判例検索β > 平成23年(ワ)第21126号
損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成23(ワ)21126
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日平成25年10月17日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2013-10-17
情報公開日2017-10-19 12:09:32
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平成25年10月17日判決言渡同日原本領収
平成23年(ワ)第21126号
(口頭弁論の終結の日

裁判所書記官上原啓司

損害賠償請求事件

平成25年8月29日)
判決
大韓民国ソウル特別市龍山区〈以下略〉
原告
株式会社ジーピーシーコリア

同訴訟代理人弁護士

岩瀬吉和同石井昭仁
同訴訟復代理人弁護士



地康文
同訴訟代理人弁理士

金山賢教
大阪市北区〈以下略〉
被告株
同訴訟代理人弁護士

片山同飯島同生沼寿彦同江幡奈歩同藤田知美同岩間智女
同訴訟代理人弁理士

加藤志同横井知理同鎌田直也主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及

び理

請求
由式会社千趣英会二歩麻子
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成23年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,発明の名称をWeb-POS方式とする特許権の専用実施権者である原告が,被告の提供するサービスに係るシステムが上記特許権を侵害している旨主張して,被告に対し,民法709条及び特許法102条3項に基づく損害賠償(一部請求)並びにこれに対する不法行為日以降の日である平成23年7月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1
前提事実(当事者間に争いがないか,各項目掲記の証拠(枝番号の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)

当事者
原告は,ソフトウェア事業,特許の管理・行使,電子商取引の構築及び運営,決済端末機販売,インターネットを利用した決済代行等を業とする大韓民国の株式会社である。


被告は,書籍,カード,雑誌,レコード類の製造出版及び販売,衣料品の販売等を業とする株式会社である。

(2)

原告の特許権
原告は,次の特許権(以下本件特許権といい,その特許出願の願書に添付された明細書を本件明細書という。)について,特許権者である訴外ジーピーシーアジア

パシフィックアソシエイツインク(米国法

人)から,地域を日本国内全域,期間を本件特許権の存続期間中とする専用実施権の設定を受け,平成23年1月17日付けでその登録を受けた(甲1,2)。
特許番号特許第4579336号
発明の名称Web-POS方式
出願番号特願2010-43641
出願
日平成22年2月28日

分割の表示特願2000-331569の分割
原出願日平成10年1月9日
登イ録
日平成22年9月3日

本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,当該発明を本件発明といい,本件発明に係る特許を本件特許という。)。
ハイパーテキスト転送プロトコルを用いてハイパーテキストマークアップ言語で記述された初期フレーム表示制御クライアント・プログラム,カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラム及びPLUリスト表示制御クライアント・プログラムを含むHTMLリソースを供給するWeb-POSサーバ装置を備えた,販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システムの制御方法であって,該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対して送信された,初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが,該Web-POSクライアント装置において実行されることにより,少なくとも,1)該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して,カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程,2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し,上記Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対して,上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信される過程,3)上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して,PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると,上記Web-POSサーバ装置が,PLU表示サーバ・プログラムを起動して,PLUリスト表示制御クライアント・プログラムを生成し,上記Web-POSクライアント装置に対して,PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過程,4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記Web-POSサーバ装置に問い合わされる過程,からなり,前記Web-POSサーバ装置のPLUマスタDB内の商品カテゴリーに対応するレコード情報に基づくPLUリスト及び同PLUマスタDB内の商品情報に対応するレコード情報に基づくPLUリストが,それぞれ,前記Web-POSクライアント装置における商品カテゴリーが変更される毎に,また前記Web-POSクライアント装置における商品識別情報が入力(選択)される毎に,前記Web-POSサーバ装置から前記Web-POSクライアント装置にダウンロードされると共に,該Web-POSクライアント装置においては,前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情報をタッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,該入力手段により上記表示された商品を特定する商品に関する識別情報である商品識別情報を入力(選択)し,前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコードを取得して,該商品基礎情報と上記入力(選択)した商品識別情報とに基づいて注文商品明細情報を上記表示画面に出力する,汎用のコンピュータとインターネットを用い,ハイパーテキスト転送プロトコルに基づいて通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザのみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が記憶されている前記PLUマスタDBが前記Web-POSサーバ装置のみに設けられて,前記すべての商品基礎情報が前記Web-POSサーバ装置のみによって管理されると共に,前記タッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーに対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示される,商品情報に対応したPLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,前記Web-POSクライアント装置における上記注文商品明細情報が該Web-POSクライアント装置から前記Web-POSサーバ装置に送信されることで,販売時点情報管理が行われることを特徴とするWeb-POSネットワーク・システムの制御方法。ウ
本件発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を構成要件Aなどという。)。ただし,以下,構成要件中の次の左欄記載の用語については,括弧中において引用する場合も含め,右欄記載の略称を用いる。

構成要件中の用語


ハイパーテキスト転送プロトコル

HTTP

ハイパーテキストマークアップ言語

HTML

Web-POSサーバ装置

サーバ装置

Web-POSクライアント装置

クライアント装置

初期フレーム表示制御クライアント・プ初期フレームプログラム
ログラム
カテゴリーリスト表示制御クライアントカテゴリーリストプログラム・プログラム
PLUリスト表示制御クライアント・プPLUリストプログラム
ログラム
PLUリスト表示制御サーバ・プログラム,PLUリストサーバプログラムPLU表示サーバ・プログラム
商品カテゴリーに対応するレコード情報カテゴリー対応レコードリストに基づくPLUリスト
商品情報に対応するレコード情報に基づ商品情報対応レコードリストくPLUリスト
商品カテゴリーに対応するPLUリスト商品カテゴリーリスト
商品情報に対応したPLUリスト


商品PLUリスト

HTTPを用いてHTMLで記述された初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムを含むHTMLリソースを供給するサーバ装置を備えた,


販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システムの制御方法であって,


該サーバ装置からクライアント装置に対して送信された,初期フレームプログラムが,該クライアント装置において実行されることにより,少なくとも,
1)該クライアント装置から上記サーバ装置に対して,カテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程,
2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリストプログラムを読み出し,上記サーバ装置から該クライアント装置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信される過程,
3)上記クライアント装置から上記サーバ装置に対して,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると,上記サーバ装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,PLUリストプログラムを生成し,上記クライアント装置に対して,PLUリストプログラムが送信される過程,
4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記サーバ装置に問い合わされる過程,
からなり,

前記サーバ装置のPLUマスタDB内のカテゴリー対応レコードリスト及び同PLUマスタDB内の商品情報対応レコードリストが,それぞれ,前記クライアント装置における商品カテゴリーが変更される毎に,また前記クライアント装置における商品識別情報が入力(選択)される毎に,前記サーバ装置から前記クライアント装置にダウンロードされると共に,


該クライアント装置においては,前記サーバ装置から受信した商品基礎情報をタッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,該入力手段により上記表示された商品を特定する商品に関する識別情報である商品識別情報を入力(選択)し,前記サーバ装置から受信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコードを取得して,該商品基礎情報と上記入力(選択)した商品識別情報とに基づいて注文商品明細情報を上記表示画面に出力する,

汎用のコンピュータとインターネットを用い,HTTPに基づいて通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザのみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,


商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が記憶されている前記PLUマスタDBが前記サーバ装置のみに設けられて,


前記すべての商品基礎情報が前記サーバ装置のみによって管理されると共に,


前記タッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示される,商品PLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,

前記クライアント装置における上記注文商品明細情報が該クライアント装置から前記サーバ装置に送信されることで,販売時点情報管理が行われることを特徴とする


(3)

Web-POSネットワーク・システムの制御方法。

被告の行為(甲3,5,8,13,乙24,25,27)
被告サービス及び被告システム
被告は,業として,インターネット上においてベルメゾンネットと称するショッピングモール(以下被告サービスという。)を提供している。


