判例検索β > 平成22年(ワ)第17810号
特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成22(ワ)17810
事件名特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日平成25年9月25日
法廷名東京地方裁判所
裁判日:西暦2013-09-25
情報公開日2017-10-19 12:11:35
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平成25年9月25日判決言渡

同日原本領収

平成22年(ワ)第17810号
口頭弁論終結日

裁判所書記官

特許権侵害差止等請求事件

平成25年7月17日
判決
デンマーク王国<以下略>
原告
イエンセン

デンマーク

アクティー

ゼルスカブ

以下

原告イエンセンという。)イエンセン

(以下原告イエンセンという。)
高松市<以下略>
原告株式会社プレックス
以下原告プレックスプレックスいう。)
(以下原告プレックスという。)
原告ら訴訟代理人弁護士

大場正成同近藤祐史同小
同訴訟代理人弁理士

藤林谷豪史朗
埼玉県川口市<以下略>
被告
東都フォルダー工業株式会社

同訴訟代理人弁護士

湊谷
同訴訟代理人弁理士

井澤幹
同補佐人弁理士

井澤洵同茂木主1秀康光彦文
被告は,原告イエンセンに対し,3770万円及び,うち1625万円に対する平成22年5月28日から,うち2145万円に対する平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,原告プレックスに対し,2億3993万7507円及び,うち8750万円に対する平成22年5月28日から,うち1億5243万7507円に対する平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

4
訴訟費用はこれを4分し,その3を被告の負担とし,その1を原告らの負担とする。

5
この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

1
被告は,原告イエンセンに対し,9230万円及び,うち1625万円に対する平成22年5月28日から,うち7605万円に対する平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,原告プレックスに対し,2億7015万1208円及び,うち8750万円に対する平成22年5月28日から,うち1億8265万1208円に対する平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要

1
本件は,アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置に関する特許権(特許第2690256号。以下本件特許権という。件特許権」という。平成25年1月28日特許期間満了)を有していた原告イエンセン及びその専用実施権者であった原告プレックスが,被告による別紙物件目録(1)ないし(3)の製品(以下,被告製品1ないし被告製以下,「被告製品1ないし「,「被告製品わせて「被告製品という。)。)の製造販売は本件特許権を
品3」といい,合わせて被告製品という。)
侵害すると主張して,原告イエンセンにつき9230万円,原告プレックスにつき2億7015万1208円及びそれぞれについて遅延損害金の支払を求める事案である。

2
前提となる事実
末尾に証拠等を付した以外の事実は争いがない。
(1)

当事者
原告イエンセンは,デンマーク法人であり,クリーニング用機械等の製造,販売等を業とするものである。原告イエンセンは,本件特許権の特許権者であった。


原告プレックスは,リネンサプライ・クリーニング関連の省力機器の製造・販売,関連ソフトウェアの開発,福祉・環境関連機器の開発等を業とする株式会社である。
原告プレックスは,平成13年8月1日設立された会社であり(当裁判所に顕著),原告イエンセンが提起した侵害訴訟(当庁平成12年(ワ)第11902号)の被告であった株式会社プレックス(乙8。後,大豊物産株式会社に商号変更。甲2の3・2頁,乙9・1頁。以下旧プレックスという。クス」という。)を平成15年12月1日吸収合併し,控訴審(東京高裁平成14年(ネ)第3021号)において同訴訟を旧プレックスから承継して,原告イエンセンと訴訟上の和解をした(当時の商号は大豊商事株式会社。甲3・1,2頁,弁論の全趣旨・訴状6頁,原告ら第5準備書面5頁)。
原告プレックスは,平成17年11月14日,原告イエンセンとの間で専用実施権設定契約を締結し(甲16),平成18年3月6日(登録日)から平成25年1月28日(特許権存続期間満了日)まで,本件特許権の専用実施権者であった(甲1)。


被告は,リネンサプライ用各種フォルダー,フィーダーの製造・販売,プラント設計等を業とする株式会社である。

(2)

本件特許権
原告イエンセンは,以下の特許権(本件特許権)を有していた。
特許番号

第2690256号
出願日

平成5年1月28日

(平成25年1月28日特許権存続期間満了。甲1)
登録日

平成9年6月27日

発明の名称

アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物
品を供給するための装置(甲1,2の1~3)

特許請求の範囲
本件特許権に係る,平成9年5月9日付け手続補正(乙5),平成11年2月15日付け訂正(甲2の2,乙6),平成14年2月21日付け訂正(甲2の3,甲3,乙9,10,13)を経た後の明細書(特許請求の範囲を含む。)及び図面は,別紙特許審決公報(甲2の3)17~24頁のとおりである(以下,この訂正後の明細書(特許請求の範囲を含図面を
という。)
。)。その請求項1の
む。)及び図面を合わせて本件明細書という。)
発明(以下本件発明という。)
本件発明」
。)の特許請求の範囲は以下のとおりで
ある。
【請求項1】アイロンローラなどの洗濯処理ユニットヘフラットワーク物品を供給するための装置であって,該装置はコンベヤベルトからなり,該コンベヤベルトの正面側端部において,フラットワーク物品が,前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ,前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され,前記一対のキャリッジには,当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ,該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ,前記フラットワーク物品の上端部が延伸され,フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた,洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において,前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって,互いに隣接して設けられ,フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8,9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり,前記一対のキャリッジが,昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており,当該位置が,前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており,フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17,18)に挿入され,前記スライド(16)が,操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8,9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。(3)

構成要件の分説
本件発明の構成要件を分説すると,以下のとおりである。


アイロンローラなどの洗濯処理ユニットヘフラットワーク物品を供給するための装置であって,


該装置はコンベヤベルトからなり,


該コンベヤベルトの正面側端部において,フラットワーク物品が,前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ,

前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され,


前記一対のキャリッジには,当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ,


該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ,前記フラットワーク物品の上端部が延伸され,


フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた,洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において,


前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって,互いに隣接して設けられ,フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8,9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり,

前記一対のキャリッジが,昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており,


当該位置が,前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており,


フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17,18)に挿入され,

前記スライド(16)が,操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8,9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。

(4)

被告製品

被告製品1
被告は,平成20年12月,被告製品1を,東京有明の東京ビッグサイトにおける展示会で展示し,その後,平成21年2月頃から製造販売している。
被告製品1の構造は,別紙2構造説明書(1)のとおりである。


被告製品2,3
被告は,平成21年10月,被告製品2及び3を,被告の工場における展示会で展示し,その後,同年末月頃から製造販売している。
被告製品2,3の構造は,別紙4構造説明書(2),別紙6構造説明書(3)のとおりである。


(ア)

本件発明と被告製品との対比
構成要件A
被告製品は,いずれも,洗濯と脱水を経たシーツやテーブルクロスのような布類(フラットワーク物品)を,ロールアイロナーなどのような次工程の処理装置(アイアンローラなどの洗濯処理ユニット)に搬送する装置であるから,構成要件Aを充足する。

(イ)

構成要件B
被告製品は,いずれも,受渡しコンベヤ61と排出コンベヤ62からなる搬送装置6(コンベヤベルト)を有しており,構成要件Bを充足する。

(ウ)

構成要件C
被告製品における展張装置2は,掴持している布類Sを自在に引き外すことのできる一対の拡げクランプ21,21が設けられた一対のキャリッジ22,22を,被告製品1においては1組,被告製品2,3においては2組有しており,一対のキャリッジ22,22は受渡しコンベヤ61の長手方向を横切る(長手方向と直角の方向)展張レール25に沿って走行するものであるから,構成要件Cにいう前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置に相当する。被告製品において該コンベヤベルトの正面側端部において,フラットワーク物品が,……延伸装置から移動することができるかは争いがある。
したがって,被告製品が構成要件Cを充足するかは争いがある。
(エ)

構成要件D
被告製品の投入装置1は,搬送装置6(受渡しコンベヤ61を有している。)の反対側の展張レール25の側に,被告製品1においては3つ,被告製品2,3においては4つ設けられ,操作者によって動かされるから,前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置に相当する。布類Sは,投入装置1の有する投入クランプ11,11から拡げクランプ21,21に受け渡され,布類Sの一辺の両端角部Sa,Saが拡げクランプ21,21に挿入されて,展張されるから,前記フラットワーク物品の隅部が……挿入装置によって該クランプに挿入される構成を備えている。
したがって,被告製品は構成要件Dを充足する。

(オ)

構成要件E
被告製品の一対のキャリッジ22,22は,駆動手段として左右動装置23,23を有しているが,これが当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段といえるかは争いがある。
したがって,被告製品が構成要件Eを充足するかは争いがある。
(カ)

構成要件F
この要件は,一対のキャリッジの離間走行の始点がレール上のどこであれ,その走行経路がどうであっても,結果として離間してフラットワーク物品が展げられた状態のキャリッジの位置がコンベヤベルトの中央に関して対称の位置になることを意味する。
被告製品の各々拡げクランプ21,21を支持する一対のキャリッジ22,22は,左右動装置23,23により駆動されて,最終的に布類Sの上辺部を被告製品の中央ひいては受渡しコンベヤ61の中央に関し左右対称に展張させるのであるから,被告製品は構成要件Fを充足する。
(キ)

構成要件G
被告製品は洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であるが,フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられているかは争いがある。したがって,被告製品が構成要件Gを充足するかは争いがある。

(ク)

構成要件H
被告製品の投入装置1は,構成要件Dの挿入装置に相当し,操作
者によって制御されるが,投入装置1の投入クランプ移動装置12が操作位置から昇降作動する昇降手段に相当するかは争いがある。
したがって,被告製品が構成要件Hを充足するかは争いがある。

(ケ)

構成要件I
被告製品の一対のキャリッジ22,22は,(構成要件Hの操作位置から昇降作動する昇降手段に当たるかどうかは別として,クランプを昇降させる手段である)投入クランプ移動装置12と対向する位置において,布類Sと接触して布類Sを受け取るようになっている。
したがって,被告製品は構成要件Iを充足する。

(コ)

構成要件J
被告製品1において,(構成要件Hの操作位置から昇降作動する
昇降手段に当たるかどうかは別として,クランプを昇降させる手段である)投入クランプ移動装置12は3つあるが,そのうち2つは,受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央と対向する位置からずれている。被告製品2,3において,4つある投入クランプ移動装置12は,いずれも,受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央と対向する位置からずれている。
したがって,被告製品は構成要件Jを充足する。
(サ)

構成要件K
被告製品において,布類Sは一対の投入クランプ11,11に挿入され,投入クランプ11,11は,溝付き部材12aに沿って昇降する投入クランプ取り付けベース12bに取り付けられているが,溝付き部材12aが昇降手段のレール手段(15)に相当するかは争いがある。したがって,被告製品が構成要件Kを充足するかは争いがある。

(シ)

構成要件L
被告製品の一対のキャリッジ22,22は,投入装置1への布類Sの挿入作業が行われる位置より実質的に高い位置にある。そして,布類Sは,投入クランプ取り付けベース12b(スライド)によって,一対のキャリッジ22,22に向かって持ち上げられるようになっている。したがって,被告製品は構成要件Lを充足する。

(ス)

まとめ
以上によれば,被告製品が,本件発明の構成要件A,B,D,F,I,J,Lを充足することは争いがない。被告製品が構成要件C,E,G,H,Kを充足するかは争いがある。

(5)

無効審判
被告は,原告イエンセンに対し,本件特許権につき無効審判を申し立てた(無効2011-800017)。
特許庁は,平成23年8月23日,被告の請求は成り立たない旨の審決をし(甲13),この審決は確定した。
被告は,平成24年1月23日第12回弁論準備手続期日において,本件特許権に関する無効の主張を撤回した。
3
争点

(1)

構成要件C充足性(争点1)

(2)

構成要件E充足性(争点2)

(3)

構成要件G充足性(争点3)

(4)

構成要件H充足性(争点4)

(5)

構成要件K充足性(争点5)

(6)

過失(争点6)

(7)

損害(争点7)

第3

争点に関する当事者の主張

1
争点1(構成要件C充足性)について
(原告らの主張)

(1)

構成要件Cの解釈

コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジとは,コンベヤベルトの長手方向とキャリッジの走行方向が直角の関係となることである。延伸装置のレール上のキャリッジとコンベヤベルトのこのような位置関係により,キャリッジの移動走行によりフラットワーク物品は展げられ,コンベヤベルトの正面側端部において,コンベアベルトに展がったままかぶさるような形で,延伸装置からコンベヤベルト上へ移動することができる。構成要件Cは,延伸装置とコンベヤベルトの配置関係を示すもので,フラットワーク物品の移動手段を特定するものではない。

被告は,構成要件Cが,フラットワーク物品が延伸装置からコンベヤベルトへ直接移動するものに限定していると主張するが,以下のとおり理由がない。

(ア)

被告は本件明細書の【0010】及び【0020】の記載を引用するが,構成要件Cは実施例の内容に限定されないし,文言解釈としても,構成要件Cでは,コンベヤベルトの正面側端部において,フラットワーク物品が……延伸装置から移動できると記載されているに過ぎず,移動のための手段を介在させてはならないという解釈はとり得ない。
(イ)

被告は,出願時における意見書(乙4)及び手続補正書(乙5)で本件明細書の【0020】の記載(レール手段7の正面の位置が挿入装置17[判決注:平成14年2月21日付け訂正(乙13)後の「挿入装置14]で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない」)を引用していることを指摘するが,引用されている【0020】の上記記載中,本件発明の要件を考える前提となる構造的要素はレール手段7の正面の位置が挿入装置17[挿入装置14]で占められているという点だけであり,フラットワーク物品の延伸装置からコンベヤベルトへの移動が,直接であるべきか,バーその他の移動手段の介在を排除するかどうかの問題について述べたものではない。【0020】は,バー,その他の器具などをクランプ10,11の正面側に設けることができないということであって,移動手段たるバーその他の器具の使用を排除しているものではない。

(2)

本件発明と被告製品1との対比
被告製品1の展張装置2は,掴持している布類Sを自在に引き外すことのできる拡げクランプ21が設けられた一対のキャリッジ22,22を有しており,一対のキャリッジ22,22は受渡しコンベヤ61の長手方向を横切る(長手方向と直角の方向)展張レール25に沿って走行する。そして,布類Sは,受渡しコンベヤ61の正面側端部において,一対のキャリッジ22,22の拡げクランプ21,21から受渡し装置4によって受け取られ,受渡しコンベヤ61に引き渡される。
したがって,被告製品1は,本件発明の構成要件Cを充足する。
(3)

本件発明と被告製品2との対比
被告製品2の展張装置2は,拡げクランプ21を有するキャリッジ22を4個備えているが,展張作動中は常に左右2個ずつのキャリッジがそれぞれ一対として作動し,4つの投入クランプ移動装置12のうちの左右それぞれ2つの投入クランプ移動装置から布類Sの引渡しを受けている。
この展張装置2は,それぞれ一対のキャリッジ22,22がそのときどきでいずれかの投入クランプ移動装置12の左右投入クランプ11からその投入クランプ移動装置12の位置で布類の引渡しを受けて展張レール25の全部を使って展張している。
この場合,具体的な作動では2個のキャリッジ22,22の組合せを一対として上記のような作動をしている。
それぞれ掴持している布類Sを自在に引き外すことのできる拡げクランプ21を有する一対のキャリッジ22,22は,受渡しコンベヤ61の長手方向を横切る方向(長手方向と直角の方向)に延びた展張レール25上を走行し,受渡しコンベヤ61の正面側端部において,布類Sを受渡し装置4によりキャリッジ22,22の拡げクランプ21から外して受渡しコンベヤ61に引き渡すための作動をしている。
したがって,被告製品2は,本件発明の構成要件Cを充足する。

