判例検索β > 平成22年(行ウ)第135号等
開発許可処分取消請求事件(甲事件) 、開発行為変更許可処分取消請求事件(乙事件)
事件番号平成22(行ウ)135等
事件名開発許可処分取消請求事件(甲事件) ,開発行為変更許可処分取消請求事件(乙事件)
裁判年月日平成25年2月15日
法廷名大阪地方裁判所
判示事項1 都市計画法(平成23年法律第124号による改正前)29条に基づく開発行為許可処分及び同法35条の2に基づく開発行為変更許可処分の取消しを求める訴えにつき,開発区域から水平距離で約4メートル隔てた場所に居住している者及び開発区域から水平距離で約30メートル隔てた場所に居住している者の原告適格が肯定された事例
2 都市計画法(平成23年法律第124号による改正前)29条に基づく開発行為許可処分及び同法35条の2に基づく開発行為変更許可処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨1 都市計画法(平成23年法律第124号による改正前)29条に基づく開発行為許可処分及び同法35条の2に基づく開発行為変更許可処分の取消しを求める訴えにつき,同法33条1項2号は,開発区域内の住民の利益を保護する趣旨にとどまらず,当該開発許可に係る開発区域内における予定建築物等の火災等の災害による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に居住する者の生命・身体の安全を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当であるところ,開発区域から水平距離で約4メートル隔てた場所に居住している者及び開発区域から水平距離で約30メートル隔てた場所に居住している者は,いずれも予定建築物等に火災等の災害が発生した場合,同建築物の倒壊等により,直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者であると認められるとして,同法33条1項2号を根拠に同人らの原告適格が肯定された事例
2 都市計画法(平成23年法律第124号による改正前)29条に基づく開発行為許可処分及び同法35条の2に基づく開発行為変更許可処分の取消請求につき,前記各処分には同法33条1項2号違反その他の取消事由は認められないとして,これを棄却した事例
裁判日:西暦2013-02-15
情報公開日2017-10-19 12:30:34
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平成25年2月15日判決言渡
平成22年(行ウ)第135号
平成24年(行ウ)第21号

開発許可処分取消請求事件(甲事件)
開発行為変更許可処分取消請求事件(乙事件)

主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。

第1
1実及び理由
請求
甲事件
豊中市長が,別紙1記載の各土地について平成21年10月19日付けでした開発行為許可処分(豊中市指令ま開第○-○-○号)を取り消す。
2
乙事件
(1)

豊中市長が,
平成23年6月10日付けでした開発行為変更許可処分
(豊

中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
(2)

豊中市長が,
平成23年8月10日付けでした開発行為変更許可処分
(豊

中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
(3)

豊中市長が,
平成23年12月6日付けでした開発行為変更許可処分
(豊

中市指令都開第○-○-○号)を取り消す。
第2

事案の概要

1
事案の骨子
本件は,大阪府豊中市α所在の土地(別紙1記載の各土地。以下本件開発区域という。)における開発事業(以下本件開発事業という。)に関し,豊中市長が,
平成21年10月19日付けで,
株式会社A
(以下

という。

に対して開発行為許可処分(以下本件許可という。)を行い,その後に平成23年6月10日付け,同年8月10日付け及び同年12月6日付けでそれぞれ開発行為変更許可処分(以下,同年6月10日付けでなされた開発行為変更許可処分を本件第一次変更許可,同年8月10日付けでなされた開発行為変更許可処分を本件第二次変更許可,同年12月6日付けでなされた開発行為変更許可処分を本件第三次変更許可とそれぞれいい,これらと本件許可をあわせて本件許可等という。)をしたところ,本件開発区域の周辺に土地建物を所有し,
居住する原告らが,
本件許可等には都市計画法
(ただし,
平成23年法律第124号による改正前のもの。以下法という。)に違反する違法があるなどと主張して,本件許可等の各取消しを求めた事案である。2
法令の定め
(1)

開発行為の許可及び申請等
法29条
都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は,あらかじめ,国土交通省令で定めるところにより,都道府県知事(地方自治法252条の19第1項の指定都市,同法252条の22第1項の中核市又は同法252条の26の3第1項の特例市(以下指定都市等という。)の区域内にあっては,当該指定都市等の長。以下同じ。)の許可を受けなければならない(1項本文)。


法35条の2
開発行為の許可(以下開発許可という。
)を受けた者は,法30条1
項各号に掲げる事項の変更をしようとする場合においては,都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし,変更の許可の申請に係る開発行為が,法29条1項の許可に係るものにあっては同項各号に掲げる開発行為,同条2項の許可に係るものにあっては同項の政令で定める規模未満の開発行為若しくは同項各号に掲げる開発行為に該当するとき,又は国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは,
この限りでない
(1項)


(2)

道路に関する基準について
法33条
(ア)

1項
都道府県知事は,開発許可の申請があった場合において,当該申請に
係る開発行為が,次に掲げる基準(4項及び5項の条例が定められているときは,当該条例で定める制限を含む。
)に適合しており,かつ,その
申請の手続が法又は法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならない。

(略)


主として,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為にあっては,道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地(消防に必要な水利が十分でない場合に設置する消防の用に供する貯水施設を含む。)が,次に掲げる事項を勘案して,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置され,かつ,開発区域内の主要な道路が,開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていること。この場合において,当該空地に関する都市計画が定められているときは,設計がこれに適合していること。

開発区域の規模,形状及び周辺の状況


開発区域内の土地の地形及び地盤の性質


予定建築物等(開発区域内において予定される建築物又は特定
工作物をいう。法30条1項2号)の用途


予定建築物等の敷地の規模及び配置

三から十四まで
(イ)

(略)

2項
前項に規定する基準を適用するについて必要な技術的細目は,政令で
定める。

都市計画法施行令(以下法施行令という。)25条
法33条2項に規定する技術的細目のうち,同条1項2号に関するものは,次に掲げるものとする。

道路は,
都市計画において定められた道路及び開発区域外の道路の

機能を阻害することなく,かつ,開発区域外にある道路と接続する必要があるときは,当該道路と接続してこれらの道路の機能が有効に発揮されるように設計されていること。

予定建築物等の用途,予定建築物等の敷地の規模等に応じて,6メ
ートル以上12メートル以下で国土交通省令で定める幅員(小区間で通行上支障がない場合は,4メートル)以上の幅員の道路が当該予定建築物等の敷地に接するように配置されていること。ただし,開発区域の規模及び形状,開発区域の周辺の土地の地形及び利用の態様等に照らして,これによることが著しく困難と認められる場合であって,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上及び事業活動の効率上支障がないと認められる規模及び構造の道路で国土交通省令で定めるものが配置されているときは,この限りでない。

(略)


開発区域内の主要な道路は,開発区域外の幅員9メートル(主とし
て住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為にあっては,6.5メートル)以上の道路(開発区域の周辺の道路の状況によりやむを得ないと認められるときは,車両の通行に支障がない道路)に接続していること。
五から八まで

(略)

都市計画法施行規則(以下法施行規則という。)20条
法施行令25条2号の国土交通省令で定める道路の幅員は,住宅の敷地又は住宅以外の建築物若しくは第一種特定工作物の敷地でその規模が1000平方メートル未満のものにあっては6メートル(多雪地域で,積雪時における交通の確保のため必要があると認められる場合にあっては,8メートル),その他のものにあっては9メートルとする。(3)

