判例検索β > 平成25年(行コ)第187号
鉄道運賃変更命令等、追加的併合申立控訴事件(原審 東京地方裁判所平成22年(行ウ)第462号、同平成24年(行ウ)第384号)
事件番号平成25(行コ)187
事件名鉄道運賃変更命令等,追加的併合申立控訴事件(原審 東京地方裁判所平成22年(行ウ)第462号,同平成24年(行ウ)第384号)
裁判年月日平成26年2月19日
法廷名東京高等裁判所
判示事項1 鉄道事業法16条1項(平成11年法律第49号による改正前のものを含む)に基づく鉄道旅客運賃認可処分の取消し又は同処分の無効確認及び同法16条5項1号に基づく前記運賃の変更命令又は同法23条1項1号に基づく前記運賃上限の変更命令の義務付けを求める各訴えにつき,居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に前記鉄道事業に係る鉄道を利用している者らの原告適格が肯定された事例
2 居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者らがした,鉄道事業法16条5項1号に基づく旅客運賃の変更命令又は同法23条1項1号に基づく旅客運賃上限の変更命令の義務付けを求める訴えが,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を満たし適法とされた事例
3 鉄道運賃変更認可処分の無効確認請求が,同処分に鉄道事業法(平成11年法律第49号による改正前)16条2項1号又は2号の規定する認可要件に違反する違法があるとは認められないとして,棄却された事例
裁判要旨1 鉄道事業法16条1項(平成11年法律第49号による改正前のものを含む)に基づく鉄道旅客運賃認可処分の取消し又は同処分の無効確認及び同法16条5項1号に基づく前記運賃の変更命令又は同法23条1項1号に基づく前記運賃上限の変更命令の各義務付けを求める各訴えにつき,居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に前記鉄道事業に係る鉄道を利用している者については,違法な旅客運賃認可処分が行われ,違法に高額な旅客運賃設定がされれば,経済的負担能力いかんによっては当該鉄道を利用することが困難になり,日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害が生じかねないところ,「利用者の利益の保護」を重要な理念として掲げ,その具体的な確保のための条項を置いている鉄道事業法が,このような重大な損害を受けるおそれがある鉄道利用者について,旅客運賃認可処分の違法性を争うことを許さず,これを甘受すべきことを強いているとは考えられないから,前記鉄道事業法16条1項,同法16条5項1号及び同法23条1項1号は,このような鉄道利用者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含んでいると解するのが相当であるとして,前記の者らの原告適格を肯定した事例
2 居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者らがした,鉄道事業法16条5項1号に基づく旅客運賃の変更命令又は同法23条1項1号に基づく旅客運賃上限の変更命令の義務付けを求める訴えにつき,違法に高額な旅客運賃が設定された場合,前記の者らの経済的負担能力いかんによっては,同鉄道を日常的に利用することが困難になり,職場や学校等に日々通勤や通学等すること自体が不可能になったり,住居をより職場や学校の近くに移転せざるを得なくなったりすることになりかねず,仕事や居住場所などといった日常生活の基盤を揺るがすような損害が生じかねないのであって,このような損害については,事後的な金銭賠償等により救済することが容易ではないから,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるとして,前記訴えを適法とした事例
3 近距離の利用者が遠距離の利用者に比べて不当に割高の旅客運賃を負担することになっていることなどを理由としてされた鉄道運賃変更認可処分の無効確認請求につき,鉄道事業法(平成11年法律第49号による改正前)16条2項2号にいう「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするもの」とは,前記旅客運賃が合理的かつ正当な理由なく,特定の旅客を個別的に優遇又は冷遇するもの,例えば,鉄道事業者が旅客の信条や宗教等によって異なる旅客運賃を適用する場合を指すものと解するのが相当であるところ,前記旅客運賃は全ての旅客に同様に適用されるものであり,特定の旅客によって異なるものではないから「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするもの」には該当するということはできず,また,旅客運賃設定又は変更の認可に当たっては,あくまで当該旅客運賃を設定する路線全体をみて,同項1号にいう「能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むもの」であるか否かを審査することが要求されているものというべきであって,前記旅客運賃が遠距離逓減制となっていることをもって「能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むもの」に該当しないということはできないから,前記処分に同法16条2項1号又は2号の規定する認可要件に違反する違法があるとは認められないとして,前記請求が棄却された事例
裁判日:西暦2014-02-19
情報公開日2017-10-19 11:55:35
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平成26年2月19日判決言渡
平成25年(行コ)第187号

