判例検索β > 平成17年(あ)第2358号

木曽川長良川等連続リンチ殺人事件

被告人Aに対する強盗致傷,傷害,殺人,監禁,強盗殺人,死体遺棄,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反,被告人Bに対する傷害,殺人,監禁,強盗致傷,強盗殺人,死体遺棄,暴力行為等処罰に関する法律違反,被告人Cに対する傷害,殺人,監禁,強盗致傷,強盗殺人,死体遺棄各被告事件
事件番号平成17(あ)2358
事件名被告人Aに対する強盗致傷,傷害,殺人,監禁,強盗殺人,死体遺棄,恐喝,暴力行為等処罰に関する法律違反,被告人Bに対する傷害,殺人,監禁,強盗致傷,強盗殺人,死体遺棄,暴力行為等処罰に関する法律違反,被告人Cに対する傷害,殺人,監禁,強盗致傷,強盗殺人,死体遺棄各被告事件
裁判年月日平成23年3月10日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁集刑 第303号133頁
原審裁判所名名古屋高等裁判所
原審裁判年月日平成17年10月14日
判示事項死刑の量刑が維持された事例(木曽川長良川等連続リンチ殺人事件)
裁判日:西暦2011-03-10
情報公開日2017-10-17 13:54:01
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主文
本件各上告を棄却する
理由
被告人Aの弁護人山下幸夫,同金岡繁裕,同福井秀剛の上告趣意のうち,死刑に関して憲法9条,13条,31条,36条違反をいう点は,その執行方法を含む死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和24年新(れ)第335号同26年4月18日大法廷判決・刑集5巻5号923頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がない。同上告趣意のうち,憲法39条違反をいう点は,検察官の上訴が同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものでないことは明らかであるから,前提を欠き,検察官の上訴に関して判例違反をいう点は,いずれも事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人A本人の上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
被告人Bの弁護人纐纈和義,同湯原裕子,同村上満宏の上告趣意のうち,憲法36条違反をいう点は,死刑制度が同条に違反しないことは上記のとおりであるから,理由がなく,検察官の上訴に関して憲法39条違反をいう点は,上記のとおり前提を欠き,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
被告人Cの弁護人大熊裕起,同坂根真也,同野口容子の上告趣意のうち,憲法13条,31条,36条違反をいう点は,その執行方法を含む死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは上記のとおりであるから,理由がなく,憲法38条違反をいう点は,記録を調べても,被告人Cの捜査段階の自白の任意性を疑わせる証跡は認められないから,前提を欠き,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
付言すると,本件は,(1)

被告人A及び被告人Cが,大阪市内の繁華街でたま

たま行き合った被害者を人夫として送り込む目的でビル居室に連れ込み,両手足を緊縛するなどして身動きができない状態にし,被告人B及び共犯者1名と共に,激しい暴行を加えたが,人夫受入れの当てが外れてその処置に窮し,犯跡を隠蔽するため,被告人3名らが,順次,被害者の殺害を共謀し,同人の首に巻き付けたベルトの両端を力一杯引き合うなどしてその頸部を絞め付けて殺害し,その死体を高知県内の山中に運んで遺棄したという殺人死体遺棄の事案,(2)
その後,愛知県

内に逃走した被告人3名が,被告人Aのシンナー仲間であった被害者の言動に腹を立て,共犯者らと共謀して,被害者に対し激しい暴行を加えて自力による起居動作が不可能な瀕死の傷害を負わせた上,犯跡を隠蔽するため同人を殺害しようと企て,木曽川堤防上に横たわっていた同人を蹴り落とし,転がり落ちて停止した同人を河川敷雑木林まで引きずるなどして移動させてその場に放置し,間もなく,硬膜下血腫,内臓損傷又は全身打撲による外傷性ショック死のいずれかにより死亡させて殺害したという傷害殺人の事案,(3)

