判例検索β > 平成22年(行ウ)第725号
所得税更正処分取消請求事件
事件番号平成22(行ウ)725
事件名所得税更正処分取消請求事件
裁判年月日平成24年10月11日
法廷名東京地方裁判所
判示事項シンガポール共和国において設立された外国法人の株式を保有する者に対し,前記法人が租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前又は平成18年法律第10号による改正前)40条の4第1項の特定外国子会社等に当たるとして,前記法人の課税対象留保金額を前記保有者の総収入金額の額に算入してされた,所得税の更正処分のうち確定申告額を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分が,いずれも違法とされた事例
裁判要旨シンガポール共和国において設立された外国法人の株式を保有する者に対し,前記法人が租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前又は平成18年法律第10号による改正前。以下同じ)40条の4第1項の特定外国子会社等に当たるとして,前記法人の課税対象留保金額を前記保有者の総収入金額の額に算入してされた,所得税の更正処分のうち確定申告額を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分につき,同項の適用除外の要件を定める同条4項にいう「主たる事業を行うと認められる事業所,店舗,工場その他の固定施設を有している」といえるためには,当該特定外国子会社等が,主たる事業の業種や形態に応じた規模の固定施設を賃借権等の正当な権原に基づき使用していれば足り,固定施設を自ら所有している必要はなく,また,同項にいう「その事業の管理,支配及び運営を自ら行っている」といえるためには,前提として,事業を行うために必要な常勤役員及び従業員が存在していることが必要であり,かつ,特定外国子会社等の株主総会及び取締役会の開催,役員としての職務執行,会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所等を総合的に勘案し,特定外国子会社等の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社等から独立して行われていると認められるか否かについて判断することが必要であるとした上,前記法人は同項の要件を全て満たすから,その課税対象留保金額は前記保有者の雑所得の金額に算入されないとして,前記各処分をいずれも違法とした事例
裁判日:西暦2012-10-11
情報公開日2017-10-19 12:46:06
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主1文
処分行政庁が平成20年3月11日付けで原告に対してした原告の平成16年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1214万4218円,納付すべき税額12万2000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

2
処分行政庁が平成20年3月11日付けで原告に対してした原告の平成17年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1367万7598円,納付すべき税額30万9200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

3
処分行政庁が平成20年3月11日付けで原告に対してした原告の平成18年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額1160万6750円を超え,還付金の額に相当する税額が4万6300円を下回る部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

4
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文第1項ないし第3項同旨

第2

事案の概要
本件は,処分行政庁が,原告に対して,シンガポール共和国(以下シンガポールという。)において設立されたP1PTELTD(以下P1社という。)は,租税特別措置法(以下措置法という。)40条の4第1項(ただし,平成16年分及び平成17年分については平成17年法律第21号による改正前のもの,平成18年分については平成18年法律第10号による改正前のものをいう。以下同じ。)に規定する特定外国子会社等に該当し,同条の定める外国子会社合算税制の適用があるとして,P1社の課税対象留保金額に相当する金額が原告の平成16年分ないし平成18年分(以下本件各係争年分という。)における雑所得の総収入金額にそれぞれ算入されることを前提に,原告の本件各係争年分の所得税について,いずれも更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,本件各係争年分の更正処分を本件各更正処分,本件各係争年分の過少申告加算税賦課決定処分を本件各賦課決定処分,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて本件各処分という。)を行ったところ,原告が,P1社は措置法40条の4第4項(ただし,平成17年法律第21号による改正前は,同条3項。以下同じ。)所定の同条1項の外国子会社合算税制の適用除外のための要件を満たすため,本件各処分は違法な処分であるとしてそれらの取消しを求めている事案である。1
関係法令の定め
別紙1のとおり

2
前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者
原告について
原告は,日本に住所を有する者であり,P1社平成15年12月期(P1社の平成15年1月1日から同年12月31日までの事業年度をいい,以下,他の事業年度についても同様の表現をする。),P1社平成16年12月期,P1社平成17年12月期(以下,これらの事業年度を併せて,P1社各事業年度という。)の間,埼玉県志木市に本店を置く精密ねじ等の製品を製造するP2株式会社(以下P2社という。)の常勤専務取締役を務めており,平成20年5月29日,P2社の代表取締役に就任し,現在も引き続き代表取締役の地位にある。(乙1)


P1社について
P1社は,P2社及びその関連会社であるP3CO.,LTD.(以下P3社という。)の製造する精密ねじ等の製品を東南アジアの日系企業に販売するために平成12年2月3日にシンガポールにおいて設立された株式会社である。
原告は,同年12月15日以降,P1社の発行済株式総数7800株のうちの7799株を保有する株主であり,P1社各事業年度の終了時におけるP1社の取締役2名のうちの1名である。(乙2ないし4)

原告とP1社との関係について

(ア)

措置法40条の4第1項は,同項各号に掲げる居住者に係る外国
関係会社のうち特定外国子会社等が適用対象留保金額を有する場合,その適用対象留保金額のうち,課税対象留保金額に相当する金額は,その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の計算上,総収入金額に算入すると規定しているところ,日本に住所を有する原告が直接保有する株式数の占める割合が100分の50を超えていることから,P1社は措置法40条の4第2項1号所定の外国関係会社に該当し,また,上記の割合は100分の5以上であることから,原告は,措置法40条の4第1項1号所定の居住者に該当する。したがって,P1社は,同号所定の居住者に該当する原告に係る外国関係会社に
該当する。

(イ)

P1社は,本件各係争年分に係る全期間,シンガポールに本店を有
しており,P1社は,シンガポールの法人税に関する法令(我が国の法人税法(P1社平成15年12月期については平成15年法律第8号による改正前のもの,P1社平成16年12月期については平成16年法律第88号による改正前のもの,P1社平成17年12月期については平成17年法律第21号による改正前のもの。以下同じ。)69条1項所定の外国法人税に関する法令をいう。)により,P1社各事業年度の所得に対して我が国の法人税に相当する租税が課され,その課された税額の当該所得の金額に占める割合は,別表1(③欄)のとおりである。このP1社各事業年度の所得に対して課される租税の額は,当該所得の金額の100分の25(租税特別措置法施行令(平成16年分については平成16年政令第105号による改正前のもの,平成17年分については平成17年政令第103号による改正前のもの,平成18年分については平成18年政令第135号による改正前のものをいい,以下措置法施行令という。)25条の19第1項2号所定の割合)以下であり,我が国における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令に定める外国関係会社に該当するから,P1社は,措置法40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当する。

P4について
P4は,P1社の発行済株式総数7800株のうちの1株を保有するP1社の取締役であり,シンガポールに在住している。(乙2ないし4)P4は,昭和63年にシンガポールで設立されたP5PTE.LTD.(以下P5社という。)のマネージングディレクターであり,同社の業務委託・経営コンサルタント部門は,シンガポールにおいて,事務所設備の賃貸,業務サポートサービスの提供及び営業担当者の派遣を行っている。(乙5,6)


P1社とP5社との間の業務委託契約
P1社は,P1社の設立時に,P5社との間で,P1社の周辺事務業務(経理・総務・営業事務)等につき業務委託契約(以下本件業務委託契約という。)を締結した(ただし,本件業務委託契約の内容として,上記周辺事務業務の委託以外に何が含まれているかについては争いがある。)。

(2)

原告の所得税に係る申告
原告は,本件各係争年分の所得税の確定申告について,別表2ないし4の確定申告欄及び修正申告欄の年月日記載の各日において,同欄
の総所得金額及び納付すべき税額のとおり確定申告及び修正申告をした。(3)

本件各処分及び不服申立手続の経緯
甲府税務署長は,平成20年3月11日,原告に対し,別表2ないし4の更正処分等欄記載の総所得金額及び納付すべき税額並びに過少申告加算税の額が相当であるとして,本件各処分をし,そのころ,これらを原告に通知した。


原告は,平成20年5月9日,甲府税務署長に対し,本件各処分の取消しを求めて異議申立てをしたところ,甲府税務署長は,同年8月8日,上記異議申立てを棄却する旨の決定をし,そのころ,これを原告に通知した。(甲1)


原告は,同年9月5日,国税不服審判所長に対し,本件各処分の取消しを求めて審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成22年9月2日,上記審査請求を棄却する旨の裁決をし,そのころ,これを原告に通知した。(甲2)


原告は,平成22年12月22日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)

3
被告の主張する本件各処分の根拠及び適法性
本件において被告が主張する本件各更正処分の根拠及び適法性に関する主張は別紙2のとおりであり,本件各賦課決定処分の根拠及び適法性に関する主張は別紙3のとおりである(別紙2及び別紙3において用いた略称は,以下の本文においても用いることとする。)。
なお,後記4の争点以外の点や,仮に争点に関する被告の主張が認められた場合に原告の雑所得の総収入金額に算入される課税対象留保金額の算定については,当事者間に争いがない。
4
争点
本件の争点はP1社が措置法40条の4第4項所定の外国子会社合算税制の適用除外の各要件のうちの特定外国子会社等が,その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において,その主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有していること(以下,この適用除外要件を実体基準という。)及びその特定外国子会社等が本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において,その事業の管理,支配及び運営を自ら行っていること(以下,この適用除外要件を管理支配基準という。)を満たすか否かであり,これらに関して摘示すべき当事者の主張は,後記5争点に関する当事者の主張の要旨において記載するとおりである。
5
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点(1)(実体基準の充足の有無)について

(被告)

実体基準の内容及び判断基準
措置法40条の4第4項柱書きは,特定外国子会社等が,その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において,その主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有していることを適用除外要件としている(実体基準)。
適用除外要件として実体基準が規定されたのは,独立企業としての実体を備えているというためには,当然,主たる事業を行うに必要な事務所,店舗,工場その他の固定施設を有している必要があるとの考え方に基づくものであり,物的な側面から独立企業としての必要条件を明らかにしたものである。実体基準を満たすというためには,必ずしも固定資産を自ら所有していなければならないわけではなく,事業を行うに必要な事務所,店舗等を賃借している場合も含む。


本件における当てはめ
P1社各事業年度においてP1社が所有していた固定資産は器具備品(オフィス機器)のみであることから,シンガポールに事務所,店舗,工場その他の固定施設を所有していなかったことは明らかである。
また,P1社とP5社との間の平成17年8月1日付け業務委託契約書(以下平成17年業務委託契約書という。)には,P5社が提供するサービスの内容に関する定めはあるものの,P1社がP5社から賃借する物件や具体的な賃料については何ら定めがない。P1社がP5社内の一区画の賃借の対価を支払うこととしたのはP1社とP5社との間の平成19年7月1日付け業務委託契約書(以下平成19年業務委託契約書という。)からである。
したがって,P1社各事業年度において,P1社がシンガポールで事務所,店舗,工場その他の固定施設を賃借していたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,むしろ,P1社各事業年度のP1社の財務諸表に事務所,店舗等を賃借するための賃借料の計上がないことからすれば,P1社各事業年度において,P1社が事務所,店舗等を賃借していた事実は認められないというべきである。

原告の主張に対する反論
(ア)

原告は,P1社が実体基準を満たしていたことの根拠として,P1
社はP1社各事業年度において,P5社からP5社のレンタルオフィス内に机1台分のオフィススペース(机,椅子,棚,固定電話を含む。)を賃借し,P1社の営業担当者が営業活動を行うために当該オフィススペースを使用していたこと,当該オフィススペースの賃借料は,P1社がP5社に支払っていた業務委託料名目の支払の中に含まれていた旨主張する。
しかしながら,上記イのとおり,P1社とP5社との間の平成17年業務委託契約書に基づきP1社がP5社から事務所等を賃借していた事実は認められない。平成17年業務委託契約書には,P1社がP5社から賃借する物件や具体的な賃料について何ら定めがない一方,P1社各事業年度経過後に作成された平成19年業務委託契約書においては,P1社が,P5社から,平成17年業務委託契約書において記載された業務管理サービスと同様の業務管理サービスを同額の対価で受けることとされ,その業務管理サービスに対する対価とは別に,P1社が,P5社から,1か月当たり500シンガポールドル(以下SGDとい
う。)により建物内の一画を賃借する条項が設けられている(平成19年業務委託契約書・1項)に照らせば,P1社各事業年度においては,業務管理サービスの対価にP1社のP5社に対する賃料が含まれておらず,P1社がP5社からオフィススペースを賃借していなかったことが強く推認されるというべきである。
この点,原告は,P1社とP5社との間の固定施設の賃貸借については,原告及びP4の口頭による合意があり,平成17年業務委託契約書の文言は重視すべきではない旨主張する。しかしながら,P1社とP5社との間の業務委託契約関係を明らかにするために契約書を作成するのであるから,仮に,P1社が賃借した固定施設を継続して使用していたのであれば,契約書の中で,当該賃貸借契約において賃借する物件を特定し,賃料や賃貸借期間を明示してしかるべきである。にもかかわらず,平成17年業務委託契約書には,両者間の賃貸借契約の存在をうかがわせる条項がなく,両者の代表者である原告及びP4が,いずれも平成17年業務委託契約書の内容を理解しないままに署名押印したというのはいかにも不自然である。
よって,P1社が,P1社各事業年度において,P5社からオフィススペースを賃借した事実は認められず,原告の上記主張は失当である。(イ)

原告は,P1社が実体基準を満たす根拠として,P4がP1社のオフィススペースと同フロアに執務室を有する点を挙げるが,P1社がP5社の建物内においてオフィススペースを賃借していなかったことは上記(ア)で述べたとおりである。また,この点をおくとしても,原告がP5社内においてP4が自由に利用可能であったとする執務室というのはP5社の社長室であるから,P5社の社長であるP4が同社の社長室を利用するのは当然であって,当該事実をもって,P1社が実体基準を満たすことの根拠となるものではない。
(ウ)

原告は,P1社がP5社のオフィススペースを賃借していたことを
裏付ける事実として,P1社に派遣された営業担当者がP5社内部のオフィススペースでP1社の営業活動を行っていた旨主張する。
しかしながら,P5社とP1社の間には人材派遣契約書は存在せず,平成17年業務委託契約書にも派遣人員数,派遣期間等の人材派遣に関する項目は一切ないから,P1社に派遣された従業員がいたことを裏付ける的確な客観的証拠は一切ない。さらに,P5社からP1社の営業担当者として派遣されていたとするP5社の従業員であるP6は,P1社の業務を行っていたとする席において,P1社とは全く関係がないP5社の業務も行っていたこと,P1社が賃借していたとするスペースがある部屋には,P5社のマネージャーが配置されているが,スペースの賃借会社の従業員が執務する部屋の中にP5社のマネージャーが配置されているのは不自然であることに照らすと,P6は,P1社の派遣社員としてではなく,本件業務委託契約に基づきP5社の業務としてP1社の業務を行っており,P6の使用していた席は,そもそも賃貸用のスペースではなく,P5社の業務を行うために使用していたP6の専用の業務スペースとみるのが自然である。
したがって,P6らP1社の営業担当者とされる者が,P5社内の一画においてP1社の業務を行っていたことをもって,その一画をP1社がP5社から賃借していたとみることはできない。
(エ)

原告は,P1社がP5社からオフィススペースを賃借していた根拠
として,P1社の看板がP5社の入口に掲げられていたことを挙げる。しかしながら,P5社はP1社の通常業務について包括的に委託を受けていたのであるから,P1社の窓口として,P5社の入口にP1社の看板を掲げるのは当然のことであり,原告の上記主張に係る事情は,必ずしもP1社がP5社からオフィススペースを賃借していた事実を裏付けるものではない。
したがって,P1社の看板がP5社の入口に掲げられていたことをもって,P1社が,P5社からオフィススペースを賃借していたことの根拠とはならない。
(オ)

原告は,P1社が実体基準を満たす根拠として,P1社はP7Pte
Ltd(以下P7という。)のシンガポール国内にある倉庫内に事業上必要なスペースを賃借していた旨主張する。
しかしながら,原告が提出した倉庫の使用料等の請求書の貨物内容の重量寸法欄には,P1社の荷物の重さと面積が記載される
というところ,上記書面の同欄は,いずれも零ないし空欄となっており,実際に当該倉庫にP1社の取引物品が保管されていたか疑わしいといわざるを得ない。
なお,仮に,P1社が上記倉庫を賃借していたとしても,P1社は,シンガポールにおいてその主たる事業を行うに必要な事務所を有していないのであるから,結局,P1社は,シンガポールにおいてその主たる事業を行うために必要と認められる程度の固定施設を有していたとはいえない。

以上によれば,P1社がシンガポールにおいて固定資産を所有していたと認められないことはもちろん,同社が店舗,事務所等を賃借していたと認めることもできないから,P1社各事業年度において実体基準は満たされていなかったというべきである。
(原告)