鉄道運賃変更命令等,追加的併合申立控訴事件

主文1
本件控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由

(前注)略称は,原判決の例による。
第1

当事者の求めた裁判

1
控訴の趣旨

(1)

原判決を取り消す。

(2)

国土交通大臣が平成22年2月19日付けでA株式会社に対してした同社
とB株式会社の間の鉄道線路使用条件の設定を認可する旨の処分を取り消す(本件請求①)。
(3)国土交通大臣が平成22年2月19日付けでC株式会社に対してした同社とB株式会社の間の鉄道線路使用条件の設定を認可する旨の処分を取り消す(本件請求②)。
(4)

国土交通大臣は,鉄道事業法23条1項4号に基づき,A株式会社及びB
株式会社に対して,上記(2)記載の鉄道線路使用条件の設定について,B株式会社が同社○線の運行によってA株式会社の営業区間(○駅と○駅の間)で取得する旅客運賃及び特別急行料金収入相当額を線路使用料としてA株式会社に支払い,A株式会社が同社の上記営業区間でB株式会社が同社○線の運行に要した経費をB株式会社に支払う方式での鉄道線路使用条件に変更するよう命ぜよ(本件請求③)。
(5)

(主位的請求)
運輸大臣
(現在の国土交通大臣)
が平成10年9月4日付けでA株式会社
(当

時の商号はD株式会社)に対してした旅客運賃変更認可処分は無効であ
ることを確認する(本件請求④)。
(予備的請求)
運輸大臣
(現在の国土交通大臣)
が平成10年9月4日付けでA株式会社
(当
時の商号はD株式会社)に対してした旅客運賃変更認可処分を取り消す(本件請求⑤)。
(6)

国土交通大臣は,鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基
づき,A株式会社に対し,上記(5)記載の認可処分に係る旅客運賃上限及びその範囲内で届け出られた旅客運賃について,同法16条2項の定める適正原価・適正利潤の原則に基づき,上記(4)記載の鉄道線路使用条件変更命令により定められた線路使用料に基づいて算定された収入額と現時点における収入と原価を基準とするとともに,特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをすることがないよう変更するよう命ぜよ(本件請求⑥。なお,原審における本件請求⑥及び本件請求⑧の請求の趣旨は,いずれも旅客運賃上限等について
距離に比例した原則の下に変更を求めるものとされていたところ,控訴人らは,
当審において,
控訴の趣旨の訂正を申し立て,
上記及び後記(8)のとおり,
この部分を削除するように請求の趣旨を改めた。しかし,これは,請求の内容を実質的に変更するものではないと認められるので,請求の趣旨の表記の訂正をしたものと扱う。)。
(7)

国土交通大臣が平成22年2月19日付けでB株式会社に対してした同社
の○線に係る旅客運賃上限設定認可処分を取り消す(本件請求⑦)。(8)

国土交通大臣は,鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基
づき,B株式会社に対し,上記(7)記載の認可処分に係る旅客運賃上限及びその範囲内で届け出られた旅客運賃について,特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをすることがないよう変更するよう命ぜよ(本件請求⑧)。2
(1)

