の業務及び他の取締役の職務の執行等の監視を期待されていたものでもなく(単なる名目的取締役),原告事務所に自由に出入りできる環境にもなかった以上,本件独占的利用許諾契約の内容について知り得るべき状況にはなかったものであり,善管注意義務及び忠実義務を尽くす前提としての事実の認識がなく,かつ知り得る状況にもなかったことから,当該義務を尽くせなかったとしても過失はない。
(2)

消滅時効
原告は,被告Aⅴが,KK

TRIBEの代表取締役として,平成20年

4月9日,被告Aⅱから本件7作品の著作権の譲渡を受け,同年8月12日にその登録を受けた行為が不法行為に当たると主張する。
原告は,平成20年8月頃,上記著作権譲渡及びその登録の事実を知り,損害及び加害者を知った。
本訴の提起は平成24年7月4日であるから,原告の損害賠償請求権は,原告が損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったことにより,時効により消滅している。被告Aⅴは消滅時効を援用する。
(3)

本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反,解除
本件独占的利用許諾契約が公序良俗違反により無効であること,被告Aⅱ
による解除により無効となったことにつき,被告Aⅱの2(1)キ,クの主張を援用する。
6
抗弁に対する原告の認否,再抗弁
(1)

被告Aⅱの主張2(1)キ

本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反につ

いて

著作権の独占的使用権を許諾する契約は,著作権者は単に存在する著作物を使用させるのみであるから,対象となる著作物の範囲にかかわらず,人身拘束あるいは奴隷契約という要素は全くない。


著作権の存続期間の満了まで独占的利用権を許諾する契約は,著作権譲渡契約と比べても著作者に不利になるものではなく,公序良俗に違反する理由はない。


請求原因(6)ア~ウのとおり,原告は,被告Aⅱに対し,本件独占的利用権設定の対価として合計2億円を支払った。さらに,原告は,かかる対価を支払済みであったことから,被告Aⅱに印税を配分する必要はなかったものの,被告Aⅱが配分を求めたことから,平成22年7月1日に締結
した本件印税合意(甲66)においては,既存の著作物については原告が受領する著者印税の2割を原告が被告Aⅱに支払い,今後制作する著作物については原告が受領する原稿料の6割を原告が被告Aⅱに支払うこととしている。かかる取引実態を見ても,被告Aⅱは十分な経済的利益を受けており,被告Aⅱにとって不当な取引とはいえない。
(2)

被告Aⅱの主張2(1)ク
(ア)本件独占的利用許諾契約の解除について原告による被告Aⅱの本著作物利用妨害,連載執筆妨害につ
いて
(ア)

a日本経済新聞連載妨害事件について

被告Aⅱが日本経済新聞において結い親鸞の連載を開始したこ

と,原告が平成21年5月に日本経済新聞社に本件公正証書を示したこと,日本経済新聞が連載を中止したことは認め,原告が日本経済新聞社に面会を申し入れたこと,原告が著作権者であると主張して連載中止を要求したことは否認する。原告は,本件独占的利用許諾契約により,被告Aⅱが今後制作する著作物についても本件独占的利用権を有していたところ,被告Aⅱは日本経済新聞への連載について原告に何らの報告もしていなかったため,原告が日本経済新聞社に本件公正証書の存在及び内容を知らせたことはあるが,連載中止を要求してはおらず,日本経済新聞社が自ら連載を中止したものである。
(イ)

b「御用牙舞台上演中止要求事件」について

被告Aⅱが,原告に本件独占的利用権を許諾した作品である御用牙について,原告に無断で舞台上演を進めようとしていたため,平成20年12月18日に開催された原告の取締役会において,原告が窓口となって進めることを承認可決した(甲55)。
(ウ)

cについて
否認する。原告が,自らが本著作物の著作権者であり,原告の許諾が
なければ本著作物は出版することも二次利用することもできないと関係各所に主張したなどということはない。
(エ)

dについて
否認する。原告が,被告Aⅱの著作物の利用や連載執筆活動を妨害し
たことはない。

(イ)原告の報告義務違反について

本件独占的利用許諾契約上,原告が被告Aⅱに報告義務を負っていることは認め,その不履行があるとの事実は否認し,主張は争う。
原告は被告Aⅱに対して,原告の業務の内容を随時報告している。例えば,平成20年1月25日に開催された取締役会においては,平成20年度の原告の運営について,報告事項として,ビジネスモデル企画,ジャパンエキスポ,おやじファイト,キャラクター造形大学,プロダクション事業について報告されていて,被告Aⅱも出席している(甲39)。また,同年5月12日に開催された取締役会においては,報告事項として,キャラクターアートMANGAパリ展の実施,被告Aⅵ運営,キャラクター造形大学設立の推進,プロダクション事業の推進などについて報告されていて,被告Aⅱも出席している(甲42)。同年12月18日に開催された取締役会においては,第4号議案において,被告Aⅱの著作物の活用について審議され,具体的には①講談社インターナショナル出版による英文書籍JapanPopCultureEncyclopediaでの子連れ狼の作品紹介及びカラー画像掲載における資料提供,②被告Aⅱ作品の配信のeBOOKからの引継ぎ,④御用牙舞台の原告を窓口としての推進,④子連れ狼の映画化,⑤パチンコメーカーへの被告Aⅱ作品の売却などについて審議されていて,被告Aⅱも取締役会に出席している(甲55)。原告はこれらの取締役会に限らず被告Aⅱに対して業務の報告を行っていた。したがって,原告は本件独占的利用許諾契約上の報告義務に違反していない。

(ウ)被告Aⅱに対する印税不払及び報告のない出版許諾につい


原告と被告Aⅱは平成22年7月1日付け原稿料及び印税に関する合意書により印税の配分について合意したもので,それ以前に印税を配分する合意は存在しないから,それ以前に印税の不払いは存在せず,平成22年7月以降は印税の配分をしている。
また,原告は被告Aⅱに対して,上記イのとおり報告を行っている。エ
(エ)原告による出版拒否について

被告Aⅰが作画家遺族から出版許諾を得たことについては不知。

(オ)原告による刑事告訴について

否認する。

(カ)原告による著作権譲渡の強要について

否認する。

(キ)映画化事業を妨害について

否認する。

(ク)本件独占的利用許諾契約の解除について

被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約解除の意思表示をしたことは認め,その効力は争う。
(ア)

解除の意思表示について
著作権の独占的利用権を許諾する契約は,必ずしも事実行為を委託す
る契約とはいえず,民法651条1項の適用が認められる根拠が明らかではない。仮に適用される場合であっても,民法651条1項は任意規定であるところ,本件公正証書には有効期間の定めがあるから,その途中で任意に解除することはできない。さらに,任意解除権が放棄されていても解除をできるやむを得ない事由とはいかなる事由を指すかが不明確であり,債務不履行以外のやむを得ない事由による解除が認
められる根拠もその基準も明らかではない。
本件解除通知(乙イ7)が,民法651条1項に基づく任意解除及びやむを得ない事由に基づく解除の趣旨を含んでいるとの主張は争う。そのように解し得る記載はない。
(イ)

原告に帰責事由がないこと
原告は被告Aⅱに対して,可能な限り事業内容の報告を行っており,
仮に報告がなされないことがあったとしても,それは,被告Aⅱが,度重なる重大な契約違反により報告の前提となる信頼関係を破壊し,原告の取締役を退任することにより報告を受ける機会を放棄し,原告との連絡を避けていたからであって,専ら被告Aⅱに帰責事由があり,原告に帰責事由はない。
(ウ)

催告がなされていないこと
債務不履行に基づく解除のためには,相当期間を定めてその履行を催
告する必要があるところ,被告Aⅱは,本件解除通知に先立って,原告に対して,本件独占的利用許諾契約に基づく報告義務の履行を催告したことはない。よって,本件解除通知による解除は認められない。
(エ)

同時履行の再抗弁
被告Aⅱによる本件独占的利用許諾契約の解除が認められるとしても,
解除に基づく原状回復義務は同時履行の関係にあり(民法546条,533条),被告Aⅱが原状回復の履行を提供するまでは,原告は原状回復の履行を拒むことができるため,被告Aⅱが受領済みの本件独占的利用許諾契約の対価の返還について履行の提供を行うまでは,原告は本件独占的利用権を失わない。
(オ)

権利の濫用
本件解除通知による本件独占的利用許諾契約の無効及び解除の主張は,
①被告Aⅱが子連れ狼についてオプション契約を締結し,35万米
ドルを受領したことを正当化する,②被告Aⅰが本件基本合意書の解除後も出版を継続することを正当化する,という不当な目的のための手段である。
被告Aⅱは,本件独占的利用許諾契約につき重大な契約違反をして,これについて原告に虚偽の説明をしながら,原告に対して一方的に報告を求めており,原告がこれに応じないからといって,本件独占的利用許諾契約を解除し得るというのは,著しく不当である。また,被告Aⅰも,本件独占的利用許諾契約を前提とする本件基本合意につき重大な契約違反をして,本件基本合意を解除されても出版を継続しながら,被告Aⅱによる解除を理由にこれを正当化するのは,同様に著しく不当である。よって,被告Aⅱによる報告義務違反を理由とする解除権の行使は権利の濫用であり,また被告Aⅰがかかる解除権の行使を援用することも権利の濫用であって,許されない。
(3)

被告Aⅱの主張2(4)オ

弁済について

否認する。
(4)

被告Aⅱの主張2(6)

(ア)

相殺について

原告に対する損害賠償請求権について
被告Aⅱが日本経済新聞において結い親鸞の連載を開始したこと,
原告が日本経済新聞社に本件公正証書を示したこと,日本経済新聞が連載を休止したことは認め,原告が日本経済新聞社に面会を申し入れたこと,原告が著作権者であると主張して連載中止を要求したことは否認する。原告は,本件独占的利用許諾契約により,被告Aⅱが今後制作する著作物についても本件独占的利用権を有していたところ,被告Aⅱは日本経済新聞への連載について原告に何らの報告もしていなかったため,原告が日本経済新聞社に本件公正証書の存在及び内容を知らせたことはあるが,連載中止を要求してはおらず,日本経済新聞社が自ら連載を中止したもので
ある。
原告が被告Aⅱに対し,執筆活動の妨害又は社会的名誉の毀損をしたことはない。
(イ)

原告に対する印税相当損害賠償債権について
原告が被告Aⅱに支払うべき配分額から実際に支払った配分額を控除した残額は276万2021円である。


被告Aⅱは,旧公正証書契約及び本件独占的利用許諾契約により被告Aⅱの著作物について原告に対して独占的利用権を許諾したにもかかわらず,原告の許諾なくして,本著作物の利用を第三者に許諾する事業を行い,株式会社イーブックイニシアティブジャパン(以下イーブックという。)から,平成19年に164万0568円,平成20年に127万4388円,平成21年に114万2712円,平成22年に93万3984円,合計499万1652円を受領し,株式会社松文館(以下松文館という。)から,平成21年12月22日に76
万円,平成22年2月9日に99万円,同月25日に117万円,同年3月25日に120万円,同年4月14日に96万円,同年5月12日に48万円,同月17日に72万円,合計628万円を受領した。

被告Aⅱは故意により旧公正証書契約及び本件独占的利用許諾契約に違反したものであり,被告Aⅱが受領した金額は原告が得べかりし利益であるから,原告はかかる金額と同額の損害を被った。よって,原告は被告Aⅱに対して,債務不履行に基づく損害賠償として1127万1652円及びこれに対する被告Aⅱの各受領日から年5分の割合による遅延損害金の請求権を有する。


原告は,平成25年9月3日の本件第8回弁論準備手続において陳述した同年8月29日付け原告準備書面(7)をもって,被告Aⅱに対する上記の請求権を自働債権とし,被告Aⅱの原告に対する配分金残額に
ついての請求権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。
(5)

被告Aⅴの主張6(2)

消滅時効について

不法行為が継続して行われ,そのために損害も継続して発生する場合には,損害の継続発生する限り日々新しい不法行為に基づく損害として,各損害を知った時から別個に消滅時効が進行すると解される(大審院昭和15年12月14日判決・民集19巻2325頁)。KK

TRIBEが本

件7作品の著作権を保有し続けたことにより,原告はその期間において本件7作品を利用できなかったのであるから,被告Aⅱ及び被告Aⅴによる共同不法行為は,KK

TRIBEが本件7作品の著作権を保有していた

平成20年4月9日から平成23年4月27日までの間,継続して行われたものである。そして,訴え提起の3年前の日(平成21年7月4日)から平成23年4月27日までの間にKK

TRIBEが本件7作品の著作

権を保有していたことにより,原告はCSデヴコとの間の契約に基づく対価を受領できなかったのであるから,これによる損害賠償請求権の時効は完成していない。
第3
1
当裁判所の判断
被告Aⅰ及び被告Aⅱの共同不法行為に基づく請求(請求の趣旨第1項)について
(1)

