判例検索β > 平成23年(行ウ)第48号
懲戒免職処分取消請求事件
事件番号平成23(行ウ)48
事件名懲戒免職処分取消請求事件
裁判年月日平成25年3月25日
法廷名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2013-03-25
情報公開日2017-10-19 12:24:49
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平成25年3月25日判決言渡
平成23年(行ウ)第48号

懲戒免職処分取消請求事件
主1文
大阪市長が原告らに対し平成22年12月22日付けでした各懲戒免職処分をいずれも取り消す。

2
訴訟費用は被告の負担とする。

第1


請求
主文同旨

第2

事案の概要

1
事案の概要
本件は,
大阪市長から平成22年12月22日付けで懲戒免職処分
(以下
本件各処分という。)を受けた同市技能職員の原告らが,被告に対し,本件各処分はその理由としている事実の誤認に加え,裁量権の逸脱又は濫用の違法があるから無効であるとして,同各処分の取消しを求めている事案である。
2
前提事実
本件において,当事者間に争いがないか又は各末尾記載の証拠から容易に認めることができる事実は以下のとおりである。
(1)

原告ら及び被告環境局河川事務所本所
(以下,河川事務所
単に
という。


の職員らについて

原告ら
原告らは,いずれも被告の技能職員として任用され,原告Aは昭和62
年から,原告Bは平成2年から,原告Cは平成8年から,原告Dは平成13年から,原告Eは平成13年から,いずれも河川事務所において現場作業員として業務に従事した。
原告らは,本件各処分以前に懲戒処分を受けたことはない(弁論の全趣旨)。

河川事務所の業務内容等
(ア)

河川事務所においては,河川事務所本所及びF詰所に分かれて,ネ
ットコンベアー船5隻を主力とする11隻の収集船で,土曜日,日曜日,祝日を除く毎日河川水面のごみ収集を実施し,収集したごみは陸揚げ後,焼却処理等を行っている(甲6の1)。
(イ)

現場の作業員は,船に2,3人ずつ乗り込み,操船,清掃(ごみの
収集,廃棄場までの運搬)を業務として行っていた。各船は,役割及び受け持ち範囲が決まっており,船ごとの担当者が概ね決まっていたが,上司の指示により変更されることもあった。
(ウ)

平成21年7月から本件各処分時ころまでの間,河川事務所の所長
はG(以下G所長という。),清掃作業を行う職員を統括する技能統括主任はH(以下H統括という。)であった。
また,同年7月ないし10月時点において,原告らはいずれも本所の同じ部門に属しており(ただし,原告Aは,平成21年7月時点においては,部門監理主任であり,その余の原告らは一般職員であったが,同年10月時点においては,何れの原告も一般職員であった。),平成22年7月時点においては,原告A,原告D及び原告EがIと同一部門に属しており,原告B,原告Cはそれぞれ別部門に属していた。
(以上,乙52の別紙1,2)
(2)

被告環境局における平成22年の問題状況等


処分行政庁は,同年5月31日,被告の市立斎場の職員らが利用者から
心付けを受領した件につき,職員42名に対する懲戒処分等を行い,うち10名の職員については懲戒免職処分をした(以下市立斎場事案という。)(乙4)。
そこで,被告では,服務倫理規範の策定,服務規律確保推進委員会や不祥事根絶推進チームの設置,職員に対する研修・啓発等を内容とする,大阪市不祥事根絶プログラムを取りまとめて,公表した(甲4の1及び2,乙53)。

被告は,同年8月ころ,被告環境局J事務所において,職員がペットの
引取りに係る処理手数料の釣銭等を心付けとして受領していた事実が明らかになり,その後,大阪市公正職務審査委員会からの勧告を受けた(以下J事務所事案という。甲5の1)。

被告環境局長は,同年8月23日付けで,同局の担当課長及び事務所長
に対し,市立斎場事案及びJ事務所事案を踏まえ,各職員に対し,職務に関しいかなる便宜供与も受けてはならない旨を定める倫理規定を周知させ,その遵守のために指導をし,服務規律の確保の徹底を求める内容を記載した服務規律の確保についてと題する通知をした(乙4)。

G所長は,同年8月末ころ,朝礼で,河川事務所の職員に対し,上記服務規律の確保についての内容を読み上げて通知するとともに,清掃業務中に集めた物につき,
中を見ないで廃棄物として処理するよう指示した
(以
下,これをG所長の廃棄指示という。)。
(3)

原告らによる領得行為等及び被告による調査


原告Bと原告Dが,平成21年7月から10月ころにかけて,河川での
清掃中に,原告Bが現金15万円を発見し,当時同じ班に属していた原告B,原告A,原告C及び原告Dの4名が各2ないし3万円ずつを受領した(以下平成21年領得という。なお,原告Eは,聴き取り調査において当該現金の受領を否定していたため,本件各処分の処分理由とされていない。)。

Iと原告Eは,平成22年6月,二人で河川清掃業務に従事していたと
ころ,原告Eが,同業務中に鞄を拾い上げ,その中を確認すると,10万円程度の千円札の束が出てきたので,それを取り出し,当該千円札を1枚ずつはがしてバケツの水で洗った上,その約半分に当たる5万円相当をIに交付した。
この際,Iは,その一部始終を隠れて所持していた時計型カメラを用いて原告Eに気付かれないように撮影した(以下,撮影した映像を本件映像という。)。(以上,乙54の1ないし11,55,弁論の全趣旨)

Iは,同月23日,大阪市の市議会議員に対し,本件映像を記録したD
VDを渡し,

河川事務所職員が河川清掃中に拾い上げた物を再利用している。また,中には現金も拾得物としてあり,それは職員で分けたりしている

旨を告げた(以下本件内部告発という。)。被告は,同月24日午前中,上記市議会議員から,Iが本件内部告発をしたことを伝えられた。
(以上,乙50)

被告は,同年10月5日から,原告らを含めた被告職員に対し,聞き取
り調査(ヒアリング)を行い,原告らに,同日から同月8日にかけて(第1回),同年11月9日から同月11日にかけて(第2回),同月26日から同年12月6日にかけて(第3回),同月7日から同月13日にかけて(第4回),原告Cには同月13日に(第5回)の合計4回ないし5回のヒアリングをした(なお,被告が,原告らに対する同ヒアリングの内容をまとめた書面(乙5ないし9,10ないし25の各2)を録取書という。)。

被告は,平成22年11月18日,環境局河川事務所不祥事案調査チーム(以下調査チームという。)を設置するとともに,同月4日付けで河川水面清掃における拾得物対応マニュアルを作成し,警察への届出対象物やその手順等を定めた。また,同年12月ころ,環境局河川事務所不祥事案に係る職員の処分量定の基準を策定した(甲6の1ないし9)。
(4)

上記調査結果に基づく被告の対応及び懲戒処分等


被告は,調査チームの上記調査結果に基づき,管理職による職場巡視の
強化や総務局不祥事根絶推進チームによる事前告知なき職場訪問や査察,人事異動や配置転換の活性化,上記マニュアルの改正,河川事務所職員らの誓約書の提出等の再発防止策を定めるとともに,環境局不祥事案再発防止委員会を設置して,当該再発防止策の実施状況の確認や改善を図ることとした(甲6の1)。

被告は,同年12月22日付けで,上記調査結果と後記(6)イの処分量定
の基準に基づき,河川事務所における物色・領得行為(以下本件不祥事という。)について職員らに対する懲戒処分等をしたが,その内訳は,原告ら5名及びIの合計6名が免職となり,他に,1ないし6月の停職となった者が21名,戒告7名,文書訓告8名であった(甲6の9)。このうち,G所長を除く河川事務所の管理監督者(同事務所を所管する環境局の局部長,課長,課長代理,本局係長)ら合計15名が,戒告又は文書訓告の処分となっているところ(後記(6)イ(イ)),G所長は,同じく河川事務所を総括すべき管理監督者であった上(後記(6)イ(イ)),減給処分となるゴルフバック使用行為をしていたこと(後記(6)イ(ア)b)を併せて重い処分にすべきであるとされ,1月の停職処分を受けた(以上,乙1,48・24頁)。
(5)