控訴の趣旨に対する本案前の答弁
原判決主文第2項を取り消す。

(2)
3
上記取消部分の請求に係る訴えをいずれも却下する。
控訴の趣旨に対する本案の答弁
本件控訴をいずれも棄却する。

第2

事案の概要
A株式会社(A)は,平成10年9月4日付けで鉄道事業法16条1項(平成
11年法律第49号による改正前のもの)に基づく旅客運賃変更認可処分を受けて,A線(○駅と○駅の間の32.3kmの路線)における旅客の運送を行っている。
また,B株式会社(B)は,Aが所有する鉄道線路(○駅と○駅の間)及びC株式会社(C)が所有する鉄道線路(○駅と○駅の間)等を使用して,○線(○駅と○駅の間の51.4kmの路線)における旅客の運送を行っているところ,国土交通大臣は,
平成22年2月19日付けで,
鉄道事業法15条1項に基づき,
A及びCがBとの間で上記鉄道線路の使用について設定した各使用条件(線路使用料や旅客運賃収入の配分方法等を定めたもの)を認可する旨の各処分をするとともに,同法16条1項に基づき,Bの申請に係る○線の旅客運賃上限の設定を認可する旨の処分をした。
本件は,
A線の沿線住民である控訴人5名が,
(1)A及びCがBとの間で設定し
た各鉄道線路使用条件はAのみに不利益なもので,A及びその利用者の利益を著しく害するものであり,鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれ(鉄道事業法15条3項)があることからすれば,国土交通大臣がA及びCに対してした上記各使用条件の設定を認可する旨の各処分は,鉄道事業法15条3項に規定する認可要件に違反する違法なものであると主張して,上記各処分の取消しを求める(本件請求①及び②)とともに,国土交通大臣が同法23条1項4号に基づきAとBの間の鉄道線路使用条件を変更するよう命じることの義務付けを求め(本件請求③),(2)Aの旅客運賃は,距離と運賃が比例しておらず近距離の旅客運賃が異常に高くなっており,特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものである(平成11年法律第49号による改正前の鉄道事業法16条2項2号)ことや,能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むもの(同項1号)ではないことなどからすれば,運輸大臣(現在の国土交通大臣。以下同じ。)がAに対してした旅客運賃変更認可処分は,平成11年法律第49号による改正前の鉄道事業法16条2項に規定する認可要件に違反する違法なものであり,また,上記各使用条件の設定を認可する旨の各処分が取り消されるべき違法なものであって,Aに適正な線路使用料が支払われるべきことからすれば,上記旅客運賃変更認可処分は,後発的に,同項に規定する適正原価・適正利潤の原則に違反する違法なものとなったところ,これらの違法は重大かつ明白であると主張して,主位的に上記旅客運賃変更認可処分の無効確認を求め(本件請求④),予備的に同処分の取消しを求める(本件請求⑤)とともに,国土交通大臣が鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基づきAに対して旅客運賃上限等を変更するよう命じることの義務付けを求め(本件請求⑥)(3)国土交通大臣がBに対してした○線に係る旅客運賃上限設定認可処分は,,
Aに対する旅客運賃変更認可処分と同様の理由により,鉄道事業法16条2項に規定する認可要件に違反する違法なものであると主張して,上記旅客運賃上限設定認可処分の取消しを求める(本件請求⑦)とともに,国土交通大臣が同法16条5項1号及び同法23条1項1号に基づきBに対して旅客運賃上限等を変更するよう命じることの義務付けを求める(本件請求⑧)事案である。原審は,本件請求①,②,③,⑤,⑦,⑧に係る訴えを却下し,本件請求④及び⑥をいずれも棄却した。これに対し,控訴人らが控訴した。前提事実及び争点とこれに対する当事者の主張は,
次のように補正するほかは,
原判決の事実及び理由の第2の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。
1
原判決29頁22行目のさらに,の次に平成8年算定要領の内容は極めて不合理である上,を加える。
2
原判決32頁2行目の用いられなければならないの次にし,Aについて現在の債務償還条件等を前提にしてシミュレーションをしても相当程度の旅客運賃の値下げは可能という結果が出ているのであるを加える。
3
原判決120頁15行目の次に,行を改めて次のとおり加える。

ウ平成8年算定要領の内容が極めて不合理であること平成8年算定要領は,配当所要額(適正利潤)として,払込資本金に対し10パーセント配当に必要な額の鉄軌道事業分担額を定めており,事業規模からみて資本金額の大きい中小民間鉄道会社においては,これにより不相当に総括原価の額が高額となり,旅客運賃の上限も高額とすることが可能となるものであるし,また,A運賃変更認可処分に際して同算定要領に基づいて平成9年度の実績値のみを基礎としてなされた将来推計は,Aのその後の実際の業務実績と大きく乖離したものであったことからすると,平成8年算定要領の内容は極めて不合理である。したがって,かかる不合理な平成8年算定要領に基づいてなされたA運賃変更認可処分は,改正前鉄道事業法16条2項の認可要件を満たしていないにもかかわらずされた違法なものであり,その違法は重大かつ明白であるというべきである。
4
原判決121頁8行目のさらに,の次に平成8年算定要領の内容は極めて不合理である上,を加える。
5
原判決128頁4行目の次に,行を改めて次のとおり加える。

また,Aについて,現在の債務償還条件等を前提にしてシミュレーションをしても,キャッシュフローには余力があり,公費負担の下で引き下げられている現状の運賃まで値下げした上,通学定期について他の私鉄並みの運賃水準まで値下げすることは十分に可能という結果が出ているのであるから,国土交通大臣は,鉄道事業法23条1項1号に基づき,旅客運賃上限等の変更を命ずる義務を負っている。
第3

当裁判所の判断

1
当裁判所は,控訴人らの本件請求①,②,③,⑤に係る訴えは不適法であり却下されるべきであり,その余の請求に係る訴えは適法であるが,請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)