地盤に関する基準について


法33条1項7号
地盤の沈下,崖崩れ,出水その他による災害を防止するため,開発区域内の土地について,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること。この場合において,開発区域内の土地の全部又は一部が宅地造成等規制法3条1項の宅地造成工事規制区域内の土地であるときは,当該土地における開発行為に関する工事の計画が,同法9条の規定に適合していること。


法施行令28条
法33条2項に規定する技術的細目のうち,
同条1項7号に関するも
のは,次に掲げるものとする。
一から五まで

(略)

開発行為によって生じた崖面は,崩壊しないように,国土交通省令で定める基準により,擁壁の設置,石張り,芝張り,モルタルの吹付けその他の措置が講ぜられていること。

七ウ
(略)
法施行規則23条1項
切土をした土地の部分に生ずる高さが2メートルをこえるがけ,
盛土

をした土地の部分に生ずる高さが1メートルをこえるがけ又は切土と盛土とを同時にした土地の部分に生ずる高さが2メートルをこえるがけのがけ面は,擁壁でおおわなければならない(本文)。

法施行規則27条1項
法施行規則23条1項の規定により設置される擁壁については,
次に
定めるところによらなければならない。

擁壁の構造は,構造計算,実験等によって次のイからニまでに該当することが確かめられたものであること。

土圧,水圧及び自重(以下この号において土圧等という。)
によって擁壁が破壊されないこと。


土圧等によって擁壁が転倒しないこと。


土圧等によって擁壁の基礎がすべらないこと。


土圧等によって擁壁が沈下しないこと。

二オ
(略)
宅地造成等規制法9条1項

宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事は,政令(その政令で都道府県の規則に委任した事項に関しては,その規則を含む。
)で定める技術的基準に従い,擁壁,排水施設その他の政令で定める施設(以下擁壁等という。
)の設置その他宅地造成に伴う災害を防止する
ため必要な措置が講ぜられたものでなければならない。
3
前提事実(当事者間に争いのない事実のほか,各項掲記の証拠(枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することのできる事実等)(1)

当事者
原告らは,いずれも本件開発区域の近隣(本件開発区域の南西側。別紙2
参照)
に土地建物を所有し,
居住している者らである
(甲12ないし15)

被告は,本件許可等の当時,地方自治法252条の26の3第1項の特例市であった(平成22年政令第213号による改正前の地方自治法第252条の26の3第1項の特例市の指定に関する政令(平成12年政令第417号))。
(2)

本件許可に関する事実経過等
Aは,本件開発区域に地上12階地下2階建の共同住宅(分譲マンション。以下本件予定建築物という。)の建設を計画した(甲8)。

Aは,平成21年10月13日,豊中市長に対し,法29条1項の規定に基づき,本件開発区域について,面積を6392.65平方メートル,予定建築物の用途を共同住宅(分譲)とする本件開発事業に係る開発行為(以下本件開発行為という。)の許可を申請し,豊中市長は,同月19日付けで,本件開発行為を許可する旨の開発許可(本件許可)を行った(甲1,2)。
なお,本件開発区域は,宅地造成等規制法3条1項の宅地造成工事規制区域内にある。


Aは,平成23年6月3日,豊中市長に対し,法35条の2の規定に基づき,道路形状の変更(敷地北側に9メートル道路を設置)や建物形状の変更,擁壁の追加,擁壁形状の変更等を理由とする本件開発行為の変更の許可を申請し,豊中市長は,同月10日付けで,上記申請を許可した(本件第一次変更許可。甲36,37,乙18,19)。


Aは,平成23年8月1日,豊中市長に対し,法35条の2の規定に基づき擁壁の杭基礎の打設工法の変更を理由とする本件開発行為の変更の許可を申請し,豊中市長は,同月10日付けで,上記申請を許可した(本件第二次変更許可。甲38,39,乙20,21)。


Aは,平成23年11月28日,豊中市長に対し,法35条の2の規定に基づき,公園擁壁形状の変更を理由とする本件開発行為の変更の許可を申請し,豊中市長は,同年12月6日付けで,上記申請を許可した(本件第三次変更許可。甲40,41,乙24,25)。

(3)

本件許可等に関する審査請求
原告らは,本件許可を不服として,平成21年12月7日,豊中市開発審査会に対して審査請求を行った。


原告らは,本件第一次変更許可を不服として,平成23年8月5日,豊中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲26)。

原告らは,本件第二次変更許可を不服として,平成23年9月29日,豊中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲27)。


原告らは,本件第三次変更許可を不服として,平成24年1月12日,豊中市開発審査会に対して審査請求を行った(甲42)。


上記アないしエに係る審査請求は,併合されて審理されることとなった(甲43)。


豊中市開発審査会は,平成24年10月10日,原告Bの上記アないしエに係る審査請求をいずれも却下し,原告Cの上記アないしエに係る審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(乙48)。

(4)

本件訴えの提起
原告らは,平成22年7月29日,甲事件に係る訴えを提起し,平成24
年1月30日,行政事件訴訟法(以下行訴法という。)19条1項に基づき,乙事件に係る訴えを甲事件に併合して提起した(顕著な事実)。第3
1
争点
本案前の争点(甲事件,乙事件)
原告らに原告適格が認められるか

2
本案の争点
(1)

甲事件


原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものとして,その主張が制限されるか


本件許可につき取消事由はあるか

(2)

乙事件


原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものとして,その主張が制限されるか

イ(ア)

本件第一次変更許可につき取消事由はあるか

(イ)

本件第二次変更許可につき取消事由はあるか
(ウ)
第4
1
本件第三次変更許可につき取消事由はあるか

争点に対する当事者の主張
本案前の争点(原告らに原告適格が認められるか)

【原告らの主張】
(1)

都市計画事業に関して,最高裁判所は,法が個々人の個別的利益を保護
すべきものとする趣旨を含む解釈を示し,都市計画事業に係る周辺住民の原告適格を認めた(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁)
。したがって,都市計画事業と
趣旨目的を共通にする開発許可においても,周辺住民について原告適格が認められるべきである。
(2)

開発許可に係る個別の規定をみても,以下のとおり,法33条1項2号
及び7号は,開発区域内だけではなく,周囲の地域における環境等を考慮して許可の判断を行うことを求めているから,開発区域の周辺住民に原告適格が認められるべきである。
ア(ア)

法33条1項2号は,開発区域が相当規模の道路に接続しないまま
に開発行為を行うときは,その結果,消防活動や通勤・通学の安全又は事業活動の効率等に危険ないし支障が生じることを防止するために,法施行令25条,法施行規則20条の各規定によって,接続道路の道路幅員等について具体的かつ詳細に審査すべきこととしていると解される。このような法33条1項2号の趣旨・目的や,同号が保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみると,同号は,市街地の機能及び良好な環境の確保等の公共の利益を増進することを目的とするにとどまらず,当該開発区域の周辺住民の平穏な生活を営む権利を個別具体的に保護しているものと解されることに加え,開発区域が相当規模の道路に接続しないままに開発行為が行われると,その結果,消防活動や通勤・通学の安全や事業の効率等に危険ないし支障が生じて,人の生命・身体の安全や財産権が脅かされるおそれがあるから,人の生命・身体の安全や財産権についても,個々人の利益として個別具体的に保護しているものと解される。したがって,本件開発区域の接続道路の不備により災害や交通事故等の危険性が増加することが予想され,これによって直接的な被害を受けることが予想される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住し又はこれを所有する者は,本件許可等の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するものとして,その取消訴訟における原告適格を有するものと解すべきである。
(イ)