本件各処分及びその理由について
被告は,平成22年12月22日付けで,原告らが以下のアないしオ記載
の行為(以下本件処分理由又は本件非違行為という。)を行い,これらの事実が明らかに職務上の義務に違反するとともに,本市職員としてその職の信用を著しく傷つけ,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があったものと認められ,極めて遺憾であるとして,後記(6)イの処分量定の各基準(各本件処分理由の末尾に括弧内で示す。)に該当することを理由に,地方公務員法29条1項各号に基づき本件各処分をした上,その旨の処分説明書(以下本件処分説明書という。)を交付した(甲8の1ないし5)。(なお,以下の処分理由の事実の存在については,当事者間に争いがない。)ア
原告A(甲8の1)
(ア)

昭和62年度から河川事務所に在籍していたところ,平成21年,
業務遂行中に拾得した金銭10数万円のうち,2~3万円の分配を受けた(後記(6)イ(ア)a(a))。
(イ)

上記在籍期間中に,職場で貯えた業務遂行中に拾得した金銭の一部
を,分配金として受け取るとともに(後記(6)イ(ア)a(b)),ジュース代等にも使用した(後記(6)イ(ア)a(c))。
(ウ)

業務遂行中に拾得した有価証券等を使用した(後記(6)イ(ア)a
(b))。

原告B(甲8の2)

(ア)

平成2年度から河川事務所に在籍していたところ,平成21年,業
務遂行中に拾得した金銭15万円のうち,3万円の分配を受けた(後記(6)イ(ア)a(a))。
(イ)

上記在籍期間中に,職場で貯えた業務遂行中に拾得した金銭の一部
を,分配金として受け取るとともに(後記(6)イ(ア)a(b)),ジュース代等にも使用した(後記(6)イ(ア)a(c))。
(ウ)

業務遂行中に拾得した有価証券等の分配を受けるなどするとともに
(後記(6)イ(ア)a(b)),業務遂行中に拾得した物品を私的に取得した(後記(6)イ(ア)b)。

原告C
(ア)

平成8年度から河川事務所に在籍していたところ,平成21年,業
務遂行中に拾得した金銭15万円のうち,3万円の分配を受け,その後,廃棄した(後記(6)イ(ア)a(a))。
(イ)

上記在籍期間中に,業務遂行中に拾得した金銭の一部を,分配金と
して受け取る(一部は廃棄)とともに(後記(6)イ(ア)a(a)),ジュース代等にも使用した(後記(6)イ(ア)a(c))。
(ウ)

職場で貯えた業務遂行中に拾得した有価証券等の一部の分配を受け
るとともに(後記(6)イ(ア)a(b)),業務遂行中に拾得した物品を私的に取得した(後記(6)イ(ア)b)。

原告D
(ア)

平成13年度から河川事務所に在籍していたところ,平成21年,
業務遂行中に拾得した金銭15万円のうち,3万円の分配を受けた(後記(6)イ(ア)a(a))。
(イ)

上記在籍期間中に,上記事案以外にも,業務遂行中に拾得した金銭
の一部を,分配金として受け取るとともに(後記(6)イ(ア)a(a)),ジュース代等にも使用した(後記(6)イ(ア)a(c))。
(ウ)

業務遂行中に拾得した有価証券等を使用するとともに,業務遂行中
に拾得した物品を私的に取得した(後記(6)イ(ア)b)。

原告E
(ア)

平成13年度から河川事務所に在籍していたところ,平成22年6
月頃,業務遂行中に拾得した金銭約10万円を,同僚職員と分配の上,約5万円を受け取り,その後,廃棄した(後記(6)イ(ア)a(a))。(イ)

上記在籍期間中に,職場で貯えた業務遂行中に拾得した金銭の一部
を,ジュース代等に使用するとともに(後記(6)イ(ア)a(c)),業務遂行中に拾得した物品を私的に取得した(後記(6)イ(ア)b)。(6)

被告の処分指針等(本件各処分に関する部分に限る。)


懲戒処分に関する指針(乙31,32。なお,乙31は,平成21
年7月1日改正のもので,同年8月1日以降になされた非違行為をその対象とし,乙32は平成22年3月1日改正のもので,同日以降になされた非違行為を対象とするが,以下に記載した限度では内容に変化がないので,特に区別することなく懲戒処分指針という。)
(ア)

基本的な考え方

懲戒処分指針においては,まず,懲戒処分の具体的な量定について考慮する要素として,①公務遂行に係る非違行為か否か,②非違行為の動機,態様,状況及び結果の各内容,③故意又は過失の程度,④非違行為を行った職員の職責及び当該職責と非違行為との関係,⑤被害者がいる場合の示談及び和解の有無,⑥司法判断,⑦他の職員及び社会に与える影響,⑧過去の非違行為の存否等に加え,⑨勤務態度や非違行為後の対応を挙げ,これらを総合考慮して処分内容を決定するとし,標準例(懲戒事由とそれに対応する懲戒処分の例)が列記されている。
なお,事案の内容によって,標準例に挙げる処分量定以外となること,一連の行為が複数の非違行為に該当する場合は,標準例で規定する懲戒処分よりも重い処分をすることもできること,及び,標準例にない非違行為も懲戒処分の対象となり,標準例に掲げる取扱いを参考に量定を判断することも定められている。
(イ)

標準例
公金物品に係る横領,窃盗,詐欺(標準例2(1))
これらの行為を行った職員は,免職とする。


公金物品に対する物品損壊(標準例2(3))
故意に職場において物品を損壊した職員は,減給又は戒告とする。

a以外の横領,窃盗,詐欺,恐喝,脅迫等(標準例3(2))
これらの行為を行った職員は,免職又は停職とする。


b以外の器物損壊(標準例3(5))
故意に他人の物を損壊した職員は,減給又は戒告とする。

監督責任関係

(a)

指導監督不適正(標準例5(1))

部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で,
管理監督者としての指
導監督に適正を欠いていた職員は,減給又は戒告とする。
(b)

非行の隠蔽,黙認(標準例5(2))

部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず,その事実を隠蔽
し,又は黙認した職員は,停職又は減給とする。

被告が平成22年12月ころ作成した環境局河川事務所不祥事案に
係る職員の処分量定の基準(以下本件処分方針という。乙1の別紙1ないし3)
(ア)

金品を私物化した職員について


現金・有価証券

(a)

引き上げた後に個人的に私物化した場合は,免職を基本とする。

ただし,
金額が少額の場合は軽減をし,平成22年2月以前の場合
は停職3月,同年3月以降については停職6月とする。また,受領を断ったにもかかわらず,
無理やりに渡された現金を日本赤十字社に寄
附などした事案については処分しない。
(b)

職場でストックされたものから後に分配を受けた場合,停職3

月とする。
ただし,
回数カードなど有価証券について分配を受けた後
に,使わずにごみとして処分した場合は,一定の軽減をし,停職1月とする。
(c)

ジュース代として船の中で容器等にストックし,自分も使用し

た場合,停職1月とする。

物品
物品を家に持ち帰る,又は職場で使用するなど私物化した場合は減
給とする。

その他
身分証明書等のごみとしての廃棄行為については,そもそもごみの
清掃・処分を本来業務としているので,処分しない。なお,不正な使用や証拠隠滅のための廃棄等,特に悪質な場合は処分対象とする。本件不祥事にかかる告発行為については,事案の解明に一定寄与したため,軽減要素とする。
本件不祥事(金品の私物化)以外に特に考慮すべき事情が認められる場合は,加重又は軽減要素とする。
事務所全体を総括すべき管理監督者が金品を私物化した場合は,加重要素とする。
(イ)