別紙1の第1画面ないし第7画面について
別紙1の第1画面ないし第7画面(以下,別紙1中の画面又はソースコードを,その表題に従い第1画面,第2画面ソースなどとい
う。)は,被告が被告サービスにおいて採用しているシステムの挙動の一例であり,原告は,このシステム(以下被告システムという。)の制御方法が本件発明の構成要件を充足する旨主張している。
被告システムにおける商品の表示及び購入の流れは,次のとおりである。第1画面は,被告システムのトップページである。その上部には,被告サービスにおいて取り扱われている商品が,ファッション,妊娠出産・ベビー・キッズ,ディズニー,ナースアイテム,インテリア・雑貨,ビューティ,グルメ・スイーツ及びギフトの8つのカテゴリー(以下大カテゴリーという。)に区分され,例えば,ファッションであれば,その中に,レディースファッション,女性下着・インナー,靴・バッグ・アクセサリー,スポーツウエア・スニーカー,大きいサイズ,メンズファッション及びインポートブランドのサブカテゴリー(以下中カテゴリーとい
う。)が表示されている。このうち,レディースファッションをクリックすると,第2画面に移行する。
第2画面は,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリーの表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれている。カテゴリーの表示領域(第2画面の赤枠部分)のトップには,レディースファッションと表示され,その下に,コート,ジャケット・ブルゾン,ワンピース・チュニック,カーディガン・ボレロ・ベスト,ニット,カットソー・Tシャツ,ブラウス・シャツ,アンサンブル・セット商品,パーカー・トレーナー,キャミソール・タンクトップ,スカート,パンツ,レディーススーツ,フォーマルウェア,浴衣・着物及びレディースファッション福袋のサブカテゴリー(以下小カテゴリーという。)が表示されている。他方,右側の個別商品の表示領域(第2画面の青枠部分)には,毎週更新!新入荷&イチオシ商品として,袖口が折り返せる7分袖のシンプルカットソー等10件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている。これらのうち,小カテゴリーのコートをクリックすると,第3画面に移行し,他方,上記の袖口が折り返せる7分袖のシンプルカットソーを選択すると,第6画面に移行する。第2画面のソースコードが,第2画面ソースである。
第3画面も,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリーの表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれている。カテゴリーの表示領域(第3画面の赤枠部分)のトップには,レディースファッション及びコートが表示され,その下に,トレンチコート,ステンカラーコート,ノーカラー・スタンドカラーコート,Pコート(ピーコート),ダッフルコート,モッズコート,中綿・キルティングコート,ダウンジャケット・ダウンコート及びその他のコート商品一覧のサブカテゴリー(以下最小カテゴリーという。)が表示されている。他方,右側の個別商品の表示領域(第3画面の青枠部分)には,コートのカテゴリーで抽出された商品として,カラーコート【ネット限定サイズあり】等40件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている。このコートのカテゴリーには,合計126件の商品が登録されており,41件目以降の商品を表示するためには,2,3,4又は次の40件
というリンクをクリックする。上記の40件の商品のうち,カラーコート【ネット限定サイズあり】をクリックすると,第4画面に移行する。第3画面のソースコードが,第3画面ソースである。
第4画面には,カラーコート【ネット限定サイズあり】という商品のイメージ及び説明があり,右側にあるカートに入れるというボタンをクリックした後,カートを見るのボタンをクリックすると,第5画面に移行する。また,第6画面には,前記の袖口が折り返せる7分袖のシンプルカットソーという商品のイメージ及び説明があり,右側にあるカートに入れるというボタンをクリックした後,カートを見るの
ボタンをクリックすると,第7画面に移行する。
第5画面及び第7画面は,いずれもこのような過程を経てカートに入れられた商品の最終的な注文確認画面であり,商品のイメージ,注文番号,単価,購入予定数量,商品小計等が記載され,中程にあるご注文手続へというボタンをクリックすると,注文手続の画面に移行する。ウ
被告システムの構成及び処理フローの概要
被告システムの構成及び処理フローの概要は,次のとおりである。(ア)

サーバ構成
被告システムのサーバ構成は,別紙2のシステム俯瞰図記載のとおり
である(以下,同別紙に記載されたサーバを併せて被告サーバ群ということがある。)。なお,同別紙に表示される個々のサーバは,システム上の機能単位からみた論理的なサーバであり,ほとんどの場合,システム俯瞰図の一つのサーバに対し,物理的なサーバ装置が複数割り当てられている。
被告サーバ群は,被告サービス固有のサーバ群とそれ以外の汎用サーバ群とに大別される。
被告サービス固有のサーバ群(別紙2中の橙色表示サーバ)は,①セキュリティー等を制御するファイアウォール(OUT)及びファイアウォール(IN),②利用者のパソコン,携帯電話,スマートフォン等の端末(以下利用者端末という。)で動作するブラウザを操作することによって利用者から送信されるページ要求や,外部システム(商品検索システム等)からのページ要求を受け付け,処理するWebサーバ,③Webサーバ等の負荷分散を行うディスパッチャー,④プログラムを稼動させるアプリケーションサーバ,⑤定期的に商品情報を読み出し,商品詳細ページのHTML文書の作成等を行うSEOサーバ,⑥混雑画面やメンテナンス中に表示する画面を表示するソーリーサーバ,⑦画像の拡大・縮小,携帯電話用に画像変換を行う画像変換サーバ,⑧コンテンツを各携帯キャリア(docomo,KDDI,ソフトバンク)に対応したコンテンツに変換する携帯コンテンツ変換サーバ並びに⑨外部のクレジットカード決済システムとの通信を行うオーソリサーバから構成されている。
また,それ以外のサーバ群(別紙2中の青色表示サーバ)は,被告サービス固有のサーバよりも汎用性の高い機能を有し,被告サービス固有のサーバ群からネットワークを介して利用されており,①メールシステムをつかさどるメールサーバ,②コンテンツを保存するためのストレージ(記憶装置)であるNAS-OUT,③コンテンツを保存するためのストレージ(記憶装置)であるNAS-IN,④主に顧客との取引に利用するデータベースであるホストシステムデータベース,⑤大量のデータ処理を実行するバッチサーバ等から構成されている。
(イ)