原告らは本件開発区域周辺の土地を所有し,同土地上の建物に居住
している住民であり,本件開発区域と原告Cの自宅との間には幅員4メートル弱の道路しかなく,原告Bの自宅は本件開発区域から約30メートルの位置にある。このような位置関係にかんがみると,原告らは,接続道路の不備によって,
災害や交通事故等の危険にさらされ,
その生命・
身体の安全や財産権が脅かされる被害が直接的に及ぶ者であるといえる。また,本件開発行為は,開発面積約6393平方メートルで,戸数140戸,130台分の駐車場数,254台分の駐輪場,26台分のバイク置場を備えたマンション(本件予定建築物)を建設するという大規模開発である。原告らの自宅前の幅員4メートル程度の道路では,大型普通自動車がすれ違うことは困難であり,原告らが通行したり自動車を出し入れしたりすることも困難となるため,交通事故の危険も現実のものとなるというべきであるから,原告らには,上記危険が及ぶ蓋然性があるといえる。
したがって,原告らには原告適格が認められる。
イ(ア)

法33条1項7号は,崖崩れ等のおそれのない良好な都市環境の保
持・形成を図るとともに,崖崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,
身体の安全等を,
個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきであり,開発区域内の土地が,地盤の軟弱な土地,崖崩れ又は出水のおそれが多い土地等に当たる場合には,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の取消しを求めるにつき原告適格を有する。
(イ)

原告らの自宅と本件開発区域との位置関係は上記ア(イ)のとおりで
あるところ,本件開発区域は宅地造成工事規制区域に指定されており,周辺には断層が存在し,本件開発区域は原告らの住居に向けて下り坂となっており,その地盤はN値が10以下であることも明らかになっている。本件地盤が軟弱であることをあわせ考えれば,原告ら自宅北側に位置する本件開発区域内の土砂が崩れることや,マンション群の重みで原告らの自宅が不同沈下したり,原告らが本件建築物の倒壊・炎上等により直接的な被害を受けることが予想され,原告らの生命,身体,財産の安全が脅かされることになるといえるから,原告らは原告適格を有するというべきである。
【被告の主張】
(1)

原告適格が認められる法律上の利益を有する者
(行訴法9条1項)

とは,取消しを求める処分により自己の権利又は法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのあるものをいう。
そして,開発許可について周辺住民の原告適格が認められるか否かについては,開発許可の基準を定める法33条1項各号並びに技術的細目を定める法施行令及び法施行規則の各規定の趣旨・目的,考慮されるべき利益の内容・性質等にかんがみて個別具体的に判断されるべきである。(2)

法33条1項2号の規定については,
①規定の文言及び内容からすると,

同規定は,開発区域内に道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地を確保し,開発区域内の主要な道路を開発区域外の相当規模の道路に接続させることによる開発区域内の環境の保全,災害の防止,通行の安全及び事業の効率化を目的とした規定であると解するのが相当であり,開発区域外の住民の利益をも保護しているとは解することができないこと,②同条2項は,同条1項2号に規定する基準を適用するについて必要な技術的細目を政令で定めることとしているが,これに基づいて定められた法施行令25条2号,
法施行規則20条,
20条の2,
24条等の各規定をみても,
開発区域外の住民個々人の具体的な利益に配慮すべきことをうかがわせるような規定は存在しないこと,③法33条1項2号は自己の居住用の住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為については適用を除外しているところ,仮に開発区域外への影響をも保護している規定であるとすれば,自己の居住用の場合について除外する必要はないこと,④開発行為が実施されると,開発区域外に居住する周辺住民の生活に影響を及ぼすことはあり得るとしても,同号違反の開発行為により周辺住民に及ぼす影響は一般的にはいわゆる生活利益にとどまり,その利益を享受する者の範囲も不明確であって,それは一般的な公益の中で扱われるものとして,周辺住民の個別的利益としてまでは保護していないと解するのが相当であること等からすると,同号の規定は,開発区域外に居住する周辺住民の利益を個別具体的に保護する趣旨とは解されないものである。
したがって,同号を根拠として,原告らの原告適格を認めることはできない。
(3)

法33条1項7号の規定については,
同号が規制している内容は開発行

為の過程ではなく,開発行為の結果,すなわち土地の区画形質を変更した後の状況であると解すべきであるから,原告適格の有無も,開発行為後の状況にかんがみて判断するべきである。
そして,本件開発行為の結果により変更された後の本件開発区域の形質状況をみると,本件開発区域の南側の幅員4.7メートル(開発行為による拡幅後)の市道β線(以下本件開発区域南側道路という。
)に接する
付近の東側においては,駐車場が計画されており,道路境界線から約5メートル程度の内側の部分に,最大で高さ約1メートル程度の切土と盛土を行って地上高さ約3.5メートルから約50センチメートル程度の擁壁を設置し,建築物の設置地盤として水平地となることとなっている。また本件開発区域南側部分には,
本件開発区域に含まれない間口約19メートル,
奥行約15メートル程度の土地があり,同土地の北側に本件開発区域南側道路から出入りする公園が計画されており,道路境界線から約6メートル程度内側の部分に,最大で高さ3メートル程度の切土と最大で高さ約2メートル程度の盛土を行って地上高さ約4.5メートルから50センチメートル程度の擁壁を設置し,建築物の設置地盤として水平地とすることとなっている。さらに公園の西側には駐車場が計画されており,道路境界線から最短でも約80センチメートル程度内側の部分に,最大で高さ約2メートル程度の切土と盛土を行って地上高さ約5.7メートルから3.2メートル程度の擁壁を設置し,建築物の設置地盤として水平地とすることとなっている。
そして,これらの水平地部分に引き続いて北側敷地境界及び東側敷地境界まで30度以下の緩やかな傾斜面地とすることとなっている。
以上のような変更後の開発区域の状況に照らせば,本件開発区域の周辺の住民は,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者とはいえない。
2
本案の争点
(1)

甲事件
原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものとして,その主張が制限されるか

【被告の主張】
原告らは,本件許可につき法33条1項2号に違反する違法がある旨主張するが,上記1(本案前の争点)で主張したとおり,同号は原告らの個別的利益を保護する趣旨を含む規定ではないから,原告らが同号に違反することを理由として本件許可の取消しを求めることは,行訴法10条1項に反し,許されない。
【原告らの主張】
上記1(本案前の争点)で主張したとおり,法33条1項2号は原告らの個別的利益の保護を趣旨とする規定であるから,同号に違反することを理由として本件許可の取消しを求めることは,行訴法10条1項に反しない。
また,原告適格を肯定する根拠となった法令と全く同じ違法事由しか主張し得ないとすることは狭きに失するというべきであり,行訴法10条1項の解釈においても,同法9条2項の解釈基準を援用し,当該処分によって害される利益の内容及び性質並びに侵害の態様又は程度を勘案して自己の法律上の利益に関係のない違法なのか否かを判断すべきである。イ
本件許可につき取消事由はあるか

【原告らの主張】
本件許可には,以下のとおり法及び法に基づく命令に違反しているとともに,豊中市長が認められた裁量の範囲を逸脱して本件許可をなした違法がある。
(ア)