原判決42頁3行目のそして,を削除し,6行目の末尾の次に

そして,旅客運賃認可処分は,このような個々の鉄道利用者が支払うことを余儀なくされる運賃額について直接に規定する処分である。

を加える。
(2)
原判決46頁13行目から47頁1行目までを次のとおり改める。このように,控訴人らは,日常的にA線区間内において列車を利用するについて,直接的にはBに対して旅客運賃を支払っているわけではない。しかしながら,上記のように○線のA線区間を利用する旅客はAが販売する乗車券を購入することと定められているのは,B運賃上限認可処分に係る旅客運賃上限の額がA運賃変更認可処分に係る旅客運賃の額と同じであり,Bが上記区間の旅客運賃の額をこの額(ただし,一部区間については値下げされたA線の旅客運賃と同額)とする届出をしたこと(原判決の事実及び理由の第2の2(3)ア,同ウ)を前提として,事務処理の便宜から,上記区間の乗車券の販売をAが一元的に行うこととしたものと解される。そうすると,上記区間の旅客運賃はA運賃変更認可処分とともにB運賃上限認可処分によっても規定されているものといえるので,日常的に同区間の鉄道を利用している控訴人らは,B運賃上限認可処分の取消しの訴え(本件請求⑦)についても,原告適格を有するものというべきである。(3)
原判決48頁3行目の次に,行を改めて次のとおり加える。これに対し,被控訴人は,鉄道事業法16条5項の趣旨は公益を保護することの反射的利益として鉄道利用者の利益を保護することにとどまると主張するが,同項1号が「特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるときに旅客運賃等の変更命令を発令することができると定めていることに照らすと,
こうした差別的取扱いを受ける鉄道利用者の利益を直接に保護していないと解することは困難であり,被控訴人の上記主張は採用することができない。」
(4)

原判決48頁9行目のAに対するから11行目の(本件請求⑥)までをA及びBに対する鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基づく各旅客運賃の変更命令及び旅客運賃上限の変更命令の義務づけの訴え(本件請求⑥及び⑧)に改め,13行目から16行目までを削除する。
(5)
原判決50頁21行目の次に,行を改めて次のとおり加える。これに対し,控訴人らは,本件においては,AとBとの間の鉄道線路使用条件が控訴人らが求めるような内容のものになるならば,これによりAの収入が増加して,A線の旅客運賃上限が引き下げられるべきことになると主張する。しかし,一般に鉄道線路使用条件が旅客運賃に必然的に影響を与えるものではないし,仮に影響を与える可能性があるとしても,それは同様に影響を与える様々な要素の中の1つとして働くにすぎず,その影響は直接的なものではないから,控訴人らの上記主張も直ちに採用することができない。(6)

原判決51頁25行目の及びを,に改め,26行目の(本件請求⑥)の次に,B運賃上限認可処分の取消しの訴え(本件請求⑦)及びBに対する旅客運賃上限等の変更命令の義務づけの訴え(本件請求⑧)を加え,52頁2行目の,を及びに改め,3行目の,B運賃上限認可処分のから5行目の求⑧)までを削除する。
(7)

原判決53頁12行目の次に,行を改めて次のとおり加える。

これに対し,被控訴人は,違法に高額な旅客運賃が設定されたとしても,それにより鉄道利用者に発生する損害は金銭的なものにとどまるし,およそ一般の利用者が利用できなくなるような高額の旅客運賃が設定されることは現実には考えられず,また,本件でのA線の運賃設定によって鉄道利用者に生活の基盤が損なわれるような重大な損害が発生するとは考えられないし,仮にそうした損害が発生したとしても,事業者に対する損害賠償請求ないし人格権に基づく運賃値上げ差し止め訴訟等を提起することにより救済される余地もある,などと主張する。しかし,極めて高額な旅客運賃が設定されることもあり得ないとはいえず,そうなれば鉄道利用者に上記のような生活基盤が侵害されるような損害が発生する可能性も否定できないし,その損害を事後的に賠償請求により回復することは実際には容易ではなく,また,回復しきれるものでもない。そして,違法な運賃によるこうした損害は,多数の沿線利用者にある程度定型的に発生するものであることに鑑みれば,事前救済の必要性が大きく,かつそれにより問題が合理的かつ抜本的に解決されるものといえる。(8)

原判決54頁15行目の違法となったの次にものであるところ,処分後も効力が継続する行政処分については処分に必要な要件を後発的に欠くようになった場合にはその時点から取り消し得る状態となるを加える。(9)