本件独占的利用許諾契約の成立について
本件著作物利用契約書の成立の真否について
本件公正証書謄本(甲88)の30~52頁,56~78頁には,それぞれ,本件公正証書作成のための被告Aⅱ名義の委任状(甲88・29頁),原告の委任状(甲88・55頁)に引き続く形で,2008年(平成20年)1月25日付け著作物利用に関する契約書の写しが綴られている。

本件公正証書謄本に綴られた上記契約書の体裁に加え,原告代表者及び証人Aⅶによれば,公証役場には,上記各委任状原本と一体となった形で,被告Aⅱ及び原告の押印のある契約書原本がそれぞれ綴られているものと認められる。
そこで,まず,上記著作物利用に関する契約書(以下本件著作物利用契約書という。)が真正に成立したものか否かについて検討する。
甲99及び原告代表者によれば,本件著作物利用契約書のうち原告作成部分は,原告の意思に基づいて真正に成立したことが認められる。次に,本件公正証書謄本に綴られた被告Aⅱの印鑑登録証明書(甲88・53頁)の印影と対比すると,本件著作物利用契約書に押捺された被告Aⅱ名下の印影は,被告Aⅱの実印により顕出されたものと認められる。
したがって,当該印影は,被告Aⅱの意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるから,本件著作物利用契約書は被告Aⅱの意思に基づいて真正に成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項,最高裁昭和39年5月12日第三小法廷判決・民集18巻4号597頁〔以下昭和39年最判という。〕)。
そこで,上記各推定を覆すに足りる証拠があるか検討するに,被告Aⅱは,本件著作物利用契約書は見たこともなく,押印も合意もしていない,被告Aⅱの実印は原告の事務所内にあった被告Aⅱの執務スペースの机の引き出しに鍵をかけずに保管していたので,被告Aⅱの秘書や原告関係者が被告Aⅱの執務スペースに入ることは可能であった,また被告Aⅱの秘書であれば被告Aⅱの印鑑登録証明書を取ることは可能であった,などと供述(陳述書の記載と尋問結果〔なお,参照の便宜のため調書の該当頁を付記することがある。〕を併せて供述ということがある。以下,同
じ。)する(乙イ20・3頁,被告Aⅱ〔6~9頁〕)。
しかし,平成20年1月頃当時,被告Aⅱは,原告の取締役であり(甲1,25),被告Aⅰの代表取締役(甲2,4)及び株式會社蒼英社(以下蒼英社という。)の代表取締役(甲33)を務め,実印の重要性を十分に理解していたはずであるから,被告Aⅱの供述する実印の管理状況は不自然,不合理であり,原告が,被告Aⅱに対し,子連れ狼の翻案の同意書等への押印ないし署名を求めていたが,結局,被告Aⅱの押印のある書面は作成されなかったこと(乙イ15の1~3,乙イ16の1・2,原告代表者〔67頁〕)とも整合しないものであって,被告Aⅱの上記供述はにわかに信用することができず,上記各推定を覆すに足りる反証があったとは到底いえない。
したがって,本件著作物利用契約書に被告Aⅱが押印するのを目撃した旨のBⅲ,Bⅷ及びAⅶの各供述(甲91,92,99,原告代表者,証人Bⅷ,証人Aⅶ),被告Aⅱの実印の管理状況に関するCⅳの供述(甲97,証人Cⅳ)の信用性について検討するまでもなく,本件著作物利用契約書のうち被告Aⅱ作成部分は,被告Aⅱの意思に基づいて真正に成立したものと認められる。

本件著作物利用契約書による契約の成立について
真正に成立したことが認められる本件著作物利用契約書(甲88・30~52頁)によれば,原告と被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,同契約書にそれぞれ押印して,以下のa及びbを骨子とする著作物利用契約を締結したことが認められる。

被告Aⅱは,原告に対し,本著作物を利用させることを許諾し,
日本あるいは海外において次の各事項を独占的に実施することを許諾する(2条)。


原告が本著作物の全部又は一部を複製し,譲渡し,展示し,あ

るいは本著作物の全部又は一部を翻訳・翻案して著作物を作成し
て利用すること(著作権法21条,25条,26条の2,27条,28条に示す権利の許諾を含む。)。


本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は
一部を翻訳・翻案して作成された著作物を,インタラクティブ配信,コンテンツ配信等送信あるいは送信可能化事業を行うこと。



本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は
一部を翻訳・翻案して作成された著作物を,ゲーム,パチンコ,パチスロ及びこれらの周辺機器等,アミューズメント事業において利用すること(送信あるいは送信可能化事業も含む。)。



本著作物の全部又は一部を,あるいは本著作物の全部又は
一部を翻訳・翻案して作成された著作物を,商品化,商業化するマーチャンダイジング事業を実施すること。


同契約は,本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満
了するまでの間存続する(6条)。


本件著作物利用契約書により成立した契約の内容について
本件著作物利用契約書(甲88・30~52頁)にいう本著作物
は,その前文においては,甲[判決注:被告Aⅱ]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物(原注:以下『本著作物』という)とあり,本件著作物利用契約書別紙の著作物(本件公正証書に添付されているもののと同一であり,1843点に及ぶ。)を総称し,被告Aⅱが将来制作する著作物を含まないものとして定義されている。
これに対し,本件著作物利用契約書の1条においては,甲[判決注:被告Aⅱ]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物(原注:以下総称して『本著作物』という)とあり,原案,原作,脚本,構成を含むこ
とが明記されているほか,被告Aⅱが将来制作する著作物を含むものとして定義されている。
すなわち,本件著作物利用契約書においては,前文と1条とで著作物の定義に矛盾があるといえる。しかし,通常の読み方をもって本件著作物利用契約書を読めば,著作物利用許諾を定めた2条は1条の後に規定されているのであるから,そこでいう本著作物は,後に出てくる定義,すなわち,被告Aⅱが将来制作する著作物を含む1条の定義によるものであると合理的に理解することができるというべきである。
本件著作物利用契約書2条にいう本著作物は,本件公正証書と同
様,被告Aⅱが将来制作する著作物を含むのであるから,原告と被告Aⅱは,本件著作物利用契約書により,原告主張の本件独占的利用許諾契約(上記第2の1(1)ア(ア))を締結したことが認められる。

本件公正証書の成立の真否について
上記のとおり,本件著作物利用契約書から原告主張の本件独占的利用許諾契約の成立を認めることができるのであるから,本件公正証書(甲6,88)が真正に成立したか否かは結論に影響しないが,当事者の主張に鑑み,この点についても判断を示しておく。
本件公正証書謄本に綴られた被告Aⅱの印鑑登録証明書(甲88・53頁)の印影と対比すると,被告Aⅱ名義の委任状(甲88・29頁,乙イ1の1)に押捺された被告Aⅱ名下の印影は,被告Aⅱの実印により顕出されたものと認められる。
したがって,当該印影は,被告Aⅱの意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるから,上記委任状は被告Aⅱの意思に基づいて真正に成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項,昭和39年最判)。上記印影が被告Aⅱの意思に基づかずに顕出された可能性についての被
告Aⅱの供述はにわかに信用することができず,上記各推定を覆すに足りる反証があったとは到底いえない。
被告Aⅱが,①代理人であるBⅳ弁護士を通じて原告に送付した平成20年11月26日付け通知書(甲54)において,通知人は,貴社との間で,平成20年1月25日付け「著作物利用に関する契約を締結し,同契約の公正証書を同年2月18日付けで作成しました。この契約は,通知人の著作物について,その商品化に関する事業を貴社に委託するという委任契約であると理解しております。これは,貴社が十分に事業を展開してくれるものと見込んで契約したものです。」と記載し,本件公正証書が無権代理により作成された旨の記載が全くないこと,②平成22年1月26日付け確認書(甲64)及び同年7月1日付け本件印税合意書(甲66)において,本件公正証書による本件独占的利用許諾契約が有効に存続していることを確認していること,③本件訴訟における被告Aⅱ代理人であるBⅶ弁護士と相談して作成し,原告に送付した平成23年9月15日付け契約解除等通知書(乙イ7)においても,また,本件利用契約の成立に際しては,「Aⅷなる者が私の代理人として公証役場に出頭したようですが,そこで使用された私名義の委任状は,不正な方法により作出されたものであることも指摘しておきます。」との記載はあるものの,無権代理により無効である旨を明確に主張するものではなかったことは,いずれも,被告AⅱがAⅷに対し本件独占的利用許諾契約締結の代理権を授与していたという上記認定を裏付けるものである。
したがって,上記委任状は,被告Aⅱの意思に基づいて真正に成立したものと認められ,被告Aⅱは,当該委任状に添付された本件著作物利用契約書(甲88・30~52頁)と同一性のある範囲で,公正証書の作成を公証人に委託することをAⅷに委任したものと認められる。
原告は同旨をAⅶ弁護士に委任したものと認められ(甲88・55~7
8頁),本件公正証書は,被告Aⅱの代理人であるAⅷと,原告の代理人であるAⅶ弁護士による有効な委任に基づいて作成されたものと認められる。

Aⅷによる代理は実質的自己契約として無効となるかについて
被告Aⅱは,Aⅷは原告の従業員であるから,Aⅷが被告Aⅱの代理人として本件独占的利用許諾契約を締結するのは実質的に民法108条本文が規定する自己契約として無効であると主張する。
被告Aⅱは,本件著作物利用契約書により本人として本件独占的利用許諾契約を締結したことが認められるから,Aⅷを代理人とする本件公正証書による本件独占的利用許諾契約の有効性は結論に影響しない。
また,Aⅷが原告の従業員であったとしても,そのことから直ちに被告Aⅱを代理して原告との間の契約の代理人となることが制限されるものではなく,本件公正証書による本件独占的利用許諾契約が民法108条本文又はその類推適用により無効となることはない。


本件公正証書により成立した契約の内容について
本件公正証書においては,本件著作物利用契約書において前文と1条との間で矛盾していた本著作物の定義は,被告Aⅱが将来制作する著作物を含むものであることが明確にされ(1条),本件著作物利用契約書1条において,どの文章にかかるのか不明であった平成19年6月11日付けで甲乙間において締結され,の文章が削られるなど,本件著作物利用契約書よりも法律的に整序された文言となっている。
公証人は法律の専門家であることが要求され(公証人法12条,13条),無効の法律行為については公正証書を作成できないとされ(同法26条),法律行為につき公正証書を作成する場合に,その法律行為が有効であるかどうか,当事者が相当の考慮をしたかどうか又はその法律行為をする能力があるかどうかについて疑いがあるときは,関係人に注意をし,
かつ,その者に必要な説明をさせなければならないとされている(公証人法施行規則13条1項)。
このような公証人の職責に鑑みれば,委任状に添付された契約書に前後矛盾があるなどの疑義を発見したときは,これを当事者の合理的意思解釈の範囲内で法律的に整序して,法律的に疑義のない内容で公正証書を作成することは,公証人の職務の範囲内であると解されること,また,本件著作物利用契約書の各頁には原告及び被告Aⅱの印影が顕出されており,これらは,その体裁に照らし,字句の微修正に備えたいわゆる捨印の趣旨と考えられることからすれば,本件公正証書(甲6,88)は,各委任状による委任の範囲内で有効に作成されたものというべきである。
(2)