被告システムの処理フロー
被告システムの処理フローは,次のとおりである。
被告システムは,利用者端末において一つの単独のHTML文書を実
行することで画面全体を一括的に表示する形式であり,画面上のいずれかのリンクをクリックして次画面のWebリソースに移行するときには,新たにリンク先の単独のHTML文書がWebサーバから読み出され,利用者端末上で同HTML文書が実行されることで,画面全体が更新されるようにして切り替わる動作が繰り返される。
利用者端末のブラウザにおいて,被告サービスのトップページである第1画面を表示するよう指示する要求が送信されると,Webサーバは,これを受け付けて一つのHTML文書を送信し,その結果,利用者端末のブラウザ画面には,第1画面が表示される。その際,フレームによって分割された画面に個別のファイルが各々呼び出されるということはなく,上記一つのHTML文書の記載事項のみにより利用者端末のブラウザ画面の全体が一括表示される。
利用者により第1画面のレディースファッションがクリックされ
ると,Webサーバに対し,レディースファッションのページのHTML文書の要求が送信され,これを受け付けたWebサーバは,一つのHTML文書をNAS-OUTから読み出して送信し,これにより第2画面が表示される。なお,第2画面を表示するためのHTML文書は,2時間に1回の頻度で自動的に生成されてNAS-OUTに保存されるものであり,利用者からの要求に基づいて動的に生成されるものではない。また,SEOサーバは,第2画面を生成する際,ホストシステムデータベースを参照して在庫の有無を確認し,その結果,ホストシステムデータベース上在庫がない商品はレディースファッションページから除外されるが,このページは2時間に1度しか更新されないことから,その在庫情報は,参照時点における実在庫の数量を必ずしも正確に反映していない。
第2画面においてコートをクリックすると,WebサーバはHT
ML文書をアプリケーションサーバから受領して利用者に送信し,その結果,利用者端末のブラウザ画面は,第3画面の内容に全画面が置き換わる。第3画面のHTML文書は,利用者からページの要求を受ける都度作成されるが,このページの基礎となる情報は,商品詳細ページのHTMLデータに基づいて,あらかじめ作成されている。すなわち,そのHTMLデータは,2時間に1度更新されつつ,NAS-OUTに保存されており,このデータを,被告サービスの外部にある商品検索システム(外部ASP)が,Webサーバを介して検索し,コートのページのHTML文書作成の基礎となる情報を作成する。具体的には,Webサーバでは,商品詳細ページのHTMLデータのみならず,種々のHTMLデータが参照可能となっているが,これらのデータの中から,URLの中に商品詳細ページに該当する情報を含み,かつ,HTMLデータの中にコートの情報を含むもののみが抽出される。この抽出処理は,商品詳細ページのHTMLデータのリンクをたどりながら情報を収集する処理(クローリング)であるため,1回当たりの抽出処理には4時間近くかかり,その処理が終了すると,商品検索システム(外部ASP)は,新たな抽出処理を開始し,情報を更新する。利用者がコートのページの表示を要求すると,アプリケーションサーバが,商品検索システム(外部ASP)に対して,上記基礎データの送信を要求し,当該基礎情報を受領すると,これをHTML文書に変換し,Webサーバに送信する。これを受信したWebサーバは,これをシステム内に保存することなく利用者に送信し,これを受信した利用者端末のブラウザ画面には第3画面が表示される。
利用者が第2画面又は第3画面から任意に一つの商品をクリックすると,その商品の詳細ページの要求が送信される。Webサーバは,この要求を受信すると,一つのHTML文書をNAS-OUTから取得して利用者に送信し,その結果,利用者端末のブラウザ画面には第4画面又は第6画面が表示される。ここでも,一つのHTML文書のみによって,画面全体が一括更新されている。なお,商品詳細ページのHTML文書は,SEOサーバが2時間に1回の頻度でホストシステムデータベースを参照して生成し,NAS-OUTに保存されるものであり,利用者からの商品詳細ページの要求に基づいて動的に生成されるものではない。利用者が,第4画面又は第6画面でカートに入れるのボタンをク
リックした後,カートを見るのボタンをクリックすると,アプリケーションサーバが生成した一つのHTML文書をWebサーバが送信し,利用者端末のブラウザ画面には第5画面又は第7画面が表示される。第5画面又は第7画面から,ご注文手続へというボタンをクリッ
クすると,注文手続に移行する。ここでは,利用者のクリックを契機として,順次,ログオンページ,お届け先選択ページ,配達オプション選択ページ,注文確認ページを経て,最終的に注文が確定されると,注文完了ページが表示される。これらのページのHTML文書は,いずれも,ページ要求を受信したWebサーバがアプリケーションサーバに更にページ要求し,アプリケーションサーバがホストシステムデータベースから当該注文に関する情報を取得してHTML文書に変換することによって生成される。生成されたHTML文書は,Webサーバに送信され,Webサーバから利用者に送信されることによって,利用者端末のブラウザ画面上に表示される。
被告システムにおいて,ホストシステムデータベースの在庫情報に何らかの変更が最初に加えられるのは,配達オプション選択ページから注文確認ページに移行する時点であり,このときにホストシステムデータベースにおいて仮引当てがなされ,その後,注文が確定されるか,注文が確定されないまま30分経過するまで維持される。そして,その間に注文が確定された場合には本引当てがなされ,他方,注文が確定されないまま30分経過した場合には,仮引当ては取り消される。
2
争点

(充足論)
被告は,まず,被告システムがWeb-POSに関するものであることを争っている。そして,被告システムの制御方法が本件発明の各構成要件を充足するか否かについては,上記(3)イ及びウの事実を前提とすると,次のように解することができる。
(A)被告システムは,HTTPを用いてHTMLで記述されたプログラムを含むHTMLリソースを供給するサーバ装置を備えているから,その限りで構成要件Aを充足する。これに対し,被告システムにおいて初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムが供給されるか否かについては,争いがある。
(B)被告システムが販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システムの制御方法に当たるか否か(構成要件B)については争いがある。
(C)被告システムにおいては,第2画面及び第3画面が,大きく,カテゴリーリストを表示する領域と個別商品を表示する領域とに分かれていること,これらの画面を表示するHTML文書は,被告サーバ群を構成するWebサーバから利用者端末に送信され,そのブラウザ画面に表示されること,カテゴリーリストに表示された特定のカテゴリーをクリックすると,これに該当する個別商品の一覧が表示されること,第3画面のHTML文書は,利用者からページの要求を受ける都度生成されること,利用者が第2画面又は第3画面から任意に一つの商品をクリックすると,その商品の詳細ページの要求が送信され,Webサーバは,この要求を受信すると,一つのHTML文書をNAS-OUTから取得して利用者に送信し,その結果,利用者端末のブラウザ画面には第4画面又は第6画面が表示されることから,その限りで構成要件Cを充足するが,これらの過程が構成要件Cの柱書及び1)ないし4)に記載されたとおりに実行されるものであるか否か,初期フレームプログラムがその実行中に構成要件Cの1)ないし4)を順次実行するような処理を含むプログラムであることを要するか否かについては争いがある。(D)被告システムにおいては,第3画面のHTML文書(特定のカテゴリーに分類される個別商品を表示した文書)が,利用者により商品カテゴリーの選択が変更される都度,生成され,個別商品に対応するイメージ及び説明も,利用者が特定の商品を選択する都度,商品の詳細ページのHTML文書が送信されることよって表示されることから,その限りで構成要件Dを充足するが,被告システムがサーバ装置のPLUマスタDBの要件を充足するか否かについては争いがある。
(E)利用者端末においては,被告のサーバ装置から受信した商品情報をタッチパネル,キーボード又はマウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,その入力手段により特定の商品に関する情報を選択し,サーバ装置から受信した個別商品の情報から選択した特定の商品情報に対応するイメージ及び説明を上記表示画面に出力することができることから,その限りで構成要件Eを充足する。
(F)被告システムにおいては,汎用のコンピュータとインターネットを用い,HTTPに基づいて通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザを用いて取引をすることができることから,その限りで構成要件Fを充足するが,被告システムにおいてWebブラウザのみでPOS機能が実現されているか否か,これをWeb-POSシステムと称し得るか否かについては争いがある。
(G)被告システムにおいては,商品カテゴリー,商品名及び価格からなる商品情報が被告のサーバ装置に記憶されていることから,その限りで構成要件Gを充足するが,メーカーに関する商品情報がサーバ装置に記憶されているか否か,商品情報がサーバ装置のみに設けられているか否かについては争いがある。
(H)被告システムにおいて,全ての商品情報が被告のサーバ装置のみによって管理されているか否か(構成要件H)については争いがある。
(I)被告システムにおいては,タッチパネル,キーボード又はマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,そのカテゴリー内の商品名及び説明を表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,特定の商品の情報に基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程があることから,その限りで構成要件Iを充足するが,本件発明にいうフレームの意義及び第1ないし第3フレームが同一のWebページ内に表示されることが要件とされているか否かについては,争いがある。
(J)被告システムにおいては,注文商品明細情報が利用者端末から被告のサーバ装置に送信されることから,その限りで構成要件Jを充足するが,被告システムにおいて販売時点情報管理が行われているか否かについては争いがある。
(K)被告システムがWeb-POSネットワーク・システムの制御方法といえるか否か(構成要件K)については争いがある。
そうすると,充足論に関する争点は,次のように整理することができる。(1)

構成要件B,F,J及びKの販売時点情報管理,Web-POSシステム又はWeb-POSネットワーク・システムの充足性等(構成要件A,C,D,E,G,H及びJのサーバ装置及びクライアント装置がWeb-POSに関するものであるかを含む。)
(2)

構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容
並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性

各プログラムの実行手順・実行内容について


第1ないし第3フレームの表示過程について
(ア)
(イ)

(3)

文言侵害
均等侵害

構成要件A及びCの初期フレームプログラム並びに構成要件Iの各フ
レームの充足性
(4)

構成要件A及びCのカテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムの充足性(5)

構成要件D及びGのPLUマスタDB並びに構成要件Hの商品基礎情
報の管理方法の充足性
(6)