道路に関する基準違反の有無
法33条1項2号,法施行令25条2号及び法施行規則20条は,道路の幅員に関する基準を定めており,開発許可を行う際には,予定建築物等の敷地に接する全ての道路について上記各規定に定める幅員を有することが必要であるから,本件予定建築物の敷地に接する全ての区域外道路は6メートルの幅員を有することが必要である。しかしながら,本件開発区域南側道路は,これを満たしていない。

また,本件開発区域に係る道路は,法施行令25条2号ただし書にも反する。すなわち,
開発許可制度運用指針によれば,法33条
1項2号の規定する環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないとの要件については,災害の防止
について消火活動上の支障がないこと,
通行の安全について1日
当たりの車両の交通量が少ないこと,歩行者の数が多くないこと等の要件を満たしている必要があるとされているところ,本件開発区域に係る道路は,これらの条件を満たしていない。とりわけ,本件開発区域南側道路は住宅地に面しており,通勤,通学路となっていることから,上記要件を満たさず,法施行令25条2号ただし書に違反する。また,同号の適用に当たっては,開発道路の幅員実測及び交通量の調査がなされるべきであるのに本件ではこれがなされていないことからしても,本件開発区域南側道路は,同号ただし書に違反する。
また,仮に,本件開発区域に係る道路が法施行令25条2号ただし
書の要件を満たすとしても,本件開発区域南側道路は有効幅員(経宅発第38号・昭和61年4月11日建設省建設経済局長通達に定める実質幅員4メートルの要件)を満たしていないから,本件許可は違法である。

本件予定建築物の規模に照らせば,火災の際に必要となる大型消防車等がスムーズに通れるとはいえず,本件開発区域の北西端部に設置される開発区域内道路(別紙3の赤斜線部分。以下本件開発区域内道路という。)は,法33条1項2号,法施行令25条2号に該当す
るものとはいえず,これに反する違法があるというべきである。


豊中市土地利用の調整に関する条例施行規則(以下本件条例施行規則という。)10条1項(1)別表第1は,開発行為等区域に接する
道路について6.35メートルの幅員を有することを要求しているところ,本件開発区域南側道路は,これに反する違法がある。
(イ)

地盤に関する基準違反の有無
以下のとおり,本件許可は法33条1項7号に違反する違法がある。

法33条1項7号は,
開発許可の基準として
地盤の沈下,崖崩れ,出水その他による災害を防止するため,開発区域内の土地について,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていることを規定している。活断層の有無は,
その他による災害
に係るものとして開発許可にあたって考
慮されるべきであるにもかかわらず,本件許可の申請手続において,本件開発区域に活断層が存在することに対する指導・対策はされていない。


国土交通省の宅地防災マニュアルは,地震時に液状化するおそ
れのある砂質地盤については一種の軟弱地盤と考えられるとし,さらに,①有機質土・高有機質土,②粘性土でN値が2以下,砂質土でN値が10以下のものを軟弱地盤とするとしているところ,本件において,開発業者が行った地盤調査においても,砂質土でN値が1の箇所が複数あることから,本件開発区域は軟弱地盤と判定し得る。そうであるにもかかわらず,何ら有効な対策が講じられていない。
また,本件開発区域内は地層が縦縞状になっており,土砂崩れ,崖崩れの危険性が極めて高い地域であるにもかかわらず,本件許可がなされている。


大阪府自然災害総合防災検討(地震被害想定)報告書
(甲25)
によると,本件開発区域には大阪層群と呼ばれる堆積層の上を軟弱な地盤である沖積層が覆っており,また,盛土・切土を行うと地震時に崩壊や地割れなどの被害が発生する危険性がある。そして,上町断層帯の活動により,30年以内に2パーセントから3パーセントの確率で震度7以上の地震が予測されているところ,本件許可にあたってはかかる事実も考慮されていない。

逆T型擁壁8-2(h5.0m)の一部は基礎を改良体で設計
しており,改良体の底部は粘性土であるが,設計者は改良体底部の支持層の土質を砂質土層と誤って判断して設計している。

【被告の主張】
(ア)

道路に関する基準違反の有無


原告らは,本件予定建築物等の敷地に接する道路は全て6メートル
道路に接しなければならないと主張するようであるが,開発許可を行う際の接道要件はそのようなことまで要求するものではない。

本件開発区域においては,本件開発区域内道路を設け,この開発区域内道路を開発区域に接する既存の市道(別紙3の黄斜線部分。以下本件接続道路という。
)に接続させるものであるから,本件開発区
域内道路について法施行令25条2号本文が問題となるとともに,本件接続道路について4号の適用の可否が問題になるのであって,開発区域内道路を設けずに開発区域に接する既存道路に接して行われる一敷地の単体的な開発行為に適用される法施行令25条2号ただし書は問題とならない。したがって,法施行令25条2号ただし書が適用されることを前提とした原告らの主張は主張自体失当である。


また,原告らは本件開発区域南側道路が本件条例施行規則10条に
違反する旨も主張するが,本件開発区域内道路及び本件許可に係る開発行為等区域内道路に接続する道路は本件条例施行規則10条1項(1)別表第1の基準を満たしているから,
この点についても違反はない。
(イ)

地盤に関する基準違反の有無
本件のように,開発区域内の土地の全部または一部が宅地造成等規制法3条1項の宅地造成規制区域内の土地であるときは,法33条1項7号の基準の適用に関しては,同号の基準についての技術的細目を定める法施行令28条,宅地造成等規制法9条,同条の基準についての技術的細目を定めた宅地造成等規制法施行令4条ないし15条の各規定を充足する必要がある。そして,これら各規定の基準を満たしているか否かについては,現況の地盤を前提にした上で,開発行為の内容が,上記法令の基準を満たしているか否かを判断すれば足り,これらの基準を満たしていれば,その他法令に違反していることをうかがわせる特段の事情がない限り,法33条1項7号の基準を満たしているものと認められるべきである。
本件開発区域においては,地盤の改良,擁壁又は排水施設の設置等が予定されており,擁壁について,各擁壁の底盤地盤の地耐力(地盤が擁壁の加重に耐える強さ)の検討を行い,現況地盤の地耐力が不足する部分については攪拌改良による地耐力の強化を検討し,それでも地耐力が不足する部分については柱列改良による地耐力の強化を行う設計となっているし,柱列改良を行う擁壁については,改良地盤の許容支持力が擁壁底面における最大接地圧を上回ることが確認されている。
したがって,
本件では上記基準を全て満たしているといえるところ,
以下のとおり,原告らの主張する事由は,法33条1項7号の基準に違反していることをうかがわせる特段の事情とはいえない。

原告らは,本件許可の申請手続において,本件開発区域に活断層が存在することを考慮していない旨主張する。
しかし,本件開発区域内における活断層の存在の有無や位置は何ら確認されていない。また,法33条1項7号及び同号の基準についての技術的な細目を定めている政令には,活断層に対する特別の定めは置かれていないところ,市長は,当該申請に係る開発行為が法33条1項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,その申請の手続が法及び法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならないとされており,市長は,法33条1項各号その他法及び法に基づく命令に定めのない事項についても審査した上で開発許可の判断をすべきものではなく,法及び法に基づく命令に規定された事項以外の事情を考慮して,開発許可の申請に対して不許可処分を行うことは許されないから,法及び法に基づく命令に定めのない活断層に係る審査を求める原告らの主張は,理由がないことは明らかである。