本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反性について
対価の有無について
平成19年6月14日には原告の取締役であった(甲1)Bⅱ名義で5000万円が,同月20日には原告の代表取締役であった(甲1)Bⅲ名義で5000万円が,同年8月2日には原告名義で5000万円が,同月20日には原告名義で5000万円が,それぞれ被告Aⅱの銀行口座に送金されている(甲7)。
平成19年度の原告の貸借対照表では,上記合計2億円につき,別口の合計5000万円と併せて保証金の名目で計上され(甲76),平成20年度及び21年度の貸借対照表では,上記2億円のみが保証金の名目で計上され(甲77,78),平成22年度の貸借対照表では,上記2億円は無形固定資産のうちの著作窓口権等の名目で計上され
(甲79の1),同年度の投資等の内訳書においては,上記2億円は被告Aⅱに関する著作物独占使用権の科目で計上され,小計欄には保証金計と記載されている(甲79の2)。
平成23年度の貸借対照表では,上記2億円は無形固定資産のうち
の著作権の名目で計上されている(甲80)。
証拠(甲76ないし80,90,99,原告代表者〔8~12,80~82頁〕,証人Aⅶ〔6,9,12~13頁〕,証人Bⅰ〔2~3,24~25,29~30頁〕)によれば,上記合計2億円は,本件独占的利用権の対価としての性質を有するものであったと認められる。
上記各送金の時点(平成19年6月14日~8月20日)においては,本件公正証書(平成20年2月15日付け。甲6,88)や本件著作物利用契約書(平成20年1月25日付け。甲88・30~52頁)はもちろん,その前身である旧公正証書(平成19年11月26日。甲14,87)も作成されていなかったし,旧公正証書の委任状に添付されていた2007年(平成19年)6月11日付け著作物利用に関する契約書(甲87・19~28頁,乙イ2)も,実際の作成は,平成19年9月10日に開催された劇画村塾(原告)の発足記念パーティー(甲32)の後であり(甲91・2頁,甲92・3頁,甲99・9頁,原告代表者〔35~38頁〕,証人Bⅷ〔13~16頁〕,証人Aⅶ〔7~8頁〕),上記各送金の時点ではいまだ作成されていなかったところである。
Bⅲと被告Aⅱは,被告Aⅱの作品を利用したコンテンツ・ビジネスを共同事業として行うことを合意して,平成19年6月5日,原告の商号を被告Aⅵ株式会社と変更し,被告Aⅱや被告Aⅴが株式を取得するとともに取締役に就任したという経緯が認められるところ(甲25~32,99,乙イ20,原告代表者,被告Aⅱ),原告が被告Aⅱの著作物を利用して利益を上げるためには,原告において被告Aⅱの著作物を独占的に利用できる地位を有することが大前提であり,被告Aⅱにおいてその著作物を原告に独占的に利用させ,原告がその対価を支払うということは,原告における共同事業の前提となっていたものと認められる。
被告Aⅱが原告に独占的に利用させる著作物の範囲,期間,原告の取得
する権利の態様が具体的にどうなるかについては,Bⅲとしては著作権譲渡を希望していた形跡もあり(甲90,92,99,原告代表者),旧公正証書添付の著作物利用に関する契約書及び旧公正証書(甲14,87,乙イ2)と,本件著作物利用契約書及び本件公正証書(甲6,88)との間でも変遷があって,上記各送金の時点で具体的に確定してはいなかったものと認められるが,後日正式に取り交わされる契約の詳細がどうなろうと,最終的にその対価に充てられるべきものという認識は,原告においても被告Aⅱにおいても有していたものと認めるのが相当である。被告Aⅱは,上記2億円は独占的利用権の対価ではなく,看板料,劇画村塾の塾長としての私への謝礼,今後のコンテンツ・ビジネスに協力していくことなどに対するお金の支払いではないか,などと供述する(乙イ20・4頁,被告Aⅱ〔3~5,45~46頁〕)。
しかし,前記のとおり,原告が被告Aⅱの著作物を利用したコンテンツ・ビジネスで利益を上げるためには,原告が被告Aⅱの著作物を独占的に利用できる地位を有することが大前提であり,被告Aⅱ自身,パチンコと映画以外のコンテンツについては被告Aⅱが原告に権利を許諾しなければならない認識はあったというのであるから(被告Aⅱ〔18~21頁〕),その権利許諾の対価が原告から支払われるべきことは被告Aⅱも認識していたはずであり,被告Aⅱの上記供述はにわかに信用することができない。

本件独占的利用許諾契約の対象となる著作物は,甲[被告Aⅱ]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物とされ(本件著作物利用契約書〔甲88・30頁〕1条,本件公正証書〔甲6,88〕1条),本件公正証書別紙の1843作品に加え,被告Aⅱが将来制作する全ての著作物を含み,その対象著作物の範囲は極めて広範である。

被告Aⅱは,その本著作物の全部について,複製,翻案,公衆送信等,ほぼあらゆる形態の利用について原告に独占的利用権を許諾し,他社に利用させることができなくなるという制約を被る。
独占的利用許諾の期間は,本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満了するまで(6条),すなわち,著作者である被告Aⅱの死後50年にわたるもので(著作権法51条2項),極めて長期間である。一般に,専属実演家契約などにおいては,当該専属契約期間中に制作される著作物の著作権を事前にかつ包括的に芸能事務所に帰属させることもしばしば行われており,将来制作される著作物について,事前にかつ包括的に独占的利用権を設定したとしても,そのことをもって直ちに対象著作物の特定性に欠けるとか,公序良俗に違反するとかいうことはできない。また,著作物の利用形態がほぼ全ての態様にわたっており,利用期間が極めて長期であるという点も,そのことは著作権譲渡契約においても同様であるから,直ちに公序良俗に違反するとはいえない。
しかし,専属実演家契約において上記のような事前かつ包括的な著作権譲渡が許容されているのは,同契約が更新があるとしても有期の契約であり,同契約の終了とともに(将来に向かって)効力を失うこと,同契約継続中は,芸能事務所から実演家に実演家報酬が支払われていること等の事情によるものと解される(東京高裁平成5年6月30日判決・判時1467号48頁,東京地裁平成13年7月18日判決・判時1788号64頁,東京地裁平成15年3月28日判決・判時1836号89頁,東京地裁平成25年3月8日判決・労判1075号77頁等参照)。
これに対して,本件独占的利用許諾契約は,被告Aⅱの死後50年まで存続するもので,当事者からの解除は一定の事由が発生したときに限られており(本件著作物利用契約書〔甲88・32頁〕7条,本件公正証書〔甲6,88〕7条),当事者が契約の拘束力から離脱する道は閉ざされ
ている。
また,原告は,本件独占的利用許諾契約を締結した後の平成22年2月9日に本件基本合意を(甲8,75),同年7月1日には本件印税合意を(甲66),それぞれ締結し,本件印税合意以降に原告が収受した印税の2割(被告Aⅱが将来制作する著作物については6割)を被告Aⅱに配分することを合意しているが,それ以前には,原告が印税を受領したとしても,被告Aⅱに対する配分義務を有しない旨主張している(原告準備書面(7)14頁)。
そうすると,本件著作物利用契約書により本件独占的利用許諾契約が締結された平成20年1月25日頃以降,平成22年6月30日までの約2年半の間は,被告Aⅱは,いくら著作物を創作しても,それを他社に利用させて印税を得ることができず,自己の著作物から利益を得る可能性を閉ざされていたものである。
前記のとおり,本件著作物利用契約書は,被告Aⅱが将来制作する著作物についても原告に独占的利用権を設定するものであり,被告Aⅱはかかる将来の著作物を含めて合意したものではあるが,被告Aⅱの署名により真正に成立したものと認められる,旧公正証書添付の2007年(平成19年)6月11日付け契約書(甲87・19~28頁。乙イ2はその別紙がないもの。以下旧著作物利用契約書という。)においては,原告に独占的利用権を設定する本著作物は甲の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物(原注:以下「本著作物という)」と,被告Aⅱが将来制作する著作物を含まない定義になっていたのであり,旧著作物利用契約書の作成から,本件著作物利用契約書,本件公正証書の作成に至るまでの間に,本著作物の定義が拡大され,将来の著作物を包含することになった点や,旧著作物利用契約書や旧公正証書では3年間(更新拒絶がない限り,その後は1年ごとの自動更新)とされていた契約期間(旧公正証
書〔甲14,87〕6条,旧著作物利用契約書〔甲87・21頁〕5条)が,被告Aⅱの死後50年まで大幅に延長された点について,原告から被告Aⅱに十分な説明がなされた形跡はない。
これらの事情を総合考慮すると,本件独占的利用許諾契約のうち,今後制作される著作物を除いた部分については公序良俗に違反するとはいえないが,今後制作される著作物につき,原告が印税配分義務を負わずに独占的利用権を取得することを内容とする部分については,公序良俗に違反し無効であると認めるのが相当である。
もっとも,本件独占的利用許諾契約締結後に創作された著作物であっても,原告と被告Aⅱとの間の本件印税合意により,原告が受領した印税の6割が被告Aⅱに支払われるものについては,上記のように被告Aⅱが自己の著作物から利益を受ける可能性を閉ざされるものではないので,公序良俗に違反するとまではいえない。
本件独占的利用許諾契約は,被告Aⅱに労務の提供を強制するものではないから,当事者の任意解約権が排除されているとしても,これが人身拘束的であるとか,奴隷契約的な内容であるとかいうことはできない。(3)

本件独占的利用許諾契約の解除について
被告Aⅱは,平成23年9月15日付けの本件解除通知(乙イ7)により,原告に対し,本件独占的利用許諾契約を解除する意思表示をしているから,その有効性について検討する。


日本経済新聞の連載を原告が妨害したとの点について
(ア)

平成21年5月30日,日本経済新聞において,被告Aⅱが原作

を,Bⅸが作画を担当した結い親鸞と題する劇画作品の連載が開

始された(乙イ3,5)。
(イ)

Bⅲは,平成21年5月30日,日本経済新聞社に面会を申し入

れ,同年6月1日,日本経済新聞社の法務室長及び代理人弁護士と面会
し,本件公正証書を示して,原告が著作権者であること,近く刑事告訴する予定であることなどを告知した(乙イ5)。
(ウ)

日本経済新聞社は,平成21年6月4日,上記結い親鸞の連

載を休止(実質中止終了)した(乙イ6)。
(エ)

Bⅲは,連載を中止するように申し入れたわけではなく,本件公正
証書を示して日本経済新聞社の判断に委ねたものであり,連載中止は日本経済新聞社の判断によるものである,原告が著作権を有しているとか,刑事告訴する予定であるとかは言っていない,などと供述する(甲99・21頁,原告代表者〔20~21,55~56頁〕)。
しかし,日本経済新聞社の代理人弁護士が積極的に虚偽の事実を記載する動機があるとは考えられないことと,以下に説示する事実経過を併せ考えれば,上記弁護士作成の報告書(乙イ5)の内容は,信用することができるというべきである。
原告は,被告Aⅱから著作権を譲り受けたとは認められないが,平成23年12月19日には,被告Aⅱから本著作物の著作権を譲り受けたと主張して被告Aⅰに対する仮処分を当庁に申し立て(当庁平成23年(ヨ)第22108号),これを平成24年5月11日に取り下げるまでその主張を維持していたのであるから(乙イ8,9,13,14),平成21年6月1日時点で,日本経済新聞社に対し,原告が著作権を有している旨発言していても不自然ではない。
また,原告は,平成21年3月19日の取締役会で被告Aⅱを刑事告訴する旨決議していたというのであるから(甲63・4頁,甲99・20頁),平成21年6月1日時点で,日本経済新聞社に対しその旨を発言していても不自然ではない。
Bⅲの供述のうち,上記認定に反する部分は採用しない。

上記結い親鸞は,本件著作物利用契約書締結以降に被告Aⅱが創

作した著作物を原作とする二次的著作物であり,かつ,本件印税合意(甲66)締結前のため,日本経済新聞社が原告の許諾を得て連載し,原告が日本経済新聞社から印税を受領しても,被告Aⅱに印税が配分されない著作物であるから,上記(2)で検討したところによれば,公序良俗違反により本件独占的利用権が及ばない著作物である。
そうすると,そのような著作物の利用に関し,Bⅲが日本経済新聞社に本件公正証書を示し,自己が著作権を有しているなどと告知したことは,事後的,客観的にみれば,被告Aⅱの正当な経済活動を妨害したものといわざるを得ない。
このような原告の行為は,原告と被告Aⅱとの間の信頼関係を破壊するに十分なものであり,本件独占的利用許諾契約にいう本契約を継続しがたい重大な背信行為(本件公正証書〔甲6,88〕7条1項1号,本件著作物利用契約書〔甲88・32頁〕7条1項1号)に当たるというべきであるから,本件解除通知(乙イ7)による本件解除は有効である。エ
原告は,被告Aⅱによる本件独占的利用許諾契約の解除が認められるとしても,解除に基づく原状回復義務は同時履行の関係にあり(民法546条,533条),被告Aⅱが原状回復の履行を提供するまでは,原告は原状回復の履行を拒むことができるため,被告Aⅱが受領済みの本件独占的利用許諾契約の対価の返還について履行の提供を行うまでは,原告は本件独占的利用権を失わない,と主張する。
しかし,本件独占的利用権は原告の被告Aⅱに対する債権であって,解除に伴う原状回復義務につき特に履行を観念する余地はないから,本件独占的利用権の消滅が被告Aⅱの対価の返還と同時履行関係にあるということはできない。


原告は,被告Aⅱによる解除権の行使は権利の濫用であると主張する。法的に本件独占的利用許諾権の及ばない結い親鸞の連載開始の他

に,本件独占的利用権の及ぶ著作物についても,被告Aⅱによる本件独占的利用許諾契約違反の行為が多々存在していたことは,後に認定するとおりである。
しかし,それらの事情を考慮したとしても,被告Aⅱからの解除が権利濫用として許されなくなるほどの事情があるとまではいえない。

本件解除通知(乙イ7)は,平成23年9月15日付けで作成され,同日内容証明郵便として差し出されているところ,遅くとも同月18日までには原告に到達したものと認められる(原告は,本件解除通知が到達したことを争っていない。なお,本件著作物利用契約書〔甲88・32頁〕7条2項,本件公正証書〔甲6,88〕7条2項には,解除通知が到達しなかった場合であっても,発送日から3日を経過した日に到達したものとみなされる旨の規定がある。)。


以上によれば,本件解除通知による解除は有効であるから,平成23年9月18日をもって,原告の本件独占的利用権は消滅した。

(4)

