判例検索β > 平成23年(行ウ)第184号
更正処分取消等請求事件
事件番号平成23(行ウ)184
事件名更正処分取消等請求事件
裁判年月日平成24年9月7日
法廷名東京地方裁判所
判示事項株式会社の最初の事業年度に係る課税期間の消費税及び地方消費税について,同期間中の株式払込金の取扱手数料,司法書士事務所に対する報酬,印鑑代,保証料の送金の手数料,融資スキームの構築に関する手数料及び法律顧問業務に関する報酬等の支払が消費税法(平成23年法律第82号による改正前。以下同じ)30条2項1号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される等としてされた,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨株式会社の最初の事業年度に係る課税期間の消費税及び地方消費税について,同期間中の株式払込金の取扱手数料,司法書士事務所に対する報酬,印鑑代,保証料の送金の手数料,融資スキームの構築に関する手数料及び法律顧問業務に関する報酬等の支払(本件課税仕入れ)が消費税法(平成23年法律第82号による改正前。以下同じ)30条2項1号イに規定する「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されるとしてした確定申告に対し,本件課税仕入れは同号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分される等としてされた,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消請求について,課税仕入れの区分の判断は,同号の文言等に即して,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちのどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当であるところ,この判断基準に照らせば,本件課税仕入れは同号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分されるべきものと認められるとして,前記各処分の取消請求を棄却した事例
裁判日:西暦2012-09-07
情報公開日2017-10-19 12:50:25
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主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
徳島税務署長が原告に対し平成21年5月29日付けでした,原告の平成20年1月28日から同年3月31日までの課税期間(以下本件課税期間という。)の消費税及び地方消費税(以下消費税等という。)の更正処分(以下本件更正処分という。)並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以下本件賦課決定処分といい,本件更正処分と併せて本件更正処分等という。)を取り消す。

第2

事案の概要等
本件は,Aセンター(以下本件施設という。)の整備,運営等の事業(以下本件事業という。)に関する業務を行うことを目的として設立された株式会社である原告が,設立後の最初の事業年度に係る本件課税期間の消費税等について,消費税法30条(平成23年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)1項の課税標準額に対する消費税額から控除する同項の課税仕入れに係る消費税額(以下控除対象仕入税額という。)を同条2項1号に規定する方法により計算するに当たり,本件課税期間中に行った原告の課税仕入れ等(以下本件課税仕入れという。)が同号イに規定する課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるとした内容の確定申告書を提出したところ,徳島税務署長から,本件課税仕入れは同号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分される等として,本件更正処分等を受けたため,それらの取消しを求めた事案である。
1
関係法令等の定め
別紙1関係法令等の定めに記載したとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。
2
前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実である。以下前提事実という。)(1)原告

原告は,本件事業に関する設計・整備業務,維持管理業務及び運営業務並びにこれらに附帯する一切の業務を行うことを目的として平成20年1月28日に設立された株式会社である。


原告は,設立後の最初の事業年度(本件課税期間に係るもの)につき基準期間がなく,当該事業年度開始の日における資本金の額が1000万円以上であって,新設法人に当たるため,その行った本件課税期間における課税資産の譲渡等については,小規模事業者に係る納税義務の免除を定めた消費税法9条1項本文の規定は,適用されない。

(2)本件契約
原告は,民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律9条の定める議会の議決である徳島県議会の議決がされた平成20年3月18日,徳島県との間でAセンター整備運営事業契約(この契約を,以下本件契約といい,これに係る契約書〔甲2〕を本件契約書とい
う。)を締結して,本件事業に関する業務を行っている。
本件契約書の要旨は,別紙2本件契約書(要旨)に記載したとおりである。
(3)本件課税仕入れ
原告は,本件課税期間において,以下のアないしカの各支払をした(これらの各支払に係る取引については,以下,次のアのものから順に本件課税仕入れ1のようにいう。)。ア
株式払込金の取扱手数料

8万0550円

原告は,平成20年1月23日,株式会社B銀行(以下B銀行という。)に対し,原告の設立に係る株式払込金の取扱手数料として,8万0550円を支払った。

司法書士事務所に対する報酬等

27万3185円

原告は,平成20年3月11日,C司法書士事務所に対し,原告の設立の登記の手続に関する報酬のうち課税仕入れに係る支払対価に当たるものとして22万1685円を,公証人の認証料として5万1500円を,それぞれ支払った。

印鑑代等

4万2065円

原告は,平成20年1月16日,Dに対し,印鑑代及びゴム印代として,合計4万2065円を支払った。

保証料の送金の手数料

840円

原告は,平成20年3月17日,株式会社E銀行(以下E銀行という,)との間で別紙2記載5の契約保証金の納付に代わる金融機関の保証として支払保証委託契約を締結し,同銀行に対してその保証料(166万9299円。以下本件保証料という。)を支払うに当たり,B銀行に対し,送金の手数料として,840円を支払った。

融資スキームの構築に関する手数料

1659万円

原告は,平成20年3月31日,B銀行との間で,金銭消費貸借契約(貸出実行日平成22年3月1日,貸出金額8億6000万円。この契約を,以下本件融資契約といい,この契約による原告への融資を本件融資ともいう。)を締結し,その際,①本件融資の資金使途を,本件契約に基づき原告が行う独立採算事業以外の事業に係る契約保証金の支払及び本件契約に基づき原告が実施する本件施設の設計・施工・建設等に係る建設代金(諸費用等を含む。)の支払とすること(乙8の特約書の2条)や,②原告が,B銀行に対し,本件融資契約の締結日に本件融資契約及びこれについての特約(以下本件特約という。)に基づく融資スキームの構築に関する手数料として,1659万円(消費税等を含む。)を支払うこと(乙8の特約書の10条)等を内容とする本件特約を締結し,平成20年3月31日,B銀行に対し,上記の融資スキームの構築に関する手数料として,1659万円を支払った。

法律顧問業務に関する報酬等

441万0840円

原告は,平成20年3月31日,F総合法律事務所に対し,本件融資契約等に係るB銀行のための法律顧問業務に関する報酬として,367万円(報酬額420万円及びこれに係る消費税等相当額21万円の合計額である441万円から源泉徴収税額である74万円を控除したもの)を支払うとともに,B銀行に対し,その送金の手数料として,840円を支払った。(4)本件更正処分等及び不服申立て

原告は,本件課税期間の消費税につき,別表1の確定申告欄記載のとおり,控除対象仕入税額を個別対応方式により計算するに当たり,本件課税仕入れが消費税法30条2項1号イに規定する課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるとした内容の平成20年5月28日付けの確定申告書(甲3。以下本件確定申告書という。)を提出し,徳島税務署長は,同別表の更正処分欄記載のとおり,本件更正処分等をした


その後の本件更正処分等についての異議申立て,異議決定,審査請求及び審査裁決の経緯は,別表1の異議申立て欄,異議決定欄,審査請求欄及び同上裁決欄に,それぞれ記載されているとおりである。
(5)本件訴えの提起
原告は,平成23年3月24日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
3
本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
後記4に掲げるほか,別紙3本件更正処分等の根拠及び適法性に記載したとおりである。
4
争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,本件更正処分等の適法性であり,具体的には,本件課税仕入れが消費税法30条2項1号イに規定する課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ又は同号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れのいずれに区分されるかが争われているところ,この点に関する当事者の主張の要点は,以下のとおりである。
(被告の主張の要点)
(1)本件課税仕入れが課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されることア
本件施設の整備に関する対価には課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利が含まれること本件事業に関する業務は,本件施設の施設整備,維持管理・運営等の業務をその内容とするものであるところ,原告の本件事業に関する業務による売上げは,別紙2記載1のとおり,本件施設の整備に関する対価や維持管理に関する対価等の合計となっている。
そして,本件施設の整備に関する対価の額である10億5098万6000円については,同別紙記載3のとおり,徳島県は,原告に対し,平成22年4月を初回とし平成30年1月を最終回とする予定で毎年度四半期ごとの32回の元利均等払いにてこれを支払うこととされており,本件施設の整備に関する対価は,本件割賦元本と本件割賦金利により構成されているところ,本件割賦金利に係る取引は,消費税法施行令10条3項10号に該当することから,消費税法6条1項の規定により消費税を課されない非課税取引に該当する。
したがって,本件施設の整備に関する対価は,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とが一体となったものといえる(本件割賦元本と本件割賦金利は,消費税の課税標準としてはそれぞれ課税資産の譲渡等の対価とその他の資産の譲渡等の対価に該当するが,消費税法上の役務の提供の対価としては,一体となったものといえる。)。