構成要件FのWebブラウザのみの充足性

(7)

構成要件Gのメーカーの充足性


文言侵害


均等侵害

(損害論)
(8)
3
損害額

争点に関する当事者の主張
(1)

争点(1)(構成要件B,F,J及びKの販売時点情報管理,Web-POSシステム又はWeb-POSネットワーク・システムの充足性等)について
(原告の主張)
POSシステムにおいて,クライアントの端末を操作する主体は,小売業者に限られるものではなく,本件発明は,インターネット技術と共に発達したネットショッピングシステム,オンラインショッピングシステムなどと称されるECサイトシステムを排除するものではない。被告システムは,POS技術を,専用回線を用いずに,汎用のパソコン及びインターネットを用いて実現するWeb-POSネットワーク・システムの制御方法に関するものであるから,Web-POS(ネットワーク・)システムに該当する。なお,被告システムに係るプログラムを生成,発信し,クライアント装置上に表示されるWebページの内容を管理ないし支配しているのは,被告であるから,被告がWeb-POS(ネットワーク・)システムを制御し,本件発明の実施主体であることを否定することはできない。
また,被告システムにおいては,前記1(3)イ及びウのとおり,利用者が第5画面又は第7画面に表示されたご注文手続へというボタンをクリックし,注文確認ページから注文することで,ホストシステムデータベースで仮引当てがされ,注文が確定されれば本引当てがされるから,リアルタイムの販売時点情報管理がされていることとなる。
よって,被告システムは,構成要件B,F,J及びKの販売時点情報管理,Web-POSシステム又はWeb-POSネットワーク・システムを充足する。(被告の主張)
POSシステムは,一般的に,小売業において,どの商品がいつ,何個売れたかを把握するために,販売した時に1品単位で情報を収集し,コンピュータで管理するシステムと定義されており,本件明細書にも,

POSシステム(中略)は,商品が小売店で売れたその時点でその商品に関する情報を取得し,リアルタイムな管理を可能とすることを目的として構築されるシステムであり,小売業を中心として広く普及している。

と記載されている。
これに対し,被告システムは,ECサイトシステムの一つであり,利用者である消費者の端末によって利用され,小売業者の端末によって利用されるものではないから,POSシステムに当たらない。なお,仮に,利用者端末がクライアント装置に当たるとしても,そもそも被告は利用者端末を管理支配することができないから,本件発明の実施主体となり得ない。
また,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,商品詳細ページのリンクをたどりながら情報を収集する処理におよそ4時間程度の時間を要し,また,抽出対象となる商品詳細ページのHTMLデータは,2時間に1度更新されることから,商品詳細ページのデータ自体が,最大で6時間前の在庫情報を表していることもある。このようなシステムを,商品に関する情報をリアルタイムで取得し,販売時点情報管理をするシステムということはできないから,この観点からも,被告システムはPOSシステムに当たらない。
したがって,被告システムは,構成要件B,F,J及びKの販売時点情報管理,Web-POSシステム又はWeb-POSネットワーク・システムを充足しない。(2)

争点(2)(構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及
び実行内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性)について
(原告の主張)

各プログラムの実行手順及び実行内容について
(ア)

特許請求の範囲の解釈
構成要件Cは,初期フレームプログラムがクライアント装置において
実行されることによりという文言を含むが,この文言は,構成要件Cの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラムのダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,前者が後者に先行しなければならないものではない。また,上記の文言は,因果関係を示すものでもなく,構成要件Cの1)ないし4)の過程が初期フレームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示すものにすぎないと解すべきである。
なお,構成要件Cの柱書に少なくともと記載されていることなど
に鑑みると,構成要件Cの1)ないし4)に相当する過程の前後又は間に,これに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付加にすぎず,これによって,本件発明の構成要件Cの充足が妨げられるものではない。
したがって,被告システムにおいて,構成要件Cの1)ないし4)の過程の一部が初期フレームプログラムの実行開始に先行したとしても,これらの過程全体は,初期フレームプログラムが実行されることにより行われているものと解される。(イ)

実施態様1
被告システムにおいては,利用者端末において,第2画面ソースの桃
色表示部分のプログラム(初期フレームプログラム)が実行されることにより,第2画面の赤枠部分の表示領域(第1フレーム)が確保されるとともに,赤枠部分にコートというリンクが表示され,また,青枠内部に個別商品リストのリンクが表示される。
利用者が,第2画面のコートのリンクをクリックすると,利用者
端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの橙色表示部分のプログラム(カテゴリーリストプログラム)を含むHTMLソースコードのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される。これに基づき,アプリケーションサーバが,上記のプログラムを含むHTMLソースコードを作成し,これが,Webサーバから利用者端末に送信されて実行されることで,第3画面の赤枠部分のカテゴリーリスト(商品カテゴリーリスト)が表示される。
また,利用者が,第2画面のコートのリンクをクリックすると,
利用者端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの水色表示部分のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTMLソースコードのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,アプリケーションサーバにおいて,商品検索システムから受領したコートのページのHTMLソースコード作成の基礎となる情報に基づき,これをHTMLソースコードに変換するプログラム(PLUリストサーバプログラム)を起動して,上記のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTMLソースコードを生成し,これが,利用者端末に送信され,実行されることで,第3画面の青枠部分の個別商品リスト(商品PLUリスト)が表示される。
なお,利用者が,第2画面の青枠部分の袖口が折り返せる7分袖のシンプルカットソーというリンクをクリックすると,利用者端末からWebサーバに対しその商品の詳細ページの要求が送信され,利用者端末には第6画面(商品の明細情報)が表示されることから,被告システムは,商品情報の入力ごとに,これに対応するPLU情報がWebサーバに問い合わされる過程を備えている。
そして,利用者が,第3画面の青枠部分のカラーコート【ネット限定サイズあり】というリンクをクリックすると,第4画面を経て第5画面の商品明細情報が表示される。
したがって,被告システムの実施態様1は,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程を充足する。
(ウ)

実施態様2
被告システムにおいては,利用者端末において第3画面ソースの紫色
表示部分のプログラム(初期フレームプログラム)が実行されることにより,第3画面の赤枠部分及び青枠部分の表示領域が確保される。利用者が第2画面の赤枠部分に表示されているカテゴリーのうちコートのリンクをクリックすると,利用者端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの橙色表示部分のプログラム(カテゴリーリストプログラム)を含むHTMLソースコードのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される。これに基づき,アプリケーションサーバが,上記のプログラムを含むHTMLソースコードを作成し,これが,Webサーバから利用者端末に送信されて実行されることで,第3画面の赤枠部分のカテゴリーリスト(商品カテゴリーリスト)が表示される。また,利用者が,第2画面のコートのリンクをクリックすると,
利用者端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの水色表示部分のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTMLソースコードのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,アプリケーションサーバにおいて,商品検索システムから受領したコートのページのHTMLソースコード作成の基礎となる情報に基づき,これをHTML文書に変換するプログラム(PLUリストサーバプログラム)を起動して,上記のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTML文書を生成し,これが,Webサーバから利用者端末に送信され,実行されることで,第3画面の青枠部分の個別商品リスト(商品PLUリスト)が表示される。
なお,利用者が,第3画面の青枠部分のカラーコート【ネット限定サイズあり】というリンクをクリックすると,利用者端末からWebサーバに対しその商品の詳細ページの要求が送信され,利用者端末には第4画面(商品の明細情報)が表示されることから,被告システムは,商品情報の入力ごとに,これに対応するPLU情報がWebサーバに問い合わされる過程を備えている。
そして,利用者が,第4画面のカートに入れるというボタンをク
リックすることで,第5画面の商品明細情報が表示される。
したがって,被告システムの実施態様2は,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程を充足する。

各フレームの表示過程について
(ア)

文言侵害
本件発明の構成要件Iにおいては,第1ないし第3フレームの各表示
という流れが記載されているにとどまり,これらの各フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割して同時に表示されることは記載されておらず,本件明細書においても,そのようなことは示唆されていない。したがって,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割して同時に表示されないものであっても,構成要件A,C及びIを充足し得るというべきである。
(イ)