(4)

本件発明と被告製品3との対比
被告製品3の展張装置2は,拡げクランプ21を有するキャリッジ22を4個備えているが,展張作動中は常に左右2個ずつのキャリッジがそれぞれ一対として作動し,4つの投入クランプ移動装置12のうちの左右それぞれ2つの投入クランプ移動装置から布類Sの引渡しを受けている。

この展張装置2は,幅広の布類の場合,一対のキャリッジ22,22が4つのうちのいずれかの投入クランプ移動装置12の左右投入クランプ11からその投入クランプ移動装置12の位置で布類の引渡しを受けて展張レール25の全部を使って展張している(1レーンモード)。この場合,左右の2個のキャリッジ22,22の組合せを一対として上
記のような作動をしている。
それぞれ掴持している布類Sを自在に引き外すことのできる拡げクランプ21を有する一対のキャリッジ22,22は,受渡しコンベヤ61の長手方向を横切る方向(長手方向と直角の方向)に延びた展張レール25上を走行し,受渡しコンベヤ61の正面側端部において,布類Sを受渡し装置4によりキャリッジ22,22の拡げクランプ21から外して受渡しコンベヤ61に引き渡すための作動をしている。したがって,構成要件Cを充足している。

次に,幅狭の布類を展張するときは,一つの展張レール25の左右でそれぞれ一対のキャリッジ22,22が併行して作動している(2レーンモード)。
つまり,左右一対のキャリッジ22,22がそれぞれ,2つの投入クラ
ンプ移動装置12から受け渡される幅狭の布類の展張を担当している。この場合は,展張レールの左右で区分され,一対のキャリッジが2つの投入クランプ移動装置12を担当して作動している。いわば本件発明に該当する装置が2組並列して配置されている場合と同じになっている。したがって,左右に区分されて展張レール上を走行作動している一対のキャリッジのクランプから布類がコンベヤベルト正面端部において移動するという構成要件Cを充足している。
(被告の主張)
(1)

構成要件Cの解釈
被告は,構成要件Cは,フラットワーク物品を延伸装置からコンベヤベルトへ直接移動させるものに限定していると考える。

本件明細書の段落【0010】には,

昇降手段の位置がコンベヤベルトの取り入れ側端部にあるため,コンベヤベルトの反対側にフラットワーク物品を移動する手段を迅速に直接に設けることができない。

との記載があり,【0020】には,レール手段7の正面の位置が挿入装置14で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない。と記載されている。これらの記載から,本件発明は,フラットワーク物品を,延伸装置からコンベヤベルトに移動する手段を設けることができないとの前提のもとに,延伸装置からコンベヤベルトに直接移動することを目的としている。

原告イエンセンは,出願当初の明細書の段落【0019】の記載において

「実際の手段の正面……満足される。

スライドが……与えられる。

の記載内容が不明瞭であり……段落【0019】……に記載されている事項を正確に理解することができない。」との拒絶理由通知(乙3)の指摘に対し,意見書(乙4)において,
(ロ)前記拒絶理由1の(ii)の点につきましては,①段落[0019]において……と補正し,いつ延伸操作が開始されなければならないのかを明確にし,かつ段落[0020]において「レール手段7の正面の位置が挿入装置17[挿入装置14]で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない。そのかわりに,当該導入端部は,コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空によりクランプ10,11からコンベヤベルト5まで運ばれる。と補正し,導入端部がサクションボックス23内で発生した真空により運ばれることを明確にし,」と述べている。上記下線部分の原告イエンセンの主張が受け入れられて特許査定されているものである。
ここで原告イエンセンが意見書で主張していることは,レール手段7の正面の位置が挿入装置17[挿入装置14]で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできないということである。換言すれば,フラットワーク物品を移動させるものは,コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空である。したがって,レール手段7の正面の位置が挿入装置17[挿入装置14]で占められていても,クランプ10,11の下の正面側からフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させるバーまたは他の器具は,本件明細書に記載されていないばかりか,本件発明はそのようなバーまたは他の器具を具備することができない装置であると述べている。
すなわち,本件明細書では,延伸装置のレールとコンベヤベルトの間に器具が入らない構造の発明しか開示されていないことになり,上記意見書においても,そのようなバーまたは他の器具の存在を原告イエンセン自身が否定している。したがって,少なくとも,そのようなバーまたは他の器具で移動するものは構成要件Cの延伸装置から移動するものには該当しないというべきである。
(2)

被告製品では,フラットワーク物品(布類S)を延伸装置(展張装置2)から移動手段(バーまたは他の器具に相当する受渡し装置4)を経て,コンベヤベルト(受渡しコンベヤ61)に移動することができる。したがって,被告製品は構成要件Cを充足しない。
2
争点2(構成要件E充足性)について
(原告らの主張)

(1)

構成要件Eの解釈

原告の解釈
構成要件Eの前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点とは,コンベヤベルトの正面側端部中央と対向する延伸装置のレール上の地点を意味する。このように記載したのは単にレール上の位置ではなくコンベヤベルトに移された時の位置が重要であるからコンベヤベルトの位置と関係付けて記載しているのである。その地点から延長した位置に移動させて離間せしめるとは,一対のキャリッジが離間して移動したレール上の位置が,そのレール上の対向地点から距離を置いて両側に離間した地点に移動するという意味である。このように一対のキャリッジが互いに離れる方向に動かすことでフラットワーク物品を延伸(展張)するような駆動手段を有することを意味している。


被告の解釈に対する反論
被告は,構成要件Eは被告製品はキャリッジがまず中央部に移動し,その上で両側に移動するもの(以下中央展開方式という。)
中央展開方式」という。)
。)に限定さ
れると主張するが,以下の理由により失当である。

(ア)

被告の解釈が構成要件Eの文言解釈として不自然であること
被告は,構成要件Eの反対側の地点からという部分が移動させてにかかると主張するものであるが,反対側の地点からという部分は延長したにかかるとしか解し得ない。そのように解しなければ,延長した位置がどこを指すのか全く分からなくなってしまう。また,被告が主張するように,本件発明が,キャリッジがまず中央部に移動し,その上で両側に移動するものでなければならないのであれば,請求の範囲のどこかに,キャリッジがまず中央部に移動しの部分と,その上で,等距離に離間して移動するの部分の両方が記載されるはずである。しかし,本件発明の特許請求の範囲には,少なくともキャリッジがまず中央部に移動しの部分に関する記載はない。上述のとおり,この構成要件Eは,一対のキャリッジが離間走行を終えた位置が,いずれもコンベヤベルトの中央と対向するレール上の地点(好ましい地点)から離間(延長)した位置にあることを要求しているものである。
このように,構成要件Eは,一対のキャリッジを中央から離間する方向に駆動できる(つまり布類の展開)ことを要件としているのであって,被告が問題にする展開方式,つまり初期展開の両端が中央から対称に位置し(センタリング),最終展開で等分の距離に離間する方式は,該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられという構成要件Fに関係しているのである。(イ)

構成要件Fとの関係
被告は,被告主張の解釈をとらなければ,構成要件Eと構成要件Fは同じことを繰り返しているにすぎないことになってしまうと主張する。構成要件Fは,該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ,前記フラットワーク物品の上端部が延伸されというものである。これは,2つのキャリッジ駆動によって2つのクランプで保持されたフラットワーク物品の上端が延伸されたときに,その両端がコンベヤベルトの中央に関して対称の位置にくるようになることを意味している。そうすることで,フラットワーク物品が展げられた状態でコンベヤベルトへ移動したときに,フラットワーク物品とコンベヤベルトの中心がほぼ重なることになるのである。
構成要件Eと構成要件Fは,ともにフラットワーク物品の延伸に関連する構成要件で,相互に因果関係を有しているものの,構成要件Eがキャリッジの駆動手段の機能に関する規制であるのに対して,構成要件Fは延伸により展げられたフラットワーク物品とコンベヤベルトの位置を規制するものであるから,両者は異なる対象について記載している。構成要件Eは,一対をなす2つのキャリッジを延伸のため各別に離間するように走行させ,離間し終わったときの位置関係が前記好ましい位置からいずれも離間する位置にあるようにする駆動手段に関するもので,構成要件Fは,さらに,2つのキャリッジの位置関係を特定してフラットワーク物品が延伸されたときのクランプの位置でありかつフラットワーク物品の上端部の両隅の位置がコンベヤベルトの中央に対し対称になることを要求し,コンベヤベルト上に延伸装置から移されたときフラットワーク物品の中心とコンベヤベルトの中心が重なるようにする(センタリング)という前提条件を整えているのである。
したがって,構成要件EとFは相互に関連しているものの,重複も矛盾もなく,被告の主張には理由がない。
(ウ)

本件発明が請求項2の内容に限定されないこと
被告は,本件明細書の請求項2が前記フラットワーク物品を延伸するために,前記2つのキャリッジ(8,9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に,当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって移動されることを特徴とする請求項1の装置と記載されていることが,自らの解釈を裏付けていると主張する。
しかし,請求項1(本件発明)が,従属項である請求項2で特定されている内容に限定されることはない。このことは,例えば,本件明細書では,請求項1で複数の昇降手段としている部分について,請求項3では昇降手段を3つとすると特定しているが,このことによって,請求項1の昇降手段は3つでなければならないということにはならないのと同様である。
一般に主クレームで包括的表現をした要件をサブクレームで限定している場合,サブクレームで限定したより主クレームの要件は広い意味をもつと解釈されている。これは米国などでは確立したクレーム解釈のルールになっているが,日本におけるクレーム解釈でも解釈の前提になっている。
したがって,請求項2の記載は,むしろ,請求項1では,キャリッジがまず中央部に移動し,その上で,両側に移動するものに限定されないことの証左というべきであって,被告の主張を裏付ける記載とはなり得ない。
(エ)

禁反言の主張について
被告は,原告イエンセンが訂正に関連してレール手段に関する記載を引用したので,それに関連するキャリッジの作動の記載が構成要件Eの解釈を限定し,これに反する主張は禁反言で許されないと主張する。原告らは,被告の禁反言の主張は理解できないが,そもそもレール手段の説明のため引用したキャリッジの実施態様がどうして構成要件Eの解釈となり,この引用した実施例と被告の展開方式が中央展開方式とカーテン方式だから違うという解釈となるのか,主張は理解できず,技術的にも妥当性を欠く。

(2)

本件発明と被告製品1との対比
被告製品1の一対のキャリッジ22,22は,駆動手段として左右動装置23,23を有し,これによりキャリッジ22,22を布類展張のため移動した位置が,受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央とほぼ対向する地点を中心にして互いに反対方向に距離を置いた位置になるように離間せしめることができる。
したがって,被告製品1は,本件発明の構成要件Eを充足する。
(3)

被告製品2も,被告製品1と同様,本件発明の構成要件Eを充足する。
(4)

本件発明と被告製品3との対比
1レーンモードの作動では,一対のキャリッジ22,22は,駆動手段として左右動装置23,23を有し,これによりキャリッジ22,22を布類展張のため移動した位置が,受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央とほぼ対向する地点を中心にして互いに反対方向に距離を置いた位置になるように離間せしめることができる。
2レーンモードの作動では事実上展張レールの左右に2つの装置が併列して作動しているのと同じ状態であるので,上記受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央とは,左右それぞれの,レーンで展張された布類に対応するコンベヤ部分が有効に用いられることになるので,コンベヤの片方の当該対応部分の正面側端部中央ということになる。
したがって,被告製品3は構成要件Eを充足する。

(5)

被告製品がカーテン展開方式ではないこと
被告はカーテン展開方式という紛らわしい言葉を使って,あたかも一端はその位置にとどまり,他端だけが移動するようなイメージを与えようとしているが,後にそうではないと認めている(被告準備書面(7)6頁)。被告が開示した展開方式(被告準備書面(10)の図4の1)は,両端から始動する1対のキャリッジはいずれも一旦中央に向かっていくらか移動して初期展開(センタリング)を行い,そしてその後必ず中央から両端に向かって移動することにより布類の展張が完成する。
なお,被告製品で投入装置が中央に位置するものについて被告は沈黙するが,これは布類を受け取る場所が展張レール中央であるから,キャリッジの展張作動はそこを起点として離間移動をすることになる。
しかし,この場合もいったん上記の2点まで初期展開をし,その後最終展開することも可能である。被告はこの方式をとっていると理解する。これをカーテン方式と称することが不適切なことは自明である。
被告のいう自動モード(乙31の1及び3)による操作が,被告製品で実施されていることは否認する。被告製品で,コンピュータソフトを変更し,センサーを追加すれば,いわゆる自動モード(乙31の1及び3)も操作は可能であるが(ただし,昇降手段が3つで中央にもあるとき,中央で受け取ったものには対応できない。),販売された装置で実施された証拠はない。現に,提出された動画(乙31の1及び3)でも,2回失敗しており,これはいまだ被告製品で実用化されたものではなく,デモンストレーション用に特に設定したものと考える。
いずれにせよ,仮に被告のいう自動モード(乙31の1及び3)が実施に移されたとしても,構成要件E,Fを充足することに変りはない。被告のいう固定モードに限らず,自動モードでも,画面左側のキャリッジの移動距離やタイミングに差はあっても,いずれもいったん中央に向かって移動し,その後中央から反対方向に移動している。
そのいったん停止する点は,あらかじめ定めても作動中定まっても,一対のキャリッジは中央(コンベヤベルトとの関係で)から対称にしてセンタリングを行っていることは当然で,構成要件Fを充足する(構成要件Fの充足については,被告も争っていない。)。
(被告の主張)
(1)

構成要件Eの解釈
被告は,構成要件Eを満たすためには,キャリッジがまず中央部に移動し,その上で,両側に移動するもの(中央展開方式)でなければならないと考える。

構成要件Eの文言
構成要件Eの前記一対のキャリッジには,当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ,の文言からも,本件発明は,フラットワーク物品を中央部に移動せしめた後,広げる(離間せしめる)ものを想定していることは明らかである。
もし,原告ら主張のとおり,構成要件Eは中央展開方式のみならずカーテン展開方式をも含むとすれば,旧特許法(平成6年法律第116号による改正前のもの)36条5項1号により,その両方が特許明細書に記載されていなければならない。しかし,明細書には中央展開方式については記載されているものの,カーテン展開方式の記載は一切ない。また仮に,カーテン展開方式を想定していたにもかかわらず,ことさら,その技術を明細書に記載しなかったのであれば,原告イエンセンが特許権での保護を希望しなかったものというべきである。

構成要件Fとの関係
クランプが,フラットワーク物品を掴持した状態で離間し,フラットワーク物品を展張した結果,それが,受け渡しコンベヤ61の中央に関して対称の位置にくることの説明は,構成要件Fにおいてなされているのであるから,構成要件Eが,どのようにして構成要件Fの状態を実現するのか,その方法について述べていることは明らかである。そうでなければ,同じことを繰り返しているにすぎないこととなる。
そして,本件明細書,原告らの別件での主張等からすれば,構成要件Eには,カーテン展開方式が含まれているとは考えられないことは後記のとおりである。
どのような方法であっても構成要件Fの状態になれば良い,というのであれば,結局,構成要件Eが別に規定されている意味がない。