本件課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されること(ア)原告の設立に要した費用等
本件課税仕入れ1ないし3は,原告の設立に当たって支払った費用等に係る取引であり,いずれも課税仕入れに該当する(ただし,本件課税仕入れ2のうちの公証人の認証料5万1500円に係る部分の取引は,消費税法別表第1の5号ハに該当する非課税取引であるから,これを除く。)。
しかし,これらの課税仕入れは,いずれも原告が設立後に事業活動を行うために要した課税仕入れであるところ,原告の目的は,いわゆる法人登記上,本件事業に関する業務及びこれに附帯する一切の業務を行うこととされている上,別紙2記載4のとおり,原告は本件施設の運営業務の一環として独立採算事業を行うことができるとされている。
そのため,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3は,原告の事業全体に要するものであり,前記アで述べたとおり,原告の事業活動によって生ずる売上げには,課税資産の譲渡等の対価及びその他の資産の譲渡等の対価があることから,これらの課税仕入れは,いずれも消費税法30条2項1号ロにいう課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるというべきである。
(イ)融資スキームの構築に係る費用等
本件課税仕入れ4ないし6は,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引であるところ,前提事実(3)オのとおり,本件特約においては,本件融資契約に基づく原告の借入金の資金使途は,本件契約に基づき原告が行う独立採算事業以外の事業に係る契約保証金の支払及び本件契約に基づき原告が実施する本件施設の設計・施工・建設等に係る建設代金の支払とされている。そして,別紙2記載5及び前提事実(3)エのとおり,原告は,契約保証金の納付に代えて,E銀行との間で支払保証委託契約を締結し,同銀行に対し本件保証料として166万9299円を支払った。
そうすると,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6については,本件施設の整備に関する対価を得るために必要とされるものであって,本件施設の整備に関する対価の全体に対応するものと認められる。
そして,本件施設の整備に関する対価は,前記アのとおり,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とで構成されるから,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6は,いずれも消費税法30条2項1号ロにいう課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるというべきである。(2)原告の主張について
ア(ア)原告は,本件施設の整備に関する対価は本件割賦元本からのみ成り,本件割賦金利は本件施設の整備に関する対価に含まれない単なる利息であるから,本件課税仕入れはいずれも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される旨をいうものと解される主張をする。しかし,別紙2記載3及び6のとおり,徳島県は,本件施設等の引渡しを受けた場合,原告に対し,本件施設の整備に関する対価として,本件契約書の別紙8に記載する金額を支払うこととされているところ,この別紙8の1項には,別紙2記載6のとおり,本件施設の整備に関する対価の内容として,<ク>上記<ア>ないし<キ>の合計に対する徳島県の割賦支払に係る利息との旨の記載があるのであるから,本件割賦金利が本件施設の整備に関する対価の構成要素であることは明らかであり,このことは,本件施設の整備に関する対価の額である10億5098万6000円が本件割賦元本の額と本件割賦金利の額との合計額であること(別紙2記載3)からも裏付けられる。
(イ)また,原告は,本件割賦金利に係る取引は,消費税法施行令10条3項10号により,当該賦払に係る契約において明示されて初めて非課税取引であるその他の資産の譲渡等とされるのであるから,利子に相当するものとして賦払に係る契約において明示された本件割賦金利は本件割賦元本と一体となるものではなく,両者を区別して考えることができ,その場合,本件割賦金利に対応する役務の提供に要する課税仕入れは存在しないから,原告の設立に要した費用等に係る取引を含めた本件課税仕入れは,全て課税資産の譲渡等にのみ要するものとして区分されるべきである旨をいうものと解される主張をする。
しかし,本件割賦金利が,利子に相当するものとして賦払に係る本件契約において明示されることによりそれに係る部分を対価とするその他の資産の譲渡等として扱われることは,本件割賦金利に係る上記の部分が非課税取引であるその他の資産の譲渡等となることを意味するにすぎず,個別対応方式における課税仕入れの区分の判断において本件割賦元本と本件割賦金利とを区別すべきことの根拠となるものではないから,原告の主張は,その前提を欠いている。
(ウ)このほか,原告は,本件施設の整備に関する対価の内容とされる別紙2記載6の<ア>ないし<ク>の費用について,同<ア>ないし<キ>が本件割賦元本に係るもので,同<ク>が本件割賦金利に係るものであって,両者はその性質を異にする旨を主張するが,このような性質の差異は,個別対応方式における課税仕入れの区分の判断に影響するものではない。
イ(ア)原告は,本件施設の整備に関する対価の内容とされる別紙2記載6の<ア>ないし<ク>の各費用のうちの<ク>が本件割賦金利に係るもので,その他の資産の譲渡等の対価に当たり,これを除いた同<ア>ないし<キ>が本件割賦元本に係るもので,課税資産の譲渡等の対価に当たるとした上で,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3が同別紙記載6の<オ>の事業者の開業に伴う費用に係るものに,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6が同別紙記載6の<キ>の融資組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等に係るものに,それぞれ当たるから,本件課税仕入れはいずれも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される旨をいうものと解される主張をする。
しかし,個別対応方式における課税仕入れの区分は,当該課税仕入れがいかなる取引に対応するものであるかを客観的に判断するものであって,当事者の契約内容によって自由に決定し得る性質のものではないから,本件契約書における別紙2記載6の<オ>の記載は,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れであることの根拠となるものではない。この点,原告は,原告がいわゆる特別目的会社であることを主張するが,消費税法上,特別目的会社を他の法人と区別する規定はないし,別紙2記載4のとおり,原告は独立採算事業を行うことができ,預金利息を収受すること等もあるのであるから(現に,本件課税期間の末日において,原告の売上げは,非課税取引〔その他の資産の譲渡等〕により得た預金利息のみであった。),本件事業のみを行うための法人であるといい切ることもできない。仮に,原告が本件事業及びその一環としての独立採算事業に関する業務のみを行う法人であったとしても,それらによりその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利を含めた割賦代金を収受することとされている上,その他の資産の譲渡等である預金取引により預金利息を収受し得るのであるから,課税資産の譲渡等以外の取引が発生しない法人であるとはいえない。なお,個別対応方式により課税仕入れを区分する場合の当該区分の判断は,課税仕入れを行った日の状況によりそれがいかなる資産の譲渡等に要するものであるかにつき行うべきものであるから,本件において,本件課税仕入れ1ないし3が行われた時点でいまだ預金利息が存在しておらず,また,原告が現に本件事業の附帯業務や独立採算事業を行っていなかったとしても,そのことは本件課税仕入れの区分の判断を左右するものではない。
また,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6についても,これらが課税資産の譲渡等の対価とその他の資産の譲渡等の対価から成る本件施設の整備に関する対価の全体を得るために必要とされる費用に係るものであることは,既に述べたとおりであり,本件契約書における別紙2記載6の<キ>の記載は,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れであることの根拠となるものではない。
(イ)次いで,原告は,融資スキームの構築に関する手数料に係る取引である本件課税仕入れ5について,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される本件施設の設計・施工・建設等に係る建設代金と本質を同じくするものである旨を主張する。
しかし,本件課税仕入れ5に係る融資スキームの構築に関する手数料は,原告が,前提事実(3)オのとおり,資金使途を限定した本件融資を受けるに当たって支払うこととされた手数料であり,本件融資に対する返済は,本件契約に基づき原告に生ずるキャッシュフローを原資とするものである。
そうすると,融資スキームの構築に関する手数料は,原告が本件融資を受けるために必要な費用であり,その返済原資となるキャッシュフローは,本件割賦元本と本件割賦金利とが一体となった本件施設の整備に関する対価の全体から生ずるものとなる。また,本件融資の資金使途が,本件保証料及び本件施設の建設代金の各支払とされていることからすれば,上記の手数料は,本件施設の整備に関する対価の全体を得るためのものといえる。
そして,本件施設の整備に関する対価が,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とが一体となったものであることは,前記(1)アで述べたとおりであるから,融資スキームの構築に関する手数料に係る取引である本件課税仕入れ5が課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されることは,明らかである。ウ
原告は,本件事業にとって本質的ではない金利の存在をもって,原材料費にすぎない本件課税仕入れの段階の消費税の控除を認めないとすることは,消費税の本質に反するものであり,二重課税の非難を免れないものである旨を主張するが,既に述べたとおり,本件課税仕入れは,原告の設立後の事業活動全体のために要した原告の設立費用に係る取引や本件施設の整備に関する対価の全体を得るために要した融資スキームの構築に係る費用等に係る取引であって,本件施設を建設するための原材料費や設計手数料等に係る取引ではないから,原告の上記の主張は,その前提を欠いている。
この点をおくとして,原告の本件課税期間における控除対象仕入税額が0円となったのは,課税売上割合が0パーセントであったからである。原告が個別対応方式を選択した以上,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れについて,課税売上割合の限度でしか仕入れに係る消費税額を控除することができないのは,消費税法の予定するところであって,消費税の本質に反するものではない(なお,原告がある課税期間において課税仕入れに係る消費税を支払ったとしても,その消費税の納付義務者は,原告ではなく,原告から消費税の支払を受けた仕入先であるから,原告が二重に消費税を納付することになるものではなく,二重課税の問題が生ずる余地はない。)。