原判決55頁8行目の及びを,に改め,9行目の(本件請求⑥)の次に,B運賃上限認可処分の取消しの訴え(本件請求⑦)及びBに対する旅客運賃上限等の変更命令の義務付けの訴え(本件請求⑧)を加え,10行目の(本件請求①,②,③,⑤,⑦及び⑧)を(本件請求①,②,③及び⑤)に改め,13行目の,争点(5)を及び争点(5)に改め,13行目の,争点(8)から15行目の更命令の可否)までを削除する。
(10)

原判決55頁20行目の違法となったの次にものであるところ,処分後も効力が継続する行政処分については処分に必要な要件を後発的に欠くようになった場合にはその時点から違法な状態となるを加える。(11)

原判決60頁3行目の次に,行を改めて次のとおり加え,4行目行頭の
dをeに改める。
dさらに,控訴人らは,平成8年算定要領は,配当所要額(適正利潤)として,払込資本金に対し10パーセント配当に必要な額の鉄軌道事業分担額を定めており,事業規模からみて資本金額の大きい中小民間鉄道会社においては,これにより不相当に総括原価の額が高額となり,旅客運賃の上限も高額とすることが可能となるものであるし,また,A運賃変更認可処分に際して同算定要領に基づいて平成9年度の実績値のみを基礎としてなされた将来推計は,Aのその後の実際の業務実績と大きく乖離したものであったことからすると,平成8年算定要領の内容は極めて不合理であるので,これに基づいてなされたA運賃変更認可処分は違法である旨主張する。しかし,鉄道事業者が払込資本金の10パーセントという額を利潤として確保し,配当することを認めることが一般的に鉄道事業法の趣旨に反すると解すべき理由は見出せないし,Aの実際の業務実績が平成8年算定要領に基づいて算出された将来推計と乖離したとしても,これにより直ちに算定の基礎となった平成8年算定要領の内容が不合理で,これに基づいたA運賃変更認可処分に重大かつ明白な違法があると認めることはできない。したがって,控訴人らの上記主張も採用することができない。(12)

原判決62頁20行目から21行目にかけての
BからAに対してBをからA及びCに対してに改める。
(13)

原判決64頁17行目から18行目にかけての
もなければ,線路使用料収入による増収が生じることもをがに改める。
(14)
原判決64頁23行目から65頁15行目までを次のとおり改める。(c)これに対して控訴人らは,BがAとCの鉄道施設を使用し,また,AもCの鉄道施設を使用することにより,全体として首都圏と成田空港を結ぶ路線となっているにもかかわらず,本件各線路使用条件によると,BとCはそれにより増加した収益を取得することができるのに対し,Aは,収益が減少することはないとしても,増加した収益の配分をほとんど受けることができず,その結果,A線の旅客運賃が国内の他の鉄道路線と比較してもかなり高い状態に据え置かれているもので,BがAの実質的な親会社であり,Aに対して強い影響力を及ぼしていることからこのような使用条件が設定されたことが不当であると主張する。しかし,上記(a)のとおり,鉄道線路使用条件設定の認可要件である「鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれがないか否かは,
鉄道
線路使用条件の設定に関する鉄道事業者相互の経営判断を尊重しつつ検討すべきものであり,
それは,
当事者間に親子会社の関係があるなどの事
情により一方当事者が他方に影響力を有していたとしても変わりはない。そして,
鉄道線路使用条件の設定において,
双方の当事者に必ず増収が生
じるようにすることを鉄道事業法が求めているとは解せないし,
A運賃変
更認可処分に係るA線の運賃水準を同法が許容していないと解すべき根拠も見出せない。
そうすると,
本件において控訴人らの上記主張のような事実があったと
しても,
そのことにより直ちに,
本件各線路使用条件の内容が鉄道線路の
適切な維持管理や鉄道利用者への良好かつ安定的な鉄道輸送サービスの提供に支障を及ぼすおそれがあると認めなかった国土交通大臣の判断に重大かつ明白な違法があるとまではいえない。」
(15)
原判決65頁21行目の次に,行を改めて次のとおり加える。(d)以上によれば,本件各線路使用条件認可処分が重大かつ明白な違法があり無効であるとはいえない。したがって,そのことを理由として国土交通大臣が鉄道事業法23条1項1号に基づきAに対して旅客運賃の上限の変更を命ずるべき理由もない。
(16)原判決66頁16行目の次に,行を改めて次のとおり加える。(エ)また,控訴人らは,Aについて,現在の債務償還条件等を前提にしてシミュレーションをしたところ,キャッシュフローには余力があり,現状の公費負担による値下げ運賃まで値下げした上,通学定期について他の私鉄並みの運賃水準まで値下げすることは十分に可能という結果が出ているのであるから,国土交通大臣は,鉄道事業法23条1項1号に基づき,旅客運賃上限等の変更を命ずる義務を負っていると主張する。しかし,前記(ウ)のとおり,現状においてAの旅客運賃等の収入が適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えているとは認められず,控訴人らが提出するシミュレーションの結果(甲135)も,この点を左右するものではない。また,同シミュレーションは,「前提となる情報の正確性については,なんら確認作業を行っておらず,従って,結論の正確性を保証するものではない。とされているとおり,その正確性に留保がつけられている上,そこでは将来の条件の変動は考慮されていないので,この点に変動があった場合には,いずれにしてもその結論は妥当しないこととなるものである。
そうすると,
上記シミュレーションの結果を考慮に入れても,
国土交通大臣が鉄道事業法23条1項1号に基づき旅客運賃上限等の変更を命じないことが裁量権の範囲を超え又はその濫用となるものとは認められない。」
(17)
原判決66頁21行目の次に,行を改めて次のとおり加える。(3)争点(8)(B運賃上限認可処分の適法性)について控訴人らは,B○線の旅客運賃は,鉄道利用者に混乱を生じさせないという理由で,A線の旅客運賃と同額に設定されており,近距離の旅客運賃が異常に高い「メタボ運賃となっているから,B運賃上限認可処分についても,A運賃変更認可処分と同様に違法であると主張している。しかし,
近距離の利用者に遠距離の利用者に比べて割高の旅客運賃を負
担させていることにより運賃設定が違法となるものではなく,
その他,