また,原告らは,
宅地防災マニュアルの記述及び開発事業者が行
った地盤調査の結果によれば本件開発区域は軟弱地盤と判定し得ることに加え,本件開発区域内は地層が縦縞状になっており,土砂崩れ,崖崩れの危険性が極めて高い地域であるにもかかわらず,これが考慮されずに本件許可がなされている旨主張する。
しかしながら,
宅地防災マニュアル
は開発事業を審査するにあた
っての審査基準ではないし,原告らが指摘する砂質土でN値1の地盤は,ボーリング調査された10箇所のうちNo.5の深度約1.5メートルの部分とNo.7の深度約2.3メートルの部分のみと,ごく一部に過ぎないのであるから,これをもって軟弱地盤であると判定することはできない。また,これ以外の砂質土でN値10以下とされている部分については,ほとんどの部分が切土によって除去されることになっているから,本件開発区域が形質の変更された状況で軟弱地盤と判定されるものではない。
仮に本件開発区域の地盤が軟弱地盤であったとしても,本件開発行為においては,擁壁が設置され,各擁壁の底盤部分の地盤につき,地耐力の検討を行い,支持力が不足する部分については地盤改良がおこなわれる設計となっているから,法33条1項7号の基準を適用するについての技術的細目を定めた法施行令28条,法施行規則23条及び27条,宅地造成等規制法9条,宅地造成等規制法施行令4条ないし15条の規定に適合しているものであるから,本件開発行為は法及び法に基づく命令の基準を満たしているものであって,何ら違法な点はない。
また,本件開発区域内は地層が縦縞状であるとの原告らの主張についても,これが直ちに本件開発区域内の地盤が軟弱である等の評価につながるものではない。

原告らは,本件開発区域には大阪層群と呼ばれる堆積層を軟弱な地盤である沖積層が覆っている旨主張する。
しかしながら,原告らが上記主張の根拠とする大阪府自然災害総合防災対策検討(地震被害想定)報告書の記載をみれば,上記主張の内容は,大阪府域のうち平野部について当てはまるものであって,丘陵部である本件開発区域には当てはまらない。


原告らは,逆T型擁壁8-2(h5.0m)改良体底部の土層
に係る設計に誤りがある旨主張する。
しかしながら,同擁壁下部の土質については,ボーリング調査結果によって,砂質土及び硬い粘性土の薄層の互層であって,改良体の底部はほぼ層の境目に位置することから,総合的に判断して砂質土として計算しているところ,これは合理的な判断方法であって,設計に誤りがあるとはいえない。

(ウ)

なお,原告らは,本件許可について豊中市長に裁量が認められるこ
とを前提とした主張をしているが,法は,市街化区域及び市街化調整区域において,主として建築物の建築の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更を指定都市等の市長の許可にかからしめて開発行為に対して一定の水準を保たせるとともに,市街化調整区域内にあっては一定のものを除き開発行為を行わせないこととして,無秩序な市街化を防止しようとしているものである。そして,開発許可を受けようとする者は,開発許可申請書を市長に対して提出し
(法30条1項)
,市長の許可を受け
なければならず(法29条1項)
,市長は,当該申請に係る開発行為が法
33条1項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,法及び法に基づく命令に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならないとされている(法33条1項柱書)
。したがって,市長は,当該申請に係
る開発行為が法33条1項各号に掲げる基準に適合している場合において同申請を却下する裁量権を有していないから,原告らの主張は理由がない。
(2)

乙事件
原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものとして,その主張が制限されるか

【被告の主張】
上記(1)アの主張と同様,
法33条1項2号は開発区域外に居住する住民
の個別的な利益を保護する趣旨を含むものと解することはできないし,同号に基づく法施行規則24条1項3号の道路勾配に関する規定も同様に,開発区域外に居住する住民の個別的な利益を保護する趣旨を含むものと解することはできないから,原告らがこれらの規定の違反を本件第一次変更許可の違法事由として主張することは行訴法10条1項に反する。【原告らの主張】
上記(1)アの主張と同様,
法33条1項2号は原告らの権利利益を個別具
体的に保護する趣旨の規定であり,同号に基づく法施行規則24条1項3号も同様の趣旨であると解されるから,原告らがこれらの規定の違反を本件第一次変更許可の違法事由として主張することは行訴法10条1項に反しない。
イ(ア)

本件第一次変更許可につき取消事由はあるか

【原告らの主張】

本件許可に係る違法事由に加え,本件第一次変更許可において関連区域とされている1108.87平方メートルの区域は,開発区域面積に含めるべきであるが,これを含めていない違法がある。
また,本件開発区域の北側に新たに設置される幅員9メートルの道路(以下本件新設道路という。
)は,縦断勾配が11パーセントに
計画されていることから,法33条1項2号,法施行規則24条1項3号に定める縦断勾配9パーセントの原則に違反する違法がある。

本件第一次変更許可においては,逆T型擁壁8-2(h=5.7m,5.0m)の設計条件に変更があるのに構造検討がされていない。すなわち,本件マンションの西棟の基礎杭は逆T型擁壁8-2(h=5.7m,5.0m)に非常に近接することになり,荷重がかかることとなるが,当該荷重については何ら考慮されていない。

逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の支持地盤は粘土層に挟ま
れた2.3メートルの厚さしかない薄い砂層である。


本件開発区域内には活断層ないし活断層由来の撓曲構造が存在するが,この点を考慮していない。

【被告の主張】

上記(1)イで主張したとおり,本件許可に係る違法事由については,原告らの主張にはいずれも理由がない。


本件第一次変更許可に係る申請がなされた経緯は,本件許可の後,
本件新設道路を設置することになったというものであるところ,本件新設道路は,その東西に存する既存の道路を結ぶものであり,開発区域内の住民に限らず開発区域内外の一般公衆が広く利用する一般道路として計画されている道路であること,及び本件許可において開発区域内道路として整備した道路によって開発許可上必要な道路が設置されていることから,本件新設道路は建築の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をする土地とはいえず,開発区域」法4条12項,

(13項)には当たらないことから,開発関連区域とされているものである。したがって,「関連区域

として開発区域には含めなかったことについて,何ら違法な点はない。
また,本件新設道路は,その東西に既存道路があり,これを結ぶ地形に設置されるものであるところ,地形の形状からして,道路勾配を11パーセントにせざるを得なかったものであり,道路構造令20条に規定する例外的場面に該当する。

原告らは本件予定建築物の西棟の基礎杭が逆T型擁壁8-2(h=5.7m,5.0m)に非常に近接することになる旨主張するが,そもそも開発許可の段階において予定建築物に関して特定されるのは,予定建築物の用途とその敷地の規模及び配置のみであるし,開発行為申請書の添付図書にも,
予定建築物についての図面は含まれておらず,
これらにより判明する以上に,予定建築物の内容を特定し,その内容を考慮して開発許可の審査を行うことは予定されていない。したがって,予定建築物と擁壁の荷重に係る事項は開発許可の審査対象外であって,原告らの主張は理由がない。


原告らは,逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の支持地盤につ
いて指摘する。
当該擁壁の支持地盤は粘土層に挟まれた2.3メートルの厚さの砂層であり,その下層は粘性土であるものの,N値は少なくとも17以上あり(乙35の1),地盤調査における評価は非常に硬いとさ
れているものであるから,到底軟弱地盤とはいえないものであり,支持層としては問題が無いから,原告らの主張は理由がない。

活断層ないし活断層由来の撓曲構造の存在を考慮する必要がないというのは,既に上記(1)イで主張したとおりである。

(イ)