均等侵害
仮に,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割
して同時に表示されるものであると解された場合であっても,①これらが異なるウィンドウに表示されても,Webサーバ・クライアントシステム上においてPOS機能を実現することに影響はないこと,②Webブラウザ上に表示する情報を,同一ウィンドウの内部を区切って表示するか,異なるウィンドウとして表示するかは,デザイン上の問題でしかないこと,③これらの表示態様は,本件発明の効果の実現とは関係がなく,その課題やその解決手段とも無関係であることなどに照らせば,被告システムは,これらが同一のウィンドウに表示される場合と均等な構成を有しているから,被告システムの制御方法は,本件特許の侵害を構成する。
(被告の主張)

各プログラムの実行手順及び実行内容について
原告の前記解釈(原告の主張ア(ア))を前提としても,構成要件Cによれば,1)ないし4)の過程が,初期フレームプログラムの実行により初めて実現されることとなるから,これらの過程の実現の前に,初期フレームプログラムの実行開始がされると理解すべきこととなる。そして,……することによりは,その語義から,明確な因果関係を示すものと解されるから,初期フレームプログラムの実行開始が先行し,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムの実行の過程がそれに続くという前後関係がなければならない。したがって,初期フレームプログラムは,少なくとも,その実行開始に続いて,構成要件Cの1)ないし4)の過程の処理が実行され,かつ,その前提として,クライアント装置に対する初期フレームプログラムの送信が,1)ないし4)の過程に含まれるプログラムの送信に先立ってされるという,処理の時系列性の要件を備えていなければならないと解される。
しかるに,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,実施態様1の場合,第2画面の赤枠部分の領域の確保に関与するとされる第2画面ソース中の桃色表示部分及びレディースファッションの項目の表示に関する部分(原告は,21及び23頁の桃色表示部分で挟まれている部分を指すとの立場に立つと解される。)のプログラムは,いずれも第2画面ソースで示される一つのプログラムに含まれており,これらの部分は同時に利用者端末に送信されている。したがって,初期フレームプログラムとカテゴリーリストプログラムの送信のみに着目した場合であっても,処理の時系列性の要件を充足しないことになる。また,実施態様2についても,原告が初期フレームプログラムに対応すると述べる第3画面ソースの紫色表示部分とカテゴリーリストプログラムに対応すると述べる橙色表示部分は,同時に利用者端末に送信されているから,同様に,処理の時系列性の要件を充足しない。
したがって,被告システムは,構成要件A及びCに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足しない。

各フレームの表示過程について
(ア)

文言侵害
構成要件Iにおいては,商品カテゴリーに対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム),商品情報に対応したPLUリストを表示する部分(第2フレーム)及び注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経るという構成が含まれている。フレームとは,Webブラウザの一つのウィンドウをいくつかに区切り,それぞれに別々の内容を表示させるWebページの表現技法を意味するところ,本件明細書においても,第1ないし第3フレームについて,それぞれ20%程度,30%程度及び50%程度の表示面積を確保する例が挙げられており,これらがそれぞれ,カテゴリーリスト,PLUリスト及び注文商品明細を表示するものとされている。
また,本件明細書に引用されているチャート図においても,初期フレームプログラムの実行開始によって,構成要件Cの1)ないし4)の過程に関連するプログラムの実行が自動的にされることが想定されている。したがって,初期フレームプログラムは,少なくとも,第1ないし第3フレームを一つのブラウザ画面に表示するという,表示の一覧性の要件を備えていなければならないと解される。
しかるに,被告システムにおいては,原告の主張を前提としたとしても,前記1(3)イ及びウのとおり,実施態様1の場合,カテゴリーリストが表示される第2画面の赤枠部分の領域,PLUリストが表示される第3画面の青枠部分の領域及び明細フォームが表示される第5画面の緑枠部分の領域は,それぞれ別の画面に表示されている。また,実施態様2の場合も,カテゴリーリスト及びPLUリストが表示される第3画面のそれぞれ赤枠部分の領域及び青枠部分の領域並びに明細フォームが表示される第5画面の緑枠部分の領域は,それぞれ別の画面に表示されている。
したがって,被告システムは,構成要件A,C及びIに記載された各フレームの表示過程を充足しない。
(イ)

均等侵害
第1ないし第3フレームを一つの表示画面で一覧することができるこ
とは,発明の本質部分であり,それが別の画面に表示される場合と作用効果を同じくすると解することはできない。
したがって,被告システムについて均等侵害は成立しない。
(3)

争点(3)(構成要件A及びCの初期フレームプログラム並びに構成要
件Iの各フレームの充足性)について
(原告の主張)
本件明細書中に,というコードを使用すべきことを示す記述は,存在しないから,構成要件A,C及びIのフレームは,HTMLのFRAMEタグを指すものに限定されない。
第2画面,第3画面,第5画面及び第7画面の赤枠部分,青枠部分及び緑枠部分の内容は,いずれも (被告の主張)
本件明細書の記載等からすれば,初期フレームプログラムは,HTMLで記述された,FRAMEタグを用いてフレームの表示を制御するプログラムと解すべきところ,被告システムは,HTML仕様書4.01に準拠し,要素(で宣言され,で閉じるまでの一連の命令をいう。)を用いてプログラムを記述しており,タグを使用していないから,構成要件A及びCの初期フレームプログラム並びに構成要件Iの各フレームの要件を充足しない。
(4)

争点(4)(構成要件A及びCのカテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムの充足性)について(原告の主張)
被告システムがカテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムを充足することは,前記(2)の原告の主張のとおりである。これに対し,被告は,これらのプログラムの意義を後記のとおり限定的に解釈しようとするが,この主張は争う。
(被告の主張)
本件明細書の記載等からすれば,カテゴリーリストプログラムは,少なくとも,カテゴリーリストの選択内容の変化に応じて第1フレームのカテゴリーリストの選択項目を変更し,第2フレームのPLUリストの選択項目を変更することができるプログラムであると解され,また,PLUリストプログラムは,これを実行すると,PLUリストの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視,スキャナ装置の入力状態の監視,それらの監視結果に基づく第3フレームの明細フォームの記入状態の制御処理が実行されるようなプログラムであると解される。
しかるに,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,第1画面のカテゴリーからレディースファッションをクリックすると,あらかじめ用意されたHTML文書を利用者に送信し,また,第2画面のカテゴリーからコートをクリックした場合においても,所定のHTML文書をクライアント端末に送信するにすぎないから,被告システムは,構成要件A及びCのカテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムを充足しない。
(5)

争点(5)(構成要件D及びGのPLUマスタDB並びに構成要件Hの
商品基礎情報の管理方法の充足性)について
(原告の主張)
被告システムのホストシステムデータベース及びNAS-OUTは,第3画面,第4画面及び第6画面に表示されるPLUリストを生成する際に参照されるデータベースであり,本件発明におけるPLUマスタDBに該当する。PLUマスタDBがWebページを主に管理するサーバとは別のサーバに保存されているとしても,被告システムにおいてPLUマスタDBに記憶された商品基礎情報が表示されていることから明らかなとおり,WebサーバとPLUマスタDBを保存するサーバとは,連動して被告システムの一部を構成しているから,両者は一体となって本件発明のサーバ装置に該当する。具体的には,前記1(3)ウのとおり,SEOサーバがホストシステムデータベースを参照することで,商品詳細ページが生成され,NAS-OUTに保存される。そして,NAS-OUTに保存された商品詳細ページは,商品検索システムによるクローリングの対象となり,その結果,第3画面のコートのページの基礎となるデータが抽出される。
したがって,被告システムは,構成要件D及びGのPLUマスタDB並びに構成要件Hの商品基礎情報の管理方法を充足する。
(被告の主張)
構成要件Dにはサーバ装置のPLUマスタDBとあり,構成要件GにはPLUマスタDBが前記サーバ装置のみに設けられていてとあり,構成要件Hには前記すべての商品基礎情報が前記サーバ装置のみによって管理されるとあるところ,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,商品に関する基礎情報は,Webサーバとは別のサーバに保存されているから,PLUマスタDBはWebサーバ装置において管理されておらず,これらの構成要件を充足しない。
(6)