請求項2による限定の点について
本件特許の【請求項2】によれば,前記フラットワーク物品を延伸するために,前記2つのキャリッジ(8,9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に,当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって共に移動されることを特徴とする請求項1記載の装置。とされているので,本件特許発明では一対のキャリッジは,まず,一対のまま中央の位置に移動し,その上で,互いに離れることは,明らかである。請求項1が,従属項である請求項2で特定されている内容に限定されることはない,との原告の主張は一般論としてはその通りであるが,本件特許の訂正審判の経緯から,本件においては請求項2により特定されている内容に,請求項1が限定されると考えるべきである。
平成11年2月15日付け訂正審判請求(乙6)は,誤記の訂正を目的として,特許請求の範囲の請求項1の下から4行において「レール手段(7)とあるのを,レール手段(15)と訂正する。」というものである。
本件明細書において記載されているレール手段は,レール手段(7)とレール手段(15)の2種類である。これは,レール手段という文言が同一であるため誤記となったものと考えられるが,訂正審決(乙6)において,その誤記であることを説明するために,レール手段(7)に関して次のとおり認定されている。
「レール手段7に関して,特許明細書の発明の詳細な説明において,2つのキャリッジ(8,9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に,当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かってともに移動される……(請求項3),

……2枚の側板部材1,2の間に延びるレール手段7および該レール手段の上を走行する2個のキャリッジ8および9である。……

(【0017】)と記載しており,レール手段(7)は,側板1,2間に延びるキャリッジ8,9がその上を走行するレール手段を意味するものであることが認められる。」
すなわち,レール手段(7)におけるキャリッジの動きを上記のように説明をしてはじめて,レール手段(7)と記載されたものが,レール手段(15)の誤記であることが認められている。言い換えれば,この記載を根拠にしなければ,上記訂正は認められず,請求項3等の記載を根拠にしなければ請求項1に係る発明が明確でないとの理由を解消できなかったものである。なお,ここでいう請求項3は,平成14年2月21日付け訂正後の請求項2である。
したがって,本件においては,請求項2により特定されている内容に,請求項1(本件発明)が限定されると考えるべきであり,原告らの一般論を根拠とした反論は全く理由がない。

段落【0017】の記載
本件明細書の【0017】には,フラットワーク物品は側端を有しており,その側端は,2対の拡張リボン12,13および12’,13’のあいだに導かれる。当該2対のリボンは,互いに向かい合ったリボン部が同一の方向に,かつ装置の中央部から離れて走行するように反対方向に駆動される。との記載がある。構成要件Eを原告の主張のとおり

いずれにしても構成要件Eはその両方の駆動方式を含んでいるのである。

とすれば,唯一の実施例であり,ただ1つ開示されている発明である本件明細書の【図1】に係る装置においては,フラットワーク物品を2対の拡張リボン12,13および12’,13’の間に導くことができないものが含まれていることになり,この2対の拡張リボン12,13および12’,13’の間に導くことができる発明の開示がされていないことになる。したがって,構成要件Eにはカーテン展開方式が含まれているとは考えられない。


原告イエンセンの別訴における主張について
原告イエンセンは,別訴では,この点について以下のとおり主張していた(乙7)。
その構成としてはまず,物品を広げるための伸長機構に挿入すること,これは通常物品の上端を洗濯バサミのようなクランプ装置で挟み,そしかってそのクランプを保持するキャリッジをレール上で中央から両端に向て移動することにより物品全体を広げる,これが伸長装置である。このとき,原告イエンセンが中央展開方式のみを意図していることは明らかである。
別訴における被告(旧プレックス)は,この点について争っていないものと推測され,判決(乙8)では,この点について特に触れられていない。
構成要件Eについて,訂正審判及び無効審判における訂正請求を経た後も,何ら文言が変更されていない。したがって,乙7での主張は,訂正審判,訂正請求後の構成要件Eの解釈にも妥当しなければならない。構成要件Eについての本件訴訟における原告らの主張は,別訴における原告イエンセンの主張に反する。
(2)

被告製品がカーテン展開方式を採っていること
被告製品は,一対のキャリッジのそれぞれが,コンピュータ制御により,異なったスピードで,異なった距離を移動することにより,フラットワーク物品を,中央部を中心として広げる(カーテン展開方式)のであるから,構成要件Eを充足しない。被告製品がカーテン展開方式を採っていることは,乙1,2,11,26,31,32(枝番含む。以下同じ)などから明らかである。

3
争点3(構成要件G充足性)について
(原告らの主張)

(1)

構成要件Gの解釈
構成要件Cは,フラットワーク物品を延伸装置で拡げた状態でコンベヤベルトに移動できる位置関係にあることを要求するもので,そのために移動器具など用いない直接の移動を求めているとは解されない。そして,構成要件Gは,そのための何らかの移動手段を備えることを要求しているのであり,移動手段は特定されていない。
被告は,禁反言により,原告らは構成要件Gの移動手段からバーまたは他の器具が排除されることを否定できないと主張する。しかし,原告イエンセンの意見書(乙4)や手続補正書(乙5)の記載は,そこで引用された本件明細書の【0020】の記載による構成要件Gの限定解釈とは結びつかない。本件明細書の段落【0020】は実施例の説明に関するものであり,引用された【0020】の記載内容は,本件発明から特定の移動手段を排除するような意味はない。
その引用文中前提となる本件発明の構造は,レール手段の正面の位置が挿入装置で占められている点だけである。被告の禁反言の主張は成り立たない。
(2)

本件発明と被告製品との対比
布類Sは,受渡し装置4の作動と吸引作用の協働によって,布類Sの上端部を受渡しコンベヤ61にその正面側端部に移動して引き渡される。受渡し装置4は,フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段に該当する。そして,受渡しコンベヤ61に引き渡された布類Sは,受渡しコンベヤから排出コンベヤ62を経由してロールアイロナー(IR)へ供給される。
したがって,被告製品は,本件発明の構成要件Gを充足する。

(被告の主張)
(1)

構成要件Gの解釈
本件特許の出願時において,原告イエンセンは,拒絶理由(乙3)を回避するために意見書(乙4),手続補正書(乙5)を提出し,特許査定されているのである。
すなわち,拒絶理由通知書(乙3)において,出願当初の明細書段落【0019】の記載について,その記載内容が不明瞭であるから特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないと審査官から指摘されたのに対し,原告イエンセンは,意見書(乙4)において,(ロ)前記拒絶理由1の(ii)の点につきましては,①段落[0019]において「先のフラットワーク物品の後縁がコンベヤベルトの正面側端部を通過するまえにつぎの延伸操作が開始されなければならないという事実に鑑み,コンベヤベルトの正面側端部は,延伸操作のあいだ,クランプ10,11の経路のいくらか後側に位置づけられなければならない。と補正し,いつ延伸操作が開始されなければならないのかを明確にし,かつ段落[0020]においてレール手段7の正面の位置が挿入装置17で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない。そのかわりに,当該導入端部は,コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空によりクランプ10,11からコンベヤベルト5まで運ばれる。と補正し,導入端部がサクションボックス23内で発生した真空により運ばれることを明確にし,」と述べている。
上記は,原告イエンセンの主張であり,これらの主張が受け入れられて特許査定されているのである。
ここで原告イエンセンが主張していることは,レール手段7の正面の位置が挿入装置17で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできないということである。重ねて言えば,フラットワーク物品を移動させるものは,コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空である。したがって,本件明細書においては,レール手段7の正面の位置が挿入装置17で占められていても,クランプ10,11の下の正面側からフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させるバーまたは他の器具は記載されていない。
そればかりか,原告イエンセンは,本件発明はそのようなバーまたは他の器具を具備することができない装置であると述べている。特許法36条5項1号は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることを必要としている。
原告イエンセンは,【図1】で示される当該装置の構成上,レール手段7の正面の位置が挿入装置17で占められているため,クランプ10,11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできないからこそ,サクションボックスを用いた移動手段を備えたのであり,バーまたは他の器具を排除していることは明らかである。(2)

本件発明と被告製品の対比
被告製品の移動手段は,排除されているバーまたは他の器具そのものであり,構成要件Gでいうところの移動手段(移動するための手段)ではない。したがって,被告製品は,構成要件Gを充足しない。

4
争点4(構成要件H充足性)について
(原告らの主張)

(1)

構成要件Hの解釈

昇降とは,

①のぼりくだり。あがりおり。②ひきあげることとおろすこと。③盛んになることと衰えること。

(広辞苑)を意味している。本件に関しては,昇降作動とは,ひきあげる作動とおろす作動を
意味すると解するのが自然であり,かつ一般的な用法に合致する。したがって,字義に照らしても,昇降作動という言葉が,レール上を行ったり来たりする,つまり,同一軌道を往復上下する場合に限定されると解することはできない。

原告イエンセンのした平成14年2月21日付け訂正(乙13)は,(請求項1に関しては)操作位置から昇降する昇降手段とあるのを操作位置から昇降作動する昇降手段と訂正したものである。
フラットワーク物品を持ち上げるスライドは操作者の操作位置から昇降作動するのであって,昇降するのはスライドであり昇降手段全体が昇降するのではないという趣旨を明確にしたものであり,昇降作動が同じレール上を往復するか,周回するかなどを問題にしたものではない。
したがって,被告の主張は見当外れである。
この釈明的訂正は,無効審判で問題となったブラウン・アルファが,レールの先端を降ろして物品を受取り,レール全体を水平まで持ち上げ,物品は水平移動するのとの差を明らかにするため,元の記載でもそう読めるが,誤解を避けるための釈明的訂正である。
特許庁は,元の記載でもそう読めるが訂正文の方がより明確であるとして,この釈明的訂正を認めたのである。
この訂正請求の意見書でも,レール手段15に沿ったスライド16の上向きの移動によって,当該フラットワーク物品がクランプ10まで上向きに動かされる,

スライド16が当該クランプ10を通過して,元に戻る。

と述べているが,被告製品でも,溝付き部材12aに沿った投入クランプ取付けベースは(操作位置から)上向きの移動をすることにより投入クランプ取付けベースに取り付けた投入クランプに掴持された布類は,拡げクランプ21まで上向きに動かされ,キャリッジ22に取り付けた拡げクランプに投入クランプ11から布類を受け渡すために拡げクランプを通過し,その後(遠回りして)元の操作位置に戻るようになっている。したがって,原告イエンセンの訂正請求での意見書の説明にも合しているので,何ら禁反言に反する主張はしていない。

被告は,被告製品の投入クランプ移動手段はチェーンにより周回するもので,同じレール上を往復上下動するものに比べ,格段作業効率がよいと主張する。しかし,被告の周回チェーンで移動する投入クランプは,本件発明の1本の直線上のスライドの役を2個が交替で行っているにすぎない。この2つの方式の差により作業効率の差はあっても無視できる程度のものである。

(2)

本件発明と被告製品との対比
被告製品において,投入装置1は布類を投入装置に挿入する作業を行う操作者によって制御され,また,被告製品1においては3つ,被告製品2,3においては4つの投入装置1が展張レール25に沿って1列に並んで隣接して設けられている。また,投入装置1を構成する投入クランプ移動装置12は,布類Sを操作位置から展張レール25上の一対のキャリッジ22,22の方へ持ち上げるために布類Sを掴持した投入クランプ11の取付けベース12bをチェーン12cにより斜上方に移動させている。
この投入装置1は構成要件Hの挿入装置であり,投入クランプ移動装置12は構成要件Hの昇降手段である。
3つ(被告製品1)ないし4つ(被告製品2,3)の投入装置のそれぞれが投入クランプ移動装置を有するので当然複数である。
したがって,被告製品は,本件発明の構成要件Hを充足する。

(被告の主張)
(1)

構成要件Hの解釈

被告は,構成要件Hにおける昇降作動とは,レール上を行ったり来たりすることであり,被告製品は,レール上を行ったり来たりすることはないので構成要件Hを充足しないと主張するものである。レール上を行ったり来たりという意味は,同じ軌道を往復上下するということと同旨である。

構成要件Hの昇降作動という用語は,平成14年2月21日付け訂正(乙13)により,操作位置から昇降する昇降手段とあったものから操作位置から昇降作動する昇降手段と訂正されたもので,当初明細書には記載されていない。すなわち,記載内容が不明瞭であることを理由に無効となることを免れるために訂正したものである。
原告イエンセンは,昇降作動なる語を当初明細書において使用していなかったため,明細書に記載されたスライドがどのように動くかということを,明細書の【0019】等の記載を根拠に詳細な説明をして初めて,操作位置から昇降する昇降手段とあるのを操作位置から昇降作動する昇降手段とした点についての訂正が,

[判決注:平成11年2月15日付け訂正後の]訂正明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって,新規事項の追加には該当しない。

として適法と認定されているのである(乙9)。その範囲内とは,フラットワーク物品21はクランプ17に挿入され,レール手段15に沿ったスライド16の上向きの移動によって,当該フラットワーク物品がクランプ10まで上向きに動かされる。……クランプ17を備えたスライド16が当該クランプ10を通過して元に戻るための空間的余裕が残されている。(段落【0019】)等の記載であるから,周回しているものはこの範囲には入らないのである。
したがって,周回している被告製品は,構成要件Hを充足しないことが明らかである。
原告らは,昇降作動の意味について,広辞苑の記載を根拠に,
ひきあげる作動とおろす作動を意味すると主張する。
しかし,原告イエンセンは,無効審判において,広辞苑の記載を根拠として訂正を求めるのではなく,明細書の記載を根拠として,より限定的に訂正をしたのである。
無効審決を免れるために,当該審判における被請求人である原告イエンセン自身が限定的な説明を行っておきながら,侵害訴訟においては,広辞苑を根拠に広い解釈を主張するのは,禁反言の原則に反するものである。ウ
無効審決(乙9)において引用例とされたブラウン・アルファも,シーツ類などのフラットワーク物品を低所から高所に持ち上げるという点で共通しており,このような作動は,原告のいうところのひきあげる作動とおろす作動を意味する昇降作動そのものである。したがって,昇降作動を,単にひきあげる作動とおろす作動と解するならば,無効審判にかかる無効理由に該当する可能性を排除することができないこととなる。


被告製品は,投入装置において周回方式を採用している。この周回方式では,周回方向を変える必要がないために周回上に少なくとも2つ以上の投入クランプを配置することができる。そのため,作業者は投入クランプの復帰を待つことなく次のシーツを他の1つの挿入クランプに挿入することができ,作業時間の短縮化を図ることができる。

(2)

本件発明と被告製品の対比
構成要件Hにおける昇降作動がレール上を行ったり来たりするものであることは明らかであるところ,被告製品は周回するものであり,昇降作動するものではないから,被告製品は構成要件Hを充足しない。
5
争点5(構成要件K充足性)について
(原告らの主張)

(1)

構成要件Kの解釈
レール手段は通常の技術常識に従って解釈されるべきである。
被告代表者前嶋洋左右出願の公開特許公報(甲7)では,被告が投入クランプ脱落防止カバーと強弁する溝付き部材と全く同一構造を示す部材をガイドレール29と称し,【0011】【0012】【0020】でその目的・作用について詳細な説明がなされている。
このように,被告代表者自身が被告製品を想定して行った特許出願において,溝付き部材を通常の技術常識に従ってガイドレールと呼び,上述のような説明を付している。そして,かかる詳細な説明は,いずれも原告の解釈を裏付けている。
(2)

本件発明と被告製品との対比
布類Sは,一対の投入クランプ11,11に挿入される。一対の投入クランプ11,11は,投入クランプ取り付けベース12bに取り付けているところ,投入クランプ取り付けベース12bは,モータ12dがチェーン12cを介して駆動することにより,溝付き部材12aの溝に沿って昇降自在に移動することができる。
溝付き部材12aの溝に沿って移動するのは,投入クランプ取付けベース12bに車輪12gが付けてあり,この車輪が溝付き部材の溝にはまりこんでいるので,投入クランプ取付けベースがチェーン12cによって移動すると,車輪が回転し溝の中を接触の抵抗なくスムーズに移動することによる(なお,この車輪は投入クランプ取付けベースの走行の駆動をしているわけではない。)。
この投入クランプ取付けベース12bは構成要件Kのスライドに該当し,また溝付き部材12aの溝は昇降手段のレール手段に該当する。したがって,被告製品は,本件発明の構成要件Kを充足する。