被告Aⅰによる本件書籍1の出版について
被告Aⅰが,平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間に出版した本件書籍1の定価,発行年月,発行部数,納品部数,返品部数は別紙1出版物一覧(平成20年1月25日から平成22年6月30日まで)のとおりである(乙ア11)。なお,発行部数よりも納品部数の方が大きいものがあるが,返品された書籍を再び納品したものがあるためである(被告Aⅲ〔21頁〕,弁論の全趣旨)。
上記(3)のとおり,本件解除通知(乙イ7)による解除は有効であるが,かかる解除は,将来に向かってのみ効力を有し,解除前に本件独占的利用権を侵害していた行為が遡って適法となるものではないというべきである。
そこで,本件著作物利用契約書による本件独占的利用許諾契約の締結
(平成20年1月25日頃)から本件解除通知による解除(平成23年9月18日)の前である平成22年6月30日までの間の被告Aⅰによる本件書籍1の出版が本件独占的利用権を侵害するか,個別に検討する。イ
本件書籍1-17,1-55,1-63,1-66について
上記(2)のとおり,平成20年1月25日頃の本件著作物利用契約書締結以降に今後制作される著作物であって,原告が印税配分義務を負わない著作物については,本件独占的利用許諾契約は公序良俗に反し一部無効であって本件独占的利用権が及ばないと解されるところ,本件書籍1-17,1-55,1-63,1-66は,本件公正証書別紙の著作物の複製物でも二次的著作物でもなく,本件著作物利用契約書締結以降に制作された著作物であり(弁論の全趣旨〔平成27年1月21日第19回弁論準備手続調書における被告Aⅰの陳述〕),原告が出版を許諾し被告Aⅰから印税を受領したとしても被告Aⅱに対する印税配分義務を負わない著作物であるから,本件独占的利用権は及ばない。
本件書籍1-17,1-66はそして-子連れ狼刺客の子の3巻

と4巻であるところ,子連れ狼自体は,本件公正証書別紙に記載があり(甲88・11頁1番など),その二次的著作物には本件独占的利用権が及ぶところ,被告Aⅰは,本件書籍1-17は平成20年5月に,本件書籍1-66は平成21年5月に,それぞれ,作画家も一新し,従来とは全く異なる新たな作品として創作されたもので,本件公正証書別紙の著作物に由来するものでないと主張しており(平成27年1月21日第19回弁論準備手続調書における被告Aⅰの陳述),両書籍が本件公正証書別紙の著作物の複製物又は二次的著作物であると認めるに足りる証拠もないから,両書籍が本件独占的利用権の対象となる著作物であるとは認められない。
本件書籍1-55は,マギー’s犬Jr.と題する書籍であるとこ
ろ,マギー’s犬自体は,本件公正証書別紙に記載があり(甲88・20頁985番など),その二次的著作物には本件独占的利用権が及ぶところ,被告Aⅲによれば,本件書籍1-55は,新しい原作者の下で新たに創作されたもので,被告Aⅱのマギー’s犬の原作は使用されておらず,被告Aⅱは原案者として表示され,被告Aⅱに対する印税の支払も行っていない,というのであり(被告Aⅲ〔45頁〕),本件書籍1-55が本件公正証書別紙の著作物の複製物又は二次的著作物であると認めるに足りる証拠もないから,同書籍が本件独占的利用権の対象となる著作物であるとは認められない。

本件書籍1-89,1-90について
本件書籍1-89は弐十手物語「弐十手物語猿火無情編,本件書籍1-90は
愛憎人形編」と題する書籍であるところ,乙ア1,5,6

によれば,被告Aⅰは,平成22年3月9日,両書籍について原告と個別出版契約書を取り交わし,同年7月5日印税を原告に支払済みであると認められるから,両書籍を被告Aⅰが原告に無断で出版したとは認められない。

本件書籍1-91~1-99について
本件書籍1-91~1-99は,大阪芸術大学大学漫画の9巻~15巻,大阪芸術大学河南文藝の5巻,6巻であるが,被告Aⅰによれば,被告Aⅱは責任編集として発行に携わっただけで,被告Aⅱの著作物ではなく,印税も発生しないと主張しているところ,これらの書籍が被告Aⅱの著作物であると認めるに足りる証拠はない。
したがって,これらの書籍が本件独占的利用権の対象となる著作物であるとは認められない(原告は,これらの書籍からは得べかりし印税額を主張しておらず,損害の計算から除外している。)。


本件7作品に由来する書籍について

本件書籍1の中には,平成20年8月12日,KK

TRIBEが著作

権譲渡登録を受けた本件7作品(甲12)に由来するとみられる書籍が存在する(本件書籍1-25など)。
しかし,原告と被告Aⅱとの間の本件独占的利用許諾契約は債権契約として引き続き有効であるから,少なくとも被告Aⅱや,本件独占的利用権の存在を知りつつ故意によりその債権を侵害する者との関係においては,原告は独占的利用権の侵害を主張することができると解される。

上記ア~エ(別紙1出版物一覧(平成20年1月25日から平成22年6月30日まで)の最右欄に侵害×を付したもの)を除く,本件書籍1-1~1-16,1-18~1-54,1-56~1-62,1-64,1-65,1-67~1-88は,いずれも本件公正証書別紙の著作物の複製物又は二次的著作物であると認められるから(弁論の全趣旨),本件独占的利用権の対象となる著作物である。
被告Aⅰは,原告に無断でこれらの書籍を出版したのであるから,原告はこれにより本件独占的利用権を侵害されたものと認められる。

(5)

被告Aⅰの故意
本件書籍1(上記(4)ア~エを除く。)が出版された平成20年1月25
日から平成22年6月30日までの間,被告Aⅰの代表取締役は被告Aⅱであった(甲4)。
上記(1)で認定したとおり,被告Aⅱは,自らの意思に基づいて本件独占的利用許諾契約を締結し,その内容を認識していたものと認められるから,原告に無断で本件書籍1(上記(4)ア~エを除く。)を出版することが原告の本件独占的利用権を侵害することを認識していたものと認められる。
被告Aⅱ及び被告Aⅰは,本件公正証書の存在を知らなかったとか,本件独占的利用許諾契約は無効と認識していたとか主張し,被告Aⅱはこれ
に沿う供述をする(乙イ20,被告Aⅱ本人)。
しかし,本件著作物利用契約書及び本件公正証書による本件独占的利用許諾契約が原告と被告Aⅱとの間で有効に成立していること,被告Aⅱに支払われた2億円が本件独占的利用権の対価であることは前記のとおりであり,そのことは被告Aⅱ(及び被告Aⅱを代表者とする被告Aⅰ)も認識していたと認められるから,そのような認識を前提とすると,被告Aⅱ(及び被告Aⅱを代表者とする被告Aⅰ)が本件独占的利用許諾契約を全部無効と認識したことに合理性は認められず,債権侵害の故意を阻却するものとはいえない。
本件独占的利用権は債権であって,その侵害に対する損害賠償も本来は契約当事者である被告Aⅱに対してしか請求できないところであるが,被告Aⅰは,被告Aⅱが代表者を務め,被告Aⅱと密接な関係にある者であり,本件書籍1の出版が本件独占的利用権を侵害することを認識していた者であるから,原告は,契約当事者でない被告Aⅰによる本件独占的利用権の侵害に対しても損害賠償を請求することができる。
(6)

原告の得べかりし印税相当額について
被告Aⅰの本件独占的利用権を侵害する本件書籍1(上記(4)ア~エを除
く。)の無断出版により,原告は,被告Aⅰから得べかりし印税相当額の損害を被ったということができる。
被告Aⅰが個別出版契約書で適法に原告から許諾を得て出版した場合の印税額は,①各巻の発行部数の50%に,定価(消費税込み)の5%に相当する金額を乗じた金額を前払保証金として支払い,②50%を超えて売れたときは,超えた部数に定価(消費税込み)の5%に相当する金額を乗じた金額を追加で支払う,③50%を超えなかったときは清算しない,④初版1刷に際し100部について印税を免除する,⑤原告は受領した印税の20%を被告Aⅱに支払う,というものであった(乙ア5~10)。
上記⑤の点については,本件書籍1の出版は本件印税合意の前であり,原告が受領した印税を被告Aⅱに配分する義務は存在しないから,得べかりし印税から20%を控除することはしない。
そうすると,乙ア11の発行部数から印税免除分100部を控除した部数の50%か,納品部数から返品部数及び印税免除分100
部を控除した実売部数のどちらか大きい方を基準部数として,これに乙ア11の定価の5%を乗じた金額が,原告の得べかりし印税相当額ということになる(本件書籍1-89,1-90については乙ア1で印税が支払われているが,基準部数は乙ア11の発行部数から印税免除分100部を控除した部数に0.5を乗じた部数となっており,単価は乙ア11の定価がそのまま定価(消費税込み)となっている。)。
本件書籍1(上記(4)ア~エを除く。)について原告の得べかりし印税相当額を計算すると,別紙1のとおり,合計2777万5208円となる(1円未満四捨五入)。
(7)

被告Aⅱの責任
被告Aⅱは,被告Aⅰの代表取締役として,本件書籍1(上記(4)ア~エ
を除く。)の出版を決定し,その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,被告Aⅰがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅱは,被告Aⅰと連帯して共同不法行為責任を負う(最高裁昭和49年2月28日判決・集民111号235頁)。
(8)

被告Aⅱによる相殺について
被告Aⅱは相殺を主張しているが,請求の趣旨第1項で請求されている
のは不法行為に基づく損害賠償債務であるから,相殺をもって対抗することはできない(民法509条)。
(9)

小括
以上によれば,原告の請求の趣旨第1項に係る請求は,被告Aⅰ及び被
告Aⅱに対し,本件書籍1(上記(4)ア~エを除く。)を原告に無断で出版して本件独占的利用権を侵害したことについて,民法709条,719条に基づき,連帯して2777万5208円及びこれに対する不法行為の後の日である平成22年7月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余はいずれも理由がない。
2
被告Aⅰ及び被告Aⅲの共同不法行為に基づく請求(請求の趣旨第2項)について
(1)

本件著作物利用契約書及び本件公正証書による本件独占的利用許諾契約
が原告と被告Aⅱとの間で有効に成立していること,本件独占的利用許諾契約が一部無効であること,本件解除通知による解除が有効であることは,上記1で判断したとおりである。
(2)

被告Aⅰによる本件書籍2の出版について
原告は,平成23年9月13日から平成24年9月10日までの間の本件書籍2の出版が本件独占的利用権を侵害すると主張する。
しかし,本件解除通知による解除は(将来に向かって)有効であるから,本件解除通知が原告に到達した平成23年9月18日以降の本著作物の出版は,本件独占的利用権を侵害するものではない。
原告の主張によれば,本件書籍2のうち,平成23年9月18日までに発行されたものは,本件書籍2-1~2-9,2-11~2-20,2--57~2-59,2-72であるから,これらについて本件独占的利用権侵害の成否を判断する。


本件書籍2-57~2-59,2-72について
本件書籍2-57はオークション・ハウス7チョウロンギ・ロード編と題する書籍であり,原告は,平成23年1月25日に発行されたものと主張する(原告準備書面(11)8頁の57番)。

しかし,被告Aⅰの作成した乙ア12では,本件書籍2-57の発行年月は平成24年1月となっており(乙ア12の58番。31番の重複のため番号がずれている。),原告主張の発行日を認めるに足りる証拠はない。
本件書籍2-58は子連れ狼5雲龍風虎編と題する書籍であ

り,原告は,平成23年2月10日に発行されたものと主張する(原告準備書面(11)9頁の58番)。
しかし,被告Aⅰの作成した乙ア12では,本件書籍2-58の発行年月は平成24年2月となっており(乙ア12の59番),原告主張の発行日を認めるに足りる証拠はない。
本件書籍2-59はオークション・ハウス8レンブラント企業体編と題する書籍であり,原告は,平成23年2月28日に発行されたものと主張する(原告準備書面(11)9頁の59番)。
しかし,被告Aⅰの作成した乙ア12では,本件書籍2-59の発行年月は平成24年2月となっており(乙ア12の60番),原告主張の発行日を認めるに足りる証拠はない。
本件書籍2-72は,Aⅱのキャラクター新論~ソーシャルメディアが動かすキャラクターの力と題する書籍であり,原告は,平成23年5月25日に発行されたものと主張する(原告準備書面(11)9頁の72番)。
しかし,被告Aⅰの作成した乙ア12では,本件書籍2-72の発行年月は平成24年3月となっており(乙ア12の73番),原告主張の発行日を認めるに足りる証拠はない。
したがって,これらの書籍について,本件解除通知到達前の発行であるとは認められないから,本件独占的利用権を侵害するものとは認められない。


本件書籍2-1~2-3,2-11~2-19について
乙ア2~4によれば,本件書籍2-1~2-3,2-11~2-19については被告Aⅰから原告に印税が支払われていることが認められ,このことからすれば,これらの書籍については,被告Aⅰは原告との間で個別出版契約書を取り交わして原告から出版を許諾されていたものと推認されるから,これらの書籍については,本件独占的利用権を侵害するものとは認められない。