争点(6)(構成要件FのWebブラウザのみの充足性)について
(原告の主張)
被告システムにおいては,利用者が商品を購入するに当たり,利用者端末に特殊な装置は必要ではなく,Webブラウザがあれば足りることから,WebブラウザのみでPOS機能が実現されており,構成要件Fを充足する。
(被告の主張)
被告システムにおいては,利用者へのメール送信及び到着によって手続が完了し,この時点で,被告システムを経由せずに在庫情報が確定的に更新されることから,構成要件FのWebブラウザのみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムを充足しない。(7)

争点(7)(構成要件Gのメーカーの充足性)について

(原告の主張)

文言侵害
被告は,被告システムにおいて管理される商品の基礎情報にメーカー名が含まれていないと主張するが,構成要件Gの記載からも,PLUマスタDB中の商品基礎情報にメーカー名が含まれていれば足りると解すべきところ,被告は,商品名の一部としてメーカー名が入力されることを認めている。また,第2画面及び第3画面の左側にブランドを絞り込むとの記載があることから,被告システムにおいては,メーカーに関する商品の情報が商品基礎情報として管理されているというべきである。さらに,構成要件Gのメーカーは,商品の製造元としてのメーカー名というように狭く解されるべきではなく,各商品の供給元(卸問屋,メーカー等)と広く解されるべきものであり,被告システムにおいても,この程度の情報は各商品について管理されているから,構成要件Gのメーカーを充足する。

均等侵害
仮に,構成要件Gのメーカーが商品の製造元としてのメーカー名と解されたとしても,被告システムがこれに代えて商品の供給元をPLUマスタDBに記憶している場合に,POS機能を実現する上で支障があるものではなく,また,そのような置換は容易であり,かつ,本件発明の本質的部分を構成するものともいえない。したがって,被告システムは,製造元としてのメーカー名が商品基礎情報としてPLUマスタDBに記憶されていることと均等な構成を有しているから,被告システムの制御方法は,本件特許の侵害を構成する。
(被告の主張)

文言侵害
被告システムにおいては,一部の商品を除き,取扱商品の基礎情報にメーカー名は含まれておらず,それが入力されている商品も,利用者が商品を参照した際の利便のために入力されるものにすぎないから,データ項目としてのメーカー情報が管理されているということはできず,構成要件Gのメーカーを充足しない。


均等侵害
原告の均等侵害の主張は争う。

(8)

争点(8)(損害額)について

(原告の主張)
原告は,平成23年1月17日以降,日本国内において本件特許権に係る専用実施権を有しており,被告システムの使用により専用実施権を侵害されている。被告は,被告システムを使用した被告サービスにより,平成22年に436億円の売上を計上しており,平成23年に入ってからも,同額ないしそれ以上の売上を計上しているものと考えられる。したがって,原告の損害は,同年1月17日以降,本件提訴日までの158日間に得られた売上の3%に相当する実施料相当額である5億6620万円(計算式:436億円×3%÷365日×158日)を下らない。
また,原告は,本件訴訟追行に当たって弁護士費用150万円を支出した。したがって,原告の損害額は,5億6770万円を下らず,その一部として,1億円を請求する。
(被告の主張)
争う。
第3

当裁判所の判断
1
争点(2)ア(構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容に関する充足性)について
まず,争点(2)アから判断する。
(1)

特許請求の範囲の解釈
本件発明の構成要件Cの柱書及び1)ないし3)においては,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムの送信及び実行が,①サーバ装置からクライアント装置に対して初期フレームプログラムが送信される(構成要件Cの柱書き前段),②送信された初期フレームプログラムがクライアント装置において実行される(同後段),③クライアント装置からサーバ装置に対して,カテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される(同1)),④この要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリストプログラムを読み出す(同2)前段),⑤サーバ装置からクライアント装置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信される(同2)後段),⑥クライアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると,サーバ装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,PLUリストプログラムを生成する(同3)前段),⑦クライアント装置に対して,PLUリストプログラムが送信される(同3)後段)ことが記載されている。そして,上記①及び②の過程と,③ないし⑦の過程とが,ことによりという語により結び付けられている。
また,構成要件Iには,タッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示される,商品PLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と記載されているところ,ここには,初期フレームプログラムに用いられているのと同じフレームという語が用いられていることから,商品カテゴリーリストを表示する第1フレームは,カテゴリーリストが上記③ないし⑤の過程を経て利用者端末の表示装置に表示されるようにするためのフレームであり,また,商品PLUリストを表示する第2フレームは,PLUリストが上記⑥及び⑦の過程を経て利用者端末の表示装置に表示されるようにするためのフレームであると解される。そうすると,初期フレームプログラムは,このようなカテゴリーリスト及びPLUリストを表示する枠ないし領域としてのフレームを表示するために初期の段階で作動するプログラムであるということができる。
さらに,ブラウザの機能の一つであるフレームは,一般的には,ウィンドウをいくつかの領域に分割し,それぞれに別の内容を表示させるWebページの表現技法であるところ(乙20,21),フレームの中に文字等の情報を表示するためには,このフレームをターゲットとして,文字等の情報を表示するためのプログラムを実行する必要があることが認められる。
これらのことに,日本語において,ことによりという語は,一般的に,物事の間に時間的な前後関係のみならず因果関係があることを意味する語として用いられていることを併せ考慮すれば,構成要件Iにいう商品カテゴリーリスト及び商品PLUリストについては,それぞれ次のような手順を経て表示されたカテゴリーリスト及びPLUリストを意味し,また,構成要件Cにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムも,このような手順を経てカテゴリーリスト及びPLUリストを表示させるようなプログラムを意味するものと解するのが相当である。
すなわち,商品カテゴリーリストについては,上記①及び②のとおりの手順で初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第1フレームの表示領域が確保され,この第1フレームの表示領域をターゲットとして,③ないし⑤のとおりの手順でカテゴリーリストプログラムが実行されることにより,第1フレーム内に表示されたカテゴリーリストを意味するものと解するのが相当である。
また,商品PLUリストについては,上記①及び②のとおりの手順で初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第2フレームの表示領域が確保され,この第2フレームの表示領域をターゲットとして,⑥及び⑦のとおりの手順でPLUリストプログラムが実行されることにより,第2フレーム内に表示されたPLUリストを意味するものと解するのが相当である。

上記の解釈は,本件明細書及び図面を検討することによっても裏付けられる。
(ア)

すなわち,本件明細書及び図面には,本件発明を実施するための最
良の形態として,次のとおりの記載がある(引用に当たり,記載を一部省略し,又は表現を改めた部分がある。)。
(初期フレームプログラムの動作)
【0042】
まず,利用者が,クライアント装置において,表示装置の表示画面に表示されている所定のアイコンの位置でタッチパネルにタッチすることによりWebブラウザプログラムを起動すると,サーバ装置のネットワークアドレスを示すURLが自動的に指定され,CPUからネットワークインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等を介してサーバ装置に,後述する図3の動作フローチャートで示される初期フレームプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される。
【0043】
サーバ装置のCPUが実行する周知のWebサーバプログラムは,ネットワークインタフェース部を介して上記要求メッセージを受信すると,HDDからHTML形式の初期フレームプログラムを読み出し,それをネットワークインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等を介してクライアント装置に送信する。
【0044】
クライアント装置のCPUが実行する周知のWebブラウザプログラムは,ネットワークインタフェース部を介して上記初期フレームプログラムを受信すると,それを実行する。
【0045】
図3は,初期フレームプログラムの動作を示す動作フローチャートである。

図3

まず,図3のステップ301において,表示装置に表示される表示画面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下方向に例えば20%程度の表示面積を有する最上段の第1フレームが確保されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示されるカテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される。

図17

【0046】
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記要求メッセージを受信すると,HDDからHTML形式のカテゴリーリストプログラムを読み出し,それをクライアント装置に送信する。
【0047】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記カテゴリーリストプログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第1フレームをターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,表示画面の第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリーリストが表示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応答して後述する第2フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実行される。