金品を私物化していない管理監督者

所属長を始め,河川事務所を管理すべき職責を有していた職員,金品を私物化していた職員の管理監督者に対し責任を問い,局部長及び課長は戒告,課長代理及び係長(本課)は文書訓告,係長(所長)は戒告とする。
(7)

本件に関する訴訟等


原告らは,平成23年3月29日付けで,被告に対し,本件各処分の取
消しを求める訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。

Iは,同年2月10日に懲戒免職処分の取消しを求めて当裁判所に訴訟
(当庁○年(行ウ)第○号)を提起し,平成24年8月29日,上記処分を取り消す旨の判決が出され,被告は控訴せず,同判決は確定した(以下別件訴訟という。甲26,当裁判所に顕著な事実)。
Iは,平成24年8月29日付けで被告環境局に復職した(甲27,弁論の全趣旨)。

原告ら及びIは,金銭の領得行為について,占有離脱物横領罪で検察庁
に送致されたが,不起訴処分とされた(甲25,乙53,弁論の全趣旨)。第3
1
争点及び争点に対する当事者の主張
争点
本件各処分に裁量の逸脱又は濫用があるか

2
争点に対する当事者の主張

(原告ら)
(1)

本件処分方針の合理性について


被告が定める懲戒処分指針に従えば,遺失物横領を参考に,その法定刑
(1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料)や行為の態様や保護法益(財産犯である)からして,参照すべきは器物損壊程度というべきであり,そうすると,量定として,原則は減給又は戒告であり,諸事情を考慮して加重したとしてもある程度の停職までであり,免職処分は,重すぎるというべきである。

本件非違行為のうち免職相当とされたものは,停職の対象だった行為と
全く同様に,引き上げた現金を船ごと(なお,実際の分配は,船ごとよりも大きなグループである班でなされたが,実態からして船ごとの評価は変わらないというべきである。)で分配した行為であり,実際のところ行為者の認識としても,職場での慣行に従い,普段と同じ扱いとしたものであって,主体性も個人性も他の(停職相当とさ
れた)対象行為と何ら変わるところではない。そこで,本件非違行為のうち免職相当とされたものは,この線引きでいけば,分配に該当することが明らかであり,これを私物化と判断したとすれば,被告の事実誤認である。
被告の本件処分方針によれば,引き上げられた物を同じ船ごとであるのに,そのまま分けるのと,後で分けようと思ってストックしておいて後で分けるのとで,また,いったん他のストックと混在したかどうかで結論が異なることになる。しかし,それらの間で,個人的,主体的の度合いにおいて,また,市民の信頼の失墜という点においても,違いがあるということはできない。そうであれば,この区別を免職と停職との線引きに用いることは,著しく合理性を欠き,仮に裁量を認められるとしても,それを逸脱したものといわなければならない。

被告は,私物化を停職とする場合でも,最も重い量定とした旨を主張す
るが,平成22年3月以降の最も重い停職処分は1年であり,これが最も重い量定でないことは明白である。すなわち,被告は,軽減して停職となる場合には,最も重いわけではない停職の処分とするとしたのである。また,分配の停職処分は,平成22年3月以降も,3か月で据え置きであり,最も重いわけではない量定が相当の行為であるという評価をしていたことになる。そうであれば,免職の根拠とされる行為との差が,なおさら劇的に大きなものでなければ,区別は正当性を持たないといわなければならず,そうすると,本件処分方針は,その差を正当化するだけの根拠とはなり得ない。
(2)

本件各処分において考慮されるべき事項について


行為自体に悪質性が大きいとはいえないこと
平成21年領得については,その他多数の(原告らを含むほぼ職場全員
が行っていた)着服行為についても,刑法の規定で見ても遺失物横領までであり,通常大きな問題とされる窃盗,詐欺,横領(通常は業務上横領となろう)とは法定刑も格段に異なり,行為の持つ悪質性はそれだけ低い(ないし,高くない)との評価が妥当である。
実際,上記ポイントとなった平成21年領得については不起訴処分となっている。
また,当事者の意識,規範としても,ごみなのであって(G所長の廃棄指示が出されているくらいである。),だからといって着服して良いとの意識であったわけではない(A調書8頁等)としても,悪質性の高い行為として意識すべき規範があったものとはいえない。
被告の本件処分方針によれば,金銭と有価証券は同一に論じら
れており(違いは事後的に捨てた場合の停職の期間への影響の有無だけである。),むしろ個人的に私物化か分配(=職場ぐるみ)かが大
きな線引きの要素となっており,そうすると被告は金銭であること自体を特段重いものと扱っていたとはいえず(付言するに,高額であった場合に処分を加重するといった扱いもない。),この裁判でだけその点の差異が強調されるということは妥当でない。
以上のとおり,行為自体の悪質性が(それだけで免職とすべきほどに)大きいとはいえない(だからこそ,本件のポイントとなった平成21年領得がなかった他の同僚職員については免職処分が選択されなかったということができる。)。

被告の責任が大きいこと
(ア)

長年にわたり,河川事務所ぐるみで清掃業務中に遺失物の物色・領
得行為がなされていた。このような事態を招いたことには管理・監督を怠ってきた被告に大きな責任がある。そのような措置を執ることなく,いきなり遺失物の取扱いについて一度として指導や注意を受けたことがない原告ら平の作業員を懲戒免職処分とすることは余りにも苛酷であり,公正でない。
(イ)

遺失物法によれば,施設において物件の拾得をした拾得者は,

警察ではなく,当該施設の施設占有者に物を引き渡すべきものとされ
(同法4条2項),
警察への届出をすべきはその施設占有者である(同
法13条以下)。かかる規定,また,大阪市がする職務の中で引き揚げる物であるということからすれば,河川を施設と見るか,あるいは拾得者を個々の職員ではなく大阪市であると見るかはともかく,拾得物の把握・管理を行い警察への届出をすべきは被告であったといえる(問題発覚後に策定された被告作成のマニュアル(甲6の5)もその趣旨であると読める。K課長がした届出(乙44)にも,実際に拾った者は局の職員である旨の記載がある。)。
(ウ)

被告はかかる措置を長年怠って放置し,ようやく初めて組織として
とられた対策は,G所長の廃棄指示であり,これも上記遺失物法の趣旨に反するとともに,市民からの信頼も損ねるものであった。ようやく,同年11月にマニュアル策定に至って,被告が本来すべき管理の仕組みが取られたのであり,そうすると,これ以前の行為については懲戒処分の量定との関係では相当減殺されて評価されることが相当である。(エ)

以上のように,被告はいわば実態を知って,あるいは,容易に知り
うべき状況にあったのに,漫然とこれを放置し,すなわち職場ぐるみでの物色・着服行為を助長していたと評価するべきところであり,この点は本件の判断にあたり重要な意味を持つというべきである。

平成21年領得事件におけるのと同程度(万円単位)の現金は他にも相当数引き揚げられていると合理的に推認されること
仮に,万円単位の現金であることに多少の意味はある(他事例
との差異が認められる)とされるとしても,同程度(万円単位)の事例は他にも相当数あると合理的に推認されるのであり,本件のポイントとなった平成21年領得だけを突出して重く評価することは不公平・不公正である。職員らに対するヒアリングの結果によれば,
河川事務所全体で見れば,
ある程度継続的・定量的に,10万円を超えるような現金の拾得が毎年行われていたと推認するのが合理的であり,本件のポイントとなった平成21年領得の金額の大きさを過大に評価したり,少なくとも免職の相当性を導く事情とすることは誤りである(被告自体も,そのように扱ってはいない。)。