本件第二次変更許可につき取消事由はあるか

【原告らの主張】
本件許可に係る違法事由に加え,本件第二次変更許可において関連区域と称している1108.87平方メートルの区域は,開発区域面積に含めるべきであるが,これを含めていない違法がある。
また,本件第二次変更許可によって逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の中掘工法をプレボーリング工法に変更することによって,擁壁地盤の安全性が害されることから,法33条1項7号に違反する。【被告の主張】

上記(1)イで主張したとおり,本件許可に係る違法事由については,原告らの主張にはいずれも理由がない。


開発区域の範囲に関する主張は,本件第一次変更許可に係る主張と同様である。また,そもそも本件第二次変更許可においては,関連区域に関しての変更は行われていないため,この点からも原告らの主張は主張自体失当である。


中掘工法とプレボーリング工法の違いは杭の打設方法の違いに過

ぎず,いずれも法33条1項7号の技術基準を満足しているから,何ら違法な点はなく,原告らの主張は理由がない。
(ウ)

本件第三次変更許可につき取消事由はあるか

【原告らの主張】
本件第三次変更許可においては,地盤高の変更に伴う擁壁形状の変更について,擁壁地盤の安全性が十分確保されていないから,法33条1項7号に違反する。
【被告の主張】
本件第三次変更許可によって形状が変更された擁壁についてはいずれも法施行規則27条に規定する基準に該当することが確かめられ,法33条1項7号の技術基準を満足しているものである。
第5
1
当裁判所の判断
原告らに原告適格が認められるか(本案前の争点)
(1)

判断枠組み
行訴法9条は取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう
処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮すべきであり,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)

この観点から,本件許可等の各取消しを求める原告らの原告適格について,以下,検討する。
(2)

法33条1項2号について
法33条1項2号は,主として,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為について,道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地が,開発区域の規模,形状及び周辺の状況等の同号イないしニに掲げる事項を勘案して,環境の保全上,災害の防止上,通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置され,かつ,開発区域内の主要な道路が,開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計が定められていることを開発許可の基準とする旨規定しているところ,同号が条文上,
開発区域の・・・周辺の状況を勘案して災害の防止上・・・支障がないことを開発許可の要件として定めていることからすれば,同号は,予定建築物の用途,敷地の規模,配置等に応じて公共の用に供する空地等を確保しようとするのみならず,予定建築物等に火災その他の災害が発生した場合に予定建築物等が倒壊する等し,あるいは予定建築物等の開発区域内の火災が開発区域外に延焼する等して隣接する建築物に居住する住民の生命・身体等に被害が及ぶことを防止することをもその目的に含むものと解するのが相当である。上記のような法33条1項2号の文言及び内容,同号が保護しようとしている利益の内容・性質に鑑みれば,同号は,開発区域内の住民の利益を保護する趣旨にとどまらず,当該開発許可に係る開発区域内における予定建築物等の火災等の災害による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に居住する者の生命・身体の安全を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当である。
したがって,当該開発許可に係る開発区域内における予定建築物等の火災等の災害により直接的な被害が及ぶことが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者は,法33条1項2号に基づき,当該開発許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,原告適格を有すると解するのが相当である。
また,この理は,開発変更許可の取消訴訟における原告適格にも妥当するものと解される。
なお,法33条1項2号は,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為については同号に定める基準の適用を除外しているところ,その理由は,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為については,規模が比較的小さいものにとどまるのが通常であり,
建築基準法等による規制要件を課すことで,
環境の保全,
災害の防止,交通の安全等の面で特段の支障は生じないものと考えられることから適用を除外したものであると解される。したがって,自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為について,同号に定める基準の適用が除外されていることは,上記原告適格に係る判断を左右するものではない。

法33条1項7号について
法33条1項7号の規定は,開発区域内の土地が,地盤の軟弱な土地,崖崩れ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地であるときは,地盤の改良,擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていることを開発許可の基準としているところ,
かかる規定は,
上記のような土地において安全上必要な措置を講じないままに開発行為を行えば,崖崩れ等の災害が発生して,人の生命,身体の安全等が脅かされるおそれがあることにかんがみ,そのような災害を防止するため,開発許可の段階で,開発行為の設計内容を十分審査し,安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められている場合にのみ許可をすることとしているものである。そして,崖崩れ等が起きた場合における被害は,開発区域内のみならず開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想され,また,同条2項は,同条1項7号の基準を適用するについて必要な技術的細目を政令で定めることとしており,その委任に基づき定められた法施行令28条,法施行規則23条,27条の各規定をみると,法33条1項7号は,開発許可に際し,崖崩れ等を防止するために崖面,擁壁等に施すべき措置について具体的かつ詳細に審査すべきこととしているものと解される。
以上のような同号の趣旨・目的,同号が開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同号は,崖崩れ等のおそれのない良好な都市環境の保持・形成を図るとともに,崖崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域に存する他の建築物に居住する者の生命,身体の安全等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,開発区域内の土地が同号にいう崖崩れのおそれがある土地等に当たる場合には,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者は,開発許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。
(最高裁平成6年(行ツ)第189号同9年1月2
8日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁参照)
また,この理は,開発変更許可の取消訴訟における原告適格にも妥当するものと解される。
(3)

そこで,本件の原告らに原告適格が認められるか否か,以下検討する。前記前提事実に加え,各項掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

原告Cは,
本件開発区域とは水平距離で約4メートル隔てた場所に,

原告Bは,本件開発区域とは水平距離で約30メートル隔てた場所に,それぞれ自宅を所有し居住している(別紙2参照)

(イ)

本件開発区域は,宅地造成等規制法3条1項の宅地造成工事規制区
域内にある(前記前提事実(2)イ)

(ウ)

本件開発区域のうち,
原告らが自宅を所有し居住する敷地付近では,

開発区域境界線から内側約5メートルにかけて高さ約3メートル程度の切土を行い,同所に高さ約5メートル程度の擁壁(逆T型擁壁8-2)を設置し,擁壁の内側に約2メートル程度の盛土を行うこととなっている(乙30,31)

(エ)

本件予定建築物は,地上12階,地下2階建て,戸数140戸の鉄
筋コンクリート造の共同住宅である(乙26)

イ(ア)

法33条1項2号について
上記アのとおり,本件予定建築物は地上12階建ての比較的規模の大
きなものであることに鑑みると,本件開発区域から水平距離で約4メートル隔てた場所に居住している原告C及び本件開発区域から水平距離で約30メートル隔てた場所に居住している原告Bは,いずれも本件予定建築物等に火災等の災害が発生した場合,同建築物の倒壊等により,直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者であると認められる。
(イ)

法33条1項7号について
前記前提事実(2)イのとおり,本件開発区域は宅地造成等規制法3条
1項の宅地造成工事規制区域内にあり,本件開発区域は,原告Cが自宅を所有し居住する敷地付近との間に水平距離で最短約9メートル程度の場所に高さ約5メートルの崖(地表面が水平面に対し30度を超える角度を成す土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。
)以外のものをい
う。法施行規則16条4項参照)を生じさせる盛土を行うこととなっている。そうすると,原告らが自宅を所有し居住する敷地付近に係る本件開発区域は,崖崩れのおそれがある土地に当たるということができる。そして,原告Cは,本件開発区域から水平距離で約4メートル隔てた場所に,原告Bは同約30メートル隔てた場所に,それぞれ居住しているところ,上記のような原告らの自宅と本件開発区域との関係や,擁壁等の存在,さらに,本件開発区域内に建築される本件予定建築物の規模等に照らすと,原告らは,いずれも本件開発区域内の崖崩れ等により直接的な被害を受ける蓋然性がある範囲内の建築物に居住しているということができる。
(4)