実体基準の内容及び判断基準
実体基準の内容は認める。主たる事業を行うために必要となる固定施設の規模は,特定外国子会社等の業種業態によって異なり,問題となる特定外国子会社等ごとにその営む事業の内容から,その必要と認められる程度が判断されなければならない。また,特定外国子会社等は,かかる固定施設を有していさえすれば実体基準を満たすのであり,当該固定施設を使用する権原がいかなるものであるかは問われない。まして,特定外国子会社等がかかる固定施設を自ら所有又は賃借していることは要件とされていない。
本件では,P1社がシンガポール国内で,受注発注形態の小規模の卸売事業を営むために必要と認められる固定施設を有していたかどうかが問題となる。


本件における当てはめ
(ア)

P1社の主たる事業はねじ等の精密機械部品の卸売事業であるが,
ASEAN諸国を拠点とする日系企業からの注文を受けてP2社やその関連企業であるP3社に発注を行う受注発注の形態で,限られた顧客を相手に小規模に営まれていた。このような受注発注の形態で行われる小規模な卸売事業を営むには,少数の従業員や役員の執務スペース,業務上必要となる帳簿類の保管スペース,取扱製品の一時保管スペースがあれば足りる。
(イ)a

P1社は,P1社各事業年度において,P5社からP5社のレン

タルオフィス内に机1台分のオフィススペース(机,椅子,棚,固定電話を含む。)を賃借し,P1社が所有するパソコン1台及びモデムを設置し,P1社の営業担当者が営業活動を行うために使用していた。
なお,P1社からP5社に対する賃借料名目での支払は行われ
ず,P1社のP1社各事業年度に係る損益計算書上も,賃借料名
目の計上は行われていないが,P1社がP5社に対して支払っていた業務委託料名目の支払の中には,賃借料相当分も含まれていた。

P4は,P1社のオフィススペースと同じフロアにあるP4の専用の執務室をP1社の居住取締役としての職務の遂行のためにも使用し,P1社は,P5社からオフィススペースと同じフロアにある共用会議室の提供を受け,来客時などに利用していた。


P1社がP5社のレンタルオフィス内にオフィススペースを賃借
し,同所で営業していることを示すため,P5社の入口にはP1社の看板が掲げられていた。


P1社は,P7と契約し,P7のシンガポール国内にある倉庫内にP1社が取り扱う精密機械部品の保管場所として必要なスペースを確保し,P7の書類保管庫においてP1社の古い帳簿書類を保管していた。
なお,P1社の新しい帳簿書類については,P1社が記帳等の経理事務や営業事務等の周辺事務を業務委託していたP5社のオフィススペース内のP1社用の棚に保管されていた。


このように,P1社は,シンガポール国内に,受注発注の形態で行われる小規模の卸売事業を行うために必要かつ十分な固定施設を有しており,実体基準を満たしている。


被告の主張に対する反論
(ア)

被告は,P1社がP5社から事務所等を賃借していた事実が認めら
れない根拠として,平成17年業務委託契約書及び平成19年業務委託契約書の文言を指摘するがそれは誤りである。そもそもP1社とP5社との業務委託契約は,P1社が設立された2000年(平成12年)2月,原告(P1社を代表する取締役)とP4(P5社のマネージングディレクター)との間で,①

オフィススペースの賃貸借,②

業務(経理・総務・営業事務)の業務委託,③

周辺事務

営業担当者の派遣を内

容として口頭での合意により成立したものであり,その後も契約内容に変更はない。他方,平成17年業務委託契約書及び平成19年業務委託契約書は,いずれもP1社の設立から5年以上を経て,しかもP5社がどの顧客に対しても使用できるように作成した定型フォームを利用したものにすぎないから,上記の各契約書の文言に拘泥すべきではない。(イ)

被告は,P1社がP5社から事務所等を賃借していた事実が認めら
れない根拠として,P1社各事業年度に係るP1社の財務諸表上,賃借料の計上がないことを指摘する。
しかしながら,賃料の支払の有無の判断においては,当事者が賃借の対価として金員の授受を行っていたか否かにより判断すべきであり,かかる金員が会計上のいかなる項目で処理されていたかに拘泥すべきではない。P5社は,P1社各事業年度において,自己が提供するサービスの対価を積上げ方式で計算していなかったため内訳は明示されていないが,P1社からP5社へ支払われた業務委託料には,オフィススペースの賃借料,周辺事務の業務委託料及び人材派遣料の3つの性質の支払が含まれていたのであり,P1社は,P5社に対し,オフィススペースの賃借料を支払っていた。
(ウ)

被告は,P5社がP1社から業務委託を受けていたのであるから,
P5社の入口にP1社の看板が掲げられているのはむしろ当然であり,P1社がP5社からオフィススペースを賃借している事実を裏付ける事情とはいえない旨主張する。
しかしながら,P5社の入口に看板が掲げられている会社は,P5社からオフィススペースを賃借している会社のうち看板を掲げることを希望する会社のみであり,P5社が業務委託を受けているだけの会社は含まれていないから,被告の主張は前提を欠く。
(エ)

被告は,P1社がP7から倉庫を賃借していた事実が認められない
根拠として,主として実際にP1社が請求を受けた際の請求書等を提出していないことを挙げるが,原告が書証として提出したものは,P1社がP7から実際に受領した請求書の一部の写しである。

以上のとおり,P1社は,その本店の所在するシンガポールにおいて,その主たる事業である卸売事業を営むために必要と認められる固定施設を有しており,P1社は実体基準を満たす。

(2)

争点(2)(管理支配基準の充足の有無)について

(被告)

管理支配基準の内容及び判断基準
措置法40条の4第4項柱書きは,その特定外国子会社等が本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において,その事業の管理,支配及び運営を自ら行っていることを適用除外要件としている(管理支配基準)。適用除外要件として管理支配基準が規定されたのは,独立企業としての実体を備えているというためには,事業の管理,支配及び運営という企業の機能面に着目しても独立企業としての実体を備えている必要があるとの考え方に基づくものであり,機能的な側面から独立企業としての必要条件を明らかにしたものである。
管理支配基準を満たすか否かは,具体的には,取締役会が本店所在地で開かれている等特定外国子会社等が自ら事業の管理支配を行っているかどうかにより判断すべきであり,管理,支配及び運営を自ら行っているかどうかは,特定外国子会社等の株主総会及び取締役会の開催,役員としての職務執行,会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上判定することとなる。なお,管理支配基準は,必要と認められる常勤役員及び従業員が存在していることを前提としている。そこで,以下各要素について検討する。

(ア)

本件における当てはめ
株主総会について
本件においては,P1社における株主は原告とP4の2名のみであり,原告がP1社の発行済株式総数の99.9%を保有していること,シンガポール会社法上,株主総会の決議については,普通決議が出席株主の議決権総数の過半数,特別決議が出席株主の議決権総数の4分の3の賛成をそれぞれ要することからすれば,P1社の意思決定は,事実上,原告のみによって行われているということができる。本件において,管理支配基準を満たしているか否かを判定するに際しては,P1社の株主総会における意思決定権を掌握している原告が所在する場所において株主総会の意思決定が行われていたと解すべきである。そして,P1社各事業年度内の平成16年6月30日及び平成17年6月30日に開催されたP1社の定時株主総会については,いずれもシンガポール国内において開催された旨の議事録が残されているものの,原告はいずれの日においてもシンガポールには滞在していないのであるから,管理支配基準の判断上,P1社の株主総会の意思決定はシンガポールで行われたとは評価することはできない。

(イ)

業務遂行上の重要事項の意思決定について
平成19年11月2日にされた本件各処分に係る税務調査(以下本件調査という。)における原告の回答内容からすれば,P1社による平成17年8月に行われたP2社の第三者割当増資(以下本件増資という。)の引受けの可否については,原告はP4に相談することなく単独で決定していたことが認められる。また,P2社は,P1社の取締役において本件増資に係る引受けを承認する約2週間前に,臨時株主総会及び取締役会において,P1社を本件増資の引受人とすることを決議していたという本件増資の事実経緯に照らせば,原告は,P1社の取締役において本件増資の引受けを了承する前に,単独で本件増資を引き受けることを決定し,P2社に対し,あらかじめその旨を伝えていたものと考えられる。
なお,仮に,原告がP4に対し本件増資の引受けの可否について相談をしていたとしても,P4は,P1社以外にも複数の会社の役員を兼務していたのであるから,原告を差し置いてP1社の経営を左右するような事業上の重要事項についての決定権限を有していたと考えるのは不自然であり,P1社の発行済株式総数の99.9%を保有する大株主であり,かつ,P1社の取締役であるという原告の立場等に着目すれば,重要事項に関する最終的な決定は原告のみの意思に基づいてなされていたものとみるのが自然である。
以上によれば,原告は,本件増資の引受けというP1社の事業上の重要事項の可否について単独で意思決定していたものと認められる。(ウ)

役員の構成及び職務執行の状況について

a(a)

管理支配基準を満たすためには,その主たる事業を遂行するた

めに必要と認められる常勤役員及び従業員の存在が必要となる。これは,特定外国子会社等が自ら管理,支配及び運営を行うには,当然,その主たる事業を遂行するため常勤役員と役員からの指示を受け業務を行う従業員が存在していることが前提であると解されるからである。
(b)

これを本件についてみると,P1社各事業年度において,原告

は,P2社の常勤専務取締役も務めており,P1社各事業年度の大半の期間はシンガポール国外に滞在し,原告がP1社各事業年度においてシンガポールに滞在していた期間は合計46日間にすぎなかったから,原告は,P1社の通常業務について,ほとんど関与していなかったといえる。
他方で,P4は,P1社の通常業務を全般的に執行していなが
ら,P1社から職務に応じた報酬を一切支払われていなかったところ,P5社はP1社から包括的に業務を受託し,業務委託料を受領し,P5社の執務室においてP1社の業務を行っていたのであるから,P4は,実質的には,本件業務委託契約に基づき,P5社が受託したP1社の業務を行っていたとみるのが自然である。しかも,シンガポールの会社法上,現地法人の取締役のうち少なくとも1名は居住者でなければならないとされており,P4が複数の法人の役員を兼務していることを併せ鑑みれば,P4は,本件業務委託契約に基づくP5社の業務の一環として,P1社の取締役に就任し,P1社の通常業務を遂行していたものというべきである。

従業員及び業務遂行について
P1社には給与を支給されている従業員は存在せず,損益計算書上
も給与の計上は認められない。また,P5社とP1社の間には人材派遣契約書等のP5社からP1社へ従業員を派遣していたことを裏付ける証拠はなく,平成17年業務委託契約書にも人材を派遣する旨の項目もない。
なお,原告がP5社からP1社へ派遣していたと主張するP5社の従業員のP6は,その勤務時間のうち3ないし4割程度の時間をP5社の業務のために割き,残りの時間にP5社の一画においてP1社の業務を行っていたのであり,平成17年業務委託契約書にはP5社へ包括的にP1社の業務等を委託する旨の記載があることやP1社がP5社の代表番号を使用し,P6らがP5社のメールアドレスを使用していたことを併せ考慮すれば,P6及びその後任であるP8は,P1社から業務委託を受けたP5社の社員として,本件業務委託契約に基づき,P1社の業務を遂行していたとみるのが自然である。
以上によれば,P1社各事業年度において,P1社にはその主たる事業を遂行するために必要な従業員が存在していたとみることはできない。

P1社の固定施設の状況
P1社は,その本店所在地であるシンガポールに,その主たる事業である卸売業を行うに必要と認められる事務所を有していなかったのであるから,物理的にもその事業の管理,支配及び運営を自ら行うことはできなかった。


原告の主張に対する反論
(ア)

原告は,株主総会については,その開催地が株主総会による意思決
定の場所となるのであり,P1社各事業年度において開催された各定時株主総会は,シンガポールの会社法にのっとって招集・開催され,議事録が作成されているとして,原告の参加の方法によって開催地がシンガポールであった事実は影響を受けない旨主張する。
しかしながら,管理支配基準を満たすか否かについては,議事録上の株主総会の開催地や,シンガポール会社法上,株主総会がどこで開催されたと解されるかによるのではなく,実際の意思決定がどこで行われたかによって判断すべきである。そして,シンガポール会社法上の株主総会決議に関する定めによれば,事実上,P1社の意思決定は,発行済株式総数の99.9%を有する原告のみによって行われるといえる。したがって,本件において管理支配基準を満たすか否かを判定するに際しては,原告がどこで意思決定を行ったかが考慮されるべきであり,原告の上記主張は失当である。
(イ)

原告は,P1社が管理支配基準を満たしていたことの根拠の一つと
して,P1社各事業年度における顧客の訪問等の営業活動や顧客からのクレーム処理等日々の業務については,平成15年1月から平成17年6月までの期間はP6が,同月から平成17年12月までの期間はP8が,それぞれP5社からP1社に派遣されて遂行しており,P6に対しては,平成15年1月から平成17年6月の間,P1社従業員としての貢献に報いるため,P1社からP5社に対して毎月1000SGDを人材派遣料として通常の支払に上乗せして支払っていたと主張す
る。
原告の上記主張のうち,P5社からP1社にP6及びP8が派遣されていたとの主張については,P1社とP5社の間には派遣期間,派遣就業時間等に関する条項を定めた派遣に係る契約は存在せず,当該事実を直接立証する証拠は存在しない。
また,P6は,P5社の仕事にも勤務時間のうちの3ないし4割程度を割いていたのであり,平成17年業務委託契約書において,P5社がP1社に対して提供するサービスの内容について包括的な記載があることを併せ考慮すれば,P6及びP8は,P1社がP5社から人材派遣を受けた者としてではなく,P1社から業務委託を受けたP5社の従業員として,本件業務委託契約に基づき,P1社の業務を遂行していたと考えるのが自然である。
なお,原告は,P6に対する人材派遣料を通常の支払に上乗せして支払っていたと主張する金員については,P1社の損益計算書においては下請業者費用(sub-contractors'fee)として計上されていることからすれば,P1社は業務委託料のうちP5社がP1社の業務を遂行したことへの対価に相当する部分を別途計上したにすぎず,原告の上記主張に係る事情は,P6がP1社に派遣されていたことを基礎付ける事情たり得ないというべきである。
(ウ)

原告は,P1社各事業年度において,P1社の事業に重大な影響を
与える可能性のある事項については,原告とP4が相談の上で決定していた旨主張する。
しかしながら,上記イ(イ)のとおり,原告は,本件増資の引受けについて,少なくともその可否についてはP4に相談することなく決定しており,仮に,原告がP4に対し本件増資の引受けの可否について相談をしていたとしても,本件増資の引受けの可否の最終決定は原告のみの意思に基づいてなされていたものとみるのが自然であるから,原告の主張には理由がない。
(エ)

原告は,P6及びP8は,同人らの使用者たるP5社ではなく,P
1社の取締役である原告及びP4の指揮命令に服していたのであるから,P5社は,両名をP1社に派遣していたものである旨主張する。しかしながら,P6及びP8は,本件業務委託契約に基づくP5社の業務としてP1社の業務を遂行していたのであるから,かかる業務についてP4から指揮命令を受けていたとすれば,それはP5社の取締役としての立場に基づく指揮命令であったと解すべきである。また,原告がP1社各事業年度においてほとんどシンガポールに滞在せず,P5社にP1社の業務を包括的に委託し,P1社の通常業務にはほとんど関与していなかったことに照らせば,原告がP1社の通常業務について従業員を直接指揮命令することを予定する人材派遣契約を締結したとはおよそ考え難い。そうすると,仮にP6らが原告から指揮命令を受けることがあったとしても,それは業務委託者からの事実上の指揮命令であったと解すべきである。
したがって,P6らがP1社の取締役である原告及びP4の指揮命令に服していた旨の原告の上記主張は理由がないというべきである。なお,仮に,P1社にP5社の従業員が派遣されていたとしても,当該従業員とP1社との間に雇用関係は存在しないのであるから,いずれにしてもP1社には,従業員は存在しなかったといえる。

以上によれば,P1社は,重要な意思決定機関である株主総会における意思決定がその本店所在地国において開催されているとはいえず,本来であればそこで行われるべき重要な意思決定については原告がシンガポール国外において行っていたこと,業務遂行上の重要事項については原告がシンガポール国外において意思決定を行っていたと認められること,原告及びP4の2名で決定すべき事項についても実質的に原告が決定していたと認められること,役員の職務についても原告は専らシンガポール国外において執行し,P4は業務委託を受けたP5社の一員としてP1社の日常業務を行っているにすぎないこと,P1社には常勤役員及び従業員が存在せず,同社の業務は業務委託先であるP5社の従業員が遂行していたと認められること,P1社はシンガポールに固定施設を有していないこと等を考慮すれば,P1社はその発行済株式総数の99.9%を保有している原告の強い管理,支配の下に置かれており,シンガポールにおいて,独立した企業としてその事業の管理,支配及び運営を自ら行っていたとはいえないのであるから,P1社はP1社各事業年度において管理支配基準を満たしていない。