本件書籍2-4~2-9,2-20について
被告Aⅰは,本件書籍2-4~2-9,2-20は重版であると主張する(被告Aⅰ第4準備書面1~2頁)。
これが重版であり,原告の許諾に基づいて出版されたものと認めるためには,その初版分につき被告Aⅰが原告との間で個別出版契約書を取り交わしていることを立証する必要があるところ,被告Aⅰはそのような立証をしない(なお,仮に初版分について個別出版契約書を取り交わし,初版分の印税を支払っていたとしても,重版分について原告に追加印税を支払っていないときは,不法行為は成立しないものの,印税債務の不履行により同額の債務を負担していることになる。)。
結局,これらの書籍の出版が原告の許諾を受けたものであることについて立証があったということはできず,これらの書籍は本件公正証書別紙の著作物の複製物又は二次的著作物であって本件独占的利用権が及ぶと認められるから(弁論の全趣旨),これらの書籍の出版は,本件独占的利用権を侵害するものと認めるのが相当である。


以上によれば,本件書籍2のうち,本件書籍2-4~2-9,2-20の7点の出版は,原告の独占的利用権を侵害するものと認められる。
(3)

被告Aⅰの故意
上記(2)オの7点の出版は,乙ア12によれば平成23年7月から9月
の間(原告の主張によれば,平成23年7月11日から同年9月13日までの間)である。
この時期の被告Aⅰの代表取締役は,平成23年5月30日に被告Aⅱから代表取締役を交替した被告Aⅲであった(甲2)。

被告Aⅲが本件独占的利用権の存在を認識していたことについて
被告Aⅰは,平成22年2月9日付けで原告,被告Aⅱ及び被告Aⅰとの間で締結された本件基本合意(甲8,75)及びこれに基づいて原告との間で個別に取り交わす出版契約書に基づいて被告Aⅱの著作物の出版を行ってきたのであるから,原告と被告Aⅱとの間に本件独占的利用許諾契約が締結されており,原告が本件独占的利用権を有していることは認識していたものと認められ,このような認識は,被告Aⅰの代表取締役に就任した被告Aⅲにも引き継がれたものと認められる。


原告による本件基本合意の解除について
被告Aⅲは,被告Aⅰの代表者として,平成23年6月28日付け及び同年7月6日付け許諾依頼書(甲9,乙ウ7)により,乾いて候及び子連れ狼について,独占的利用権を有する原告に個別出版契約書による出版許諾を求めているが,このことは,被告Aⅲが原告の独占的利用権を認識していたことを裏付けるものである。
これら被告Aⅱが原作を,亡Bⅴが作画を担当して制作された著作物の出版について,原告は,作画家である亡Bⅴの著作権管理者の許諾を得ていないと主張して,出版許諾をせず,平成23年9月12日付け催告書(甲11)により,本件基本合意を解除する意思表示をした。
しかし,乙イ11によれば,被告Aⅰは,平成23年8月29日,亡Bⅴの相続人であるBⅵから,乾いて候第1巻について出版許諾を受
けていたことが認められるから,原告による本件基本合意の解除は,その前提となる重要な事実を誤認したものであった(もっとも,Bⅵが子連れ狼第1巻について被告Aⅰに出版許諾を与えたのは平成23年11
月21日になってのことであり〔乙イ12〕,許諾依頼書にあった他の著作物について出版許諾があった証拠はない。また,許諾依頼書送付時点では亡Bⅴ著作権管理者の許諾が得られていなかったことに変わりはない。)。
被告Aⅰは,原告による本件基本合意の解除があった後,原告による許諾がないまま被告Aⅱ著作物の出版を強行しているが,原告が本件独占的利用権を有している以上,原告の許諾のない本著作物の出版は本件独占的利用権を侵害するものといわざるを得ず,仮に亡Bⅴ著作権管理者や被告Aⅱの許諾があったとしても,それが適法になるものではない。
被告Aⅰの代表取締役であった被告Aⅲは,原告が本件独占的利用権を有していることを認識しながら,故意により本件独占的利用権を侵害したものであって,その故意を阻却するような事情は認められない。

被告Aⅰが,平成23年5月30日まで被告Aⅱが代表取締役を務めていた会社であり,被告Aⅱと密接な関係にある会社であること,被告Aⅰが本件書籍2の出版が本件独占的利用権を侵害することを認識していたことなどからすれば,原告は,契約当事者でない被告Aⅰに対しても,本件独占的利用権の侵害について,損害賠償を請求することができる。
(4)

原告の得べかりし印税相当額について
被告Aⅰの本件独占的利用権を侵害する本件書籍2-4~2-9,2-2
0の無断出版により,原告は,被告Aⅰから得べかりし印税相当額の損害を被ったということができる。
上記1(6)と同様に計算すると,本件書籍2-4~2-9,2-20についての印税相当額は,別紙2の印税額欄記載のとおり,合計101万1600円となる。
本件書籍1については,本件印税合意前の出版であったため,被告Aⅱに
対する配分額を差し引くことはしなかったが,本件書籍2の出版は,いずれも本件印税合意の後であるから,被告Aⅰが原告の許諾を得て本件書籍2を出版し,原告が印税を受領した場合には,その20%を被告Aⅱに配分する義務があったものである。
したがって,原告の得べかりし印税相当額は,被告Aⅱに配分されるべき20%を控除し,別紙2の×0.8欄記載のとおり,合計80万9280円となる。
(5)

被告Aⅲの責任
被告Aⅲは,被告Aⅰの代表取締役として,本件書籍2-4~2-9,2
-20の出版を決定し,その職務を行うにつき不法行為をして原告に損害を加えたため,被告Aⅰがその賠償責任を負うものであるから,代表取締役である被告Aⅲは,被告Aⅰと連帯して不法行為責任を負う。
(6)

小括
以上によれば,原告の請求の趣旨第2項に係る請求は,被告Aⅰ及び被
告Aⅲに対し,本件書籍2-4~2-9,2-20を原告に無断で出版して本件独占的利用権を侵害したことについて,民法709条,719条に基づき,連帯して80万9280円及びこれに対する,被告Aⅰについては,不法行為の後の日であり,被告Aⅰに対する訴状送達の日である平成24年7月27日から(平成26年12月16日付け訴え変更の申立書により請求が拡張されているが,上記認定の不法行為に関する限り,訴状送達日が不法行為の後の日であることは明らかである。),被告Aⅲについては,不法行為の後の日であり,被告Aⅲに対する訴状送達の日である平成24年7月28日から,各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余はいずれも理由がない。
3
被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法行為に基づく請求
(請求の趣旨第3,4項)について
(1)

後掲の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
平成18年4月12日頃,被告Aⅴは,被告Aⅱを100%株主とする米国法人KK

TRIBE,Inc.を設立し,被告Aⅱ作品の米国にお

ける映画化交渉等を行っていた(甲49,被告Aⅴ〔16~17,19頁〕)。

被告Aⅴは,平成18年12月6日,日本法人としてKK

TRIBE

を設立し,代表取締役に就任して,被告Aⅱ作品の米国における映画化交渉等を行っていた(甲1,乙エ4,被告Aⅴ)。この頃,米国法人KKTRIBE,Inc.は活動を行わなくなった(被告Aⅴ)。

平成19年6月5日,被告Aⅱ及び被告Aⅴは原告の取締役に就任し,同月21日,被告Aⅱは200株,被告Aⅴは400株の割り当てを受けた(甲1,25~30,乙イ17)。


原告と被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,本件著作物利用契約書により本件独占的利用許諾契約を締結し,平成20年2月18日には本件公正証書が作成された(甲6,88)。


被告Aⅱは,平成20年4月9日,KK

TRIBEに対し,本件公正

証書別紙に記載された著作物である本件7作品(子連れ狼,忘八武士道,首斬り朝,修羅雪姫,オークションハウス,御用牙及び盗撮影手パパラッチ)についての著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を譲渡し,平成20年8月12日,その旨の著作権譲渡登録がなされた(甲12)。

被告Aⅱは,平成20年5月15日,株式会社角川書店(現・株式会社KADOKAWA)に対し,著作権譲渡に関する基本合意書により,本件7作品を含む211作品について被告Aⅱが当該契約を締結できる正当な権利者であり,同著作物について完全な著作権を有していること,同
著作物が第三者の有する著作権その他の何らの権利及び利益を侵害しないことを(原告が本件独占的利用権を有しており,またKK

TRIBEが

本件7作品につき著作権譲渡を受けている事実を秘して)保証した上で,出版利用,電子化,電子化された著作物の複製・頒布に関する権利(複製権,公衆送信権及び送信可能化権,譲渡権,貸与権,翻訳権)を譲渡し,二次利用に関する窓口を独占的に許諾した(甲40,41)。

原告は,平成20年9月29日付けで,KK

TRIBEに対し,今後

の対応について協議を求める催告書を送付した(甲50)。

被告Aⅴは,平成20年10月14日,原告の取締役を辞任し,平成21年2月19日,その旨登記された(甲1,51)。


原告は,平成20年11月12日,KK
日の会議へのKK
52)が,KK

TRIBEに対し,同月28

TRIBE代理人ら及び被告Aⅴの出席を求めた(甲
TRIBEは,同月25日,出席は見合わせる旨回答し

た(甲53)。

原告とCSデヴコとの間の仲介者であったフィロソフィア株式会社は,平成20年11月21日,原告に対し,子連れ狼のハリウッドでの映画化に関する提案書を提出した(甲36,95,証人Bⅹ)。


原告は,平成20年12月10日,CSデヴコとの間で,平成20年10月29日付け取引基本合意書(「子連れ狼)」により,以下の合意を締結した。その骨子は,①初回オプション報酬は12か月間の初回オプション期間における選択権の対価として2万5000米ドル以上7万5000米ドル以下の額とし,初回オプション期間は正式な契約の署名かCSデヴコによるチェーン・オブ・タイトル(正当な権利者から途切れることなく権利が譲渡され又は許諾されること)の承認のいずれか遅い時点に開始して,そのときに(CSデヴコから原告に)初回オプション報酬が支払われること,②CSデヴコは,さらに2万5000米ドル以上7万500
0米ドル以下の額の第2オプション報酬を支払うことにより,初回オプション期間をさらに12か月間延長することができること,③原告はCSデヴコに対し,オプション期間において,子連れ狼の全ての権利等を購入する選択権を付与すること,④子連れ狼の全ての権利等の購入価格は100万米ドルとすること,⑤原告は映画の純利益の5%相当額を受領することなどである(甲13,21,95,99,原告代表者,証人Bⅹ。被告Aⅱは甲13,21の成立を争うが,原告代表者及び証人Bⅹによれば真正に成立したものと認められる。)。

原告は,平成20年12月18日の取締役会において,子連れ狼米国映画化権については現在のまま進めていく旨を確認した(甲55)。

原告は,平成21年2月6日,被告Aⅱに対し,原告の子連れ狼米国映画化事業について,KK

TRIBE及び被告Aⅴが妨害しないよう

申し入れ,本件7作品の著作権登録について被告Aⅱに再譲渡する手続を速やかに実行するよう申し入れた(甲56)。これに対し,KK
BEは,同月18日,原告に対し,KK

TRI

TRIBEは著作権登録を受け

対抗要件を備えており,原告に優先する著作権者であるので,KK
TR

IBEが主導的に映画化を進めたい旨回答した(甲57)。

被告Aⅱは,平成21年4月2日,原告の取締役を辞任し,同月27日,その旨登記された(甲1,58)。


原告は,平成22年8月5日,被告Aⅱに対し,著作権譲渡登録の抹消をする意思があるか回答を求めた(甲67)。被告Aⅱは,同月12日,

①Aⅴらによって権利譲渡の書類を作成されましたが,それはすでに撤回しました。②一部実行されている著作権譲渡登録は抹消請求をしたいと考えています。

等と回答した(甲68)。

被告Aⅱは,平成23年4月20日付けで,米国法人1212エンターテイメント・エルエルシー(以下1212という。)との間で,1
212に子連れ狼の実写映画化権等を独占的に許諾するオプション権を与え,1212は,オプション契約締結日から3年間,35万米ドルの支払いにより上記実写映画化権等を購入するオプション権を有すること,上記実写映画化権等は100万米ドルで購入されることなどを定めたオプション契約(以下本件オプション契約という。)を締結した(甲70)。

ラッキー17は,平成23年4月23日,1212から本件オプション契約上の地位を譲り受け,同月25日頃までに,被告Aⅱの代理人に対し,オプション権の対価35万米ドルを支払った(甲70,74,89,乙イ18・12頁,被告Aⅱ〔39~40頁〕,被告Aⅲ〔36頁〕)。被告Aⅱは,同月27日,KK