原告は,国税庁が公表している質疑応答事例(甲7。以下本件質疑応答事例1という。)において,いわゆる所有権移転外ファイナンスリース取引におけるリース資産の賃貸人(いわゆるリース会社)によるリース資産の取得に要した費用が,据付工事費や運賃等も含めて,専ら課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるものと扱われていることとの対比を主張する。
しかし,リース取引には,租税法上,リース資産の売買として扱われるものと,金融取引として扱われるものとがあるのであるから,必ずしもリース取引であることをもって本質的に金融取引であるとまではいえないし,本件質疑応答事例1は,あくまで,売買取引として扱われる所有権移転外ファイナンスリース取引に関して,リース資産の取得費用は原材料の仕入れに相当するものであることを理由に,リース資産の取得費用は個別対応方式において課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される旨を回答したものにとどまる。また,リース資産の賃貸人が支払う据付工事費及び運賃等がリース資産の取得費用に含まれ,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるのは,これらの費用が,課税対象の資産に係る運送費や支払加工賃(別紙1記載2(1)の③参照)といえるからにすぎず,他方,本件課税仕入れに係る支払は,既に述べたとおり,原告の設立に要した費用等や融資スキームの構築に係る費用等であるから,ファイナンスリース取引におけるリース資産の取得費用と同視することはできないものである。
なお,原告は,本件契約のような取引において,割賦金利の部分を利子として明示するか否かという形式的な違いで仕入れに係る消費税額の控除の可否が決せられるのは不合理である旨も主張するが,そのような差異が生ずるのは,消費税法等の予定する当然の結果というべきである。オ
原告は,平成20年4月1日から平成21年3月31日までの課税期間(以下平成21年3月期という。)の消費税について,原告が本件施設の設計業務委託料として建築事務所等に支払った3045万円(以下本件施設設計料等という。)が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに係る支払に区分されると徳島税務署長が判断していることからすれば,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6に係る支払についても,同じく課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに係るものに区分されるものと判断されるべきであり,本件更正処分の判断と他の課税期間の判断とには判断の矛盾がある旨をいうものと解される主張をする。
しかし,本件施設設計料等については,本件施設を建設・整備するためにのみ要する費用であることから,それに係る取引は課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されると判断されたものであり,他方,融資スキームの構築に係る費用等に係る取引である本件課税仕入れ4ないし6が,本件施設の整備に関する対価の全体を得るための課税仕入れであり,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されることは,既に述べたとおりである。したがって,本件施設設計料等に係る取引が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されることと,本件課税仕入れ4ないし6が課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されることには,何ら矛盾はない。カ
原告は,本件質疑応答事例1とは別に国税庁が公表している質疑応答事例(甲9。以下本件質疑応答事例2という。)における国税庁の見解を根拠に,課税仕入れが実質的にどのような売上げや利益と主たる対応関係があるかどうかを判断しないでは,最終的な付加価値に課される税としての消費税を正当に徴収することは困難である旨を主張する。しかし,その主張は,国外における資産の貸付けのみを行う法人の預金に関するもの以外の業務をその親会社に委託した場合における業務代行手数料に係る取引の課税仕入れの区分に関する取扱いについての本件質疑応答事例2における国税庁の見解を誤って理解した上でのものであり,失当といわざるを得ない。

(原告の主張の要点)
(1)本件課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されること
以下のアないしウに述べるところに照らせば,本件課税仕入れは,消費税法30条2項1号イにいう課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるというべきである。

本件事業と本件課税仕入れの本質
(ア)本件事業は,専ら本件事業を受託するために設立された特別目的会社である原告が,本件施設の整備及び運用を実現するために必要なサービスの給付を行い,徳島県がこれに対する対価を支払うことをその取引の本質とするもので,その具体的内容は,本件契約書(甲2)のとおりである。そして,本件契約における各当事者の給付の対価的関連性は,本件施設の整備という原告のサービスの給付と徳島県の対価(本件割賦元本)の支払にあり,このことは,別紙2記載1の契約金額の点からも明らかである。
また,本件施設の整備に関する対価の具体的な内容は,同別紙記載6の<ア>ないし<ク>のとおりであり,そこには,後に述べるような原告の本件事業におけるいわゆる道具性を受けて,同<オ>の事業者の開業に伴う費用及び同<キ>の融資組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等が含まれており,本件課税仕入れは,全てこれらと密接不可分な費用である。
さらに,本件割賦金利については,本件施設を整備する事業が公共団体の事業としても相当に大規模であり,かつ,公共団体としての予算の支出の公的な制約の中で,合理的な分割払いとすることがほぼ当初から必然的に予定・計画されていたことから生じたものにすぎず,原告による本件施設の整備との間に対価的な関連性はない。本件割賦金利は,徳島県に期限の利益が生ずる反面,原告に分割を余儀なくされる不利益が生ずることから,これらを相殺し,公平を確保するために定められた利息でしかなく,仮に,徳島県が本件施設の整備に関する対価を一括で支払い,本件割賦金利が生じなかったとしても,本件課税仕入れは本件施設の整備のために必要であったものであり,本件課税仕入れと本件割賦金利とは,本来的に関係がない。
以上のように,原告の本質的な事業は,本件施設の整備に関する対価と維持管理に関する対価を得るためのものであり,本件割賦金利を得るためのものではない。本件課税仕入れに係る支払は,本件割賦元本を産出するに当たっての原価部分であり,全て本件施設の整備のために必要不可欠なものであって,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れである。たまたま,取引相手の都合で割賦払いとしたことに伴い金利という収入が別途生ずることになっても,それと本件課税仕入れとは実質的な対応関係がないと判断されるべきものである。
(イ)本件課税仕入れは,全て,原告による本件施設の整備という本質的なサービスを給付するための最低限かつ必要不可欠な前提となるものであり,製造業でいえば必要不可欠な原材料の仕入れに相当する。
すなわち,本件課税仕入れ1ないし3は,原告の設立に要した費用等であるところ,原告は,本件事業を受託するために設立された特別目的会社であり,法的に合理的な整理をするための受け皿として,いわば本件事業を円滑に運営するための法的仕組みのためにのみ設立された道具的な法人にすぎないのであって,その設立の費用自体,本件施設の整備のための直接の仕入れに当たるというべきである。
本件課税仕入れ4ないし6については,まさに,本件施設を整備する事業に係る資金の調達のための制度設計及び制度の仕組み構築のための費用といえるものであり,このような資金の調達を必要とすることは,原告のような特別目的会社を用いる取引では取引慣行的・定型的に予定されているのであって,いわば金融組成費用たる融資スキームの構築に係る費用が取得資産である設備ないしその対価との関係で原価性を有することは税法上の常識といえる。後に改めて述べるように,徳島税務署長は,平成21年3月期の消費税について,原告が設計事務所等に支払った本件施設設計料等が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れであると認めているところ,これと別異に扱う合理的根拠はない。本件課税仕入れが全て課税仕入れであることは,前記(ア)で述べたように,本件施設の整備に関する対価の支払の対象となる業務に係る費用の具体的な内容に,事業者の開業に伴う費用及び融資組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等が含まれていることからも裏付けられる。
(ウ)我が国の消費税は,各取引段階の付加価値を課税標準として課される一般消費税であり,最終的な付加価値財に対する最終的な消費支出に課税されることをその本質的要素とするものであるところ,これを本件についてみれば,本件課税仕入れは,原告による本件施設の整備にとっての原材料ともいうべき仕入れであることは明らかである。
本件更正処分のように,本件事業に係る取引にとって本質部分ではない本件割賦金利の存在をもって,結果的に,原材料費にすぎない本件課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないとすることは,消費税の本質に反した二重課税との非難を免れないものである。