(原告)

管理支配基準の内容及び判断基準
管理支配基準の内容は認める。管理支配基準の充足の有無の判定に際し,特定外国子会社等の重要な意思決定が行われた場所,役員としての職務執行,会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所その他の状況が勘案されることは認めるが,その余は争う。上記に掲げた事項は,あくまで管理支配基準の充足の有無を判定する際に総合考慮される諸要素の例示にすぎず,上記の全ての行為が特定外国子会社等の本店所在地国等で行われることを要件としているわけではない。

本件における当てはめ
(ア)

株主総会について
P1社各事業年度において開催された定時株主総会はいずれもシンガ
ポールにおいて,シンガポールの会社法にのっとって招集・開催され,議事録が作成された。原告の参加の方法によって開催地がシンガポールであった事実は影響を受けない。上記定時株主総会においては,P1社各事業年度の決算の承認と,任期が満了した役員の再任が行われたが,P1社各事業年度には,上記の事項以外に特に株主総会による意思決定が必要となるような重要事項は生じなかった。
(イ)

重要な意思決定について
P1社の定款上,シンガポールの会社法によって株主総会で決議する
ことが要請されている事項以外については,全て取締役が決定する権限を有し,P1社には取締役会という機関は存在しない(P1社附属定款75条)。そして,シンガポールの会社法上,取締役による会議の招集手続等については特段の規定は存在せず,P1社の定款上,取締役が会議を開くこと自体は義務付けられていないから(P1社附属定款81条),原告とP4が協議して決定を行えば,それがP1社の取締役の意思決定となり,両名による協議や決定が行われた場所が,その意思決定が行われた場所となる。P1社各事業年度において,本件増資の引受けに係る意思決定を始めとして,P3社の増資の引受けの可否や規模等P1社の事業に重大な影響を与える可能性のある事項については,緊急の場合を除き,基本的には原告がシンガポールに赴き,2人で会議や打合せを行って意思決定していた。
(ウ)

P4による業務上の意思決定と業務遂行について
P1社における意思決定のうち,重要事項であっても各取締役に権限
が委任されている事項については,それぞれの取締役が適宜決定を行っていた。そして,P1社のシンガポールの現地法令の遵守の確保,税務申告等に関する事項,P1社の経理や資金管理に関する事項,シンガポール国内における販売活動,P5社から派遣された営業担当者の指揮監督その他の日常業務の執行に関する管理・運営等,P1社の業務上の意思決定の多くはシンガポール在住のP1社取締役であるP4に委ねられ,その権限は実際に行使されていたが,このようなP4による重要事項の決定及びその権限の行使は,いずれもシンガポールで行われており,原告のシンガポール滞在日数が限定されていても,P1社はシンガポールで何ら問題なく運営されていた。
(エ)

日常業務の遂行について
P1社各事業年度における顧客の訪問等の営業活動や顧客からのクレ
ーム処理等日々の業務については,P5社から派遣されたP6及びP8がP1社の従業員として行っていた。両名は,これらの日常業務をP1社がP5社から賃借したP5社のレンタルオフィスのオフィススペースで行っていたから,かかる日常業務の遂行場所がシンガポールであることはいうまでもない。
(オ)

会計帳簿の作成・保管等
P1社の会計帳簿は,シンガポールにおいて作成され,古いものはP
7のシンガポール国内の書類保管庫に,新しいものは周辺事務業務を委託していたP5社のオフィススペース内のP1社用の棚に保管されていた。
(カ)

以上のとおり,P1社では,その重要な意思決定も日常的な業務の
遂行もP1社の役員及び従業員によってシンガポールで行われており,会計帳簿の作成・保管等もシンガポールにおいて行われている。P1社は,その本店所在地国であるシンガポールにおいて独立した法人として,その事業の管理支配及び運営を自ら行っており,管理支配基準も満たす。

被告の主張に対する反論
(ア)

被告は,原告は,事実上,P1社の株主総会における意思決定権を
掌握しているから,原告がどこで意思決定を行ったかが考慮されるべきであるところ,P1社各事業年度において,原告の意思決定は,専らシンガポール国外で行われていたとして管理支配基準を満たさない旨主張するが,被告の主張は,個々の株主と株主総会という会社の機関を同視するものであり,失当といわざるを得ない。
(イ)

被告は,P1社の事業上の重要事項については,P4が決定権限を
有しておらず,原告が1人で意思決定していたと考えるのが自然であると主張する。被告は,上記主張の理由として,原告がP1社の発行済株式総数の99.9%を保有していること及びP4がP1社以外に7社の役員を兼務していることから,P4が原告を差し置いて重要事項の決定権を有していたと考えるのは不自然であると主張するが,被告の根拠とする事情は,いずれも取締役としての権限分配や役割分担には関わりのないものであり理由がない。
(ウ)

被告は,平成17年8月に行われた本件増資の引受けについて原告
が単独で意思決定したと認められることを管理支配基準を満たさない根拠として主張する。
しかしながら,本件増資の引受けの可否はシンガポールの法制やP1社のキャッシュフローの状態にも関わるため,それらを十分に把握していない原告が単独で決定することは不可能であった。本件調査時の聞取り結果は,処分行政庁の内部文書にすぎず,原告の発言の全てが記録されたものではなく,その内容も不正確である。
本件増資の引受けに際しては,原告がシンガポールに赴いた際に,P4との間で,P1社がP2社の増資を引き受けることについて基本的には合意したものの,その後,正式にP2社から本件増資の引受けの依頼があった際は,P1社の財務を担当していたP4が引受可能な金額の上限を判断して本件増資の引受額を決定したのであり,本件増資の引受けは,P1社の取締役として原告とP4が主としてシンガポールにおいて2人で話し合って決定したものである。
(エ)

被告は,P4がP5社のマネージングディレクターとして,P1社
の通常業務について全般的な決定権限を有し,業務を遂行していたことを管理支配基準を満たさない根拠として主張し,その理由として,P4がP1社から取締役としての報酬を受け取っておらず,P4がマネージングディレクターを務めるP5社が平成17年業務委託契約書に基づいてP1社の業務を包括的に受託していることから,P4は平成17年業務委託契約書に基づく業務の遂行としてP5社の役員としてP1社の通常業務を行い,その対価を得ていたと考えるのが自然であると主張する。
しかしながら,P4がマネージングディレクターを務めているP5社がP1社から業務の委託を受けることとP4が個人としてP1社の取締役に就任することは別の問題であり,P4がP1社から個人として役員報酬を受け取るかどうかとP5社がP1社から業務受託の対価を受け取ることとは無関係である。P4は,P5社が業務委託を受けている会社のうち複数の会社の取締役に就任しているが,P4が取締役に就任するのは,P4が個人として当該会社の経営について責任が取れる会社に限られ,各会社の業績等により取締役としての報酬を受け取っている社と受け取っていない社がある。P4がP1社の取締役に就任したのは,友人である原告に依頼されたためであり,P1社各事業年度において役員報酬を受領せずにその職務を遂行していたのは,P1社の業績がまだそれほど安定しておらず,同じ取締役である原告も報酬を受け取っていなかったからにすぎない。
(オ)

被告は,P6及びP8は,P5社からP1社に派遣されていたので
はなく,P1社から業務委託を受けたP5社の従業員として,P1社の業務を遂行しており,P1社には従業員が存在していなかったことを管理支配基準を満たさない根拠として主張する。被告は,上記主張の根拠として,①

P1社各事業年度に係るP1社の財務諸表上,従業員に対

する給与は計上されておらず,原告が本件調査において給与を支給されている従業員がいないと答えたこと,②

派遣契約が文書化されておら

ず,平成17年業務委託契約書の文言が,P1社がP5社に包括的な業務委託を行っているように読み得ること,③

P1社がP5社の電話及

びFAX番号を使用しており,P1社の営業担当者の名刺に記載されたメールアドレスがP5社のものであること,④

原告が本件調査におい

て原告がP1社の業務についてP5社に丸投げであると答えたことを挙げるが,以下のとおり被告の主張する根拠はいずれも誤りである。a
P1社の営業担当者はP5社から人材派遣を受けた者であるから,P1社において営業担当者の給与は計上されておらず,P1社が直接給与を支払う従業員は存在しなかった。P1社のような小規模な会社にとっては,適切な人材を発掘することの困難さやコストの点からみれば,人材派遣を受けることが合理的な選択であったためである。P1社各事業年度においてP1社からP5社に対して支払われていた業務委託料には,従業員の派遣料が含まれており,P1社各事業
年度のうち,平成15年1月から平成17年6月の間は,P6のP1社従業員としての貢献に報いるため,P1社は,P5社に対し,人材派遣料を通常の業務委託料名目の支払に上乗せして支払い,上乗せ金額の全額がP5社からP6に対して支払われていた。被告は,この人材派遣料がP1社の財務諸表上sub-contractors'feeとして計上されていることを理由に,この人材派遣料はP5社がP1社の業務を遂行したことへの対価に相当する部分を別途計上したにすぎないと主張するが,上記の人材派遣料は,P5社ら
P1社に対してsupplymanpowerという名目の人材派遣料として請求されており,当該人材派遣料がP5社からP6にそのまま支
払われた事実を無視するものであり妥当でない。

P1社各事業年度において,P6及びP8がP5社からP1社に派遣されていたか否かを,人材派遣に関する契約書が書面化されているか,平成17年業務委託契約書の文言から営業業務の委託が行われていたと読み得るかどうかで判断するのは誤りである。P1社がP5社に業務委託していたのは周辺事務業務のみであり,営業活動は委託していない。P1社がP5社に委託していた周辺事務業務は,定型的な営業事務(インボイスや注文書の発行等の事務作業)等であり,かかる業務は,P5社の業務受託部門の従業員により機械的に処理されていたが,P6やP8が従事していた営業活動は,顧客の訪問,取引の獲得,仕入価格・販売価格の交渉等の営業活動や顧客からのクレーム処理等を裁量をもって行う業務であるから,業務の性質が異なる。そして,業務処理請負と労働者派遣とは,当該労働者を他人の
指揮命令に服せしめるかどうかの点等で区別されるところ,本件の場合,周辺事務業務に従事するP5社の従業員は,P5社の中間管理職や場合によってP5社のマネージングディレクターとしてのP4の指揮命令に服していたが,委託業務の委託元の取締役である原告による指揮命令には服さず,あくまでも業務処理請負であるのに対し,
P6及びP8は,P1社の営業活動に関し,P5社の指揮命令には服さず,P1社の取締役としてのP4及び原告の指揮命令に服していたのであるから,P1社の営業を担当するため,P5社からP1社に人材派遣されていたものである。

P1社は,固有の電話及びFAX番号を保有せず,P5社の代表番号と同一の番号を使用していたが,顧客からP5社の代表番号に架かってきた電話は,オペレーターにより適切に営業担当者に転送されており,P1社の営業担当者がP5社のメールアドレスを使用していたのは,コストや手間を考慮した単なる事務上の便宜のためにすぎず,顧客らは営業担当者をP5社の従業員ではなく,P1社の営業担当者として理解していたから,これらの事情は,P1社の営業担当者がP1社の従業員でなかったことや,P1社がP5社に業務を丸投げしていたことを示すものではない。


さらに,被告は,本件調査における聞取り結果の記載をもって,原告がP1社の業務についてP5社に丸投げであると答えたかのように主張しているが,原告がそのような発言をしたことはなく,そもそも主張の前提を欠いている。


P1社の株主総会がシンガポールにおいてシンガポールの会社法にのっとって開催されていたこと,P1社の重要な意思決定がP1社の取締役であるP4と原告によって役割分担されながら行われており,業務上の意思決定の多くはシンガポール在住の取締役であるP4が担っていたこと(したがって,原告のシンガポール滞在日数が限定されていても問題ないこと),P1社の営業を含む日常業務はP5社内のP1社の事務スペースでP5社からP1社に派遣されたP6及びP8が遂行していたこと,P1社の会計帳簿の作成・保管等もシンガポールで行われていたことを併せ考えれば,P1社は,シンガポール国内で,受注発注形態の小規模の卸売事業の管理,支配及び運営を自ら行っていたといえ,P1社が,P1社各事業年度において,管理支配基準を満たしていたことが認められる。
第3
1
争点に対する判断
措置法40条の4第1項所定の外国子会社合算税制は,いわゆるタックス・ヘイブン対策税制とも称され,軽課税国(いわゆるタックス・ヘイブン)に所在する子会社等で我が国の株主により支配されているものに我が国の株主が所得を留保し,我が国での税負担を不当に軽減することを規制することにより,課税の実質的な公平を確保することを目的とするものである。外国子会社合算税制は,我が国での税負担を不当に軽減するという租税回避目的での行為を否認するものであるから,軽課税国に所在する子会社等が,当該外国に所在することについて十分な経済的合理性が認められる場合には適用されないこととなり,特定外国子会社等が当該外国に所在することについて十分な経済的合理性を有しているか否かについて,業種ごとに具体的な基準として明らかにしたものが適用除外要件である。本件においては,特定外国子会社等に当たるP1社が措置法40条の4第4項所定の適用除外要件のうちの実体基準及び管理支配基準を満たすか否かが争点となっているところ,課税庁の属する被告側がP1社が上記の各適用除外要件を満たさないことを主張立証する必要がある。
2
前提事実,末尾掲記の各証拠,P4の証言及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(1)

P1社の設立経緯
P2社は,各種ねじ,ボルト,シャフト,マイクロファスナー等の各種冷間圧造部品を中心とする精密機械部品を製造することを目的として昭和48年4月2日に原告の父P9により設立された株式会社である。(甲13・1頁,乙1)


1990年代,主要な顧客であるAV機器,家電,通信機器等の製造業者が海外,特に,ASEAN諸国に製造拠点を設ける動きが加速したため,P2社は,当初は,直接又は当時商社としての活動を中心的に行っていたP5社を通じて日本からASEAN諸国の日系企業に対して製品を販売し,何か問題が生じた場合には原告が出張して対応していた。しかしながら,P2社の競合相手が次々にシンガポールに販売子会社を設立する中,中間業者への手数料分だけ割高になっている印象を顧客に与えたり,顧客に対する機動的な対応ができないという事態を避け,上記の日系企業との取引を獲得し,拡大していくためには,P2社自身の販売拠点をASEAN諸国に設ける必要があった。特に,1990年代半ば,当時VHSビデオデッキの部品について世界市場の25%のシェアを有していた株式会社P10(以下P10という。)がマレーシア及びタイ王国(以下タイという。)に子会社及び工場を有しており,シンガポールにもタイ工場向けの購買拠点を設けていたため,P2社としてはどうしてもP10との取引を拡大したいと考えていた。
また,P2社は,その頃,タイに合弁子会社であるP3社を設立して工場を創業することを検討しており,タイ国外でP3社の製品を販売するための販売拠点が必要となることも見込まれていた。
しかしながら,当時,P2社はASEAN諸国の現地事情には疎く,どこにどのような販売拠点を設立するのがよいか,設立した販売拠点をどのように運営するのがよいか判断する材料や能力を有していなかった。(甲13・2頁,原告本人調書2頁)

原告は,平成7年頃にP4と知り合い,シンガポールに出張の都度,P4と面会し,P4に対し,P2社のASEAN諸国内での販売拠点の設置について相談していた。原告は,法制度,政治的・経済的安定性,地理的事情から,シンガポールがASEAN諸国への販売拠点として最も優れていること,競合他社もシンガポールに販売子会社を設けていたこと,P10のタイの子会社

P11Ltd.(以下P11社という。)がタイ国外
から購入する部品をシンガポールにおいて集中的に購買していたこと,シンガポールであれば,P4及びP4の経営するP5社による様々な支援を得られることから,シンガポールに販売拠点となる新会社を設立することとした。(甲13・3頁,甲15・2,3頁,P4証人調書2頁,原告本人調書2,3頁)

原告は,平成10年から平成11年にかけて,P4に新会社設立についての相談を重ね,P4に対し,新会社の取締役に就任することを要請したところ,P4はこれを了承した。その際,原告とP4は,設立する新会社の経営が軌道に乗るまで,原告及びP4は無報酬で業務に当たることにした。(甲13・3頁,甲15・4頁,P4証人調書9,10頁)


原告は,その後,P9に対し,P2社の販売拠点となる新会社をシンガポールに設立することを提案したところ,P9は,新会社の設立自体には賛成したものの,新会社の業務規模が比較的小さいことと,進出に伴うリスクについて原告に責任を持たせるために,P2社の子会社としてP2社が出資するのではなく,原告自身が出資することを条件とした。(甲13・3,4頁)