平成21年領得の行為自体は,他の件と何ら変わらないこと
上記は,本件の審理の過程で明らかになっているところであるが,引き揚げた金品を同船なりグループ間のメンバーで分配したという行為であって,他の多数の件と行為自体は何ら変わるところがない(違いがあるとすればそれは客体だけである。)。
被告の量定表(甲6の7)やその主張からすると,免職とされた根拠は,職員間での分配ではなくて個人的な私物化だとの(行為自体
が質の異なるものであるとの)事実認定ないし評価であるようにも思われる。そうであるとすれば,この点は被告の事実誤認ということになる。なお,同表(甲6の7)を見ると停職6月は,小額の場合にのみ存在することになっているが,停職6月の者2名の供述を見ると着服が小額であったとは到底いい難い(乙46・20と21の者)のであり,なにゆえに停職6月が導かれたのが,同表(甲6の7)からは不明といわざるを得ない。

原告らの処分歴がないこと等
平成21年領得は,その時期が,平成22年8月のG所長の廃棄指示や同年の問題等についての注意喚起よりも前であり,すなわち職場ぐるみの不正行為が普通に(何らの改善の契機なく)行われていた時期のものである。また,本件の発覚を契機として,一度は更生や改善の機会ということで免職以外の処分が選択されたということもない。
原告らについて,本件と関連付けられるべき懲戒処分歴もない。


過去の類例との不均衡について
過去の類似事例との比較の観点からも,本件の事実関係で免職は明らかに均衡を欠き,重すぎる。平成21年領得の時期は,類似事例についての注意喚起等がなされるようになるより前の事案である。


Iに対する扱いとの不均衡について
別件訴訟判決において,Iに対する懲戒免職処分は取り消されているところ,被告は,この判決に対し控訴をせず,停職の処分に見直して復職させている。
被告は,Iについては本件内部告発により結果として事案の解明につながったことを有利な事情としているが,
処分取消しの事情の一部にすぎず,
その有無により懲戒免職と停職とを分かつような事柄ではない。Iは職場では畏怖されている存在であって,遺失物の領得行為の中止を提言しても圧力を受けるような立場ではなかったのに,内部では意見をいうこともなく本件内部告発に踏み切ったのであり,公益通報者保護法によっては保護されない。
均衡の観点からしても,Iについては5万円の領得行為が認定され,さらに粗暴行為・器物損壊も加わっているのに,停職処分であり,原告らへの処分がこれよりも重いというのでは明らかに(事実に比して)不公正である。この事情も,処分の違法性を基礎づける方向に働く事情である。ク
その他の軽視できない事情について
(ア)

原告Cについては,分配を受けた3万円を廃棄している。原告Bに
ついても,後日ではあるが家からそのまま見つかったのでそのまま廃棄している。
(イ)

原告らはこれまで長年にわたり,河川事務所職員として真面目に稼
働し,本件不祥事への荷担はあったものの,それ以外に問題を起こすこともなく,善良かつ地道に仕事をしてきていた。また,原告Bについては,私領域における拾得を警察に届けるという行為も行っていたような真面目な人物である。
(ウ)

また,原告らは,本件不祥事への荷担については反省し,免職の処
分は重すぎるとして本件で係争中であるものの,他の同僚職員と同様の停職の処分であれば受け入れる気持ちである。
(エ)

本件不祥事については職場における慣行のようなものだったのであり,これに抗して改善を求めるべきということは,特に本件のように異動も少ない職場で,なかなか簡単なことではない。
(3)

原告Eについて
Iは,周囲を憚らず日常的に原告Eに対し,暴力行為に及んでおり,原告Eは,Iの言動に強い恐怖心を抱いており,Iの意思に従順に従い迎合して接するしかない状態にあり,約10万円をIと分配したのは,普段から原告EがIを恐れ,Iに逆らうことができず,原告Eの自由な意思に基づくものではない。
原告Eが,鞄から見つけた札の束を広げて乾かすなどし,明るく振る舞う態度を取り,二つに分ける作業を行い,うち片方を(船から)持ち上がり,上司への報告もしなかった,といった各行為は,Iから自己の身を守るためにした,しかも,それ以外にその目的のためには取りようがなかった(すなわち,やむを得ずにした)行為であって,刑事的にいえば不法領得の意思を欠く,あるいは正当防衛ないし緊急避難が成立する行為であり,実際の刑事事件としては起訴猶予となっている。
そうすると,
この行為をもって免職の根拠とした,
あるいは私的な
私物化などと評価したであろう被告の認定ないし評価は,重大な事実誤認があるか,著しい評価の誤りがあることが明らかである。


このような状況が生じたのは,原告Eをはじめ複数の職員がIの暴力行為を申告し,救いを求めてきたにもかかわらず,被告がこれを放置してきたためであり,被告にも重大な責任があるといわざるを得ない。

原告Eは,数日中に上記5万円を廃棄している。
仮に,原告Eが5万円を一旦は不法に領得したとの評価を免れないとしても,原告Eは実際には何らの利益も得ておらず,そのまま着服した場合に比べれば,違法性,悪質性に格段の差があることは明らかである。また,原告Eの廃棄行為は,結果としてはG所長の廃棄指示にも合致する。

原告Eが平成22年6月に5万円を領得した行為については,すでに不起訴処分となっている。


その他,原告Eが拾得したとされる物品については,処分説明書には明記されていないが,原告E自身の申告によればサッカーボールや帽子などである。これらは真実廃棄されたものであった可能性も高く,仮に遺失物であったとしてもその価値は極めて低い。また,ジュース代に関しても,原告Eが個人的に着服したのではなく,(たとえそれが違法なものであったとしても)職場の慣行に則って使用していたにとどまる。しかも,具体的な金額は不明であるが,原告Eが得た利益自体はさほど大きなものではありえない。


原告Eは,河川事務所における本件のごとき慣習が正されねばならないことを認識し,反省及び後悔の念を抱くとともに,自身に何らかの懲戒処分が科されることも当然のこととして受け入れている。かかる原告Eの心情に鑑みれば,事前に何らの注意・指導もなされなかったにもかかわらず,いきなり懲戒免職として更生の機会を一切奪うことは,明らかに不相当と言わざるを得ない。

(4)

まとめ
以上によれば,本件各処分は,余りに重きに失し,公平・公正を欠くも
ので,仮に被告に裁量権を認めるにしてもその逸脱・濫用が明らかなものであるから,違法であって取り消されなければならない。
(被告)
本件各処分に裁量の逸脱ないし濫用があったとする原告らの主張は争う。(1)

本件処分方針について


本件不祥事は,被告において,組織的な不祥事が立て続けに起き,被告
としても,特に服務規律の確保に努め,職員に対し遵法意識の涵養・徹底を図ってきた中で,河川事務所職員が,河川の清掃という職務を遂行する際に拾得した金品をほしいままに私物化したという事件である。そして,被告のこのような服務規律確保に係る取組みや,不祥事案に対する厳格な態度は,当然,原告らも十分認識していた。
他方で,調査の結果,金品を私物化していたことが判明した職員は27名に及んでおり,各々の行為態様に応じた処分の均衡を図り,公平・公正な処分を実施する必要があった。
かかる状況を踏まえ,被告として,外部の専門家を交えた特別の調査チームにより真相を調査するとともに,本件不祥事に関与した多数の職員に対する懲戒処分を決するに当たっては,処分の公平・公正を図るため,統一的な本件処分方針を定めて,上記調査を踏まえて判明した多種多様な行為態様のうち,典型的に見られた行為態様を類型化し,類型間の悪質性,非難の軽重の差に応じて基本量定に差をつけつつ,個別事案を踏まえて軽減要素を定め,具体的行為態様をあてはめた際に,類型間での処分量定に不公平がないよう調整を図ったものであり,それによって本件各処分が決定されたものであるから,その内容及び手続には,何ら不合理な点はない。イ
原告らは,本件非違行為は,一般非行行為たる遺失物横領罪の法定刑や
実質的可罰性に照らし,本件処分方針が,懲戒処分指針の3一般非行
の(5)器物損壊の処分例である減給又は戒告と比較して重すぎ,過大であるなどと主張するが,失当である。
まず,懲戒処分指針は法令ではない内部規範であるが,同指針によっても,標準例にない非違行為についても懲戒処分の対象となり得,それについては標準例に掲げる取扱いを参考に判断することとされ,その判断に当たっては,様々な事情を総合的に考慮することとしており,個別事案の内容によっては標準例に掲げる量定以外になることがあり得ることが明記されているのであって,単に,直接該当する標準例がないからとか,公金物品に当たらないから一般非違行為の類型に含まれるといった結論が当然に導かれるものではない。
また,そもそも,懲戒処分の本質は,全体の奉仕者たる公務員としての職務にありながら,公務員としてふさわしくない行為を行い,市民の信頼を失墜させたことに対する制裁である。そして,本件不祥事の悪質性は,まさに公務員でありながら職務上拾得した市民の財産を私物化したという点にあり,著しく市民の信頼を失墜させるものであって,職務外で行われた一般非行行為とは根本的に異なる。したがって,処分量定を定めるに当たって,かかる観点を斟酌し,公金横領等に比類するものとして特に厳正に定めたことは,何ら裁量逸脱を招くものではない。