ファイナンスリース取引との対比
仮に,本件割賦金利が,原告による本件施設の整備に対する対価としての意味も有するとしても,いわゆるファイナンスリース取引の消費税法上の取扱いと対比すれば,本件において本件課税仕入れに係る消費税額の控除を否定することは,実質的な公平を害するものとして違法を免れないというべきである。
すなわち,本件質疑応答事例1においては,ファイナンスリース取引に係るリース契約において利子相当額が明示されている場合,そのリース料は課税取引とされる資産の譲渡に対する対価の額と非課税取引とされる利子相当額を対価とする役務の提供に係る対価の額の両者を含むものであるにもかかわらず,そのファイナンスリース取引に不可欠なリース資産の取得費用(据付工事費及び運賃等を含めたもの)は,全て前者の課税取引とされる資産の譲渡に対する対価の額と扱うこととされている。このような取扱いとされる実質的な理由は,リース資産の賃貸人がリース資産を取得することは,ファイナンスリース取引にとって主要かつ不可欠の原材料の仕入れというべきものであるところ,リース資産の取得からリース料の取得までの間に時間的な間隔が生ずることやリース料には課税部分と金利相当の非課税部分が混在すること等から,リース資産の取得時の課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないことや,たまたま課税資産の譲渡等による売上げがないことがあり,そのような場合に,リース資産の賃貸人が取得するリース料に係る課税仕入れを消費税法30条2項1号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるとして取り扱い,偶然的な要素によって課税仕入れに係る消費税額の控除がされない事態等が生ずることが,消費税の付加価値税の本質に反し,公平を失するからにほかならない。
ファイナンスリース取引の性格は,リース資産の賃借人に対するリース資産取得のための資金融資としての金融取引としての側面と,リース資産の使用収益の賃料的対価を取得する賃貸借的側面とを併有する取引であり,一般的にも,通常の賃貸借契約と異なり,むしろ融資資金の分割返済としての側面が強く,金融取引であることが強調されている。それにもかかわらず,消費税法における仕入れに係る消費税額を控除する場面においては,ファイナンスリース取引にとって不可欠な課税仕入れであるリース資産の取得については,ファイナンスリース取引の非課税取引である金融取引の側面を無視して,専ら課税取引とされる資産の譲渡に要する費用として柔軟に扱われている。
こうしたこととの対比からすれば,本件課税仕入れが全て原告による本件施設の整備という本質的なサービスを給付するための最低限かつ必要不可欠な原材料の仕入れに相当するものであることは,当然に配慮されてしかるべきである。
ファイナンスリース取引と比べても,本件割賦金利における金融サービスの対価という性格は著しく希薄といえるのであって,にもかかわらず,本件事業の本質を理解せずに,軽々に本件割賦金利を利息として明示するかしないかについての形式的な判断で課税部分を増やそうとした本件更正処分は,違法であるといわざるを得ない。

原告の平成21年3月期の消費税に係る徳島税務署長の課税判断との矛盾
本件課税仕入れは,いずれも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるべきものであり,とりわけ,本件課税仕入れ4ないし6については,いかなる意味でも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるべきものである。すなわち,原告の平成21年3月期の消費税について,原告が設計事務所等に支払った本件施設設計料等が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れであると徳島税務署長により認められたことは,前記ア(イ)で述べたとおりであって,徳島税務署長の対応は,一貫性を欠いた著しく不公正なものというべきである。


その他の例との対比
本件質疑応答事例2では,国外における資産の貸付けだけを行うために設立され,その業務の一切の代行を親会社に委託して業務代行手数料を支払う一方,資本金を預金していることから毎期の収入として預金利息がある会社が支払う上記の業務代行手数料について,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される旨の国税庁の見解が示されている。この見解の理由は,必ずしも明快に理解できるものではないが,実質的には,資本金の預金利息の発生と親会社が代行する主たる業務との対価関係が相対的に希薄である点が考慮されたものと考えられる。そうすると,国税庁のこの見解は,ある課税仕入れ費用が実質的にどのような売上げや利益と主たる対応関係があるのかを判断しないでは,最終的な付加価値に課される税としての消費税を正当に徴収することが困難であることを示すものということができ,本件においても,そのような洞察と配慮が必要ということができる。

(2)被告の主張について

被告は,本件施設の整備に関する対価は課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とが一体となったものである旨を主張する。
しかし,本件施設の整備に関する対価は,本件割賦元本と本件割賦金利とで構成されてはいるものの,利子部分が明示されているからこそ割賦利息はその他の資産の譲渡等の対価になり得る(消費税法施行令10条3項10号参照)のであるから,両者は一体となったものではない。両者は,その発生において本質を異にし,本件契約書の記載はこのような取引の実態を明示しているものであり,その本質に従って線引きされるべきものであって,両者を区分して考える必要がある。そして,明示されたがためにその他の資産の譲渡等の対価とされた本件割賦金利を対価とする役務の提供に要する課税仕入れはなく,本件割賦元本を産出する基となる設立費用等を含めた本件課税仕入れは,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるものである。
イ(ア)被告は,原告の設立に要した費用等に係る取引である本件課税仕入れ1ないし3について,原告の事業全体に要するものであり,原告の事業活動による売上げには課税資産の譲渡等の対価とその他の資産の譲渡等の対価とがあるから,本件課税仕入れ1ないし3は,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分される旨を主張する。
しかし,本件割賦金利及び預金利息は,本件事業に伴い結果として発生するものであり,これを得るために支出する仕入れは存在しない。また,本件割賦元本を産出する基となる原価の部分は,本件施設の整備に関する対価の内容とされる別紙2記載6の<オ>の事業者の開業に伴う費用や同<キ>の融資組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等で構成されているところ,これらはいずれも本件割賦元本に当たるもので,かつ,原告の設立に要した費用等を含む本件課税仕入れはいずれも上記の<オ>は<キ>の費用等に当たるから,本件課税仕入れはいずれも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるべきものということができる(なお,被告は,課税仕入れの区分は客観的に判断されるものであって,契約内容によって自由に決定し得るものではない旨を主張するが,契約の趣旨及び内容を社会通念に従って判断することが否定されるものでないことは明らかであり,その契約の主体がどのような種類の法人であるかをある程度参酌しないで当該契約の内容の本質を正当に評価することは,不可能である。)。
(イ)この点,被告は,原告が本件事業及びこれに附帯する一切の業務を行うこととされていることや独立採算事業を行うことができるとされていること,原告が預金利息を収受し得るものであること等からすれば,原告の設立に要した費用等に係る取引は課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡に共通して要する課税仕入れに区分される旨を主張する。しかし,本件契約の内容に照らし,特別目的会社である原告がそれらの業務を現実に営むことはまずあり得ないところであって,仮に営んだとしても,本件契約書において定められている内容に照らしてそれらがその他の資産の譲渡等に該当しない取引であることは明白であるし,この点をおくとしても,本件課税仕入れがされた時点で現に行われていない附帯業務や独立採算事業を引き合いに出すのは,正当な判断を誤らせるものというべきである。また,預金利息についても,預金利息は本件事業に伴い結果として発生するものであるから,当初からその発生が予定されていたであるとか,それ自体が1つの業務であるかのようにいうことは誤りというべきであり,それが発生したとしても原告の本件事業における道具性の本質を無視し得るものではなく,預金利息を収受することもあるからという類推で課税仕入れの判断を行うべきでもない。そもそも,被告の上記の主張は,法人の設立費用等がその法人の設立後の事業全体のために要する費用であるとの一般論を,地方公共団体との間に締結された公共事業を担うためだけに設立された特別目的会社である原告について,その法人としての道具性を無視して当てはめるものである上,昨今のほとんど0に近い預金利息の発生と原告の本来の目的とを同列に論じるものであって,常識とかけ離れた議論であるといわざるを得ず,不当である。
(ウ)また,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6についても,同様に,本件割賦元本を産出するに当たっての原価の部分を構成するものといえるから,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される。さらに,本件融資契約に基づく原告の借入金の資金使途が本件施設の建設代金の支払に限定されていることからすれば,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6は,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される本件施設の建設代金と本質を同じにするものといえるから,この観点からも,本件課税仕入れ4ないし6は,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるべきものということができる。