運賃上限認可処分に違法となる原因があるとはいえないことは,
A運賃変
更認可処分に関して前記(1)イに説示したのと同様である。
したがって,
B運賃上限認可処分の取消しを求める控訴人らの請求
(本
件請求⑦)は理由がない。
(4)

争点(9)(Bに対する旅客運賃上限等の変更命令の可否)
控訴人らは,
B○線の旅客運賃は,
A線の旅客運賃と同額に設定されて
いるから,
Aに対する旅客運賃上限等の変更命令と同様に,
国土交通大臣
が鉄道事業法16条5項1号及び同法23条1項1号に基づき,
Bに対し
て旅客運賃上限等の変更を命じないことは,
裁量権の範囲を逸脱し又はこ
れを濫用するものであると主張する。
しかし,
Bに対して旅客運賃上限等の変更を命じないことが裁量権の範
囲を逸脱し又はこれを濫用するものでないことは,
Aに対して旅客運賃上
限等の変更を命じることが裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものでないことについて前記(2)のとおり述べたことがそのまま妥当するのであり,
Bに対して旅客運賃上限等の変更を命じないことが裁量権の範囲
を逸脱し又はこれを濫用するものであることの理由となる他の事情も見当たらない。
以上によれば,
Bに対して旅客運賃上限等の変更を命じることの義務付
けを求める控訴人らの請求(本件請求⑧)は理由がない。」
(18)

原判決66頁22行目行頭の(3)を(5)に改め,23行目から24行目にかけての及びを,に改め,25行目の⑥)の次に,B運賃上限認可処分の取消しの訴え(本件請求⑦)及びBに対する旅客運賃上限等の変更命令の義務付けの訴え(本件請求⑧)を加える。
2
したがって,原判決が本件請求①,②,③,⑤に係る訴えを却下し,本件請求④,⑥を棄却したのは相当であるが,本件請求⑦及び⑧に係る訴えを,不適法なものとして却下した(ただし,原判決は,仮に上記訴えが適法なものであるとしても,いずれにしても本件請求⑦及び⑧は棄却されるべきものである旨を判示している。)のは相当ではない。しかし,この部分につき原審に差し戻すことは相当ではなく(民事訴訟法307条ただし書き),本件では控訴人らのみが控訴していることから,上記部分を取り消して請求を棄却することも不利益変更の禁止の原則に反するので,結局,この部分についても控訴人らの控訴を棄却すべきものである。
よって,本件控訴はいずれも理由がないことに帰するので,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第20民事部

裁判長裁判官

坂井
裁判官

佐藤美穂
裁判官

内田博久満
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