原告とP4は,2000年(平成12年)2月3日,それぞれが1SGDずつ出資し,1株ずつ取得してP1社を設立した。P4が出資をしたのは,当時のシンガポール会社法上,会社設立時の株主にシンガポール居住者が1名以上含まれていることが条件とされていたためであり,同年12月15日に行われた7798株の増資については,全て原告が引き受けた。(甲13・4頁,甲15・4頁)

(2)

P4及びP5社について
P4は,1993年(平成5年)10月,1988年(昭和63年)に設立されたものの当時は休眠状態であったP5社を知人から譲り受け,従前の勤務先であるP12株式会社(以下P12社という。)において部品調達業務を行っていた経験を生かし,ASEAN諸国において部品を調達し,日系企業を中心とした商社業務を開始した。その後,P10から依頼されてシンガポール子会社であるP13PteLtd(以下P13社という。)の設立及びその後の運営の支援を行ったことを契機として,他の日本企業からASEAN諸国における部品調達や販売を目的とするシンガポール子会社の設立やその後の運営支援を依頼されるようになり,部品調達業務等の商社業務からシンガポールに進出する日系企業の設立及びその後の運営支援業務(オフィススペースの賃貸,周辺事務業務に関するサービス提供)に主軸を移すようになった。(甲15・1,2頁,乙5,6,P4証人調書2頁)

P5社が提供する業務サポートサービスには,①
賃貸,②

営業周辺業務の支援,③

オフィススペースの

営業担当者の派遣の3種類がある

が,顧客はその中から必要なサービスを選択することができる。ただし,P1社各事業年度の当時,①ないし③の各サービスごとの対価は決められておらず,①ないし③の全てのサービスの提供を受ける場合であっても,その対価は,各サービスごとの対価を積み上げて算定する方式ではなく,サービス全体について包括的に決定されていた。(甲15・2頁,P4証人調書30,31頁)

P4は,P1社各事業年度において,P1社及びP5社と住所を同じくする複数の会社(P13社等の少なくとも7法人)の役員を兼務していたが,それらの会社に対しては,上記イの①ないし③の全てのサービスを提供していた。ただし,P5社が上記の①ないし③のサービスの提供をしている会社であっても,P4は全ての会社について取締役を兼務していたわけではなく,P4が取締役を兼務していたのは,P5社がシンガポールでの法人設立を支援し,周辺事務業務を受託し,P4が会社の事業について知識を有しているなどの事情により自己が取締役として責任を持てると思った会社に限られていたが,会社の業績次第で報酬を受け取っている場合と受け取っていない場合とがあった。(甲15・4頁,同添付資料2,P4証人調書30,31頁)
(3)

P1社の事業規模・取引先
P1社の扱う精密機械部品は,特殊圧造部品や特殊ねじであるため,取引
先となる企業は限定され,汎用性が低く,大量仕入れや量販にはなじまず,P10のシンガポール子会社であるP13社やP10のマレーシア子会社であるP14SdnBhd(Malaysia)(以下P14社という。)等の取引先から受注を得て,P2社及びP3社に対して発注し,出来上がった製品を顧客に納入するという受注発注の形式で行われている。(甲13・4頁,P4証人調書7頁,原告本人調書1,5頁)
P1社各事業年度におけるP1社の顧客数は10社に満たず,売上高合計も平成15年12月期が114万SGD余り(平成15年12月期の円/SGD相場の年平均66.57円で換算すると7588万9800円余り),平成16年12月期が191万SGD余り(平成16年12月期の円/SGD相場の年平均64.03円で換算すると1億2229万7300円余り),平成17年12月期が160万SGD余り(平成17年12月期の円/SGD相場の年平均66.19円で換算すると1億0590万4000円余り)であった(甲10ないし12,乙2・和訳12頁,乙3・和訳12枚目,乙4・和訳11頁,乙47)
(4)

P1社とP5社との間の業務委託契約
原告及びP4は,P1社の設立時に,P1社とP5社との間で,①フィススペースの賃貸借,②
業務委託,③


周辺事務業務(経理・総務・営業事務)の

営業担当者の派遣を内容とする業務委託契約を口頭により

締結し,P1社は,P1社各事業年度において,P5社から上記の①ないし③の各サービスの提供を受けた。(甲13・15,16頁,甲15・12~15頁,原告本人調書3,4頁,P4証人調書12~14頁,原告本人調書3頁)
P5社からP1社に対して提供されるサービスの内容は,平成17年業務委託契約書の作成の前後を問わず,変更はなかった。(本人調書4頁,P4調書14頁)。

P5社に対する業務委託料及び人材派遣料
本件業務委託契約に基づく業務委託料は,2003年(平成15年)1月から2004年(平成16年)12月までが月額2000SGD,2005年(平成17年)1月から同年7月までが月額4000SGD,同年8月から同年12月までが月額5500SGDであった(P1社の財務諸表上は,管理費(administrativecharges)名目で計上されている。)。(甲13・17頁,同添付資料4-1,乙2・和訳19頁,乙3・和訳19枚目,乙4・和訳22頁)
P1社は,P5社に対し,上記の業務委託料に加えて,2002年(平成14年)12月に6000SGDを,2003年(平成15年)1月から2005年(平成17年)6月まで毎月1000SGDを人材派遣料(supplymanpower)として支払った(P1社の財務諸表上は,下請業者費用(sub-contractors'fee)名目で計上されている。)。(甲13・16,17頁,同添付資料4-2,乙2・和訳19頁,乙3・和訳20枚目,乙4・和訳23頁,P4証人調書16頁,原告本人調書9頁)。人材派遣料は,下記(11)ア(ウ)のとおり,P6が営業担当者になってからP1社の業績が好転したために,P6に対する賞与又は給与の上乗せ分の支払を目的とするものであり,P5社からP6に対して同額が支払われた。(甲15・15,16頁,P4証人調書16頁,原告本人調書9頁)

原告とP4は,平成17年8月1日,本件業務委託契約の存在及び本件業務委託契約に基づく業務委託料の金額を明らかにすることを目的として,平成17年業務委託契約書を作成した。平成17年業務委託契約書は,P5社の全顧客に対して利用可能な定型フォームを利用したものであり,次の事項が記載され,P1社を代表して原告が,P5社を代表してP4が各々署名しているが,本件業務委託契約の内容どおりの条項にはなっていない。(甲13・18頁,甲15・17頁,乙46,P4証人調書13頁,原告本人調書4頁)
(ア)

契約の目的(序文)
業務管理者(P5社)は,当会社(P1社)にあらゆる種類の財務上,経
営管理上,業務管理上及びその他の営業活動上のサービス及び顧問サービスを提供することを望んでいる。
P1社は,以下に含まれる契約条件に従って以下に記載するサービスを提供する業務管理者を指定することを望んでいる。
よって,ここに両当事者は以下のとおり相互に合意した。
(イ)

契約の対価(第1条)
P1社がP5社に対して毎月5500SGD(物品・サービス税を除
く。)の月次報酬又は本契約の両当事者が合意するその他の料金を支払うことを考慮して,P5社はP1社に対して,本契約の第3条に更に詳細に記載されている業務管理サービスを提供するものとする。
(ウ)

契約期間(第2条)
本業務委託契約は,2005年(平成17年)8月1日に発効し,本契
約の第7条の規定に従って別段に終了されない限り,また終了されるまで,存続するものとする。
(エ)

サービスの内容(第3条)
本業務委託契約の存続期間中,P5社はP1社に対して以下のサービ
スを履行し提供するものとする。

P1社により要求されることのある又はP1社の事業にとって必要とみなされる全ての財務上のサービス及び顧問サービス。

P1社により要求されることのある又はP1社の事業にとって必要とみなされる全ての経営管理上,業務上及びその他の営業活動上のサービス。


(オ)

相互に合意する全てのその他の経営管理及び顧問サービス。
上述の業務運営サービス以外のサービス(第4条)
P1社により要求される場合,別途の相互に合意する報酬を前提条件
として,P5社は上述の業務運営サービス以外のサービスを提供することができる。

P5社は,新しい建物に本社及びオフィススペースを移転した際,P5社が支払うべき賃借料が大幅に上昇したため,レンタルオフィススペースの賃貸料を増額する必要があり,今後もP5社が支払う賃借料が増額された場合には,レンタルオフィススペースの賃貸料を増額することにより対応できるよう,顧客との間でレンタルオフィススペースの賃貸料を独立して定めることとし,平成19年7月1日,P1社との間で,本件業務委託契約について,平成19年業務委託契約書を作成した。平成19年業務委託契約書には,次の事項が記載され,P1社を代表して原告が,P5社を代表してP4が,各々署名しているが,本件業務委託契約の内容どおりの条項にはなっていない。(乙53,P4証人調書14,15頁,原告本人調書17頁)
(ア)

契約の目的(序文)
平成17年業務委託契約書と同様である。

(イ)

契約の対価(第1条)
P1社がP5社に対して毎月5500SGD(物品・サービス税を除
く。)の月次報酬及び毎月500SGD(物品・サービス税を除く。)の建物内の一画の賃借料,又は本契約の両当事者が合意するその他の料金の支払を対価として,P5社はP1社に対して,本契約の第3条に更に詳細に記載されている業務管理サービスを提供するものとする。
(ウ)

契約期間(第2条)
本業務管理契約は,2007年(平成19年)7月1日に発効し,本契
約の第7条の規定に従って別段に終了されない限り,また終了されるまで,存続するものとする。
(エ)

サービスの内容(第3条)
平成17年業務委託契約書と同様である。

(オ)

上述の業務運営サービス以外のサービス(第4条)
平成17年業務委託契約書と同様である。

(5)

P1社のオフィススペース
P1社は,P5社が賃借するビルのレンタルオフィス内の机1台分のオフィススペース(机,椅子,棚,固定電話を含む。)に,P1社が所有するパソコン1台及びモデムを設置していた(甲4,甲13・6頁,甲14・3頁,同添付資料1,2,甲15・12,13頁,同添付資料11,乙7,P4証人調書4,5頁,原告本人調書5頁)。
この机1台分のスペースは,2002年(平成14年)後半から2005年(平成17年)6月末まではP6が,同年6月から2006年(平成18年)6月まではP8が,P1社の営業活動を行うために使用していた。(甲13・6,9頁,甲15・13頁,P4証人調書5頁,原告本人調書6頁)


P1社のオフィススペースと同じフロアには,P4の専用の執務室があり,この執務スペースは,P5社の業務やP4が取締役を兼務する会社の業務のほか,P1社の職務の遂行のためにも使用されていた。(甲5,甲13・6,7頁,甲14添付資料2,甲15・12,13頁,P4証人調書4,6,23頁,原告本人調書・7頁)

P5社のレンタルオフィスの顧客であるP1社には,共用スペースとして会議室が提供されており,原告やP1社の営業担当者は,来客があった際にはこの会議室を利用していた(甲13・7頁,甲14・4頁,同添付資料2,P4証人調書6頁,原告本人調書7頁)


P1社各事業年度において,P5社のオフィスの入口には,P1社の看板が掲げられていた。なお,看板の設置には費用が掛かるため,P5社は,周辺事務業務の委託又はオフィススペースの賃借をしている会社の中で希望する会社についてのみ看板を設置している。(甲6,甲13・7頁,甲14・4頁,同添付資料3,甲15・13頁,P4証人調書6,7頁,原告本人調書6頁)

(6)

P1社の取扱製品の保管場所
P1社は,受注発注の取引であるため,滞留在庫を抱えることは稀である
が,製品が到着してから各顧客に出荷するまでの数日から1週間程度は,P1社が製品を保管し,製品及び顧客ごとに随時入荷又は出荷をする必要があることや,欠陥のある製品が返品された場合にそれらを保管する必要があることから,P7と契約し,P7のシンガポール国内にある倉庫内にP1社が取り扱う精密機械部品の保管場所を確保し,必要なスペースを賃借していた。(甲13・7,8頁,同添付資料1-1から1-3,3-1から3-3)
(7)

P1社の帳簿書類の保管場所
P1社は,シンガポールの法令・規則・基準に従った会計帳簿を作成し,
新しい帳簿書類については,P1社が経理事務及び営業事務を委託していたP5社のオフィススペース内のP1社用の棚に保管し,古い帳簿書類については,P7の書類保管庫内に保管していた。(甲9の1ないし3,甲13・7頁,甲14・4頁,同添付資料2,甲15・12頁,P4証人調書6頁,原告本人調書7頁)
(8)

P1社の株主総会
シンガポール会社法及びP1社の定款の定め
シンガポール会社法上,株主総会決議には,普通決議と特別決議とがあり,普通決議については出席株主の議決権総数の過半数の賛成を,また,特別決議については出席株主の議決権総数の4分の3の賛成を要するものとされている。(乙52)


P1社の株主総会の状況
P1社は,2004年(平成16年)6月30日,2005年(平成17年)6月30日,2006年(平成18年)6月30日,いずれもシンガポール国内において株主総会を開催し,P4はいずれの株主総会にも出席したが,原告は,2004年6月30日及び2005年6月30日にはシンガポールに滞在しておらず,電話で参加するか,事前にP4に一任していた。(甲15・10,11頁,乙44,51の4,5,P4証人調書12頁,原告本人調書13頁)

(9)

原告及びP4の間の権限分配
原告とP4は,P1社設立当初から,それぞれの居住地や専門性を考慮して,取締役として役割分担することを合意したが,2011年(平成23年)3月まで,職務分掌・権限規程を作成したことはなかった。(甲13・10,11頁,甲15・6頁,P4証人調書8頁)


P4は,シンガポールに在住し,シンガポールの現地事情や経済動向に精通していることから,P1社がシンガポールの法令・規制を遵守するために必要な各種届出や税務申告を行い,必要に応じて税務当局や監査法人と交渉していた。
また,P4は,P1社の経理や銀行取引及び為替管理を含む資金管理を行い,米ドル口座,日本円口座,SGD口座の各残高を把握しつつ,各種の支払をチェックして承認し,為替相場を見て米ドルを日本円に交換するよう指示を出したりしていたが,通常の銀行取引については,無制限の権限を有していた。P4は,実際に,下記(10)オ(イ)のとおり,本件増資の引受けの可否について,1600万円を上限額とし,かつ,P1社の資金繰りの都合上,支払時期を1か月遅らせるよう指示した。(甲13・11頁,甲15・7頁,P4証人調書9頁,原告本人調書9,10頁)さらに,P4は,シンガポール国内におけるP1社の新規顧客の開拓を役割としており,実際に,P1社の大口取引先であるP13社,P14社等の複数の顧客を獲得した。(甲13・11頁,甲15・8頁,P4証人調書24頁)
P4は,上記のほか,取締役の決定や株主総会の開催等のシンガポール会社法及びP1社の定款上必要な行為については,P1社から総務事務を受託していたP5社の担当者に指示してカンパニーセクレタリー会社に依頼して財務諸表・事業報告の承認や株主総会の準備・招集に必要な書類を作成させたり,営業担当者に対する指揮監督を行い,日常的な営業活動や顧客からのクレーム対応,売掛債権の督促・回収などの日常業務を執行していた。(甲13・11頁,甲15・8,10頁)

原告は,日本に居住し,P1社各事業年度において,P1社の取扱製品を製造しているP2社の取締役でもあったことから,主としてシンガポール国外における新規顧客を開拓し,シンガポールに滞在中は,P4や営業担当者が開拓したシンガポール国内の顧客に対して挨拶をして営業活動を支援し,営業担当者から連絡を受けて,P2社及びその関連会社であるP3社との間で,どの工場が顧客に対する見積りをすべきか,製品に欠陥があった場合の処理費用の負担をどうするか等の事項について協議,交渉及び連絡をし,取引先からの重大なクレームを受けた場合には,営業担当者と共に現場に出向いて謝罪する等の対応を行っていた。(甲13・12頁,甲15・8,9頁,乙40ないし43,原告本人調書10頁)。なお,原告は,P1社各事業年度において,P1社平成15年12月期は合計24日,P1社平成16年12月期は合計10日,P1社平成17年12月期は合計12日,シンガポールに滞在していた。(乙44)エ
原告とP4は,2011年(平成23年)3月,職務分掌・権限規程を作成した。職務分掌・権限規程によれば,居住取締役の分掌事項は,①シンガポールの法令の遵守の確保,②
務当局との交渉,③
びその監督,④
び監督,⑥
執行,⑨
渉,⑩