TRIBEに対し,受領した35万米ド

ルの中から1000万円を支払った(甲70,71,乙エ2,3,被告Aⅱ〔39~40頁〕)。

KK

TRIBEは,上記チの精算金の支払を受けて,被告Aⅱとの間

で,本件7作品の著作権譲渡契約を解除し,同年11月4日,著作権譲渡登録を抹消した(甲12,乙エ2)。

平成23年5月10日,被告Aⅳが設立された(甲3)。被告Aⅱは,同日,被告Aⅳに対し,本件7作品についての著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を譲渡し,同年11月4日,その旨譲渡登録がなされた(甲12,72)。


KK

TRIBEは,平成23年6月30日,株主総会の決議により解

散し,同年8月15日,その旨の登記がなされた(甲5)。

被告Aⅱは,平成23年9月15日付けで,原告に対し,本件独占的利用許諾契約を解除した(乙イ7)。


ラッキー17は,平成24年1月16日,被告Aⅳから子連れ狼の実写映画化権等の譲渡を受け,同年2月3日,その旨譲渡登録がなされた
(甲12の1,甲74,89,乙イ18)。

ラッキー17は,平成24年頃,原告に対し,子連れ狼の実写映画化権等の確認を求めるとともに,原告による告知行為の差止めを求める訴えを当庁に提起し(当庁平成24年(ワ)第16442号),当庁は,平成25年10月10日,ラッキー17の訴えを認容する判決をした(乙イ18)。
原告は控訴を提起した(知財高裁平成25年(ネ)第10094号)が,知財高裁は,平成26年3月27日,原告の控訴を棄却する判決をした(甲89)。

(2)

被告AⅱからKK

TRIBEに対する本件7作品の著作権譲渡(上記

(1)オ)がなされた平成20年4月9日時点,及び,被告Aⅱから被告Aⅳに対する本件7作品の著作権譲渡(上記(1)テ)がなされた平成23年5月10日時点においては,原告は本件7作品に対し本件独占的利用権を有していたのであるから,上記各譲渡は,原告の本件独占的利用権を侵害するものというべきである。
(3)

被告Aⅱの故意について
被告Aⅱは,本件独占的利用許諾契約を締結し,その認識を有していた
ものと認められるから,被告Aⅱは,故意により原告の本件独占的利用権を侵害したものと認められる。
(4)

被告Aⅴの故意について
被告Aⅴは,上記著作権譲渡の当時,本件公正証書の存在を知らず,原
告の本件独占的利用権を認識していなかったと供述する(乙エ4,被告Aⅴ)。
しかし,被告AⅱからKK

TRIBEに対する本件7作品の著作権譲

渡(上記(1)オ)がなされた平成20年4月9日当時,被告AⅴはKK

RIBEの代表取締役であり(甲5,乙エ4,被告Aⅴ本人),原告の取
締役であり(甲1),被告Aⅰの取締役であった(甲2,4)。また,被告Aⅴは被告Aⅱの甥であり,被告Aⅱの意思を受けて被告Aⅱの著作物の米国での映画化交渉を行う立場にあった(乙エ4,被告Aⅴ本人)。被告Aⅱ及び被告Aⅰが本件独占的利用権を認識していたことは前記1(5)のとおりであり,原告及び被告Aⅰの取締役であり,被告Aⅱとも密接な関係があった被告Aⅴが本件独占的利用許諾契約の存在を知らなかったと考えるのは不自然,不合理であって,被告Aⅴは,原告,被告Aⅱ又は被告Aⅰから本件独占的利用許諾契約の存在を聞いていたものと推認するのが相当である。
したがって,被告Aⅴが代表者を務めるKK

TRIBEは,故意により

原告の独占的利用権を侵害したものと認められる。
被告Aⅴが前記のとおり被告Aⅱと密接な関係にある者であり,本件7作品の著作権譲渡が本件独占的利用権を侵害することを認識していたことなどから,原告は,契約当事者でない被告Aⅴに対しても,本件独占的利用権の侵害について損害賠償を請求し得る地位にあるということができる。(5)

被告Aⅳ及び被告Aⅲの故意について
被告Aⅱから被告Aⅳに対する本件7作品の著作権譲渡(上記(1)テ)が
なされた平成23年5月10日時点において,被告Aⅳの代表取締役は被告Aⅲであった(甲3)。
被告Aⅲが,平成23年5月30日被告Aⅱから被告Aⅰの代表取締役の交替を受けた時点で,本件独占的利用権を認識していたと認められることは上記2(3)イで認定したとおりである。被告Aⅲは,代表取締役に就任する以前の平成21年8月11日から被告Aⅰの執行役員を(乙ウ2),平成22年3月1日から被告Aⅰの取締役を,それぞれ務めていた(甲2)。被告Aⅰは,被告Aⅱの著作物の出版を主な業とする会社であり(乙ウ2),平成22年2月9日には原告との間で本件基本合意を締結し
(甲8,75),原告との間の個別出版契約書に基づいて被告Aⅱの著作物の発行を行っていたのであるから,そのような被告Aⅰの役員であった被告Aⅲは,平成23年5月10日時点で,原告が本件独占的利用権を有していることを認識していたものと認めるのが相当である。
被告Aⅲの供述のうち,上記認定に反する部分は採用しない。
したがって,被告Aⅲが代表取締役を務める被告Aⅳは,故意により本件独占的利用権を侵害したものと認められる。
被告Aⅲが,被告Aⅱと密接な関係にある被告Aⅰの役員を務める,被告Aⅱと密接な関係にある者であり,被告Aⅳも,専ら本件7作品の著作権譲渡のために設立された,被告Aⅱと密接な関係にある会社であること,被告Aⅲ及び被告Aⅳは本件7作品の著作権譲渡が本件独占的利用権を侵害することを認識していたことなどから,原告は,契約当事者でない被告Aⅲ及び被告Aⅳに対しても,本件独占的利用権の侵害について損害賠償を請求し得る地位にあるということができる。
(6)

CSデヴコから得べかりし100万米ドルの損害について
原告は,KKTRIBEや被告Aⅳの著作権譲渡登録がなければ,原告
はCSデヴコによるチェーン・オブ・タイトルの承認を得られ,原告とCSデヴコとの間で正式契約が締結されて,CSデヴコが子連れ狼を映画化することにより,少なくとも100万米ドルの対価が得られたはずである,と主張する。
しかし,100万米ドルは本権利の購入価格すなわち実写映画化が確定した後に初めて支払われる対価であり,CSデヴコがチェーン・オブ・タイトルの承認をし,長文式契約が締結されて,初回オプション報酬(2万5000米ドル以上7万5000米ドル以下)が支払われた後,米国ハリウッド側で脚本家に脚本制作を依頼し,脚本完成後,制作予算や興業収支を予測して,事業計画の見通しが立ったときに初めて本権利の購入
がなされるのであり,チェーン・オブ・タイトルの承認があったからといって,確実に支払われる保証があるものではない(甲13,21,95,被告Aⅴ,証人Bⅹ)。
そうすると,被告Aⅱ,被告Aⅴ,被告Aⅳ及び被告Aⅲの不法行為がなかったとしても,原告が100万米ドルの利益を得られた蓋然性があるとはいえず,100万米ドルの損害について不法行為と相当因果関係があるとはいえない。
(7)

フジテレビから得べかりし170万円の損害について
原告は,被告Aⅱから被告Aⅳに対する著作権譲渡がなければ,子連れ狼がテレビドラマ化され,フジテレビから170万円の許諾料を得られたはずである,と主張する。
しかし,原告とフジテレビとの間の契約書や合意書は締結されるに至っておらず(原告代表者〔56頁〕),フジテレビが許諾料の支払に至る条件の詳細は不明であって,Bⅲの供述(甲99,原告代表者)と,株式会社アクトエンタープライズの代表取締役であるCⅰの供述(甲96,証人Cⅰ)のみをもっては,被告Aⅱ,被告Aⅳ及び被告Aⅲの不法行為がなければ,原告がフジテレビから170万円の許諾料を得られた蓋然性があるとは認めるに足りない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,170万円の損害賠償請求は理由がない。
(8)

ラッキー17から得べかりし50万米ドルの損害について
原告は,被告Aⅳがラッキー17から受領した権利譲渡の対価は50万
米ドルを下らず,被告Aⅱ及び被告Aⅳによる不法行為がなければ,原告がラッキー17から50万米ドルの対価を得ていたはずである,と主張する。
しかし,原告は,CSデヴコとの間で米国での子連れ狼実写映画化
交渉を進めていたのであるから,被告Aⅱ及び被告Aⅳによる不法行為がなかったとしても,実写映画化交渉はCSデヴコとの間で進められていたと考えられ,ラッキー17との間での実写映画化交渉を原告が行っていた蓋然性があるとはいえない。
被告Aⅱは,ラッキー17からオプション価格35万米ドルを受領しており(上記(1)チ),これは被告Aⅱが本件独占的利用許諾契約に違反して1212との合意をし(上記(1)タ),本件独占的利用許諾契約に違反して被告Aⅳに本件7作品の譲渡を行った(上記(1)テ)ために得た利益であるが,我が国の不法行為法は,被害者が請求し得る損害は不法行為がなければ得られたであろう蓋然性のある範囲に限っており(民法416条類推),著作権法114条2項のような推定規定がない限り,不法行為者が不法行為によって得た利益を全て吐き出させるような規定は存在しないのであるから,損害との相当因果関係が認められない以上,被告Aⅱが不法行為により得た利益を保有する結果となってもやむを得ないものというべきである。
(9)

以上によれば,原告主張の損害は,不法行為との間に相当因果関係が認
められないから,被告Aⅱ,被告Aⅲ,被告Aⅳ及び被告Aⅴの共同不法行為に基づく請求の趣旨第3,4項の請求はいずれも理由がなく,被告Aⅴに対する任務懈怠責任に基づく請求の趣旨第3項の予備的請求も理由がない。
4
被告Aⅱの債務不履行に基づく請求(請求の趣旨第5項)について(1)

後掲の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
被告Aⅱは,平成16年8月3日,大成商事有限会社との間で,著作物およびキャラクターの商品化権に関する原作契約書(甲15)により,被告Aⅱの著作物について,パチンコ及びスロット遊技機等の範囲における商品化権を,大成商事有限会社に独占的に委任した。当該契約の有
効期間は,平成16年8月3日から平成21年8月3日までの5年間とし,契約期間満了の日の3か月前までに当事者のいずれからも何ら申し出のない場合には,同一の契約条件により1年間延長され,その後も同様とする旨規定されていた(甲15・11条)。
その後,PTSは,大成商事有限会社の契約上の地位を承継した(甲16,34,弁論の全趣旨)。被告Aⅱは,PTSの発起人であり,取締役であり,株主であった(甲98)。

PTSは,平和に対し,平成19年2月14日及び同年6月18日,被告Aⅱを原作者とする修羅雪姫子連れ狼花平バズーカ弐十手物語の漫画・劇画につき,契約締結日から3年間(子連れ狼については許諾内容が独占的排他的な許諾へと変更された日[平成19年9月1日]から3年間),パチンコ遊技機への利用を許諾した(甲17,62)。


被告Aⅴは,平成19年6月頃,原告に対し,作品二次使用契約表と題する文書(甲34)を交付した(甲99・6頁,乙エ4・2頁,原告代表者〔15,31,86~88頁〕,被告Aⅴ〔21~22頁〕)が,そこには,大成商事有限会社(PTS)が,被告Aⅱの全作品に
ついて商品化権(パチンコ及びスロット遊戯機,及び周辺機器)につき,日本国内で無期限の権利を有している旨の記載がある。


平成19年9月10日,劇画村塾(原告)の発足記念パーティーが開催され,PTSの代表取締役であったCⅱと専務取締役であったCⅲが出席した(甲16,32,98,原告代表者〔86~87頁〕)。


被告Aⅱは,平成19年9月27日,PTSとの間で,PTSに対する利用許諾期間を15年間延長し,平成36年8月3日までとすることを合意した(甲16)。


被告Aⅱは,平成19年10月26日頃,原告との間で,旧著作物利用
契約書(甲87・19~28頁,乙イ2)により,被告Aⅱの著作に係る旧公正証書別紙の著作物に関し,原告が同著作物の全部又は一部を複製し,あるいは翻訳・翻案してデジタル著作物を作成すること,作成されたデジタル著作物をゲーム,パチンコ,パチスロ及びこれらの周辺機器等において利用すること等を独占的に許諾した(甲87,甲92・3頁,甲99・9頁,乙イ2,原告代表者〔35~40頁〕,被告Aⅱ〔13頁〕,証人Bⅷ〔13,16頁〕,証人Aⅶ〔7~10頁〕)。
同契約において,被告Aⅱが同契約前に商品化権ないし配信権を許諾している,大成商事有限会社(PTS)に対して許諾した被告Aⅱの作品の商品化権(パチンコ,パチスロ及びこれらの周辺機器を含む。)については,被告Aⅱにおいて使用許諾契約期間満了と同時に同契約の対象となる事項に含むものとして取り扱うこととし,その具体的条件については個別に原告と被告Aⅱ間で協議して決定することとされた(旧著作物利用契約書〔甲87・19頁〕1条4項1号)。
被告Aⅱは,平成19年10月26日頃,Aⅹに対する委任状(甲37,甲87・18頁)に署名押印し,同年11月26日,旧公正証書(甲14,87)が作成された。