(3)

被告の主張に対する反論

被告は,溝付き部材12aは単なるカバーで,①クランプをチェーンに固定するピンが破損した場合の脱落を防止するとか,②フラットワーク物品がチェーンに巻き込まれるのを防止するとか,③フラットワーク物品がクランプと投入装置側板との間に巻き込まれるのを防止するとか主張する。
(ア)

クランプをチェーンに固定するピンは破損しないように設計されるのが通常であり,それを防止するためにわざわざカバーを設置することは考えにくい。その点を措くとしても,もしピンが破損した場合の脱落を防止する目的であれば,溝付き部材の溝部分を設ける必要はないし,車輪を設ける必要もないはずである。
(イ)

また,フラットワーク物品はクランプから下に垂れ下がっていることから,クランプより上に位置するチェーンに巻き込まれることはおよそ考えられないし,チェーンには溝付き部材とは別にチェーンカバー12fが付されているから,チェーンに巻き込まれることを防ぐために溝付き部材を付す必要はない。
したがって,被告の主張は到底信用できない。

(ウ)

被告は,上記②のフラットワーク物品がチェーンに巻き込まれることを防止するためとの主張を,③クランプと投入装置側板との間に巻き込まれることを防止するためと訂正した(被告準備書面(7))。フラットワーク物品がクランプと投入装置側板との間に巻き込まれるというのがどういった場面を想定しているのか不明であるが,いずれにせよ,訂正前後で言っていることが全く違っていることは明らかであり,このような変遷が行われること自体,被告の主張が場当たり的なものであることを表している。
被告は,溝付き部材があることで,フラットワーク物品がクランプと投入装置側板との間に巻き込まれることが防止できる理屈について,何ら説明していない。
そもそも投入装置側板は何のためにあるかといえば,それは溝付き部材を支持する支持板である。その支持板が布類と接触することを防ぐため溝付き部材を設けたというのであれば,それぞれ互いの存在を維持するだけのものということになり,両方ともなくても良いことになり,意味をなさない。
(エ)

被告代表者自身が被告製品を想定して行ったものと認められる特許出願の明細書(甲7)には,ガイドレール29の機能につき,投入クランプの脱落防止,チェーンに巻込まれることの防止,クランプ投入装置側板への巻き込み防止などといった作用・目的については全く記載がない。


被告は,被告製品は溝付き部材がなくても作動するから,昇降手段のレール手段には該当しないと主張する。しかし,外しても機能すると言ってみても,産業上現実に製造販売している製品には存在し,自ら同じ構造物についてガイドレールと呼称し,それに適合する存在目的・作用・効果を説明しているという事実がある場合,このような主張にいかなる意味があるのか不可解で,侵害の有無を左右するものでないことは明らかである。
そして,溝付き部材を外して動作させたデモンストレーション(乙1)のような設定で,実用的継続使用に耐えるものとして販売できないことは技術的に明らかである。


被告は,溝が連続せず間隙があるので,レールの役をしないと主張する。しかし,例えば鉄道のレールであっても間隙は存在するのであって,間隙の存在は溝付き部材がレール手段でないことを示す証拠とはなり得ない。甲7の発明におけるガイドレール29にも間隙は設けられている。
(被告の主張)
(1)

構成要件Kの解釈

レールの意味につき,広辞苑(第4版)には,

①車輪を支え,その上を円滑に走らせる細長い鋼材。……軌道,軌条。②手すり,さく。「ガードレール

③物事を運ぶための道すじ,下準備。(以下略)」と記載されている。
また,マグローヒル科学技術用語大辞典(第3版)には,

【工学】1.柱またはその他の支柱の間に防護用に渡された横棒。2.鉄道車両やその他のフランジ付き車輪を持つ乗物に軌道を提供する枕木の上に置かれた鉄の横棒。

と記載されている。上記の記載によれば,レールというものは,次の二つのカテゴリーに大別することができるといえる。


まず,レールには軌道や軌条等の意味があり,この場合のレールは移
動体の移動経路を規定する。その代表は,鉄道のレールのたぐいであり,これをカテゴリー1のレールと呼ぶことにする。


また,レールには手すりや柵等の意味があり,この場合移動経路に
沿って設けられる。しかし,この意味のレールは移動体の移動経路を規定せず,防護の用途に用いられる。その代表は,道路に沿ったガードレールのたぐいであり,これをカテゴリー2のレールと呼ぶことにする。イ
本件発明におけるレール手段7及び15は,キャリッジ8,9やスライド16などの移動体が接触して移動するための手段である。レール手段なくして移動経路(軌道)は規定されず,そもそも移動自体が不可能である。よって,本件特許発明におけるレール手段は,カテゴリー1のレールに属する。

(2)

本件発明と被告製品との対比

被告製品には昇降手段のレール手段は存在せず,原告らがレールに該当すると主張するもの(溝付き部材12a)は,投入クランプ脱落防止カバーである。


被告製品の場合,フラットワーク物品の搬送機構(投入クランプ移動装置12)は,一対のスプロケットホイールにチェーンを掛け回したもので構成されている。これは,あたかも自転車のチェーンのような構成であり,そのチェーンにクランプを取り付けているのであるから,作動にレールが必要な理由は全くない。被告製品において,レールではないかと疑われている溝付き部材は,チェーンの高速移動時におけるピンの破損によるクランプの脱落防止やクランプと投入装置側板との間へのシーツの巻き込み防止として機能する。高速移動時以外には,ただ付属しているだけで,機能する余地のないものであり,本質的に移動体の移動に関係しない。被告製品は,一対のスプロケットホイールにチェーンを掛け回した構成によって,完全に,フラットワーク物品を搬送することができる。
したがって,被告製品における溝付き部材は,カテゴリー2に属する。換言すれば,カテゴリー1の技術的意義は,被告製品に存在しない。ウ
乙1,2に明らかなとおり,被告製品にあっては溝付き部材を取り外して運転しても,投入クランプは,溝付き部材を取り外す前と同様,正常に稼働する。すなわち,溝付き部材がクランプを案内していないことの証左である。
本件発明の実施品では,昇降手段のレール手段を取り外したら,投入クランプは稼働しないはずである。


原告は,鉄道のレールの隙間を例に,投入クランプ脱落防止カバーに間隙があることとレールであることとは矛盾しないと反論しているが,失当である。
鉄道の車輪の直径は860mmが主流で,新幹線の0系や100系,国鉄時代の103系は910mmである。他方,レールは最近では,継ぎ目の無いものが主流となっているが,従来のレールのつなぎ目には10mm程度の隙間がある(温度変化によるレールの伸縮に対応するため)。したがって,車輪と継ぎ目の割合は,1%強である。
これに対して,溝付き部材の間隙は20mm程度であるから,鉄道のレールと同様に考えるとすれば,被告製品の車輪の直径は2000mm以上ということになり,常識外である。
このような大きな隙間があることは,溝付き部材が進路を誘導する案内路としての機能を果たさないことの証左である。
また,溝付き部材と車輪が接触しないことも,車輪が投入クランプ防止カバーに案内されていないことを示している。

甲7の発明の当時,チェーンによる周回動作において生じるブレを防止し,布類の巻き込み等メーカーとして基本的かつ当然回避すべき危険を防止するためにガイドレールを用いて,総合的に安定な移動が保証される(甲7の【0012】)と説明(記載)していた。しかし,被告製品の開発時においては,チェーンやスプロケットのみでその周回動作のブレをなくすことに成功した。
そのため,隙間部材は,布類巻き込み防止等々の安全対策としての機能のみを持つに至ったのである。


被告製品は昇降手段のレール手段を欠くので,構成要件Kを充足しない。

6
争点6(過失)について
(原告らの主張)
被告は,被告には過失がないと主張するが,特許法103条による過失の推定を覆す事由はない。
(被告の主張)
特許請求の範囲について,当業者が正確に把握できないことについて特許権者にその責めが帰せられるときは,過失の推定をすることは相当でない。被告製品が中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめる昇降作動するレール手段に該当するような解釈を当業者が正確に把握することは不可能であったから,特許法103条を適用して被告に過失があることを推定することはできず,被告には過失がないから,損害賠償義務は発生しない。
7
争点7(損害)について
(原告らの主張)
原告らは,原告イエンセンにつき特許法102条3項に基づき,原告プレックスにつき同条1項に基づき損害賠償を請求する。

(1)

被告製品の販売台数

平成20年12月から平成24年2月末までにおける被告製品の販売台数は,被告製品1が46台,被告製品2が15台,被告製品3が10台の合計71台である。


被告による自白の撤回には異議がある。
被告は,SONIC-ES3V-EX-33は被告製品1(SONIC-ES3)に含まれない,SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35は被告製品2(SONIC-ES4)に含まれないとして,これを含めていた従前の販売台数は真実に反し錯誤に基づくものであったと主張する。
しかし,V,EXなどの記号は,本件発明の構成要件充足問題
とは無関係の,単なる付加機構のオプションを備えるかどうかであり,-33,-35などの寸法差と同様,SONIC-ES3,
SONIC-ES4,SONIC-ED4という上位概念の記号
で統括して何ら問題はない。
被告の主張する自白の訂正理由は成立しないので,販売台数に関する自白の撤回は認められない。

(2)

原告イエンセンの損害

原告イエンセンと原告プレックスとの間の専用実施権設定契約(甲16)によれば,許諾により適法に実施し,報告して自発的に支払う場合の実施料は,1台当り65万円である(18条1項)が,違法に実施して後に支払う違約金は1台当り130万円である(7条5項)。
したがって,原告イエンセンが特許法102条3項に基づいて請求できる額は,130万円×71台=9230万円である。

被告は,専用実施権者の請求と特許法102条3項で特許権者又は専用実施権者が特許侵害による損害を請求できることに関し,「又は」とあるからどちらか一方しかできないとし,本件では特許権者の請求は専用実施権者と二重請求となると主張している。
しかし,被告の販売分については,原告イエンセンは何ら実施料を受けていないのであるから,その分の請求を被告に対し行うのは当然で,専用実施権者たる原告プレックスの請求とは別個独立に成立する請求権である。このように専用実施権を設定している場合にも,特許権者が特許法102条3項の請求と専用実施権者が特許法102条の1項又は2項による請求を併行して個別に被告に対し損害賠償請求をすることは,一般的に認められていることである。被告の独自の主張は認められない。
なお,本訴では,特許法102条3項の請求は,特許権者のみが行使しているもので,及び専用実施権者も請求しているわけではない。

(3)

原告プレックスの損害

(ア)

特許法102条1項に基づく損害額
1レーンモードの製品として,被告製品1及び2に対応する原告プレックスの製品は,①イージーホークLite3ESZ-L3,②イージーホークLiteESZ-L4,③イージーホークNeoESZ-N4及び④イージーホークHyperESZ-H4(以下,それぞれ原告製品1ないし原告製品4(
という。)
という。)の4機種である。
。)
また,2レーンモードに対応可能な製品として,被告製品3に対応する原告プレックスの製品は,⑤イージーホークNeoVIESZ-N6及び⑥イージーホークHyperESZ-H6(以下,それぞれ原告製品5原告(製品6といい,原告製品1ないし4と合わせて原告製品とい。)の2機種である。
う。)
(イ)

被告製品1,2に対応する原告製品1ないし4の平成21年から平成23年の1台当たりの限界利益説による平均利益額は359万5508円であり,被告製品3に対応する原告製品5及び6の1台当たりの平均利益額は508万2522円である。
もっとも,原告らは,これが321万7327円(原告製品1ないし4について)及び436万8056円(原告製品5及び6について)であるとの計算鑑定の結果を争うものではない。

(ウ)

原告プレックスが特許法102条1項に基づいて請求できる額は,被告製品1,2の販売による損害として,359万5508円×(46台+15台)=2億1932万5988円
被告製品3の販売による損害として,508万2522円×10台=5082万5220円
の合計2億7015万1208円である。


被告は,原告プレックスの請求は権利濫用であるなどと主張するが,過去に争ったことがあっても,和解成立後,あらためて特許権を尊重し専用実施権の設定を受けたこと,その権利を行使することは何ら権利濫用に該当しない。


原告プレックスに損害はないという被告の主張は根拠がなく,誤っている。
フィーダー,ロールアイロナー及びフォルダーはそれぞれ独立して値段も設定されており各別に販売できるもので,それらを一括して全システムを同じメーカーから購入するかどうかはユーザーの選択であり,その希望により,実際は,販売代理店が,同じメーカーから一括購入するか又は各別に購入して,まとめて納入するということになる。
被告は,原告プレックスはトーカイ系列下にあり,トーカイの競業者であるリネンサプライ業者はトーカイ系列の原告プレックスを忌避するとして,あたかもトーカイ系列以下は全て被告の顧客で,トーカイ系列と対抗しているかのごとく主張するが,全国のリネンサプライ業者は全て原告製品のユーザー候補で,原告プレックスと被告は,それぞれが全国の市場をカバーする複数の販売代理店を通じて販売しているので,フィーダーに関しては,全国的に競合関係にある。
リネンサプライというサービス業者間では,使用機器についての明確な住み分けはなく,原告プレックスがトーカイ子会社であるという理由でその使用機器を購入しないなどというリネンサプライ業者はほとんどなく,あったとしても例外であろう。現に株式会社トーカイ(四国)の工場所在たる香川県の同業リネンサプライ工場でも,原告プレックスのフィーダーなどの機器を使用している。
フィーダーで昇降手段を有する複数の挿入装置と一対の展張クランプが各昇降手段の位置に移動してフラットワークを受取り展張するという方式は,競業他社のフィーダーにはないので,被告の侵害行為がなければ当然,この方式を希望するリネンサプライ業者は,原告製品を購入するしかないのである。
したがって,被告製品の販売がなければ,原告製品を購入することになる。

(ア)

寄与率について
特許の対象が問題の販売品の一部材にすぎないときは,販売品全体の代金を基にした利益というわけにはいかないので,その部材の寄与率が問題となる。
しかし,本件発明はフィーダー装置の全体を対象としており,フィーダーは,独立して取引するときはもちろん,フォルダーなど他の機器と組合せて取引するときも,フィーダー自体の値段は示されるものである。したがって,フィーダー全体の利益が対象となり,それについての請求について,寄与率の問題は生じない。
(イ)

被告代表者の発明も寄与率に関連して述べられているが,本件発明以外の他の発明の使用は,損害認定に直接関係がない。


輸出分について
被告は,原告プレックスが独占権を行使できるのは日本国内だけだから,外国向けは対象外と主張しているが,誤りである。
外国市場で原告プレックスが本件特許権の専用実施権による独占権を有しないのは当然であるが,原告プレックスは本件特許権の専用実施権者として日本国内の独占権を有し,これに基づき内国向け外国向けを問わず実施権と差止権を有するのである(特許法2条3項1号)。
損害賠償請求の根拠としては,その独占権のほか,自らも海外仕向品を含め日本国内の実施の可能性があればよいのであり,輸出用であっても同様で,仕向先の外国での独占権は必要としない。
被告は,EU等に輸出するためCEマーク取得の必要がある点を,自社だけの特権のごとく述べるが,必要とあれば,原告プレックスも取得できるものである。被告は特にEUについてCEマークを取得したというが,原告イエンセンは,本件特許と対応する米国特許とEU特許を有しており,EUでは2013年1月26日まで存続するので,EUに輸出することはその特許侵害になるはずであるから,被告が自由に輸出できたのはアジアなどである。原告プレックスも,原告イエンセンの了解のもとに,実施料を払って,国内の代理店を通じ韓国,インドネシア向け輸出品を販売した実績がある。
したがって,海外向けということを損害賠償の対象から除外する理由はない。