被告は,本件課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないことが二重課税の非難を免れないとの原告の主張が失当である旨を主張する。
しかし,法人の設立直後の事業年度における課税売上割合は,その法人の本来の事業から想定される課税売上割合とかい離することが考えられるのであるから,設立費用を課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分することは,設立直後の売上げのタイミングのズレという偶然の事情により高くもなり低くもなる課税売上割合に左右されて本来還付されるべき仕入れに係る消費税額が還付されないといった事態を招くものであって,消費税の本質に反するものというほかない。
この点,被告は,本件課税仕入れに係る消費税額の控除を認めないことはそもそも二重課税に当たらない旨も主張するが,被告は,課税期間ごとの計算を許容することを奇貨として,1つの付加価値について,原告の仕入先からと原告の本件課税期間以降の課税期間における売上げからと,まさに消費税を二重取りできるのであって,このような弊害を二重課税と評することは決して的外れなものではない。
エ(ア)被告は,ファイナンスリース取引との対比をいう原告の主張が失当である旨を主張する。
しかし,本件質疑応答事例1では,リース資産の据付工事費及び運賃等も含めたリース資産の取得費用について,非課税取引となる利子相当額を対価とする役務の提供に要する費用でなく,課税取引となる課税資産の譲渡等に要する費用に当たることから,控除対象仕入税額を計算するに当たっては,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるとの国税庁の見解が示されている。
そして,ファイナンスリース取引における取引の法的性格は,リース資産の売主と賃貸人との売買契約及びリース資産の賃貸人と賃借人とのリース契約という各契約が一体的に結合した3者の複合的契約関係というものであり,ファイナンスリース取引における契約の法的性格は,本質として金融取引であって,リース資産の賃貸人が取得する対価としてのリース料の中に本質的に金利部分を含むものであるところ,ファイナンスリース取引におけるリース資産の取得費用は,その金融取引という性格から必然的にリース料に含まれることとなる利子の取得のための仕入れとしての性格を強く持つものであり,そうであれば,リース資産の取得費用は,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに当たるはずである。しかし,本件質疑応答事例1は,リース資産の取得費用を課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分すべきものとしているのであって,その理由は必ずしも首肯し得るものではないが,これをあえて法的に説明するならば,前記(1)イのとおりに考えるほかないものである。
所得を課税対象とする所得税法及び法人税法において,政策的判
断から,ファイナンスリース取引をリース資産の賃貸人と賃借人との間の売買と擬制することがされているとしても,課税対象等を異にする消費税法においては,その取引の正確は経済的実態に即して判断されるべきである。
このように,本件割賦金利と本件課税仕入れは必然的な対応関係にはなく,本件においては,ファイナンスリース取引以上に実質的な配慮が必要であって,少なくともファイナンスリース取引と同様の配慮がされるべきである。
被告の主張は,一応の指針にすぎない消費税法基本通達にとらわれて,形式的な判断に終始したものというべきであって,法の精神を見失ったものというほかない。
(イ)この点,被告は,ファイナンスリース取引の賃貸人が支払う据付工事費用及び運賃等が,リース資産の取得費用として課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるのは,これらの費用が課税対象資産に係る運送費や支払加工賃といえるからである旨を主張する。
しかし,このような形式的なことは被告の主張を待つまでもなく自明のことであって,問題は,なにゆえ,金利を生み出す仕入れであるリース資産の上記以外の費用も含めての取得費用が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分できるのかというその理由である。被告は,原告の主張はファイナンスリース取引の租税法上の取扱いを正解しないものである等と主張するが,被告の主張は,仮にファイナンスリース取引におけるリース資産の賃貸人と賃借人との間の取引が売買であると評価するとしても,なにゆえその取得費用が契約上生ずる金利部分とは対応しないとされるのかという根本的な問題に対して,明確な説明や反論を主張しておらず,その正当な法的根拠を何ら明らかにするものではない。このように,被告の主張を前提としても,本件との均衡を失するというべきである。

被告は,原告の平成21年3月期の消費税について,徳島税務署長が本件施設設計料等を課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるものと判断したことに関し,本件施設設計料等と融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6は,その性質を異にする旨を主張する。
しかし,既に述べたように,本件融資の資金使途が本件施設の建設代金の支払に限定されていることからすれば,融資スキームの構築に係る費用等である本件課税仕入れ4ないし6を本件施設設計料等と別異に取り扱う合理的根拠はなく,同じく本件施設を建設・整備するためにのみ要する費用として取り扱うことが矛盾のない一貫性のある税務対応というべきである。