図18

【0048】
次に,図3のステップ302において,表示装置に表示される表示画面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレームが確保されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示されるPLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信される。
【0049】
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記指示メッセージを受信すると,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読み出し,それを実行する。このプログラムは,HDDに記憶されているPLUマスタDB上の全レコードを読み出して,それらのレコード情報が含まれるPLUリストプログラムを生成し,それをクライアント装置に送信する。
【0050】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記PLUリストプログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第2フレームをターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,表示画面の第2フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見出し“数量”と,数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリストの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装置の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく後述する第3フレームの明細フォームの記入状態の制御処理が実行される。
(カテゴリーリストプログラムの動作)
【0053】
図4(省略)は,前述した図3のステップ301において,サーバ装置からダウンロードされクライアント装置において第1フレームをターゲットとして実行されるカテゴリーリストプログラムの動作を示す動作フローチャートである。
【0054】
このプログラムの実行により,図18に示されるように,表示画面の第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリーリストが表示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応答して第2フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実行される。
(PLUリストプログラムの動作)
【0072】
図6(省略)は,上述の送信処理に基づいて,サーバ装置からダウンロードされクライアント装置において実行されるPLUリストプログラムの動作を示す動作フローチャートである。
【0073】
図3のステップ302の説明で前述したように,このプログラムは,表示画面のWebブラウザウィンドウ上の第2フレームをターゲットとして実行される。この結果,図18に示されるように,表示画面の第2フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見出し“数量”と,それに続く数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリストの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装置の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく第3フレームの明細フォームの記入状態の制御処理が実行される。
(イ)

以上によれば,本件明細書に記載されている実施の形態の構成の下
では,前記アに説示したとおりの手順で各プログラムが実行され,その結果,第1及び第2フレームにそれぞれ商品カテゴリーリスト及び商品PLUリストが表示されることが明らかである。
すなわち,まず,クライアント装置からサーバ装置に初期フレームプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され(【0042】),これを受けたサーバ装置は,HTML形式の初期フレームプログラムを読み出し,これをクライアント装置に送信し(【0043】,前記アの①の過程),クライアント装置においてこれを実行する(【0044】,同②の過程)。この時点でクライアントの表示装置に表示されるのは,上下方向に例えば20%程度の表示面積を有する最上段の第1フレームの枠のみであり,その内容はブランクの状態となっている(【0045】,図17)。
そして,クライアント装置からサーバ装置に,カテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され(【0045】,同③の過程),これを受信したサーバ装置は,HDDからHTML形式のカテゴリーリストプログラムを読み出し(同④の過程),これをクライアント装置に送信する(【0046】,同⑤の過程)。クライアント装置のWebブラウザプログラムは,受信したカテゴリーリストプログラムを,表示画面の第1フレームをターゲットとして実行し,その結果,表示画面の第1フレームに商品カテゴリーリストが表示される(【0047】,【0053】,【0054】,図18)。
他方,表示装置に表示される表示画面内のWebブラウザウィンドウ上で,上下方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレームが確保されるが,この時点では,その内容はブランクの状態となっている(【0048】,図17)。そして,クライアント装置からサーバ装置に,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると(【0048】),サーバ装置のWebサーバプログラムは,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読み出し,これを実行し,HDDに記憶されているPLUマスタDB上の全レコードを読み出して,これらのレコード情報が含まれるPLUリストプログラムを生成し(【0049】,同⑥の過程),これをクライアント装置に送信する(【0049】,同⑦の過程)。クライアント装置のWebブラウザプログラムは,受信したPLUリストプログラムを,表示画面の第2フレームをターゲットとして実行し,その結果,表示画面の第2フレームに商品PLUリストが表示される(【0050】,【0073】,図18)。

以上のとおり,本件発明にいう商品カテゴリーリスト及び商品PLUリストは,前記アに説示したとおりの意味に解するのが相当である。したがって,クライアント装置の表示画面に,形の上でカテゴリーリストや個別商品のPLUリストが表示されるものであっても,上記ア及びイの過程を経て表示されたとはいえないものは,本件発明にいう商品カテゴリーリスト又は商品PLUリストには当たらず,また,このようなカテゴリーリストやPLUリストを表示するためのプログラムを構成要件A及びCにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム又はPLUリストプログラムに当たるということもできないものと解される。
(2)

被告システムの実施態様1について
以上の検討を踏まえ,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C及び
Iに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するか否かについて検討する。

まず,初期フレームプログラムとカテゴリーリストプログラムの実行過程について検討する。
前記第2の1(3)イによれば,被告システムのトップページである第1画面には,ファッション,妊娠出産・ベビー・キッズ,ディズニー等の大カテゴリーのカテゴリーリストが表示されており,この大カテゴリーの下には,例えば,ファッションであれば,レディースファッション,女性下着・インナー,靴・バッグ・アクセサリー等の中カテゴリーが表示されている。そして,このうち,レディースファッションをクリックすると,第2画面に移行する。
第2画面のカテゴリー領域のトップには,中カテゴリーであるレディースファッションという表示がされ,その下に,コート,ジャケット・ブルゾン,ワンピース・チュニック等の小カテゴリーが表示されている(第2画面の赤枠部分)。このカテゴリーリストを表示するソースコードは,第2画面ソースの21頁のから23頁のまでの部分(赤色表示部分)に相当する。なお,とというタグは,これにより挟まれた部分をひとまとまりの段落として表示するものである(乙30)。このひとまとまりの段落が表示される領域の位置及び幅がどのようなプログラムにより指定されているかは,定かではないものの,第2画面ソース中にはというスタイルシートファイルを参照するプログラムが多用されていることから(例えば,1頁の14行目以下参照),第2画面ソースのプログラムの実行過程において,被告サーバ群中のスタイルシートファイルが参照され,上記の領域の位置及び幅が確保されるとともにカテゴリーリストが表示されるものと推認される(甲14参照)。
第2画面において,小カテゴリーのコートをクリックすると,第3画面に移行する。その左側のカテゴリー領域のトップには,レディースファッション及びコートが表示され,その下に,最小カテゴリーのトレンチコート,ステンカラーコート,ノーカラー・スタンドカラーコート等が表示されている(第3画面の赤枠部分)。このカテゴリーリストを表示するソースコードは,第3画面ソースの59頁の class="categorynav01">から60頁のまでの部分(紫色及び橙色表示部分)に相当する。また,上記と同様に(例えば,3頁の末尾から4行目以下のプログラムを参照),第3画面ソースのプログラムの実行過程においても,被告サーバ群中のスタイルシートファイルが参照され,上記の領域の位置及び幅が確保されるとともにカテゴリーリストが表示されるものと推認される。
これらの第2画面及び第3画面を表示するHTML文書は,前記第2の1(3)ウのとおり,いずれも,被告システムにおけるWebサーバが,利用者からの送信要求を受け,上記のカテゴリーに係るソースコードを含む一つのHTML文書をNAS-OUTから読み出して送信し,これらが利用者端末のブラウザによりその表示画面に表示されるものである。そして,これらの各一つのHTML文書の実行過程において,利用者端末の表示装置にカテゴリー領域が確保されるとともに,この領域をターゲットとして,それぞれのカテゴリーリストが表示されるものと認められる。
すなわち,第2画面のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第2画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムであって,第3画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムではない。また,第3画面のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第3画面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムであって,第2画面のカテゴリー領域を確保するプログラムを使用しているものではない。
そうすると,被告システムにおいては,第2画面のカテゴリーリストの表示領域を確保するプログラムと,これにより確保された領域をターゲットとして上記カテゴリーリストを表示するプログラムが,一つのHTML文書の表示過程において,論理的な前後関係はあり得るとしても,同時に実行されているということができる。第3画面のカテゴリーリストにおいても,これと同様である。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フレームプログラムがクライアント装置において実行されて,カテゴリーリストの表示領域が表示装置に第1フレームとして表示された上で,引き続き,クライアント装置からサーバ装置に対し,第1フレームをターゲットとしてカテゴリーリストを表示するためのカテゴリーリストプログラムを送信するよう要求するHTTPメッセージが送信され(同③),これを受けてサーバ装置が読み出したカテゴリーリストプログラムがクライアント装置に送信され(同④及び⑤),これが実行された結果,カテゴリーリストがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品カテゴリーリストが表示されるというものである。被告システムは,上記のとおり,これに対応する過程を欠くものであるから,被告システムにおいて利用者端末に表示される第2画面及び第3画面のカテゴリーリストは,いずれも,構成要件A,C及びIに記載されたプログラムの実行手順及び実行内容とは異なる手順を経て表示されたといわざるを得ないものである。
したがって,第2画面及び第3画面の赤枠部分に表示された各カテゴリーリストが,構成要件Iにいう商品カテゴリーリストに当たるということはできず,被告システムにおいて,構成要件A及びCにいう初期フレームプログラム及びカテゴリーリストプログラムが実行されたということもできないと解される。