したがって,原告らはいずれも,法33条1項2号及び同項7号を根拠
として,本件許可等の取消しを求める訴えの原告適格を有すると認められる。2
甲事件について
(1)

原告らの主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか(本案の争点ア)
被告は,原告らの法33条1項2号違反の主張は行訴法10条1項に違反し,許されない旨主張するが,上記1で説示したとおり,法33条1項2号は原告らの個別的利益をも保護する趣旨の規定であると解されるから,被告の主張はその前提を欠き,失当である。
(2)

本件許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ)
本件では本件許可後に本件第一次変更許可,本件第二次変更許可及び本件第三次変更許可がなされていることから,これら各処分の関係をいかに解するべきか,すなわち本件許可等に係る取消事由の審理範囲をどのように考えるべきか,まず検討する。
法及び法施行規則等の規定をみると,変更許可申請書の記載事項は,変更に係る事項,変更の理由,開発許可の許可番号とされ(法35条の2第2項,法施行規則28条の2)
,添付書類としては,法30条2項に規定す
る図書のうち開発行為の変更に伴いその内容が変更されるものを添付しなければならないとされ
(法施行規則28条の3)工事完了検査,

建築制限,
公共施設の管理,公共施設の用に供する土地の帰属等の規定の適用については,変更許可に係る変更後の内容を開発許可の内容とみなすこととされ(法35条の2第5項)開発行為変更許可処分について,

開発審査会に審
査請求をすることを認め
(法50条1項)当該開発行為変更許可処分の取

消しの訴えを提起する場合には審査請求に対する開発審査会の裁決を経なければならないこととされている(法52条)

このように,開発行為変更許可申請書の記載内容及び添付図書は変更に係る部分のみであり,当該開発行為全体についての記載及び添付図書の提出は予定されていないこと,当該開発行為変更許可について独自に審査請求及び取消訴訟を行うことが予定されていること等からすると,開発行為変更許可処分は,当初の開発許可処分の一部取消しと開発行為の一部についての新たな開発許可処分という性質を有し,当初の開発許可処分と併存して効力を有するものと解するのが相当である。
したがって,本件許可に係る取消事由としては,本件第一次変更許可,本件第二次変更許可及び本件第三次変更許可で変更されていない部分に限定して違法性を検討すべきこととなる。

道路に関する基準違反の有無
(ア)

原告らは,法33条1項2号,法施行令25条2号,法施行規則2
0条は,
道路の幅員に関する基準を定めており,
開発許可を行う際には,
予定建築物の敷地に接する全ての道路が上記各規定に定める幅員を有することが必要であるから,本件予定建築物の敷地に接する全ての区域外道路は6メートルの幅員を有することが必要であるのに,本件開発区域南側道路は同要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら,上記各規定が,その文言上,予定建築物等の敷地に接する全ての区域外道路について6メートルの幅員を有することまでを要求しているものとは到底解されず,原告らの主張は独自の見解を述べるものであって理由がない(本件条例施行規則に係る原告らの主張も,同様に理由がない。。

(イ)

また,原告らは,本件開発区域南側道路は法施行令25条2号ただ
し書に違反する旨主張する。
しかしながら,法施行令25条2号ただし書は,開発区域外の既存道路に直接接して行われる一敷地の単体的な開発行為に適用されるところ,本件開発区域においては,本件開発区域内道路を設け,この開発区域内道路を本件接続道路に接続させることとなっているから,本件開発区域南側道路について法施行令25条2号ただし書の適用は問題とならず,原告らの主張は理由がない。
(ウ)

そして,本件開発区域内道路及び本件接続道路の概要は別紙3のと
おりであって,法施行令25条2号及び4号の各要件を満たすものと認められる。
以上から,本件許可について,法33条1項2号に違反する事由があるとは認められない。

地盤に関する基準違反の有無
(ア)

法33条1項7号は,開発区域内の土地について,地盤の改良,擁
壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められており(その技術的細目については,同条2項,法施行令28条,29条)
,かつ,宅地造成工事規制区域内の土地については,
開発行為に関する工事の計画が宅地造成等規制法9条の規定に適合していることという許可基準を定め,宅地造成等規制法9条は,宅地造成工事は擁壁等の設置その他宅地造成に伴う災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければならない旨規定している。
同法9条1
項の政令で定める技術的基準のうち擁壁の設置に関する基準として,宅
地造成等規制法施行令6条ないし11条が定められている。
そして,証拠(乙34ないし38)によれば,本件開発区域においては,地盤の改良や擁壁の設置等がされ,その内容も上記各規定の基準に適合しているものと認められる。
(イ)

原告らは,本件開発区域内には活断層が存在するところ,活断層の
有無はその他による災害
(法33条1項7号)に係るものとして,
開発許可にあたって考慮されるべきであるのに,本件許可はその有無を考慮していない旨主張する。
しかしながら,法は,都市計画区域又は準都市計画区域内における開発行為については原則として許可を要することとし(法29条1項),
もって無秩序な市街化を防止しようとしているものであるところ,その開発許可の基準(法33条)は,上記目的を達成するために最低限必要な水準を確保するための基準を定めたものであり,都道府県知事は,開発許可の申請に係る開発行為が同条1項各号に掲げる基準に適合しており,かつ,その申請の手続が法及び法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは,開発許可をしなければならない(同項柱書)。
したがって,法29条に定める開発行為の許可に係る審査にあたっては,法33条1項各号及び法に基づく命令に規定する事項について審査をし,申請内容が同規定に適合していれば,開発許可処分が行われなければならないこととなる。この点,原告らは活断層の有無を裁量によって考慮すべきである旨主張するが,同項の文言に照らし,採用できない。そうであるところ,法33条1項7号はもとより,法施行令28条,法施行規則23条,27条等,法33条1項7号の基準を適用するについて必要な技術的細目の規定及び宅地造成等規制法9条,宅地造成等規制法施行令6条ないし11条の規定をみても,開発許可をするにあたって活断層の有無を考慮すべき旨を定めた規定はないから(なお,活断層の有無が法33条1項7号のその他の災害に当たるものということはできない。,開発許可の判断にあたって活断層の有無を考慮すべきで)
あるとの原告らの主張は理由がない。
(ウ)

原告らは,本件開発区域は軟弱地盤であるのにこれが考慮されてい
ないため,本件許可は法33条1項7号に違反する旨主張する。
宅地防災マニュアルの解説
(乙45)によれば,軟弱地盤の判定の
目安として,地表面下10メートルまでの地盤に,粘性土でN値が2以下の土層の存在が認められる場合や,砂質土でN値が10以下の土層の存在が認められる場合等が挙げられているところ,本件開発区域のうち一部はこれにあたるため,当該部分は軟弱地盤と評価し得る。
もっとも,本件開発区域内において,地表面下10メートルまでの地盤に粘性土でN値が2以下の土層又は砂質土でN値が10以下の土層の存在が認められる部分については切土が行われるとともに(乙12,30,
31)切土が行われる部分以外の部分も含めて地盤の地耐力の検討,
が行われ(乙15)
,地耐力が不足する場合には地耐力の強化を行い,そ
れでも地耐力が不足する場合には,柱列改良を行い,地耐力の強化を行う設計とされているものと認められ(乙36)
,その他,本件証拠上,本
件開発行為が法33条1項7号に違反していることをうかがわせる事情は認められない(原告らからも,この点についての具体的な指摘はなされていない。。

