判例検索β > 平成25刑年(わ)第245号
強盗未遂、強盗致傷、窃盗被告事件
事件番号平成25刑(わ)245
事件名強盗未遂,強盗致傷,窃盗被告事件
裁判年月日平成26年5月29日
裁判所名・部函館地方裁判所  刑事部
裁判日:西暦2014-05-29
情報公開日2017-10-13 01:34:38
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主文
被告人を懲役8年に処する
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,平成25年10月下旬頃,自身が別件で捜査対象とされていることを察知したため,捜査機関による追及を逃れるために,北海道外へ逃走しようと考えた。被告人は,その逃走資金を得るために,窃盗強盗をするなどして現金を奪うことを企てた。
第1

被告人は,平成25年11月4日午後0時21分頃,北海道函館市a町b丁目c番d号A店事務所において,同店従業員B所有又は管理の現金約3万5300円,金券4枚(額面合計4000円)及びクレジットカード等8点在中の財布1個(時価合計約1000円相当)を窃取した。

第2

被告人は,平成25年11月18日午前9時14分頃,北海道函館市a町b丁目e番f号株式会社C店1階南西側男子トイレ内において,清掃作業中のD(当時43歳)に対し,背後からその口を手で塞ぐなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して金品を奪おうとしたが,同人に悲鳴を上げられるなどして抵抗されたため,その目的を遂げなかった。

第3

被告人は,前記第2の犯行現場から逃走後,犯行発覚を妨げようと考え,着替え用の上着を窃取することを企て,平成25年11月18日午後5時24分頃,北海道函館市a町d丁目g番h号生活協同組合E店1階株式会社F店において,同店店長G管理のダウンジャンパー1着(販売価格5990円)を窃取した。

第4

被告人は,平成25年11月20日午前0時55分頃,北海道函館
市i町j番k号北海道旅客鉄道株式会社H駅北口前敷地内において,I(当時29歳)に対し,背後からその口を手で塞ぐなどし,更に地面に倒れた同人の側頭部を手拳で殴るなどの暴行を加え,その反抗を抑圧した上,同人所有又は管理の現金約5万円及び財布等14点在中の手提げバッグ1個(時価合計約1万9300円相当)を奪い,その際,前記暴行により,同人に全治約1週間を要する頭部打撲傷の傷害を負わせた。
【累犯前科】
被告人は,⑴平成19年7月17日札幌地方裁判所苫小牧支部で窃盗罪により懲役1年10月に処せられ,平成21年5月4日その刑の執行を受け終わり,⑵その後犯した公用文書毀棄罪,器物損壊罪により平成24年3月21日仙台地方裁判所で懲役1年に処せられ,平成25年2月28日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察事務官作成の捜査報告書によって認める。
【法令の適用】


判示第1の行為
判示第2の行為

刑法243条,236条1項

判示第3の行為

刑法235条

判示第4の行為

刑法235条

刑法240条前段

種の選択
判示第1及び第3の各罪について
判示第4の罪について
累犯加重
いずれも懲役刑を選択

有期懲役刑を選択
刑法59条,56条1項,57条(前記
各前科との関係で,判示各罪の刑にそれ
ぞれ3犯の加重。ただし,判示第2及び

第4の各罪の刑については刑法14条2
項の制限に従う。)
併合罪の処理

刑法45条前段,7条本文,0条最
4
1

も重い判示第4の罪の刑に刑法14条
2項の制限内で法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条

訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

【量刑の理由】
本件において,量刑上最も重視すべきであるのは,法定刑の重さからして,判示第4の強盗致傷に関する犯情である。被告人は,周りに人がいない状況で,女性に対し,その背後から手で口を塞いで襲いかかった上,被害者の頭部を,手拳で殴り,アスファルトの地面に打ち付けさせるという暴行を加えている。このような犯行態様は,卑劣であり,かつ,素手による暴行としては粗暴で危険なものである。また,被害者の受けた財産的損害や精神的苦痛も軽視できるものではない。しかし,被告人が凶器を使用していないことや傷害の程度が結果的に全治約1週間にとどまっていることからすれば,判示第4の事案は,類型的には,強盗致傷罪の事案の中では比較的軽い部類に位置づけられる事案といえる。
これを前提に,更に被告人の犯情についてみると,被告人は,判示第4の強盗致傷のほかに強盗未遂や窃盗2件の犯行に及んでいる。このうち,判示第2の強盗未遂の態様は背後からいきなり女性を襲ったという悪質なものであり,被害者の受けた精神的苦痛も軽視できない。また,捜査機関からの逃走資金を得ようとして思うがままに本件各犯行に及んだという動機や経緯は,短絡的で身勝手極まりないものである。さらに,被告人は,2週間余りの間に,本件各犯行に連続的に及んでおり,しかも,その内容をエスカレートさせている。このような被告人の態度に対しては強い非難
が加えられるべきである。
これらの事情に加えて,被告人は,窃盗罪等の服役前科を有していること,前刑の執行を受け終わった後,8か月余りで本件各犯行に及んだこと等の事情を併せて考慮すれば,被告人の刑事責任は前記のとおり強盗致傷罪の中では比較的軽い部類に位置づけられるものの,その刑期は強盗致傷罪の処断刑の下限である懲役6年付近にとどまるものということは到底できない。そこで,被告人に対しては,その処断刑の下限をやや上回る懲役8年の刑に処するのが相当であると判断した。
なお,判示第2の犯行態様等について,被害者及び被告人の各公判供述には一致しない点がみられる。この点,被害者は,自らの体験を記憶しているとおりに率直に述べているものと認められる。しかし,被害者の供述は,背後からいきなり襲われたことによる恐怖感や驚がくの影響を少なからず受けているとも認められる。また,供述内容の違いは,上記のような事件当時の被害者の精神状態に加え,両者の体格差等からくる両者の受け止め方の違いに由来するところも多いと考えられる。もっとも,両者の供述の違いは,少なくとも公訴事実の限度では符合している上,被告人の行為の悪質さについての評価に影響を及ぼすものではないと認められる。(検察官佐藤慎也及び同栂野芳徳並びに国選弁護人丹澤友佑〔主任〕及び同田中綾太郎各出席)
(検察官の求刑・懲役9年,弁護人の意見・懲役7年)
平成26年5月29日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官

佐藤卓生
裁判官

大倉靖広
裁判官

宍戸崇
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