シンガポールにおける納税及び税

事業計画案及び予算案の作成・検討,予算の実行及

人事に関する決定及び承認,⑤

監査法人との交渉及び対応,⑦

従業員の指揮,命令及

銀行取引,⑧

日常業務の

総務,経理,営業事務に係る業務の外部委託に関する協議・交
シンガポール国内における新規顧客の開拓,⑪

シンガポール国

内における経済情勢,市場動向,取引環境の調査,分析及び報告とされ,非居住取締役の分掌事項は,①
拓,②

シンガポール国外における新規顧客の開

P1社及びその関連会社との協議,交渉及び連絡業務,③
からの重要なクレームへの対応,④

顧客

事業計画案及び予算案の作成・検討

とされている。(甲7)
(10)

P1社の重要事項の決定
P1社の定款の定め
P1社附属定款(ARTICLESOFASSOCIATIONOFP1PTELTD)75条は,シンガポールの会社法により株主総会で決議することが要請されている事項以外については,全て取締役が決定する権限を有する旨定めている。(甲19)
シンガポール会社法上,取締役による会議の招集手続等に関する規定は設けられておらず,P1社附属定款81条は,取締役は,会社の運営に関して会議を開催することができるとしているものの,会議の開催自体は義務付けておらず,会議をどのように規律するかについても取締役の裁量に委ねている。
書面決議とは,会議の開催に代えて書面による意思表示により決議を行ったとみなすものであり,P1社附属定款92条においても,会社の取締役の過半数が署名した書面による決議は,その決議が正当に招集され開催された取締役の会議で可決されたのと同様に有効であるものとし,このような決議はなんであれ,1人又はそれ以上の取締役によりそれぞれ署名された同様な形式のいくつかの文書類から構成することができる旨規定されている。(甲19)

取締役による書面決議
P1社各事業年度において,平成16年3月4日及び平成17年5月12日に,監査会計書類の承認,株主総会の招集・開催に関して取締役2名が決定した旨の各取締役の決議書,同年7月27日にP2社に対する投資(本件増資の引受け)を承認する旨の各取締役の決議書が作成されている。なお,これらの書面作成日のうち,原告がシンガポールに滞在していたのは,平成16年3月4日のみである。(乙44,乙51の1ないし3)


P1社においては,経営に重大な影響を及ぼし得る事項や多額の投資を行う場合には,原告及びP4が協議して決定することとしていた。経営に重大な影響を及ぼし得る事項としては,重大なクレーム処理に際して顧客との間でP1社が大きな損失を被るような合意をする場合や,大口の取引先の獲得が考えられるが,P1社各事業年度においては,上記のような経営に重大な影響を及ぼし得る事項は発生しなかった。
なお,P1社が行う投資として考えられるのは,関連会社であるP2社及びP3社が行う増資の引受けをするか否かである。(甲13・13頁,P4証人調書10,11頁,原告本人調書20頁)


原告は,平成16年10月末頃,P4に対し,P3社の行う増資を引き受けることが可能であるかどうか,可能であるとしてその金額はいくらかを相談したが,最終的に,P2社が増資を引き受けることとなり,P1社は増資を引き受けなかった。(甲13・13頁,同添付資料5,甲15・9,10頁,P4証人調書11,26頁,原告本人調書10,11,14頁)
オ(ア)

原告は,平成17年初め頃,P2社から,資金繰りが悪化したこと
を理由としてP1社が本件増資の引き受けることが可能かどうか打診された。原告は,同年3月頃,シンガポールに出張した際,P1社の資金繰りやシンガポールの法令・規則等の関係での問題の有無を確認するため,P4に対して相談したところ,P4は,シンガポールの法令・規則上は問題はないが,株式の券面額で増資を引き受けることについては,日本の税法上の問題がないかどうかを確認する必要がある旨指摘した。原告は,P2社の部長に対して確認したところ,税法上の問題はない旨の回答を得たが,その後しばらく,P2社から正式な依頼はなかった。(甲13・13頁,P4証人調書11,12,27~29頁,原告本人調書11,15,18頁)
(イ)

原告は,平成17年7月頃,P2社からP1社が本件増資の引受け
をするよう正式に依頼されたため,P4に対して,P1社が本件増資を引き受けることが可能か,可能であるとしてその金額はいくらかについて尋ねた。P4は,本件増資の引受けは法令上の問題がないが,引受可能な上限金額は1600万円であり,資金繰りの関係から,同年8月以降に支払時期が到来するよう引受けの時期を変更するよう指示を受けた。(甲13・13,14頁,原告本人調書11,12,14,15頁)
(ウ)

P2社は,平成17年7月14日,取締役会を開催し,増資株式数
を3万2000株,1株当たりの価額を500円とし,P1社のみを引受人とする第三者割当増資(本件増資)を行うことを全会一致で可決し,その後,臨時株主総会を開催し,本件増資を行う旨の特別決議を行った。当該取締役会及び臨時株主総会には原告も出席し,臨時株主総会では賛成の決議に加わった。(乙8,56)
(エ)

P2社は,平成17年7月25日,P1社がP2社に対し当該株式
を引き受けるための株式申込証を作成した。(乙57,本人調書16頁)(オ)

P1社の取締役である原告及びP4は,2005年(平成17年)
7月27日付けのP2社に対する投資を承認する旨の取締役決定書を作成した。(乙51の3)
(カ)

P1社は,平成17年7月27日,P15銀行P16支店に対し

て,上記株式の取得に係る1600万円の送金を依頼した。(乙9の1)(キ)

本件増資により,P2社の発行済株式総数は5万2000株とな

り,P1社が本件増資により3万2000株を取得したため,P2社の発行済株式総数の50%超を保有する筆頭株主となった。(乙1)(11)

P1社の日常業務
営業活動
(ア)

P1社は,小規模な卸売業であることからくるコスト面での制約や
適切な人材を自前で発掘することが困難であることから,営業担当者を直接雇用することはせず,P5社から派遣を受けることとした。P1社は,受注発注の卸売業であるため,顧客の新製品の製造や既存製品のモデルチェンジの機会を捉えて,P2社やP3社から見積りを取って顧客に提示することにより,新規取引の獲得や取引の拡大を目指していた。営業担当者の業務の中心は,取引先の管理,情報収集,新規取引拡大のための見積りの提案,クレーム処理などであった。営業担当者は,P4から全般的な監督を受け,原告からP2社やP3社の会社の概要や製品に関する技術的な事項について直接指導を受けていたが,P1社の利益率を10%以上確保する限り,P2社やP3社からいくらで仕入れ,顧客にいくらで売るかについての裁量権を有していた。(甲13・5,6,9,14頁,甲14・5~7頁,甲15・14頁,原告本人調書5,8,9頁)
なお,営業担当者は,P1社の業務に支障のない範囲において他の業務を行うことを禁じられていなかったため,人材派遣料はかなり低額に抑えられていたが,営業担当者がP5社の業務受託部門(パーチェスグループやアカウンティンググループ)の担当者を兼務したことはなく,例えば,P6は,顧客からP1社宛ての発注について,注文書の作成やP2社等への発注などの作業をしたことはなく,また,営業業務の内容について,P5社の中間管理職に対し報告等をしていたことはなく,指揮監督を受けたこともない。(甲13・9頁,甲14・6頁,甲15・14頁,P4証人調書33頁)
また,派遣先ごとのメールアドレスを取得するのは煩雑であったため,P5社から派遣された従業員は,○のメールアドレスを使用していたが,P6らの営業担当者が使用していた名刺には,P1社のロゴが記載されていた。(甲8,甲14・7頁,甲15・15頁)
(イ)

P1社各事業年度におけるP1社の営業業務は,前記のとおり,2
002年(平成14年)後半から2005年(平成17年)6月末まではP6が,同年6月から2006年(平成18年)6月まではP8がそれぞれP5社から派遣されて担当していた。これらの営業担当者に対する指揮監督は,P4及び原告が行っていた。(甲15・8,14頁,P4証人調書16頁)
(ウ)

P6は,1999年(平成11年)にP5社に入社した当初から2年
半ほどの間は商社業務を担当するグループで韓国関連業務のみを担当した。その後,2002年(平成14年)後半からP1社の営業事務も同時に担当するようになったが,2005年(平成17年)6月にP5社を退社した。P6は,平均すればP1社の仕事に6ないし7割,P5社の韓国関連の仕事に3ないし4割程度の時間を割いており,韓国関連の仕事の報告・相談についてはP5社のマネージャーに対して行っていた。なお,P6は,P1社が賃借していたオフィススペースにおいて,P5社の韓国関連の仕事とP1社の営業事務の両方を行っていた。(甲14・2,3,10頁,同添付資料1,2,P4証人調書29頁)
P6は,原告に対して取扱製品の構造や特徴等について質問するなど熱心に勉強し,営業活動も優れており,P1社の売上げ増加に貢献したため,原告は,P4と相談の上,P6に対する賞与に充てるため,2002年(平成14年)12月には,P1社からP5社に対して,人材派遣料(supplymanpower)の名目で6000SGDを支払い,P5社は同額をP6に対して支払った。2003年(平成15年)1月から2005年(平成17年)6月までの間も,P1社からP5社に対し,上記の人材派遣料の名目で毎月1000SGDを従前の業務委託料に上乗せして支払い,P5社がP6に対し,同額を給与に上乗せして支払った。(甲13・9,10頁,同添付資料4-1,4-2)
(エ)

P6の後任であるP8は,P5社の取締役社長であるP4の秘書業
務とP1社の営業事務を兼務していたが,P6と同様に,P1社の営業活動,クレーム処理,顧客対応全般を担当した。(甲13・15頁,P4調書33頁)

周辺事務業務
P1社は,本件業務委託契約に基づき,注文書の作成や請求書の作成等の営業事務,会計帳簿類の作成事務,総務事務をP5社に委託しており,受発注関連の営業事務はP5社のパーチェスグループが,決裁事務,経理処理等はP5社のアカウンティンググループが,各部門の管理職であるマネージャーの指揮監督を受けて受託業務として上記の各業務を担当していた。(甲13・16頁,甲15・11頁,P4証人調書15,33頁)(12)

P1社の経理の状況
人件費
P1社は,P1社各事業年度において,役員報酬及び従業員の給与を計上していない。(乙2・和訳19,20頁,乙3・和訳19,20枚目,乙4・和訳22,23頁)


賃借料
P1社各事業年度において,P1社は事務所等を賃借するための賃借料を計上していない。(乙2・和訳19,20頁,乙3・和訳19,20枚目,乙4・和訳22,23頁)

3
争点(1)(実体基準の充足の有無)について
(1)

措置法40条の4第4項柱書きは,特定外国子会社等が,その本店又は
主たる事務所の所在する国又は地域において,その主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有していること(実体基準)を適用除外要件としているところ,適用除外要件として実体基準が規定されたのは,我が国に所在する親会社等から独立した企業として実体を備えているというためには,主たる事業を行うために必要と認められる事務所,店舗その他の固定施設を有している必要があるとの考え方に基づくものであり,実体基準は,物的な側面から独立企業としての必要条件を明らかにしたものである。
上記のとおり,実体基準が物的な側面から独立企業としての実体があるかどうかを判断する基準であるとすれば,固定施設を有しているというためには,特定外国子会社等が賃借権等の正当な権原に基づき固定施設を使用していれば足り,固定施設を自ら所有している必要はないものと解される。また,実体基準を満たすために必要な固定施設の規模は,特定外国子会社等の行う主たる事業の業種や形態により異なると考えられるため,特定外国子会社等が使用している固定施設が必要な規模を満たしているか否かについては,特定外国子会社等の行う主たる事業の業種や形態に応じて判断されるべきである。
(2)ア

前記2(5)のとおり,P1社は,P5社が賃借するビルのレンタルオフ
ィススペースのうちの机1台分のスペース(机,椅子,棚,固定電話を含む。)をその営業活動のために使用し,P4はP5社の専用の執務室においてP1社の取締役としての業務を行い,原告やP6ら営業担当者は,必要に応じてP5社の会議室を利用していたことが認められる。

この点,被告は,平成17年業務委託契約書において,オフィススペースの賃貸に関する条項が設けられておらず,P1社の会計帳簿上も,P5社に対する賃借料名目の支払がなく,P5社に対する支払は全て業務委託料とされていることを根拠として,P1社はP5社のレンタルオフィススペースを賃借していなかった旨主張する。
しかしながら,前記2(4)ウ及びエのとおり,オフィススペースの賃貸に関する条項は,平成17年業務委託契約書には設けられておらず,平成19年業務委託契約書において初めて設けられたものであるが,本件業務委託契約の内容は,P1社の設立後からP1社各事業年度までの間,さらには,平成19年業務委託契約書の作成の前後を通じても変更がなかったことがうかがえるところ,本件業務委託契約は口頭で契約が締結され,平成17年業務委託契約書は,P1社とP5社との間の本件業務委託契約が成立してから5年程度経過後に作成されたものであり,前記2(4)ウのとおり,その書式は,P5社と取引のあるどの会社にも使用できるよう定型の書式を用いたものであることが認められ,契約書作成の目的は本件業務委託契約の内容を正確に反映させることにはなかったものと認められること,平成19年業務委託契約書の作成時には,前記2(4)エのとおり,P5社の建物の賃借料が高騰したことに対応するために,レンタルオフィススペースの賃貸料を上記の建物の賃借料に連動させることができるようにする必要があったものと認められることに照らすと,前記2(4)ウ及びエのとおり,平成17年業務委託契約書及び平成19年業務委託契約書は,必ずしも本件業務委託契約の内容そのものが正確に記載されたものではない可能性が高い。また,前記2(2)ア及びイのとおり,P5社が本件業務委託契約締結当時,シンガポールにおいて子会社等を設立する日系企業等への業務サポートサービスの提供を始めてそれほど間もないころであって,各サービスの対価を定めた上で積上げ方式で業務委託報酬を算定する方式にしていなかったことが認められるから,オフィススペースの賃借料は,業務委託報酬に含めて支払われていたものと認められる。したがって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。

また,被告は,P6ら営業担当者は,P5社から派遣されてP1社の業務を行っていたのではなく,P5社の受託業務を行っていたにすぎない旨主張する。
しかしながら,上記イのとおり,平成17年業務委託契約書は,本件業務委託契約の内容を正確に反映させることを目的として作成されたものではないから,営業担当者の派遣に関する事項が平成17年業務委託契約書に存在しないことは,営業担当者が派遣されていなかったことを推認させる事実とはいえない。むしろ,前記2(11)ア(ア)のとおり,営業担当者は,P4及び原告から指揮監督を受けることはあっても,P5社の中間管理職に対する報告等は義務付けられておらず,指揮監督も受けていなかったことが認められるから,P1社の営業活動をP5社の業務としてではなく,P1社の業務として行っていたものと認めるのが相当である(この点,被告は,P1社の営業担当者の使用していたオフィススペースとP5社のマネージャーの配置関係から,P6ら営業担当者がP5社のマネージャーによる指揮監督を受けていた旨主張するが,単なる推測の域を出るものではなく採用することはできない。)。また,前記2(4)イ及び(11)ア(ウ)のとおり,P6がP1社の営業担当者であった間は,P6のP1社の業績好転への貢献に報いるために,P6に対する賞与又は増額された給与の原資にするために,P1社からP5社に対する業務委託報酬が増額されて支払われていることも,人材派遣であることを強く推認させるというべきである。したがって,前記2(11)アのとおり,P6ら営業担当者は,P5社から派遣されてP1社の営業活動を行っていたものと認められ,この認定に反する被告の主張を採用することはできない。

前記2(6)及び(7)のとおり,P1社は,取扱製品を保管するため,P7に必要なスペースを賃借し,会計帳簿類は新しいものはP5社の周辺業務を行う担当部署に保管し,古いものはP7に保管していたことが認められる。
なお,P1社がP7から倉庫を賃借していたか否かについて,被告が指摘するとおり,甲第3号証の添付資料1-1ないし1-3の請求書写しの重量及び寸法欄は,空欄か零という記載がされており,その理由は不明であるが,同添付資料によれば,P7は,P1社に対し,倉庫料と入出庫費用を請求していることがうかがえ,同添付資料が架空のものとは認められず,倉庫の賃借に関する契約書が作成されていないとしても,P1社はP7から倉庫スペースを賃借していないという被告の主張を採用することはできない。

(3)

前記2(3)のとおり,P1社の扱う精密機械部品は,特殊圧造部品や特殊
ねじであるため,取引先となる企業は限定され,大量仕入れや量販にはなじまず,P13社やP14社等の取引先から受注を得て,P2社及びP3社に対して発注し,出来上がった製品を顧客に納入するという受注発注の形態で行われており,取引先となる企業数が10社程度に限られ,売上高合計も日本円に換算すると,約7600万円から1億2000万円程度であったことが認められる。
以上のようなP1社が小規模な卸売業であることに照らすと,必要となる事務所の規模は小さくて足り,受注発注という形態からすると,シンガポールにおいて取扱製品を保管する必要がほとんどないものと考えられる。したがって,P1社が使用していたP5社のレンタルオフィススペース及びP4の専用執務室,P7の倉庫スペースは事務所及び倉庫としては必要な規模と考えられ,P1社は主たる事業である精密機械部品等の卸売業を行うために十分な固定施設を有していたものと認められ,実体基準を満たしているものと認められる。
4
争点(2)(管理支配基準の充足の有無)について
(1)