なお,地盤が斜縦縞状であることは,直ちに当該地盤が軟弱であるとの評価につながるものではない。
したがって,原告らの主張は理由がない。
(エ)

原告らは,
大阪府自然災害総合防災対策検討(地震被害想定)報告書
(甲25)を根拠に,本件開発区域は大阪層群と呼ばれる堆積層の上を軟弱な地盤である沖積層が覆っており,盛土・切土を行うと地震時に崩壊や地割れなどの被害が発生する危険性がある旨等を指摘する。しかしながら,同報告書は大阪府下における一般的な地盤の傾向を記載したものにすぎず,本件開発区域内の地盤に係る検討は上記(ウ)のとおりであるから,原告らの主張は理由がない。
(オ)

原告らは,
逆T型擁壁8-2(h5.0m)の基礎の改良体底部

の支持層の土質を誤って設計している旨主張する。
これに対して被告は,同擁壁の基礎の改良体底部の支持層の土質は,ボーリング調査結果によって,砂質土及び硬い粘性土の薄層の互層となっていることが判明しており,改良体の底部は,砂質土及び硬い粘性土のほぼ境目に位置すること等から総合的に判断して砂質土として計算している旨主張するところ,
同擁壁の基礎の改良体底部の支持層は層厚0.
5メートルの砂質土と層厚1.35メートルの粘性土のほぼ境目であること,同粘性土層の相対密度及びコンステンシーは硬いとされていること(乙12)からすると,同擁壁の改良体底部の支持層が総合的な判断の下に砂質土としてなされた点について,法33条1項7号に違反する違法があるとは認められない。
(カ)

その他の原告らの主張をみても,本件許可が法33条1項7号に違
反する事由があるとは認められない。
エ3
以上からすれば,本件許可は適法であると認められる。

乙事件について
(1)

原告らが主張する違法事由は自己の法律上の利益に関係のない違法を主
張するものとして,その主張が制限されるか(本案の争点ア)
上記2(1)の判示と同様,
法33条1項2号の規定は原告らの個別具体的利
益をも保護する趣旨の規定であると解されるから,行訴法10条1項により主張が制限される旨の被告の主張はその前提を欠き失当である。
(2)

本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許可の取消事由(本案の争点イ)
上記2(2)で判示したとおり,
本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許

可の取消訴訟において審理の対象となるのは,本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許可によって変更された部分に係る違法事由に限られる。以上の前提で,以下,検討する。

本件第一次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(ア))(ア)

原告らは,本件第一次変更許可申請において関連区域とされている
1108.87平方メートルの区域は開発区域面積に含めるべきであるのに,これを含めていない違法がある旨主張する。
しかしながら,本件第一次変更許可申請において関連区域とされた1108.87平方メートルの区域は,本件許可後に本件開発区域の北側に設置することとなった幅員9メートルの道路(本件新設道路)に係る区域であるところ,本件新設道路は,その東西に存する既存の道路を結ぶものであり,開発区域内外の公衆が広く利用する道路と認められるから,建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をする土地とはいえず,
開発区域
(法4条12項,1
3項)には当たらない(甲36,37,乙18,19,20の2)。したがって,本件新設道路に係る区域を関連区域として開発区域
には含めなかったことについて違法はないから,原告らの主張は理由がない。
(イ)

原告らは,
本件第一次変更許可によって設置される本件新設道路は,

縦断勾配が11パーセントに計画されていることから,法33条1項2号,法施行規則24条1項3号に定める縦断勾配9パーセントの原則に違反する違法がある旨主張する。
しかしながら,本件新設道路は,その東西に既存道路があり,これを結ぶものとして設置されるものであるところ
(乙18,
19,
20の2)

東西の道路の高低差からして,本件新設道路の道路勾配を11パーセントにせざるを得なかったものであると認められるから,地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合について規定する道路構造令20条ただし書が適用されると解され,道路勾配を11パーセントとすることが認められるから(同条に定める表の第四種,普通道路,設計速度毎時20キロメートルの欄参照)
,原告らの主張は理由がない。
(ウ)

原告らは,
予定建築物西棟の基礎杭が
逆T型擁壁8-2(h=5.7m,5.0m)に非常に近接することになり,荷重がかかることとなるが,当該荷重については何ら考慮されていない旨主張する。
しかしながら,開発許可の段階において予定建築物に関して特定されるのは,予定建築物の用途のみであり(法33条1項1号),開発許可の申請において,予定建築物に関して記載されるのはその用途(法30条1項2号),予定建築物の敷地の形状,敷地に係る予定建築物の用途(法30条1項3号,法施行規則16条2項,4項,法施行規則15条)のみであり,開発許可申請書の添付図書にも,予定建築物について上記事項以外の事項を特定するに足りる図面は含まれていない(法30条2項,法施行規則17条1項)ことからすれば,開発許可の段階で,これら以上に予定建築物の内容を特定し,その内容を考慮して開発許可の審査を行うことは法が予定するところではなく,
審査の必要性はないから,
原告らの主張は理由がない。
(エ)

原告らは,逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の支持地盤は粘

性土に挟まれた2.3メートルの厚さしかない砂層であるところ,その厚さは当該擁壁の支持層としては薄い旨主張する。
しかしながら,原告らの上記主張のみでは,上記事由が具体的にいかなる違法事由を主張するものであるのか明らかではない。
仮に,原告らの上記主張の趣旨が,逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の下に軟弱な地盤がある点を考慮した検討がなされていない旨をいうものと解したとしても,同擁壁の基礎杭に係る支持地盤のN値は,粘性土で平均13以上,砂質土で平均18以上であり,軟弱地盤と評価されるものではないし(乙12,35の1,45),同擁壁の安全性についても検討がなされているから(乙34の9,36の1),原告らの主張は理由がない。

本件第二次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(イ))(ア)

原告らは,本件第二次変更許可について上記ア(ア)と同内容の主張
をしているが,関連区域である1108.87平方メートルの区域に係る変更は,本件第一次変更許可によって変更済であり,本件第二次変更許可においては変更されていないから,原告らの主張は主張自体失当である。
(イ)

また,原告らは,第二次変更許可処分によって逆T型擁壁8-2(h=5.7m)の中掘工法をプレボーリング工法に変更することによって地盤の安全性が害され,法33条1項7号に違反する旨主張するが,プレボーリング工法も中堀工法も既製杭の埋込み工法として一般的に用いられるものであって(乙29),中堀工法からプレボーリング工法へ変更することによって地盤の安全性が害されることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告らの主張は理由がない。

本件第三次変更許可につき取消事由はあるか(本案の争点イ(ウ))原告らは,本件第三次変更許可においては,地盤高の変更に伴う擁壁形状の変更について,
擁壁地盤の安全性が十分確保されていない旨主張する。
しかしながら,
本件第三次変更許可によって変更された擁壁については,
擁壁地盤の地耐力等が検討され,
いずれも安全性が確認されているから
(乙
34,36の1)
,原告らの主張は理由がない。

小括
以上によれば,本件第一次変更許可ないし本件第三次変更許可はいずれも適法であると認められる。

4
結論
よって,原告らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行訴法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

田中健治
裁判官

尾河吉久
裁判官

板東恵里
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