被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,原告との間で,旧公正証書契約を合意により解約し,これに代えて新たに規定する内容に係る契約公正証書を作成することを合意し(甲18,22。被告Aⅱは真正な成立を争うが,被告Aⅱの印鑑証明書(甲38)との対比により真正に成立したものと認められる。),本件著作物利用契約書(甲88・30~52頁)により,本件独占的利用許諾契約を締結した。
本件独占的利用許諾契約においても,被告Aⅱが同契約前に商品化権を許諾している,大成商事有限会社(PTS)に対して許諾した被告Aⅱの作品の商品化権(パチンコ,パチスロ及びこれらの周辺機器を含む。)に
ついては,被告Aⅱにおいて使用許諾契約期間満了と同時に同契約の対象となる事項に含むものとして取り扱うこととし,その具体的条件については個別に原告と被告Aⅱ間で協議して決定することとされた(本件著作物利用契約書〔甲88・30頁〕2条4項)。
被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,Aⅷに対する委任状(甲88・29頁)により公正証書の作成を委任し,同年2月18日,本件公正証書(甲6,88)が作成された。

平成20年12月18日の原告の取締役会において,Bⅲは,収益を上げるためにはパチンコメーカーへ原作者被告Aⅱ作品を売りたいとの発言をし,被告Aⅱは協力すると発言した(甲55)。


PTSは,平成21年4月10日,平和との間で,修羅雪姫子連れ狼の利用許諾期間を,修羅雪姫については平成23年2月13日まで,子連れ狼について平成24年2月末日まで延長する契約をした(甲62)。


平和は,平成22年6月4日,PTSが作画家の利用許諾を得ていなかったことが判明したため,PTSとの間の利用許諾契約を解除した(甲60~62)。


原告は,平成22年8月5日,被告Aⅱに文書で質問をし(甲67),被告Aⅱは,同月12日,原告に対し,

パチンコ化,映画化の権利の管理については,それぞれPTSとAⅴに委託していたので,除外して下さい,と何度か申し上げたのですが,そのことがお耳に達していなかったとすれば,コミュニケーション不足でした。

,平成19年9月に被告Aⅵ株式会社設立記念パーティ開催の際,PTSCⅱ氏から,PTSがパチンコ事業から排除されるかも知れないとの危機感により,延長の申し出がありました。私はその当時,すでにパチンコ化の権利をPTSに委託していることについて貴殿の同意を得ているから延長も問題ないだろうと考えて,15年延長を合意しました。等と回答した(甲68)。シ
平和は,平成23年頃,PTSに対し,支払済みの許諾料1億6600万円の返還を求める訴えを当庁に提起し(当庁平成23年(ワ)第35541号),当庁は,平成24年7月19日,平和の請求を認容する判決をした(甲62)。

(2)

原告は,旧公正証書契約により,被告Aⅱは,原告に無断でPTSに対
する利用許諾期間を延長させない義務を負担した,と主張する。
しかし,旧公正証書及び旧著作物利用契約書においては,被告AⅱがPTSに許諾している権利は使用許諾契約期間満了と同時に,甲乙間の本契約の対象となる事項に含むものとして取り扱うこととし,その具体的な条件については個別甲乙間で協議して決定するとしか記載されておらず(旧著作物利用契約書〔甲87・19頁〕1条4項,旧公正証書〔甲87〕2条4項),被告Aⅱが原告に対し,PTSに対する利用許諾期間を延長させない義務を負ったとは認め難い。
実質的にも,パチンコは制作に2~3年掛かるのが普通で,そこから販売を始めるのであるから,パチンコ化をするのであれば3年の利用許諾では短すぎ(原告代表者〔16頁〕),現に,PTSは平和との間で,延長前の段階でも平成19年2月14日,同年6月18日及び同年9月1日から3年間,すなわち平成22年2月14日ないし9月1日までの利用許諾をしていたのであり,PTSと被告Aⅱとの契約には自動更新条項もあったのであるから,15年間も延長するかどうかはともかくとしても,平成21年8月3日をもって被告Aⅱとの利用許諾契約を終了させるようなことはPTSは全く予定していなかったものと認められる。PTSがそのような立場にある以上,被告AⅱがPTSとの利用許諾契約を平成21年8月3日をもって終了させるような義務を負担する合意をしたとは考え難い。被告Aⅱの意思が反映されていると思われる作品二次使用契約表
と題する文書(甲34)において,PTSの契約期間が無期限とされているのも,上記認定を裏付けるものである。
そうすると,被告Aⅱが原告に対しパチンコ化の権利は原告との契約から除外してほしいと告げていた旨の被告Aⅱの供述(甲68,乙イ20,被告Aⅱ本人)の信用性について判断するまでもなく,被告Aⅱが原告に対しPTSに対する利用許諾期間を延長しない義務を負担したとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告Aⅱの債務不履行に基づく請求の趣旨第5項の請求は理由がない。
5
被告Aⅱに対する金銭消費貸借契約に基づく請求(請求の趣旨第6項)(1)

平成19年9月26日には原告名義で3000万円が(甲19),同年
10月17日には原告の取締役であった(甲1)Bⅰ名義で1500万円が(甲20),それぞれ被告Aⅱの銀行口座に送金されている。
平成19年度の原告の貸借対照表では,上記合計4500万円に500万円を加えた5000万円につき,前記の本件独占的利用権の対価2億円と併せて保証金の名目で計上され(甲76),平成20年度ないし22年度の貸借対照表では,上記5000万円は長期貸付金の名目で計上されている(甲77~80)。
証拠(甲19,20,76~80,90,99,原告代表者〔14~15,45,68~69,84~85頁〕,証人Bⅰ〔2~3,30頁〕)によれば,上記合計4500万円の送金の趣旨は,被告Aⅱに対する返済期限及び利息の定めのない貸付金であり,また,上記送金とは別に,原告は,平成19年11月28日頃,被告Aⅱに対し,返済期限及び利息の定めなく,現金500万円を貸し付けたことが認められる。
(2)

原告は,平成24年8月8日被告Aⅱに送達された本件訴状により,上
記貸金5000万円の返還を催告した(当裁判所に顕著)。
上記貸金は,いずれも期限の定めのない貸付であったと認められるか
ら,被告Aⅱの貸金返還債務は,催告後相当期間経過後に遅滞に陥るものと解される(なお,被告Aⅱは,上記催告によって直ちに遅滞に陥ることを争っているものとみるのが相当である。)。
被告Aⅱは,本件訴状の送達を受けた平成24年8月8日の1週間後である同月15日には相当期間の経過により遅滞に陥ったものと認められるから,同日から遅延損害金が発生する。
(3)

被告Aⅱによる弁済について
被告Aⅱは,仮に貸金債務が存在したのであれば,被告Aⅱは早期に返
済しているはずである,と主張する。
しかし,被告Aⅱが上記貸金を弁済した証拠は全くなく,かえって,平成22年の貸借対照表まで上記5000万円が長期貸付金として計上され続けていることからすれば,上記貸金が弁済されたことはなかったと認めるのが相当である。
(4)

被告Aⅱによる相殺について
原告に対する損害賠償債権について
(ア)

被告Aⅱは,原告の日本経済新聞連載妨害により1575万円の損
害を被り,その後も原告が被告Aⅱに対する執筆妨害を続けたため,平成26年5月までに1億5000万円の損害を被っており,これら合計1億6575万円の損害賠償債権を自働債権とし,被告Aⅱの原告に対する金銭債務を受働債権として,対当額で相殺する旨主張する。
(イ)

原告の代表者であるBⅲ(原告の履歴事項全部証明書〔甲1〕によ
れば,Bⅲは,平成20年3月31日に原告の代表取締役を退任したが,平成24年5月23日までその登記をせず,後任の代表取締役も選任されなかったため,会社法351条1項により引き続き代表取締役としての権利義務を有し,対外的にも対内的にも,原告の唯一の代表取締役として行動していた〔甲8,13,42,44,55,56,63,
64,66,67,75,77~80,86,99,原告代表者〕。)が,平成21年6月1日,日本経済新聞社の法務室長及び代理人弁護士と面会し,本件公正証書を示すなどした結果,被告Aⅱの結い親鸞の連載が実質的に中止となり,被告Aⅱの経済活動が妨害されたことは,上記1(3)で認定したとおりである。
(ウ)

当裁判所は,本件独占的利用許諾契約のうち,今後制作される著作物につき,原告が印税配分義務を負わずに独占的利用権を取得することを内容とする部分については,公序良俗に違反し無効であると判断したものであるが,このような判断は上記1(2)で考慮した諸般の事情を総合的に考慮した結果であり,著作権の専門家ともいうべきAⅶ弁護士及びBⅷ弁理士と相談の上で本件著作物利用契約書を作成したBⅲとしては,上記部分が公序良俗違反により一部無効となるという認識はなく,結い親鸞が本件独占的利用権が及ばない著作物であるという

認識もなかったと認められ,認識しなかったことに過失があったとも認められない(甲91,92,99,原告代表者,証人Bⅷ,証人Aⅶ)。
(エ)

Bⅲが日本経済新聞社に対し,原告が著作権を有する旨告知したこ
とは事実とは認められないが,Bⅲにおいてはそのように信じていたと認められ,著作権の専門家ではないBⅲがそのように認識していたことに過失があったとも認められない(日本経済新聞社は,本件公正証書を見せられているのであるから,連載休止の判断に当たって,Bⅲの口頭説明をそれほど重視したとも思われない。)。
(オ)

Bⅲが日本経済新聞社に対し,刑事告訴の予定である旨告知したこ
とも,原告において刑事告訴の予定があったことは真実と認められ(甲63・4頁,甲99・20頁),その告訴予定であった事実も少なくとも基礎となる事実関係については真実であるから(甲63),Bⅲに故
意又は過失は認められない。
(カ)

以上によれば,行為者であるBⅲに故意又は過失が認められないか
ら,被告Aⅱの原告に対する日本経済新聞の連載妨害による損害賠償債権は発生しない。
(キ)

被告Aⅱは,日本経済新聞連載妨害の後も,原告は被告Aⅱに対す
る執筆妨害を続け,被告Aⅱは合計1億5000万円の経済的損害を被ったと主張する。
しかし,本著作物のうち,本件公正証書別紙の著作物の複製物又は二次的著作物については,本件解除通知による解除がなされるまでは原告が本件独占的利用権を有していたのであるから,原告に無断で被告Aⅱが第三者に利用を許諾できないのは当然であり,原告が本件独占的利用権を主張するのは当然の権利行使であって,何ら違法性はない。
本著作物のうち,本件著作物利用契約書以降に被告Aⅱが制作し,かつ,被告Aⅱに印税が配分されない著作物については,公序良俗違反により一部無効となるため本件独占的利用権は及ばないが,原告がそのことを認識せずに第三者に権利を主張したとしても,故意も過失も認められないことは,上記(ウ)で判断したのと同様である。
さらに,本件解除通知による解除は有効であるから,本件解除通知以降は本著作物に本件独占的利用権は及ばないが,これは,結い親鸞に本件独占的利用権が及ばないため,日本経済新聞の連載妨害が重大な背信行為と評価されるためであるが,原告においてそのような認識があったとは認められず,そのような認識をしなかったことに過失があるとも認められないから,本件解除通知の有効性を認識せずに本件独占的利用権の主張を続けたとしても,故意又は過失は認められない。(ク)

以上によれば,原告の行為にはいずれも違法性又は故意若しくは過
失が認められないから,被告Aⅱの原告に対する損害賠償債権は発生し
ない。

原告に対する印税相当損害賠償債権について
(ア)

被告Aⅱは,原告が被告Aⅱ著作物の無断使用を継続しており,被
告Aⅱは,原告に対し,著作権法113条,114条2項又は3項に基づき,印税相当額6690万円の損害賠償請求権を有する,と主張する。
(イ)

しかし,著作権法113条は,同条所定の行為を著作権侵害とみな
す旨の規定であるが,被告Aⅱは,原告が同条所定の行為を行っている旨の主張をしていないから,同条に基づく請求は主張自体失当である。(ウ)

著作権法114条2項,3項は,著作権侵害による損害の賠償を請
求する場合における損害額を推定した規定であるが,被告Aⅱは,原告が被告Aⅱの著作権を侵害する行為(複製,翻案,譲渡,貸与,公衆送信等)を行っている旨の主張をしていないから,同条項に基づく請求は主張自体失当である。
(エ)