措置法40条の4第4項柱書きは,特定外国子会社等が,その本店又は
主たる事務所の所在する国又は地域において,その事業の管理,支配及び運営を自ら行っていること(管理支配基準)を適用除外要件としているところ,適用除外要件として管理支配基準が規定されたのは,我が国に所在する親会社等から独立した企業として実体を備えているというためには,事業の管理,支配及び運営という機能面から見て独立性を有している必要があるとの考え方に基づくものであり,管理支配基準は,機能的な側面から独立企業としての必要条件を明らかにしたものである。
上記のとおり,管理支配基準が機能的な側面から独立企業としての実体があるかどうかを判断する基準であるとすれば,前提として,事業を行うために必要な常勤役員及び従業員が存在していることが必要であり,かつ,特定外国子会社等の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社等から独立して行われていると認められるか否かについては,特定外国子会社等の株主総会及び取締役会の開催,役員としての職務執行,会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所等を総合的に勘案することが必要である。
(2)ア

前記2(2)ウ及び(11)ア(ウ)のとおり,P1社には,シンガポールに在
住する取締役であるP4及びP6ら営業担当者が存在する。

この点,被告は,P1社には常勤役員が存在しない旨主張し,その根拠として,P4が,P5社のマネージングディレクター(役員)であり,他に7社の法人の役員を兼務しており,P1社からP1社各事業年度において役員報酬を受領していないことを挙げる。
確かに,前記2(12)のとおり,P1社各事業年度において,P4は,P1社から役員報酬を受領していないことが認められるところ,前記2(1)エのとおり,原告とP4は,P1社設立時にP1社の経営が軌道に乗るまで無報酬で業務に当たる旨合意しており,実際に,原告自身もP1社各事業年度において役員報酬を受領していないことが認められる。また,前記2(2)ウのとおり,P4は,P1社各事業年度において,P1社以外に7社の法人の役員を兼務していたことが認められるところ,P4が役員に就任するか否かは,単にP5社が業務サポートサービスを提供している取引先であるということのみならず,P4自身が当該法人の事業内容について知識を有している等の事情により自己が取締役に就任しても責任を持てると考えた法人に限られ,兼務していた法人の業務成績いかんにより役員報酬をもらっていない法人もあったことが認められるから,P5社がP1社から業務委託を受けておりその報酬が得られることのみをもってP4がP1社の取締役に名目的に就任したものと推認することはできない。さらに,前記2(9)イのとおり,P4は,シンガポール在住取締役として,P1社が法令・規制を遵守するために必要な各種届出等や税務申告を行い,P1社の経理及び銀行取引及び為替管理を含む資金管理,営業担当者に対する指揮監督,売掛債権の督促・回収等の業務を行っていたものと認められるから,P1社がその本店を置くシンガポールに取締役を置いていなかったものということはできない。

また,被告は,P1社には,従業員が存在しない旨主張するところ,P6ら営業担当者は,P1社が直接雇用するものではなく,上記3(2)ウのとおり,P5社から派遣を受けてP1社の営業業務を行っていたものと認められるが,特定外国子会社等が親会社等から独立して自ら事業を管理,支配しているといえるためには,居住取締役の指揮監督を受けて実際に日常業務を行う従業員が存在すれば足り,当該従業員について特定外国子会社等自らが直接雇用していることまでは必要ではなく,親会社等以外の第三者から従業員の派遣を受けている場合を含むと解すべきである。前記2(11)アのとおり,P6ら営業担当者は,P5社の中間管理職による指揮監督ではなく,P4又は原告による指揮監督を受けていたものであり,P4による指揮監督はP5社のマネージングディレクターとしてではなく,P1社の取締役としてされたものと推認するのが相当である。


したがって,P1社に居住取締役及び従業員が存在しない旨の被告の主張を採用することはできない。

(3)

前記2(8)イのとおり,P1社各事業年度において,P1社の株主総会は
シンガポールにおいて開催されたものと認められる。
この点,被告は,原告がP1社の発行済株式総数の99.9%を保有し,シンガポール会社法の定めによれば,P1社の意思決定権を原告が掌握しているから,株主総会による意思決定は,原告の所在する場所で行われていたと解すべきである旨主張する。
前記2(8)アのとおり,シンガポール会社法上は,株式会社の株主総会決議には普通決議と特別決議との2種類が存在し,原告の保有株式数は,普通決議及び特別決議のどちらにおいてもその帰趨を決するに足りる割合であることが認められるが,前記2(8)イのとおり,P1社各事業年度においては,株主総会の招集及び開催は,シンガポールにおいて行われており,P4は株主として株主総会に参加していることが認められるところ,招集及び開催手続がシンガポールにおいて行われ,株主2名のうちの1名が実際にシンガポールで参加し,その旨の株主総会議事録も作成されているのであるから,P1社の株主総会は,その本社が所在するシンガポールにおいて開催されたものと認められる。被告の主張は,P1社の大株主である原告の所在地を過度に重視し,大株主の所在地と株主総会の開催地とを混同するものであって採用することができない。
(4)

前記2(10)ウのとおり,P1社にとって経営に重大な影響を及ぼし得る
事項としては,重大なクレーム処理に際して顧客との間でP1社が大きな損失を被るような合意をする場合や,大口の取引先の獲得が考えられるが,P1社各事業年度においては,上記のような経営に重大な影響を及ぼし得る事項は発生せず,P1社が行う投資として検討されたのは,関連会社であるP2社及びP3社が行う増資の引受けをするか否かであったところ,前記2(10)エのとおり,P3社が行う増資については,最終的にはP1社が引き受けなかったものの,その可否について原告とP4が相談していたこと,前記2(10)オのとおり,P2社の行う本件増資の引受けの可否については,原告とP4が相談し,P1社の資金繰りの事情により,引受けの総額及び引受けの時期が決定されたことが認められる。
この点,被告は,原告がP4に相談せずに本件増資の引受けの可否を決定し,仮に原告がP4に相談していたとしても,P4もP1社の重要事項について意思決定していたとみるのは適当ではない旨主張する。しかしながら,原告がP1社の大株主であることからすれば,原告の意向を無視することはできないと考えられるものの,P1社の取締役は原告とP4の2名であり,前記2(9)のとおり,それぞれの役割分担や権限分配を決め,実際にそのとおりに役割や権限を分担・分配しながらP1社の経営に当たり,P4が分担する事項については裁量権を有していたものと認められるから,P1社の重要事項について,専ら原告のみが意思決定していたものと推認することはできない。被告の主張は,単なる推測の域を出るものではなく,採用することはできない。
(5)

前記2(9)イのとおり,P4は,シンガポールのカンパニーセクレタリー
会社に指示してP1社の会計帳簿書類を作成させ,前記2(7)のとおり,それらの会計帳簿等は,新しいものはP5社に,古いものはP7において保管されていたことが認められるところ,上記の指示は,P4のP1社の取締役としての権限に基づいてされたものと認められる。
(6)

以上に加えて,前記3のとおり,P1社がその事業を行うために必要な
固定施設を有していたことを考慮すると,P1社においては,経営上重要な事項に関する意思決定及び会計帳簿書類の作成・保管を含む日常的な業務の遂行は,いずれもP1社の取締役であるP4及びP6ら営業担当者により行われていたことが認められるから,P1社はその本店所在地国であるシンガポールにおいて,独立した法人としてその事業の管理・支配及び運営を自ら行っていたものと認められる。
5
本件各更正処分の適法性について
以上によれば,P1社は,措置法40条の4第4項の適用除外要件を全て満たすことになり,原告の本件各係争年分の雑所得の金額には,P1社の課税対象留保金額を含める必要がないこととなるから,原告の本件各係争年分の納付すべき税額は,別紙4原告の納付すべき税額等の(1)ないし(3)のとおり,平成16年分については12万2000円,平成17年分については30万9200円,平成18年分については20万1100円であったと認められ,これらの金額は,別表2ないし4の更正処分等の納付すべき税額欄記載の本件各更正処分における本件各係争年分の納付すべき税額を下回るから,本件各更正処分は,上記の本件各係争年分の納付すべき税額を上回る部分についていずれも違法であり取消しを免れない。
なお,訴状の請求の趣旨第1項には,原告の平成16年分の総所得金額1214万4000円を超える部分の取消しを求める旨の記載があるところ,別紙4の(1)アのとおり,原告の平成16年分の総所得金額は1214万4218円と認められ,同年分の納付すべき税額は12万2000円であって,上記請求の趣旨第1項記載の税額と同一であることからすると,原告は総所得金額についても上記金額を超える部分について取消しを求める趣旨であって,1214万4000円を超え1214万4218円を下回る部分について取消しを求める趣旨ではないと解されるため,請求の趣旨第1項の上記の記載は誤記と認める。
6
本件各賦課決定処分の適法性について
過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実がある場合に科されるものであるところ,原告がした本件各係争年分に係る確定申告(平成17年分については修正申告)における申告納税額は,上記5の本件各係争年分の納付すべき税額と同額であるから,原告には過少申告による納税義務違反の事実は認められないことになる。したがって,本件各賦課決定処分はその前提を欠くものであって,いずれも違法であり取消しを免れない。

第4

結論
よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

川神裕
裁判官

内野俊夫
裁判官

日暮直子
(別紙1)
関係法令の定め
1
措置法(平成18年法律第10号による改正前のもの。)
(1)

居住者に係る特定外国子会社等の留保金額の総収入金額算入(40条の
4第1項)
次に掲げる居住者に係る外国関係会社のうち,本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの(以下この款において特定外国子会社等という。)が,昭和53年4月1日以後に開始する各事業年度(2条2項19号に規定する事業年度をいう。以下この条において同じ。)において,その未処分所得の金額から留保したものとして,政令で定めるところにより,当該未処分所得の金額につき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額(以下この条において適用対象留保金額という。)を有する場合には,その適用対象留保金額のうちその者の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等に対応するものとしてその株式等(株式又は出資をいう。以下この項及び次項において同じ。)の請求権(利益の配当,剰余金の分配,財産の分配その他の経済的な利益の給付を請求する権利をいう。以下この項において同じ。)の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(次条において課税対象留保金額という。)に相当する金額は,その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上,総収入金額に算入する。ア
1号
その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等(請求権のない株式等又は実質的に請求権がないと認められる株式等(以下この号及び次項において請求権のない株式等という。)に係るものを除く。次号において同じ。)の当該外国関係会社の発行済株式の総数又は出資金額(請求権のない株式等及び当該外国関係会社が有する自己の株式等を除く。次号において発行済株式等という。)のうちに占める割合が100分の5以上である居住者

(2)

2号

(略)

外国関係会社及び未処分所得の金額の定義(40条の4第2項)
前項及びこの項において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定
めるところによる。

1号
外国関係会社

外国法人で,その発行済株式の総数又は出資金額(その

有する自己の株式等を除く。)のうちに居住者及び内国法人並びに居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある非居住者(以下この号において特殊関係非居住者という。)が有し,並びに特定信託(法人税法2条29号の3に規定する特定信託をいう。以下この項において同じ。)の受託者である法人が当該特定信託の信託財産として有する直接及び間接保有の株式等の合計数又は合計額の占める割合(括弧内省略)が100分の50を超えるものをいう。
(ア)

イないしハ

(略)

2号
未処分所得の金額

特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得

の金額につき,法人税法及びこの法律による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額を基礎として攻令で定めるところにより当該各事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額に係る調整を加えた金額をいう。ウ
3号及び4号

(略)
(3)

適用対象留保金額の計算の特例(40条の4第3項)
1項各号に掲げる居住者に係る特定外国子会社等(株式(出資を含む。)若
しくは債券の保有,工業所有権その他の技術に関する権利,特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業とするものを除く。)がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有し,かつ,その事業の管理,支配及び運営を自ら行っているものである場合(次項において固定施設を有するものである場合という。)における1項の規定の適用については,同項中調整を加えた金額とあるのは,調整を加えた金額から当該特定外国子会社等の事業に従事する者の人件費として政令で定める費用の額の100分の10に相当する金額を控除した金額とする。
(4)

適用除外となる特定外国子会社等の範囲(40条の4第4項)
1項及び前項の規定は,1項各号に掲げる居住者に係る前項に規定する特
定外国子会社等がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域において固定施設を有するものである場合であって,各事業年度においてその行う主たる事業が次の各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場合に該当するときは,当該特定外国子会社等のその該当する事業年度に係る適用対象留保金額については,適用しない。
1号及び2号
(5)

(略)

適用除外要件を満たす場合の手続要件(40条の4第6項)
1項各号に掲げる居住者が3項又は4項の規定の適用を受ける場合は,そ
の者は,確定申告書にこれらの規定の適用がある旨を記載した書面を添付し,かつ,その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存しなければならない。
2
租税特別措置法施行令(平成18年政令第135号による改正前のもの。)(1)

特定外国子会社等の範囲(25条の19第1項)
法40条の4第1項に規定する政令で定める外国関係会社は,次に掲げる
ものとする。

1号
法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社(法40条の4第2項1号に規定する外国関係会社をいう。以下この節において同じ。)


2号
その各事業年度(法2条2項19号に規定する事業年度をいう。以下この節において同じ。)の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社

(2)

特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算(25条の20第1項)法第40条の4第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額は,同条1項に規定する特定外国子会社等(以下この節において特定外国子会社等という。)の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る39条の15第1項1号に掲げる金額及び同項2号に掲げる金額の合計額から当該所得の金額に係る同項3号に掲げる金額を控除した残額(括弧内省略)とする。

(3)

定義(25条の20第4項)
前項及びこの項において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。


1号
配当可能金額

特定外国子会社等の各事業年度の法40条の4第2項2

号に規定する未処分所得の金額(括弧内省略)から次に掲げる金額の合計額を控除した残額(括弧内省略)をいう。
(ア)


当該各事業年度において納付をすることとなる法人所得税の額(括弧
内省略)
(イ)


当該各事業年度の利益又は剰余金の処分により支出される金額(法人
所得税の額及び利益の配当又は剰余金の分配の額を除く。)
(ウ)


当該各事業年度の費用として支出された金額(法人所得税の額及び利
益の配当又は剰余金の分配の額を除く。)のうち1項若しくは2項の規定により所得の金額の計算上損金の額に算入されなかったため又は同項の規定により所得の金額に加算されたため当該各事業年度の法40条の4第2項2号に規定する未処分所得の金額に含まれた金額

(4)

2号ないし4号

(略)

39条の15第1項
法66条の6第2項2号に規定する政令で定める基準により計算した金額
は,同条1項に規定する特定外国子会社等(以下この節において特定外国子会社等という。)の各事業年度の決算に基づく所得の金額に係る1号に掲げる金額及び2号に掲げる金額の合計額から当該所得の金額に係る3号に掲げる金額を控除した残額(括弧内省略)とする。

1号
当該各事業年度の決算に基づく所得の金額につき,法人税法2編1章1節2款から8款まで(同法23条,26条,28条,38条から41条まで,57条から59条まで及び61条の11から61条の13までを除く。)の規定並びに法43条,45条の2,52条の2,57条の5,57条の6,57条の8,57条の9,61条の4,65条の7から65条の9まで(法65条の7第1項の表の24号に係る部分に限る。),66条の4第3項,67条の12及び67条の13の規定(以下この号において本邦法令の規定という。)の例に準じて計算した場合に算出される所得の金額又は欠損の金額(括弧内省略)

2号
当該各事業年度において納付する法人所得税(本店所在地国若しくは本店所在地国以外の国若しくは地域又はこれらの国若しくは地域の地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(これらの国若しくは地域又はこれらの国若しくは地域の地方公共団体により課される法人税法施行令141条2項各号に掲げる税を含む。)及びこれに附帯して課される法人税法2条45号に規定する附帯税(利子税を除く。)に相当する税その他当該附帯税に相当する税に類する税をいう。以下4項1号までにおいて同じ。)の額


3号
当該各事業年度において還付を受ける法人所得税の額

(5)

居住者に係る特定外国子会社等の課税対象留保金額の計算等(25条の
21第1項)
法40条の4第1項の未処分所得の金額につき当該未処分所得の金額に係る税額及び利益の配当又は剰余金の分配の額に関する調整を加えた金額は,特定外国子会社等の各事業年度の同条2項2号に規定する未処分所得の金額(以下この項において未処分所得の金額という。)から次に掲げる金額の合計額を控除した残額(括弧内省略)とする。