さらに,原告らは,本件処分方針において,物品等や少額現金等の拾得
事例が停職にとどまることと比較し,引き上げた現金の領得をこれより重く量定することが公平性を欠くと主張する。
しかしながら,十数万円という高額な現金が,ごみとして捨てられることなど通常ありえないのであって,かかる現金をごみだという認識しかなかった(原告A・8頁)として,河川に浮遊する物品等と同じ取扱いをすべきであるなど,それこそ通常の市民感覚や社会通念に明らかに反した主張である。また,河川事務所において,物品や小銭等はともかく,本件のような高額現金が揚がることは極めてまれであり,拾得したものが現金,しかも高額であれば,当然,直ちに届け出るべき要請が高まるのは当然であって,また,かかる高額現金の拾得・分配についてまで慣行化していたとの事情が認められないにもかかわらず,原告らが,このような高額現金が揚がりながら,上司に取扱いを相談しようとすらせず,そのまま自らのものとして私物化するなどという行為は,まさに原告らの規範意識の鈍磨を基礎づけるものであって,悪質極まりないと評価せざるを得ない。(2)

本件各処分について

本件非違行為
本件非違行為のうち,本件各処分において特に問題となるのは,①原告
A,原告B,原告D,原告Cについては,平成21年頃,業務遂行中(原告A・原告Cについては他の作業船の業務遂行中)に拾得した15万円のうち,約3万円の分配を受けた行為(原告Cについては,さらに,これを廃棄した行為),②原告Eについては,平成22年6月頃,業務遂行中に拾得した約10万円を,Iと分配の上,約5万円を受け取り,廃棄した行為である。
なお,高額の金員分配を受けた点についてであるが,Iに関しては,同人が分配を受けたのは,本件内部告発に向けた証拠収集過程で行われたものである可能性があり,また,本件内部告発によって河川事務所における拾得物の不適切な取扱いの実態が明らかとなり,是正が図られたという特殊事情があったが,原告らについては,かかる事情は存在せず,単純に領得意思をもって分配を受けたものであり,分配を受けた点について斟酌すべき事情はない。
また,原告らは,偶々事案を特定できた本件についてのみ処分することが不公平であると主張する。懲戒処分にあたっては,一定の具体性や裏付けが当然要請されるところ,本件不祥事において,原告らの非違行為以外は,その時期,行為者,金額,行為態様等が,処分可能なほどに特定され,かつ,具体的に裏付けを得られた事例は存在しない。そして,このように,他の職員につき抽象的かつ漠然とした疑いが存在する場合において,意図的に放置するような特段の事情がある場合は別論,それらを解明できない限り,処分可能な程度に具体的に特定され,裏付けが取れている原告らの本件非違行為に対する処分はできないなどとして,処分が違法となる道理はない。

他例との不均衡論
原告らは,他の環境局事例である市立斎場事案,J事務所事案や,不適正資金事案について言及し,本件各処分と不均衡であるなどと主張するが,いずれも本件とは事案を異にする上,本件処分方針は額や態様等により免職,停職,減給と区分しているところ,市立斎場事案はより厳正な姿勢で臨んでいるし,J事務所事案は,渡されるという態様あるいは金額も少額につき処分は停職(3月,10日)というものであるし,不適正資金事案については,その使途が,正規の手続さえ履践すれば公的に認められた支出であり,公務と無関係な個人的使用に用いられたものがなかったという特殊性を踏まえたものであり,これら事案との関係から,比例原則違反,公平原則違反など本件各処分の不当性が導かれるものではない。

停職との線引き,他の処分量定との差異
また,原告らは,引き上げた現金につき船単位で分配を受けた行為は,
免職相当である引き上げた後に個人的に私物化した場合にはあたらず,停職相当である職場でストックされた後分配を受けた場合に該当する,あるいは,両者には免職と停職を基礎づけるほどの質的差異はなく,よって,免職処分が重すぎるなどとして,明白な事実誤認があるなどと主張する。
しかし,職務上引き上げた市民の財産をほしいままに領得する行為は,引き上げた後に個人的に私物化する行為であれ職場でストックして分配を受ける行為であれ,それ自体到底許されるものではないが,両行為類型には主体性・積極性に大きな差があり,これに差を設けることに合理性が認められるのは明らかである。しかも,前述のとおり,河川事務所において高額現金が拾得される例は極めてまれであり,調査において,原告らとI以外に,かかる行為を具体的に特定できた事案は見い出せず,本件処分方針を定めるにあたって,停職相当のストック型ジュース型は,そ
もそも,高額現金を拾得した場合を前提としていない。そして,免職相当である私物化行為についても,金額が少額であり,ストック型・ジュース型と比較して,実質的に悪質性が特に大きいとはいえない場合には,軽減要素として斟酌し,停職とし,量定の均衡を図っている。そして,本件非違行為は,いずれも,高額な現金を拾得した直後に分配し,私的に費消ないしは廃棄したという事案であって,本件処分方針において,免職相当と判断した私物化行為の典型例であり,ほかに何らの軽減要素も存在しないから,原告らの主張はいずれも失当である。

廃棄について
本件において,原告A,原告D,原告Bについて廃棄したという事情は
ないが,原告C,原告Eについては,原告Eは平成21年の金銭の分配等を受けていると認められ,そもそも,本件5万円については廃棄したなど,その信用性には強く疑いが持たれるところではあるものの),被告としては謙抑的に分配金を廃棄したと認定していることから,廃棄について触れておく。
この点,まず,本件処分方針では引き上げた後に個人的に私物化した場合は免職を基本とするところ,懲戒処分の趣旨が,公務に対する信頼を失墜させたことに対する制裁である以上,私物化とは市民の信頼を裏切り業務上拾得した市民の財産を私物同様に処分することを意味し,これに廃棄行為が含まれることは明らかである。