被告は,本件質疑応答事例2における国税庁の見解に対する原告の理解が預金に関する業務の委託の有無等を考慮していない点において誤っている旨を主張する。
しかし,本件質疑応答事例2における国税庁の見解についての被告の理解は,その記載に係る客観的な日本語の文章構造の理解を誤り,また,前提と評価ないし結論をすり替えたものであって,失当とい
うほかない。
なお,付言すれば,本件質疑応答事例2では,業務の一切についての業務代行手数料について,預金に関する業務を特に委託している事実がない場合には,利息収入があっても,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるとされており,預金に関する業務については,特にこれを委託する旨の合意をしなければ,業務の一切に含まれないと評価されている。また,親会社が行う業務の一切としては,会社の設立業務等が含まれている可能性も考えざるを得ず,被告の判断が恣意的なものであると疑われてもやむを得ないところである。
第3
1
当裁判所の判断
争点(本件課税仕入れが消費税法30条2項1号にいう課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れのいずれに区分されるか)について(1)控除対象仕入税額の計算等について(甲8,乙12,弁論の全趣旨)消費税は,広く公平な税負担を求めるという観点から,ほとんど全ての国内において行われる取引を課税の対象として,その最終的な税負担をいわゆる最終消費者に求める税であるが,納税義務者は,生産や流通等の各段階において課税資産の譲渡等を行う各事業者であり,消費者は,こうした各事業者が生産や流通等の各段階で物品やサービスの価格に順次転嫁していった消費税の税額に相当する額を最終的に負担することとなる。そこで,生産や流通等の各段階における取引で二重,三重に税が課されて税に相当する負担が累積することがないように,消費税法は,国内において課税仕入れを行った日の属する課税期間中の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を控除するものとしている(同法30条1項)。
そして,この控除対象仕入税額の計算に当たっては,原則として当該課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額を控除することができるとされる(同項)ところ,これは,課税仕入れに係る消費税額を控除する趣旨が上記に述べたとおりいわゆる課税の累積を排除することにあることからすれば,課税仕入れに対応する売上げに係る取引がその他の資産の譲渡等に当たるものであるときには課税の累積が生じないため当該課税仕入れに係る消費税額を控除の対象とする必然性はないものの,納税義務者の納税関係の事務の負担への配慮等といった観点から,課税売上割合が95パーセント以上である場合は,課税仕入れと売上げに係る取引との個別的な対応関係を問うことなく,当該課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額の控除を認めたものであると解される。
他方,課税売上割合が95パーセントに満たない場合は,同法30条2項1号に規定する個別対応方式又は同項2号に規定する方式のいずれかの方法により控除対象仕入税額を計算するものとされるところ,これは,課税売上割合が95パーセントに満たず,売上げに係る取引の大部分が課税資産の譲渡等に当たるといえない場合については,上記に述べた原則のとおりに,その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額は控除の対象とはならないとの前提に立って控除対象仕入税額を計算すべきであるとしたものであると解される。
そして,国内において行われた課税仕入れについて個別対応方式により控除対象仕入税額を計算するときは,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの税額(同号イ)に課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに課税売上割合を乗じて計算した金額(同号ロ)を加算する方法によるものとされるところ,その課税仕入れの区分の判断については,同号の文言等に即して,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちのどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当である。
(2)本件課税仕入れの区分について

本件課税仕入れ1ないし3について
本件施設の整備に関する対価は,別紙2記載3のとおり,本件割賦元本と本件割賦金利とから成るところ,本件割賦元本の合計額である9億4950万円及び本件割賦金利の合計額である1億0148万6000円は,いずれも本件契約において明示されており,徳島県は原告に対してこれらを約8年間にわたり,かつ,32回に分割していわゆる元利均等払いの方法で支払うこととされていたものである。
そうすると,本件割賦金利は,資産の譲渡等の対価の額を2月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分に当たり,これを対価とする本件契約に係る役務の提供は,消費税法施行令10条3項10号に掲げる取引に当たるから,当該役務の提供は,消費税法別表第1の3号に掲げるものに当たり,同法6条1項により,非課税取引とされる結果,同法30条2項1号のその他の資産の譲渡等に当たることとなる。
そして,本件課税仕入れ1ないし3の具体的な内容は,前提事実(3)アないしウのとおりであって,これらは,いずれも,原告の設立のために支払がされた費用等に係る取引であり,設立された原告が事業として行う各種の資産の譲渡等を含むその事業活動を成す取引全体のために要するものであったと認められる(ただし,本件課税仕入れ2のうち公証人の認証料として支払われた5万1500円は,消費税法別表1の5号ハに規定する公証人法7条1項の手数料であり,これを対価とする役務の提供は同法6条1項により非課税取引であるその他の資産の譲渡等に当たるから,これを除く。以下同じ。)ところ,上記に述べたとおり,原告が本件契約に基づいて行う事業活動により徳島県から対価として得ることとなる本件施設の整備に関する対価には,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とがあるというのであるから,本件課税仕入れ1ないし3が同法30条2項1号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるべきものであることは明らかということができる。

本件課税仕入れ4ないし6について
(ア)本件課税仕入れ4は,前提事実(3)エのとおり,本件保証料の支払に当たって要した送金の手数料に係る取引であり,別紙2記載5の契約保証金の納付に代えてされたE銀行との間の支払保証委託契約の締結に要した費用である本件保証料の支払のために支出された費用に係るものであるところ,同別紙記載5に照らせば,本件契約を締結するに当たって,契約保証金の納付又はこれに代わる支払委託保証契約の締結は必要不可欠なものであったということができることからすれば,本件保証料の支払に要した手数料に係る本件課税仕入れ4は,本件契約に基づいて原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったと認めるのが相当である。
そして,原告が本件契約に基づいて行う事業活動により得ることとなる本件施設の整備に関する対価に,課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本とその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利とがあることは,前記アで述べたとおりであるから,本件課税仕入れ4は,消費税法30条2項1号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるべきものということができる。
(イ)前提事実(3)オ及びカのとおり,本件課税仕入れ5は本件融資契約及び本件特約の締結を内容とする融資スキームの構築に関する手数料に係る取引であり,本件課税仕入れ6は本件融資契約等に係るB銀行のための法律顧問業務に関する報酬等に係る取引であって,いずれも本件融資契約を要素とする融資スキームの構築に関して生じた費用に係るものであるところ,前提事実(3)オのとおり,本件融資契約に基づく原告の借入金である本件融資の資金使途が別紙2記載5の契約保証金及び本件施設の建設代金の各支払とされていることからすれば,本件課税仕入れ5及び6は,いずれも,本件契約の締結に当たってその締結が必要であった契約保証金の納付に代わる支払委託保証契約に係る保証料(本件保証料)及び本件施設の建設等に係る建設代金の各支払のための資金の調達に要した費用に係るものであるということができる。
そして,本件課税仕入れ5及び6のうち本件保証料に係る資金の調達のために要した費用の部分に係るものについては,前記(ア)で述べたところに照らせば,本件保証料の支払に当たって要した手数料に係るものと同じく,本件契約に基づいて原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったと認めるのが相当であるところ,本件融資契約は本件保証料及び本件施設の建設代金の各支払のための資金を調達するために締結された契約であり,これを要素とする融資スキームの構築に関して生じた費用は当該融資スキームの構築全体について一体として支払われるものであることからすれば,本件課税仕入れ5及び6は,本件契約に基づいて原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったというべきであって,本件課税仕入れ4と同様に,同法30条2項1号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるべきものと認めるのが相当である。
(3)原告の主張について

原告の主張は,前記第2の4(原告の主張の要点)のとおりであり,これを要すれば,①本件割賦金利は,徳島県の地方公共団体としての公的な制約のために必然的に生じた単なる利息であって,原告がその設立の目的に沿って主たる事業として行う本件施設の整備との間に対価的な関連性はないし,本件割賦元本と本件割賦金利とは本質的に異なるもので,両者は一体であるということもできないから,本件課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される,②本件施設の整備に関する対価の具体的な内容は別紙2記載6の<ア>ないし<ク>のとおりで,そのうち同<ア>ないし<キ>が課税資産の譲渡等の対価である本件割賦元本に,同<ク>がその他の資産の譲渡等の対価である本件割賦金利にそれぞれ当たるところ,本件課税仕入れは,いずれも同<オ>又は<キ>に当たるから,いずれも課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される,③原告は,専ら本件事業を受託することを目的として,本件事業に関する法的な仕組みを整理するために便宜上設立された特別目的会社にすぎず,このことからすれば,原告の設立に要した費用等又は本件施設を整備する事業に係る資金の調達のための仕組みの構築に要した費用である本件課税仕入れは,製造業における原材料の仕入れに相当するものとして,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される,④法人の設立直後の課税売上割合の程度は偶然の事情によって左右されるものであるところ,課税売上割合の程度によっては,本来還付されるべき仕入れに係る消費税額が還付されなくなり,課税期間の制度と相まって,1つの付加価値について消費税が二重に課されることともなるのであって,こうした事態は,消費税の本質に反しており,実質的な二重課税に当たるというべきである,⑤金融取引としての側面が強いと考えられているファイナンスリース取引においてさえ,妥当な結果への配慮から,リース資産の取得費用は課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるものと柔軟に扱われていることからすれば,上記③に述べたような性格の本件課税仕入れについても同様の配慮がされてしかるべきである,⑥徳島税務署長は,原告の平成21年3月期の消費税について,原告が設計事務所等に支払った本件施設設計料等が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるものであることを認めており,このことからすれば,本件更正処分等においても,これと同様の取扱いがされるべきである,⑦本件質疑応答事例2において示された国税庁の見解は,課税仕入れと売上げとの主たる対応関係を実質的に判断すべきことを示すものであり,そうであれば,本件においても,これと同様な洞察と配慮の上で,本件課税仕入れの区分を判断すべきである旨を,それぞれ主張する。
しかし,前記(1)及び(2)に述べたところを前提に検討すれば,以下に述べるとおり,このような原告の主張は,いずれも採用することができないものというべきである。