1号
当該各事業年度において納付をすることとなる法人所得税の額(括弧内省略)


2号
当該各事業年度に係る利益の配当又は剰余金の分配の額(括弧内省略)イないしニ
(6)

(略)

25条の21第2項
法40条の4第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額
は,同項各号に掲げる居住者に係る特定外国子会社等の各事業年度の同項に規定する適用対象留保金額から当該各事業年度の前条4項1号ロ及びハに掲げる金額の合計額を控除した残額(以下この項において調整適用対象留保金額という。)に,当該特定外国子会社等の当該各事業年度終了の時における発行済株式等のうちに当該各事業年度終了の時におけるその者の有する当該特定外国子会社等の請求権勘案保有株式等の占める割合を乗じて計算した金額(括弧内省略)とする。
1号及び2号

(略)

(別紙2)
本件各更正処分の根拠及び適法性
1
本件各更正処分の根拠について
被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の納付すべき税額等は,次のとおりである。
(1)平成16年分

総所得金額

1542万1643円

上記金額は,次の(ア)ないし(ウ)の各金額の合計額である。
(ア)配当所得の金額

15万円

上記金額は,原告が平成17年3月3日に甲府税務署長に提出した平成16年分の所得税の確定申告書(以下平成16年分確定申告書という。)に記載された配当所得の金額と同額である。
(イ)給与所得の金額

1199万4218円

上記金額は,次のaの金額からbの金額を控除した後の金額である。a
給与等の収入金額

1441万4967円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された給与等の収入金額と同額である。

給与所得控除額

242万0749円

上記金額は,所得税法(平成16年分については平成16年法律第14号による改正前のもの,平成17年分及び平成18年分については平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)28条3項5号の規定に基づき,aの金額から1000万円を控除した後の金額に100分の5の割合を乗じた金額と220万円の合計額である。
(ウ)雑所得の金額

327万7425円

上記金額は,P1社平成15年12月期の措置法40条の4第1項所定の課税対象留保金額に相当する金額であり,同項の規定に基づき,原告の雑所得の総収入金額に算入すべき金額である。
なお,P1社の上記課税対象留保金額の算定については,後記2(1)のとおりである。

所得控除の額の合計額

255万3466円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

1286万8000円

上記金額は,前記アの総所得金額1542万1643円から前記イの所得控除の額の合計額255万3466円を控除した後の金額(国税通則法(平成16年分については平成16年法律第14号による改正前のもの,平成17年分及び平成18年分については平成18年法律第10号による改正前のものをいう。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

納付すべき税額

111万2900円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(オ)の各金額を控除した後の金額(通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

263万0400円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額1286万8000円に所得税法89条1項所定の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成16年分については平成16年法律第14号による改正前のもの,平成17年分については平成17年法律第21号による改正前のもの,平成18年分については平成18年法律第10号による改正前のものをいい,以下負担軽減措置法と総称する。)4条の特例を適用したもの。以下同じ。)を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

7500円

上記金額は,所得税法92条1項3号イの規定に基づき,前記ア(ア)の配当所得の金額15万円に100分の5の割合を乗じた金額である。(ウ)住宅借入金等特別控除の額

36万0700円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された住宅借入金等特別控除の額と同額である。
(エ)定率減税額

25万円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額であり,原告の平成16年分確定申告書に記載された定率減税額と同額である。
(オ)源泉徴収税額

89万9216円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(2)平成17年分

総所得金額

2810万9362円

上記金額は,次の(ア)ないし(エ)の各金額の合計額である。
(ア)不動産所得の金額

21万円

上記金額は,原告が平成18年3月6日に甲府税務署長に提出した平成17年分の所得税の確定申告書に添付された平成17年分不動産使用料等支払調書に記載されたP2社を支払者とする地代の支払金額欄に記載された金額である。
(イ)配当所得の金額

30万円

上記金額は,原告が平成18年4月17日に甲府税務署長に提出した平成17年分の所得税の修正申告書(以下平成17年分修正申告書という。)に記載された配当所得の金額と同額である。
(ウ)給与所得の金額

1316万7598円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された給与所得の金額と同額である。
(エ)雑所得の金額

1443万1764円

上記金額は,P1社平成16年12月期の措置法40条の4第1項所定の課税対象留保金額に相当する金額であり,同項の規定に基づき,原告の雑所得の総収入金額に算入すべき金額である。
なお,P1社の上記課税対象留保金額の算定については,後記2(2)のとおりである。

所得控除の額の合計額

290万1749円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

2520万7000円

上記金額は,前記アの総所得金額2810万9362円から前記イの所得控除の額の合計額290万1749円を控除した後の金額である。エ
納付すべき税額

514万3200円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(オ)の各金額を控除した後の金額である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

683万6590円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額2520万7000円に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

1万5000円

上記金額は,所得税法92条1項3号イの規定により算出した金額であり,原告の平成17年分修正申告書に記載された配当控除の額と同額である。
(ウ)住宅借入金等特別控除の額

30万2100円
上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された住宅借入金等特別控除の額と同額である。
(エ)定率減税額

25万円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額であり,原告の平成17年分修正申告書に記載された定率減税額と同額である。
(オ)源泉徴収税額

112万6200円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(3)平成18年分

総所得金額

1億5272万5508円

上記金額は,次の(ア)ないし(エ)の各金額の合計額である。
(ア)不動産所得の金額

32万円

上記金額は,原告が平成19年2月22日に甲府税務署長に提出した平成18年分の所得税の確定申告書(以下平成18年分確定申告書という。)に記載された不動産所得の金額と同額である。
(イ)配当所得の金額

10万円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された配当所得の金額と同額である。
(ウ)給与所得の金額

1118万6750円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された給与所得の金額と同額である。
(エ)雑所得の金額

1億4111万8758円

上記金額は,P1社平成17年12月期の措置法40条の4第1項所定の課税対象留保金額に相当する金額であり,同項の規定に基づき,原告の雑所得の総収入金額に算入すべき金額である。
なお,P1社の上記課税対象留保金額の算定については,後記2(3)のとおりである。

所得控除の額の合計額

311万3695円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

1億4961万1000円

上記金額は,前記アの総所得金額1億5272万5508円から前記イの所得控除の額の合計額311万3695円を控除した後の金額である。エ
納付すべき税額

5172万1400円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(カ)の各金額を控除した後の金額である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

5286万6070円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額1億4961万1000円に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

5000円

上記金額は,所得税法92条1項3号イの規定に基づき,前記ア(イ)の配当所得の金額10万円に100分の5の割合を乗じた金額である。(ウ)住宅借入金等特別控除の額

0円

原告は,平成18年分の合計所得金額(前記アの総所得金額と同額の1億5272万5508円)が3千万円を超えるため,措置法41条1項の規定に基づき,住宅借入金等特別控除の適用はない。
したがって,上記金額は,零円となる。
(エ)定率減税額

12万5000円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定に基づき12万5000円となる。
なお,前記(ア)の金額5286万6070円から前記(イ)の金額5000円を差し引いた後の金額に100分の10の割合を乗じた金額が528万6107円であるところ,同金額は,12万5000円を超えることから,負担軽減措置法6条2項の規定に基づき,同項所定の限度額である12万5000円となる。
(オ)源泉徴収税額

76万7200円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(カ)予定納税額

24万7400円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された予定納税額(第1期分及び第2期分の合計額)と同額である。
2
P1社の課税対象留保金額の算定
原告の雑所得の総収入金額に算入される課税対象留保金額に相当する金額は,適用対象留保金額のうち,原告の有するP1社の直接及び間接保有の株式等に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額である(措置法40条の4第1項柱書き)。
(1)平成16年分

P1社の適用対象留保金額の算定
P1社の適用対象留保金額は,措置法施行令39条の15第1項及び同25条の21第1項の各規定に基づき,P1社平成15年12月期の決算書上の未処分所得の金額(乙第2号証7枚目),交際費等の損金不算入額(交際費(乙第2号証16枚目)の100分の20に相当する金額(平成15年法律第8号による改正前の措置法61条の4第1項1号))及び当期において納付する法人所得税の額(乙第2号証7枚目)の合計額から,当期において納付をすることとなる法人所得税の額(乙第2号証7枚目)を差し引いた後の金額であり,別表6(⑥欄)のとおり,5万2753シンガポールドル(以下,この通貨名をSGDという。)となる。

P1社の課税対象留保金額の算定
P1社の課税対象留保金額は,措置法施行令25条の21第2項,25条の20第4項3号の規定に基づき,前記アのP1社の適用対象留保金額から当期の費用として支出された金額のうち所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった金額(P1社の場合,交際費等の損金不算入額)を控除した後の金額に,P1社の発行済株式のうちに原告が有する直接保有の株式の占める割合を乗じた金額であり,別表6(⑨欄)のとおり,5万0955SGDとなる。
そして,租税特別措置法関係通達(平成16年分及び平成17年分については平17課法2-14による改正前のもの,平成18年分については平19課法2-3による改正前のものをいい,以下措置法通達と総称する。)66の6-13(現行措置法通達66の6-14。以下同じ。)の定めに則して,上記金額を平成16年2月末の対顧客電信売買相場の仲値(以下TTMという。乙第16号証)によって円換算すると,課税対象留保金額は,別表6(⑪欄)のとおり,327万7425円となり,同金額が原告の平成16年分の雑所得の総収入金額に算入すべき金額となる。
(2)平成17年分

P1社の適用対象留保金額の算定
P1社の適用対象留保金額は,措置法施行令39条の15第1項及び同令25条の21第1項の各規定に基づき,P1社平成16年12月期の決算書上の未処分所得の金額(乙第3号証7枚目),交際費等の損金不算入額(交際費(乙第3号証16枚目)の100分の10に相当する金額(平成18年法律第10号による改正前の措置法61条の4第1項1号))及び当期において納付する法人所得税の額(乙第3号証7枚目)の合計額から,当期において納付をすることとなる法人所得税の額(乙第10号証)を差し引いた後の金額であり,別表6(⑥欄)のとおり,22万5243.8SGDとなる。

P1社の課税対象留保金額の算定
P1社の課税対象留保金額は,措置法施行令25条の21第2項,25条の20第4項3号の規定に基づき,前記アのP1社の適用対象留保金額から当期の費用として支出された金額のうち所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった金額(P1社の場合,交際費等の損金不算入額)を控除した後の金額に,P1社の発行済株式のうちに原告が有する直接保有の株式の占める割合を乗じた金額であり,別表6(⑨欄)のとおり,22万4235SGDとなる。
そして,措置法通達66の6-13の定めに則して,上記金額を平成17年2月末のTTM(乙第17号証)によって円換算すると,課税対象留保金額は,別表6(⑪欄)のとおり,1443万1764円となり,同金額が原告の平成17年分の雑所得の総収入金額に算入すべき金額となる。
(3)平成18年分

P1社の適用対象留保金額の算定
P1社は,P2社の新株3万2000株を1株当たり500円で引き受け,本件払込期日までに,1600万円を払い込んだ。後記ウ(ア)のとおり,当該新株の発行価額は法人税法施行令(平成18年政令第125号による改正前のもの。以下同じ。)119条1項3号に規定する有利な発行価額に該当し,当該新株の払込期日における価額と払込金額との差額は,法人税法22条2項に定めるP1社の益金の額を構成することから,当該差額は,措置法施行令39条の15第1項1号の規定により,P1社の適用対象留保金額に加算されることとなる。
したがって,P1社の適用対象留保金額は,措置法施行令39条の15第1項及び同令25条の21第1項の各規定に基づき,P1社平成17年12月期の決算書上の未処分所得の金額(乙第4号証7枚目),交際費の損金不算入額(交際費(乙第4号証19枚目)の100分の10に相当する金額(平成18年法律第10号による改正前の措置法61条の4第1項1号)),当期において納付する法人所得税の額(乙第4号証7枚目)及び後記ウで算定した本件増資により益金に加算する額の合計額から,当期において納付をすることとなる法人所得税の額(乙第11号証)を差し引いた後の金額であり,別表6(⑥欄)のとおり,197万1118SGDとなる。イ
P1社の課税対象留保金額
P1社の課税対象留保金額は,措置法施行令25条の21第2項,25条の20第4項1号ハの規定に基づき,前記アのP1社の適用対象留保金額から当期の費用として支出された金額のうち所得の金額の計算上損金の額に算入されなかった金額(P1社の場合,交際費等の損金不算入額)を控除した後の金額に,P1社の発行済株式のうちに原告が有する直接保有の株式の占める割合を乗じた金額であり,別表6(⑨欄)のとおり,197万0382SGDとなる。
そして,措置法通達66の6-14の定めに則して,上記金額を平成18年2月末のTTM(乙第18号証)によって円換算すると,課税対象留保金額は,別表6(⑪欄)のとおり,1億4111万8758円となり,同金額が原告の雑所得の総収入金額に算入すべき金額となる。


本件増資により益金に加算する額の算定方法について

(ア)新株の有利発行における当該株式の適正な価額と取得価額の差額が益金を構成すること
法人税法22条2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とすると規定している。
この規定(法人税法22条2項)は,益金を取引に係る収益として観念しているが,このことは,法人税法も,所得税法と同様に,原則として実現した利益のみが所得であるという考え方を採用し,未実現の利益を課税の対象から除外していることを意味する。しかし,実現した利益は原則としてすべて益金に含まれる,というのがこの規定の趣旨であり,その意味で,法人税法においても所得概念は包括的に構成されていると解すべきである。したがって,取引によって生じた収益は,営業取引によるものか営業外取引によるものか,合法なものか不法なものか,有効なものか無効なものか,金銭の形態をとっているかその他の経済的利益の形態をとっているか等の別なく,益金を構成すると解すべきである。したがって,新株の有利発行によって引受人が利益を受けた以上,その利益の額も益金を構成するというべきであり,ここにいう新株の引受人の受けた利益とは,株式を適正な価額より低い価額で引き受けた場合の,当該適正な価額と取得価額の差額であり,その差額が益金に算入される金額というべきである。
よって,P1社が本件増資により適正な価額より低い価額で新株を引き受けたと認められる場合においては,適正な価額と取得価額との差額は益金を構成するというべきである。
(イ)発行された有価証券の価額が適正な価額より低い価額に当たるか否かの判定方法
法人税法上,株式引受けに係る取得利益の算定に関する規定は存在しないものの,株式譲渡損益を計算する場合の計算方法(法人税法61条の2第10項,法人税法施行令119条1項3号参照)は,適正な価額と譲渡価額との差額が益金ないしは損金を構成する場合の株式譲渡損益の計算方法について定めたものであり,譲渡損益についてのものか取得利益についてのものかの違いはあるものの,株式の授受という外形ではなく,その実質に着目して損益を算出するという基本的な考え方が共通するものであるから,株式引受けに係る取得利益の算定に当たっては,株式譲渡損益を算出する場合の計算方法に関する規定を準用するのが合理的であり,実務としてもそれが定着している。
したがって,本件増資に係る新株の発行価額が適正な価額より低い価額に該当するか否かは,株式譲渡損益に計算に関する規定である法人税法61条の2第10項,同項の規定を受けた法人税法施行令119条1項3号,及び法人税基本通達(平17課法2-14による改正前のものをいう。以下同じ。)の定めるところに従って判断されるべきである。
よって,発行された有価証券の価額が適正な価額より低い価額に
該当するか否かは,上記通達にいう有利な発行価額に該当すると認められるか否かにより判定されるべきである。
そして,有利な発行価額に該当するか否かは,当該新株の発行価
額を決定する日前1月間の平均株価等,発行価額を決定するための基礎として相当と認められる価額を基礎として算定された,発行価額を決定する日の現況における当該株式の価額と発行価額の差額が,当該株式の価額のおおむね10%相当額以上であるかどうかにより判定される(法人税基本通達2-3-7注(1)及び(2))。
(ウ)有価証券の価額の算定方法
発行価額を決定する日の現況における当該株式の価額を算定する
方法を定めた明文の規定はないものの,法人税基本通達2-3-9では,旧株,新株ともに上場していない株式の価額について,その新株又は出資の払込期日において当該新株につき9-1-13及び9-1-14(括弧内省略)に準じて合理的に計算される当該払込期日の価額と定めていることから,発行価額を決定する日の現況における当該株式の価額の算定も,法人税基本通達9-1-13及び9-1-14に準じて算出するのが相当である。
法人税基本通達9-1-13は,売買実例のあるもの(同通達(1)),公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出しが行われるもの(同通達(2)),類似する他の法人の株式の価額があるもの(同通達(3))についての株式の価額について定め,同通達(4)において,同通達(1)ないし(3)に該当しない場合には,当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額による旨を定めている。
また,法人税基本通達9-1-14は,法人が,非上場株式について上記の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額を算定するに当たって,財産評価基本通達(平18課評2-27外による改正前のものをいい,以下評価通達という。)の定める非上場株式の評価方法の例によって算定した価額によっているときは,課税上の弊害がない限り,同通達(1)ないし(3)によることを条件としてこれを認めるとしている。
法人税基本通達9-1-14の趣旨は,相続税,贈与税及び地価税に共通の財産評価に関する基本通達である評価通達の定める非上揚株式の評価方法を,原則として法人税課税においても是認することを明らかにするとともに,この評価方法を無条件で法人税課税において採用することには疑問なしとはしないことから,1株当たりの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路線価ではなく時価で評価するなどの条件を付して採用することとしたものである。
そして,同通達本文において課税上弊害がない限りと規定されて
いるように,評価通達の例により気配相場のない株式の評価を行うことを容認する本通達の取扱いは,飽くまでも課税上の弊害がない場合に限定されている。