(被告の主張)
(1)

被告製品の販売台数について

平成24年2月末日までに工場を出荷した被告製品の台数は,被告準備書面(17)においては,被告製品1につき46台(うち10台は海外向け),被告製品2につき15台(うち1台は海外向け),被告製品3につき10台(うち2台は海外向け)の合計71台(うち13台は海外向け)と主張したが,被告製品1につき34台(うち7台は海外向け),被告製品2につき5台,被告製品3につき10台(うち2台は海外向け)の合計49台(うち9台は海外向け)が正しいので,訂正する。


原告らが特許権侵害を主張する被告製品はSONIC-ES3(被告製品1)SONIC-ES4(被告製品2)及びSONIC-ED4(被告製品3)であるが,被告にはSONIC-ES3との型番はなく,SONIC-ES3-33又はSONIC-ES3-35がある。この両者の相違は,横幅が3300mmか3500mmかの相違である。被告は,物件目録の記載は正確ではないものの,上記両機種の上位概念としてSONIC-ES3を考えることができないわけではないので,上記両機種を含めて出荷台数を調査した,しかるに,出荷台数調査中に,SONIC-ES3V-EX-33を含めてカウントしてしまったものである。SONIC-ES3V-EX-33を除いたSONIC-ES3-33及びSONIC-ES3-35の出荷
台数は34台(うち7台は海外向け)である。
また,被告にはSONIC-ES4との型番はなく,あるのはSONIC-ES4-33(SONIC-ES4-35の型番はあるが出荷実績はない。)であるが,出荷台数調査中に,SONIC-ES4-EX-33及びSONIC-ES4-EX-35を含めてカウントしてしまったものである。上記を除いたSONIC-ES4-33の出荷台数は5台である。本件発明に係る装置は,コンベヤベルト上を運ばれるあいだにフラットワーク物品の垂れ下がった部分の皺を伸ばすために対をなして設けられた公知の延伸リボンを利用できる(【0008】)。これに対して,SONIC-ES3V-EX-33SONIC-ES4-EX-33及びSONIC-ES4-EX-35はカーテン方式を採用しているため,公知の延伸リボンを採用することができず,その代わりに布類整形装置(特許4266947号)を採用しているのである。以上のとおり,被告準備書面(17)での主張は真実に反し,かつ錯誤に基づくものであるから,訂正は認められるべきである。
(2)

原告イエンセンの損害について

原告イエンセンは,原告プレックスに対して専用実施権を設定しており,原告プレックスが損害賠償を主張している本件において,被告に損害賠償請求を行うことは二重請求となり許されない。
原告らの主張が許されるならば,特許権者が自らその特許を実施している場合と,特許権者が専用実施権を設定している場合とで,前者より後者の方が損害賠償の額が常に大きくなるはずであるが,そのような結論には合理性はなく,肯定すべき何らの根拠もない。


専用実施権を設定した場合,設定した範囲内において,特許権者であってもその発明を実施することはできない。専用実施権者が差止請求,損害賠償請求を行えることの結果,特許権者は自らの損害を観念することはできず,したがって,損害賠償請求をすることができない。


特許法102条3項は,同条1項又は2項を補充する規定であり,1項,2項いずれも適用することができない場合にも,少なくとも3項の規定に基づく請求はできるとの趣旨である。したがって,専用実施権者が1項若しくは2項の適用を主張して損害賠償の請求を行っている場合に,特許権者に対して102条3項の規定は適用されないというべきである。エ
原告らは,原告ら間の専用実施権設定契約(甲16)に基づき,実施料相当損害金が1台当たり130万円と主張するが,原告ら間で行った契約が被告に適用される根拠は全くない。
さらに,特許法102条3項の実施に対し受けるべき金銭の額とはライセンス料相当額であると解されるから,原告ら間の損害賠償額の予定に関する規定が適用されるとする原告らの主張は失当である。

(3)

原告プレックスの損害について

権利濫用
原告プレックスは,かつて原告イエンセンの本件特許権について無効を主張し争った。
その後,和解して,本件特許権に専用実施権を設定したものである。原告プレックスは,原告製品を自ら製造してはおらず,全て外注している。
原告プレックスは,もっぱら,被告に対する営業戦略の一環として,本件特許権の専用実施権を得て,本件訴訟を行ったものである。
そのやり方は,いわゆるパテントトロールと変わるところはない。原告プレックスが本件特許権の専用実施権に基づいて被告に損害賠償を請求するのは権利濫用であるというべきである。


損害不発生
原告プレックスは,株式会社トーカイ傘下のグループ会社(連結子会社)である。
このような関係にあるため,原告プレックスは主にトーカイ系列ないし影響下のリネンサプライ工場に製品を販売し,被告は,主としてトーカイと競合関係にあるリネン業者などに製品を販売する。
特殊な例外を除いて,住み分けが行われており,例えば,トーカイ系列と競合するリネン業者は,原告プレックスに対して(販売代理店を通じて)見積もりを請求することはあっても,特殊なケースを除いて製品を購入することはない。それどころか,原告プレックスの社員がリネン工場内に立ち入ることが許されない場合すらある。
すなわち,被告製品の販売は,原告製品の販売の減少にはならないのである。
さらに,フィーダー(投入機)は,単独で使用されるものではない。フィーダーの先には必ずアイロナーがあり,さらにその先にはフォルダーがある。この一連の流れの中で有機的な関連を以て作動するのであるから,例えば,被告のフォルダーを使用しているリネン工場が,原告プレックスのフィーダー(投入機)を使用することは原則的にない。
以上の理由で,仮に被告製品が本件特許権を侵害するとしても,原告プレックスに損害は発生していない。

(ア)

輸出分について
原告プレックスが本件特許権の専用実施権により独占的な利益を得ることができるのは日本国内の市場においてのみであり,本件特許権により外国の市場を独占することはできない。
したがって,被告が外国向けに製造販売した被告製品については,被告の販売行為により原告プレックスに損害が生じたとはいえず,特許法102条1項を適用する前提を欠くから,外国向けに出荷した被告製品は損害賠償の対象から除外すべきである。

(イ)

例えばEU加盟国などに製品を輸出するためには,CEマークを取得する必要がある。被告はCEマークを取得しているが,原告プレックスはこれを取得していない。
CEマークは,商品がすべてのEU加盟国の基準を満たすものに付けられるマークで,EEA(欧州経済領域)やスイス,ノルウェー,アイスランド,リヒテンシュタインなどのヨーロッパ自由貿易体を含むヨーロッパ経済体や,EU,EFTAの両方に属さないトルコでも必要となる。
CEマーク使用の許可には,当然のことながら製品が所定の基準を充たしているという証拠を必要とする。
また,基準を満たしていることを証するための検査は,機種ごとに行われる必要がある。
本件の侵害論では,被告製品のチェーンカバーが原告らの主張するレールに該当するか否かが問題になった。しかし,被告が安全性のためにチェーンを覆うカバーを採用したのは,CEマークを取得するために十分な安全性を得る必要があったからである。同様に,クランプのツメを内向きにするなど,CEマークを取得するための安全性向上のために為された工夫は,他にも多くある。また,1年間の無償保証,調整などもCEマークなどの取得のために被告が行っている措置である。さらに,海外に向けて販売するために,英文や中国語のホームページやカタログを作成するとか,イタリア,中国,台湾などで定期に行われる展示会への出品,海外の代理店を設けるなど必要な措置が多くある。原告プレックスは,このような努力を全くしていない。
したがって,原告プレックスが海外に販売できる可能性は全くないのであるから,被告製品の販売台数のうち海外向けの出荷台数は,原告プレックスの損害として算入されるべきではない。

(ア)

被告製品に対応する原告製品について
被告製品1(ES3)と被告製品2(ES4)の相違は,要するに投入ステーション数の相違であり,ES3は3ステーション,ES4は4ステーションであるが,投入ステーション数の相違は,当然,製造原価の相違をもたらし,販売価格の相違をもたらす。原告ら自身,ES3とES4は物件目録(1)と(2)に分けているのであり,別の製品として計算されなければならない。
(イ)

原告プレックスの4ステーション機3種の販売価格は,ESZ-N4(原告製品3)が1110万4286円,ESZ-L4(原告製品2)が927万7460円,ESZ-H4(原告製品4)が986万3333円とされ(甲17の2),その価格幅は182万6826円である。何らかの機能の差があるから,200万円近い価額の差が生じているはずであり,損害額算定に当たっては,上記3機種中,最も被告製品2の性能に近い製品の利益額が算出されるべきである。

(ウ)

原告プレックスが3ステーション機であるESZ-L3(原告製品1)の販売を始めたのは,平成22年10月頃である。
すなわち,それまでの間,被告製品1と原告製品1との間には,その侵害がなければ販売することができたという関係はない。また,原告プレックスの4ステーション機(原告製品2~4)との間にも競争関係は成立しておらず,その侵害がなければ販売することができたという関係は希薄である。被告製品1について,平成22年10月以前については,特許法102条1項が適用されてはならない。


(ア)

原告製品の限界利益について
原告製品の限界利益につき計算鑑定がなされているところ,計算鑑定書には鑑定評価意見を形成する根拠となる資料は一切付されていない。計算鑑定の目的は,学識経験者に専門知識及びこれを適用して得た判断の結果を報告させて裁判官の判断を補充させようとするものであって,裁判官の判断を代替するものではない。したがって,裁判官が,鑑定人の判断の経過について検証できなければ,裁判官の判断とはいえない。しかるに,本件では計算鑑定書に何らの資料も添付されていないし,鑑定の結論に至る経過についてほとんど明らかにされていないのであるから,鑑定人の判断の経過を検証することができない。
したがって,本件計算鑑定は計算鑑定の目的に沿うものではなく,違法である。
(イ)

平成22年3月期から平成24年3月期までの間の原告プレックス全体の年間平均売上額は約11億5900万円,平均利益(純利益)額は約3450万円で,利益(純利益)率は2.9%である。
計算鑑定によれば,平成21年1月から平成23年12月の原告製品の売上額の平均は約2億6760万円,利益(限界利益)額は約8750万円で,利益(限界利益)率は32.7%である。
いかに限界利益と純利益は利益の概念が異なるとはいえ,全体の利益(純利益)率が2.9%であるのに,原告製品の利益(限界利益)率が32.7%であるというのは矛盾があるといわざるを得ない。
原告プレックスは,外注により原告製品を製造し,販売していることから,製造のための機械,設備を持たない。そうすると,限界利益と純利益の差は被告より小さいはずであるのに,原告プレックスにあっては限界利益は純利益の11倍を超えている。

(ウ)

生産を専ら外注に頼る場合にあっても,金型は自社で保有し委託先に無償で貸与する方法が採られることが多い。
本件では,金型を誰が所有するのか明らかにされていないが,仮に原告プレックスが所有するとすれば,その金型製作に要した費用は製造原価に含まれるべきである。金型は一般に償却期間2年とされ,償却期間経過後は備忘価格だけ帳簿に残るが,これは課税上の計算方法(減価償却)の問題であって,原価(変動経費)を計算する上では,金型費用は実際の使用期間中に生産された製品の単価に均等に加えられるべきである。
本件計算鑑定で金型費用が全く計算されていないとすれば,適正に製品原価(変動経費)を計算しているとは到底いえない。
(エ)

原告製品は,当初,イージーホークの名称で販売され,その後,同Hyper
,同HyperS,同Neo,同Liteと順次新しい製品
が加えられていった。原告プレックスが販売したそれぞれの製品に関する開発費(製品の販売より前に投じられるもの)は,損害計算をするうえでの原告製品の原価に算入されるべきである。
研究開発費は,5年以内で償却するとされ,会計上は研究開発費を支出した年度に一括して償却しても問題はないが,損害計算をする上での製品原価(変動経費)を計算するためには,償却期間に関係なく,研究開発費をそれぞれの製品に均等に原価(変動経費)として割り振らなければならない。
しかるに,本件計算鑑定においては,この点を全く無視している。本件計算鑑定では,対象期間(3年間)の開発費合計600万円弱を原価(変動経費)に参入している。
新機種を市場に投入するときは少なくとも1台は試作機を製造する。試作機の製造費用は量産機よりも高額になるのが常識であるが,仮に同額であったとしても,原告製品6機種合計で少なくとも4380万円はかかったはずである。開発費用は試作機の製造にとどまるものではないが,最低でも上記の金額が計上されていなければならず,これを全く計上しない本件計算鑑定は信用性に乏しいといわなければならない。
(オ)

本件計算鑑定では,原告イエンセンに支払っているロイヤリティー以外の特許関係費を原価として計上していない。
しかし,原告プレックスは,本件投入機関連の特許として19件の特許(①特願平9-311689(特許4122080),②特願平10-290203(特許3459365),③特願平10-303283(特許3208120),④特願平11-335231(特許4204154),⑤特願2001-318832,⑥特願2002-330530(特許4043345),⑦特願2002-330529(特許4185353),⑧特願2002-334010(特許4043346),⑨特願2006-306141,⑩特願2006-113203(特許4808065),⑪特願2004-341315(特許3781376),⑫特願2007-080418(特許5101914),⑬特願2007-180756(特許4762206),⑭特願2007-187818,⑮特願2007-234376,⑯特願2008-098858,⑰特願2008-119594(特許5111224),⑱特願2008-130381,⑲特願2008-183279(特許5156513))を有し,それらは原告製品に使用されている。したがって,この点を考慮しない計算鑑定は相当でない,また,これらの発明の開発費についても計上されているとは到底思えない。
(カ)

さらに,原告プレックスは,原告イエンセンの特許権を侵害したとして,実施料のほか和解金を支払うことで解決し,専用実施権の設定登録がなされたものである。原告プレックスは,和解金を支払ったことで,原告製品を製造できるようになったのであるから,和解金は,原告製品のコストである。あるいは言葉を換えて言えば,基本的な開発費を計上することを免れてこの技術を獲得することができたものであり,和解金は事実上の開発費に相当するものである。したがって,実施料のほか,原告プレックスが原告イエンセンに支払った和解金も製品原価(変動経費)として利益の額から控除すべきである。


(ア)

寄与率について
本件発明は,被告製品中の投入ステーション部分(投入装置1)に限定されるものである。しかも,昇降作動する昇降手段の有する機能のうち,従来製品であるブラウン・アルファとの差異は,レール自体が昇降するか,レールに沿って昇降移動するか,にすぎないものであるから,被告製品における貢献は極めて小さい。
投入ステーションが被告製品に占める割合は,機種によって若干の相違はあるものの,部品点数では26.3%~28.8%,価格に占める割合では9.5%~10.9%である。
原告製品が本件発明をそのまま実施する構造であるのに対し,被告製品はチェーンを使用した周回作動をするものである。この点から,原告製品における投入ステーション部分の全体に対する比率は,部品点数においても,価格においても,被告製品を大きく下回るものと推測できる。原告プレックスの損害を算定するうえでは,当然,価格の割合で考えるべきであるから,本件発明の原告製品に対する貢献の割合(寄与度)は,10%以下と考えるべきである。
(イ)