被告の責任について
原告らは,
本件不祥事の背景として事前の注意や指導がなかったことや,

多くの河川事務所職員も同様のことをしてきた点を有利な事情として主張する。
しかし,環境局本局が河川事務所におけるかかる実態の可能性を初めて認識するに至ったのは本件不祥事にかかる平成22年9月のことであって,それまでは,河川の浮遊物はごみとして処理し,何らかの経緯で現金等が出てくれば拾得物として届け出るのが当然という認識であり,本局としては,河川事務所においてかかる物色行為が行われているとの認識がないのであるから,本局において実態調査や対策を実施していないのはやむを得ない。他方,職務上拾得した物品を私物化する行為は,刑法上の違法行為に該当しうるところ,かかる行為が公務員として許されないことは個別の指導・注意がなくとも自明のことであり,実際,河川事務所においても,金銭の領得を拒否していた職員もいたところであって,原告ら自身,その旨明確に自覚していたところである。にもかかわらず,このような徹底した取組みのほかに,本局において認識していなかった本件不祥事について,被告が個別に指導,対策をとってこなかった(とることができなかった)点を捉えて,被告が管理監督を長年怠ってきたというのは,明らかに評価の誤りというほかなく,これを被告の帰責事由であるとか,処分の軽減事情としなければ違法となるなどという主張は,およそ失当である。また,上記のごとき本件特有の事情を措いても,そもそも,既述のとおり,大阪市において組織的な不祥事が多発し,被告として遵法意識の浸透と再発防止に向けた取り組みを徹底していたところであり,原告らも被告の実施するコンプライアンス研修を受講していたにもかかわらず,敢えて続けられていた本件不祥事が,仮に職場ぐるみのものであったとしても,そういった事情は原告らの本件非違行為の悪質性を高めこそすれ,これを軽減する要素となるものではない。コンプライアンスや社会的責任が強く叫ばれる現在の社会観念に照らせば,ある部門における組織ぐるみであったとか当該組織の浄化能力が十分でなかった場合に,その事情をもって処分を軽減すべき(あるいは軽減しなければ裁量逸脱になる)などといった考え方は,健全な社会観念におよそ逆行するものと言わねばならず,現場で行われていた本件不祥事を本局が認識するに至った場合に厳格な態度で臨むことが裁量逸脱になる余地はない。

他の処分事例と比較
職務に関連して敢行された本件とは異なる,職務外の財産関係の非違行
為において,懲戒免職とした事例は多数あるところであり,他の地方公務員,国家公務員にも目を転じると,職務に関連して敢行された本件とは異なる,職務外の財産関係の行為で,懲戒免職となっている事例は枚挙に暇がない。
全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする公務員たる原告らが敢行した本件非違行為に対し,被告が懲戒免職処分をもって臨むことが市民感覚や社会観念に沿うものであることは明らかである。
(3)

原告Eについて
原告らは,原告Eは,Iへの恐怖心から約5万円の分配を受けたものであ
り,無理やり渡され,寄付や自宅で保管したケースと同様,処分なしとすべきと主張する。
しかしながら,原告Eは,ヒアリングにおいてその旨の供述を一切していない上,Iの日常的な粗暴行為は措いても,少なくとも本件非違行為に関しては,まさに本件映像によれば,原告Eは笑顔で,積極的かつ主体的に現金の引き上げ・洗浄に携わっているところであって,かかる分配金約5万円について,Iに対する恐怖心から受け取らざるを得なかったなどとの弁解は到底信用できない。また,原告Eが否認したため,処分対象事実として認定することはあえて控えたが,
原告Eを除く原告ら4名に対する処分理由である,
平成21年領得に関しては,原告Eを除く原告ら全員が,ヒアリングにおいてEが分配役をしたり,Eも分配を受けていることを認めており,このように他にも拾得物を個人的に領得していた可能性がある原告Eにおいて,本件についてだけ,恐怖心からやむなく受け取ったとか,受領時点から領得意思が一切なかったなどということはおよそ考えがたい。
その他,原告Eが脅されてやむなく物色,分配していたような事実を窺わせる資料は存在せず,かえって別件訴訟において,Iは,上記5万円の分配にあたって,物色するよう指示したことや,誰にも言うなよ,言ったら分かっているやろうななどの発言を明確に否定している。それどころか,Iによれば,原告Eが受け取りを断ろうとするIに対して,

それは困ります。ここでは分けるようになってますから

と分配を持ちかけており,原告Eの5万円の私物化行為が,無理やり渡され,寄付や自宅で保管したケースに該当しないことは明らかである。
(4)

結論
以上のとおり高額の現金事案だけでも十分に免職に値するものであるが,
加えて,原告Aには,保管金銭の受け取りとジュース代等としての使用及び拾得有価証券等の使用,原告Bには,保管金銭の受け取りとジュース代等としての使用,拾得有価証券等の受け取り及び拾得物品の取得,原告Cには,拾得金銭の受け取りとジュース代等としての使用,保管有価証券等の受け取り及び拾得物品の取得,原告Dには,拾得金銭の受け取りとジュース代等としての使用,拾得有価証券等の使用及び拾得物品の取得,原告Eには,保管金銭の受け取りとジュース代等としての使用及び拾得物品の取得といった,複数かつ継続的な非違行為が存在する。これらを総合するに,原告らによる本件非違行為は,法令に反し職務上の義務に違反するとともに,被告職員としてその職の信用を著しく傷付け,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であると認められ,原告らが全体の奉仕者たる公務員として不適であるとの判断に至ったため,被告としては,地方公務員法29条1項各号により,原告らに対する懲戒処分として,最終的に懲戒免職処分相当と量定したものであるから,裁量逸脱の違法はない。
第4
1
当裁判所の判断
認定事実
前提事実,証拠(甲6の1,乙47,48,原告A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)

河川事務所における河川からの収集物についての取扱いなど
同事務所においては,長年にわたり,その職員らの多くが,清掃業務中に収集した物(その物が鞄や財布等の場合は中身も含む。)を物色し,現金や有価証券,使用に耐えそうな鞄,財布,ゴルフ用品(ゴルフバックやボール)などについては拾得の上,使用し,運転免許証等の身分証明書のほとんどはそのまま廃棄するなどしていた。
清掃中に発見されたゴルフバックやいわゆるブランド物の鞄等は,再利用するために,河川事務所内又は付近で洗い,干したり,同事務所内に置かれるなどしていた。
また,現金や有価証券は,
乗船者又はその他の職員も含めて分配したり,
船ごとに保管するなどして休憩中の飲物代に使用するなどしていた。

G所長は,少なくとも職員らの上記物品に係る物色・領得行為や河川事務所内への保管を認識していたにもかかわらず,その改善を指示することはなく,逆に,自らもゴルフバックを受領して,使用するなどしていた。G所長は,上記事実を理由として,被告から懲戒処分(1か月の停職)を受けた。

(以上,乙47,48,原告A)
(2)

被告による調査結果について(甲6の1)
平成22年に河川事務所に在職していた技能職員31名のうち,27名が現金の拾得・分配を,19名が地下鉄の回数カードやテレホンカード,商品券等の有価証券の拾得・分配を,G所長を含む24名が物品の再使用をしていた。このうち,現金については概ね少額を飲物代の一部に当てることが多かった。
また,現金の拾得の頻度は,月に数回から年間に数回と様々で
あり,内容については,硬貨が多かったが,中には紙幣もあり,最高額は15万円であった。

本件処分理由である各拾得行為の他に,平成22年5月から夏ごろにかけて,Lという船を用いてα川での作業中に発見した1万円を両替後,同船内の食品保存容器に保存し,飲物代等に使用する,同年6月,α川での作業中に発見された5000円を乗船者3名で1500円ずつ分配する(なお,うち1名は受領を拒否したが他の職員から持ち帰りを迫られて受領し,同年6月29日に日本赤十字社へ寄附した。)など,比較的高額の現金の分配がなされた場合もあった。


調査チームは,河川水面清掃業務の実態を把握するとともに,河川の浮遊物として,鞄や財布等が流れている状況を把握するため,被告管理職員が,平成22年11月4日から同年12月10日までの26日間,全ての船(延べ182隻)に同乗し,調査を実施した結果,拾得物として,鞄32点(うち財布が入っていたものが5件),財布44点,ゴルフバック19点など合計109点を収集し,そのうち,鞄・財布・ゴルフバックに入った状況で拾得した現金を回収した件数は17件であり,合計1万2966円であった。その内訳は,100円未満が13件,100円以上1000円未満が1件,1000円以上が3件で,1件当たりの最低額は1円,最高額は7000円であった。