すなわち,前記ア①の点については,本件課税仕入れが課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに当たること及びその理由は,前記(2)に述べたとおりであって,そこで指摘した本件課税仕入れの内容及び本件契約の内容や前記(1)において述べた課税仕入れの区分の判断についての枠組みに照らせば,原告の指摘する事情は,上記の判断で示された結論を左右するものには当たらないというべきである。

前記ア②の点については,控除対象仕入税額を個別対応方式により計算するに当たっての課税仕入れの区分の判断に関しては,前記(1)で述べたとおり,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちのどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものであるから,本件契約書において本件施設の整備に関する対価の具体的な内容について別紙2記載6のとおりの記載があるからといって,そのことのみによって,直ちに前記(2)に述べた当裁判所の判断が左右されるものではない。


前記ア③の点については,本件課税仕入れ1ないし3が,設立された原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであり,本件課税仕入れ4ないし6が,本件契約に基づき原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったことは,前記(2)アで述べたとおりであって,このような本件課税仕入れが製造業における原材料の仕入れと同視され得るものでないことは明らかというほかないから,原告の主張はその前提を欠いている(なお,消費税法又は消費税法施行令等にいわゆる特別目的会社についての特段の規定がないことからすれば,原告が専ら本件事業に関する業務を行うことを目的として設立された特別目的会社であることは,原告と他の株式会社等の法人との間で法的な取扱いを異にすべき根拠となるものではない。)。

前記ア④の点については,控除対象仕入税額が課税期間ごとに課税売上割合に従って定まることは,前記(1)で述べたとおりであって,法のもとより予定するところというべきものであるから,課税売上割合の程度によって控除対象仕入税額が異なることをもって,消費税の本質に反する等ということは困難というほかない。この点に関する原告の主張は,結局のところ,現行法の解釈を離れた制度論ないしは立法論をいうものというべきである。


前記ア⑤の点については,原告の指摘する本件質疑応答事例1は,所得税法及び所得税法上リース資産の売買があったものとして取り扱うものとされる所有権移転外リース取引について(所得税法67条の2第1項,法人税法64条の2第1項),消費税法上もこれと整合的な取扱いをすることを前提として示されたものと解され,本件課税仕入れに係る取引をもってこれと同列には論じ難いことは,前記(1)で述べたところから明らかというべきである。


前記ア⑥の点については,本件施設設計料等に係る取引が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されると判断されたのは,これが当該取引の内容に照らして本件施設の建設等にのみ要するものであると評価されたことをその理由とするものと解されるから,既に述べたとおりこれとは前提が異なる本件課税仕入れに関し,同様の取扱いがされるべきものということはできない。

前記ア⑦の点については,本件質疑応答事例2において,国外での資産の貸付けのみを行うために設立され,その業務の一切の代行を親会社に委託して業務代行手数料を支払う一方,資本金を預金していることから毎期の収入として預金利息がある会社が支払う上記の業務代行手数料について,それに係る取引が課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分される旨の国税庁の見解が示されていることは,原告の指摘のとおりであるものの,この見解が,上記の会社の設立後の業務に関するもので,その内容を特定のものに単純化した上,その預金に関する業務を特に委託している事実がない場合を前提としたものであることは,その回答要旨に示された理由(甲9)に照らして明らかであること等からすると,本件質疑応答事例2に示された国税庁の見解をもって,既に述べたように前提となる事情を異にする本件課税仕入れが課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに区分されるべきことの根拠となるということはできない。
(4)小括
以上述べたところによれば,当事者のその余の主張を考慮したとしても,本件課税仕入れについては,いずれも,消費税法30条2項1号に規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるべきものということができる。
2
本件更正処分等の適法性について
前記1に述べたとおり,本件課税仕入れはいずれも消費税法30条2項1号に規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分されるところ,原告が本件課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額及び課税資産の譲渡等の対価の額の合計額が,それぞれ165円及び0円であって,本件課税期間に係る原告の課税売上割合が0パーセントとなることは,当事者間に争いがない。
したがって,本件課税仕入れに係る控除対象仕入税額は0円であり,このことと当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨を併せれば,本件更正処分等については,別紙3のとおり,いずれも適法なものと認められる。第4

結論
以上の次第であって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第3部

裁判長裁判官

八木一洋
裁判官

田中一彦
裁判官

塚原洋

(別紙1)
関係法令等の定め

1
消費税法の定め
(1)ア消費税法2条1項9号は,課税資産の譲渡等とは,資産の譲渡等(事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう。同項8号参照。以下同じ。)のうち,同法6条1項の規定により消費税を課さないこととされるもの(消費税を課さないこととされる資産の譲渡等を,以下非課税取引ということがある。)以外のものをいう旨を定めている。
そして,①同項は,国内において行われる資産の譲渡等のうち,同法別表第1に掲げるものには,消費税を課さない旨を定め,②同別表3号は,利子を対価とする貸付金等の資産の貸付け等その他これに類するものとして政令で定めるものを掲げ,③消費税法施行令10条3項10号は,同別表3号に掲げる資産の貸付け等に類するものとして同号に規定する政令で定めるものとして,資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭債権の額を2月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提供(同項9号に掲げる役務の提供を除く。)を掲げている。

消費税法2条1項12号は,課税仕入れとは,事業者が事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので同法7条1項各号〔輸出免税等〕に掲げる資産の譲渡等に該当するもの等以外のものに限る。)をいう旨を定めている。
(2)ア消費税法5条1項は,事業者は,国内において行った課税資産の譲渡等につき,同法により,消費税を納める義務がある旨を定めている。イ
消費税法12条の2(平成22年法律第6号による改正前のもの)は,その事業年度の基準期間(法人についてはその事業年度の前々事業年度をいう。同法2条1項14号参照。以下同じ。)がない法人のうち,当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1000万円以上である法人(以下新設法人という。)については,当該新設法人の基準期間がない事業年度における課税資産の譲渡等については,同法9条1項本文(小規模事業者に係る免税義務の免除)の規定は,適用しない旨を定めている。

(3)ア消費税法30条1項は,事業者が,国内において行う課税仕入れについては,同項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間(法人にあっては事業年度をいう。同法19条1項2号参照。以下同じ。)の同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下課税標準額に対する消費税額という。)から,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。以下同じ。)を控除する旨を定めている。
そして,同法30条1項1号は,国内において課税仕入れを行った場合について,当該課税仕入れを行った日と定めている。

消費税法30条2項は,同条1項の場合において,同項に規定する課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないときは,同項の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額は,同項の規定にかかわらず,同条2項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする旨を定めている。
そして,同項1号は,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき,課税資産の譲渡等にのみ要するもの,課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下その他の資産の譲渡等という。既に述べたとおり,非課税取引ということもある。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合について,課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに係る消費税額(同号イ)に,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額(同号ロ)を加算する方法(この方法を,以下個別対応方式ともいう。)による旨を定めている。

消費税法30条6項は,同条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額とは,課税仕入れの対価の額をいう旨を定め,同条2項に規定する課税売上割合とは,当該事業者が当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額(同法28条1項に規定する対価の額をいう。以下ウにおいて同じ。)の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政令で定めるところにより計算した割合をいう旨を定めている。