被告製品には,被告代表者の発明にかかる5件の特許(①特許2827157(乙37),②特許4179828(乙38),③特許4201666(乙39),④特許4266947(乙40),⑤特許4358820(乙41))が実施されており,それらの奏する効果によって顧客吸引力を発揮している。

第4

当裁判所の判断

1
争点1(構成要件C充足性)について

(1)

構成要件Cは,該コンベヤベルトの正面側端部において,フラットワーク物品が,前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ,というものである。
(2)

被告は,構成要件Cは,フラットワーク物品を延伸装置からコンベヤベルトへ直接移動させるものに限定しており,少なくともバーまたは他の器具で移動したものを含まないところ,フラットワーク物品(布類S)を延伸装置(展張装置2)からバーまたは他の器具である移動手段(受渡し装置4)を経てコンベヤベルト(受渡しコンベヤ61)に移動させる被告製品は構成要件Cを充足しない,と主張する。
(3)

まず,本件発明の特許請求の範囲の記載には,構成要件Cにいう
延伸装置から移動することができとの要件について,構成要件Gでフラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段であるとされているほか,移動手段を限定するような記載はない(原告イエンセンの別の特許(乙36)では,特許請求の範囲において運搬手段を限定しているが,本件発明にそのような限定はない。)。
(4)

次に,本件明細書の段落【0010】には,昇降手段の位置がコンベヤベルトの取り入れ側端部にあるため,コンベヤベルトの反対側にフラットワーク物品を移動する手段を迅速に直接に設けることができない。このため本発明の好ましい実施例によって,フラットワーク物品をコンベヤベルトへ運ぶ手段が,コンベヤベルトの正面側端部がレール手段の後側かつレール手段の直下に載せられるように構成され,当該コンベヤベルトが,始動位置が延伸されたフラットワーク物品の方向へ移動自在であり,前進位置でコンベヤベルトの上部経路の下側で真空源と接続された正面側端部からなる。(下線部は強調のため裁判所で付した。以下同じ。)との記載があり,また段落【0020】には,【0015】~【0020】【図1】【図2】の実施例の説明として,レール手段7の正面の位置が挿入装置14で占められているため,クランプ10,11の正面側からバーまたは他の器具を導入し,これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない。そのかわりに,当該導入端部は,コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空によりクランプ10,11からコンベヤベルト5まで運ばれる。との記載がある。
しかし,これらは実施例についての説明であって,フラットワーク物品の延伸装置からコンベヤベルトへの移動手段を,直接移動させるものに限定したものとは解されず,バーまたは他の器具を用いた移動手段を構成要件Cから意識的に除外したものと解することもできない。
出願過程で原告イエンセンが提出した意見書(乙4)3頁の記載も,実施例の説明である段落【0020】の記載を明確にしたものと解され,本件発明の構成要件Cの構成からバーまたは他の器具を用いる構成を除外したものとは解されない。
(5)

以上によれば,構成要件Cにおいてフラットワーク物品を移動させる手段は限定されていないものと解される。
被告製品1の展張装置2は,掴持している布類S(フラットワーク物品)
を自在に引き外すことのできる拡げクランプ21が設けられた一対のキャリッジ22,22を有しており,一対のキャリッジ22,22は受渡しコンベヤ61の長手方向を横切る(長手方向と直角の方向)展張レール25に沿って走行するから,前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置に該当する。そして,被告製品1において,布類S(フラットワーク物品)は,受渡しコンベヤ61の正面側端部において,展張装置2(前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置)の拡げクランプ21から,受渡し装置4によって受け取られ,受渡しコンベヤ61に引き渡される(移動する)のであるから,被告製品1は構成要件Cを充足する。被告製品2,3についても,同様に構成要件Cを充足する。
2
争点2(構成要件E充足性)について

(1)

構成要件Eは,前記一対のキャリッジには,当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ,というものである。
(2)

被告は,構成要件Eを満たすためには,キャリッジがまず中央部に移動し,その上で,両側に移動するもの(中央展開方式)でなければならないと主張する。
この被告の主張は,被告製品におけるキャリッジの移動が中央展開方式で
はなく被告のいうカーテン方式であること,及び,構成要件Eの解釈においては,キャリッジの移動が中央展開方式に限られることを前提とするものである。
しかし,以下に述べるとおり,被告製品におけるキャリッジの移動は中央展開方式であるから,後記(3)の当裁判所の解釈を前提とすればもちろんのこと,構成要件Eにおける被告の限定的な解釈を採用したとしても,被告製品は構成要件Eを充足する。
当事者間に争いのない別紙2構造説明書(1)の被告製品1の展張装置2の構造によれば,投入クランプ移動装置12から布類両端角部Sa,Saを受け取った後の一対のキャリッジ22,22の,布類Sの上辺部を本件装置の中央に関し左右対称に展張させるまでの動きは,上記制御装置での左右動装置23のプログラム制御によるため任意に設定可能であり,一対のキャリッジ22,22は,本件装置の中央に位置する投入クランプ移動装置12から布類両端角部Sa,Saを受け取った場合には,布類Sの上辺部を本件装置の中央に関し左右対称に移動することで布類Sの上辺部を左右均等に展張させ,また,本件装置の中央以外に位置する投入クランプ移動装置12から布類両端角部Sa,Saを受け取った場合には,布類Sの上辺部を本件装置の中央に関し左右対称に展張させる以前に一旦両方とも本件装置の中央へ向けて移動することで,その後に布類Sの上辺部を左右均等に展張させている。というのであるから,被告製品1は中央展開方式を採用しているものというべきであり,構成要件Eを充足するものというべきである。(3)

仮に被告製品1のプログラム制御が中央展開方式を採用しておらず,一対のキャリッジのそれぞれが,コンピュータ制御により,異なったスピードで,異なった距離を移動することにより,フラットワーク物品を,中央部を中心として広げる方式(カーテン展開方式)を採用していたとしても,以下のとおり,被告の構成要件Eについての限定的な解釈を採用することはできず,被告製品1は構成要件Eを充足するものと判断する。すなわち,構成要件Eのうち前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点からという部分を,移動の起点を表すものとして読むと,(好ましくはの語をどう考えるかは別として)被告のように中央展開方式に限定する解釈もあり得るのに対して,上記部分を延長したにかかる修飾語として読むと,移動の終点が延長した位置であれば足り,移動の起点は中央部に限られないことになり,カーテン展開方式を包含することになる。
ここで,本件特許権の請求項2の発明は,前記フラットワーク物品を延伸するために,前記2つのキャリッジ(8,9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に,当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって共に移動されることを特徴とする請求項1の装置(甲2の3・17頁,乙9・22頁)というものであり,請求項1の発明(本件発明)を中央展開方式に限定した請求項になっているのであるから,本件発明が,請求項2の中央展開方式に限定されない発明であることは明らかである。そうであるならば,前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点からという部分は,原告らの主張するとおり,延長したにかかる修飾語として読むべきであり,そのことは請求項1と請求項2を読んだ当業者において容易に理解することができる。
被告は,展開した結果のみが構成要件Eに記載されているのであれば,構成要件Eは構成要件Fと同じことを繰り返していることになってしまうから,構成要件Eは展開の方式を記載しており,その方式は,カーテン展開方式を除外するものであると主張する。
しかし,構成要件Eは,その記載から明らかなとおり,キャリッジの駆動手段について記述したものであるのに対し,構成要件Fは,クランプによるフラットワーク物品の上端部の延伸について記述したものであって,異なる内容を述べたものであることが明らかである。
被告は,本件における訂正の経緯から,請求項1についても請求項2と同様に中央展開方式に限定して解釈すべきであると主張する。被告の主張は,訂正を認めた審決(乙6)の理由において,訂正前の請求項3(現請求項2)の中央に向かってともに移動されるという部分が引用されていることを根拠とするものである。しかし,当該引用は,レール手段(7)がキャリッジがその上を走行するレール手段であることを示すために引用されているものにすぎない。たまたまその引用文の中に中央に向かって移動されるという部分が含まれているからといって,被告のような主張をする根拠とはならないというべきである。
本件明細書の実施例が中央展開方式である(【0017】)ことは,実施例が請求項2の発明の実施例でもある以上当然のことであって,上記認定を左右しない。被告は【0017】【図1】を引用してフラットワーク物品を2対の拡張リボンの間に導くためには中央展開方式でなければならないなどと主張するが,実施例を前提とした主張にすぎず,採用することができない。原告イエンセンの別訴における主張も,上記認定を左右するものではない。(4)

被告製品1の一対のキャリッジ22,22は,駆動手段として左右動装置23,23を有し,これによりキャリッジ22,22を布類展張のため移動した位置が,受渡しコンベヤ61の正面側端部の中央とほぼ対向する地点を中心にして互いに反対方向に距離を置いた位置になるように離間せしめることができるのであるから,被告製品1は構成要件Eを充足する。被告製品2,3も,同様に構成要件Eを充足する。
3
争点3(構成要件G充足性)について

(1)

構成要件Gは,フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた,洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において,というものである。
(2)

被告は,構成要件Cについてと同様,構成要件Gの移動するための手段にはバーまたは他の器具による移動手段を含まないところ,フラットワーク物品をバーまたは他の器具である移動手段(受渡し装置4)を経てコンベヤベルトの正面側端部に移動させる被告製品は構成要件Gを充足しない,と主張する。

(3)

しかし,本件発明の特許請求の範囲の記載には構成要件Gの移動するための手段を限定するような記載はないこと,本件明細書の段落【0010】や【0020】の記載,出願過程で原告イエンセンが提出した意見書(乙4)3頁の記載はいずれも実施例についての説明であって,バーまたは他の器具を用いた移動手段を構成要件Gから意識的に除外したものとは解されないことは,構成要件Cについて判示したとおりである。

(4)

以上によれば,構成要件Gにおいてフラットワーク物品を移動させる手段は限定されていない。
被告製品1は,布類S(フラットワーク物品)の上端部を受渡しコンベヤ61の正面側端部に移動させる受渡し装置4が設けられた,ロールアイロナーなどの次工程の処理装置(洗濯処理ユニット)へ布類S(フラットワーク物品)を供給するための装置(スプレッダーフィーダー)であるから,被告製品1は構成要件Gを充足する。
被告製品2,3も,同様に構成要件Gを充足する。
4
争点4(構成要件H充足性)について

(1)

構成要件Hは,前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって,互いに隣接して設けられ,フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8,9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり,というものである。
(2)

被告は,構成要件Hにおける昇降作動とは,レール上を行ったり来たりする,すなわち同じ軌道を往復上下することに限定されるところ,被告製品は周回するものであり,レール上を行ったり来たりすることはないので構成要件Hを充足しない,と主張する。
(3)

まず,本件発明の特許請求の範囲や明細書に,構成要件Hにいう昇降作動の意義を定義した箇所はない。昇降とは,

①のぼりくだり。あがりおり。②ひきあげることとおろすこと。

を意味する(弁論の全趣旨・原告第1準備書面20頁)から,昇降作動とは,ひきあげる作動とおろす作動を意味すると解するのが自然である。

(4)

構成要件Hの昇降作動という用語は,平成14年2月21日付け訂正(乙13)により,操作位置から昇降する昇降手段とあったものから操作位置から昇降作動する昇降手段と訂正されたものである。
この訂正につき,訂正を認めた審決(甲2の3,乙9)は,以下のとおり
判断している。
(i)(判決注:「操作位置から昇降する昇降手段を操作位置から昇降作動する昇降手段とする訂正。訂正事項ロに含まれる。)については,昇降手段(レール手段を含む)全体としての役割ないしは作動内容を明りょうとするものであり(なお,昇降作動する昇降手段という記載だけでは,昇降手段(レール手段を含む)全体は昇降するものでないことが明らかであるといえないが,スライドがレール手段に沿って昇降することは,上記(ⅲ),(v)の訂正内容からしても明らかであるので(被請求人も昇降手段(レール手段を含む)全体は昇降しないと説明している(平成14年11月1日付け上申書第4頁第7~10行)。),(i)については,昇降手段(レール手段を含む)全体としての役割ないしは作動内容を示すものということができる。)」,

上記訂正事項ロは,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

,上記(i)ないし(v)については,訂正明細書(甲第2号証参照)の,「当該挿入装置は,それぞれ斜め上に延びる昇降手段15からなり,該昇降手段の下側には,下向きの一対のクランプ17,18を備えたスライド(slide)16が延びている。(段落【0017】),フラットワーク物品21はクランプ17に挿入され,レール手段15に沿ったスライド16の上向きの移動によって,当該フラットワーク物品がクランプ10まで上向きに動かされる。…クランプ17を備えたスライド16が当該クランプ10を通過して元に戻るための空間的余裕が残されている。(段落【0019】)等の記載からみて,いずれも,訂正明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって,新規事項の追加には該当しない。」(甲2の3・4頁,乙9・4頁)

実際の訂正内容である訂正請求書に添付された訂正明細書(乙13)を見ても,上記訂正は,審決の判断したとおり,昇降手段(レール手段を含む)全体としての役割ないしは作動内容を明瞭としただけのものであり,特許請求の範囲を減縮したものではなく,昇降作動を本件明細書の段落【0019】の実施例の構成に限定したものとも,レール上を行ったり来たりするすなわち同じ軌道を往復上下するものに限定したものとも認められない。
(5)

被告は,昇降作動を単にひきあげる作動とおろす作動と解するならば,無効審判で引用例とされたブラウン・アルファ(乙15~19,21~23)も昇降作動することになり,無効審判に係る無効事由を排除することができない,と主張する。
この点,訂正明細書(乙13)や審決(甲2の3,乙9)の記載からすれば,ブラウン・アルファのように昇降手段全体が昇降する構成(甲13・11頁参照)は,構成要件Hの昇降作動する昇降手段から意識的に除外された可能性はある。
しかし,この点がどうあれ,無効審判審決(甲2の3,乙9)及びその取消訴訟判決(甲3)は,ブラウン・アルファが操作位置から昇降作動する昇降手段を有していることを前提に(甲2の3・9頁,乙9・11頁),少なくとも,ブラウン・アルファは,本件発明における一対のキャリッジが,昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており,当該位置が,前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれているという構成要件(I,J)を備えていない点で,本件発明の新規性,進歩性を認めているのであるから(甲2の3・9~11頁,乙9・12~15頁,甲3・21~27頁),ブラウン・アルファが昇降作動する昇降手段を備えていたとしても,本件発明に無効事由があることにはならない。
また,仮に,原告イエンセンが昇降手段から昇降手段全体が昇降する構成を意識的に除外していたとしても,昇降手段をレール上を行ったり来たりするものに限定したことになるものではない。(6)

被告は,本件明細書の段落【0019】の実施例の,同じレール上を往復上下する直接往復方式と,被告製品の周回方式とでは作業効率
が異なり(乙30・22,23頁),解決課題は同じであっても,技術的思想としては相違する(乙30・14頁),という。
しかし,本件発明が直接往復方式に限定した発明とはいえないことは
前記のとおりである。
また,フラットワーク物品を掴持するクランプをレール上を往復上下させるか,周回させるかは,クランプの上下運動を直線的なレールで平面的に構成するか,円環的なレールで立体的に構成するかの相違にすぎず,いずれもレールを使用してクランプの上下動を実現する手段であって,レールの使用によりクランプの上下動を実現するという本件発明の技術的思想からみれば同一の範囲のものと認められる。
本件発明の目的はフラットワーク物品をコンベヤベルトの運ばれる高さに持ち上げることなく挿入しうるように操作ステーションを設計できる可能性を有すると共に,延伸操作中フラットワーク物品が自由に垂れ下がる可能性を有する装置を提供することである。(【0004】)とされており,被告が主張するような作業効率の相違が技術的思想の相違を導くものとはいえない。
(7)