2
争点について(本件各処分に裁量の逸脱又は濫用があるか)
(1)

地方公務員につき,
地方公務員法所定の懲戒事由がある場合に,
懲戒処分

を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,平素から庁内の事情に通暁し,職員の指揮監督に当たる懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者は,懲戒行為に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の当該行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を総合的に考慮して,懲戒処分を行うかどうか,行う場合にいかなる処分を選択すべきかを裁量によって決定することができるものと解するべきである。したがって,裁判所が当該処分の適否を審査するに当たっては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し,その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り,違法であると判断すべきものである(最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁,同昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照)。
そして,懲戒免職処分は,被懲戒者の公務員たる地位を失わせるという重大な結果を招来するものであるから,懲戒処分として免職を選択するに当たっては,他の懲戒処分に比して特に慎重な配慮を要する。
(2)

以上を踏まえて本件各処分について検討するに,
本件各処分理由の存在に

ついては,当事者間に争いがないところ,その本件非違行為の動機,性質,態様,結果,影響を検討するに,原告らは被告の管理する河川のごみ収集業務に従事中に拾得した金銭や有価証券及び物品をほしいままに分配を受けるなどして領得したというものであり,これらの行為は,刑法上遺失物横領罪(同法254条)を構成するものである上,各原告は複数回にわたって金銭等の分配を受け,受領した金額も3万ないし5万円に及ぶもので決して少額ではなく,本件映像がテレビで放映されるなどして,今回の事件が報道された結果,被告や被告職員の遂行している公務に対する信頼が大きく失墜したことは明らかである。
(3)

しかし,前提事実(6)アのとおり,被告の懲戒処分指針によれば懲戒処分
の標準例として免職とされている公金物品に係る横領,窃盗,詐欺は,いずれも被告が所有又は占有管理している財産に関わる犯罪行為であり,被告の占有や委託信頼関係を侵害するものであるのに対して,本件処分理由を構成する遺失物横領罪は,被告においていずれもごみと認識していたことから占有管理しておらず,原告らは,その占有を侵害したものではないし,拾得した財物の管理を業務として認識していたわけではないから,領得した対象や領得に関する行為態様には違法性の点で明らかに質的に差異が認められる。さらに,上記指針により,減給又は戒告とされている職場における物品損壊と比較しても,遺失物横領罪が領得罪としての違法性を有する点は,毀棄罪である器物損害罪と異なる点は否定できないものの,職場における物品損壊は被告の所有権等を直接侵害するのに対し,遺失物横領罪は,前述したとおり,その占有を侵害するものではないから,当然に職場における物品損壊よりも違法性が強いとまでは断定し難いのである。
また,法定刑についても,業務上横領罪(刑法253条)は10年以下の懲役,窃盗罪(刑法235条)は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金,詐欺罪(刑法246条)は10年以下の懲役とされているのに対して,遺失物横領罪は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に止まり,同指針上,減給又は戒告とされている職場における物品損壊が該当する器物損壊罪(刑法261条)と比較しても,その法定刑である3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料よりも低いのである。
さらに,前提事実(7)ウのとおり,原告らは,遺失物横領罪で検察庁に送致されたが,公益の代表者である検察官において,被告が本件において主張しているような当罰性を高める事情をも考慮した上,結局は不起訴処分としたと推認されるのであって,この点は,本件非違行為の当罰性の程度を判断するに当然考慮すべき事情というべきである。
以上を考慮すれば,原告らの本件非違行為は,本件処分方針が当然依拠すべき懲戒処分指針上,当然に免職に付すべき行為に該当するとは言い難く,本件処分方針において,現金・有価証券を私物化した職員について免職を基本と規定したのは,そもそも重きにすぎることが否めない。
(4)

さらに,本件処分方針の基準について付言すれば,
同じ遺失物横領罪が成

立する場合であるにもかかわらず,現金,有価証券を私物化した場合は免職を基本とする一方で,物品を私物化した場合には減給に止まると規定している。しかし,物品でも拾得物の中に交換価値があるものが存在しないとまでは断定できず,その客観的な評価抜きに,一律にそのような差を設けるのが合理的であるとはいい難い。その結果,ゴルフバックを持ち帰って使用していたG所長は,当該行為は減給相当と評価されて監督責任と併せて停職1か月とされているものであるが(被告第1準備書面21頁),上記行為態様からすれば,上記ゴルフバックの価値が相当程度残存していた蓋然性が高く,同所長が自ら河川事務所の長として職員の服務規律を積極的に是正すべき責任を負っていながら,上記行為を行って逆に規律の弛緩を是認又は助長した責任は極めて重いことをも併せ考慮すれば,原告らが懲戒免職とされたのに対して直接の管理職で同じく原告らと同じく遺失物横領罪に該当する行為を行ったG所長が停職1か月に止まった処分の不均衡は,本件処分方針の上記処分量定の差の不合理性に依拠するものといわざるをえない。
しかも,併せて現金・有価証券の私物化については,領得した金額や時期(平成22年2月以前か否か)によって停職3月ないし6月に減軽するものとされているところ,被告は,基本的に,被処分者が供述した範囲内で裏付けの取れた相当程度具体的な事実のみを本件非違行為として認定して本件各処分を行っていると主張し(被告第1準備書面17頁),処分事由の有無や減軽事由とされる領得行為の時期等は,処分対象者本人の申告に依拠して懲戒処分を量定したことを認めており,そうすると,処分対象者が現金又は有価証券の領得行為を自ら認めたか否か,その内容如何によって,免職か停職かの処分に分かれることとなる。
前記(1)記載のとおり,懲戒免職処分は,
被懲戒者の公務員たる地位を失わ
せるという重大な結果を招来するものであるから,懲戒処分として免職を選択するに当たっては,
他の懲戒処分に比して特に慎重な配慮を要するところ,
本件のように同一の職場内での同種行為について懲戒処分をするに当たっては,各処分対象者間で処分内容に不均衡が生じないように十分配慮すべきであり,殊に,職場ぐるみで行われてきた行為を対象とする本件においてはなおさらである。また,本件については,前記1(2)で述べたとおり,被告の調査によれば,現金の拾得の頻度は月に数回から年間に数回と回答者によってばらつきはあるものの,現金が拾得されること自体はまれなことではなく,現に被告によるわずか26日間の調査の結果でも,現金回収件数は17件,合計1万2966円であり,最高額が7000円であることからすれば,むしろ頻繁にあり,どの程度の額を高額と評価するかはともかくとして,長期間の間にある程度まとまった金額が拾得されることがまれであったとまではいえない。このように,本件不祥事が組織ぐるみの長期にわたるもので,被告が主張するように河川事務所の職員全体の規範意識が鈍磨した結果生じたものである以上,非違行為が特定できないだけで,他の申告していない職員や既に退職した者においても同様の私物化が行われた蓋然性が高いというべきである上,上記非違行為が特定できないことについては前述した監督責任を長期にわたって怠ってきた被告の不作為が生み出したというべきであるから,被告においては,直近の非違行為を認めた職員のみがそれに基づき重い処分を受けるというような不公平が生じないように,河川事務所の各職員から,自己の行為のみならず,同僚の領得行為の有無についても十分な調査を行うなどし,同僚の職員からの供述によっても,それが信用できるのであれば,非違行為を認定すべきであるとともに,他にも相当程度,非違行為が特定できないために処分を免れうる退職者を含む職員の存在が窺われる場合には,非違行為が特定できた職員が懲戒処分を受けるのは当然としても,そうでないものの本件不祥事に関与した蓋然性のある上記職員との間に,処遇において免職の有無というような極端な差が生じないような配慮も行う必要があるというべきである。
しかし,被告においては本件非違行為以外は十分な裏付けが取れなかったとして,本人の申告内容のみによって非違行為を認定した上,その内容に基づき,最も厳しい本件各処分(懲戒免職処分)を行ったというのは,本件不祥事に関与した蓋然性のある退職者を含む職員と比較すると,公平を欠くといわざるを得ない。
(5)