発行価額を決定する日の現況におけるP2社発行の新株の価額についてP1社はP2社の議決権総数の61.5%を有する(P2社の発行済株式総数5万2000株(乙第1号証)のうち,本件増資においてP1社の取得した新株は3万2000株である(乙第8号証)。)ため,法人税基本通達9-1-14(1)所定の中心的な同族会社に該当する。その結果,P2社発行の新株の価額については,P2社は常に評価通達178に定める小会社に該当するものとして,評価通達179に従い,同社の純資産価額により算定することとなる。
P2社の純資産価額を算定するに当たっては,P2社が新株の発行価額を決定した平成17年7月14日(乙第8号証)に最も近接した時期であるP2社の平成17年3月期の決算書(乙第21号証)に基づいて算定するのが合理的である。
(ア)P2社が保有するP3社への出資金の評価額の算定
P2社は,P3社の議決権総数の50%を有するため(乙第13号証9枚目),法人税基本通達9-1-14(1)所定の中心的な同族会社に該当する。その結果,P3社発行の株式の価額については,P3社は常に評価通達178に定める小会社に該当するものとして,評価通達179に従い,同社の純資産価額により算定することとなる。
そこで,P3社株式の1株当たりの価額については,本件払込期日である平成17年8月8日を評価時点とし,評価通達185に則した純資産価額を基に算定すべきところ,本件払込期日の直近の決算は,平成16年12月31日時点のものである。しかしながら,前記第4の3(1)のとおり,同社は決算の約2か月後である平成17年3月に資本金を2倍に増資していることから,同社への出資金の評価に当たって,同社の平成16年12月31日時点の純資産価額(別表7(③欄)乙第13号証3及び4枚目)をそのまま用いることは,本件払込期日における純資産価額から著しく乖離することとなる。そこで,平成16年12月31日時点の純資産価額に当該増資による資産増加額(別表7(④欄)乙第13号証14枚目)を加えたものを本件払込期日の純資産価額とすべきである。このようにして算定した金額を本件払込期日である平成17年8月8日の対顧客電信買相場(以下TTBという。)(乙第22号証)により邦貨換算すると,別表7(⑨欄)のとおり,8501万3293円となる。
(イ)P2社が保有するP17社への出資金の評価額の算定
P2社が保有するP17社の株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上にあるわけでもなく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人もないことから,同社の株式の価額は,本件払込期日である平成17年8月8日に最も近い日における同社の純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額によって算出されることとなる。
そこで,法人税基本通達9-1-14の定めにより,課税上弊害がない限り,評価通達によってP17社の株式の価額を算定することとなる。

評価通達188-2によりP17社の株式の価額を算定すべきこと別表5(乙第14号証5枚目)のとおり,P17社の議決権割合の58.41%を有するP18株式会社(以下P18という。)は,総議決権の30%以上を保有する株主であることから,評価通達188(1)に定めるP17社の同族株主に該当する。そして,P2社
は,P17社の総議決権の1.16%を有する株主であることから,同通達に定める同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主に該当するため,P2社のP17社への出資金の評価は,評価通達188-2の定めにより配当還元方式によって評価することとなる。

評価通達188-2によりP17社の株式の価額を算定することに課税上の弊害がないこと
同通達が,同族株主以外の少数株主が取得した株式の評価を配当還元方式によることとしているのは,事業経営への影響の少ない同族株主の一部及び従業員株主などのような少数株主が取得した株式については,これらの株主は単に配当を期待するにとどまるという実質のほか,評価手続きの簡便性をも考慮したためである。P2社がP17社の議決権割合のわずか1.16%しか保有しておらず,P17社の事業経営へ及ぼす影響はさほど大きくはないと考えられること,及び評価手続の簡便性を考慮すると,P2社の有するP17社の株式の価値を算定する際にも,上記通達の趣旨が妥当するといえる。
また,配当還元方式を適用することが法人税の課税において課税上の弊害が生じるような特段の事情は認められない。


そうすると,P2社によるP17社への出資金の評価に当たって
は,評価通達の定めるところにより,配当還元方式で評価することが最も合理的であり,これにより算定した金額は,別表8(⑧欄)のとおり,258万1520円となる(乙第24号証参照)。

(ウ)P2社に生ずる借地権の評価額の算定
借地権の評価については,自用地としての価額に,国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価することとされている(評価通達27)。
そして,自用地としての価額は,固定資産税評価額に,国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することとされている(評価通達11,21,21-2)。
P2社が賃借している土地は別表9記載の各土地(以下本件各土地という。)であり,その所在地及び固定資産税評価額等は同表のとおりである(乙第25号証)。
自用地としての価額を算定するに当たって用いられる,国税局長の定める倍率は,平成17年分財産評価基準書評価倍率表(神奈川県・山梨県)(以下平成17年分財産評価基準書という。)264ページ(乙第26号証)記載の1.1倍である。
そして,P2社は,本件各土地に関して平成19年6月25日に土地の無償返還に関する届出書を朝霞税務署長に提出した(乙第27号証)ことから,相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて(昭和60年6月5日課資2-58・乙第28号証)の8により,相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和43年10月28日直資3-22・乙第29号証)の相当の地代を収受しているを土地の無償返還に関する届出書の提出されていると読み替えた上で,同通達に即して,自用地としての価額の20%に相当する金額を上記借地権の評価額とすべきこととなる。
以上を前提として,本件各土地の固定資産評価額に1.1を乗じて算出された計数に20%の割合を乗じた結果,本件各土地の借地権についての評価額は,別表9(合計(借地権評価額)欄)のとおり,1290万9091円となる。
なお,α×-1及びα×-2所在の土地については,現況が宅地であることから,これらの土地の価額は,評価通達82を準用し,近傍宅地(α××)における1平方メートル当たりの評価額(乙第30号証備考欄)にこれらの土地の面積を乗じて計算した金額となる。(エ)P2社が保有する建物及び建物附属設備の評価額の算定
P2社保有の建物及び建物附属設備の評価額は,評価通達89に則して,平成17年1月1日現在のP2社の建物等に係る固定資産税評価額6568万4733円(乙第31号証)に同通達の別表1記載の倍率1.0を乗じた結果,6568万4733円となる。
(オ)P2社が保有するP19の会員権の評価額の算定
P2社の保有するP19の会員権は,取引相場のない会員権であり,預託金等を預託しなければ会員となれない会員権であることから,評価通達211(2)ハ,211(1)イにより評価すべきこととなる。P2社保有のP19の会員権については,当該ゴルフ倶楽部の所有者であるP20株式会社と運営者である株式会社P19が,平成17年7月26日,東京地方裁判所における会社更正法に基づく変更更正計画の認可決定により,全会員に預託金1%を返還し,仮に継続会員となる場合は,預託金を現預託金の0.001%とする旨認可されている(乙第32号証)ことから,帳簿価額1300万円に1.001%を乗じた13万0130円が課税時期において返還を受けることができる金額に該当し,同ゴルフ会員権の評価額となる。
(カ)P2社が保有する電話加入権の評価額の算定
P2社が保有する電話加入権については,当該加入権の内訳が,固定電話5回線,携帯電話1回線である(乙第21号証4枚目)ところ,評価通達161に則し評価すると,固定電話の回線数5本に平成17年分財産評価基準書387ページ(乙第26号証)に記載の固定電話1回線当たりの評価額5000円を乗じた2万5000円となる。
(キ)P2社が保有するその他の資産の評価額の算定
P2社が保有するその他の資産については,P2社が資産計上している帳簿価額によれば,4億8599万5455円と評価できる(乙第21号証3枚目参照)。
(ク)P2社の株式の1株当たりの評価額の算定
P2社の株式の1株当たりの評価額は,前記(ア)ないし(キ)の各評価額の合計から,負債の評価額(帳簿価額)(乙第21号証3枚目)を差し引いた後の金額をP2社の発行済株式の総数5万2000株(乙第1号証1枚目)で除した金額であり,別表10(⑫欄)のとおり,3921円となる。

益金に算入すべき金額について
(ア)P2社の新株の発行価額は有利な発行価額に該当すること
前記エ(ク)のとおり,発行価額を決定する日の現況におけるP2社の株式の価額は3921円であり,その金額と発行価額500円との差額3421円は,当該新株の発行価額決定日の価額3921円の10%を大幅に超える割合(約87.2%)となるから,当該新株の発行価額は有利な発行価額に該当する。したがって,発行価額と払込期日における株式の価額の差額を益金に算入すべきこととなる。
(イ)益金に算入すべき金額
評価通達4-3に則して,P1社が本件増資により取得したP2社の株式の評価額(本件増資によりP1社が引き受けたP2社の株式の数に前記エ(ク)のP2社の株式の1株当たりの純資産価額(評価額)を乗じた金額)を本件払込期日である平成17年8月8日のTTB(乙第33号証)によりSGDに換算した金額と,平成17年12月末のP1社におけるP2社の株式の帳簿価額との差額は,P1社の益金を構成することから,措置法施行令39条の15第1項1号の規定により,P1社の適用対象留保金額に加算されるところ,当該差額は,別表11(⑦欄)のとおり,56万7453SGDとなる。
3
本件各更正処分の適法性について
被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の納付すべき税額は,前記1(1)エ,同(2)エ及び同(3)エのとおり,それぞれ
平成16年分

111万2900円

平成17年分

514万3200円

平成18年分

5172万1400円

であり,これら各金額はいずれも本件各更正処分に係る納付すべき税額(平成16年分110万2100円,平成17年分436万3700円,平成18年分4449万1300円・別表2ないし4の更正処分等の納付すべき税額欄参照)を上回るから,本件各更正処分は適法である。
(別紙3)
本件各賦課決定処分の根拠及び適法性
別紙2のとおり本件各更正処分はいずれも適法であるところ,本件各更正処分により新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち,本件各更正処分前における税額の計算の基礎とされなかったことについて,国税通則法65条4項にいう正当な理由があるとは認められない。
したがって,本件各更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額を基礎として,次のとおり計算して行った本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(1)平成16年分

9万8000円

上記金額は,国税通則法65条2項の規定に基づき,平成16年分の所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額98万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)を基礎として,これに同法65条1項の規定により100分の10の割合を乗じた金額である。
(2)平成17年分

54万5500円

上記金額は,国税通則法65条2項の規定に基づき,①
平成17年分の

所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額405万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)を基礎として,これに同法65条1項の規定により100分の10の割合を乗じた金額40万5000円に,②

上記新たに納付すべきこととな

った税額405万4500円に平成17年分の所得税の修正申告により納付すべきこととなった税額9万9600円を加算した金額のうち,期限内申告税額に相当する金額133万5800円と50万円とのいずれか多い金額を超える部分に相当する税額281万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に同法65条2項の規定により100分の5の割合を乗じた金額14万0500円を加算した金額である。(3)平成18年分

663万1000円

上記金額は,国税通則法65条2項の規定に基づき,①
平成18年分の

所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額4453万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)を基礎として,これに同法65条1項の規定により100分の10の割合を乗じた金額445万3000円に,②上記新たに納付すべきこととなった税額4453万7600円のうち,期限内申告税額に相当する金額96万8300円と50万円とのいずれか多い金額を超える部分に相当する税額4356万円(同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に同法65条2項の規定により100分の5の割合を乗じた金額217万8000円を加算した金額である。

(別紙4)
原告の納付すべき税額等

原告の本件各係争年分の納付すべき税額等は,次のとおりである。(1)平成16年分

総所得金額

1214万4218円

上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。
(ア)配当所得の金額

15万円

上記金額は,平成16年分確定申告書に記載された配当所得の金額と同額である。
(イ)給与所得の金額

1199万4218円

上記金額は,次のaの金額からbの金額を控除した後の金額である。a
給与等の収入金額

1441万4967円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された給与等の収入金額と同額である。

給与所得控除額

242万0749円

上記金額は,所得税法28条3項5号の規定に基づき,aの金額から1000万円を控除した後の金額に100分の5の割合を乗じた金額と220万円の合計額である。

所得控除の額の合計額

255万3466円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

959万円

上記金額は,前記アの総所得金額1214万4218円から前記イの所得控除の額の合計額255万3466円を控除した後の金額(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

納付すべき税額

12万2000円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(オ)の各金額を控除した後の金額(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

164万7000円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額959万円に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

1万5000円

上記金額は,所得税法92条1項1号イの規定に基づき,前記ア(ア)の配当所得の金額15万円に100分の10の割合を乗じた金額である。
(ウ)住宅借入金等特別控除の額

36万0700円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された住宅借入金等特別控除の額と同額である。
(エ)定率減税額

25万円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額であり,原告の平成16年分確定申告書に記載された定率減税額と同額である。
(オ)源泉徴収税額

89万9216円

上記金額は,原告の平成16年分確定申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(2)平成17年分

総所得金額

1367万7598円

上記金額は,次の(ア)ないし(ウ)の各金額の合計額である。
(ア)不動産所得の金額

21万円
上記金額は,原告が平成18年3月6日に甲府税務署長に提出した平成17年分の所得税の確定申告書に添付された平成17年分不動産使用料等支払調書に記載されたP2社を支払者とする地代の支払金額欄に記載された金額である。
(イ)配当所得の金額

30万円

上記金額は,平成17年分修正申告書に記載された配当所得の金額と同額である。
(ウ)給与所得の金額

1316万7598円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された給与所得の金額と同額である。

所得控除の額の合計額

290万1749円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

1077万5000円

上記金額は,前記アの総所得金額1367万7598円から前記イの所得控除の額の合計額290万1749円を控除した後の金額である。エ
納付すべき税額

30万9200円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(オ)の各金額を控除した後の金額である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

200万2500円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額1077万5000円に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

1万5000円

上記金額は,所得税法92条1項3号イの規定により算出した金額であり,原告の平成17年分修正申告書に記載された配当控除の額と同額である。
(ウ)住宅借入金等特別控除の額

30万2100円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された住宅借入金等特別控除の額と同額である。
(エ)定率減税額

25万円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額であり,原告の平成17年分修正申告書に記載された定率減税額と同額である。
(オ)源泉徴収税額

112万6200円

上記金額は,原告の平成17年分修正申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。
(3)平成18年分

総所得金額

1160万6750円

上記金額は,次の(ア)ないし(ウ)の各金額の合計額である。
(ア)不動産所得の金額

32万円

上記金額は,平成18年分確定申告書に記載された不動産所得の金額と同額である。
(イ)配当所得の金額

10万円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された配当所得の金額と同額である。
(ウ)給与所得の金額

1118万6750円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された給与所得の金額と同額である。

所得控除の額の合計額

311万3695円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された所得控除の額の合計額と同額である。

課税総所得金額

849万3000円
上記金額は,前記アの総所得金額1160万6750円から前記イの所得控除の額の合計額311万3695円を控除した後の金額である。エ
納付すべき税額

20万1100円

上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)ないし(オ)の各金額を控除した後の金額である。
(ア)課税総所得金額に対する税額

136万8600円

上記金額は,前記ウの課税総所得金額849万3000円に所得税法89条1項所定の税率を乗じた金額である。
(イ)配当控除の額

1万円

上記金額は,所得税法92条1項1号イの規定に基づき,前記ア(イ)の配当所得の金額10万円に100分の10の割合を乗じた金額である。
(ウ)住宅借入金等特別控除の額

28万2700円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された住宅借入金等特別控除の額と同額である。
(エ)定率減税額

10万7590円

上記金額は,負担軽減措置法6条2項の規定により算出した金額であり,原告の平成18年分確定申告書に記載された定率減税額と同額である。
(オ)源泉徴収税額

76万7200円

上記金額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された源泉徴収税額と同額である。

還付される税金の額

4万6300円

上記金額は,前記エの納付すべき税額20万1100円から予定納税額24万7400円を控除した後の金額である。なお,予定納税額は,原告の平成18年分確定申告書に記載された予定納税額(第1期分及び第2期分の合計額)と同額である。

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