判例検索β > 平成19年(あ)第337号

北九州、大分の連続殺人事件

被告人Aに対する住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊,殺人,詐欺,被告人Bに対する住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊,殺人被告事件
事件番号平成19(あ)337
事件名被告人Aに対する住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊,殺人,詐欺,被告人Bに対する住居侵入,強盗殺人,現住建造物等放火,死体損壊,殺人被告事件
裁判年月日平成22年11月8日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁集刑 第302号1頁
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審裁判年月日平成19年1月16日
判示事項死刑の量刑が維持された事例(北九州,大分の連続殺人事件)
裁判日:西暦2010-11-08
情報公開日2017-10-17 13:54:06
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主文
本件各上告を棄却する
理由
被告人Aの弁護人内山成樹,同井野昭の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法13条,31条,36条,98条2項違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして明らかであるから,理由がなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人A本人の上告趣意のうち,同被告人の自白調書に関して憲法38条2項違反,判例違反をいう点は,記録を調べても,同被告人の自白調書の任意性を疑うべき証跡は認められないから,前提を欠き,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
被告人Bの弁護人佐藤秀樹の上告趣意のうち,憲法13条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは上記のとおりであるから,理由がなく,その余は,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,各所論にかんがみ記録を調査しても,いずれも刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。付言すると,本件は,(1)

被告人Aが,家屋の床下工事の施工等を業とする会

社の営業に従事していた際に,女性の顧客から床下工事代金名下に,現金合計440万円をだまし取った詐欺の事案,(2)

被告人Aが,上記会社の営業活動により

知り合った別の女性の顧客から,訪問販売等による被害回復のための手続金等名下に,現金合計約1054万円をだまし取った詐欺の事案,(3)

被告人両名が,共

謀の上,前記(1)の顧客と一緒に住んでいた同人の義兄を殺害して,同(1)の工事関係の書類を奪還するとともに金品を強取することを企て,被告人Bにおいて,上記義兄方に侵入し,同人を殺害して郵便貯金通帳等を強取し,さらに,犯跡を隠ぺいするために同人方に放火し,これを全焼させるとともに同人の死体を焼損して損壊した住居侵入強盗殺人,現住建造物等放火及び死体損壊の事案,並びに(4)

告人両名が,Cと共謀の上,被告人Bを被保険者とする生命保険金を詐取する目的で,同被告人が死亡したように見せかけるため,その身代わりとして路上生活をしていた者を殺害したという殺人の事案である。
量刑上重視すべき(3)の強盗殺人等及び(4)の殺人の各事実の情状についてみると,いずれも罪質は極めて悪く,利欲性が高く,自己中心的かつ身勝手なもので,動機及び経緯に酌量すべき点は認められない。いずれの犯行も計画的なもので,(3)の殺害方法は,虚言をもってあらかじめ同居の義妹をおびき出して被害者1人にした上,宅配便業者を装って侵入し,頸部を絞め付け,所携の果物ナイフで頸部を突き刺すなどして殺害したという,強固な殺意に基づく残虐なものである。さらに,被害者の体等に灯油をまいて火をつけ,家屋もろとも焼損させており,冷酷かつ非道である。また,(4)の殺害方法も,路上生活をしていた被害者に対し,仕事をしないかなどと誘って県外に連れ出し,睡眠導入剤を服用させて眠らせ,車で川岸まで運んだ上,両足首を持って宙づりにし身動きしなくなるまで水中に上半身を沈めて溺死させたという,これまた強固な殺意に基づく残虐かつ非情なものである。被告人Aは,これらの犯行を立案し,被告人Bほかを犯行に引き込んだ上,被告人Bに犯行内容を細かく指示して実行させるなどしたものであって,各犯行における首謀者である。被告人Bは,被告人Aの指示に従い,(3)の強盗殺人等では実行行為のすべてを1人で敢行し,(4)の殺人でも実行行為のほぼすべてを自ら敢行した実行犯であり,被告人Bがいなければこれらの犯行は実現し得なかったものである。犯行の結果,2名の尊い生命を奪った結果は誠に重大である。被告人両名からは被害者らの遺族に対し慰謝の措置は講じられておらず,遺族らの被害感情は厳しく,本件が地域社会に与えた影響も軽視できない。
そうすると,被告人Aには前科がなく,(3)のうち住居侵入強盗,(4)の殺人,(1)及び(2)の各詐欺の事実関係は認めていること,被告人Bは,自分なりの思惑はあったものの,被告人Aを恐れてその指示を受けこれに従ったという面もあり,その意味においては従属的な側面があること,事実関係を認め反省の態度を示していることなど,被告人両名のために酌むべき事情を十分考慮しても,それぞれの刑事責任は極めて重大であり,被告人両名を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官三浦守
(裁判長裁判官

公判出席
須藤正彦

裁判官

古田佑紀

千葉勝美)裁判官

竹内行夫

裁判官

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