被告Aⅱの主張に鑑み,原告に被告Aⅱに対する未払の印税債務が
あるか検討する。
本件独占的利用許諾契約に印税の配分義務の定めはないから(甲88),本件著作物利用契約書による本件独占的利用許諾契約の締結後,平成22年2月9日の本件基本合意(甲8,75)まで,原告が第三者に本著作物の利用許諾を行い,印税を受領したとしても,これを被告Aⅱに配分する義務があったとは認められない。
(オ)

平成22年2月9日から同年6月30日まで
平成22年2月9日の本件基本合意の対象となっているのは,被告A
ⅰが個別の出版契約書に基づいて出版した著作物に限られるから,原告が被告Aⅰ以外の第三者に本著作物の利用許諾を行い,印税を受領したとしても,これを被告Aⅱに配分する義務があったとは認められない。
被告Aⅰについては,平成22年3月9日付け出版契約書に基づき出版した著作物の最初の印税支払いが同年7月5日であり(乙ア1,5,6),同年2月9日から同年6月30日までの間に,原告が被告Aⅰから受領した印税はなかったと認められるから,被告Aⅱに配分すべき印税は存在しない。
(カ)

平成22年7月1日から平成23年9月18日まで
本件印税合意が締結された平成22年7月1日から,被告Aⅱによる
本件解除通知(乙イ7)が原告に到達した平成23年9月18日までの間に原告が第三者から受領した印税については,本件印税合意により,原告は被告Aⅱに印税を配分する義務があった。以下,便宜上,上記期間に限らず,平成25年8月29日付け原告準備書面(7)の作成日までの間の印税について,まとめて判断する。
平成22年7月5日から平成23年12月5日までの間に,原告が被告Aⅰから受領した印税は合計3028万7211円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は605万7442円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)28頁〕)。
平成22年8月31日から平成24年3月30日までの間に,原告が株式会社タトル・モリ

エイジェンシー(以下タトル・モリとい

う。)から受領した印税は合計65万4445円であり,原告と被告Aⅱとの間には,①送金手数料控除前の印税額の10%から送金手数料を控除した額を原告の手数料とする,②原告が受領した印税額から原告の手数料を控除した金額の50%を漫画家に対する印税として支払う(タトル・モリが支払済みの場合を除く。),③その残額を本件印税合意の印税とみなし,その20%を原告が被告Aⅱに対して支払う,という配分方法の合意があったと認められ,これによれば,被告Aⅱに配分すべき印税は7万6654円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面
(7)2,29頁〕)。
平成22年7月15日から平成23年7月14日までの間に,原告がDark

Horseから受領した印税は合計63万7450円であ

り,原告と被告Aⅱとの間には,タトル・モリと同様の印税配分方法の合意があったと認められ,これによれば,被告Aⅱに配分すべき印税は5万7640円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)3,30頁〕)。
平成23年7月11日に原告が株式会社ALBAから受領した印税は52万5000円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は10万5000円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)31頁〕)。
平成24年1月18日から同年6月18日までの間に,原告が株式会社小学館から受領した印税は合計89万7801円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は17万9560円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)32頁〕)。
平成22年12月1日から平成24年5月31日までの間に,原告がイーブックから受領した印税は合計329万9734円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は65万9947円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)33頁〕)。
平成22年7月5日から平成24年6月25日までの間に,原告が松文館及び被告補助参加人から受領した印税は合計1586万8982円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は921万9631円である。なお,平成24年2月15日以降の被告Aⅱへの配分額は,被告補助参加人から被告Aⅱに直接支払われているため,上記配分額に含んでいない(甲101,102,丙3~5,弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)34頁〕)。
平成23年12月12日から平成24年5月25日までの間に,原告
がユニオン映画株式会社から受領した印税は合計108万2104円であり,被告Aⅱに配分すべき印税は21万6421円である(弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)35頁〕)。
以上の被告Aⅱに配分すべき印税は,合計1657万2295円となる。
(キ)

既払額
原告は,平成22年7月12日から平成24年1月18日までの間
に,被告Aⅱに対し,被告Aⅱの指定した被告Aⅱの口座,被告Aⅰの口座,蒼英社の口座,Cⅳの口座,被告Aⅱの居住するマンションの賃貸人の口座に,合計1381万0274円を支払っている(甲69,86,弁論の全趣旨〔原告準備書面(7)5~7,37~42頁〕)。被告Aⅱに配分すべき印税1657万2295円から既払額1381万0274円を控除すると,未払印税は276万2021円である。ウ
被告Aⅱの印税債権の,相殺による消滅について
(ア)

原告は,被告Aⅱが平成26年9月25日の第16回弁論準備手続
において陳述した被告Aⅱ準備書面(7)における被告Aⅱによる相殺の意思表示に先立って,平成25年9月3日の本件第8回弁論準備手続において陳述した同年8月29日付け原告準備書面(7)をもって,被告Aⅱに対する以下の債務不履行に基づく損害賠償請求権を自働債権とし,被告Aⅱの原告に対する配分金残額についての請求権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をしている。
そこで,被告Aⅱの印税債権(印税配分請求権)が,原告による相殺によって消滅しているか判断する。
(イ)

被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,本件著作物利用契約書(甲
88・30~52頁)により本件独占的利用許諾契約を締結したにもかかわらず,原告の許諾なくして,本著作物の利用を第三者に許諾する事
業を行い,イーブックは,被告Aⅱの許諾に基づき本著作物の電子化配信を行い,蒼英社に対し,平成19年に164万0568円,平成20年に127万4388円,平成21年に114万2712円,平成22年に93万3984円,合計499万1652円を支払っていることが認められる(甲100)。
このうち,平成19年支払分については,被告Aⅱと原告との間の旧著作物利用契約書(甲87・19~28頁)が取り交わされたのは平成19年10月26日頃であり,かつ,同契約書においても,株式会社イーブックイニシアティブジャパンに対して許諾した甲[被告Aⅱ]の全作品に関するWebおよび携帯端末による配信権は原告の独占的利用権の対象から除外されていたのであるから(旧著作物利用契約書〔甲87・20頁〕1条4項3号),原告の独占的利用権を侵害するものとはいえない。
本件著作物利用契約書(甲88・30~52頁)にはイーブックを除外する条項はなく,本著作物の全部または一部を,あるいは本著作物の全部または一部を翻訳・翻案して作成された著作物をインタラクティブ配信,コンテンツ配信等送信あるいは送信可能化事業を行うことは本件独占的利用権の対象とされていたのであるから,平成20年1月25日から,本件独占的利用許諾契約が解除された平成23年9月18日までの間に,本件公正証書別紙の著作物及び本件印税合意後に被告Aⅱが制作した著作物について,被告Aⅱがイーブックに公衆送信を許諾した行為は,原告の本件独占的利用権を侵害するものであったと認められる。
被告Aⅰが平成20年1月25日から平成22年6月30日までの間に出版した99点の本件書籍1のうち,本件公正証書別紙の著作物に由来せず,本件独占的利用権が及ばないのは本件書籍1-17,1-5
5,1-63,1-66,1-91-1-99の13点(13.13%)であるから,少なくとも,イーブックの平成21年支払分114万2712円の86.87%である99万2674円,平成22年支払分93万3984円の86.87%である81万1352円の合計180万4026円は,原告の本件独占的利用権を侵害する著作物の利用許諾の対価であったと認められ,原告が利用許諾を行っていた場合,被告Aⅱにその20%を配分したとしても,その80%である144万3221円は原告が得べかりし印税相当額であったということができる(平成20年支払分については,2月以降の支払分についても,本件独占的利用許諾契約成立前の利用許諾に基づく出版の対価が含まれている可能性があり,侵害部分を特定することができない。また,ここでは,最低限の損害額を認定する趣旨で,本件印税合意前のものについても20%を控除することとする。)。
そうすると,原告は,被告Aⅱの本件独占的利用許諾契約に違反するイーブックに対する利用許諾により,少なくとも144万3221円の損害を被ったといえる。
(ウ)

同様に,被告Aⅱは,平成20年1月25日頃,本件著作物利用契
約書(甲88・30~52頁)により本件独占的利用許諾契約を締結したにもかかわらず,原告の許諾なくして,本著作物の利用を第三者に許諾する事業を行い,松文館は,被告Aⅱの許諾に基づき本著作物を利用し,平成21年12月22日に76万円,平成22年2月9日に99万円,同月25日から同月26日にかけて117万円,同年3月25日に120万円,同年4月14日に96万円,同年5月12日に48万円,同月17日に72万円,合計628万円を被告Aⅱに支払ったことが認められる(甲101,102,弁論の全趣旨)。
少なくとも,松文館が支払った628万円の86.87%である54
5万5436円は,原告の本件独占的利用権を侵害する著作物の利用許諾の対価であったと認められ,原告が利用許諾を行っていた場合,被告Aⅱにその20%を配分したとしても,その80%である436万4349円は原告が得べかりし印税相当額であったということができる。そうすると,原告は,被告Aⅱの本件独占的利用許諾契約に違反する松文館に対する利用許諾により,少なくとも436万4349円の損害を被ったといえる。
(エ)

そうすると,原告は,被告Aⅱの本件独占的利用許諾契約の債務不
履行により少なくとも580万7570円の損害を被ったといえ,被告Aⅱの印税債権(印税配分請求権)を上回る自働債権が発生していたことが認められる。
(オ)

以上によれば,被告Aⅱが原告に対し印税債権(印税配分請求権)
を有していたとしても,被告Aⅱが相殺の意思表示をする以前に,原告の相殺の意思表示により消滅しており,仮に被告Aⅱが契約に基づく印税債権(印税配分請求権)を相殺の自働債権としたとしても,自働債権は既に消滅しており,被告Aⅱによる相殺は成立しない。
(5)

小括
以上によれば,原告の請求の趣旨第6項に係る請求は,被告Aⅱに対
し,金銭消費貸借契約に基づき,貸金合計5000万円及びこれに対する訴状送達から相当期間経過後である平成24年8月15日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
訴状送達日である平成24年8月8日から同月14日まで年5分の割合による金員の支払を求める部分については,上記5000万円は貸金であって不当利得ではないから,予備的請求である不当利得返還請求も成立しない。

6
被告Aⅱに対する不当利得返還請求(請求の趣旨第7項)
(1)

原告が,被告Aⅱに対し,本件独占的利用権の対価として合計2億円を
支払ったこと,本件独占的利用許諾契約が,その一部は公序良俗違反により無効となるが,その大半については有効に成立したこと,本件独占的利用許諾契約が本件解除通知により解除されたこと,上記解除は将来に向かってのみ効力を有することは,上記1で認定したとおりである。(2)

本件独占的利用許諾契約のうち,被告Aⅱが将来制作する著作物につい
て,かつ,原告が印税配分義務を負わない著作物に関する部分は公序良俗違反により一部無効であるが,上記2億円は,それ以外の本件独占的利用権の対価としても十分な金額であるから,上記一部無効部分があることによって,上記2億円の一部が不当利得となることはないと解される。(3)

本件解除通知による解除により,本件独占的利用許諾契約は,平成23
年9月18日をもって解除されたものと認められ,被告Aⅱは,解除に伴う原状回復義務を負ったものと認められる。
その原状回復義務の範囲については,2億円から,原告が既に本件独占的利用権によって得た利益を控除した額とするのが相当である。
上記5(4)イ(カ)によれば,原告は,被告Aⅰから3028万7211円,タトル・モリから65万4445円,Dark

Horseから63万7

450円,株式会社ALBAから52万5000円,株式会社小学館から89万7801円,イーブックから329万9734円,松文館及び被告補助参加人から1586万8982円の合計5217万0623円の印税(被告Aⅱに対する配分前の額)を取得したことが認められ,そこから,被告Aⅱに対する配分額(相殺に供した分を含む。)1657万2295円を控除した,3559万8328円を,原告が本件独占的利用権によって得た利益と認める。
甲76~80によれば,平成19年から平成23年までの原告の売上高の
合計は1億2840万5074円に上っているが,その全部が本著作物の利用によるものかは明らかでない上,いずれの年度も最終的には赤字(純損失が発生)となっているのであるから,上記売上高をもって原告が本件独占的利用権によって得た利益とみることはできない。
そうすると,被告Aⅱは,解除に伴う原状回復義務として,2億円から既に原告が本件独占的利用権によって得た利益3559万8328円を控除した1億6440万1672円を原告に返還すべき義務があると認められる。
(4)

被告Aⅱによる相殺が認められないことは,上記5(4)のとおりであ
る。
(5)

小括
解除に伴う原状回復義務の履行として金銭を返還するときは,その受領
の時から利息を付さなければならない(民法545条2項)。
したがって,原告の請求の趣旨第7項に係る請求は,被告Aⅱに対し,原状回復請求権に基づき,被告Aⅱが受領した2億円のうち1億6440万1672円及び,うち1440万1672円に対する受益の日の翌日である平成19年6月15日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同月21日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同年8月3日から,うち5000万円に対する受益の日の翌日である同月21日から,各支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
7
結論
以上によれば,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるが,その余はいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

嶋末和秀鈴木千帆西村康夫
裁判官

裁判官

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