被告製品1の投入装置1に設けられた投入クランプ移動装置12は,左右の溝付き部材12aと,投入クランプ取り付けベース12bと,二本のチェーン12cと,モータ12dと,解除ドグ12eとを有している。操作者が作業位置にて布類Sを投入クランプ11,11に掴持させるとと
もに投入クランプ移動装置12の下端部の始動ボタンを操作し,あるいはその投入クランプ11,11に布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを掴持させたことをその投入クランプ11,11に設けられたセンサに検出させることにより,当該投入クランプ移動装置12を始動させると,モータ12dがチェーン12cを駆動し,チェーン12cが溝付き部材12aの内側に沿って移動しながら投入クランプ取り付けベース12bを溝付き部材12aに沿って上昇させ,最終的に投入クランプ11,11を(別紙2構造説明書(1)6頁の投入説明図でいう)投入位置IPから,展張装置2の一対のキャリッジ22,22が支持する一対の拡げクランプ21,21に対応する引渡し位置DPを経て,受渡し完了位置FPまで,チェーン12cの右下側に沿って反時計回りに上昇させる。
布類Sを展張装置2の拡げクランプ21,21に引き渡した後は,投入クランプ取り付けベース12bに取付けられた投入クランプ11,11は,チェーン12cの左上側に沿って反時計回りに下降して,投入位置IPまで戻ってくる。
すなわち,被告製品1の投入装置1(挿入装置(14))は,操作者によって制御され,投入クランプ取り付けベース12bを操作位置からひきあげる作動及びおろす作動をする投入クランプ移動装置12(操作位置から昇降作動する昇降手段)を備え,被告製品1においては3つの投入装置1が互いに隣接して設けられており,この3つの投入装置1(複数の昇降手段)により,布類S(フラットワーク物品)を一対のキャリッジ22,22の方へ持ち上げる。
したがって,被告製品1は構成要件Hを充足する。
被告製品2,3も,互いに隣接して設けられた4つの投入装置1を備え,同様に構成要件Hを充足する。
5
(1)

争点5(構成要件K充足性)について
構成要件Kは,フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17,18)に挿入され,というものである。
(2)

被告は,被告製品における溝付き部材12aは投入クランプ脱落防止カバーであり,構成要件Kのレール手段に該当しないと主張する。

(3)

まず,本件明細書には,構成要件Dのレール手段(7)と構成要件Kのレール手段(15)が登場するが,本件明細書の特許請求の範囲や明細書に,レール手段の意義を定義した箇所はない。
レールとは,

①車輪を支え,その上を円滑に走らせる細長い鋼材。軌道,軌条。②手すり,さく。

を意味する用語であり(弁論の全趣旨・被告準備書面(18)8頁),また,本件出願当時,移動体を案内するガイドレールがレールに含まれることは技術常識であったと認められる(甲11のC)。
そうすると,構成要件Kにいうレール手段は,ガイドレールを含
む,移動体が接触して移動するための手段という程度の意味に解するのが相当である。
(4)

被告製品1における左右の溝付き部材12aは,上端部分と下端部分とそれらの間に位置する中間部分とからなり,上端部分と中間部分を密接させる一方,中間部分と下端部分の間に間隙をおいて,断面コの字状の溝を,全体としては斜め上下方向へ長円状に延在させて持っている。
被告製品1の投入クランプ取り付けベース12bは,その左右端部にそれぞれ車輪12gを2個ずつ取り付けられ,それらの車輪12gが左右の溝付き部材12aの上記断面コの字状の溝内に嵌め入れられてその溝壁上をそれに沿って移動することで,それら左右の溝付き部材12aによって左右端部が斜め上下方向へ移動するように案内される。
車輪12gの直径と溝付き部材12aの車輪直径方向の内径の差は微小なものと認められる(甲6)。
そうすると,被告製品1における溝付き部材12aは,移動体である投入クランプ取り付けベース12bが接触し,それに沿って移動するための手段としての役割を果たしており,構成要件Kにいうレール手段に該当すると認められる。

(5)

被告は,被告製品における溝付き部材12aの役割は,クランプを固定するピンが破損した場合におけるクランプの脱落を防止し,またフラットワーク物品がクランプと投入装置側板との間に巻き込まれることを防止するためのカバーであると主張する。
しかし,被告製品における溝付き部材12aは,投入クランプ取り付けベース12bの移動を円滑にする役割を果たしているものと認められ,これと同時に,ピンが破損した場合にクランプの脱落を防止したり,フラットワーク物品がクランプと投入装置側板との間に巻き込まれることを防止したりといった役割を果たしているとしても,レール手段該当性が否定されるものではない。
なお,被告代表者が特許出願した甲7の発明において,被告製品における溝付き部材12aに対応する部材はガイドレール29と呼ばれており,溝付き部材12aがレール手段に該当することは,この点からも明らかである。
(6)

被告は,被告製品にあっては溝付き部材12aを取り外して運転しても正常に作動するから,溝付き部材12aは投入クランプを案内していない,と主張する。
しかし,被告が主張するようなフラットワーク物品の巻き込み防止のために,溝付き部材の車輪12gの進路に沿って,断面コの字形状の溝を設ける必要は認められない。また,被告のいうクランプの脱落の原因となるピンの破損とはどのピンの破損をいうものかは必ずしも明らかではないが,被告製品では投入クランプ11は投入クランプ取り付けベース12bに取り付けられているのであるから,投入クランプ取り付けベース12bが取り付けられているチェーンアタッチ12i又は投入クランプ接続ブラケット12hをいうものとも解される。しかし,いずれにせよ投入クランプの脱落を防止するためにあえて溝付き部材のような構造の部材を設ける必要性が明らかにされているとはいえない。投入クランプ取り付けベース12bが横長のものであって,そのほぼ両端に投入クランプ11が配置されるという被告製品の構造からみれば,投入クランプ11の端に設けられた車輪12gを溝付き部材12aの断面コの字状の溝で囲まれている状態で車輪12gが移動すると,車輪12gの直径と溝付き部材12aの車輪直径方向の内径の差は微小であるため,車輪12gと溝付き部材12aの内径が随時接触しながら移動していくものと認められる。そうすると,被告製品1における溝付き部材12aは,投入クランプ取り付けベース12bの移動を円滑にする役割を果たしているものと認められ,取り外しても作動可能かどうかはレール手段該当性を左右するものではない。
(7)

被告は,鉄道のレールでは車輪と継ぎ目の割合は1%強であるが,被告製品の溝付き部材12aには20mm程度の間隙があるから,レール手段に当たらない,という趣旨の主張をする。
被告製品1における溝付き部材12aの中間部分と下端部分との間には間隙があるが,溝付き部材12aが投入クランプ取り付けベース12bの移動を円滑にする役割を果たしていることに変わりはないから,レール手段該当性が否定されるものではない。

(8)

以上によれば,被告製品1における溝付き部材12aは構成要件Kにいうレール手段に該当する。
そして,被告製品1において,布類S(フラットワーク物品)は,一対の投入クランプ11,11(一対のクランプ(17,18))に挿入される。一対の投入クランプ11,11は,投入クランプ取り付けベース12bに取り付けられているところ,投入クランプ取り付けベース12bは,モータ12dがチェーン12cを介して駆動することにより,溝付き部材12aの溝に沿って昇降自在に移動することができるから,昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)に該当する。したがって,被告製品1は,構成要件Kを充足する。
同様に,被告製品2,3も,構成要件Kを充足する。

(9)

まとめ
被告製品1は構成要件A~Lを充足し,本件発明の技術的範囲に属する。被告製品2,3も,同様に構成要件A~Lを充足し,本件発明の技術的範囲に属する。
6
争点6(過失)について
被告は,被告には過失がないから損害賠償義務を負わないと主張する。しかし,特許法103条により,本件特許権を侵害した被告には過失が推定されるところ,本件全証拠によるも,この推定を覆すに足りる事情は認められない。

7
争点7(損害)について

(1)

原告プレックスの請求が権利濫用となるか否かについて
原告イエンセンの特許法102条3項に基づく損害賠償請求権の有無の検
討に先立って,原告プレックスの同条1項に基づく損害賠償請求権の有無を検討する。
被告は,原告プレックスの請求は権利濫用であると主張する。
原告プレックスは,平成14年2月21日付け訂正請求(乙13)前の本件発明の技術的範囲に属する製品を製造,販売していた(乙8)旧プレックスの地位を承継し,本件発明の無効を主張していた(甲2の3,乙8,9)ものではあるが,旧プレックスから承継した侵害訴訟の控訴審において原告イエンセンと和解し,その後原告イエンセンから専用実施権の設定を受け,その専用実施権者としての地位に基づき被告に損害賠償を請求しているのであり,原告プレックスの請求が権利濫用となるべき事情は何ら認められない。(2)

被告製品の販売台数について
被告の自白とその撤回について
被告は,平成24年3月27日付け被告準備書面(17)において,平成24年2月末日までの被告製品の販売台数は合計71台(ただし,うち13台は海外向け)である旨主張し,原告らは平成24年4月3日付け訴えの変更申立書においてこれを援用して平成20年12月から平成24年2月末までにおける被告製品の販売台数を71台と主張した。ところが,被告は,その後,平成24年7月25日付け準備書面(17)の訂正申立書,同年9月24日付け被告準備書面(20)において,被告製品の販売台数は合計49台(ただし,うち9台は海外向け)が正しく,従前の主張は,出荷台数調査中に,本来は被告製品1・2に含まれないSONIC-ES3V-EX-33SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35を含めてカウントしていたもので,自白は真実に反し,かつ錯誤に基づくものであるから訂正する,と主張した。これに対し,原告らは,被告による自白の撤回に異議を述べ,被告のいうSONIC-ES3V-EX-33SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35は,被告製品1・2にオプション機構が付加されただけのものであるから被告製品1・2に含まれると主張している。

オプション付き製品が被告製品に含まれるか否かについて

(ア)

以上によれば,被告製品の販売台数については自白が成立しており,原告らは自白の撤回に異議を述べているから,自白が真実に反し,かつ錯誤に基づくことを立証しない限り,自白の撤回は許されない。自白が真実に反していたことが立証されれば,自白は錯誤に出たと事
実上推定される。
そこで,自白が真実に反していたか否かを判断する前提として,まず,SONIC-ES3V-EX-33SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35が被告製品に含まれるか否かについて検討する。
(イ)

形式的に見れば,SONIC-ES3V-EX-33という型
番は,別紙物件目録(1)にいう商品型番SONIC-ES3を
含んでおり,同目録において商品型番で特定された製品の一種(下位概念)である(同目録にいうSONIC-ES3は,被告のいう
SONIC-ES3-33SONIC-ES3-35SONIC-ES3V-EX-33の3種の製品を包括する上位概念である)とみることができる。そうすると,SONIC-ES3V-EX-33も,商品型番SONIC-ES3に含まれる布類展張搬送機(スプレッダーフィーダー)であるから,被告製品1(SONIC-ES3)に含まれることになる。SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35も,別紙物件目録(2)にいう商品型番SONIC-ES4を含んでおり,被告製品2の一種(下位概念)である(同目録にいうSONIC-ES4は,被告のいうSONIC-ES4-33
SONIC-ES4-35SONIC-ES4-EX-33
SONIC-ES4-EX-35の4種の製品を包括する上位概念である)とみることができる。実際,被告のパンフレット(甲5)では,最大幅3300mmの製品について単に形式SONIC-ES4

と記載し,その商品説明の中でOption包布整形ブラシEXユニットと記載されている。そうすると,SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35も,商品型番SONIC-ES4に含まれる布類展張搬送機(スプレッダーフィーダー)であるから,被告製品2(SONIC-ES4)に含まれることになる。
(ウ)

実質的に見ても,被告は,SONIC-ES3V-EX-33
の構成がSONIC-ES3-33のそれとどのように異なるの
か具体的な主張・立証をしないが,弁論の全趣旨によれば,SONIC-ES3-33の構成に,被告の布類整形装置(特許第4266947号。乙40)の実施品である布類整形装置をオプションとして付加したものであると認められる。
そうであるとすれば,SONIC-ES3V-EX-33も,別
紙2構造説明書(1)記載の構造を有し,前記のとおり本件発明の構成要件A~Lを充足するものであって,上記オプションが付加されていることによってその充足性判断に影響があるものではない。
SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35が別紙4構造説明書(2)記載の構造を有し,構成要件A~Lを充足することも同様である。
被告は,SONIC-ES4-EX-33は被告製品1に,SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35においては公知の延伸リボンを取り付けることができないとも主張するが,延伸リボンは本件発明の構成要件に規定されておらず,これを利用できるか否かは本件発明の構成要件充足性とは無関係である。被告の指摘する本件明細書の段落【0008】は好ましい構成についての記載であり,本件発明の作用効果の記載ではない。
したがって,実質的に見ても,SONIC-ES4-EX-33
は被告製品1に,SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35は被告製品2に,それぞれ含まれると考えるのが妥当である(別の製品として新たな充足性判断を要するものではない。)。

自白の撤回の可否について
以上によれば,被告が被告製品に含まれないと主張するSONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-33SONIC-ES4-EX-35は,いずれも被告製品に含まれるものである。これと異なる前提に立つ乙45その他の証拠によっては,被告の自白が真実に反していたとは認められないから,自白の撤回は許されない。平成20年12月から平成24年2月までの間の被告製品の販売台数が合計71台(被告製品1が46台,被告製品2が15台,被告製品3が10台)であることは,当事者間に争いがない(被告準備書面(17),訴えの変更申立書)。海外向けの販売台数が,原告プレックスの特許法102条1項に基づく損害算定の対象となるかどうかは,同項ただし書きの問題であるから,後に改めて検討する。
(3)

原告製品の競合品性について
原告プレックスは,本件特許権の専用実施権に基づき,平成21年1月から平成23年12月までの間に,本件特許権の実施品である以下の6製品を製造販売していたことが認められる(甲17の1,乙42ないし44,計算鑑定の結果)。
①イージーホーク
②イージーホーク

(原告製品2)

③イージーホーク

(原告製品3)

④イージーホーク

(原告製品4)

⑤イージーホーク

(原告製品5)

⑥イージーホーク

(原告製品1)

(原告製品6)

特許法102条1項にいう特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物とは,侵害品と市場において競争関係に立つ競合品を意味し,少なくとも対象発明の実施品であれば,原則として競合品性があるものというべきであって,厳密に同一性能であることを要しないというべきである。
原告製品1ないし4は,被告製品1及び2と同じ1レーンタイプのフィーダー(アイアンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置)であるから(甲4,5,17の1,乙42ないし44),被告製品1及び2の競合品と認められる。
この点,被告は,被告製品1は投入ステーションの数が3つの3ステーション機,被告製品2はそれが4つの4ステーション機であり(甲4,5),投入ステーション機の相違は製造原価,販売価格の相違をもたらすのであるから,別の製品として計算されなければならず,3ステーション機である原告製品1の販売が開始されたのは平成22年10月頃であるから(乙43),それまでの間,原告製品1と被告製品1の競争関係は成立しておらず,4ステーション機である原告製品2ないし4との競争関係も成立しない,などと主張する。
しかし,原告製品1が販売されていなかったとしても,その間は,原告製品2ないし4が被告製品1の同分野の代替品であり,競合品たり得るというべきであり,4ステーション機であれば3ステーション機の競合品たり得ないなどとはいえない。
特許法102条1項の適用に当たっては,競合品は必ずしも侵害品と厳密に1対1対応させる必要はなく,平成20年12月から平成24年2月までの間の被告製品1及び2の販売台数につき,原告製品1ないし4の平成21年1月から平成23年12月までの間の平均限界利益を乗じて損害額を算定することで問題はないというべきである。