2
消費税法基本通達(平成7年12月25日付け課消2-25(例規)ほか国税庁長官通達)の定め(甲5,6,弁論の全趣旨)
(1)消費税法基本通達11-2-12は,消費税法30条2項1号に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するものとは,課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい,例えば,①そのまま他に譲渡される課税資産,②課税資産の製造用にのみ消費し,又は使用される原材料,容器,包紙,機械及び装置,工具,器具,備品等並びに③課税資産に係る倉庫料,運送費,広告宣伝費,支払手数料又は支払加工賃等の課税仕入れ等がこれに該当する旨を定めている。
(2)消費税法基本通達11-2-20は,個別対応方式により控除対象仕入税額を計算する場合において,課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するもの,その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は,課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる旨を定めている。
以上
(別紙2)
本件契約書(要旨)

1
契約金額(本件契約書の冒頭部分)
契約金額は,17億8050万円(消費税等を含む。以下本別紙において同じ。)に本件契約書の別紙8を基に算定した増減額(以下別紙8に基づく増減額という。)を加算した額とし,契約金額の内訳は,①施設整備に関する対価(以下本件施設の整備に関する対価という。)として10億5098万6000円,②維持管理に関する対価として2億5320万4472円に別紙8に基づく増減額を加算した額,③緊急修繕に関する対価420万円,④光熱水費及び通信費に関する対価1億0274万3544円に別紙8に基づく増減額を加算した額,⑤徳島市中央公民館地下駐車場部分に係る警備等に関する対価277万2000円に別紙8に基づく増減額を加算した額及び⑥運営に関する対価3億6659万3984円に別紙8に基づく増減額を加算した額とする。

2
事業者の資金の調達(5条)
本件事業の実施に関する費用は,本件契約で特段の定めがある場合を除き全て原告が負担する。本件事業に関する原告の資金の調達は全て原告の責任において行う。

3
施設等整備の割賦代金等の支払(35条)
徳島県は,本件施設及び備品等の引渡しを受けた場合,本件契約書の別紙8に記載する金額,方法に従い,施設等整備の割賦代金及びこれに係る支払利息相当分を,原告より提案のあった金利を用い,維持管理・運営期間にわたり,平成22年4月(予定)を初回,平成30年1月(予定)を最終回に毎年度四半期ごとの32回の元利均等払いにて支払う。
なお,本件契約書の別紙8の2項(1)には,本件施設の整備に関する対価のうち割賦金利として支払われる部分(以下本件割賦金利という。)について,割賦金利は所定の基準金利と原告が提案したいわゆるスプレッドの合計とする旨の記載があり,同別紙の4項(1)には,本件施設の整備に関する対価のうち割賦元本として支払われる部分(以下本件割賦元本)に係る支払金額の合計額を9億4950万円とし本件割賦金利に係る支払金額の合計額を1億0148万6000円とする旨の記載がある。
4
独立採算事業の総則(60条1項)
原告は,本件施設の運営業務の一環として,自らの責任及び費用において,独立採算事業を行うことができる。
なお,独立採算事業とは,運営業務のうち①施設の有効活用業務(講座・イベント・講演会・催事等の企画運営),②自由提案施設(飲食物販等の施設及び自動販売機の設置運営)及び③広告宣伝業務に関する事業をいう(1条1項32号)。

5
保証(74条1項)
原告は,施設整備期間(平成20年4月1日から平成22年1月31日までの期間をいう。1条1項27号)中,整備費等相当額の100分の30に相当する金額以上の契約保証金を本件契約締結時に納付する。
なお,契約保証金の納付は,国債証券及び地方債証券のほか,銀行その他徳島県が確実と認める金融機関の保証等をもって,これに代えることができる。
6
本件施設の整備に関する対価の内容(本件契約書の別紙8の1項)本件施設の整備に関する対価は,その支払の対象となる業務を設計業務,整備業務及び工事監理業務とし,その具体的な内容を,<ア>本件施設の整備に係る設計・整備費用,<イ>什器・備品整備費,<ウ>情報システム整備費,<エ>本件工事に係る工事監理料,<オ>事業者の開業に伴う費用,<カ>建中金利,<キ>融資組成手数料その他整備に関する初期費用と認められる費用等及び<ク>これら<ア>ないし<キ>の合計に対する徳島県の割賦支払に係る利息とする。以

(別紙3)
本件更正処分等の根拠及び適法性

1
本件更正処分の根拠及び適法性
(1)本件更正処分の根拠
被告が本件訴えにおいて主張する原告の本件課税期間の消費税の課税標準額及び納付すべき消費税等の額の合計額は,別表2のとおりであり,各項目の金額の根拠は,次のとおりである(なお,この別紙において,以下に掲げる順号は,別表2のものである。)。

課税標準額(順号①)

0円

上記金額は,本件確定申告書に記載された金額と同額である。

課税標準額に対する消費税額(順号②)

0円

上記金額は,前記アの金額に消費税法29条に規定する100分の4の税率を乗じて算出した金額である。

控除対象仕入税額(順号③)

0円

原告が本件課税期間中に行った資産の譲渡等の対価の額である165円のうち課税資産の譲渡等の対価の額は0円であるから,課税売上割合は0パーセントであり100分の95に満たない。そして,原告は,控除対象仕入税額の計算について,個別対応方式によりすることとしているところ,本件課税仕入れは,消費税法30条2項1号ロに規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに区分される。したがって,控除対象仕入税額は,本件課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した0円となる。

イからウを控除した残額に相当する消費税額(順号④)
0円

前記イの金額から前記ウの金額を控除すると,残額に相当する消費税額は0円となる。

既に還付の確定した消費税額(順号⑤)

△81万5153円

上記金額は,本件課税期間の本件確定申告書の提出により還付の確定した消費税額である。

差引納付すべき消費税額(順号⑥)

81万5100円

上記金額は,前記エの金額から前記オの金額を控除した後,国税通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた金額である。キ
地方消費税の課税標準となる消費税額(順号⑦)

0円

上記金額は,地方消費税の課税標準として地方税法72条の82に規定する金額で,前記エの金額である。

譲渡割額(順号⑧)

0円

上記金額は,前記キの金額に地方消費税法72条の83に規定する100分の25の税率を乗じて算出した金額である。

既に還付の確定した譲渡割額(順号⑨)

△20万3788円

上記金額は,本件確定申告書の提出により還付の確定した譲渡割額である。

差引納付すべき譲渡割額(順号⑩)

20万3700円

上記の金額は,前記クの金額から前記ケの金額を控除した後,地方税法20条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の金額を切り捨てた金額である。

消費税等の合計額(順号⑪)

101万8800円

上記金額は,前記カの金額と前記コの金額の合計額である。
(2)本件更正処分の適法性
被告が本件訴えにおいて主張する本件課税期間における原告の納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額は,前記(1)で述べたとおり,消費税額が81万5100円,地方消費税の譲渡割額が20万3700円であるところ,本件更正処分における原告の納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額は,いずれもこれらと同額であるから,本件更正処分は適法である。2
本件賦課決定処分の根拠及び適法性
(1)本件賦課決定処分の根拠
前記1(2)で述べたとおり,本件更正処分は適法であるところ,本件更正処分により新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち,本件更正処分より前における税額の計算の基礎とされなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があると認められるものはない。
したがって,過少申告加算税の額は,地方税法附則9条の9第1項及び3項の規定により本件更正処分によって原告が新たに納付すべきこととなった消費税額及び地方消費税の譲渡割額の合計額101万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて計算した金額10万1000円と,同条2項の規定に基づき原告が新たに納付すべきこととなった消費税額及び地方消費税の譲渡割額の合計額101万円のうち50万円を超える部分に相当する金額である51万円に100分の5を乗じて計算した金額である2万5500円との合計額である12万6500円となる。
(2)本件賦課決定処分の適法性
被告が本件訴えにおいて主張する原告に課されるべき消費税等の過少申告加算税の額は,前記(1)のとおりであり,本件賦課決定処分における金額と同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。
以上
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