判例検索β > 平成24年(行コ)第102号
土地所有権移転登記申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成23年(行ウ)第32号)
事件番号平成24(行コ)102
事件名土地所有権移転登記申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成23年(行ウ)第32号)
裁判年月日平成24年10月26日
法廷名大阪高等裁判所
判示事項1 相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転についての農地法(平成23年法律第105号による改正前)3条1項の許可の要否
2 農地の特定遺贈を受けた相続人による所有権移転登記申請に対して登記官がした却下処分の取消しを求める請求が,認容された事例
裁判要旨1 農地法(平成23年法律第105号による改正前。以下同様)3条1項12号,16号,農地法施行規則(平成23年農林水産省令第62号による改正前)18条5号は,遺産分割,特別縁故者への相続財産の分与及び包括遺贈について,人為的な権利移転であり農地の保全上は望ましくないものも含まれているにもかかわらず,その実質が相続による権利移転と異ならないかこれに準ずるものであることに鑑みて,その規制を差し控えているものと解されるところ,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転は,実質的には遺産分割による権利移転と異ならないといえるから,仮に受遺者が非営農者であったとしても,当該農地に係る受遺者への権利承継は私有財産制の下では是認せざるを得ないものであり,これを農地法による規制にかからしめることは相当ではない上,このような場合に農地法3条1項の許可を要するとすることは,特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言による農地の権利移転の場合には同項の許可が必要でないことを前提に,登記実務上も許可書の添付を要しないものとされていることと対比して,合理的根拠を欠き,また,個々の財産についてみれば,包括遺贈であっても特定遺贈であってもその性質を異にするものではないため,包括遺贈と特定遺贈とで許可の要否についての取扱いを異にすることに合理性を見出し難いことからすれば,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない。
2 農地の特定遺贈を受けた相続人による所有権移転登記申請に対して登記官がした却下処分の取消しを求める請求につき,前記却下処分は,前記申請には農地法(平成23年法律第105号による改正前。以下同様)3条1項所定の許可に係る許可書の添付がないことの他に,登録免許税の不足及び登記識別情報の不提供という追完可能な不備があるが,前記許可書がない以上,仮にその余の不備が補正されたとしても申請を受理する余地はないとの前提でされたものであるところ,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しないと解されるから,その余の不備について補正の機会を与えずにされた前記却下処分は違法であるとして,前記取消請求を認容した事例
裁判日:西暦2012-10-26
情報公開日2017-10-19 12:44:26
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主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は控訴人の負担とする。

第1
1実及び理由
当事者の求めた裁判
控訴人
(1)
(2)

上記の部分につき,被控訴人の請求を棄却する。

(3)
2
原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

被控訴人
主文と同旨

第2
1
被控訴人の請求
処分行政庁が被控訴人に対し平成23年4月4日付けでした同年3月23日受付第○号所有権移転登記申請を却下する旨の処分を取り消す。

2
処分行政庁は,原判決別紙物件目録記載の各土地に関し被控訴人がした平成23年3月23日受付第○号所有権移転登記申請を受理せよ。

第3
1
事案の概要
本件は,亡Aの相続人の1人であり,亡Aから原判決別紙物件目録記載の各土地(いずれも農地。以下本件各土地という。)の遺贈を受けた被控訴人が,遺贈を原因とする所有権移転登記を申請(以下本件申請という。)したところ,処分行政庁が農地法所定の許可書の添付がないこと等を理由に本件申請を却下したため,この却下処分(以下本件処分という。)の取消しを求めるとともに,本件申請に基づく登記の実行(受理)をすることの義務付けを求める事案である。
原審は,本件処分の取消請求を認容し,本件申請に基づく登記実行の義務付け請求を棄却したため,控訴人は,原判決中控訴人敗訴部分につき不服があるとして,本件控訴を提起した(上記義務付け請求は当審の審判の対象ではない。)。
2
関係法令の定め,前提となる事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,後記3に控訴人の当審における主張を付加するほかは,
原判決
事実及び理由
中の第2事案の概要の2ないし4(原判決2頁11行目から8頁10行
目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
3
控訴人の当審における主張
相続人に対する特定遺贈と,農地法令で農業委員会の許可が不要とされている遺産分割,特別縁故者への相続財産の分与及び包括遺贈との間には,法的性質やその要件,効果等において重大な相違点があり,相続人に対する特定遺贈の場合に農地法3条1項の許可を不要と解することはできない。
特定の不動産を特定の相続人に対して相続させる旨の遺言がされた場合には,不動産登記実務上,農地法3条1項の許可が不要とされているが,相続させる旨の遺言は,
遺言書の記載から,
その趣旨が遺贈であることが明らかであるか,
又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り,
当該遺産を当該相続人に対して単
独で相続させるという遺産分割方法の指定
(民法908条)
と解すべきであり,
相続させる旨の遺言があった場合には,
当該遺言において相続による承継を当
該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情がない限り,
何らの行為を
要せずして,当該遺産は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されることになる。このような相続させる旨の遺言による権利変動と,遺言者の意思に基づく法律行為による権利変動である特定遺贈とは,
その本質的な法的性質
が異なり,
それにより両者の不動産登記実務上の取扱いに相違が生じるのはむしろ当然である。

第4
1
当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の本件処分の取消請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決事実及び理由中の第3の1ないし4(原判決8頁12行目から10頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決9頁21行目の67頁参照),の次に特定の遺産を特定の相続人に遺贈する旨の遺言による権利移転の場合も,特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言による権利移転の場合も,当該遺産が,被相続人の遺言に従って,相続開始後直ちに当該相続人に承継されることになるという点では共通しているにもかかわらず,を加える。(2)

同9頁24行目の末尾の次に加えて,前記関係法令の定め(1)イのとおり,包括遺贈については,農地法3条1項16号,農地法施行規則18条5号により農地法3条1項の許可を要しないとされているところ,遺言者の財産全部についての包括遺贈は,遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもので,個々の財産についてみれば,相続財産全部の包括遺贈であっても,特定遺贈であっても,その性質を異にするものではないから(最高裁平成3年(オ)第1772号同8年1月26日第二小法廷判決・民集50巻1号132頁,最高裁平成11年(受)第385号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1886頁参照),包括遺贈の場合と特定遺贈(特に相続人に対する特定遺贈)の場合とで,農地法3条1項の許可の要否につき取扱いを異にすることには,何らの合理性も見出し難い。を加える。2
結論
以上によると,被控訴人の本件処分の取消請求は,理由があるからこれを認容すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官

谷口幸博
裁判官

一谷好文
裁判官

秋本昌

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