原告製品5及び6は,被告製品3と同じ1・2レーン兼用タイプのフィーダーであるから(甲5,17の1,乙44),被告製品3の競合品と認められる。
特許法102条1項の適用に当たっては,平成20年12月から平成24年2月までの間の被告製品3の販売台数につき,原告製品5及び6の平成21年1月から平成23年12月までの間の平均限界利益を乗じて損害額を算定することで問題はないというべきである。


被告は,原告プレックスは株式会社トーカイ系列のリネン業者に製品を販売しているのに対して,被告は株式会社トーカイと競合関係にあるリネン業者などに製品を販売しており,被告製品の販売は原告製品の販売の減少にはならない,フィーダーとその先のアイロナー,フォルダーとは有機的な関連をもって作動するのであるから,被告のフォルダーを使用しているリネン工場が原告プレックスのフィーダーを使用することはない,原告プレックスに損害は発生しない,などと主張するが,仮に被告主張の事情が存在したとしても,被告の販売先がおよそ原告製品を購入することができないとは到底認められないから,被告製品と原告製品との間の競争関係は否定されず,原告プレックスに原告製品の販売利益相当の損害が発生することも否定されない。
(4)

原告プレックスが販売することができないとする事情について
弁論の全趣旨によれば,原告プレックスは,侵害期間である平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告の販売数量である71台分の原告製品を追加製造する実施の能力を有していることが認められる。

海外向け販売について
平成20年12月から平成24年2月までの被告製品の販売台数71台のうち,13台は海外向けの販売である(争いがない。)。
原告プレックスの専用実施権の範囲は,日本国内における実施品の製造と販売であり(甲1,甲16・訳文7条7.1),原告イエンセンの許可を得て日本国外に輸出することは妨げられない(甲16・訳文7条7.2)。
被告は,EU加盟国などに製品を輸出するためにはCEマークを取得する必要があり,被告はCEマークを取得しているが,原告プレックスはこれを取得していないから,原告プレックスが海外に販売できる可能性は全くない,などと主張する。
しかし,原告らは,必要とあれば原告プレックスもCEマークを取得できるものである,原告プレックスは原告イエンセンの了解のもとに韓国,インドネシア向け輸出品を販売した実績がある,などと主張しており(原告ら第7準備書面8頁),これを覆すに足りる証拠もないことから,原告プレックスが海外向けに原告製品を販売することができないとする事情があったとは認めるに足りない。(5)

原告プレックスの限界利益について
計算鑑定の結果によれば,平成21年1月から平成23年12月までに販売した原告製品1台当たりの平均限界利益は,平成25年6月28日付け補充鑑定書別紙1の鑑定評価額(原価追加あり)及び別紙2の鑑定評価額(参考:製品グループ別)のとおり,原告製品1が286万3043円,原告製品2が287万7576円,原告製品3が354万1512円,原告製品4が267万7121円,原告製品5が479万6053円,原告製品6が377万9559円となり,被告製品1及び2の競合品である原告製品1ないし4全体の平均限界利益は321万7327円,被告製品3の競合品である原告製品5及び6の平均限界利益は436万8056円となる(計算鑑定書及び補充鑑定書記載の追加原価を変動経費として控除することを原告らは争っていない。)。


被告は,平成22年3月期から平成24年3月期までの間の原告プレックス全体の年間平均売上額が約11億5900万円,平均利益(純利益)額が約3450万円(利益(純利益)率2.9%)であるのに,平成21年1月から平成23年12月の原告製品の売上額の平均が約2億6760万円,利益(限界利益)額が約8750万円(利益(限界利益)率32.7%)というのは,いかに利益の概念が異なるとしてもおかしい,などと主張する。
しかし,利益率は製品ごとに異なり,一般に高額商品になるほど利益率は高いのであるから,原告プレックス全体の利益(純利益)率が2.9%であるのに,原告製品の3年間の売上額が合計8億0278万9000円(年平均2億6759万6333円),限界利益が合計2億5994万6028円(年平均8664万8676円)(補充鑑定書)で利益(限界利益)率が32.4%であったとしても,不自然なことはない。

被告は,生産を専ら外注に頼る場合にあっても,金型は自社で保有し委託先に無償で貸与する方法を採ることが多いところ,本件で金型を原告プレックスが所有するとすれば,その金型製作に要した費用は製造原価に含まれるべきである,と主張する。
しかし,原告製品の販売開始前に,原告製品の製造に必要な金型の製作に要した費用は,原告製品の販売台数の増大に伴って増大するようなものではないから,原告製品の限界利益の算定に当たり考慮すべき変動経費に当たらない。


被告は,原告製品に対応する開発費は,計算鑑定において考慮した平成20年1月から平成23年12月までの開発費の平均ではなく,原告製品の販売より前に投じられた原告製品の開発費を算入すべきである,原告製品の試作機の製造費用も開発費として計上すべきである,などと主張する。そもそも,開発費は,販売台数の増大に伴って増大するようなものではないから,原則として変動経費に当たらないと考えられるところ,3年間に費やされたイージーホークに関する開発費(改良費)は,原告製品の売上に何らかの関係があるとも考えられることから,原告らが計算鑑定の結果を争わない限度で追加原価(変動経費)と認めたものである。
被告の主張するとおり,原告製品の販売前に投じた開発費を問題とするのであれば,その額は,原告製品の販売台数が結果的に74台であろうと,侵害の行為がなかったとして71台分を追加した145台であろうと変化しないことはいっそう明らかであるから,少なくとも販売開始前の開発費(試作機の製造費用を含む。)は,原告製品の限界利益の算定に当たり考慮すべき変動経費に当たらない。


被告は,原告プレックスはフィーダーに関連して19個の特許(出願中のものを含む。)を有しており,それらは原告製品に使用されているから,この点やこれらの発明の開発費を考慮しない計算鑑定は相当でない,と主張する。
しかし,原告イエンセンが有している本件特許権については,原告プレックスの販売台数が増加すれば原告イエンセンに支払う実施料(65万円)が増加する関係にあるので変動経費といえるが,原告プレックス自身が有している特許権については,実際には実施料相当額が支出されるわけではなく,その開発費も原告製品の販売台数の増大に伴って増大する関係にないから,これらの費用は,原告製品の限界利益の算定に当たり考慮すべき変動経費に当たらない。

被告は,原告プレックスが原告イエンセンに支払った和解金は,事実上の開発費であり,製造原価として利益から控除すべきである,と主張する。しかし,原告プレックスが原告イエンセンに支払った和解金は,そもそも原告製品の製造に必要な経費とは言い難い上,原告製品の販売台数の増大に伴って増大するようなものでもないから,いずれにせよ,原告製品の限界利益の算定に当たり考慮すべき変動経費に当たらない。


被告は,計算鑑定書には何らの資料も添付されておらず,鑑定人の判断の経過を検証することができないから,本件計算鑑定は計算鑑定の目的に沿うものでなく違法である,などと主張する。
しかし,特許法105条の2は,当事者が計算鑑定人に対し,鑑定をするため必要な事項について説明しなければならないと規定しているが,その事項を裁判所や対立当事者に開示しなければならないとは規定されていない。すなわち,計算鑑定人が鑑定の基礎とした資料が,すべて裁判所や対立当事者に開示されることは必ずしも想定されていない。計算鑑定は,営業秘密を対立当事者に開示することなく損害額を算定するために利用されており,鑑定資料がすべて対立当事者に開示されるとすれば,計算鑑定制度の円滑な運用を損なうおそれがあるというべきである。以下のとおり,計算鑑定人が原告プレックスを訪問して各種証憑の閲覧,突合を行って鑑定をしたことは,計算鑑定書から明らかであるから,鑑定資料が被告に開示されないとしても,本件計算鑑定が違法であるとはいえないし,その証拠能力や証明力に影響するものでもない。
(ア)

本件の鑑定において鑑定人は,その計算鑑定書(平成25年4月12日付け)において5頁にわたって鑑定評価意見の説明を記載している。そこでは,1.実施した手続として,原告プレックスより会社案内,製品カタログ,決算報告書,税務申告書,各種規程等を入手し内容の検討を行った。また,必要に応じ,資料の追加提出を求めた。原告プレックスを訪問し,内容についてヒアリング,質問を行った。また,原価管理システム,会計システムを操作し,各種証憑の閲覧,突合を行い内容の検討を行った。原価管理システムよりイージーホークの売上,原価を抽出し各種証憑と突合し内容について検討を行った。として,検討の過程,判断対象となった資料を明らかにしている。

(イ)

計算鑑定書においては,さらに,2.計算鑑定事項に関する計算方針,3.販売台数の検討,4.原価の検討,5.各製品の平均利益額の算定にあたってさらに追加して検討した事項,6.参考事項の各項目について詳細な説明がされ,最後に鑑定評価額が,控除した費用額等とともに一覧表形式で示されている。

(ウ)

以上により,被告は,鑑定の手法,内容を十分に把握することができるし,現に被告は,計算鑑定書を検討した上で意見を述べ,それを受けて,リコール費用について再検討した補充鑑定書(平成25年6月28日付け)が提出されている。


被告は,平成25年5月20日付け文書提出命令申立書において,計算鑑定の資料となった原告プレックス保有の文書について文書提出命令を申し立てている(当庁平成25年(モ)第1666号)。
しかし,原告製品の限界利益は計算鑑定により明らかとなっているから,これらの文書が損害額算定のために必要であるとはいえないし,上記キで説示したところに照らせば,その開示が被告の防御のために必要であるともいえないから,同申立ては必要性がないものとして却下する。
(6)

寄与率について
被告は,本件発明は被告製品中の投入ステーション部分に限定されるところ,投入ステーションが被告製品に占める割合は,部品点数で26.3~28.8%,価格で9.5~10.9%であり,原告製品における投入ステーション部分の比率は被告製品のそれを大きく下回るものと推測できるから,本件発明の製品に対する寄与度は10%以下と考えるべきである,などと主張する。
しかし,本件発明は,構成要件A~Lの全体として進歩性を有し特許として有効である,アイロンローラなどの洗濯処理ユニットヘフラットワーク物品を供給するための装置全体の発明であって,投入ステーション(構成要件H~Lの昇降手段)に限定した発明ではないから,被告の主張は前提を欠く。


被告は,被告製品の売上には,被告製品において実施された被告代表者の有する特許5件(乙37~41)の寄与が大であり,本件特許権の寄与率はほぼゼロである,などと主張する。
しかし,被告製品の売上における被告主張特許の寄与を認めるに足りる的確な証拠はなく,侵害行為がなかったとした場合に,被告主張特許を使用していないのであれば原告製品を購入しない,という需要者がそれなりの割合をもって存在するように認めるに足りる証拠はない。
結局,被告主張特許の存在は,寄与率による減額をすべき事情とは認められない。
(7)

原告プレックスの損害について
以上によれば,原告プレックスの損害は,以下のとおりである。
被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品1及
び2を合計61台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品1ないし4を同一数量販売して,1台当たり321万7327円,合計1億9625万6947円の利益を得ることができた。
また,被告は,平成20年12月から平成24年2月までの間に,被告製品3を合計10台販売していたところ,侵害行為がなければ,原告プレックスは原告製品5及び6を同一数量販売して,1台当たり436万8056円,合計4368万0560円の利益を得ることができた。
この合計である2億3993万7507円が原告プレックスの損害と推定され,この推定を覆すに足りる事情はない。
(8)

原告イエンセンの損害について
原告らは,原告イエンセンにつき,特許法102条3項により,1台当たり130万円,合計9230万円の実施料相当損害金を請求している。しかし,原告イエンセンは,被告による侵害期間中,原告プレックスに専用実施権を設定しており(甲1),被告との間でライセンス契約を締結して実施料を得られる可能性は全く存在しなかったのであるから(特許法68条ただし書き,77条2項),原告イエンセンは,特許法102条3項により実施料相当額を損害額と推定する基礎を欠いているものというべきである。


原告イエンセンが特許法102条3項に基づく請求ができないとしても,原告イエンセンに損害が生じていれば,民法709条の原則に従った損害賠償は可能である。
被告が平成20年12月から平成24年2月までの間に被告製品71台(うち13台は海外向け)を販売したことは争いがないところ,原告製品1ないし4は被告製品1及び2の,原告製品5及び6は被告製品3の,それぞれ競合品であり,少なくとも国内においては他に競合品を製造販売する業者があったとは認められないことからすると,少なくとも国内において販売された被告製品58台分については,侵害の行為がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売していたであろうと認められ,原告プレックスが原告製品58台を追加販売していれば,原告イエンセンは1台当たり65万円,合計3770万円の実施料を取得することができたと認められる(甲16,計算鑑定の結果,弁論の全趣旨)。
他方,海外向けに販売された被告製品13台分については,被告に立証責任のある特許法102条1項ただし書の適用に関する限り,原告プレックスに販売することができないとする事情の立証があったとはいえないことは前記のとおりであるが,原告らに立証責任のある民法709条の相当因果関係の問題として考えると,被告製品の販売先に対応する海外向け販売にはどのような条件が必要で,原告プレックスはこれを備えているのか否か,当該各販売先においても原告製品や被告製品の競合品は他に存在しないのか否か等は必ずしも明らかでなく,被告製品の販売がなかったならば,原告プレックスが原告製品を同一数量販売することができ,原告イエンセンが対応する特許料を取得することができたという相当因果関係の立証があったとまでは認め難い。
そうすると,原告イエンセンは,被告の侵害行為により,原告プレックスから3770万円の実施料を取得する機会を失ったのであるから,同額を民法709条に基づく被告の侵害行為と相当因果関係ある損害として請求することができるというべきである。
これは,原告イエンセンが原告プレックスの追加販売から得られたであろう実施料相当額であるから,原告ら間の契約で定められた1台当たり65万円(甲16)という額よりも高く,あるいは低く修正する余地はない。ウ
被告は,原告プレックスが特許法102条1項の請求を行い,原告イエンセンが同条3項の請求を行えば二重請求となり,また本件発明を原告プレックスが有していたときに比べ損害賠償の総額が大きくなって不当である,などと主張するので,民法709条に基づく損害賠償請求との関係でも上記の点を検討する。
原告プレックスの特許法102条1項の損害算定において,原告プレックスが原告イエンセンに支払っているロイヤリティーとして1台当たり65万円を変動経費として控除しているのであるから(計算鑑定書4,10頁),原告イエンセンに1台当たり65万円を民法709条に基づく損害として認めたとしても,二重請求となるものではないし,原告プレックスが自ら特許を有していたときよりも損害総額が大きくなることもない。
8
結論
以上によれば,原告らの請求は
(1)

原告イエンセンが,被告に対し,民法709条に基づく損害賠償として
3770万円,及び,うち1625万円に対する訴状送達の日の翌日である平成22年5月28日から,うち2145万円に対する訴えの変更申立書が陳述された日の翌日である平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
(2)

原告プレックスが,被告に対し,民法709条,特許法102条1項に
基づく損害賠償として2億3993万7507円,及び,うち8750万円に対する訴状送達の日の翌日である平成22年5月28日から,うち1億5243万7507円に対する訴えの変更申立書が陳述された日の翌日である平成24年4月17日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余はいずれも理由がない。なお,原告らの債権は,連帯債権ではなく,それぞれ独立の債権である。
被告は仮執行免脱宣言を申し立てているが,相当でないのでこれを付さない。よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

大須賀滋
裁判官

西村康森川さ夫
裁判官

つき
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