しかも,本件においては,
被告が管理する河川のごみ収集業務に従事して

いた職員のうちG所長を含む27名もの職員が現金・有価証券・物品の領得行為を行い,停職以上の懲戒処分がなされるに至った原因やその背景には,上記1(1)アのとおり,長年にわたり,河川事務所ぐるみで清掃業務中に物色・領得行為が行われてきたことが挙げられ,管理職であるG所長も,このような状況を認識していながら,改めるどころか自らもゴルフバックを受領するなどして,現状を是認又は助長していたと認められるから,これらの事態を招いたことには管理・監督を長年怠ってきた被告に大きな帰責事由が認められる。

この点について,被告は,職場ぐるみのものであったことは,社会的非難の程度が高く厳正な姿勢で対処すべきことであり,原告らの行為の悪質性を高めこそすれ,軽減するものではない,それを宥恕すべきというような主張が通ると,組織秩序の維持・強化を図ることはできず,健全な社会観念に逆行するとも主張する。
確かに,今回河川事務所においてこれほど多数の職員による本件不祥事が発生したのは,職員の規範意識が著しく鈍磨していることを端的に表しており,社会的には強く非難されるべきで,それ自体は,当罰性を高めこそすれ,直ちに処分を軽減すべき要素とならないことは被告が主張するとおりである。
しかし,上記職員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し職務の遂行に全力を挙げて専念するように,管理監督者たる職員は必要な職務命令を発したり,指示をするなどして職員を指揮監督すべき義務があることもまた明らかであり(地方公務員法30条,32条),管理職員がそれらを怠ったため,職場における服務規律が著しく弛緩し,その結果,非違行為が行われたという場合には,管理職員がそれらの義務を果たしておれば,非違行為は招来しなかったという点において,直接の行為者ではない管理者も非違行為の発生について応分の責任を分担すべきであって,当該行為者のみが非違行為の責任を負うべきではない。この点において,管理職員の上記懈怠を本件各処分の裁量権逸脱を基礎づける事情として考慮すべきことは当然である。
そして,被告も主張するとおり,河川の清掃を業務とする公務員としては,拾得物を市民の財産として厳重に保管し,その後,警察等に届け出る等の行為を採るべきであって,利得意思をもって市民の財産を利用処分しないことは最低限の要請にすぎないこと(被告第4準備書面15頁)は論を待たず,
前記1(2)で認定したとおり,調査チームがわずか約1か月足らず調査しただけでも,清掃作業により109の物品が収集されるとともに1万2966円の現金が拾得されたことが判明したことが認められるとともに,G所長自らもゴルフバックを利用するために持ち帰っていることからしても,それらの職員に清掃業務を命じて河川の管理を行う被告においては,当然,河川の清掃業務の際に収集される物の中に有価物があることを予見してそれを把握するとともに,原告らが主張するように拾得物についての具体的な対処方法を定めて職員に徹底し,服務規律の維持に努めるべき責任があったことは明らかである(この点,被告は,職員から拾得物の届出がなかったことを正当事由であるかのように主張するが,上記責任を負っている被告においては職員に対し積極的に拾得物の届出を行うように指導すべきであったにもかかわらず,それを怠ってきたことは明らかであり,そのような管理姿勢が本件不祥事を招いたともいうべきであって,上記主張は到底採用できない。)。
しかるに,被告は,それらの義務を全く怠り,拾得物について何らの注意を払わず,長年の間,安易にそれらの物全般をごみとして認識し,あるべき上記対処方法をも職員に全く指示せず(答弁書3頁),拾得物を職員の廃棄処分に事実上委ねていたのであり,調査チームの報告書(甲6の1・13,16頁)も指摘しているとおり,このことが本件不祥事による大量の処分を招いた最大の原因であるというべきである。これは,被告が前記対策をとったことを受けても,依然としてG所長の廃棄指示が行われていることからも裏付けられる。
なお,このG所長の廃棄指示について,被告は,一層の服務規律の確保が要請されていることを踏まえ,市民に誤解を与えるような行為は慎むべきであるとして,河川の浮遊物は廃棄物として粛々と処理するようにとの趣旨でなされたものであり,拾得物を物色し,ごみとして捨てられたとは評価できない現金の存在を認識した上で,本来届け出るべきであるにも関わらず,いったん自己の支配下に入れ,事後的に廃棄するような行為を認容するものでないとも主張する。しかし,被告の上記主張は,収集した物の中身を確認することが市民に誤解を与えること,すなわち,内容次第では有価物が含まれうることを前提にするものであるところ,そうであるならば,上記のとおり,職員に対して,収集した物の内容の逐一点検を命じ,その上で有価物が発見された場合には保管し,ない場合には廃棄するように指示すべきである。しかし,被告はそのような指示をすることなく,一律に従前の慣行に従い廃棄を指示しているのであって,このような被告の対応は上記責任に反するばかりか,河川事務所職員に対し,依然として,河川から収集した物はいずれも廃棄すべきものであって,廃棄後は自分達で自由に利用処分してよいかのような錯覚を与え,このような管理者側の規範意識が職員の著しい規範意識の鈍磨を助長したことは否定できないというべきである。

また,被告は,従前不祥事が頻発したため,服務規律の確保に向けて徹底的に取り組んでいたとも主張するが,その内容をみても,他の不祥事案の発生を指摘して同種の非違行為を行わないように注意を促したり(乙34ないし37),公益通報に関し立入調査を行った(乙38,39)のが主たる内容であって,河川事務所の服務規律に弛緩がないかを具体的に調査・検討するなどして,上記背景事情の改善につながるに足りるものではなく,被告の上記不作為が招いた本件不祥事の責任を払拭するに足りるものではない。


にもかかわらず,本件処分方針によれば,上記責任を負っていた管理監督者の監督責任については,職場ぐるみの悪しき慣行を当然把握して必要な指導等を怠った現場の河川事務所長について戒告,また同所長に適切な指示・命令を行って河川からの拾得物の適正な保管,届出等が図られるように現場事務所を積極的に指導・監督すべきであったのに何らの指示等をも行わなかった本局の管理職については,文書訓告又は戒告とされるに止まっており,上述したとおり,現場の所長や本局の管理者側において現場の河川事務所職員に対し,当初から拾得物取扱いについて,上記のような適正な指示を行っておれば,本件不祥事により多数の職員が処分を受けることは防止できたことを考慮すれば,本件処分方針が依拠する懲戒処分指針には管理監督者の監督責任について減給又は戒告とするとされているにもかかわらず,本件処分方針で,戒告又は文書訓告としたのは,前述のとおり,本件非違行為に関与した職員を基本懲戒免職としたのが重きに失する可能性があることと比較すると,軽きに失するということができる。(6)

以上のとおり,本件非違行為は,公務員としての職務上の義務に違反し,
被告職員としてその職の信用を傷つけたことは明らかであるが,他方で,本件処分方針の不合理性や,原告らには従前懲戒処分歴がなく,そもそも,被告においても,
本件不祥事を招いたことに応分の帰責事由が認められるなど,
処分量定上原告に有利な事情をも考慮すれば,他に原告が主張する事情を考慮するまでもなく,懲戒処分歴のない原告らに更生の機会を与えることなく直ちに懲戒免職とした本件各処分は重きに失するものといわざるを得ず,社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したものとして違法というべきである。
3
結論
以上によれば,本件各処分は取消しを免れず,原告らの請求には理由がある
から,主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第5民事部

裁判長裁判官
中垣内

健治裁判官田中邦治裁判官峯金容

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