次に,初期フレームプログラムとPLUリストプログラムの実行過程について検討する。
実施態様1においては,第2画面の右側の領域(青枠部分)には,毎週更新!新入荷&イチオシ商品として,袖口が折り返せる7分袖のシンプルカットソー等10件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている(第2画面の青枠部分)。この商品リストを表示するソースコードは,第2画面ソースの4頁のから6頁のまでの部分(赤色表示部分)に相当する。個別商品リストの表示領域の位置及び幅は,上記アと同様に,被告サーバ群中のスタイルシートファイルと関連付けられて指定されているものと推認される。
また,第3画面の右側領域(青枠部分)には,コートのカテゴリーで選択された商品として,カラーコート【ネット限定サイズあり】等40件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている。この商品リストを表示するソースコードは,第3画面ソースの8頁のから55頁のまでの部分(紫色及び青色表示部分)に相当する。個別商品リストの表示領域の位置及び幅は,上記と同様に,被告サーバ群中のスタイルシートファイルと関連付けられて指定されているものと推認される。
これらの第2画面及び第3画面を表示するHTML文書は,上記アにおいて検討した各HTML文書と同一の文書であるから,上記アと同様,いずれも,被告システムにおけるWebサーバが,利用者による送信要求を受け,上記のカテゴリーに係るソースコードを含む一つのHTML文書をNAS-OUTから読み出して送信し,これが利用者端末のブラウザによりその表示画面に表示されるものである。
したがって,上記アと同様に,第2画面及び第3画面の個別商品表示領域は,いずれも,それぞれ,これらの画面を表示する一つのHTML文書の実行過程において確保されるとともに,この領域をターゲットとして,それぞれの個別商品リストが表示されるものである。
すなわち,第2画面の個別商品領域を確保するプログラムは,第3画面の個別商品リストを表示するためのプログラムではなく,第3画面の個別商品領域を確保するプログラムは第2画面の個別商品領域を確保するプログラムを使用しているものではない。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フレームプログラムがクライアント装置において実行されて,個別商品の表示領域が表示装置に第2フレームとして表示された上で,引き続き,クライアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信され(同⑥),上記サーバ装置がPLUリストサーバプログラムを起動して生成したPLUリストプログラムがクライアント装置に対し送信され(同⑦),これが実行された結果,個別商品リストがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品PLUリストが表示されるというものであるから,被告システムにおける個別商品リストの表示過程は,これとは異なるものといわざるを得ない。したがって,第2画面及び第3画面の青枠部分に表示された各個別商品リストが,構成要件Iにいう商品PLUリストに当たるということはできず,被告システムにおいて,構成要件A及びCにいう初期フレームプログラム及びPLUリストプログラムが実行されたということもできないと解される。

よって,被告システムの実施態様1は,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するとはいえないものと解するのが相当である。


これに対し,原告は,構成要件Cの実行されることによりという文言は,構成要件Cの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラムのダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,また,上記の文言は,因果関係を示すものでもなく,構成要件Cの1)ないし4)の過程が初期フレームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示すものにすぎないと解すべきであると主張する。しかしながら,構成要件Cにいうよりは,因果関係等を意味する自動詞よるの連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられるものであるから,構成要件Cのことによりが,構成要件Cの1)ないし3)の送信される及び4)の問い合わされるの各動詞にそれぞ
れ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根拠は見当たらない。
また,仮に,構成要件Cの実行されることによりを原告の主張のように解したとしても,前記ア及びイのとおり,被告システムにおいては,カテゴリーリスト及び個別商品リストの表示領域を確保するプログラムと,その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプログラムの実行過程において同時に実行されており,構成要件Cに記載された手順を順次実行するという形では実行されていないのであるから,いずれにせよ,上記ウの結論を左右するには足りないというべきである。

また,原告は,構成要件Cの柱書に少なくともと記載されていることなどに鑑みると,構成要件Cの1)ないし4)に相当する過程の前後又は間に,これに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付加にすぎず,これによって,本件発明の構成要件Cの充足が妨げられるものではないとも主張する。この主張は,第2画面の赤枠部分及び青枠部分が,初期フレームプログラムによって確保された,それぞれ第1フレーム及び第2フレームであり,これをターゲットとしてカテゴリーリストプログラム又はPLUリストプログラムが実行された結果,第3画面のそれぞれ赤枠部分のカテゴリーリスト及び青枠部分の個別商品リストが表示されたのであって,第2画面の赤枠部分に表示されているカテゴリーリスト及び青枠部分に表示されている個別商品リストは,いずれも,本件発明との関係では無意味な付加的記載にすぎないことをいうものと解し得る。そこで判断すると,前記ア及びイのとおり,第2画面のカテゴリー領域又は個別商品領域を確保するプログラムは,第2画面のカテゴリーリスト又は個別商品リストを表示するためのプログラムであって,第3画面のカテゴリーリスト又は個別商品リストを表示するためのプログラムではない。また,第3画面のカテゴリー領域又は個別商品領域を確保するプログラムは,第3画面のカテゴリーリスト又は個別商品リストを表示するためのプログラムであって,第2画面のカテゴリー領域又は個別商品領域を確保するプログラムを使用しているものではない。したがって,第3画面のカテゴリーリスト又は個別商品リストは,第2画面において確保されたカテゴリー領域又は個別商品領域をターゲットとして,構成要件Cに記載された手順どおりに表示されたものということはできないと解される。
原告の主張は,第2画面及び第3画面を表示させているプログラムの意味及び内容を考慮することなく,構成要件Cに表面上適合するよう,その記載を恣意的に結び付けたものにすぎず,失当である。

よって,原告の主張はいずれも理由がなく,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはできない。
(3)

被告システムの実施態様2について
原告は,被告システムにおいては,初期フレームプログラムの実行により
第3画面においてカテゴリーの表示領域及び個別商品の表示領域を確保した上で,いったん第2画面に戻り,この赤枠部分のコートのリンクをクリックすると,再び第3画面が表示され,ここに商品カテゴリーリスト及び商品PLUリストが表示されるという過程をもって,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると主張する。しかしながら,前記(2)ア及びイに説示したとおり,第3画面に表示されているカテゴリーリスト及び個別商品リスト並びにこれらの表示領域は,第3画面ソースという一つのHTML文書の実行過程において同時に表示されるものであるから,いったん第2画面に戻り,再度第3画面を表示させたところで,同様のプログラムの実行過程が繰り返されることになるにすぎず,初期フレームプログラムによってこれらの表示領域が確保された上で,これをターゲットとして,構成要件Cに記載された手順どおりに上記の各リストが表示されたことになるものではない。
原告の主張は,第2画面及び第3画面のうち,表面上自己の主張に沿う部分を恣意的に結び付けたものにすぎず,失当である。
したがって,被告システムの実施態様2が,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはできない。
2
結論
以上によれば,被告システムがそもそもWeb-POSシステムに関するものであるかなどその余の争点につき判断するまでもなく,本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部

裁判長裁判官


裁判官

裁判官

谷川浩二清野正彦植田裕紀久
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