被告人3名が,共謀の上,ボウリング

場でたまたま顔を合わせた被害者3名から金品を強取しようと企て,被害者3名を自動車内に監禁して現金等を強取しただけでなく,うち被害者2名に激しい暴行を加えた後,その処置に窮し,犯跡を隠蔽するため殺害を決意し,長良川河川敷等において,上記被害者2名に対し,アルミ製角パイプでその頭部や胸部などを多数回殴打するなどしていずれも多発損傷に基づく組織間出血による失血により死亡させて殺害したほか,残りの1名の被害者に傷害を負わせたという監禁強盗殺人強盗致傷の事案,(4)

(1)の犯行前に行われた被告人Aと共犯者1名による強盗

傷,(1)の犯行と(2)の犯行の間に行われた被告人Aと共犯者1名による恐喝,被告人Aと被告人Bによる共同暴行,示兇器脅迫,被告人Aと共犯者1名による共同暴行の事案である。
取り分け重大事犯である(1)ないし(3)の各犯行は,被告人3名らによって行われた殺人強盗殺人等の凶悪事案であって,無抵抗の被害者に集団で強度の暴行を長時間にわたって執ように加えるなどした上,被害者の処置に窮し,犯跡を隠蔽するため殺害行為に及んだもので,その理不尽な動機に酌量の余地はない。僅か11日間という短期間のうちに3回にわたってその都度新たな殺意を形成しながら殺人強盗殺人の犯行を重ねており,その間いささかのためらいすらもうかがえない。その犯行態様は,(1)においては,被害者の命乞いすらも一顧だにせず,体をけいれんさせ,苦悶する被害者の首を執ように絞め続けて殺害し,(2)においては,地面に横たわった状態で首筋等に置かれたシンナー入りビニール袋をライターで点火して燃やされても緩慢で微弱な反応しかできないほどに重篤な状態にあった被害者を,蹴って堤防下に転落させたり,引きずったりするなどして河川敷雑木林に運んで放置して殺害し,(3)においては,現金を強取された挙げ句,命乞いをする被害者らの全身をアルミ製角パイプで滅多打ちにするなどして殺害しており,いずれも文字どおりなぶり殺しともいうべき凄惨なもので,執ようかつ残虐というほかない。19歳から26歳までの4名もの青年の生命を次々と奪い去った結果は誠に重大であって,被害者らの恐怖,無念は言うに及ばず,遺族らの被害感情も極めて厳しい。連続リンチ殺人事件として,地域社会に与えた衝撃も計り知れない。被告人Aは,自ら積極的に激しい暴行を執ように加えるなどして犯行を強力に推進し,最も中心的で重要な役割を果たしている。被告人Bは,被告人3名のうちでは暴力団組員としての序列が上であったことによる影響力から被告人Aと共に主導的立場で犯行を推進するとともに,自らも被害者らに激しい暴行を加えるなどしている。被告人Cは,被害者らを殺害する契機となった強度かつ執ような暴行等に自発的に加わっている上,進んで殺害行為に着手するなど,犯行に積極的・主体的に関与しているのであって,その果たした役割が追随的・従属的であったとはいえない。そして,被告人3名は,いずれも自ら求めて暴力団組織に加わるなど反社会的な生活を送る中で,上記各犯行を相次いで敢行しているのであって,被告人3名の犯罪性向は根深く,深刻である。
以上の事情に照らすと,被告人3名の刑事責任はいずれも誠に重いというほかはなく,本件各犯行が,全体的に見れば場当たり的なものであること,被告人3名はそれぞれ遺族らに謝罪の手紙を送るなどし,被告人Bについては,(2)の事件の遺族との間で一定の交流を持つに至っていること,被告人3名は犯行当時いずれも少年であったことなどのほか,被告人Aは(1)の犯行につき自首しており,被告人Bは(3)の犯行の被害者1名を最終的には解放しており,被告人Cは他の被告人らに比べ暴力団組員としての序列が低かったことなどの被告人3名のために酌むべき事情をそれぞれ最大限考慮しても,被告人3名に対する原判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって,被告人A及び被告人Bについては刑訴法414条,396条により,被告人Cについては同法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官長崎誠
(裁判長裁判官
横田尤孝

公判出席
櫻井龍子

裁判官

白木

裁判官

宮川光治

勇)
裁判官

金築誠志

裁判官

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